説明

内部表面及び外部表面上に隣接導電性層を有する流体デバイス

【課題】キャディの使用により、分析機器との容易な相互接続を可能にする構成を備えている微小流体デバイスを提供する。また流体デバイスを形成するための方法を提供する。
【解決手段】流体デバイス10は、本体部11及び隣接導電性層100を含む。本体部11は、内部表面及び外部表面を有する。内部表面は、ウェル及び流体搬送造作25、たとえばウェルと流体が流れるように連通する微小造作を画定する。隣接導電性層100は、ウェルの側壁46S及び、外部表面、内部表面の選択された領域上に位置し、流体搬送造作25内の任意の流体と電気的に接続した状態で、外部表面44上に接触パッド領域が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、内部表面及び外部表面上に隣接導電性領域を有する流体デバイスに関する。より詳細には、本発明は、デバイス内に含まれている流体搬送造作と流体が流れるように連通するウェルの側壁上に少なくとも部分的に導電性領域が位置するデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
小型化へ向かうエレクトロニクス及びコンピュータ産業の傾向と相まって、化学及び生物化学分析及び機器の分野における小型化に向かう傾向も存在する。特に、化学及び生物化学分析を実施するために、微小流体技術が開発されてきた。微小流体システムは、従来の技法に比べて多くの利点を提供する。たとえば、微小流体システムは、通常、著しく少ない量の試薬のみ必要とし、より高速の処理能力、自動化に対するより高い適合性を有する。場合によっては、データ品質の改善をもたらすことができる。
【0003】
同様に、マイクロ電子産業のように、より低コストで多くの数量の微小流体デバイスを生産するために、製造技法を開発し、改良するための継続した努力が存在している。微小流体デバイス当たりのコストが下がるにつれて、そのデバイスを使い捨てアイテムとして使用することが経済的に可能になる。それに応じて、「ウェハレベル」の半導体処理技法に相当する微小流体技術用の製造プロセスを開発する必要性が存在する。このような「ウェハレベル」技術は、微小流体デバイス及び/又は微小流体デバイスの部品の生産に関して、順次処理ではなく同時処理を可能にし、それによって、単位当たりのコストを低減する。
【0004】
さらに、チップの、ハンドリング、試験、試験及び使用に関連する他の処理を容易にするために、チップがキャリアとともにパッケージされるマイクロ電子産業と相まって、微小流体デバイスを、キャディとともにパッケージすることができる。微小流体デバイスが、パッケージを形成するために、キャディと電気的に接続されるとき、結果として形成されるパッケージは、いくつかの目的で付加的な機器に接続される。たとえば、デバイスが、その意図する機能、たとえば化学的処理、分離等を実施できるように、パッケージは電極及び電圧源に対するデバイスの接続を容易にする。任意選択で、キャディは微小流体デバイスから取り外し可能とされる。
【0005】
たとえば、ラブオンチップ生物分析は、カバープレートと基板との間に挿入されたゲル充填マイクロチャネルと流体連通するウェルを含む微小流体デバイスを利用することができる。デバイスは、キャディとともにパッケージされる。試料がウェル内に装填されると、電圧源に接続された電極はパッケージと相互接続し得る。結果として、電界が適用されて、ゲルを介して試料の移動を誘導するための原動力がもたらされる。試料の異なる成分は、ゲルを介して異なる速度で移動するため、成分は、電気泳動的に分離される。試料成分が分離されると、電極は、再使用のために取り外され、たとえば、電気泳動分析を実施するために付加的な微小流体デバイスに相互接続される。
【0006】
微小流体デバイスは使い捨てであると考えられる場合があるが、分析機器又は分析機器と相互接続されるアイテムは、使い捨てであると考えられない。これは、微小流体デバイスの構築に関連するいくつかの問題を提起する。たとえば、微小流体デバイスのウェルから下流においてゲル充填マイクロチャネル内での電気泳動的な移動をもたらすために、電極及び/又はキャディの導電性部分が、ウェル内の流体と直接接触した状態で設置される。この手法は、いくつかの欠点を示す。汚染を回避するために、電極及び/又はキャディは、各分析の実行の合間に、電極上の何らかの残留物質を除去するために洗浄されなければならない。さらに、落差法を含む技術のようなある種の未来技術は、同じウェルと相互接続することができる機器を必要とする場合がある。微小流体デバイスのウェル内に電極及び/又はキャディの設置を必要とする配置構成は、このよな未来技術に関連する装置の設計を複雑にする傾向がある。
【0007】
したがって、電界を制御された仕方で適用し、微小流体デバイス内で流体の移動をもたらすことを確実とするために、微小流体デバイス上にオンデバイス接点及び導電性トレースを設ける必要がある。いくつかの特許及び出版物は、オンデバイス接点及び導電性トレースを採用する微小流体デバイスを開示する(例えば特許文献1参照)。マイクロチップの場合と同様に、オンデバイス接点及びトレースを形成するためのいくつかの方法が存在する。気相堆積技法は、微小流体の分野で公知である。たとえば、不透明材料として機能する金属化領域を含む微小流体蛍光検出システムを試験するときに使用するためのデバイスが開示されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】米国特許第6,068,752号(Dubrow他)
【特許文献2】米国特許第6,635,487号(Lee他)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それでも、微小流体デバイスの表面上の導電性領域に関連する改良された技術を提供するためのさらなる機会が存在する。詳細には、ウェハレベルの生産技法を容易にし、たとえば、キャディの使用により、分析機器との容易な相互接続を可能にする構成を備えている微小流体デバイスを提供する機会が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、本体部及び隣接導電性層を含む流体デバイスを提供する。本体部は、内部表面及び外部表面を有する。内部表面は、少なくとも、ウェル及び、ウェルと流体が流れるように連通する流体搬送造作を画定する。ウェルは、側壁及び、外部表面で終端する外部開口を有する。隣接導電性層は、流体搬送造作内の任意の流体と電気的に接続した外部表面上に接触パッド領域を形成するように、少なくとも、ウェルの側壁及び、内部表面と外部表面の選択された領域上に位置する。
【0010】
本発明は、微小流体用途に特に適する。たとえば、流体搬送造作を、電気泳動ゲルのような分離媒体を含む微小造作とすることができる。いずれにしても、パッド領域を、ウェル及び/又は流体搬送造作内の流体と全く接触しない電極との接触を可能にするように配置することができる。
【0011】
通常、本体部は、双方の内部表面が互いに向き合うように固定されている基板及びカバープレートを含む。流体搬送造作は、少なくとも部分的に、内部基板及びカバープレート表面の部分によって画定されている。カバープレートの内部表面は、外部表面に対向する。スルーホールは、外部開口から内部カバープレート表面上の内部開口まで延伸し、それによって、ウェルの少なくとも一部が画定される。外部開口は、通常、内部開口よりも大きい。任意選択で、外部開口から視線の届かない側壁の部分は実質的にない。
【0012】
同様に、通常、導電性層は金属を含む。さらに、又は、代替的に、導電性層は、組成の異なる複数の下位層を含む。さらに、導電性材料を、イオン注入の結果として形成することができる。
【0013】
任意選択で、デバイスをキャディとともにパッケージし、流体アセンブリを形成することができる。デバイス及びキャディは、永久的に又は取り外し可能に、互いに相互接続される。ある例では、キャディは、電極による接触パッド領域に対する電気的なアクセスを提供するように構築されているスルーホールを含む。キャディそれ自体は、接触パッド領域においてデバイスに電気的に接続される。
【0014】
また、本発明は流体デバイスを形成する方法を提供する。外部表面及び内部表面を有する本体部が設けられる。内部表面は、少なくとも、側壁及び、外部表面で終端する外部開口を有するウェル、並びにウェルと流体が流れるように連通する流体搬送造作を画定する。隣接導電性層は、少なくとも、ウェルの側壁、及び外部表面の選択された領域上に堆積され、流体搬送造作内の任意の流体と電気的に接続した、外部表面上の接触パッド領域が形成される。
【0015】
通常、層は、スパッタリング及び/又は蒸着を含む気相堆積技法によって堆積される。しかしながら、イオン注入技法も使用することができる。さらに、層は、複数の付着した本体部上に同時に堆積され、複数の流体デバイスを生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を詳細に述べる前に、本発明は、特定のマイクロ流体デバイス又は特定の形式の分析器具に限定されず、したがって、変更可能であることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を述べるためのものに過ぎず、限定することを意図しないことも理解されるべきである。
【0017】
さらに、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の冠詞「1つの」、「ある」及び「前記」は、文脈が明確に別途指示しない限り、単数と複数の両方の指示対象を含む。したがって、たとえば、「1つの導電性層」に対する言及は、複数の導電性層及び単一の導電性層を含み、「1つの基板」に対する言及は、単一の基板及び基板の組み合わせを含み、他も同様である。
【0018】
さらに、本発明の構成要素の間の特定の空間的関係を示すか、又は示唆する用語は、使用についての文脈が、明確に反対のことを指示しない限り、絶対的な意味ではなく、相対的な意味で解釈される。たとえば、ある表面に対する導電性層の空間的な向きを述べるのに使用される、用語「覆って」及び「上に」は、層が表面の上方に配置されていることを必ずしも示さない。したがって、表面を覆う導電性層を含むデバイスにおいて、導電性層は、デバイスの向きに応じて、表面の上方か、表面と同じ高さか、又は表面の下方に配置される。同様に、基板の「上部の」表面は、基板の向きに応じて、基板のその他の部分の上方か、基板のその他の部分と同じ高さか、又は基板のその他の部分の下方に位置する。
【0019】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、多くの用語についての言及がなされることになるが、用語は、用語が採用される文脈が明確に別途指示しない限り、以下の意味を有するよう定義されるものとする。
【0020】
本明細書で使用する用語「キャディ」は、流体デバイスとともにパッケージすることができるキャリア又は他のアイテムを指す。
【0021】
本明細書で使用する用語「流路」は、流体がそこに沿って進む、又は移動する経路又は進路を指す。流路を、微小流体デバイスの1つ又は複数の流体造作から形成することができる。
【0022】
本明細書で使用する用語「流体搬送造作」は、流体の流れを誘導する固体アイテム又はその一部分の配列を指す。本明細書で使用する場合、この用語は、毛細管、管類、チャンバ、容器、導管、チャネルを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用する用語「導管」は、1つ又は複数の壁によって形成され、そこを介して流体を搬送することができる入口開口と出口開口とを有する3次元包囲部を指す。用語「チャネル」は、表面の開いた溝又はトレンチを指すために本明細書で使用する。チャネルは、チャネルを覆う固体片と共に導管を形成する。
【0023】
用語「液密」は、物理的に接触状態にある2つの固体表面間の界面に流体が流れ込むことを防止するような、表面間の空間的な関係を述べるために本明細書で使用する。
【0024】
用語「視線」は、ある材料の堆積技法、たとえば材料供給源からの材料が表面に堆積される、スパッタリング及び蒸着のような気相堆積技法に対して必要とされる、遮るものの無い空間関係を述べるのに使用する。たとえば、用語「外部開口を介して視線がない」は、開口を介したこのような堆積技法による、ウェル内の側壁及び/又は別の所望の表面上での隣接層の形成に役立たない開口及び幾何形状を有するウェルを指す。
【0025】
したがって、用語「外部開口から視線がない側壁の部分が実質的に全くない」のような場合の用語「実質的に」は、堆積技法にとって役立たない場合があるが、側壁部分上での隣接層の形成を妨げるほどに十分な程度には堆積技法を妨げない部分を含むウェルの幾何形状を指す。用語「実質的な」及び「実質的に」を、他の文脈でも同じように使用する。
【0026】
接頭語「微小」は、おおよそマイクロメートルの寸法を有するか、又はおおよそマイクロリットルの容積を有するアイテムを指す。したがって、たとえば、用語「微小流体デバイス」は、マイクロメートル又はマイクロメートル以下の寸法の造作を有し、任意の数のプロセス、化学的プロセス又はその他のプロセスにおいて使用することができ、非常に少量の流体を含むデバイスを指す。こうしたプロセスは、電気泳動(たとえば、キャピラリー電気泳動すなわちCE)、クロマトグラフ(たとえば、μLC)、スクリーニングと診断(たとえば、ハイブリダイゼーション又は他の結合手段を使用した)、化学合成及び生化学合成(たとえば、ポリメラーゼ鎖反応、すなわち「PCR」を使用して行うことができるDNA増幅)、分析(たとえば、ペプチド消化による)を含むが、それらに限定されない。微小流体デバイスの造作は、その特定の使用に適合される。たとえば、分離プロセス、たとえばCEにおいて使用される微小流体デバイスは、直径が約1μm〜200 μm、通常、直径が10 μm〜75μmで、かつ長さが約0.1〜50 cmのマイクロチャネル(包囲される時、すなわちカバープレートが、マイクロチャネルを含む第1の基板表面上の所定の場所にある時に、本明細書で「微小導管」と称する)を含む。(後述のように、本発明のデバイスの造作は任意の都合のよい形状であり、そのため、用語「直径」は、マイクロチャネルが円形断面を有することを必ずしも示さない)。化学合成及び生化学合成、たとえばDNA増幅において使用される微小流体デバイスは、一般に、約1nl〜約100 nl、通常、約10 nl〜20 nlの容積を有する反応領域(包囲される時、すなわち、やはり第2の基板が、マイクロチャネルを含む第1の基板表面上の所定の場所にある時に、本明細書で「反応チャンバ」と称する)を含む。接頭語「微小」を含む他の用語、たとえば「微小な造作」は、同様に解釈される。
【0027】
一般に、本発明は、包括的に、ウェル及びウェルに流体が流れるように連通した流体搬送造作を含む本体部を有する流体デバイスに関する。本体部は、外部表面及び内部表面を有し、内部表面は、少なくともウェルと流体搬送造作を画定する。ウェルは、側壁及び、外部表面で終端する外部開口を有する。内部表面及び外部表面の選択された領域上、たとえば、少なくとも、ウェルの側壁上には、隣接導電性層が位置する。層は、外部表面上に接触パッド領域を形成し、流体搬送造作内の任意の流体との電気的な接続をもたらす。
【0028】
デバイスの本体部は構成が変わる場合があるが、本体部は、通常、基板及びカバープレートを含み、それぞれは、他方に対向する内部表面を有し、少なくとも部分的に流体搬送造作を画定する。また、カバープレートは、内部表面、及び外部開口から内部カバープレート表面上の内部開口まで延伸するスルーホールを有する。ウェルを、少なくとも部分的に、スルーホールによって画定することができる。
【0029】
図1は、単純化された形態の例示的な微小流体デバイスを示す。同じ部品が同じ数字で参照する本明細書で参照する全ての図と同様に、図1は、必ずしも一定の縮尺に従っておらず、ある寸法を、提示を明確にするために誇張する。図1Aに示すように、デバイス10は、それぞれ14及び16で示す第1及び第2の実質的に平坦な対向する表面を備えている基板12によって部分的に形成される本体部11を含み、デバイスを介して搬送される流体に関して実質的に不活性な材料からなる。基板12は、その上部表面14において分離マイクロチャネル18の形態の流体搬送造作を有する。分離マイクロチャネル18は、第1端に上流末端20及び対向端に下流末端22を有する。単一の分離マイクロチャネルを示すが、デバイスはまた、複数の分離マイクロチャネルを有し得る。
【0030】
分離マイクロチャネルを、他の流体搬送造作と同様に、レーザ融除、又は以下で説明されるか、もしくは当該技術分野で知られている他の技法によって形成することができる。分離マイクロチャネル18を、全体が延びた形態で示すが、この実施形態及び他の実施形態についての分離マイクロチャンネルは、真っ直ぐな経路、蛇行経路、螺旋経路、又は任意の曲がりくねった経路のような種々の構成を有し得ることが容易に理解されよう。さらに、上述したように、分離マイクロチャネル18を、半球、矩形、偏菱形等を含む、いろいろなチャネル幾何形状で形成することができ、チャネルを、広範な範囲のアスペクト比で形成することができる。
【0031】
また、本体部11はカバープレート40を含む。カバープレート40を、基板12と接合する任意の適した材料から形成することができ、基板12に関して相補的に形成することができる。図1Aに示すように、また、カバープレートは、それぞれ42及び44で示される第1及び第2の実質的に平坦な対向する表面を有する。カバープレート40の接触表面42は、表面間の液密な接触を達成するために、基板12の接触表面14に密着して相互接続される。
【0032】
カバープレート40は種々の造作を含む。図示するように、それぞれ46及び48で示す第1及び第2のスルーホールは、カバープレートを介して延伸するように設けられている。図示するように、スルーホール46は、表面42と44との間を連通するように、側壁46Sに沿って、表面44上の開口46Eから表面42上の開口46Iまで延伸する。同様に、スルーホール48は、表面42と44との間を連通するように、側壁48Sに沿って、表面44上の開口48Eから表面42上の開口48Iまで延伸する。以下で説明するように、デバイスが組み立てられるときに、これらのスルーホールはウェルを画定する。
【0033】
一般に、スルーホール46及び48を、スルーホールが画定するウェルの機能に関する本発明の要求に応じて種々の幾何形状とすることができる。図1に示すように、スルーホール46及び48は、ほぼ同一の幾何形状及び寸法を有する。スルーホールはそれぞれ、表面44上に大きな四角形の開口46E及び48E並びに小さな四角形の開口46I及び48Iを有する。しかしながら、四角形状の開口は必須ではない。例示的な代替的な開口形状は、円形、三角形、五角形、六角形、楕円形等を含む。いずれにしても、スルーホールが、軸対称であり、かつ表面42及び44に関して実質的な直交性を示すことが一般に好ましいが、必須ではない。以下で説明するように、スルーホールの幾何形状は、導電性層の形成のために採用される技法に応じて選択される。
【0034】
図1B及び図1Cに示すように、基板12及びカバープレート40は、表面14が表面42に対して液密で対向して配置されるように、実質的に固定される。結果として、内部カバープレート表面42の一部分及び基板12の内部表面内のマイクロチャネル18によって画定されている分離導管25が、デバイス10内に形成される。スルーホール46及び48は、分離導管25に連通するように、それぞれ上流末端20及び下流末端22の上に配置されている。結果として、各スルーホールは、少なくとも部分的にウェル50及び60を画定する。ウェル50及び60は、それぞれ末端20及び22に位置し、分離導管25に流体が流れるように連通する。
【0035】
カバープレート40は、当該技術分野で公知の、いくつかの手段の任意のものによって、表面14の上に位置合わせされる。小片同士を押し付けるために、たとえば、外部手段(クリップ、引張ばね又は関連するクランプのような)を使用することによって、内部手段(雄雌結合のような)を使用することによって、化学的手段(接着剤又は溶接のような)を使用することによって、圧力密閉技法を使用することができる。陽極接合又は溶融接合のような他の密閉技法も利用することができる。しかしながら、本明細書で述べる全ての実施形態と同様に、圧力密閉技法は、約100メガパスカルまでの、通常、約0.5〜約40メガパスカルのデバイス内部の流体圧力下で、接触表面が液密接触状態を維持することを可能にする。
【0036】
隣接導電性層100及び200もまた示す。導電性層100は、側壁46Sに沿って、表面44上の接触パッド領域102から微小導管25の上流末端20まで延伸する。同様に、導電性層200は、側壁48Sに沿って、表面44上の接触パッド領域202から微小導管25の下流末端22まで延伸する。
【0037】
動作時、分離導管25は、分子量、極性、疎水性、他の特性に応じて、流体試料成分を分離するように適合されている分離カラムを含むか、又は分離カラムとして機能する。そのようなカラムは、いくつかの知られている液体分離媒体の任意の媒体を含む。たとえば、当該技術分野で知られている電気泳動ゲルを、分離される試料に応じて選択することができる。このようなゲルには、アガロース又はポリアクリルアミドベースの材料が含まれる。一般に、アガロースゲルは、ヌクレオチド材料の小断片を含む試料の場合を除いて、より一般的に使用される。ポリアクリルアミドゲルはまた、ペプチド試料の電気泳動に広く使用される。
【0038】
電気泳動ゲル以外の材料を使用することもできる。たとえば、約100 m2/g〜約500 m2/gの表面積を示すクロマトグラフィ充填材料を使用することもできる。さらに、又は代替的に、導管の内部表面を、選択された特性に応じて、流体試料の成分の分離を実施するために、当該技術分野で公知の技法を使用して、化学的に、機械的に、その他の方法で改質することができる。たとえば、Brennen他に対する米国特許第6,919,162号は、レーザ融除された大表面積マイクロチャネルを記載し、Nelson他に対する米国特許第5,770,029号は、大表面積構造を使用する集積化試料濃縮化手段を可能にする電気泳動デバイスを記載し、Frechet他に対する米国特許第5,334,310号は、その場で生成されるポリマーを内部に有するマイクロチャネルを記載する。したがって、導管の内部表面は、充填材料に関連するのと同様の吸収特性及び表面積のような表面特性を示す。
【0039】
いずれにしても、分離導管25及び/又はウェル50、60に含まれる任意の流体が、ウェル50及び60内に位置する導電性層100及び200の部分のみに接触することを確実にするように注意が払われる。すなわち、デバイス内の流体は、接触パッド領域102及び104から物理的に隔離される。ヌクレオチド部分及び/又はペプチド部分のような生体分子を含む試料は、上流ウェル50内に装填される。それぞれ、接触パッド領域102及び202において、導電性層100と導電性層200の間に、電位が印加される。結果として、上流ウェル50から分離導管25を介して下流ウェル60にまで延伸する流路内で、電気泳動的移動をもたらすための原動力が生成される。結果として、試料は、その成分に分離される。
【0040】
本発明とともに使用される材料は、本発明が適切に機能するために望ましい物理的特徴及び化学的特徴に関して選択される。例えば、微小流体デバイスの基板は、マイクロメートル又はマイクロメートル以下の寸法である、高精細度(又は、高「分解能」)の造作、すなわち微小チャネル、チャンバ等の形成を可能にする材料から製造されている。すなわち、材料は、所望の小型表面造作を有するために、微細加工が可能でなければならない。
【0041】
基板は、基板の表面内か、表面上か、及び/又は、表面を介して造作を形成するような仕方で、微細加工可能であることが好ましい。これを、材料除去技法、たとえばドライエッチング、ウェットエッチング、レーザエッチング、レーザ融除等を使用して行うことができる。しかしながら、いずれの材料除去技法も、制御されない材料除去を避けるために、慎重に採用されるべきである。たとえば、エッチングプロセスに伴う場合がある、制御されないアンダーカットを避けるために、エッチング組成物及び/又はエッチングパラメータの慎重な選択が必要とされる場合がある。
【0042】
他の技法によって、微細構造を基板の表面上に形成することもできる。たとえば、造作を、基板の表面上に成形し、及び/又はエンボス加工することができる。さらに、付加的な技法を使用することもできる。材料を基板に添加して、たとえば、光画像形成可能なポリイミドを使用してガラス基板の表面上にポリマーチャネルを形成することによって、微細構造を形成することができる。また、使用される全てのデバイス材料は、流体試料を導入、搬送、分離、処理又は分析するために使用される時、接触する任意の物質に関して(たとえば、pH、電界等に関して)、化学的に不活性で、物理的に安定であるべきである。
【0043】
本デバイスの本体部を形成するために適した材料は、ポリマー材料、半導体、セラミック(酸化アルミニウム等を含む)、ガラス、複合材、それらの積層体を含むが、それらに限定されない。一般に、用語「セラミック」、「半導体」、「ポリマー」は、それらの通常の意味で本明細書において使用される。たとえば、用語「半導体」は、絶縁体より高いが、良導体より低い導電率を有する種々の固体結晶物質のうちの任意のものを示すのに使用される。例示的な半導体は、Si及びGeのような元素固体、GaAsのような化合物半導体を含む。用語「セラミック」は、無機化合物、たとえばアルミニウム、ジルコニウム、シリコンの、酸化物、チッ化物、炭化物のような単一金属酸化物又は混合金属酸化物を、高温で加熱することによって通常作られ、剛性があり、もろく、耐熱性があり、耐食性がある誘電体材料を示すのに使用される。セラミック材料を、単結晶、多結晶、ガラスの場合のように、アモルファスとすることができる。
【0044】
ポリマー材料は、本明細書では特に好ましく、通常、ホモポリマー又はコポリマー、自然発生的又は合成、架橋結合であるか又は非架橋結合である、直鎖又は分岐鎖及び/又は環式である、有機ポリマーである。例示的なポリマーには、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリフルオロカーボン、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)(ABS)、ポリメチルメタクリレートのようなアクリレート及びアクリル酸ポリマー、他の置換ポリオレフィン及び非置換ポリオレフィン、それらのコポリマーが含まれるが、それらに限定されない。場合によっては、ハロゲン化ポリマーを使用することができる。例示的な市販のフッ素化ポリマー及び/又は塩素化ポリマーには、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、それらのコポリマーが含まれる。
【0045】
一般に、カバープレート及び基板の少なくとも1つは、微小流体デバイスが、生物学的流体を搬送するのに採用される時に、耐生物付着性のポリマーから形成される。ポリイミドは、特に重要であり、多くの環境において、非常に望ましい基板材料であることがわかっている。ポリイミドは、たとえばKapton(登録商標)(デラウェア州ウィルミントンのDuPont)及びUpilex(登録商標)(日本のUbe Industries, Ltd.)という商品名で市販されている。ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)もまた、所望の耐生物付着特性を示す。
【0046】
また、本発明のデバイスを、「複合材」すなわち異なる材料からなる組成物から製造することができる。複合材を、ブロック複合材、たとえばA-B-Aブロック複合材、A-B-Cブロック複合材等とすることができる。代替的には、複合材を、材料の異種の組み合わせ、すなわち材料が別個の相によって異なる、又は異なる材料の同種の組み合わせとすることができる。本明細書で使用する場合、用語「複合材」を、「積層体」の複合材を含むように使用する。「積層体」は、同じか、又は異なる材料のいくつかの異なる結合層から形成されている複合材料を指す。他の好ましい複合基板には、ポリマー積層体、ポリマー−金属積層体、たとえば、銅で被覆されたポリマー、セラミック−イン−金属の複合材、ポリマー−イン−金属の複合材が含まれる。1つの好ましい複合材は、Kapton(登録商標)のようなポリイミドの第1の層を、同じくDuPont(デラウェア州ウィルミントン)から入手可能なKJ(登録商標)として知られている熱接着形態のポリイミドの第2の薄層とともに同時に押出し成形することによって形成されるポリイミド積層体である。
【0047】
微小流体デバイスの形態の本発明の実施形態は、微細成形及び鋳造技法、エンボス加工法、表面微細機械加工、バルク微細機械加工を含むが、それらに限定されない任意の都合の良い方法を使用して製造することができる。後者の技法は、通常、ウェット化学エッチング又は反応性イオンエッチング(「RIE」)を使用するバルク材料内への直接エッチングによる微細構造の形成を含む。表面微細機械加工は、基板の表面上に堆積した膜からの製造を含む。
【0048】
本微小流体デバイスを製造するための好ましい技法はレーザ融除である。レーザ融除では、強力な紫外光の短パルスが、材料の薄い表面層に吸収される。レーザ融除技法が使用される時、レーザは、除去される材料に応じて選択されなければならない。たとえば、ガラスを気化するのに必要とされるエネルギーは、通常、有機材料の場合に必要とされるエネルギーの5〜10倍である。レーザ融除は、通常、F2型、ArF型、KrCl型、KrF型、XeCl型の、又は固体Nd-YAG型又はTiサファイア型のエキシマレーザのような高エネルギー光子レーザの使用を含む。しかしながら、実質的に同じ光学波長とエネルギー密度を有する他の紫外光源もまた使用される。レーザ融除技法は、たとえば、Znotins他による(1987)「Laser Focus Electro Optics」 pp.54-70によって、またSchantz他に対する米国特許第5,291,226号及び第5,305,015号に記載されている。ある材料に対する好ましいパルスエネルギーは、約100ミリジュール/平方センチメートルより大きく、パルス継続時間は、約1マイクロ秒より短い。これらの条件下で、強力な紫外光は、基板表面の化学結合を光解離させる。吸収された紫外エネルギーは小さな容積の材料に集中するため、解離した断片を急速に加熱し、断片を基板表面から押し出す。これらのプロセスは急速に起こるため、熱が周辺の材料に伝播する時間はない。結果として、周辺領域は、溶解せず、又はその他の損傷を受けない。
【0049】
使用される製造技法は、造作の精密な位置合わせ「微小アライメント」を可能とするように、十分に高い精細度の造作、すなわち微小スケール部品、チャネル、チャンバ等をもたらさなければならず、すなわち、レーザ融除された造作は、精密にかつ正確に位置合わせされ、たとえば相補的なマイクロチャネル同士の位置合わせ、突出部と嵌合する窪みとの位置合わせ、溝と嵌合する隆起部との位置合わせ等を含む。
【0050】
本発明のデバイスの基板を互いに対して固定するために、液密圧力シーリング技法を採用することができる。場合によっては、部品を互いに付勢するのに(クリップ、引張ばね、又は関連するクランプ装置のような)外部手段を使用することができる。はめ込み継手のような内部手段又は溶接のような化学的手段もまた、有利に利用することができる。同様に、基板間にシールを設けることができる。いくつかの材料のうちの任意のものをシールを形成するのに使用することができる。硬化可能な質量の形態のような接着剤を、たとえば液体又はゲルとして、基板間に塗布し、硬化条件にさらし、基板間に接着性ポリマー層を形成することができる。付加的な接着剤、たとえば感圧接着剤又は溶媒含有接着溶液もまた、使用することができる。例えば陽極接合又は融着接合のような他の方法を、基板間のシールを形成するのに使用することができる。
【0051】
一般に、いくつかの材料のうちの任意の材料を、導電性層を形成するのに使用することができる。通常、導電性層は1つ又は複数の金属を含む。用語「金属」は、通常光沢のある表面を有する、ある種類の元素のうちの任意の元素を一般に表し、一般に、熱及び電気の良導体であり、薄いシート又はワイヤへと成形することができる。たとえば、導電性層は、固体の銅又は銅粒子を含有する複合成分からなる。
【0052】
本発明において使用するのに適したさらなる金属には、たとえば、金、銀、ニッケル、錫、クロム、タングステン、モリブデン、鉄、アルミニウム、亜鉛、チタン、白金、それらの組み合わせ、並びに真鍮、青銅、スチールのような上記のうちの任意の合金が含まれる。通常、より大きな造作分解能のために、小さな粒の金属が好ましい。
【0053】
さらに、又は代替的に、導電性層を形成するために、非金属導電性材料を使用することができる。例示的な非金属導電性材料には、炭素、たとえばグラファイト又はアセチレンブラック、インジウム錫酸化物及び窒化チタンのような導電性セラミック、ポリピロール及びポリアニリンのような導電性ポリマーが含まれる。さらに、導電性材料を、イオン注入の結果として形成することもできる。たとえば、導電性材料はポリシリコン又はドープされたシリコンを含む。
【0054】
ある例では、導電性層は、そのバルクと異なる成分の表面層を有する。たとえば、導電性層は、複数の組成的に異なる下位層を含む。ある例では、表面層は、金、金/ニッケル、金/オスミウム、金/パラジウムのような導電性が高い皮膜からなり、又はオスミウム、クロム、窒化チタンのような耐磨耗性の皮膜でめっきされている。いずれにしても、本発明の基板の導電性層は、同じ材料又は異なる材料からなる。
【0055】
また、本発明は、本明細書で開示する流体デバイスを形成する方法を提供する。通常、上述した本体部が提供される。隣接導電性層は、少なくとも、ウェルの側壁及び外部表面の選択された領域上に堆積され、流体搬送造作内の任意の流体と電気的に接続した状態で、外部表面上に接触パッド領域が形成される。
【0056】
本発明と共に使用するのに適したプロセスは、複数のデバイスを並列に形成するためのウェハレベル用途に適応している。例示的なウェハレベルプロセスにおいて、分割されると、複数のデバイス用の基板を提供する単一の基板ウェハを設けることができる。それに応じて、複数の流体搬送造作は、アレイで配列され、共面の前部表面を有する。単一カバーを、単一ウェハ上に設置し、取り付けられた本体部のアセンブリを形成する。終了すると、導電性層は適切な表面上に形成される。アセンブリは、その後、個々の流体デバイスを形成するために切断される。
【0057】
導電性層を、本体部が組み立てられた後に形成することができる。しかしながら、導電性層を、組み立てられる前に、少なくとも部分的に、本体部の部品上に形成することができる。さらに、導電性層を、直列に、又は並列に形成することができる。
【0058】
本発明のデバイスの導電性層を形成するのに、いくつかの技法のうちの任意の技法を利用することができる。一般に、金属化は、たとえばスパッタリング又は蒸着のような気相堆積プロセス、あるいは、電気めっきのような液相堆積プロセスを含むいくつかの技法のうちの任意の技法によって達成される。こうした金属化技法において、タイコート及び/又はシードコートが利用されることがある。非金属導電性層は、当該技術分野で公知の、いくつかの技法のうちの任意の技法によって形成される。ある例では、イオン注入技術を有利に利用することができる。
【0059】
先に説明したように、本発明は、外部表面上に接触パッド領域102を設けるために、少なくとも、ウェルの側壁及び外部表面上に隣接導電性層100を含む。図2は、シャドウマスク300を使用する本発明の例示的なプロセスを示す。図2Aでは、デバイス10の部分を断面図で示す。デバイス10は、基板12上に液密の状態で固定されているカバープレート40から形成されている本体部11を含む。ウェル50は、側壁46Sに沿って開口46Eから開口46Iまで延伸し、微小導管25に連通する。シャドウマスク300は、外部表面44上に配置される。
【0060】
図2Bは、ターゲット400が、導電性層100を形成するための金属供給源として使用されるスパッタリング堆積プロセスを示す。図示するように、マスク300は、本体部11とターゲットとの間に挿入されている。ターゲット400からスパッタリングされた金属は、マスク300の表面302、並びに表面44の露出した部分、側壁46S、微小導管25上に堆積する。結果として、接触パッド領域102とウェル50の内部との間の電気的な接続をもたらす隣接層100が形成される。
【0061】
特に、層を堆積するのに、気相堆積技法又は他の視線プロセスが利用されるとき、ウェルの幾何形状は、こうした層の形成に関連する重要な因子を示すことがある。図2に示すように、開口46Eは、開口46Iよりも大きな断面積を有する。したがって、スルーホール46の側壁46Sは、90°寄りも小さなテーパ角度を示す。テーパ角度が90°に近づくにつれて、表面44及び側壁46Sにわたって、及び微小導管25内に延伸する実質的に隣接する層を堆積させることが益々難しくなる。90°以上のテーパ角度によって、視線堆積プロセスを利用して隣接層を形成することが可能でなくなる場合がある。
【0062】
したがって、テーパ角度を、隣接層の要求に応じて選択することができる。浅い角度は、側壁上の導電性層の厚みが、外部表面上の導電性層の厚みとほぼ同じ割合で増加することを可能にする傾向がある。しかしながら、浅い角度は、空間的な制約の観点から問題になる場合がある。したがって、ある範囲のテーパ角度が好ましいことを当業者は認識するであろう。たとえば、ある例では、本発明に関して、約5°〜約60°のテーパ角度が利用される。ある例では、約20°〜約60°のテーパ角度が採用される。45°のテーパ角度が、多くの用途に対して最適である場合がある。
【0063】
図3は、フォトマスキング及びエッチングを採用し、外部表面44上に接触パッド領域102を含む隣接層100を形成する本発明の例示的なプロセスを示す。図3Aに示すように、図2に示す本体部と同様の本体部11を、マスキング無しの状態で採用する。結果として、全ての露出した表面上に、予備の導電性層100’が形成される。このような層は、タイコート及び/又はシードコートを含み得る。その後、予備の導電性層100’の選択的な部分が、エッチングによって所望パターンで選択的に除去される。図3Bに示すように、フォトマスク300によって、層100’の除去されるべきでない部分を保護することによって、これが行われる。フォトマスキング技術は、当該技術分野で公知であり、たとえば、フォトレジスト、積層体フォトレジスト、及び/又は感光性ポリマーを伴う。ハードマスクを使用することもできる。図3Bに示すように、導電性層100’の適切な部分が除去されると、層100がフォトマスク300の下に残る。フォトマスク300を、溶剤、たとえばアセトン又はn-メチルピロリドン、ドライストリップ、たとえばアッシュ、又は何らかの他のクリーナによって除去することができる。図3Cは、結果得られるパターニングされた導電性層100を示す。
【0064】
図4は、外部表面44上に接触パッド領域102を含む隣接層100を形成するリフトオフ技法を採用する本発明の例示的なプロセスを示す。図4Aに示すように、図3Aに示す本体部と同様の本体部11を採用することができるが、ここではマスクを使用する。図3に関連して説明したマスキング技術のうちの任意の技術を、露出表面をパターニングするのに使用することができる。マスク300が、所定の場所に配置されると、予備の導電性層100’を形成するために、金属化が行われる。その後、図4Bに示すように、フォトマスク300、及びフォトマスク300上の予備層100’の部分が除去され、結果として隣接層100が得られる。
【0065】
図5は、隣接層100を形成するのに、イオン注入技法を採用する本発明の例示的なプロセスの図を示す。図5Aに示すように、このプロセスは、シャドウマスクの代わりに注入用マスク300を使用する以外は、図2に示す方法と同じ方法で始まる。図5Bに示すように、イオンが、注入されて、表面44の露出部分、側壁46S、微小導管25が隣接層100に変化される。
【0066】
したがって、隣接導電性層を形成するために、半導体製造及びパッケージ技術において知られている他の技法を利用可能であることが明らかである。たとえば、導電性層を形成するために、適切な表面を濡らすリフローされたはんだ材料を利用するスクリーン印刷技術が使用される。さらに、誘電体層の間に導電性層を挟むこと、導電性層を埋めること、複数の導電性層を使用することが可能である。こうした例では、ウェハボンディング、ガラスフリット、誘電体堆積、他のプロセスを採用することができる。上述した方法で調製された導電性層で開始して、誘電体層を、堆積し、その後、導電性層を誘電体層上に形成することができる。
【0067】
導電性層が、流体デバイス内の流体試料から物理的に隔離されている接触パッド領域を提供するのに役立つ点で、本発明が、当該技術分野で公知の流体デバイスに比べて改善を示すことが明らかである。各トレースは、ウェルの領域から離れたチップ上に位置する隔離されたパッド領域にウェル領域を接続する。パッドの位置はデバイス表面上の何れとすることもできる。図6は、外部表面44上に接触パッド領域102を形成するための導電性層100が堆積される前(図6A)及び堆積された後(図6B)の、16個のウェル50を有する例示的なデバイスを平面図で示す。
【0068】
通常、本発明のデバイスの外部表面上の接触パッド領域は、規則正しい配列、すなわち直線格子、平行ストライプ、螺旋等のようなアレイで配列される。たとえば、デバイスは、四角形前部表面及び/又は接触パッド領域の線形アレイを有し、すなわち複数の同一線上の接点が、等距離の隣接接点を有する。別の例として、デバイスは、矩形前部表面及び接触パッド領域の直線アレイを有する。図6の場合、接触パッド領域102は、3つの直線アレイを形成し、そのうちの2つは、1つに対して垂直に向く。
【0069】
先に説明したように、キャディを本発明のデバイスと共に使用することが有利である。ある例では、キャディは、接触パッド領域に対する電極の電気的なアクセスをもたらすように構築されている。さらに、又は代替的に、キャディをデバイスに電気的に接続することができる。このようなキャディは、本発明のデバイスから取り外し可能であり、又は本発明のデバイスに恒久的に固着される。使い捨てデバイスに恒久的に固着されるキャディは、それ自体、使い捨て可能である。
【0070】
図7は、キャディ500とともにパッケージされる図1のデバイスの一部分を断面図で示す。図示するように、キャディ500は、デバイス10の表面44に相互接続し、502及び550で示す複数のスルーホールを含む。接触スルーホール502は、接触パッド領域102と位置合わせされ、電極600の接触パッド領域へのアクセスをもたらすように機能する。ウェルのスルーホール550は、ウェル50と整列し、ウェル50に対するアクセスの妨害が回避される。一般に、これらのスルーホールは、穿孔、レーザ穿孔、エッチング、射出成形等の当該技術分野で公知の任意の技法を利用して形成される。
【0071】
また、図8は、デバイスの接触パッド102に電気的に接続されたキャディ500とともにパッケージされた図1のデバイスの一部分を断面図で示す。一般に、図8のキャディ500は、キャディが、共に、デバイス10の表面44に相互接続する点で、図7に示すキャディと同様である。しかしながら、図8のキャディ500は接触スルーホールを含まない。代わりに、導電性の経路504が、キャディの外部表面508上のキャディ端子506との、接触パッド領域102の電気的な接続をもたらすのに有効な電気的な配線を提供する。たとえば、図の形態で提示されるか、スルーホール550の側壁100にわたって延伸するか、又はその両方の、このような電気配線をキャディ内に埋めることができる。キャディ端子506は露出しているため、電極600は、キャディ端子506との容易な相互接続が提供される。
【0072】
キャディについての電気的な配線の考慮すべき問題は、一般に、デバイスについての考慮すべき問題と同じである。たとえば、キャディ上での電気的な配線は、ウェル内の流体試料から物理的に隔離されているが、流体試料と電気的に接続されている接触パッド領域をもたらすのに役立つ場合がある。さらに、デバイス上で導電性層を形成するために述べた技法のうちの任意の技法は、キャディ上に導電性層を形成するのに使用することができる。たとえば、キャディ及びデバイスは、ウェハレベルプロセスにおいて、同時に金属化することができる。しかしながら、デバイス及びキャディの電気的な配線は、異なる技法を含んでいてもよい。たとえば、金属テープ又は導電性テープが、キャディ上に設置されて、キャディがデバイスと電気的に接続されてもよい。
【0073】
本発明の変形形態は、本明細書に含まれる開示に鑑みて、当業者には明らかであろう。たとえば、本発明のデバイスは、デバイスの意図される使用に応じて特定の造作を包含するか、又は排除するように構成される。デバイスが、生物体液用途を意図しない場合、デバイスは、耐生物付着性材料を必要としない。さらに、本発明は、大きさによって影響を受けず、ほとんどあらゆる寸法の、微小流体デバイス又はその他のデバイスに組み込むことができる。さらに、図1の流体搬送微小造作を、一般に、長方形断面領域を有するものとして示したが、造作は、任意の特定の形状又は幾何形状に限定されない。いずれにせよ、本発明は、基板上の微小チャネルを含む微小流体用途に限定されない。たとえば、毛細管、管類、他の流体搬送技術を使用することができる。本発明のさらなる変形形態は、本発明の精神から逸脱することなく、日常の実験によって発見され得る。
【0074】
本発明を、本発明の好ましい特定の実施形態に関連して述べてきたが、上記説明は、例示的に示すだけであり、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。先に述べた発明から逸脱しない多くの代替的な形態及び等価の形態が存在する。たとえば、本発明の任意の特定の実施形態、たとえば本明細書の任意の図面に示す実施形態を、他の実施形態の造作を包含するか、又は排除するように変更することができる。本発明の範囲内にある他の態様、利点、変更は、本発明が関係する技術分野の熟練者には明らかであろう。
【0075】
本明細書中で言及する全ての特許及び特許出願は、参照することによりその全体を本明細書に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1A】本発明の例示的な微小流体デバイスの分解図である。
【図1B】本発明の例示的な微小流体デバイスの断面図である。
【図1C】本発明の例示的な微小流体デバイスの平面図である。
【図2A】シャドウマスクを採用する本発明の例示的なプロセスを示す図である。
【図2B】シャドウマスクを採用する本発明の例示的なプロセスを示す図である。
【図3A】フォトマスク及びエッチング技法を採用する本発明の例示的なプロセスを示す図である。
【図3B】フォトマスク及びエッチング技法を採用する本発明の例示的なプロセスを示す図である。
【図3C】フォトマスク及びエッチング技法を採用する本発明の例示的なプロセスを示す図である。
【図4A】リフトオフ技法を採用する本発明の例示的なプロセスを示す図である。
【図4B】リフトオフ技法を採用する本発明の例示的なプロセスを示す図である。
【図5A】イオンイン注入技法を採用する本発明の例示的なプロセスを示す図である。
【図5B】イオンイン注入技法を採用する本発明の例示的なプロセスを示す図である。
【図6A】導電性層が堆積される前の16個のウェルを有する例示的なデバイスの平面図である。
【図6B】導電性層が堆積された後の16個のウェルを有する例示的なデバイスの平面図である。
【図7】電極によって、デバイスの接触パッド領域に対する電気的なアクセスを提供するように構築されたスルーホールを含むキャディとともにパッケージされる図1のデバイスの一部分を示す断面図である。
【図8】デバイスの接触パッドに電気的に接続されたキャディとともにパッケージされた図1のデバイスの一部分を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体デバイス(10)であって、
外部表面(44)及び内部表面とを有する本体部(11)と、該内部表面が、少なくとも、側壁(46S)及び外部開口(46E)を有するとともに前記外部表面(44)で終端するウェル(50)、並びに該ウェル(50)と流体が流れるように連通する流体搬送造作(25)を画定し、
前記流体搬送造作(25)内の任意の流体と電気的に接続した状態で、前記外部表面(44)上に接触パッド領域(102)が形成されるように、少なくとも、前記ウェル(50)の前記側壁(46S)及び前記外部表面(44)の選択された領域上に位置する隣接導電性層(100)とを備えている流体デバイス。
【請求項2】
前記本体部(11)が、
内部表面(14)を有する基板(12)と、
前記外部表面(44)に対向する内部表面(42)、及び前記外部開口(46E)から前記内部カバープレート表面(42)上の内部開口(46I)まで延伸するスルーホール(46)を有するカバープレート(40)とを備え、
さらに、前記内部カバープレート表面(42)及び前記内部基板表面(14)が、互いに対向して固定され、前記流体搬送造作(25)が、少なくとも部分的に、前記内部基板表面(14)及び前記内部カバープレート表面(42)の部分によって画定され、前記ウェル(50)が、少なくとも部分的に、前記スルーホール(46)によって画定されている請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項3】
前記流体搬送造作(25)が微小造作である請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項4】
前記微小造作が分離媒体を含む請求項3に記載の流体デバイス。
【請求項5】
前記分離媒体が電気泳動ゲルを含む請求項4に記載の流体デバイス。
【請求項6】
前記基板(12)及び前記カバープレート(40)の少なくとも一方がポリマーを含む請求項2に記載の流体デバイス。
【請求項7】
前記導電性層(100)が金属を含む請求項2に記載の流体デバイス。
【請求項8】
前記導電性層(100)が異なる組成の複数の下位層を含む請求項2に記載の流体デバイス。
【請求項9】
前記導電性材料がイオン注入により形成されている請求項2に記載の流体デバイス。
【請求項10】
前記スルーホール(46)の前記外部開口(46E)が前記内部開口(46I)より大きい請求項2に記載の流体デバイス。
【請求項11】
前記外部開口(46E)を介する視線がない前記側壁(46S)の部分が実質的に全くない請求項10に記載の流体デバイス。
【請求項12】
請求項1に記載の流体デバイス(10)とともにパッケージされているキャディ(500)を備えている流体アセンブリ。
【請求項13】
前記キャディ(500)が、電極(600)によって前記接触パッド領域(102)に対する電気的なアクセスをもたらすように構築されているスルーホール(502)を含む請求項12に記載の流体アセンブリ。
【請求項14】
前記キャディ(500)が、前記接触パッド領域(102)において前記デバイス(10)に電気的に接続されている請求項12に記載の流体アセンブリ。
【請求項15】
前記キャディ(500)が、請求項1に記載の流体デバイス(10)から取り外し可能である請求項12に記載の流体アセンブリ。
【請求項16】
流体装置であって、
外部表面(44)及び内部表面を有する本体部(11)と、該内部表面が、少なくとも、側壁(46S)及び外部開口(46E)を有するとともに、前記外部表面(44)で終端するウェル(50)、並びに該ウェル(50)と流体が流れるように連通する流体搬送造作(25)を画定し、
前記流体搬送造作(25)内の任意の流体と電気的に接続した状態で、前記外部表面(44)上に接触パッド領域(102)が形成されるように、少なくとも、前記外部表面及び前記内部表面の選択された領域上に位置する隣接導電性層(100)と、
電圧源と電気的に接続した状態にあり、前記ウェル(50)及び/又は前記流体搬送造作(25)内のいずれの流体とも接触することなく前記接触パッド領域(102)に接触する電極(600)とを備えている流体装置。
【請求項17】
流体デバイス(10)を形成する方法であって、
(a)本体部(11)を設け、該本体部が外部表面(44)及び内部表面とを有し、該内部表面が、少なくとも、側壁(46S)及び外部開口(46E)を有するとともに、前記外部表面(44)で終端するウェル(50)、並びに該ウェル(50)と流体が流れるように連通する流体搬送造作(25)を画定し、
(b)少なくとも、前記ウェル(50)の前記側壁(46S)及び前記外部表面(44)の選択された領域上に隣接導電性層(100)を形成し、それによって、前記流体搬送造作(25)内の任意の流体と電気的に接続した状態で、前記外部表面(44)上に接触パッド領域(102)を形成することを含む方法。
【請求項18】
前記ステップ(b)が、気相堆積技法によって実施される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記気相堆積技法がスパッタリング及び/又は蒸着を含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ステップ(b)がイオン注入技法によって実施される請求項17に記載の方法。
【請求項21】
複数の取り付けられた本体部(11)が前記ステップ(a)において設けられ、前記ステップ(b)が全ての取り付けられた本体部について同時に実施される請求項17に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−256261(P2007−256261A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−45(P2007−45)
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【Fターム(参考)】