説明

内燃機関の燃料噴射制御装置

【課題】燃料噴射ポートの壁流量が変動しても触媒床温を精度良く推定できる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供する。
【解決手段】吸気通路111の燃料噴射ポート111aへの燃料噴射量を制御する内燃機関の燃料噴射制御装置において、排気通路125に設けられた触媒127の触媒床温を推定する触媒床温推定手段11と、前記触媒床温に基づいて前記燃料噴射量を制御する制御手段11と、前記燃料噴射ポートの壁流量を推定する壁流量推定手段11と、を備え、前記触媒床温推定手段は、前記壁流量に応じて前記触媒床温を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の運転状態に応じて排気浄化触媒の触媒床温(以下、BED温ともいう)が過熱状態になるのを抑制するために、排気から触媒に与えられる熱量のみならず触媒反応による熱量に基づいて、燃料噴射量の増量制御を実行するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−60563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、燃料カット制御時や吸入空気量の急激な低下時には、吸気通路の燃料噴射ポートの壁面に付着した燃料(壁流)が未燃状態で触媒に流入するため、壁流量の大きさによっては、触媒床温の推定精度が低下し、あるいは、触媒床温が高くなり過ぎるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、燃料噴射ポートの壁流量が変動しても触媒床温を精度良く推定でき、あるいは、触媒床温が高くなり過ぎないようにすることができる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、燃料噴射ポートの壁流量を推定し、推定された壁流量に基づいて触媒反応の熱量を求め、触媒床温を補正する、あるいは、燃料カット制御時や吸入空気量の急激な低下時に、推定された壁流量に基づいて燃料増量を行なうことによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、燃料噴射ポートの壁流量を考慮して触媒反応の熱量、ひいては触媒床温が求められるので、触媒床温の推定精度が向上する。また、燃料噴射ポートの壁流量を考慮して、燃料カット制御時や吸入空気量の急激な低下時に燃料増量を行なうので、触媒床温が高くなり過ぎることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態を適用した内燃機関を示すブロック図である。
【図2】図1のエンジンコントロールユニットの燃料噴射制御の一例を示すフローチャートである。
【図3】図1の燃料噴射制御の基本的な時間的制御内容を示すタイムチャートである。
【図4】壁流量制御の内容を説明するためのグラフである。
【図5A】燃料カット時に壁流量補正を実行したときの推定BED温等を示すグラフである。
【図5B】燃料カット時に壁流量補正を実行しなかったときの推定BED温等を示すグラフである。
【図6A】エンジン負荷(吸入空気量)低下時に壁流量補正を実行したときの推定BED温等を示すグラフである。
【図6B】エンジン負荷(吸入空気量)低下時に壁流量補正を実行しなかったときの推定BED温等を示すグラフである。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る制御マップである。
【図8】本発明のさらに他の実施の形態に係る制御マップである。
【図9】本発明のさらに他の実施の形態に係る制御マップである。
【図10】本発明のさらに他の実施の形態に係る制御マップである。
【図11】本発明のさらに他の実施の形態に係る制御マップである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施の形態を適用した内燃機関を示すブロック図であり、火花点火式エンジンEGに本発明の燃料噴射制御装置を適用した例を説明する。
【0010】
図1において、エンジンEGの吸気通路111には、エアーフィルタ112、吸入空気流量を検出するエアフローメータ113、吸入空気流量を制御するスロットルバルブ114およびコレクタ115が設けられている。
【0011】
スロットルバルブ114には、当該スロットルバルブ114の開度を調整するDCモータ等のアクチュエータ116が設けられている。このスロットルバルブアクチュエータ116は、運転者のアクセルペダル操作量等に基づき演算される要求トルクを達成するように、エンジンコントロールユニット11からの駆動信号に基づき、スロットルバルブ114の開度を電子制御する。また、スロットルバルブ114の開度を検出するスロットルセンサ117が設けられて、その検出信号をエンジンコントロールユニット1へ出力する。なお、スロットルセンサ117はアイドルスイッチとしても機能させることができる。
【0012】
また、コレクタ115から各気筒に分岐した吸気通路の燃料噴射ポート111aに臨ませて、燃料噴射バルブ118が設けられている。燃料噴射バルブ118は、エンジンコントロールユニット11において設定される駆動パルス信号によって開弁駆動され、図外の燃料ポンプから圧送されてプレッシャレギュレータにより所定圧力に制御された燃料を燃料噴射ポート111a内に噴射する。本発明は、排気浄化触媒の触媒床温が過熱状態になるのを防止するために触媒床温が上昇したときに燃料を増量し、当該触媒床温を低下させる制御を実行する。この燃料増量制御の詳細は後述する。
【0013】
シリンダ119と、当該シリンダ内を往復移動するピストン120の冠面と、吸気バルブ121及び排気バルブ122が設けられたシリンダヘッドとで囲まれる空間が燃焼室123を構成する。点火プラグ124は、各気筒の燃焼室123に臨んで装着され、エンジンコントロールユニット11からの点火信号に基づいて吸入混合気に対して点火を行う。
【0014】
一方、排気通路125には、排気中の特定成分、たとえば酸素濃度を検出することにより排気、ひいては吸入混合気の空燃比を検出する空燃比センサ126が設けられ、その検出信号はエンジンコントロールユニット11へ出力される。この空燃比センサ126は、リッチ・リーン出力する酸素センサであっても良いし、空燃比をリニアに広域に亘って検出する広域空燃比センサであってもよい。
【0015】
また、排気通路125には、排気を浄化するための排気浄化触媒127が設けられている。この排気浄化触媒127としては、ストイキ(理論空燃比,λ=1、空気重量/燃料重量=14.7)近傍において排気中の一酸化炭素COと炭化水素HCを酸化するとともに、窒素酸化物NOxの還元を行って排気を浄化することができる三元触媒、或いは排気中の一酸化炭素COと炭化水素HCの酸化を行う酸化触媒を用いることができる。
【0016】
排気通路125の排気浄化触媒127の下流側には、排気中の特定成分、たとえば酸素濃度を検出し、リッチ・リーン出力する酸素センサ128が設けられ、その検出信号はエンジンコントロールユニット11へ出力される。ここでは、酸素センサ128の検出値により、空燃比センサ126の検出値に基づく空燃比フィードバック制御を補正することで、排気浄化触媒127の劣化等に伴う制御誤差を抑制する等のために(いわゆるダブル空燃比センサシステム採用のために)、下流側酸素センサ128を設けて構成したが、空燃比センサ126の検出値に基づく空燃比フィードバック制御を行なわせるだけで良い場合には、酸素センサ128を省略することができる。
【0017】
排気通路125の排気浄化触媒127の入口近傍には排気温度を検出する排気温度センサ140が設けられ、その検出信号はエンジンコントロールユニット11へ出力される。排気浄化触媒127の触媒床温は、この排気温度センサ140で検出された入口温度と、空燃比センサ126にて検出された排気中の空燃比による触媒反応熱と、排気温度センサ140などのセンサ応答遅れや排気浄化触媒127の過渡応答遅れなどによる補正値とに基づいて、エンジンコントロールユニット11に設定された所定の演算式により推定される。
なお、図1において129はマフラである。
【0018】
エンジンEGのクランク軸130にはクランク角センサ131が設けられ、エンジンコントロールユニット11は、クランク角センサ131から機関回転と同期して出力されるクランク単位角信号を一定時間カウントすることで、又は、クランク基準角信号の周期を計測することで、エンジン回転速度Neを検出することができる。
【0019】
エンジンEGの冷却ジャケット132には、水温センサ133が当該冷却ジャケットに臨んで設けられ、冷却ジャケット131内の冷却水温度Twを検出し、これをエンジンコントロールユニット11へ出力する。
【0020】
既述したように、各種センサ類113,117,126,128,131,133からの検出信号は、CPU,ROM,RAM,A/D変換器及び入出力インタフェース等を含んで構成されるマイクロコンピュータからなるエンジンコントロールユニット11に入力され、当該エンジンコントロールユニット11は、センサ類からの信号に基づいて検出される運転状態に応じて、スロットルバルブ114の開度を制御し、燃料噴射バルブ118を駆動して燃料噴射量と燃料噴射時期を制御する。
【0021】
また、排気浄化触媒127の触媒床温を推定し、所定の上限温度に達すると燃料噴射量を増量し、排気浄化触媒127の過熱を防止する。図3はこの制御内容の一例を示すタイムチャートであり、エンジン負荷が上昇して排気浄化触媒127の触媒床温(同図では触媒内部温度と称する)が増量開始クライテリアに達すると燃料噴射バルブ118からの燃料噴射量の増量制御を開始し、推定した触媒床温が増量開始クライテリア以下になるまで増量制御を継続することを示す。
【0022】
さて、燃料カット制御時や吸入空気量の急激な低下時には、吸気通路の燃料噴射ポート111aの壁面に付着した燃料が未燃状態で排気浄化触媒127に流入する。この壁流量は燃料カット制御や吸入空気量の急激な低下直前の燃料噴射量によって変動し、このため触媒床温の推定精度が低下する。すなわち、壁流量が多いと排気浄化触媒127に流入する未燃燃料HCが増加し、HCと触媒との発熱反応熱が増加するため、通常の推定温度より実際の温度が高くなる。
【0023】
図5B及び図6Bにこの様子を示す。図5Bに示すように、エンジン負荷の増加などによって燃料噴射量が増量されるとこれにともない壁流量も増加するが、時間tにて燃料カットがなされると燃料噴射ポート111aの壁面に付着した燃料が燃焼室123を介して排気浄化触媒127に流入し(同図に壁流量の低下にて示す)、この発熱反応熱により実際の触媒床温が推定温度に比べて高くなる。また、図6Bに示すように、エンジン負荷が増加すると燃料噴射量が増量されるのでこれにともない壁流量も増加するが、時間tにて負荷が急激に低下して吸入空気量が急激に低下すると燃料噴射ポート111aの壁面に付着した燃料が燃焼室123を介して排気浄化触媒127に流入し(同図に壁流量の低下にて示す)、この発熱反応熱により実際の触媒床温が推定温度に比べて高くなる。
【0024】
なお、燃料を噴射している間の壁流量は、燃料噴射バルブ118からの燃料噴射量と燃料消費量との差を演算することで求めることができる。燃料消費量は、たとえば空燃比センサ126の出力とエアフローメータ113による吸入空気量により求めることができる。また、燃料の噴射を停止している間の壁流量は、たとえば水温毎のブーストと気化割合のマップを用いて求めることができ、燃料噴射停止時の壁流量=前回壁流量×(1−壁流気化割合)となる。
【0025】
以下、燃料噴射ポート111aの壁流量を考慮した本例の燃料噴射量の制御手順について、図2を参照しながら説明する。
【0026】
排気浄化触媒127の過熱防止のための燃料噴射量の増量制御は、まずステップS1にて燃料カット制御又は吸入空気量の低下がされたか否かを判断する。燃料カット制御は、たとえばエンジン負荷がゼロでエンジン回転速度が所定値以上のときに成立し、エンジンコントロールユニット11の情報により取得される。また、吸入空気量の低下についてはエアフローメータ113からの検出信号により取得される。なお、吸入空気量の低下はアクセル開度センサの検出信号に代えることもできる。
【0027】
ステップS1で燃料カット制御又は吸入空気量の急激な低下が検出されない場合はステップS5へ進み、排気温度センサ140で検出された入口温度と、空燃比センサ126にて検出された排気中の空燃比による触媒反応熱と、排気温度センサ140などのセンサ応答遅れや排気浄化触媒127の過渡応答遅れなどによる補正値とに基づいて、エンジンコントロールユニット11に設定された所定の演算式により排気浄化触媒127の触媒床温を推定する。
【0028】
ステップS1で燃料カット制御又は吸入空気量の急激な低下が検出された場合にはステップS2へ進み、燃料噴射ポート111aの壁面に付着した燃料の壁流量を演算する。この壁流量は燃料カット直前又は吸入空気量の急激な低下直前における壁流量を演算する。上述したとおり、燃料を噴射している間の壁流量は、燃料噴射バルブ118からの燃料噴射量と燃料消費量との差を演算することで求めることができ、燃料消費量は、たとえば空燃比センサ126の出力とエアフローメータ113による吸入空気量により求めることができる。
【0029】
ステップS3では、ステップS2にて求められた壁流量と、予め実験的又はシミュレーションにより求められた壁流量と反応熱との関係をマップ化した制御マップとを用いて、この壁流量による反応熱を演算する。そして、ステップS4にて、ステップS3で求められた反応熱も加味し、排気温度センサ140で検出された入口温度と、空燃比センサ126にて検出された排気中の空燃比による触媒反応熱と、排気温度センサ140などのセンサ応答遅れや排気浄化触媒127の過渡応答遅れなどによる補正値とに基づいて、エンジンコントロールユニット11に設定された所定の演算式により排気浄化触媒127の触媒床温を推定する。
【0030】
ステップS6では、ステップS4又はS5で推定された触媒床温が、予め設定された増量開始閾値(図3の増量開始クライテリアに相当)以上か否かを判断し、推定された触媒床温が増量開始閾値以上の場合はステップS7に進んで、所定量だけ燃料噴射量を増量する。もし燃料カット条件が成立した状態でステップS7へ進んだ場合は、燃料カットが禁止される。推定された触媒床温が増量開始閾値未満の場合はステップS8により燃料噴射量を増量しない。このようにして、壁流量が、推定される触媒床温が閾値を超える程の壁流量(所定値を超える壁流量)になっている場合、燃料噴射量を増量補正し、あるいは燃料カットを禁止するとともに燃料噴射量を増量補正する。
【0031】
なお、推定された触媒床温が増量開始閾値以上と判断されステップS7にて燃料噴射量を増量したあとは、ステップS1へ戻り、ステップS6にて推定された触媒床温が増量開始閾値未満になるまで増量制御を継続し、推定された触媒床温が増量開始閾値未満になったらステップS8にて燃料噴射量の増量を解除する。燃料カットがステップS7で一旦禁止された場合も、燃料増量によって触媒床温が十分低下させられた上でステップS8へと進み、燃料カットを許可する。
【0032】
以上のとおり、本例の燃料噴射量の増量制御によれば、図4及び図5Aに示すように、時間tにて燃料カットがなされると、その直前に、エンジン負荷の増加などによって燃料噴射量が増量され壁流量が増加した状態であっても、燃料噴射ポート111aの壁面に付着した燃料の壁流量による反応熱の分も考慮して触媒床温を推定しているので、実際の触媒床温と近似する。これにより、排気浄化触媒127の過熱を防止することができる。また推定精度が高まるだけ燃料噴射量の増量を抑制でき、燃費が向上する。
【0033】
なお、触媒床温の推定値を壁流量に応じて修正する本例は、言い換えれば、燃料噴射ポートの壁流量を考慮して、燃料カット制御時や吸入空気量の急激な低下時に燃料増量を行なうことでもある。従って、(触媒床温を推定することなく)吸入空気量の急低下時において、前記壁流量が所定値よりも多いとき、燃料噴射量を増量補正する、あるいは、所定の燃料カット条件の成立時において、前記壁流量が所定値よりも多いとき、燃料カットを禁止するとともに、燃料噴射量を増量補正する、という構成を採用することもできる。
【0034】
上述した実施の形態では、燃料噴射量と燃料消費量との差を演算することで燃料噴射ポート111aの壁流量を求めた(図2のステップS2)が、以下の種々のエンジン制御により壁流量を補正することもできる。
【0035】
図7は、吸入空気量の急低下時あるいは燃料カット条件の成立時に、壁流燃料の触媒への流入によって生じる触媒反応熱が直前の排気温度によって変化することが分かったため、これを考慮して、吸入空気量の急激な低下(または燃料カット)を検出する直前の排気温度により、増量する燃料の量を補正するものである。何故このような現象が生じるのか詳しいことは不明であるが、排気温度が低いほど、同じ壁流量(触媒へ流入する燃料量が同じ)でも反応熱が大きくなって触媒床温が高めになるので、推定した触媒温度を高く補正し、あるいは燃料噴射量の増量補正量を増やす側に補正する。これにより、排気温度に拘らず触媒床温の推定精度が向上する。排気温度は排気温度センサ140で検出することができる。
【0036】
図8は、燃料カット制御においては燃料カット後にリカバーするための燃料噴射量の増量制御が実行されるため、これを考慮して、吸入空気量の急激な低下を検出する直前の燃料カットと次の燃料カットとの時間的間隔(燃料カット間隔)により壁流量を補正するものである。燃料カット間隔が短いと燃料カット後のリカバー増量が増加して壁流量も増加するため、燃料カット間隔が短いほど反応熱が大きくなる。したがって、燃料カット間隔が短いほど、壁流量を多めに推定(補正)することによって、燃料噴射量の増量補正量を多くする。これにより、燃料カットの時間間隔に拘らず触媒床温が高くなり過ぎることが防止される。
【0037】
図9は、車両の駆動源としてモータと内燃機関を備え、走行条件によって内燃機関を一時的に停止するハイブリッド車両などを想定したものである。走行中に内燃機関が再始動すると燃料噴射量を増量制御するため、そのエンジン停止間隔が短いと壁流量も増加する。したがって、エンジン停止間隔が短いほど反応熱が大きくなる。このことからエンジン停止間隔が短いほど、壁流量を多めに推定(補正)することによって、燃料噴射量の増量補正量を多くする。これにより、エンジンの停止間隔に拘らず触媒床温が高くなり過ぎることが防止される。
【0038】
図10は、吸気バルブ121と排気バルブ122の開閉タイミングが制御可能な内燃機関などを考慮したものである。吸気バルブ121と排気バルブ122との両方が開状態にあるバルブオーバーラップ中は燃焼ガスが吸気通路111へ廻り込み、燃料噴射ポート111aの壁面に付着した燃料を蒸発させる。すなわち、バルブオーバーラップ量が大きいほど壁流量は小さくなり、バルブオーバーラップ量が小さいほど壁流量は大きくなる。したがって、燃料カットや吸入空気量の急激な低下直前のバルブオーバーラップ量が小さいほど反応熱が大きくなる。このことからバルブオーバーラップ量が小さいほど、壁流量を多めに推定(補正)することによって、燃料噴射量の増量補正量を多くする。これにより、バルブオーバーラップ量に拘らず触媒床温が高くなり過ぎることが防止される。
【0039】
図11は、水温センサ133で検出されるエンジン冷却水の温度を考慮したものである。エンジン冷却水の温度が高いほど、燃料噴射ポート111aの壁面に付着した燃料を蒸発させ壁流量は小さくなり、エンジン冷却水が低いほど壁流量は大きくなる。したがって、燃料カットや吸入空気量の急激な低下直前のエンジン冷却水の温度が低いほど反応熱が大きくなる。このことからエンジン冷却水の温度が低いほど、壁流量を多めに推定(補正)することによって、燃料噴射量の増量補正量を多くする。これにより、エンジン冷却水の水温に拘らず触媒床温が高くなり過ぎることが防止される。
【0040】
上記エンジンコントロールユニット11,空燃比センサ126,排気温度センサ140は本発明に係る触媒温度推定手段に相当し、上記エンジンコントロールユニット11は本発明に係る制御手段,燃料カット間隔検出手段,エンジン停止間隔検出手段,バルブオーバーラップ量検出手段,壁流量推定手段に相当し、上記水温センサ133は本発明に係る冷却水温検出手段に相当する。
【符号の説明】
【0041】
EG…エンジン(内燃機関)
11…エンジンコントロールユニット
111…吸気通路
111a…燃料噴射ポート
112…エアーフィルタ
113…エアフローメータ
114…スロットルバルブ
115…コレクタ
116…スロットルバルブアクチュエータ
117…スロットルセンサ
118…燃料噴射バルブ
119…シリンダ
120…ピストン
121…吸気バルブ
122…排気バルブ
123…燃焼室
124…点火プラグ
125…排気通路
126…空燃比センサ
127…排気浄化触媒
128…酸素センサ
129…マフラ
130…クランク軸
131…クランク角センサ
132…冷却ジャケット
133…水温センサ
140…排気温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路の燃料噴射ポートへの燃料噴射量を制御する内燃機関の燃料噴射制御装置において、
排気通路に設けられた触媒の触媒床温を推定する触媒床温推定手段と、
前記触媒床温に基づいて前記燃料噴射量を制御する制御手段と、
前記燃料噴射ポートの壁流量を推定する壁流量推定手段と、を備え、
前記触媒床温推定手段は、前記壁流量に応じて前記触媒床温を補正する内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
排気温度を検出する排気温度検出手段を備え、
前記触媒床温推定手段は、さらに前記排気温度が低いほど推定触媒床温を高く補正する内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項3】
吸気通路の燃料噴射ポートへの燃料噴射量を制御する内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記燃料噴射ポートの壁流量を推定する壁流量推定手段と、
前記燃料噴射量を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、吸入空気量の急低下時において前記壁流量が所定値よりも多いときは、燃料噴射量を増量補正する内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項4】
吸気通路の燃料噴射ポートへの燃料噴射量を制御する内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記燃料噴射ポートの壁流量を推定する壁流量推定手段と、
前記燃料噴射量を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、所定の燃料カット条件の成立時において前記壁流量が所定値よりも多いときは、燃料カットを禁止するとともに、燃料噴射量を増量補正する内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
排気通路に設けられた触媒の触媒床温を前記壁流量に応じて推定する触媒床温推定手段を備え、
前記制御手段は、前記触媒床温に基づいて前記燃料噴射量を制御する内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
排気温度を検出する排気温度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記排気温度が低いほど前記燃料噴射量の増量補正量を増やす側に補正する内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
燃料カット制御の燃料カット間隔を検出する燃料カット間隔検出手段を備え、
前記壁流量推定手段は、検出された燃料カットの間隔に応じて前記壁流量を補正する内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記内燃機関が一時的に停止した間隔を検出するエンジン停止間隔検出手段を備え、
前記壁流量推定手段は、検出されたエンジン停止間隔に応じて前記壁流量を補正する内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
燃料カット制御における燃料カット直前のバルブオーバーラップ量を検出するバルブオーバーラップ量検出手段を備え、
前記壁流量推定手段は、検出されたバルブオーバーラップ量に応じて前記壁流量を補正する内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記内燃機関の冷却水温を検出する冷却水温検出手段を備え、
前記壁流量推定手段は、検出された冷却水温に応じて前記壁流量を補正する内燃機関の燃料噴射制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−7375(P2013−7375A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−3535(P2012−3535)
【出願日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】