説明

内燃機関の吸気制御装置

【課題】排気タービン式過給機を搭載したエンジンにおいて、省スペース化及び低コスト化の要求を満たしながら、ターボラグを小さくできるようにする。
【解決手段】蓄圧タンク37内に空気貯蔵量を増加させる活性炭を封入し、吸気管12のうちのコンプレッサ19よりも下流側から蓄圧タンク37へ空気を導入する導入通路38と、この導入通路38を開閉する開閉弁39を設けると共に、蓄圧タンク37から排気管15のうちの排気タービン18よりも上流側へ空気を供給する供給通路40と、この供給通路40を流れる空気の流量を調整する流量調整弁41を設ける。そして、エンジン11の急加速要求時に、燃料噴射量を増量補正すると共に、蓄圧タンク37から排気タービン18上流側へ空気を供給する過給アシスト制御を実行することで、排気タービン18上流側で排出ガス中の未燃成分を燃焼させて、排気タービン18の回転速度を上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路に設けられた排気タービンで吸気通路に設けられたコンプレッサを駆動して吸入空気を過給する過給機を備えた内燃機関の吸気制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される内燃機関においては、排気タービン式過給機(いわゆるターボチャージャ)を搭載したものがある。この排気タービン式過給機は、内燃機関の排気通路に設けた排気タービンと吸気通路に設けたコンプレッサとを連結し、排出ガスのエネルギで排気タービンを回転駆動することでコンプレッサを駆動して吸入空気を過給するようにしている。
【0003】
このような排気タービン式過給機を搭載した内燃機関では、特に低回転速度領域からの加速要求時に、アクセルが踏み込まれてから排気タービンの回転速度(コンプレッサの回転速度)が上昇して吸入空気の過給圧が上昇するまでの時間が長くなる傾向があり、アクセルが踏み込まれてから実際に吸入空気が増加してトルクが増加するまでの時間遅れ(いわゆるターボラグ)が大きくなるという欠点がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1(特開2009−203856号公報)に記載されているように、内燃機関の吸気通路に電動過給機を設けると共に蓄圧タンクを接続し、車両の減速走行時で且つ蓄圧タンク内の圧力が所定圧力以下のときに、電動過給機を駆動して吸気通路から蓄圧タンクへ空気を導入し、内燃機関の加速要求時に、蓄圧タンク内の空気を吸気通路へ供給するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−203856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1の技術では、蓄圧タンクから吸気通路へ十分な空気を供給可能にするには、蓄圧タンクの容積をかなり大きくする必要があり、システムが大型化して省スペース化の要求を満たすことができないという欠点がある。また、一般的な排気タービン式過給機に比べて高価な電動過給機を搭載する必要があるため、低コスト化の要求を満たすことができない上に、消費電力が増加して燃費が悪化する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、省スペース化及び低コスト化の要求を満たしながら、ターボラグを小さくすることができる内燃機関の吸気制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、内燃機関の排気通路に設けられた排気タービンで吸気通路に設けられたコンプレッサを駆動して吸入空気を過給する過給機を備えた内燃機関の吸気制御装置において、活性炭を封入した蓄圧タンクと、吸気通路のうちのコンプレッサよりも下流側から蓄圧タンクへ空気を導入するための導入通路と、蓄圧タンクから排気通路のうちの排気タービンよりも上流側(以下単に「排気タービン上流側」という)へ空気を供給するための供給通路と、導入通路を開閉する開閉弁と、供給通路を流れる空気の流量を調整する流量調整弁と、少なくとも流量調整弁を制御する制御手段とを備えた構成としたものである。
【0009】
この構成では、蓄圧タンクから排気タービン上流側(排気通路のうちの排気タービンよりも上流側)へ空気を供給することで、排気タービン上流側で排出ガス中の未燃成分(CO、HC等)を燃焼させる後燃えを発生させて排出ガスのエネルギを増加させることができ、これにより、排気タービンの回転速度(コンプレッサの回転速度)を速やかに上昇させて吸入空気の過給圧を速やかに上昇させることができ、アクセルが踏み込まれてから実際に吸入空気が増加してトルクが増加するまでの時間遅れ(いわゆるターボラグ)を小さくすることができる。しかも、活性炭を封入した蓄圧タンクを用いることで、蓄圧タンクの空気貯蔵量(貯蔵可能な空気量)を増加させることができるため、蓄圧タンクを小型化しながら蓄圧タンクから排気タービン上流側へ十分な空気を供給することが可能となり、省スペース化の要求を満たすことができる。また、一般的な排気タービン式過給機に比べて高価な電動過給機を搭載する必要がないため、低コスト化の要求を満たすことができると共に、消費電力を低減して燃費を節減することができる。
【0010】
この場合、請求項2のように、内燃機関の加速要求時に蓄圧タンクから排気タービン上流側へ空気を供給するように流量調整弁を制御する過給アシスト制御を実行するようにすると良い。このようにすれば、内燃機関の加速要求時に、過給アシスト制御を実行して排気タービン上流側で後燃えを発生させて、排気タービンの回転速度を速やかに上昇させることができ、ターボラグを小さくすることができる。
【0011】
ここで、内燃機関の回転速度が所定回転速度領域よりも低い場合には、排気温度が低いため、過給アシスト制御を実行しても、後燃えが発生し難く、排気タービンの回転速度を速やかに上昇させることが困難である。一方、内燃機関の回転速度が所定回転速度領域よりも高い場合には、過給アシスト制御を実行しなくても、排出ガスのエネルギが大きくて過給機が十分に機能するため、過給アシスト制御を実行する必要がない。
【0012】
このような事情を考慮して、請求項3のように、内燃機関の加速要求時で且つ内燃機関の回転速度が所定回転速度領域のときに過給アシスト制御を実行するようにしても良い。このようにすれば、過給アシスト制御が有効な所定回転速度領域のみで過給アシスト制御を実行するようにでき、蓄圧タンク内に蓄えた空気を無駄に使用することを防止して効率的に利用することができる。
【0013】
また、請求項4のように、過給アシスト制御の際に、燃料噴射量を増量補正するようにすると良い。このようにすれば、燃料噴射量の増量補正により排出ガスの空燃比をリッチにして排出ガス中の未燃成分を増加させた状態で過給アシスト制御を実行することができ、後燃えを確実に発生させることができる。
【0014】
更に、請求項5のように、蓄圧タンク内の圧力を検出するタンク内圧センサと、排気タービン上流側の排気圧力を検出する排気圧センサと、蓄圧タンクから排気タービン上流側へ供給する空気の目標流量(以下「目標アシスト流量」という)を算出する目標アシスト流量算出手段とを備え、過給アシスト制御の際に、蓄圧タンク内の圧力と排気タービン上流側の排気圧力との差圧と、目標アシスト流量とに基づいて、流量調整弁の開度を設定するようにしても良い。蓄圧タンク内の圧力と排気タービン上流側の排気圧力との差圧と、流量調整弁の開度に応じて、蓄圧タンクから排気タービン上流側へ供給する空気の流量が変化するため、蓄圧タンク内の圧力と排気タービン上流側の排気圧力との差圧と、目標アシスト流量とを用いれば、目標アシスト流量を実現するのに必要な流量調整弁の開度を精度良く設定することができる。
【0015】
また、請求項6のように、内燃機関の排気通路に設けられた排気タービンで吸気通路に設けられたコンプレッサを駆動して吸入空気を過給する過給機を備えた内燃機関の吸気制御装置において、活性炭を封入した蓄圧タンクと、吸気通路のうちのコンプレッサよりも下流側から蓄圧タンクへ空気を導入するための導入通路と、蓄圧タンクから吸気通路のうちのコンプレッサよりも下流側へ空気を供給するための供給通路と、導入通路を開閉する開閉弁と、供給通路を流れる空気の流量を調整する流量調整弁と、少なくとも流量調整弁を制御する制御手段とを備えた構成としても良い。
【0016】
この構成では、蓄圧タンクからコンプレッサ下流側(吸気通路のうちのコンプレッサよりも下流側)へ空気を供給することで、アクセルが踏み込まれてから実際に吸入空気が増加してトルクが増加するまでの時間遅れ(いわゆるターボラグ)を小さくすることができる。しかも、活性炭を封入した蓄圧タンクを用いることで、蓄圧タンクの空気貯蔵量(貯蔵可能な空気量)を増加させることができるため、蓄圧タンクを小型化しながら蓄圧タンクからコンプレッサ下流側へ十分な空気を供給することが可能となり、省スペース化の要求を満たすことができる。また、一般的な排気タービン式過給機に比べて高価な電動過給機を搭載する必要がないため、低コスト化の要求を満たすことができると共に、消費電力を低減して燃費を節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の実施例1における過給機付きエンジン制御システムの概略構成を示す図である。
【図2】図2は蓄圧タンクの空気貯蔵量を説明する図である。
【図3】図3は蓄圧タンクの空気供給時間を説明する図である。
【図4】図4は過給アシスト制御が有効な回転速度領域を説明する図である。
【図5】図5は過給アシスト制御の実行条件を説明するタイムチャートである。
【図6】図6は過給アシスト制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図7は過給アシスト制御の実行例を示すタイムチャートである。
【図8】図8は蓄圧タンクの蓄圧と開放を繰り返したときの活性炭の温度変化を示すタイムチャートである。
【図9】図9は実施例2の過給機付きエンジン制御システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した幾つかの実施例を説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例1を図1乃至図8に基づいて説明する。
まず、図1に基づいて過給機付きエンジン制御システムの構成を概略的に説明する。
内燃機関であるエンジン11の吸気管12(吸気通路)の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。一方、エンジン11の排気管15(排気通路)には、排出ガスを浄化する三元触媒等の触媒16が設置されている。
【0020】
このエンジン11には、吸入空気を過給する排気タービン駆動式の過給機17が搭載されている。この過給機17は、排気管15のうちの触媒16の上流側に排気タービン18が配置され、吸気管12のうちのエアフローメータ14の下流側にコンプレッサ19が配置されている。この過給機17は、排気タービン18とコンプレッサ19とが一体的に回転するように連結され、排出ガスの運動エネルギで排気タービン18を回転駆動することでコンプレッサ19を回転駆動して吸入空気を過給するようになっている。
【0021】
吸気管12のうちのコンプレッサ19の下流側には、吸入空気を冷却するインタークーラ20と、スロットルバルブ23の上流側圧力(過給圧)を検出する過給圧センサ21が設けられている。この過給圧センサ21の下流側に、モータ22によって開度調節されるスロットルバルブ23と、このスロットルバルブ23の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ24とが設けられている。
【0022】
更に、スロットルバルブ23の下流側には、サージタンク25が設けられ、このサージタンク25には、スロットルバルブ23の下流側圧力(吸気圧)を検出する吸気圧センサ26が設けられている。また、サージタンク25には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド27が設けられ、エンジン11の各気筒には、それぞれ筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁28が取り付けられている。また、エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ29が取り付けられ、各気筒の点火プラグ29の火花放電によって筒内の混合気に着火される。
【0023】
また、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ30や、ノッキングを検出するノックセンサ31が取り付けられている。また、クランク軸32の外周側には、クランク軸32が所定クランク角回転する毎にパルス信号を出力するクランク角センサ33が取り付けられ、このクランク角センサ33の出力信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。
【0024】
更に、アクセルセンサ34によってアクセル操作量(アクセルペダルの踏込量)が検出され、ブレーキスイッチ35によってブレーキ操作が検出されると共に、車速センサ36によって車速が検出される。
【0025】
また、本実施例1では、吸気管12と排気管15との間に、空気を蓄える蓄圧タンク37が設けられ、この蓄圧タンク37内には、空気貯蔵量(貯蔵可能な空気量)を増加させるための活性炭が封入されている。吸気管12と蓄圧タンク37との間には、吸気管12のうちのコンプレッサ19よりも下流側(例えばインタークーラ20の下流側)から蓄圧タンク37へ空気を導入するための導入通路38が接続され、この導入通路38には、導入通路38を開閉する開閉弁39が設けられている。この開閉弁39は、例えば、常閉型の電磁弁で構成されている。尚、開閉弁39として、蓄圧タンク37から吸気管12へ空気が逆流することを阻止する逆止弁を用いるようにしても良い。
【0026】
一方、蓄圧タンク37と排気管15との間には、蓄圧タンク37から排気管15のうちの排気タービン18よりも上流側(以下単に「排気タービン18上流側」という)へ空気を供給するための供給通路40が接続され、この供給通路40には、供給通路40を流れる空気の流量を調整する流量調整弁41が設けられている。この流量調整弁41は、例えば、開度を調整可能な常閉型の電磁弁で構成されている。
【0027】
また、蓄圧タンク37には、蓄圧タンク37内の圧力を検出するタンク内圧センサ42が設けられ、排気管15には、排気タービン18上流側(排気管15のうちの排気タービン18よりも上流側)の排気圧力を検出する排気圧センサ43が設けられている。
【0028】
上述した各種センサの出力は、電子制御ユニット(以下「ECU」と表記する)44に入力される。このECU44は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御用のプログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて、燃料噴射量、点火時期、スロットル開度(吸入空気量)等を制御する。
【0029】
また、ECU44は、所定の運転状態(例えば開閉弁39を開弁してもドライバビリティ等に悪影響を及ぼさないような運転状態)で且つスロットルバルブ23の上流側圧力(過給圧)と蓄圧タンク37内の圧力との差が所定値以上のときに、開閉弁39を開弁して、吸気管12のうちのコンプレッサ19よりも下流側(例えばインタークーラ20の下流側)から蓄圧タンク37へ空気を導入する。
【0030】
この蓄圧タンク37には活性炭が封入されているため、図2に示すように、蓄圧タンク37は、活性炭が封入されていない場合に比べて、空気貯蔵量(貯蔵可能な空気量)が約3倍に増加する。更に、図3に示すように、蓄圧タンク37は、活性炭が封入されていない場合に比べて、流量調整弁41を全開状態(開度100%)にしたときの空気供給時間(排気タービン18上流側へ供給する空気の流量が0に低下するまでの時間)が約3倍の長さになる。
【0031】
更に、ECU44は、後述する図6の過給アシスト制御ルーチンを実行することで、エンジン11の急加速要求時に、燃料噴射量を増量補正すると共に、蓄圧タンク37から排気タービン18上流側へ空気を供給するように流量調整弁41を制御する過給アシスト制御を実行する。燃料噴射量を増量補正することで、排出ガスの空燃比をリッチにして排出ガス中の未燃成分(CO、HC等)を増加させることができ、この状態で、過給アシスト制御を実行することで、排気タービン18上流側で排出ガス中の未燃成分(CO、HC等)を燃焼させる後燃えを発生させて排出ガスのエネルギを増加させることができ、これにより、排気タービン18の回転速度(コンプレッサ19の回転速度)を速やかに上昇させて吸入空気の過給圧を速やかに上昇させることができ、アクセルが踏み込まれてから実際に吸入空気が増加してトルクが増加するまでの時間遅れ(いわゆるターボラグ)を小さくすることができる。
【0032】
ここで、図4に示すように、エンジン回転速度が所定回転速度(例えば1200rpm)よりも低い場合には、排気温度が低いため、過給アシスト制御を実行しても、後燃えが発生し難く、排気タービン18の回転速度を速やかに上昇させることが困難である。一方、エンジン回転速度が所定回転速度(例えば2500rpm)よりも高い場合には、過給アシスト制御を実行しなくても、排出ガスのエネルギが十分に大きくなって過給機17が十分に機能するため、過給アシスト制御を実行する必要がない。従って、過給アシスト制御は、所定回転速度領域(例えば1200〜2500rpmの領域)で有効となる。
【0033】
このような事情を考慮して、本実施例1では、図5に示すように、エンジン11の急加速要求時(例えばアクセル開度が所定値以上のとき)で且つエンジン回転速度が所定回転速度領域(過給アシスト制御が有効な回転速度領域)のときに過給アシスト制御を実行するようにしている。
【0034】
以下、ECU44が実行する図6の過給アシスト制御ルーチンの処理内容を説明する。
図6に示す過給アシスト制御ルーチンは、ECU44の電源オン期間中(イグニッションスイッチのオン期間中)に所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう制御手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、車速センサ36で検出した車速、アクセルセンサ34で検出したアクセル開度(アクセル操作量)、エアフローメータ14で検出した吸入空気量、クランク角センサ33で検出したエンジン回転速度等を読み込む。
【0035】
この後、ステップ102に進み、エンジン11の急加速要求時であるか否かを、例えば、アクセル開度が所定値(例えば90%)以上であるか否かによって判定する。尚、アクセル開度が所定値以上で且つアクセル開度の所定時間当りの増加量が所定値以上であるか否かによって、エンジン11の急加速要求時であるか否かを判定するようにしても良い。
【0036】
このステップ102で、急加速要求時であると判定された場合には、ステップ103に進み、エンジン回転速度が所定回転速度領域であるか否かを判定する。ここで、所定回転速度領域は、過給アシスト制御が有効な回転速度領域であり、例えば1200〜2500rpmの領域に設定されている。
【0037】
上記ステップ102で急加速要求時であると判定され、且つ、上記ステップ103でエンジン回転速度が所定回転速度領域であると判定された場合には、ステップ104に進み、タンク内圧センサ42で検出した蓄圧タンク37内の圧力と、排気圧センサ43で検出した排気タービン18上流側の排気圧力を読み込んだ後、ステップ105に進み、蓄圧タンク37内の圧力と排気タービン18上流側の排気圧力との差圧ΔPを算出する。
【0038】
この後、ステップ106に進み、蓄圧タンク37内の圧力と排気タービン18上流側の排気圧力との差圧ΔPが所定値(例えば20kPa)以上であるか否かを判定し、差圧ΔPが所定値以上であると判定された場合には、ステップ107に進み、過給アシスト制御により供給される空気を混合した後の排出ガスの空燃比が理論空燃比となるように、吸入空気量Gaと燃料増量比Z(%)とを用いて、次式により目標アシスト流量ΔGa(蓄圧タンク37から排気タービン18上流側へ供給する空気の目標流量)を求める。
ΔGa=Ga×Z/100
【0039】
この後、ステップ108に進み、蓄圧タンク37内の圧力と排気タービン18上流側の排気圧力との差圧ΔPと、目標アシスト流量ΔGaとに応じた流量調整弁41の目標開度をマップ又は数式等により算出することで、目標アシスト流量ΔGaを実現するのに必要な流量調整弁41の目標開度を設定する。
【0040】
蓄圧タンク37内の圧力と排気タービン18上流側の排気圧力との差圧ΔPと、流量調整弁41の開度に応じて、蓄圧タンク37から排気タービン18上流側へ供給する空気の流量が変化するため、蓄圧タンク37内の圧力と排気タービン18上流側の排気圧力との差圧ΔPと、目標アシスト流量ΔGaとを用いれば、目標アシスト流量ΔGaを実現するのに必要な流量調整弁41の目標開度を精度良く設定することができる。このステップ108の処理が特許請求の範囲でいう目標アシスト流量算出手段としての役割を果たす。
【0041】
ここで、流量調整弁41の目標開度のマップ又は数式等は、予め試験データや設計データ等に基づいて作成された空気流量特性(差圧ΔPと流量調整弁41の開度と空気流量との関係)に基づいて設定され、ECU44のROMに記憶されている。
【0042】
この後、ステップ109に進み、燃料増量比Zとなるように燃料噴射量を増量補正すると共に、流量調整弁41の開度を目標開度に制御することで蓄圧タンク37から排気タービン18上流側へ空気を供給するように流量調整弁41を制御する過給アシスト制御を実行する。
【0043】
その後、上記ステップ102で急加速要求時ではないと判定された場合、又は、上記ステップ103でエンジン回転速度が所定回転速度領域ではないと判定された場合、又は、上記ステップ106で蓄圧タンク37内の圧力と排気タービン18上流側の排気圧力との差圧ΔPが所定値よりも小さいと判定された場合には、ステップ110に進み、燃料噴射量の増量補正を停止すると共に、流量調整弁41を閉弁して過給アシスト制御を停止する。尚、過給アシスト制御の実行中にブレーキスイッチ35でブレーキ操作が検出された場合には、その時点で割り込み処理により流量調整弁41を閉弁して過給アシスト制御を停止する。
【0044】
以上説明した本実施例1の過給アシスト制御の実行例を図7のタイムチャートを用いて説明する。図7に示すように、まず、アイドル運転状態から運転者がアクセルを踏み込んだ時点t1 で、アクセル開度が増加し始める。この後、アクセル開度が所定値(例えば90%)以上で且つエンジン回転速度が所定回転速度領域(過給アシスト制御が有効な回転速度領域)に入った時点t2 で、燃料噴射量を増量補正すると共に、蓄圧タンク37から排気タービン18上流側へ空気を供給するように流量調整弁41を制御する過給アシスト制御を実行する。その後、エンジン回転速度が所定回転速度領域を通り過ぎた時点t3 で、燃料噴射量の増量補正を停止すると共に、流量調整弁41を閉弁して過給アシスト制御を停止する。
【0045】
このように、エンジン11の急加速要求時(例えばアクセル開度が所定値以上のとき)に、蓄圧タンク37から排気タービン18上流側へ空気を供給するように流量調整弁41を制御する過給アシスト制御を実行することで、排気タービン18上流側で排出ガス中の未燃成分(CO、HC等)を燃焼させる後燃えを発生させて排出ガスのエネルギを増加させることができ、これにより、排気タービン18の回転速度(コンプレッサ19の回転速度)を速やかに上昇させて吸入空気の過給圧を速やかに上昇させることができ、アクセルが踏み込まれてから実際に吸入空気が増加してトルクが増加するまでの時間遅れ(いわゆるターボラグ)を小さくすることができる。
【0046】
しかも、活性炭を封入した蓄圧タンク37を用いることで、蓄圧タンク37の空気貯蔵量(貯蔵可能な空気量)を増加させることができるため、蓄圧タンク37を小型化しながら蓄圧タンク37から排気タービン18上流側へ十分な空気を供給することが可能となり、省スペース化の要求を満たすことができる。また、一般的な排気タービン式過給機に比べて高価な電動過給機を搭載する必要がないため、低コスト化の要求を満たすことができると共に、消費電力を低減して燃費を節減することができる。
【0047】
図8に示すように、本発明者は、吸気管12から蓄圧タンク37への空気の導入(蓄圧)と、蓄圧タンク37から排気管15への空気の供給(開放)を所定周期で繰り返し、そのときの蓄圧タンク37内の活性炭の温度を測定する試験を行った。その結果、蓄圧タンク37の蓄圧と開放を比較的短い周期で繰り返しても、蓄圧タンク37内の活性炭の温度変化が2〜3℃程度であり、蓄圧タンク37の蓄圧性能(活性炭の吸着性能)に影響を及ぼすような温度上昇がないことが確認された。
【0048】
また、本実施例1では、エンジン11の急加速要求時で且つエンジン回転速度が所定回転速度領域(過給アシスト制御が有効な回転速度領域)のときに過給アシスト制御を実行するようにしたので、過給アシスト制御が有効な所定回転速度領域のみで過給アシスト制御を実行するようにでき、蓄圧タンク37内に蓄えた空気を無駄に使用することを防止して効率的に利用することができる。
【0049】
更に、本実施例1では、過給アシスト制御の際に、燃料噴射量を増量補正するようにしたので、燃料噴射量の増量補正により排出ガスの空燃比をリッチにして排出ガス中の未燃成分を増加させた状態で過給アシスト制御を実行することができ、後燃えを確実に発生させることができる。
【実施例2】
【0050】
次に、図9を用いて本発明の実施例2を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分には同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
【0051】
本実施例2では、図9に示すように、前記実施例1と同じように、吸気管12と蓄圧タンク37との間に導入通路38が接続され、この導入通路38に開閉弁39が設けられているが、蓄圧タンク37と吸気管12との間には、蓄圧タンク37から吸気管12のうちのコンプレッサ19よりも下流側(例えばスロットルバルブ23の下流側)へ空気を供給するための供給通路45が接続され、この供給通路45には、供給通路45を流れる空気の流量を調整する流量調整弁46が設けられている。
【0052】
そして、ECU44は、図示しない過給アシスト制御ルーチンを実行することで、エンジン11の急加速要求時に、蓄圧タンク37からスロットルバルブ23下流側(吸気管12のうちのスロットルバルブ23よりも下流側)へ空気を供給するように流量調整弁46を制御する過給アシスト制御を実行する。
【0053】
以上説明した本実施例2では、エンジン11の急加速要求時に、蓄圧タンク37からスロットルバルブ23下流側へ空気を供給するように流量調整弁46を制御する過給アシスト制御を実行することで、アクセルが踏み込まれてから実際に吸入空気が増加してトルクが増加するまでの時間遅れ(いわゆるターボラグ)を小さくすることができる。しかも、前記実施例1と同じように、活性炭を封入した蓄圧タンク37を用いることで、蓄圧タンク37の空気貯蔵量(貯蔵可能な空気量)を増加させることができるため、蓄圧タンク37を小型化しながら蓄圧タンク37からスロットルバルブ23下流側へ十分な空気を供給することが可能となり、省スペース化の要求を満たすことができる。また、一般的な排気タービン式過給機に比べて高価な電動過給機を搭載する必要がないため、低コスト化の要求を満たすことができると共に、消費電力を低減して燃費を節減することができる。
【0054】
尚、上記実施例2では、蓄圧タンク37から吸気管12のうちのスロットルバルブ23の下流側へ空気を供給するように供給通路45を接続するようにしたが、これに限定されず、例えば、蓄圧タンク37から吸気管12のうちのコンプレッサ19よりも下流側でスロットルバルブ23の上流側へ空気を供給するように供給通路45を接続するようにしても良い。
【0055】
その他、本発明は、図1及び図9に示すような筒内噴射式エンジンに限定されず、吸気ポート噴射式エンジンや、吸気ポート噴射用の燃料噴射弁と筒内噴射用の燃料噴射弁の両方を備えたデュアル噴射式のエンジンにも適用して実施できる。
【符号の説明】
【0056】
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気管(吸気通路)、15…排気管(排気通路)、17…過給機、18…排気タービン、19…コンプレッサ、23…スロットルバルブ、28…燃料噴射弁、29…点火プラグ、33…クランク角センサ、37…蓄圧タンク、38…導入通路、39…開閉弁、40…供給通路、41…流量調整弁、42…タンク内圧センサ、43…排気圧センサ、44…ECU(制御手段,目標アシスト流量算出手段)、45…供給通路、46…流量調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられた排気タービンで吸気通路に設けられたコンプレッサを駆動して吸入空気を過給する過給機を備えた内燃機関の吸気制御装置において、
活性炭を封入した蓄圧タンクと、
前記吸気通路のうちの前記コンプレッサよりも下流側から前記蓄圧タンクへ空気を導入するための導入通路と、
前記蓄圧タンクから前記排気通路のうちの前記排気タービンよりも上流側(以下単に「排気タービン上流側」という)へ空気を供給するための供給通路と、
前記導入通路を開閉する開閉弁と、
前記供給通路を流れる空気の流量を調整する流量調整弁と、
少なくとも前記流量調整弁を制御する制御手段と
を備えていることを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、内燃機関の加速要求時に前記蓄圧タンクから前記排気タービン上流側へ空気を供給するように前記流量調整弁を制御する過給アシスト制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、内燃機関の加速要求時で且つ内燃機関の回転速度が所定回転速度領域のときに前記過給アシスト制御を実行することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記過給アシスト制御の際に、燃料噴射量を増量補正することを特徴とする請求項2又は3に記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項5】
前記蓄圧タンク内の圧力を検出するタンク内圧センサと、
前記排気タービン上流側の排気圧力を検出する排気圧センサと、
前記蓄圧タンクから前記排気タービン上流側へ供給する空気の目標流量(以下「目標アシスト流量」という)を算出する目標アシスト流量算出手段とを備え、
前記制御手段は、前記過給アシスト制御の際に、前記蓄圧タンク内の圧力と前記排気タービン上流側の排気圧力との差圧と、前記目標アシスト流量とに基づいて、前記流量調整弁の開度を設定することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項6】
内燃機関の排気通路に設けられた排気タービンで吸気通路に設けられたコンプレッサを駆動して吸入空気を過給する過給機を備えた内燃機関の吸気制御装置において、
活性炭を封入した蓄圧タンクと、
前記吸気通路のうちの前記コンプレッサよりも下流側から前記蓄圧タンクへ空気を導入するための導入通路と、
前記蓄圧タンクから前記吸気通路のうちの前記コンプレッサよりも下流側へ空気を供給するための供給通路と、
前記導入通路を開閉する開閉弁と、
前記供給通路を流れる空気の流量を調整する流量調整弁と、
少なくとも前記流量調整弁を制御する制御手段と
を備えていることを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−184738(P2012−184738A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49658(P2011−49658)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】