制御装置
【課題】駆動源が停止している停止期間にバッテリから放電される自己放電量を、現在の車両位置における停止期間の気温の予測値に基づいて算出し、算出した自己放電量および必要な出力電力に基づいて、電池の残存容量の使用範囲下限を算出し、この算出値に基づいてバッテリの残存容量を制御する技術において、気温を予測するための記憶容量を節約する。
【解決手段】車両に搭載された制御装置は、車両から離れた位置に設置されるセンタから、現時点における車両の位置を含む地域における気温の情報を有する気象情報マップを繰り返し受信し(ステップ210〜250)、最後に受信した気象情報マップに基づいて、車両の駆動源が停止している停止期間の気温を予測する。
【解決手段】車両に搭載された制御装置は、車両から離れた位置に設置されるセンタから、現時点における車両の位置を含む地域における気温の情報を有する気象情報マップを繰り返し受信し(ステップ210〜250)、最後に受信した気象情報マップに基づいて、車両の駆動源が停止している停止期間の気温を予測する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車両に搭載されるバッテリの残存容量を制御する制御装置
本発明は、車両に搭載されるバッテリの残存容量を制御する制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるバッテリの残存容量を制御する車載用の制御装置の技術において、駆動源(エンジン、モータジェネレータ等)が停止している停止期間の経過後にエンジンを始動するのに必要な出力電力と、エンジンが停止している停止期間にバッテリから放電される自己放電量とを、現在の車両位置における停止期間の気温の予測値に基づいて算出し、算出した自己放電量および必要な出力電力に基づいて、電池の残存容量の使用範囲下限を算出し、この算出値に基づいてバッテリの残存容量を制御する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−253287公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、発明者の検討によれば、上記のような技術は、以下のような点で問題がある。まず、車両がどの位置に停止されるかは車両の仕向け地域、車両の使用態様によって様々なので、あらかじめ世界各地の気象情報を車載機に記録しておかなければならず、記憶容量が膨大になってしまう。
【0005】
また、現在の車両位置における停止期間の気温を予測し、それを利用するようになっているので、車両のエンジンが停止している状態で、運搬等により車両が移動してしまった場合、暖かい地域から冷たい地域への移動を行うと、エンジンの起動が出来なくなる危険がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、駆動源が停止している停止期間にバッテリから放電される自己放電量を、現在の車両位置における停止期間の気温の予測値に基づいて算出し、算出した自己放電量および必要な出力電力に基づいて、電池の残存容量の使用範囲下限を算出し、この算出値に基づいてバッテリの残存容量を制御する技術において、気温を予測するための記憶容量を節約することを第1の目的とする。
【0007】
また、従来、車両に搭載されるバッテリの残存容量を制御する車載用の制御装置の技術において、にエンジンを始動するのに必要なバッテリの必要残存容量と現実の必要残存容量との比較に基づいて、エンジンが始動できなくなってしまうことを防ぐための技術において、車両のエンジンが停止している状態で、運搬等により車両が移動してしまった場合でも、エンジンの起動が出来なくなる可能性を低下させることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第1の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、車両に搭載されるバッテリの残存容量を制御する制御装置であって、前記車両から離れた位置に設置されるセンタから、現時点における車両の位置を含む地域における気温の情報を有する気象情報マップを繰り返し受信する取得手段と、前記取得手段が最後に受信した気象情報マップに基づいて、前記車両の駆動源が停止している停止期間の気温を予測する気温予測手段と、前記気温予測手段が予測した気温に応じて、前記停止期間に前記バッテリから放電される自己放電量を算出し、算出した前記自己放電量に応じて、前記バッテリの残存容量の使用範囲下限を算出する残存容量下限算出手段と、前記残存容量下限算出手段が算出した前記使用範囲下限算出値に基づいて、前記バッテリの残存容量を制御する充放電制御手段と、を備えた制御装置である。
【0009】
このように、制御装置は、車両から離れた位置に設置されるセンタから、現時点における車両の位置を含む地域における気温の情報を有する気象情報マップを繰り返し受信し、最後に受信した気象情報マップに基づいて、車両の駆動源が停止している停止期間の気温を予測する。このようになっていることで、制御装置が車両の世界各地の気象情報マップを記憶しておく必要がなくなり、記憶容量の節約になる。
【0010】
また、上記第2の目的を達成するための請求項2に記載の発明は、車両に搭載されるバッテリの残存容量を制御する制御装置であって、前記車両のエンジンの停止中において、前記車両から離れた位置に設置されるセンタから、現時点における車両の位置を含む地域における気温の情報を有する気象情報マップを繰り返し受信する取得手段と、前記車両のエンジンが停止している停止期間において、前記取得手段が最後に受信した気象情報マップに基づいて、前記停止期間の気温を繰り返し算出する気温算出手段と、前記車両のエンジンが停止している停止期間において、前記気温算出手段が予測した気温に応じて、前記エンジンの始動に必要な前記バッテリの必要残存容量と、現在の前記バッテリの残存容量との比較に基づいて、エンジンを始動できなくなるほどバッテリの残存容量が低下することを防ぐよう、前記エンジンを始動させるか、または、前記エンジンを始動させるよう、前記車両のユーザに通知する充電手段と、を備えた制御装置である。
【0011】
車両が停止中に移動させられて、暖かい地域から冷たい地域へ移動させられた場合を考えると、特許文献1の技術ならば、その移動を反映しない必要残存容量(実際よりも低くなってしまっている)に基づいて充電ルーチンが実行され、その結果、エンジンを始動しても始動できなくなってしまう可能性があった。
【0012】
しかし、上記請求項2のように、車両のエンジンが停止中でも、車両の位置の変化に応じて気象情報マップおよびそれに基づく気温を更新するので、充電手段で用いる必要残存容量が、車両の移動を反映したものとなる。したがって、車両が停止中に移動させられて、暖かい地域から冷たい地域へ移動させられても、それに応じて必要残存容量が大きくなるよう更新されるので、エンジンを始動できなくなるほどバッテリの残存容量が低下する前に、エンジンを始動して充電することができる。
【0013】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る通信システムの全体構成図である。
【図2】制御装置1の構成図である。
【図3】(a)は気象情報マップの一例であり、(b)はエンジン起動電流パターンを示すマップであり、(c)はSDRマップの一例である。
【図4】気象情報更新処理のフローチャートである。
【図5】メインルーチンを示すフローチャートである。
【図6】等価回路を示す説明図である。
【図7】SDR更新ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】R更新ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】(a)はセル起電力マップであり、(b)は使用範囲下限と劣化指標との相関を示すマップであり、(c)はRsマップの一例であり、(d)はRctマップの一例である。
【図10】Rct更新ルーチンを示すフローチャートである(実施例1)。
【図11】Rs更新ルーチンを示すフローチャートである(実施例1)。
【図12】充電ルーチンを示すフローチャートである(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る通信システムについて説明する。図1に示すように、本実施形態の通信システムは、ハイブリッド自動車10に搭載される車載システム2〜8と、車両10から離れた位置に設置されるセンタ20と、車両10のユーザが携帯する携帯端末30と、を備えている。
【0016】
制御装置1は、エンジン2とモータジェネレータ3とを駆動源とする上記ハイブリッド自動車4に搭載され、モータジェネレータ3との間で充放電を行う車両走行用のバッテリ5の残存容量を制御する。ハイブリッド自動車10は、エンジン2、モータジェネレータ3、インバータ6、動力分割統合装置7、変速伝達装置8およびバッテリ5を備える周知の構造をなしている。
【0017】
ここで、ハイブリッド自動車10の作動について説明する。まず、ハイブリッド自動車10の発進時または加速時などには、モータジェネレータ3が、バッテリ5からの放電を受けて電気モータとして機能しモータトルクを発生する。そして、このモータトルクが動力分割統合装置7にてエンジントルクと統合されてタイヤ9に伝達されることにより、走行トルクのアシストが行われる。
【0018】
また、エンジン2の起動時にも、モータジェネレータ3が、バッテリ5からの放電を受けて電気モータとして機能しモータトルクを発生する。そして、このモータトルクが動力分割統合装置7を介してエンジン2に伝達されることにより、エンジン2がクランキングされて起動する。
【0019】
また、ハイブリッド自動車10の減速時などには、余分のエンジントルクが動力分割統合装置7にて分割されてモータジェネレータ3に伝達される。これにより、モータジェネレータ3は発電機として機能して電力を発生し電池の充電を行う。なお、バッテリ5が満充電状態などで充電できない場合、余分のエンジントルクはタイヤ9に伝達されて、機械式ブレーキなどにより消費される。
【0020】
バッテリ5は、図2に示すように、60個のリチウムイオン電池の単位セル11を直列に配置した組電池であり、6個の単位セル11を1グループとするモジュール12に分割されている。すなわち、バッテリ5は、10個のモジュール12により構成されている。
【0021】
制御装置1は、インバータ6とバッテリ5との間に介在する。この制御装置1は、個々の単位セル11の電圧を監視するセル監視回路13、バッテリ5の状態を制御する電池ECU110、モータジェネレータ3の作動を制御するHV車両制御ECU15、位置検出器16、通信端末17等を有する。
【0022】
セル監視回路13は、個々のモジュール12に配置されている。セル監視回路13は、個々の単位セル11の両端が接続されて単位セル11の電圧を検出する。これにより、セル監視回路13は、モジュール12を構成する個々の単位セル11の電圧がセル電圧上限とセル電圧下限との範囲内にあるか否かを監視するとともに、単位セル11同士の電圧のばらつきが所定の範囲内に収まるように、個々の単位セル11の電圧を調整することができる。
【0023】
電池ECU14は、中央処理装置(CPU)、記憶装置、入力装置、出力装置などを具備するコンピュータを有する。そして、電池ECU14は、各種信号が入力されるとともに、記憶された各種のルーチンを実行して各種信号を合成、出力することによりバッテリ5の状態(例えば、残存容量)を制御する。
【0024】
電池ECU14は、個々のモジュール12の両端が接続されて、個々のモジュール12の電圧を計測するための信号が入力される。これにより、電池ECU14は、バッテリ5全体の電圧Vを計測することができ、この計測値に基づいてバッテリ5の残存容量SOCを算出することができる。さらに、電池ECU14は、組電池を構成する個々のモジュール12の電圧が上限と下限との範囲内にあるか否かを監視することができ、モジュール12同士の電圧のばらつきが所定の範囲内に収まるように、個々のモジュール12の電圧を調整することができる。
【0025】
また、電池ECU14は、個々のセル監視回路13から過充放電検出信号線21が接続されて、過充放電検出信号を検出することができる。ここで、過充放電検出信号とは、個々の単位セル11の電圧がセル電圧上限以上またはセル電圧下限以下であることを検知するための信号であり、個々の単位セル11の電圧がセル電圧上限以上またはセル電圧下限以下になったときにセル監視回路13から出力される。
【0026】
また、電池ECU14は、インバータ6とバッテリ5との間に流れる電流を計測するための電流センサ22から電流検出信号線23が接続されて、電流検出信号が入力される。ここで、電流検出信号とは、インバータ6とバッテリ5との間に流れる電流Iを計測するための信号である。
【0027】
また、電池ECU14は、バッテリ5の温度(以下、電池温度と呼ぶ)を計測するためにバッテリ5に取り付けられたバッテリ温度センサ25から電池温度検出信号線24が接続されて、電池温度検出信号が入力される。ここで、電池温度検出信号とは、電池温度を計測するための信号である。
【0028】
また、電池ECU14は、バッテリ5の近傍の環境温度を計測するための環境温度センサ26から環境温度検出信号線27が接続されて、環境温度検出信号が入力される。ここで、環境温度検出信号とは、バッテリ5の近傍の環境温度を計測するための信号である。
また、電池ECU14は、HV車両制御ECU15からの通信線28により、後記する最低気温の予測値または平均気温の予測値が入力される。
【0029】
そして、電池ECU14は、これらの各種の計測値や入力値に基づいて、後記するメインルーチン、SDR更新ルーチン、R更新ルーチン、Rct更新ルーチン、Rs更新ルーチンおよび充電ルーチンを実行する。これらの実行により、電池ECU14は、各種の算出、更新を行うとともに各種の信号を合成して、HV車両制御ECU15に出力する。これにより、残存容量SOCが制御される。
【0030】
また、電池ECU14は、バッテリ5に交換、修理などの手入れを行う目安としての劣化指標SOHを算出する。
【0031】
HV車両制御ECU15は、中央処理装置(CPU)、記憶装置(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)、入力装置、出力装置などを具備するコンピュータを有する。そして、HV車両制御ECU15は、電池ECU14から各種の信号(例えば、後記するSOC下限の算出値)が入力されるとともに、各種の制御信号を合成してインバータ6へ出力することによりモータジェネレータ3の作動を制御する。これにより、HV車両制御ECU15は、残存容量SOCを制御する充放電制御手段として機能する。
【0032】
また、HV車両制御ECU15は、後述する気象情報マップ(図3(a)参照)から、エンジン2が停止している停止期間の平均気温および最低気温を予測し、これらの予測値を電池ECU14に出力する。すなわち、HV車両制御ECU15は、停止期間の平均気温を予測する平均気温予測手段、および停止期間の最低気温を予測する最低気温予測手段としても機能する。
【0033】
位置検出器17は、ハイブリッド自動車10の現在位置を特定し、特定した現在位置情報を通信端末17に出力する装置であり、例えばGPS受信機であってもよい。
【0034】
通信端末17は、HV車両制御ECU15から入力される各種信号(例えば、劣化指標SOHの値)を、センタ20、携帯端末30、インターネット接続パソコンなどに送信するための周知の無線通信回路を備えると共に、中央処理装置(CPU)、記憶装置(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)、入力装置、出力装置などを具備するコンピュータを有する。また、ユーザからの指令信号(例えば、残存容量SOCを上昇させるための充電指令信号)を受信するとともにHV車両制御ECU15へ出力する。
【0035】
センタ2は、中央処理装置(CPU)、記憶装置(ROM、RAM、フラッシュメモリ、磁気記憶媒体等)、入力装置、出力装置、通信装置等を具備するコンピュータを備え、この通信装置によって車両10の制御装置1および携帯端末30と通信できるようになっている。
【0036】
このセンタの記憶装置には、全世界の地域(例えば、縦10km×横10kmの区画)毎に、その地域の気象に応じた1つの気象情報マップが記録されている。ある地域の気象情報マップは、図3(a)に示すように、その地域における日毎の平均気温および最低気温の情報が含まれている。
【0037】
携帯端末30は、車両10のユーザに携帯され、中央処理装置(CPU)、記憶装置(ROM、RAM、フラッシュメモリ、磁気記憶媒体等)、入力装置、出力装置、通信装置等を具備するコンピュータを備え、この通信装置によってセンタ20と通信できるようになっている。また、携帯端末30は、自機の現在位置を検出する位置検出器(例えばGPS受信機)を備えている。
【0038】
以下、上記のような構成の車載システムの作動について説明する。まず、気象情報マップのやり取りに関する作動について説明する。制御装置1の通信端末17のコンピュータは、エンジン2の起動中(すなわち作動中)に所定のプログラムを実行することで、図4に示す気象情報更新処理を所定の時間間隔ごとに実行するようになっている。なお、通信端末17が、この図4の処理を実行することで、取得手段の一例として機能する。
【0039】
この気象情報更新処理において通信端末17は、まずステップ210で、位置検出器16から現在位置情報を取得する。そしてステップ220で、直前に取得した現在位置が、前回更新時位置として通信端末17の記憶媒体に記録されている位置から所定距離(例えば、一定値の5km)以上離れているか否かを判定する。この前回更新時位置は、最後にセンタ20から気象情報マップを受信した時点における車両10の位置である。所定距離以上離れていないと判定した場合は、今回の気象情報更新処理を終了する。
【0040】
所定距離以上離れていると判定した場合は、続いてステップ230で、現時点における車両の現在位置に該当する気象情報マップを、センタ20に要求する。具体的には、センタ20に対し、気象情報取得要求信号を送信する。ただし、この気象情報取得要求信号には、直前のステップ210で取得した現在位置情報を含める。ステップ230に続いては、ステップ240に進み、気象情報取得要求信号の応答として気象情報マップを受信するまで待機する。
【0041】
センタ20では、この気象情報取得要求信号を通信装置が受信して中央処理装置に出力し、中央処理装置は、当該気象情報取得要求信号に含まれる現在位置情報を含む地域の気象情報マップを記憶装置から読み出し、読み出した気象情報マップを、通信装置を用いて、通信端末17に送信する。
【0042】
すると通信端末17のコンピュータは、引き続きステップ240で、センタ20から送信された気象情報マップを無線通信回路を介して受信し、受信した気象情報をHV制御部15に出力する。続いてステップ250に進み、現在位置情報を、新たな前回更新時位置情報として記憶装置に記録する。このようにして記録した前回更新時位置情報が、次回以降の気象情報更新処理のステップ220で用いられる。ステップ250の後、今回の気象情報更新処理を終了する。
【0043】
なお、HV制御ECU15は、通信端末17から気象情報マップを受けると、受けた気象情報マップを記憶装置(例えばフラッシュメモリ)に記録する。この際、今回よりも前に記録していた気象情報マップは、記憶媒体から削除する。
【0044】
更にHV制御ECU15は、この最新の(すなわち最後に受信した)気象情報マップに基づいて、エンジン2が停止している停止期間(現在の日付を始点とする)の平均気温および最低気温を予測する。なお、エンジン2が停止している停止期間は、あらかじめ決められており、例えば、1ヶ月、2ヶ月等である。そして、このように予測した平均気温および最低気温を、電池ECU14に出力する。
【0045】
このように、通信端末17が、定期的に現在位置を取得し、最後に気象情報マップを更新した時点の車両10の位置と比較し、乖離が発生した場合、センタ20から現在位置に応じた気象情報マップを取得してHV制御ECU15に記録させることで、HV制御ECU15においては、車両10の移動に追従して気象情報マップが逐次更新されていく。
【0046】
このようになっていることで、HV制御ECU15が車両10の仕向け地域全て等の制各地の気象情報マップを記憶しておく必要がなくなり、HV制御ECU15の記憶容量の節約になる。
【0047】
次に、このような平均気温および最低気温の情報をHV制御ECU15から受け取った電池ECU14の作動について説明する。以下の説明で電池ECU14が用いる平均気温および最低気温は、HV制御ECU15から最後に受け取った平均気温および最低気温である。
【0048】
エンジン2が起動している間、電池ECU14により図5に示すメインルーチンが実行されて残存容量SOCの使用範囲下限NLSOCが算出されるとともに、残存容量SOCが使用範囲下限NLSOCを下回らないようにHV車両制御ECU15により残存容量SOCが制御される。メインルーチンは、エンジン2の起動中に所定の時間間隔ごとに実行され、使用範囲下限NLSOCはその都度更新される。
【0049】
使用範囲下限NLSOCは、停止期間経過後にエンジン2を起動するのに必要な必要残存容量SLSOCおよび自己放電量を用いて算出される。ここで、自己放電量とは、停止期間中の残存容量SOCの低下量である。すなわち、使用範囲下限NLSOCは、必要残存容量SLSOCに自己放電量を加算することで求められる。なお、自己放電量は、停止期間の単位時間あたりの自己放電量である自己放電率SDRと、想定される停止期間とを乗算することにより算出される。
【0050】
必要残存容量SLSOCは、メインルーチンにおいて試行錯誤法により算出される。すなわち、「メインルーチンを実行する時の残存容量SOC」、または「前回のメインルーチンにより算出された必要残存容量SLSOC」の値を必要残存容量SLSOCの仮値とし、この必要残存容量SLSOCの仮値を更新することにより必要残存容量SLSOCを算出する。また、必要残存容量SLSOCの値を更新するための計算を実行する際には、図6に示すようにバッテリ5を起電力Vo、電荷移動抵抗Rs、界面抵抗Rctおよび電気二重層容量Cからなる電気回路でモデル化した等価回路が用いられる。そして、電荷移動抵抗Rs、界面抵抗Rctおよび電気二重層容量Cにより、等価回路のインピーダンスが構成される。
【0051】
ところで、自己放電率SDRの値は、バッテリ5の使用に伴い変動するおそれがある。また、制御回路などに流れる暗電流が変動することにより、見かけ上、自己放電率SDRが変動することもある。このため、メインルーチンとは別のSDR更新ルーチン(図7参照)によりSDRマップが更新される。ここで、SDRマップとは、図3(c)に示すように、自己放電率SDRと電池温度との相関を示すマップである。SDR更新ルーチンは、エンジン2の停止中にタイマ等で所定の時間間隔毎(例えば、1日毎または10日毎)に、一時的に電池ECU14を起動することにより実行される。
【0052】
また、電荷移動抵抗Rsの値および界面抵抗Rctの値は、バッテリ5の劣化による経時変化が顕著に見られる。このため、メインルーチンとは別のR更新ルーチン(図8参照)によりRsマップおよびRctマップが更新される。ここで、Rsマップとは、図9(c)に示すように、電荷移動抵抗Rsと残存容量SOCおよび電池温度との相関を示すマップである。また、Rctマップとは、図9(d)に示すように、界面抵抗Rctと残存容量SOCおよび電池温度との相関を示すマップである。R更新ルーチンは、イグニッションキーがオンされた直後のようにバッテリ5の電圧が安定しているときに実行される。
【0053】
さらに、界面抵抗Rctの値は、電極表面に生じる不活性被膜の影響を受けて上昇する。このため、Rctマップは、R更新ルーチンとは別のRct更新ルーチン(図10参照)によっても更新される。なお、不活性被膜は、エンジン2が停止してバッテリ5から積極的な充放電が行われなくなると発生し停止期間の長さに応じて成長するが、エンジン2の起動などにより大電流が流れると破壊され、界面抵抗Rctの値に影響を及ぼさなくなる。Rct更新ルーチンは、長期間(例えば、1ヶ月以上)のエンジン2の停止後、イグニッションキーがオンされた時に実行される。
【0054】
また、バッテリ5では一部の単位セル11が劣化することにより、インピーダンスの抵抗成分が変動することがある。そこで、この変動による一部の単位セル11の過充電または過放電を防止するため、R更新ルーチンとは別のRs更新ルーチン(図11参照)によりRsマップが更新される。なお、単位セル11の過充電または過放電を防止するにあたり、インピーダンスの抵抗成分の中で電荷移動抵抗Rsのみが更新されるのは、電気二重層容量Cと並列に配置された界面抵抗Rctよりも電気二重層容量Cと直列に配置された電荷移動抵抗Rsの方が通電時の応答が速く、確実に過充電または過放電を防止することができるからである。Rs更新ルーチンは、エンジン2の起動中に所定の時間間隔ごとに実行される。
【0055】
以上のように、エンジン2の起動中は、主にメインルーチンが実行されることにより残存容量SOCが制御される。しかし、エンジン2の起動中に残存容量SOCが使用範囲下限NLSOCを下回らないように制御したとしても、停止期間が想定値以上に長くなると残存容量SOCが必要残存容量SLSOCよりも低くなるおそれがある。また、停止期間の平均気温が予想値よりも高くなると、自己放電量が計算値以上に増加し、残存容量SOCが必要残存容量SLSOCよりも低くなる虞もある。そこで、エンジン2の停止中は、充電ルーチン(図12参照)により、残存容量SOCが必要残存容量SLSOCよりも低くならないようにしている。充電ルーチンは、エンジン2の停止中にタイマ等で一定の時間間隔毎(例えば、1日毎または10日毎)に、一時的に電池ECU14を起動することにより実行される。
【0056】
なお、劣化指標SOHの算出はメインルーチンを用いて電池ECU14により行われる。この劣化指標SOHの算出は、所定の時間間隔毎に実施される。
【0057】
以下に、メインルーチン、SDR更新ルーチン、R更新ルーチン、Rct更新ルーチン、Rs更新ルーチンおよび充電ルーチンの各ステップ、および劣化指標SOHの算出を、図面を用いて説明する。
【0058】
最初に、メインルーチンのステップを、図5に基づいて説明する。まずステップ1で、停止期間経過後にエンジン2を起動するのに必要な出力WESを算出する。出力WESは、図示しないエンジン起動必要出力マップを用いて算出される。エンジン起動必要出力マップは、エンジン2を起動するのに必要な出力と温度との相関を示すマップである。出力WESは温度が低いほど大きくなる。よって、出力WESは、HV車両制御ECU15から電池ECU14に入力された最低気温の予測値をエンジン起動必要出力マップに当てはめることにより算出される。
【0059】
次にステップ2で、エンジン2の起動時にバッテリ5から得ることができるエンジン起動電流の最大値IESmaxを算出する。エンジン起動電流の最大値IESmaxは、図3(b)に示されたエンジン起動電流パターンに基づいて算出される。エンジン起動電流パターンは、エンジン2の起動時にバッテリ5から得られる電流の経時変化を示すマップである。エンジン起動電流パターンは、常温および高温のパターンaと、低温のパターンbとに分けて設定されている。パターンbは、クランキング時間の増大に対応させるため、電流の出力時間がパターンaよりも長く設定されている。そして、パターンa、bのいずれか一方が、停止期間の最低気温の予測値に基づいて選択され、選択されたパターンからエンジン起動電流の最大値IESmaxが算出される。なお、パターンbは、最低気温の予測値が−20℃以下のときに選択される。
【0060】
次にステップ3で起電力Voを算出する。起電力Voは、図9(a)に示されたセル起電力マップを用いて算出される。セル起電力マップは、単位セル11の1個当たりの起電力(以下、セル起電力と呼ぶ)と残存容量SOCとの相関を示すマップである。そして、残存容量SOCに必要残存容量SLSOCの値を当てはめることによりセル起電力が算出され、このセル起電力の値に単位セル11の数を乗じることにより起電力Voが算出される。
【0061】
次にステップ4で電荷移動抵抗Rsを算出する。電荷移動抵抗Rsは、図9(c)に示されたRsマップを用いて算出される。そして、Rsマップにおいて、残存容量SOCに必要残存容量SLSOCの値を当てはめるとともに、電池温度に停止期間の最低気温の予測値を当てはめることにより電荷移動抵抗Rsが算出される。
【0062】
次にステップ5で界面抵抗Rctを算出する。界面抵抗Rctは、図9(d)に示されたRctマップを用いて算出される。そして、Rctマップにおいて、残存容量SOCに必要残存容量SLSOCの値を当てはめるとともに、電池温度に停止期間の最低気温の予測値を当てはめることにより界面抵抗Rctが算出される。
【0063】
次にステップ6で、等価回路にエンジン起動電流の最大値IESmaxを入力したときの応答電圧VBminを算出する。エンジン起動電流の最大値IESmaxは、パターンa、bのいずれか一方の最大値であるから、応答電圧VBminは、等価回路にパターンa、bのいずれか一方を入力したときの応答電圧パターンの最小値となる。また、等価回路の起電力Voはステップ3で算出された値が用いられ、電荷移動抵抗Rsはステップ4で算出された値が用いられ、界面抵抗Rctはステップ5で算出された値が用いられる。なお、電気二重層容量Cの値は固定値が用いられる。
【0064】
次にステップ7で、停止期間経過後にバッテリ5から得ることができる出力WBを算出する。出力WBは、数式1のようにエンジン起動電流の最大値IESmaxと応答電圧VBminとを乗ずることにより算出される。
WB=IESmax×VBmin (数式1)
次にステップ8で、出力WBが出力WESに充分に近似しているか否かを判定する。この判定は、出力WBの値と出力WESの値とを比較することにより行われる。この比較は、数式2に示すように、出力WBと出力WESとの数値的な差が所定値εよりも小さいか否かを判断することにより行われる。なお、数式2にお いて、ABS(X)はXの絶対値を示すものとし、以下の説明等においても同様とする。そして、出力WBと出力WESとの差の絶対値がεよりも小さい場合 は、出力WBが出力WESに充分に近似していると判定される。
ABS(WB−WES)<ε (数式2)
そして、出力WBが出力WESに充分に近似していない(NO)と判定されたらステップ9へ進み、出力WBが出力WESに充分に近似している(YES)と判定されたらステップ10へ進む。
【0065】
ステップ9では、必要残存容量SLSOCを数式3により更新する。数式3では、出力WBが出力WESよりも大きい場合にΔSLSOCの値を負の値とし、出力WBが出力WESよりも小さい場合にΔSLSOCの値を正の値とする。これにより、必要残存容量SLSOCを試行錯誤法により確定して算出することが可能となる。
SLSOC=SLSOC+ΔSLSOC (数式3)
ステップ10では、使用範囲下限NLSOCを数式4により算出する。なお、数式4において、TLは想定される停止期間である。本実施形態では、停止期間TLを月単位(例えば2ヶ月)とし、自己放電率SDRを1ヶ月あたりの残存容量SOCの低下量としている。自己放電率SDRの値は、SDRマップにおいて、電池温度に停止期間の平均気温の予測値を当てはめることにより算出される。使用範囲下限NLSOCの算出値は、電池ECU14からHV車両制御ECU15へ出力され、残存容量SOCの制御に用いられる。
【0066】
NLSOC=SLSOC+TL×SDR (数式4)
以上により、メインルーチンを記憶するとともに実行する電池ECU14は、自己放電量および必要残存容量SLSOCに応じて使用範囲下限NLSOCを算出する残存容量下限算出手段、出力WBを予測する出力予測手段、および出力WBの予測値と出力WESの値とを比較しこの比較結果に応じて必要残存容量SLSOCを予測する必要残存容量予測手段をなしている。
【0067】
続いて、SDR更新ルーチンを図7に基づいて説明する。まずステップ21で、HV電池5の電圧Vを計測する。次にステップ22で、電圧Vの計測値を単位セル11の数で除算した後、図9(a)のセル起電力マップに当てはめて残存容量SOCを算出する。次にステップ23で、この残存容量SOCの算出値と前回のSDR更新ルーチン実行時に算出された残存容量SOCの値との差をSDR更新ルーチンが実行される時間間隔で除算することにより自己放電率SDRの仮値SDR′を算出する。次にステップ24で、仮値SDR′の値を基準温度での値に換算し、新たに仮値SDR′の値とする。
【0068】
次にステップ25で、前回のSDR更新ルーチンで求めた仮値SDR′の前回値と、今回のSDR更新ルーチンで求めた仮値SDR′の今回値との大小比較を行い、今回値の方が大きい場合(YES)はステップ26に進む。そしてステップ26で、今回値と前回値との比に基づいて、SDRマップを更新する。
【0069】
続いて、R更新ルーチンを図8に基づいて説明する。まずステップ41、42で、イグニッションキーがオンされてから微小時間Δt0が経過した時に、HV電池5の電圧VとHV電池5から得られる電流Iとを計測することにより、放電開始直後のHV電池5の電圧降下ΔV0、放電開始直後にHV電池5から得られる電流I0を算出する。
【0070】
次にステップ43で、数式5を用いて電荷移動抵抗Rsの劣化係数ksを算出する。劣化係数ksは、HV電池5の劣化による電荷移動抵抗Rsの経時変化の度合を示すパラメータである。なお、数式5のRsには、現在の電池温度および残存容量SOCの値をRsマップに当てはめることにより算出された値が代入される。
ks=ΔV0/Rs/I (数式5)
次にステップ44、45で、イグニッションキーがオンされてから時間Δt1(例えば、2秒)が経過した時に、HV電池5の電圧VとHV電池5から得られる 電流Iとを計測することにより、放電開始直後から時間Δt1が経過するまでの間のHV電池5の電圧降下ΔV1、時間Δt1経過時にHV電池5から得られる 電流I1を算出する。
【0071】
次にステップ46で、数式6および数式7を用いて界面抵抗Rctの劣化係数kctを算出する。劣化係数kctは、HV電池5の劣化による界面抵抗Rctの 経時変化の度合を示すパラメータである。なお、数式7のRctには、現在の電池温度および残存容量SOCの値をRctマップに当てはめることにより算出された値が代入される。
IAVE=(I0+I1)/2 (数式6)
kct=(ΔV1−ΔV0)/Rct/IAVE/(1−exp(Δt2/Rct/C)) (数式7)
ここで、数式6のIAVEは、電流I0と電流I1との平均値である。なお、数式5および数式7は、通電時の等価回路の電荷収支から導かれる数式である。また、数式7において、exp(X)は自然対数の底eの指数関数を示すものとする。
以上により、算出された劣化係数ksおよび劣化係数kctの値に基づいて、RsマップおよびRctマップが更新される。
【0072】
続いて、Rct更新ルーチンを図10に基づいて説明する。まずステップ61で、エンジン2の起動時のHV電池5の電圧VESおよびエンジン2の起動時にHV電池5から得られる電流IESを計測する。次にステップ62で、電流IESの計測値を等価回路に当てはめて推定起動電圧VPESを算出する。
【0073】
次にステップ63で、エンジン2の起動前のHV電池5の電圧と電圧VESとの差、すなわちエンジン2の起動によるHV電池5の電圧降下の計測値ΔVESを算出する。また、エンジン2の起動前のHV電池5の電圧と推定起動電圧VPESとの差、すなわちエンジン2の起動によるHV電池5の電圧降下の推定値 ΔVPESを算出する。次にステップ64で、数式8を用いて界面抵抗上昇係数klrを算出する。
klr−ΔVES/ΔVPES (数式8)
以上により算出された界面抵抗上昇係数klrの値に基づいて、Rctマップが更新される。
【0074】
続いて、Rs更新ルーチンを図11に基づいて説明する。まずステップ81で、HV電池5の放電中にいずれかの単位セル11の電圧vがセル電圧下限vLを下回ったか否か、またはHV電池5の充電中にいずれかの単位セル11の電圧vがセル電圧上限vUを上回ったか否かが判定される。この判定は、過充放電検出信号がセル監視回路13から電池ECU14に入力されたか否かに基づいて行うことができる。なお、本実施形態では、放電の際に電流Iの計測値が正の値となり、充電の際に電流Iの計測値が負の値となる。そして、上記の条件が成り立つ場合(YES)にはステップ82へ進む。
【0075】
ステップ82では、現時点の残存容量SOCの算出値をセル起電力マップに当てはめることにより、平均セル電圧vMOを算出する。次にステップ83で、数式9または数式10を用いて最大セル抵抗rMAXを算出する。すなわち、放電時には数式9が用いられ、充電時には数式10が用いられる。
rMAX=(vMO−vL)/I (数式9)
rMAX=(vMO−vU)/I (数式10)
次にステップ84で、数式11を用いて新たな劣化係数ksを算出する。劣化係数ksは、最大セル抵抗rMAXを平均セル電荷移動抵抗rsで除算することに より算出される。平均セル電荷移動抵抗rsは、電荷移動抵抗Rsの値をセル数で除算することにより算出される。なお、この計算に用いられる電荷移動抵抗 Rsの値は、残存容量SOCの値と電池温度とを現在のRsマップに当てはめることにより算出される。
ks=rMAX/rs (数式11)
以上により、算出された劣化係数ksの値に基づいて、Rsマップが更新される。
【0076】
続いて、充電ルーチンを図12に基づいて説明する。まずステップ101で、HV電池5の電圧Vを計測する。次にステップ102で、この計測値をセル数で除算し、この除算された値をセル起電力マップに当てはめることにより、残存容量SOCを算出する。次にステップ103で、この残存容量SOCの値と前回の充電ルーチンで算出された残存容量SOCの値との差(以下、変化量ΔSOCと呼ぶ)を算出する。
【0077】
次にステップ104で、現時点の残存容量SOCがエンジン2を起動するのに充分な値であるか否かを判定する。この判定は、数式12に示すように、今回の充電ルーチンで算出された残存容量SOCの値と必要残存容量SLSOCの値との差が、変化量ΔSOCより大きいか否かを判定することにより行われる。
SOC−SLSOC>ΔSOC (数式12)
この結果、残存容量SOCの値と必要残存容量SLSOCの値との差が、変化量ΔSOCより大きい場合(YES)は、ステップ105へ進み残りの停止可能時 間を算出する。この停止可能時間は、エンジン2を起動することができる残存容量SOCが確保されている時間である。停止可能時間は、電池ECU14から HV車両制御ECU15に出力され、さらに通信端末17を介してユーザの携帯端末30やインターネット接続パソコンなどに入力される。
【0078】
また、残存容量SOCの値と必要残存容量SLSOCの値との差が、変化量ΔSOCより小さい場合(NO)は、ステップ106へ進み充電促進指令を合成する。充電促進指令は、電池ECU14からHV車両制御ECU15に出力される。そして、充電促進指令が入力されるとエンジン2が起動するとともに、HV車両制御ECU15は自動的に作動して残存容量SOCを上昇させる。
【0079】
以上により、充電ルーチンを記憶するとともに実行する電池ECU14は、エンジン2の停止中に一定の時間間隔で電池の電圧を計測することにより変化量 ΔSOCを算出し、変化量ΔSOCに基づいてハイブリッド自動車10が次に始動できるか否かを判定する始動可否判定手段をなす。
【0080】
続いて、劣化指標SOHの算出について説明する。本実施形態の劣化指標SOHは、使用範囲下限NLSOCに基づいて算出される。劣化指標SOHの算出に用いられる使用範囲下限NLSOCの値は、所定の劣化 指標算出用の基準温度を用いてメインルーチンと同様のステップを実行することにより算出される。この使用範囲下限NLSOCの算出値を数式13に代入する ことにより、劣化指標SOHの値が算出される。
SOH−(NLSOCu−NLSOC)/(NLSOCu−NLSOC0) (数式13)
数式13において、NLSOCuは使用範囲下限NLSOCの最大値であり、NLSOC0は出荷時などのHV電池5の初期状態における値、すなわち使用範囲下限NLSOCの初期値である。本実施形態では、最大値NLSOCuを70%とし、初期値NLSOC0を40%としている。なお、劣化指標SOHの値は、図9(b)に示すように、初期状態(使用範囲下限NLSOCが40%の状態)で1.0であり、使用範囲下限NLSOCの値が増加するにつれて直線的に減少する。そして、使用範囲下限NLSOCが70%の状態で0になる。
【0081】
劣化指標SOHの算出値は、電池ECU14からHV車両制御ECU15に出力され、さらにカーナビのディスプレイなどのように図示しない運転席の情報端末装置や、通信端末17を介してユーザの携帯端末30やインターネット接続パソコンなどに入力される。これにより、ユーザに劣化指標SOHの値が提示される。
【0082】
以下、本実施形態の効果について説明する。本実施形態の制御装置1は、電池ECU14にてメインルーチンを実行することにより、自己放電量を考慮した使用範囲下限NLSOCを算出する。そして、HV車両制御ECU15にて、この使用範囲下限NLSOCに基づく残存容量SOCの制御が行われる。
これにより、自己放電量を考慮しながら残存容量SOCを制御することができるので、余分の走行トルクを効率的に回収できるとともに、エンジン2の起動を確実に行えるようになる。
【0083】
本実施形態の制御装置1は、メインルーチンを実行する際に、停止期間の平均気温の予測値を電池温度に当てはめることにより、自己放電率SDRの値を算出する。
自己放電率SDRの値は、温度が高いほど大きくなる。このような温度依存性を自己放電率SDRの算出に反映させることにより、さらに精度の高い自己放電量を算出することができる。
【0084】
本実施形態の制御装置1は、電池ECU14にてSDR更新ルーチンを実行することにより、SDRマップを更新する。この更新は、停止期間に定期的に計測されるHV電池5の電圧Vの計測値を用いて行われる。
これにより、HV電池5の使用などに伴う自己放電率SDRの変動を、自己放電率SDRの値に反映させることができる。このため、HV電池5の使用などに伴う自己放電率SDRの変動に関わりなく、メインルーチンの実行結果を信頼することができる。
【0085】
本実施形態の制御装置1は、メインルーチンを実行する際に、停止期間経過後にHV電池5から得ることができる出力WBを予測するとともに、出力WBの予測値が、エンジン2を起動するのに必要な出力WESの値に略一致するように、試行錯誤法により必要残存容量SLSOCの値を算出する。そして、このように算出された必要残存容量SLSOCと自己放電量とに応じて、使用範囲下限NLSOCを算出する。
これにより、自己放電量ばかりでなく、エンジン2を起動するのに必要な出力WESも考慮しながら残存容量SOCを制御することができる。この結果、車両の始動の確実性がさらに向上する。
【0086】
本実施形態の制御装置1は、HV電池5を起電力Vo、電荷移動抵抗Rs、界面抵抗Rctおよび電気二重層容量Cからなる電気回路でモデル化した等価回路を用いて、停止期間経過後にHV電池5から得ることができる出力WBを予測する。
これにより、簡易な電気回路のモデルを用いて、出力WBを算出することができる。
【0087】
本実施形態の制御装置1は、停止期間の最低気温の予測値を電池温度に当てはめることにより、電荷移動抵抗Rsおよび界面抵抗Rctを算出する。
HV電池5から得ることができる出力は温度が低いほど少なくなる。このような出力特性の温度依存性は、等価回路の電荷移動抵抗Rsおよび界面抵抗Rctに反映させることができる。よって、出力に対する温度条件が最も厳しい最低気温を用いて、電荷移動抵抗Rsおよび界面抵抗Rctを算出することにより、エンジン2の起動に対する確実性を向上させることができる。
【0088】
本実施形態の制御装置1は、電池ECU14にてR更新ルーチンおよびRct更新ルーチンを実行することにより、等価回路の電荷移動抵抗Rsおよび界面抵抗Rctの値を更新する。そして、この更新は、HV電池5から得られる電流IおよびHV電池5の電圧Vの計測値を用いて行われる。
これにより、HV電池5の劣化などに伴う出力特性の経時変化を、等価回路に反映させることができる。このため、HV電池5の経時変化に関わりなく、メインルーチンの実行結果を信頼することができる。
【0089】
本実施形態の制御装置1は、電池ECU14にてRs更新ルーチンを実行することにより、等価回路の電荷移動抵抗Rsの値を更新する。この更新は、セル監視回路13から電池ECU14に過充放電検出信号が入力されたときに行われる。
【0090】
本実施形態の等価回路では、電荷移動抵抗Rsが電気二重層容量Cと直列に配置され界面抵抗Rctが電気二重層容量Cと並列に配置されている。このため、電荷移動抵抗Rsの方が界面抵抗Rctよりも通電時の応答が速い。
よって、過充放電検出信号が検出されたときに電荷移動抵抗Rsの値を更新するようにすれば、より早期に、単位セル11の過充電および過放電の影響を解消することができる。
【0091】
本実施形態の制御装置1は、使用範囲下限NLSOCに基づいて劣化指標SOHを算出する。こユーザ、HV電池5の劣化の程度を数値的に把握できるようになり、HV電池5の異常や交換時期を知る目安をユーザに提示できる。
【0092】
本実施形態の制御装置1は、停止期間中、定期的にHV電池5の電圧Vを計測することにより残存容量SOCの変化量ΔSOCを算出する。この変化量ΔSOCが残存容量SOCの値と必要残存容量SLSOCの値との差よりも大きくなったら、電池ECU14からHV車両制御ECU15に充電促進指令が出力される。そして、充電促進指令に基づいてエンジン2が起動するとともに、HV車両制御ECU15は残存容量SOCを上昇させる。これにより、停止期間に次回のエンジン2の起動が危ぶまれる状態になっても、自動的にHV電池5が充電される。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態が第1実施形態と異なるのは、本実施形態においては、エンジン2の停止中(ハイブリッド自動車10の停止中)においても、停止期間経過後にエンジン2を起動するのに必要な必要残存容量SLSOCの更新を制御装置1が継続する点である。
【0093】
これを実現するために、本実施形態の制御装置1は、第1実施形態の作動に加えて、以下のような作動を行う。まず、通信端末17は、図4に示した気象情報更新処理を、エンジン2の稼働中のみならず停止中も、所定の時間間隔ごとに実行する。この気象情報更新処理のステップ220で現在位置が前回更新時位置から所定距離以上離れていると判定するような例としては、ハイブリッド自動車10が停止した状態で、例えば船、飛行機、貨物車両等に運搬されて移動している場合が考えられる。
【0094】
また、この気象情報更新処理において、ステップ250で、通信端末17からHV制御ECU15に気象情報マップが出力されると、HV制御ECU14は、エンジン2の停止中でも自動的に作動して、第1実施形態と同様、受けた気象情報マップを記憶装置に記録し、今回よりも前に記録していた気象情報マップは、記憶媒体から削除し、この最新の気象情報マップに基づいて、エンジン2が停止している停止期間(現在の日付を始点とする)の平均気温および最低気温(または、現在の気温でもよい)を算出し(この処理によってHV制御ECU14が気温算出手段に相当する)、算出した平均気温および最低気温を電池ECU14に出力する。
【0095】
また、このように、エンジン2の停止中に平均気温および最低気温を受信した電池ECU14は、図5に示したメインルーチンを、エンジン2の稼働中のみならず停止中にも所定の時間間隔ごとに実行することで、最新の平均気温および最低気温(または現在の気温)に基づいて、エンジン2の始動に必要な必要残存容量SLSOCおよび使用範囲下限NLSOCを逐次更新する。
【0096】
すると、電池ECU14がエンジン2の停止中に繰り返し実行している充電ルーチン(図12参照)の実行において、ステップ104で用いる必要残存容量SLSOCが、最新の平均気温および最低気温に基づいて、逐次変化する。なお、この電池ECU14が充電ルーチンを実行することで、充電手段として機能する。
【0097】
ハイブリッド自動車10が停止中に移動させられて、暖かい地域から冷たい地域へ移動させられた場合を考えると、特許文献1の技術ならば、その移動を反映しない必要残存容量SLSOC(実際よりも低くなってしまっている)に基づいて充電ルーチンが実行され、その結果、ステップ106でエンジン2を始動しても始動できなくなってしまう可能性があった。
【0098】
しかし、本実施形態では、ハイブリッド自動車10が停止中でも、ハイブリッド自動車10の位置の変化に応じて気象情報マップおよびそれに基づく最低気温、平均気温を更新するので、充電ルーチンで用いる必要残存容量SLSOCが、ハイブリッド自動車10の移動を反映したものとなる。したがって、ハイブリッド自動車10が停止中に移動させられて、暖かい地域から冷たい地域へ移動させられても、それに応じて必要残存容量SLSOCが大きくなるよう更新されるので、エンジン2を始動できなくなるほど残存容量SOCが低下する前に、エンジン2を始動して充電することができる(ステップ104、106)。
【0099】
なお、本実施形態では、充電ルーチンのステップ106で充電促進指令15を受けたHV制御ECUは、エンジン2を起動させずに、通信端末17を介して、エンジン始動要求信号をセンタ20に送信するようになっていてもよい。その際、エンジン始動要求信号には、携帯端末30の宛先アドレス(例えば、携帯端末30のIPアドレス、携帯端末30の電話番号等)を含める。
【0100】
センタ20では、このエンジン始動要求信号を通信装置が受信して中央処理装置に出力し、中央処理装置は、当該エンジン始動要求信号を送信する。送信先は、受信したエンジン始動要求信号に含まれる宛先アドレスである。すなわち、送信先は、ハイブリッド自動車10のユーザが携帯する携帯端末30である。
【0101】
このエンジン始動要求信号を受信した携帯端末30は、携帯端末30が備える画像表示装置および音声出力装置の一方または両方を用いることで、上記ユーザにエンジンの始動を促す。このようにすることで、ユーザは、ハイブリッド自動車10に乗車し、エンジン2が始動できなくなる前に、手動でエンジン2を始動させ、それによってバッテリ5の充電を行うことができる。つまり、エンジン2が始動できなくなるほどバッテリ5の残存容量が低下してしまうことを防ぐことができる。
【0102】
このように、本実施形態の制御装置1は、気象情報マップを更新した結果、現在の残存電力量で、エンジン始動が不可能になる直前に、必要に応じて、自動的なエンジン始動により、あるいは、ユーザに対するエンジン始動の要求により、必要な残存容量SOCを確保することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態が第1(または第2)実施形態と異なるのは、制御装置1がサーバ20から気象情報マップを取得する際の、現在位置情報のやり取りの経路である。具体的には、本実施形態では、現在位置情報は携帯端末30からサーバ20に送信される。
【0103】
以下、本発明が第1(または第2)実施形態と異なる点を中心に説明し、それ以外の部分は簡略化または省略する。本実施形態の通信システムの構成は、第1(または第2)実施形態と同じである。また、本実施形態の制御装置1の作動は、通信端末17が実行する気象情報更新処理のみが第1(または第2)実施形態と異なる。
【0104】
具体的には、本実施形態で通信端末17が実行する気象情報更新処理は、ステップ210〜230を実行せず、ステップ240で気象情報マップの受信を待つところから始まる。そして、ステップ210〜230に該当する処理は、携帯端末30が実行するようになっている。
【0105】
具体的には、まず携帯端末30(より具体的には携帯端末30の中央処理装置)は、所定のプログラムを実行することで、図4の気象情報更新処理のステップ210〜230に相当する処理を所定の時間間隔ごとに実行するようになっている。
【0106】
すなわち、気象情報更新処理において通信端末17は、まずステップ210で、自機の位置検出器から自機の現在位置情報を取得する。そしてステップ220で、直前に取得した現在位置が、前回更新時位置として自機の記憶媒体に記録されている位置から所定距離(例えば、一定値の5km)以上離れているか否かを判定する。この前回更新時位置は、最後にセンタ20から気象情報マップを受信した時点における携帯端末30の位置であるが、この位置は、車両10の走行中は、車両10の位置と同一視できると考えられる。所定距離以上離れていないと判定した場合は、今回のステップ210〜230の処理を終了する。
【0107】
所定距離以上離れていると判定した場合は、続いてステップ230で、現在位置に該当する気象情報マップを、センタ20に要求する。具体的には、センタ20に対し、気象情報取得要求信号を送信する。ただし、この気象情報取得要求信号には、直前のステップ210で取得した現在位置情報を含め、更に、通信端末17の宛先アドレス(例えば、通信端末17のIPアドレス、通信端末17の電話番号等)を含める。ステップ230の後、今回のステップ210〜230の処理を終了する。
【0108】
センタ20では、この気象情報取得要求信号を通信装置が受信して中央処理装置に出力し、中央処理装置は、当該気象情報取得要求信号に含まれる現在位置情報を含む地域の気象情報マップを記憶装置から読み出し、読み出した気象情報マップを、通信装置を用いて、送信する。送信先は、受信した気象情報取得要求信号に含まれる宛先アドレスである。すなわち、送信先は、携帯端末30を携帯するユーザの有する車両10における通信端末17である。
【0109】
すると通信端末17のコンピュータは、気象情報更新処理のステップ240で、センタ20から送信された気象情報マップを無線通信回路を介して受信し、その後、ステップ240、ステップ250で、第1(または第2)実施形態と同じ処理を実行する。
【0110】
このように、携帯端末30が、定期的に現在位置を取得し、最後に気象情報マップを更新したであろう時点(実際は、気象情報取得要求信号を送信した時点)の車両10の位置と比較し、乖離が発生した場合、センタ20から現在位置に応じた気象情報マップを取得してHV制御ECU15に記録させることで、HV制御ECU15には、車両10の移動に追従して気象情報マップが逐次更新されていく。
【0111】
このようになっていることで、HV制御ECU15が車両10の仕向け地域全ての気象情報マップを記憶しておく必要がなくなり、HV制御ECU15の記憶容量の節約になる。
【0112】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。例えば、以下のような形態も許容される。
【0113】
(1)上記各実施形態では、充電促進指令により自動的にHV電池5の充電が行われたが、HV電池5の充電不足を通信手段17によりユーザに報知し、ユーザに遠隔操作させることによりHV電池5の充電が行われるようにしてもよい。
【0114】
(2)上記実施形態では、使用範囲下限NLSOCに基づいて劣化指標SOHを算出したが、劣化係数ks、劣化係数kctや界面抵抗上昇係数klr、コンデンサ容量Cの劣化係数kcpの値を用いて劣化指標SOHを算出してもよい。ここで、界面抵抗上昇係数klrの値は電池温度や残存容量SOCの値に左右されないので、界面抵抗上昇係数klrに基づく劣化指標SOHの算出は、特に容易である。また、HV電池5から得ることができる出力も、HV電池5の劣化により経時変化するので、劣化指標SOHの算出に用いることができる。
【0115】
(3)上記実施形態では、制御装置1を、エンジン2とモータジェネレータ3とを駆動源とするハイブリッド自動車4のHV電池5の制御に用いたが、モータジェネレータ3のみを駆動源とする電気自動車の電池や、従来のガソリン車などのスタータ用電池などの制御に用いてもよい。
【0116】
(4)上記実施形態では、HV電池5としてリチウムイオン電池を用いたが、ニッケル水素電池や鉛蓄電池などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 制御装置
2 エンジン
3 モータジェネレータ
5 HV電池
10 ハイブリッド自動車
14 電池ECU
15 HV車両制御ECU
16 位置検出器
17 通信端末
【技術分野】
【0001】
車両に搭載されるバッテリの残存容量を制御する制御装置
本発明は、車両に搭載されるバッテリの残存容量を制御する制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるバッテリの残存容量を制御する車載用の制御装置の技術において、駆動源(エンジン、モータジェネレータ等)が停止している停止期間の経過後にエンジンを始動するのに必要な出力電力と、エンジンが停止している停止期間にバッテリから放電される自己放電量とを、現在の車両位置における停止期間の気温の予測値に基づいて算出し、算出した自己放電量および必要な出力電力に基づいて、電池の残存容量の使用範囲下限を算出し、この算出値に基づいてバッテリの残存容量を制御する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−253287公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、発明者の検討によれば、上記のような技術は、以下のような点で問題がある。まず、車両がどの位置に停止されるかは車両の仕向け地域、車両の使用態様によって様々なので、あらかじめ世界各地の気象情報を車載機に記録しておかなければならず、記憶容量が膨大になってしまう。
【0005】
また、現在の車両位置における停止期間の気温を予測し、それを利用するようになっているので、車両のエンジンが停止している状態で、運搬等により車両が移動してしまった場合、暖かい地域から冷たい地域への移動を行うと、エンジンの起動が出来なくなる危険がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、駆動源が停止している停止期間にバッテリから放電される自己放電量を、現在の車両位置における停止期間の気温の予測値に基づいて算出し、算出した自己放電量および必要な出力電力に基づいて、電池の残存容量の使用範囲下限を算出し、この算出値に基づいてバッテリの残存容量を制御する技術において、気温を予測するための記憶容量を節約することを第1の目的とする。
【0007】
また、従来、車両に搭載されるバッテリの残存容量を制御する車載用の制御装置の技術において、にエンジンを始動するのに必要なバッテリの必要残存容量と現実の必要残存容量との比較に基づいて、エンジンが始動できなくなってしまうことを防ぐための技術において、車両のエンジンが停止している状態で、運搬等により車両が移動してしまった場合でも、エンジンの起動が出来なくなる可能性を低下させることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第1の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、車両に搭載されるバッテリの残存容量を制御する制御装置であって、前記車両から離れた位置に設置されるセンタから、現時点における車両の位置を含む地域における気温の情報を有する気象情報マップを繰り返し受信する取得手段と、前記取得手段が最後に受信した気象情報マップに基づいて、前記車両の駆動源が停止している停止期間の気温を予測する気温予測手段と、前記気温予測手段が予測した気温に応じて、前記停止期間に前記バッテリから放電される自己放電量を算出し、算出した前記自己放電量に応じて、前記バッテリの残存容量の使用範囲下限を算出する残存容量下限算出手段と、前記残存容量下限算出手段が算出した前記使用範囲下限算出値に基づいて、前記バッテリの残存容量を制御する充放電制御手段と、を備えた制御装置である。
【0009】
このように、制御装置は、車両から離れた位置に設置されるセンタから、現時点における車両の位置を含む地域における気温の情報を有する気象情報マップを繰り返し受信し、最後に受信した気象情報マップに基づいて、車両の駆動源が停止している停止期間の気温を予測する。このようになっていることで、制御装置が車両の世界各地の気象情報マップを記憶しておく必要がなくなり、記憶容量の節約になる。
【0010】
また、上記第2の目的を達成するための請求項2に記載の発明は、車両に搭載されるバッテリの残存容量を制御する制御装置であって、前記車両のエンジンの停止中において、前記車両から離れた位置に設置されるセンタから、現時点における車両の位置を含む地域における気温の情報を有する気象情報マップを繰り返し受信する取得手段と、前記車両のエンジンが停止している停止期間において、前記取得手段が最後に受信した気象情報マップに基づいて、前記停止期間の気温を繰り返し算出する気温算出手段と、前記車両のエンジンが停止している停止期間において、前記気温算出手段が予測した気温に応じて、前記エンジンの始動に必要な前記バッテリの必要残存容量と、現在の前記バッテリの残存容量との比較に基づいて、エンジンを始動できなくなるほどバッテリの残存容量が低下することを防ぐよう、前記エンジンを始動させるか、または、前記エンジンを始動させるよう、前記車両のユーザに通知する充電手段と、を備えた制御装置である。
【0011】
車両が停止中に移動させられて、暖かい地域から冷たい地域へ移動させられた場合を考えると、特許文献1の技術ならば、その移動を反映しない必要残存容量(実際よりも低くなってしまっている)に基づいて充電ルーチンが実行され、その結果、エンジンを始動しても始動できなくなってしまう可能性があった。
【0012】
しかし、上記請求項2のように、車両のエンジンが停止中でも、車両の位置の変化に応じて気象情報マップおよびそれに基づく気温を更新するので、充電手段で用いる必要残存容量が、車両の移動を反映したものとなる。したがって、車両が停止中に移動させられて、暖かい地域から冷たい地域へ移動させられても、それに応じて必要残存容量が大きくなるよう更新されるので、エンジンを始動できなくなるほどバッテリの残存容量が低下する前に、エンジンを始動して充電することができる。
【0013】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る通信システムの全体構成図である。
【図2】制御装置1の構成図である。
【図3】(a)は気象情報マップの一例であり、(b)はエンジン起動電流パターンを示すマップであり、(c)はSDRマップの一例である。
【図4】気象情報更新処理のフローチャートである。
【図5】メインルーチンを示すフローチャートである。
【図6】等価回路を示す説明図である。
【図7】SDR更新ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】R更新ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】(a)はセル起電力マップであり、(b)は使用範囲下限と劣化指標との相関を示すマップであり、(c)はRsマップの一例であり、(d)はRctマップの一例である。
【図10】Rct更新ルーチンを示すフローチャートである(実施例1)。
【図11】Rs更新ルーチンを示すフローチャートである(実施例1)。
【図12】充電ルーチンを示すフローチャートである(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る通信システムについて説明する。図1に示すように、本実施形態の通信システムは、ハイブリッド自動車10に搭載される車載システム2〜8と、車両10から離れた位置に設置されるセンタ20と、車両10のユーザが携帯する携帯端末30と、を備えている。
【0016】
制御装置1は、エンジン2とモータジェネレータ3とを駆動源とする上記ハイブリッド自動車4に搭載され、モータジェネレータ3との間で充放電を行う車両走行用のバッテリ5の残存容量を制御する。ハイブリッド自動車10は、エンジン2、モータジェネレータ3、インバータ6、動力分割統合装置7、変速伝達装置8およびバッテリ5を備える周知の構造をなしている。
【0017】
ここで、ハイブリッド自動車10の作動について説明する。まず、ハイブリッド自動車10の発進時または加速時などには、モータジェネレータ3が、バッテリ5からの放電を受けて電気モータとして機能しモータトルクを発生する。そして、このモータトルクが動力分割統合装置7にてエンジントルクと統合されてタイヤ9に伝達されることにより、走行トルクのアシストが行われる。
【0018】
また、エンジン2の起動時にも、モータジェネレータ3が、バッテリ5からの放電を受けて電気モータとして機能しモータトルクを発生する。そして、このモータトルクが動力分割統合装置7を介してエンジン2に伝達されることにより、エンジン2がクランキングされて起動する。
【0019】
また、ハイブリッド自動車10の減速時などには、余分のエンジントルクが動力分割統合装置7にて分割されてモータジェネレータ3に伝達される。これにより、モータジェネレータ3は発電機として機能して電力を発生し電池の充電を行う。なお、バッテリ5が満充電状態などで充電できない場合、余分のエンジントルクはタイヤ9に伝達されて、機械式ブレーキなどにより消費される。
【0020】
バッテリ5は、図2に示すように、60個のリチウムイオン電池の単位セル11を直列に配置した組電池であり、6個の単位セル11を1グループとするモジュール12に分割されている。すなわち、バッテリ5は、10個のモジュール12により構成されている。
【0021】
制御装置1は、インバータ6とバッテリ5との間に介在する。この制御装置1は、個々の単位セル11の電圧を監視するセル監視回路13、バッテリ5の状態を制御する電池ECU110、モータジェネレータ3の作動を制御するHV車両制御ECU15、位置検出器16、通信端末17等を有する。
【0022】
セル監視回路13は、個々のモジュール12に配置されている。セル監視回路13は、個々の単位セル11の両端が接続されて単位セル11の電圧を検出する。これにより、セル監視回路13は、モジュール12を構成する個々の単位セル11の電圧がセル電圧上限とセル電圧下限との範囲内にあるか否かを監視するとともに、単位セル11同士の電圧のばらつきが所定の範囲内に収まるように、個々の単位セル11の電圧を調整することができる。
【0023】
電池ECU14は、中央処理装置(CPU)、記憶装置、入力装置、出力装置などを具備するコンピュータを有する。そして、電池ECU14は、各種信号が入力されるとともに、記憶された各種のルーチンを実行して各種信号を合成、出力することによりバッテリ5の状態(例えば、残存容量)を制御する。
【0024】
電池ECU14は、個々のモジュール12の両端が接続されて、個々のモジュール12の電圧を計測するための信号が入力される。これにより、電池ECU14は、バッテリ5全体の電圧Vを計測することができ、この計測値に基づいてバッテリ5の残存容量SOCを算出することができる。さらに、電池ECU14は、組電池を構成する個々のモジュール12の電圧が上限と下限との範囲内にあるか否かを監視することができ、モジュール12同士の電圧のばらつきが所定の範囲内に収まるように、個々のモジュール12の電圧を調整することができる。
【0025】
また、電池ECU14は、個々のセル監視回路13から過充放電検出信号線21が接続されて、過充放電検出信号を検出することができる。ここで、過充放電検出信号とは、個々の単位セル11の電圧がセル電圧上限以上またはセル電圧下限以下であることを検知するための信号であり、個々の単位セル11の電圧がセル電圧上限以上またはセル電圧下限以下になったときにセル監視回路13から出力される。
【0026】
また、電池ECU14は、インバータ6とバッテリ5との間に流れる電流を計測するための電流センサ22から電流検出信号線23が接続されて、電流検出信号が入力される。ここで、電流検出信号とは、インバータ6とバッテリ5との間に流れる電流Iを計測するための信号である。
【0027】
また、電池ECU14は、バッテリ5の温度(以下、電池温度と呼ぶ)を計測するためにバッテリ5に取り付けられたバッテリ温度センサ25から電池温度検出信号線24が接続されて、電池温度検出信号が入力される。ここで、電池温度検出信号とは、電池温度を計測するための信号である。
【0028】
また、電池ECU14は、バッテリ5の近傍の環境温度を計測するための環境温度センサ26から環境温度検出信号線27が接続されて、環境温度検出信号が入力される。ここで、環境温度検出信号とは、バッテリ5の近傍の環境温度を計測するための信号である。
また、電池ECU14は、HV車両制御ECU15からの通信線28により、後記する最低気温の予測値または平均気温の予測値が入力される。
【0029】
そして、電池ECU14は、これらの各種の計測値や入力値に基づいて、後記するメインルーチン、SDR更新ルーチン、R更新ルーチン、Rct更新ルーチン、Rs更新ルーチンおよび充電ルーチンを実行する。これらの実行により、電池ECU14は、各種の算出、更新を行うとともに各種の信号を合成して、HV車両制御ECU15に出力する。これにより、残存容量SOCが制御される。
【0030】
また、電池ECU14は、バッテリ5に交換、修理などの手入れを行う目安としての劣化指標SOHを算出する。
【0031】
HV車両制御ECU15は、中央処理装置(CPU)、記憶装置(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)、入力装置、出力装置などを具備するコンピュータを有する。そして、HV車両制御ECU15は、電池ECU14から各種の信号(例えば、後記するSOC下限の算出値)が入力されるとともに、各種の制御信号を合成してインバータ6へ出力することによりモータジェネレータ3の作動を制御する。これにより、HV車両制御ECU15は、残存容量SOCを制御する充放電制御手段として機能する。
【0032】
また、HV車両制御ECU15は、後述する気象情報マップ(図3(a)参照)から、エンジン2が停止している停止期間の平均気温および最低気温を予測し、これらの予測値を電池ECU14に出力する。すなわち、HV車両制御ECU15は、停止期間の平均気温を予測する平均気温予測手段、および停止期間の最低気温を予測する最低気温予測手段としても機能する。
【0033】
位置検出器17は、ハイブリッド自動車10の現在位置を特定し、特定した現在位置情報を通信端末17に出力する装置であり、例えばGPS受信機であってもよい。
【0034】
通信端末17は、HV車両制御ECU15から入力される各種信号(例えば、劣化指標SOHの値)を、センタ20、携帯端末30、インターネット接続パソコンなどに送信するための周知の無線通信回路を備えると共に、中央処理装置(CPU)、記憶装置(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)、入力装置、出力装置などを具備するコンピュータを有する。また、ユーザからの指令信号(例えば、残存容量SOCを上昇させるための充電指令信号)を受信するとともにHV車両制御ECU15へ出力する。
【0035】
センタ2は、中央処理装置(CPU)、記憶装置(ROM、RAM、フラッシュメモリ、磁気記憶媒体等)、入力装置、出力装置、通信装置等を具備するコンピュータを備え、この通信装置によって車両10の制御装置1および携帯端末30と通信できるようになっている。
【0036】
このセンタの記憶装置には、全世界の地域(例えば、縦10km×横10kmの区画)毎に、その地域の気象に応じた1つの気象情報マップが記録されている。ある地域の気象情報マップは、図3(a)に示すように、その地域における日毎の平均気温および最低気温の情報が含まれている。
【0037】
携帯端末30は、車両10のユーザに携帯され、中央処理装置(CPU)、記憶装置(ROM、RAM、フラッシュメモリ、磁気記憶媒体等)、入力装置、出力装置、通信装置等を具備するコンピュータを備え、この通信装置によってセンタ20と通信できるようになっている。また、携帯端末30は、自機の現在位置を検出する位置検出器(例えばGPS受信機)を備えている。
【0038】
以下、上記のような構成の車載システムの作動について説明する。まず、気象情報マップのやり取りに関する作動について説明する。制御装置1の通信端末17のコンピュータは、エンジン2の起動中(すなわち作動中)に所定のプログラムを実行することで、図4に示す気象情報更新処理を所定の時間間隔ごとに実行するようになっている。なお、通信端末17が、この図4の処理を実行することで、取得手段の一例として機能する。
【0039】
この気象情報更新処理において通信端末17は、まずステップ210で、位置検出器16から現在位置情報を取得する。そしてステップ220で、直前に取得した現在位置が、前回更新時位置として通信端末17の記憶媒体に記録されている位置から所定距離(例えば、一定値の5km)以上離れているか否かを判定する。この前回更新時位置は、最後にセンタ20から気象情報マップを受信した時点における車両10の位置である。所定距離以上離れていないと判定した場合は、今回の気象情報更新処理を終了する。
【0040】
所定距離以上離れていると判定した場合は、続いてステップ230で、現時点における車両の現在位置に該当する気象情報マップを、センタ20に要求する。具体的には、センタ20に対し、気象情報取得要求信号を送信する。ただし、この気象情報取得要求信号には、直前のステップ210で取得した現在位置情報を含める。ステップ230に続いては、ステップ240に進み、気象情報取得要求信号の応答として気象情報マップを受信するまで待機する。
【0041】
センタ20では、この気象情報取得要求信号を通信装置が受信して中央処理装置に出力し、中央処理装置は、当該気象情報取得要求信号に含まれる現在位置情報を含む地域の気象情報マップを記憶装置から読み出し、読み出した気象情報マップを、通信装置を用いて、通信端末17に送信する。
【0042】
すると通信端末17のコンピュータは、引き続きステップ240で、センタ20から送信された気象情報マップを無線通信回路を介して受信し、受信した気象情報をHV制御部15に出力する。続いてステップ250に進み、現在位置情報を、新たな前回更新時位置情報として記憶装置に記録する。このようにして記録した前回更新時位置情報が、次回以降の気象情報更新処理のステップ220で用いられる。ステップ250の後、今回の気象情報更新処理を終了する。
【0043】
なお、HV制御ECU15は、通信端末17から気象情報マップを受けると、受けた気象情報マップを記憶装置(例えばフラッシュメモリ)に記録する。この際、今回よりも前に記録していた気象情報マップは、記憶媒体から削除する。
【0044】
更にHV制御ECU15は、この最新の(すなわち最後に受信した)気象情報マップに基づいて、エンジン2が停止している停止期間(現在の日付を始点とする)の平均気温および最低気温を予測する。なお、エンジン2が停止している停止期間は、あらかじめ決められており、例えば、1ヶ月、2ヶ月等である。そして、このように予測した平均気温および最低気温を、電池ECU14に出力する。
【0045】
このように、通信端末17が、定期的に現在位置を取得し、最後に気象情報マップを更新した時点の車両10の位置と比較し、乖離が発生した場合、センタ20から現在位置に応じた気象情報マップを取得してHV制御ECU15に記録させることで、HV制御ECU15においては、車両10の移動に追従して気象情報マップが逐次更新されていく。
【0046】
このようになっていることで、HV制御ECU15が車両10の仕向け地域全て等の制各地の気象情報マップを記憶しておく必要がなくなり、HV制御ECU15の記憶容量の節約になる。
【0047】
次に、このような平均気温および最低気温の情報をHV制御ECU15から受け取った電池ECU14の作動について説明する。以下の説明で電池ECU14が用いる平均気温および最低気温は、HV制御ECU15から最後に受け取った平均気温および最低気温である。
【0048】
エンジン2が起動している間、電池ECU14により図5に示すメインルーチンが実行されて残存容量SOCの使用範囲下限NLSOCが算出されるとともに、残存容量SOCが使用範囲下限NLSOCを下回らないようにHV車両制御ECU15により残存容量SOCが制御される。メインルーチンは、エンジン2の起動中に所定の時間間隔ごとに実行され、使用範囲下限NLSOCはその都度更新される。
【0049】
使用範囲下限NLSOCは、停止期間経過後にエンジン2を起動するのに必要な必要残存容量SLSOCおよび自己放電量を用いて算出される。ここで、自己放電量とは、停止期間中の残存容量SOCの低下量である。すなわち、使用範囲下限NLSOCは、必要残存容量SLSOCに自己放電量を加算することで求められる。なお、自己放電量は、停止期間の単位時間あたりの自己放電量である自己放電率SDRと、想定される停止期間とを乗算することにより算出される。
【0050】
必要残存容量SLSOCは、メインルーチンにおいて試行錯誤法により算出される。すなわち、「メインルーチンを実行する時の残存容量SOC」、または「前回のメインルーチンにより算出された必要残存容量SLSOC」の値を必要残存容量SLSOCの仮値とし、この必要残存容量SLSOCの仮値を更新することにより必要残存容量SLSOCを算出する。また、必要残存容量SLSOCの値を更新するための計算を実行する際には、図6に示すようにバッテリ5を起電力Vo、電荷移動抵抗Rs、界面抵抗Rctおよび電気二重層容量Cからなる電気回路でモデル化した等価回路が用いられる。そして、電荷移動抵抗Rs、界面抵抗Rctおよび電気二重層容量Cにより、等価回路のインピーダンスが構成される。
【0051】
ところで、自己放電率SDRの値は、バッテリ5の使用に伴い変動するおそれがある。また、制御回路などに流れる暗電流が変動することにより、見かけ上、自己放電率SDRが変動することもある。このため、メインルーチンとは別のSDR更新ルーチン(図7参照)によりSDRマップが更新される。ここで、SDRマップとは、図3(c)に示すように、自己放電率SDRと電池温度との相関を示すマップである。SDR更新ルーチンは、エンジン2の停止中にタイマ等で所定の時間間隔毎(例えば、1日毎または10日毎)に、一時的に電池ECU14を起動することにより実行される。
【0052】
また、電荷移動抵抗Rsの値および界面抵抗Rctの値は、バッテリ5の劣化による経時変化が顕著に見られる。このため、メインルーチンとは別のR更新ルーチン(図8参照)によりRsマップおよびRctマップが更新される。ここで、Rsマップとは、図9(c)に示すように、電荷移動抵抗Rsと残存容量SOCおよび電池温度との相関を示すマップである。また、Rctマップとは、図9(d)に示すように、界面抵抗Rctと残存容量SOCおよび電池温度との相関を示すマップである。R更新ルーチンは、イグニッションキーがオンされた直後のようにバッテリ5の電圧が安定しているときに実行される。
【0053】
さらに、界面抵抗Rctの値は、電極表面に生じる不活性被膜の影響を受けて上昇する。このため、Rctマップは、R更新ルーチンとは別のRct更新ルーチン(図10参照)によっても更新される。なお、不活性被膜は、エンジン2が停止してバッテリ5から積極的な充放電が行われなくなると発生し停止期間の長さに応じて成長するが、エンジン2の起動などにより大電流が流れると破壊され、界面抵抗Rctの値に影響を及ぼさなくなる。Rct更新ルーチンは、長期間(例えば、1ヶ月以上)のエンジン2の停止後、イグニッションキーがオンされた時に実行される。
【0054】
また、バッテリ5では一部の単位セル11が劣化することにより、インピーダンスの抵抗成分が変動することがある。そこで、この変動による一部の単位セル11の過充電または過放電を防止するため、R更新ルーチンとは別のRs更新ルーチン(図11参照)によりRsマップが更新される。なお、単位セル11の過充電または過放電を防止するにあたり、インピーダンスの抵抗成分の中で電荷移動抵抗Rsのみが更新されるのは、電気二重層容量Cと並列に配置された界面抵抗Rctよりも電気二重層容量Cと直列に配置された電荷移動抵抗Rsの方が通電時の応答が速く、確実に過充電または過放電を防止することができるからである。Rs更新ルーチンは、エンジン2の起動中に所定の時間間隔ごとに実行される。
【0055】
以上のように、エンジン2の起動中は、主にメインルーチンが実行されることにより残存容量SOCが制御される。しかし、エンジン2の起動中に残存容量SOCが使用範囲下限NLSOCを下回らないように制御したとしても、停止期間が想定値以上に長くなると残存容量SOCが必要残存容量SLSOCよりも低くなるおそれがある。また、停止期間の平均気温が予想値よりも高くなると、自己放電量が計算値以上に増加し、残存容量SOCが必要残存容量SLSOCよりも低くなる虞もある。そこで、エンジン2の停止中は、充電ルーチン(図12参照)により、残存容量SOCが必要残存容量SLSOCよりも低くならないようにしている。充電ルーチンは、エンジン2の停止中にタイマ等で一定の時間間隔毎(例えば、1日毎または10日毎)に、一時的に電池ECU14を起動することにより実行される。
【0056】
なお、劣化指標SOHの算出はメインルーチンを用いて電池ECU14により行われる。この劣化指標SOHの算出は、所定の時間間隔毎に実施される。
【0057】
以下に、メインルーチン、SDR更新ルーチン、R更新ルーチン、Rct更新ルーチン、Rs更新ルーチンおよび充電ルーチンの各ステップ、および劣化指標SOHの算出を、図面を用いて説明する。
【0058】
最初に、メインルーチンのステップを、図5に基づいて説明する。まずステップ1で、停止期間経過後にエンジン2を起動するのに必要な出力WESを算出する。出力WESは、図示しないエンジン起動必要出力マップを用いて算出される。エンジン起動必要出力マップは、エンジン2を起動するのに必要な出力と温度との相関を示すマップである。出力WESは温度が低いほど大きくなる。よって、出力WESは、HV車両制御ECU15から電池ECU14に入力された最低気温の予測値をエンジン起動必要出力マップに当てはめることにより算出される。
【0059】
次にステップ2で、エンジン2の起動時にバッテリ5から得ることができるエンジン起動電流の最大値IESmaxを算出する。エンジン起動電流の最大値IESmaxは、図3(b)に示されたエンジン起動電流パターンに基づいて算出される。エンジン起動電流パターンは、エンジン2の起動時にバッテリ5から得られる電流の経時変化を示すマップである。エンジン起動電流パターンは、常温および高温のパターンaと、低温のパターンbとに分けて設定されている。パターンbは、クランキング時間の増大に対応させるため、電流の出力時間がパターンaよりも長く設定されている。そして、パターンa、bのいずれか一方が、停止期間の最低気温の予測値に基づいて選択され、選択されたパターンからエンジン起動電流の最大値IESmaxが算出される。なお、パターンbは、最低気温の予測値が−20℃以下のときに選択される。
【0060】
次にステップ3で起電力Voを算出する。起電力Voは、図9(a)に示されたセル起電力マップを用いて算出される。セル起電力マップは、単位セル11の1個当たりの起電力(以下、セル起電力と呼ぶ)と残存容量SOCとの相関を示すマップである。そして、残存容量SOCに必要残存容量SLSOCの値を当てはめることによりセル起電力が算出され、このセル起電力の値に単位セル11の数を乗じることにより起電力Voが算出される。
【0061】
次にステップ4で電荷移動抵抗Rsを算出する。電荷移動抵抗Rsは、図9(c)に示されたRsマップを用いて算出される。そして、Rsマップにおいて、残存容量SOCに必要残存容量SLSOCの値を当てはめるとともに、電池温度に停止期間の最低気温の予測値を当てはめることにより電荷移動抵抗Rsが算出される。
【0062】
次にステップ5で界面抵抗Rctを算出する。界面抵抗Rctは、図9(d)に示されたRctマップを用いて算出される。そして、Rctマップにおいて、残存容量SOCに必要残存容量SLSOCの値を当てはめるとともに、電池温度に停止期間の最低気温の予測値を当てはめることにより界面抵抗Rctが算出される。
【0063】
次にステップ6で、等価回路にエンジン起動電流の最大値IESmaxを入力したときの応答電圧VBminを算出する。エンジン起動電流の最大値IESmaxは、パターンa、bのいずれか一方の最大値であるから、応答電圧VBminは、等価回路にパターンa、bのいずれか一方を入力したときの応答電圧パターンの最小値となる。また、等価回路の起電力Voはステップ3で算出された値が用いられ、電荷移動抵抗Rsはステップ4で算出された値が用いられ、界面抵抗Rctはステップ5で算出された値が用いられる。なお、電気二重層容量Cの値は固定値が用いられる。
【0064】
次にステップ7で、停止期間経過後にバッテリ5から得ることができる出力WBを算出する。出力WBは、数式1のようにエンジン起動電流の最大値IESmaxと応答電圧VBminとを乗ずることにより算出される。
WB=IESmax×VBmin (数式1)
次にステップ8で、出力WBが出力WESに充分に近似しているか否かを判定する。この判定は、出力WBの値と出力WESの値とを比較することにより行われる。この比較は、数式2に示すように、出力WBと出力WESとの数値的な差が所定値εよりも小さいか否かを判断することにより行われる。なお、数式2にお いて、ABS(X)はXの絶対値を示すものとし、以下の説明等においても同様とする。そして、出力WBと出力WESとの差の絶対値がεよりも小さい場合 は、出力WBが出力WESに充分に近似していると判定される。
ABS(WB−WES)<ε (数式2)
そして、出力WBが出力WESに充分に近似していない(NO)と判定されたらステップ9へ進み、出力WBが出力WESに充分に近似している(YES)と判定されたらステップ10へ進む。
【0065】
ステップ9では、必要残存容量SLSOCを数式3により更新する。数式3では、出力WBが出力WESよりも大きい場合にΔSLSOCの値を負の値とし、出力WBが出力WESよりも小さい場合にΔSLSOCの値を正の値とする。これにより、必要残存容量SLSOCを試行錯誤法により確定して算出することが可能となる。
SLSOC=SLSOC+ΔSLSOC (数式3)
ステップ10では、使用範囲下限NLSOCを数式4により算出する。なお、数式4において、TLは想定される停止期間である。本実施形態では、停止期間TLを月単位(例えば2ヶ月)とし、自己放電率SDRを1ヶ月あたりの残存容量SOCの低下量としている。自己放電率SDRの値は、SDRマップにおいて、電池温度に停止期間の平均気温の予測値を当てはめることにより算出される。使用範囲下限NLSOCの算出値は、電池ECU14からHV車両制御ECU15へ出力され、残存容量SOCの制御に用いられる。
【0066】
NLSOC=SLSOC+TL×SDR (数式4)
以上により、メインルーチンを記憶するとともに実行する電池ECU14は、自己放電量および必要残存容量SLSOCに応じて使用範囲下限NLSOCを算出する残存容量下限算出手段、出力WBを予測する出力予測手段、および出力WBの予測値と出力WESの値とを比較しこの比較結果に応じて必要残存容量SLSOCを予測する必要残存容量予測手段をなしている。
【0067】
続いて、SDR更新ルーチンを図7に基づいて説明する。まずステップ21で、HV電池5の電圧Vを計測する。次にステップ22で、電圧Vの計測値を単位セル11の数で除算した後、図9(a)のセル起電力マップに当てはめて残存容量SOCを算出する。次にステップ23で、この残存容量SOCの算出値と前回のSDR更新ルーチン実行時に算出された残存容量SOCの値との差をSDR更新ルーチンが実行される時間間隔で除算することにより自己放電率SDRの仮値SDR′を算出する。次にステップ24で、仮値SDR′の値を基準温度での値に換算し、新たに仮値SDR′の値とする。
【0068】
次にステップ25で、前回のSDR更新ルーチンで求めた仮値SDR′の前回値と、今回のSDR更新ルーチンで求めた仮値SDR′の今回値との大小比較を行い、今回値の方が大きい場合(YES)はステップ26に進む。そしてステップ26で、今回値と前回値との比に基づいて、SDRマップを更新する。
【0069】
続いて、R更新ルーチンを図8に基づいて説明する。まずステップ41、42で、イグニッションキーがオンされてから微小時間Δt0が経過した時に、HV電池5の電圧VとHV電池5から得られる電流Iとを計測することにより、放電開始直後のHV電池5の電圧降下ΔV0、放電開始直後にHV電池5から得られる電流I0を算出する。
【0070】
次にステップ43で、数式5を用いて電荷移動抵抗Rsの劣化係数ksを算出する。劣化係数ksは、HV電池5の劣化による電荷移動抵抗Rsの経時変化の度合を示すパラメータである。なお、数式5のRsには、現在の電池温度および残存容量SOCの値をRsマップに当てはめることにより算出された値が代入される。
ks=ΔV0/Rs/I (数式5)
次にステップ44、45で、イグニッションキーがオンされてから時間Δt1(例えば、2秒)が経過した時に、HV電池5の電圧VとHV電池5から得られる 電流Iとを計測することにより、放電開始直後から時間Δt1が経過するまでの間のHV電池5の電圧降下ΔV1、時間Δt1経過時にHV電池5から得られる 電流I1を算出する。
【0071】
次にステップ46で、数式6および数式7を用いて界面抵抗Rctの劣化係数kctを算出する。劣化係数kctは、HV電池5の劣化による界面抵抗Rctの 経時変化の度合を示すパラメータである。なお、数式7のRctには、現在の電池温度および残存容量SOCの値をRctマップに当てはめることにより算出された値が代入される。
IAVE=(I0+I1)/2 (数式6)
kct=(ΔV1−ΔV0)/Rct/IAVE/(1−exp(Δt2/Rct/C)) (数式7)
ここで、数式6のIAVEは、電流I0と電流I1との平均値である。なお、数式5および数式7は、通電時の等価回路の電荷収支から導かれる数式である。また、数式7において、exp(X)は自然対数の底eの指数関数を示すものとする。
以上により、算出された劣化係数ksおよび劣化係数kctの値に基づいて、RsマップおよびRctマップが更新される。
【0072】
続いて、Rct更新ルーチンを図10に基づいて説明する。まずステップ61で、エンジン2の起動時のHV電池5の電圧VESおよびエンジン2の起動時にHV電池5から得られる電流IESを計測する。次にステップ62で、電流IESの計測値を等価回路に当てはめて推定起動電圧VPESを算出する。
【0073】
次にステップ63で、エンジン2の起動前のHV電池5の電圧と電圧VESとの差、すなわちエンジン2の起動によるHV電池5の電圧降下の計測値ΔVESを算出する。また、エンジン2の起動前のHV電池5の電圧と推定起動電圧VPESとの差、すなわちエンジン2の起動によるHV電池5の電圧降下の推定値 ΔVPESを算出する。次にステップ64で、数式8を用いて界面抵抗上昇係数klrを算出する。
klr−ΔVES/ΔVPES (数式8)
以上により算出された界面抵抗上昇係数klrの値に基づいて、Rctマップが更新される。
【0074】
続いて、Rs更新ルーチンを図11に基づいて説明する。まずステップ81で、HV電池5の放電中にいずれかの単位セル11の電圧vがセル電圧下限vLを下回ったか否か、またはHV電池5の充電中にいずれかの単位セル11の電圧vがセル電圧上限vUを上回ったか否かが判定される。この判定は、過充放電検出信号がセル監視回路13から電池ECU14に入力されたか否かに基づいて行うことができる。なお、本実施形態では、放電の際に電流Iの計測値が正の値となり、充電の際に電流Iの計測値が負の値となる。そして、上記の条件が成り立つ場合(YES)にはステップ82へ進む。
【0075】
ステップ82では、現時点の残存容量SOCの算出値をセル起電力マップに当てはめることにより、平均セル電圧vMOを算出する。次にステップ83で、数式9または数式10を用いて最大セル抵抗rMAXを算出する。すなわち、放電時には数式9が用いられ、充電時には数式10が用いられる。
rMAX=(vMO−vL)/I (数式9)
rMAX=(vMO−vU)/I (数式10)
次にステップ84で、数式11を用いて新たな劣化係数ksを算出する。劣化係数ksは、最大セル抵抗rMAXを平均セル電荷移動抵抗rsで除算することに より算出される。平均セル電荷移動抵抗rsは、電荷移動抵抗Rsの値をセル数で除算することにより算出される。なお、この計算に用いられる電荷移動抵抗 Rsの値は、残存容量SOCの値と電池温度とを現在のRsマップに当てはめることにより算出される。
ks=rMAX/rs (数式11)
以上により、算出された劣化係数ksの値に基づいて、Rsマップが更新される。
【0076】
続いて、充電ルーチンを図12に基づいて説明する。まずステップ101で、HV電池5の電圧Vを計測する。次にステップ102で、この計測値をセル数で除算し、この除算された値をセル起電力マップに当てはめることにより、残存容量SOCを算出する。次にステップ103で、この残存容量SOCの値と前回の充電ルーチンで算出された残存容量SOCの値との差(以下、変化量ΔSOCと呼ぶ)を算出する。
【0077】
次にステップ104で、現時点の残存容量SOCがエンジン2を起動するのに充分な値であるか否かを判定する。この判定は、数式12に示すように、今回の充電ルーチンで算出された残存容量SOCの値と必要残存容量SLSOCの値との差が、変化量ΔSOCより大きいか否かを判定することにより行われる。
SOC−SLSOC>ΔSOC (数式12)
この結果、残存容量SOCの値と必要残存容量SLSOCの値との差が、変化量ΔSOCより大きい場合(YES)は、ステップ105へ進み残りの停止可能時 間を算出する。この停止可能時間は、エンジン2を起動することができる残存容量SOCが確保されている時間である。停止可能時間は、電池ECU14から HV車両制御ECU15に出力され、さらに通信端末17を介してユーザの携帯端末30やインターネット接続パソコンなどに入力される。
【0078】
また、残存容量SOCの値と必要残存容量SLSOCの値との差が、変化量ΔSOCより小さい場合(NO)は、ステップ106へ進み充電促進指令を合成する。充電促進指令は、電池ECU14からHV車両制御ECU15に出力される。そして、充電促進指令が入力されるとエンジン2が起動するとともに、HV車両制御ECU15は自動的に作動して残存容量SOCを上昇させる。
【0079】
以上により、充電ルーチンを記憶するとともに実行する電池ECU14は、エンジン2の停止中に一定の時間間隔で電池の電圧を計測することにより変化量 ΔSOCを算出し、変化量ΔSOCに基づいてハイブリッド自動車10が次に始動できるか否かを判定する始動可否判定手段をなす。
【0080】
続いて、劣化指標SOHの算出について説明する。本実施形態の劣化指標SOHは、使用範囲下限NLSOCに基づいて算出される。劣化指標SOHの算出に用いられる使用範囲下限NLSOCの値は、所定の劣化 指標算出用の基準温度を用いてメインルーチンと同様のステップを実行することにより算出される。この使用範囲下限NLSOCの算出値を数式13に代入する ことにより、劣化指標SOHの値が算出される。
SOH−(NLSOCu−NLSOC)/(NLSOCu−NLSOC0) (数式13)
数式13において、NLSOCuは使用範囲下限NLSOCの最大値であり、NLSOC0は出荷時などのHV電池5の初期状態における値、すなわち使用範囲下限NLSOCの初期値である。本実施形態では、最大値NLSOCuを70%とし、初期値NLSOC0を40%としている。なお、劣化指標SOHの値は、図9(b)に示すように、初期状態(使用範囲下限NLSOCが40%の状態)で1.0であり、使用範囲下限NLSOCの値が増加するにつれて直線的に減少する。そして、使用範囲下限NLSOCが70%の状態で0になる。
【0081】
劣化指標SOHの算出値は、電池ECU14からHV車両制御ECU15に出力され、さらにカーナビのディスプレイなどのように図示しない運転席の情報端末装置や、通信端末17を介してユーザの携帯端末30やインターネット接続パソコンなどに入力される。これにより、ユーザに劣化指標SOHの値が提示される。
【0082】
以下、本実施形態の効果について説明する。本実施形態の制御装置1は、電池ECU14にてメインルーチンを実行することにより、自己放電量を考慮した使用範囲下限NLSOCを算出する。そして、HV車両制御ECU15にて、この使用範囲下限NLSOCに基づく残存容量SOCの制御が行われる。
これにより、自己放電量を考慮しながら残存容量SOCを制御することができるので、余分の走行トルクを効率的に回収できるとともに、エンジン2の起動を確実に行えるようになる。
【0083】
本実施形態の制御装置1は、メインルーチンを実行する際に、停止期間の平均気温の予測値を電池温度に当てはめることにより、自己放電率SDRの値を算出する。
自己放電率SDRの値は、温度が高いほど大きくなる。このような温度依存性を自己放電率SDRの算出に反映させることにより、さらに精度の高い自己放電量を算出することができる。
【0084】
本実施形態の制御装置1は、電池ECU14にてSDR更新ルーチンを実行することにより、SDRマップを更新する。この更新は、停止期間に定期的に計測されるHV電池5の電圧Vの計測値を用いて行われる。
これにより、HV電池5の使用などに伴う自己放電率SDRの変動を、自己放電率SDRの値に反映させることができる。このため、HV電池5の使用などに伴う自己放電率SDRの変動に関わりなく、メインルーチンの実行結果を信頼することができる。
【0085】
本実施形態の制御装置1は、メインルーチンを実行する際に、停止期間経過後にHV電池5から得ることができる出力WBを予測するとともに、出力WBの予測値が、エンジン2を起動するのに必要な出力WESの値に略一致するように、試行錯誤法により必要残存容量SLSOCの値を算出する。そして、このように算出された必要残存容量SLSOCと自己放電量とに応じて、使用範囲下限NLSOCを算出する。
これにより、自己放電量ばかりでなく、エンジン2を起動するのに必要な出力WESも考慮しながら残存容量SOCを制御することができる。この結果、車両の始動の確実性がさらに向上する。
【0086】
本実施形態の制御装置1は、HV電池5を起電力Vo、電荷移動抵抗Rs、界面抵抗Rctおよび電気二重層容量Cからなる電気回路でモデル化した等価回路を用いて、停止期間経過後にHV電池5から得ることができる出力WBを予測する。
これにより、簡易な電気回路のモデルを用いて、出力WBを算出することができる。
【0087】
本実施形態の制御装置1は、停止期間の最低気温の予測値を電池温度に当てはめることにより、電荷移動抵抗Rsおよび界面抵抗Rctを算出する。
HV電池5から得ることができる出力は温度が低いほど少なくなる。このような出力特性の温度依存性は、等価回路の電荷移動抵抗Rsおよび界面抵抗Rctに反映させることができる。よって、出力に対する温度条件が最も厳しい最低気温を用いて、電荷移動抵抗Rsおよび界面抵抗Rctを算出することにより、エンジン2の起動に対する確実性を向上させることができる。
【0088】
本実施形態の制御装置1は、電池ECU14にてR更新ルーチンおよびRct更新ルーチンを実行することにより、等価回路の電荷移動抵抗Rsおよび界面抵抗Rctの値を更新する。そして、この更新は、HV電池5から得られる電流IおよびHV電池5の電圧Vの計測値を用いて行われる。
これにより、HV電池5の劣化などに伴う出力特性の経時変化を、等価回路に反映させることができる。このため、HV電池5の経時変化に関わりなく、メインルーチンの実行結果を信頼することができる。
【0089】
本実施形態の制御装置1は、電池ECU14にてRs更新ルーチンを実行することにより、等価回路の電荷移動抵抗Rsの値を更新する。この更新は、セル監視回路13から電池ECU14に過充放電検出信号が入力されたときに行われる。
【0090】
本実施形態の等価回路では、電荷移動抵抗Rsが電気二重層容量Cと直列に配置され界面抵抗Rctが電気二重層容量Cと並列に配置されている。このため、電荷移動抵抗Rsの方が界面抵抗Rctよりも通電時の応答が速い。
よって、過充放電検出信号が検出されたときに電荷移動抵抗Rsの値を更新するようにすれば、より早期に、単位セル11の過充電および過放電の影響を解消することができる。
【0091】
本実施形態の制御装置1は、使用範囲下限NLSOCに基づいて劣化指標SOHを算出する。こユーザ、HV電池5の劣化の程度を数値的に把握できるようになり、HV電池5の異常や交換時期を知る目安をユーザに提示できる。
【0092】
本実施形態の制御装置1は、停止期間中、定期的にHV電池5の電圧Vを計測することにより残存容量SOCの変化量ΔSOCを算出する。この変化量ΔSOCが残存容量SOCの値と必要残存容量SLSOCの値との差よりも大きくなったら、電池ECU14からHV車両制御ECU15に充電促進指令が出力される。そして、充電促進指令に基づいてエンジン2が起動するとともに、HV車両制御ECU15は残存容量SOCを上昇させる。これにより、停止期間に次回のエンジン2の起動が危ぶまれる状態になっても、自動的にHV電池5が充電される。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態が第1実施形態と異なるのは、本実施形態においては、エンジン2の停止中(ハイブリッド自動車10の停止中)においても、停止期間経過後にエンジン2を起動するのに必要な必要残存容量SLSOCの更新を制御装置1が継続する点である。
【0093】
これを実現するために、本実施形態の制御装置1は、第1実施形態の作動に加えて、以下のような作動を行う。まず、通信端末17は、図4に示した気象情報更新処理を、エンジン2の稼働中のみならず停止中も、所定の時間間隔ごとに実行する。この気象情報更新処理のステップ220で現在位置が前回更新時位置から所定距離以上離れていると判定するような例としては、ハイブリッド自動車10が停止した状態で、例えば船、飛行機、貨物車両等に運搬されて移動している場合が考えられる。
【0094】
また、この気象情報更新処理において、ステップ250で、通信端末17からHV制御ECU15に気象情報マップが出力されると、HV制御ECU14は、エンジン2の停止中でも自動的に作動して、第1実施形態と同様、受けた気象情報マップを記憶装置に記録し、今回よりも前に記録していた気象情報マップは、記憶媒体から削除し、この最新の気象情報マップに基づいて、エンジン2が停止している停止期間(現在の日付を始点とする)の平均気温および最低気温(または、現在の気温でもよい)を算出し(この処理によってHV制御ECU14が気温算出手段に相当する)、算出した平均気温および最低気温を電池ECU14に出力する。
【0095】
また、このように、エンジン2の停止中に平均気温および最低気温を受信した電池ECU14は、図5に示したメインルーチンを、エンジン2の稼働中のみならず停止中にも所定の時間間隔ごとに実行することで、最新の平均気温および最低気温(または現在の気温)に基づいて、エンジン2の始動に必要な必要残存容量SLSOCおよび使用範囲下限NLSOCを逐次更新する。
【0096】
すると、電池ECU14がエンジン2の停止中に繰り返し実行している充電ルーチン(図12参照)の実行において、ステップ104で用いる必要残存容量SLSOCが、最新の平均気温および最低気温に基づいて、逐次変化する。なお、この電池ECU14が充電ルーチンを実行することで、充電手段として機能する。
【0097】
ハイブリッド自動車10が停止中に移動させられて、暖かい地域から冷たい地域へ移動させられた場合を考えると、特許文献1の技術ならば、その移動を反映しない必要残存容量SLSOC(実際よりも低くなってしまっている)に基づいて充電ルーチンが実行され、その結果、ステップ106でエンジン2を始動しても始動できなくなってしまう可能性があった。
【0098】
しかし、本実施形態では、ハイブリッド自動車10が停止中でも、ハイブリッド自動車10の位置の変化に応じて気象情報マップおよびそれに基づく最低気温、平均気温を更新するので、充電ルーチンで用いる必要残存容量SLSOCが、ハイブリッド自動車10の移動を反映したものとなる。したがって、ハイブリッド自動車10が停止中に移動させられて、暖かい地域から冷たい地域へ移動させられても、それに応じて必要残存容量SLSOCが大きくなるよう更新されるので、エンジン2を始動できなくなるほど残存容量SOCが低下する前に、エンジン2を始動して充電することができる(ステップ104、106)。
【0099】
なお、本実施形態では、充電ルーチンのステップ106で充電促進指令15を受けたHV制御ECUは、エンジン2を起動させずに、通信端末17を介して、エンジン始動要求信号をセンタ20に送信するようになっていてもよい。その際、エンジン始動要求信号には、携帯端末30の宛先アドレス(例えば、携帯端末30のIPアドレス、携帯端末30の電話番号等)を含める。
【0100】
センタ20では、このエンジン始動要求信号を通信装置が受信して中央処理装置に出力し、中央処理装置は、当該エンジン始動要求信号を送信する。送信先は、受信したエンジン始動要求信号に含まれる宛先アドレスである。すなわち、送信先は、ハイブリッド自動車10のユーザが携帯する携帯端末30である。
【0101】
このエンジン始動要求信号を受信した携帯端末30は、携帯端末30が備える画像表示装置および音声出力装置の一方または両方を用いることで、上記ユーザにエンジンの始動を促す。このようにすることで、ユーザは、ハイブリッド自動車10に乗車し、エンジン2が始動できなくなる前に、手動でエンジン2を始動させ、それによってバッテリ5の充電を行うことができる。つまり、エンジン2が始動できなくなるほどバッテリ5の残存容量が低下してしまうことを防ぐことができる。
【0102】
このように、本実施形態の制御装置1は、気象情報マップを更新した結果、現在の残存電力量で、エンジン始動が不可能になる直前に、必要に応じて、自動的なエンジン始動により、あるいは、ユーザに対するエンジン始動の要求により、必要な残存容量SOCを確保することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態が第1(または第2)実施形態と異なるのは、制御装置1がサーバ20から気象情報マップを取得する際の、現在位置情報のやり取りの経路である。具体的には、本実施形態では、現在位置情報は携帯端末30からサーバ20に送信される。
【0103】
以下、本発明が第1(または第2)実施形態と異なる点を中心に説明し、それ以外の部分は簡略化または省略する。本実施形態の通信システムの構成は、第1(または第2)実施形態と同じである。また、本実施形態の制御装置1の作動は、通信端末17が実行する気象情報更新処理のみが第1(または第2)実施形態と異なる。
【0104】
具体的には、本実施形態で通信端末17が実行する気象情報更新処理は、ステップ210〜230を実行せず、ステップ240で気象情報マップの受信を待つところから始まる。そして、ステップ210〜230に該当する処理は、携帯端末30が実行するようになっている。
【0105】
具体的には、まず携帯端末30(より具体的には携帯端末30の中央処理装置)は、所定のプログラムを実行することで、図4の気象情報更新処理のステップ210〜230に相当する処理を所定の時間間隔ごとに実行するようになっている。
【0106】
すなわち、気象情報更新処理において通信端末17は、まずステップ210で、自機の位置検出器から自機の現在位置情報を取得する。そしてステップ220で、直前に取得した現在位置が、前回更新時位置として自機の記憶媒体に記録されている位置から所定距離(例えば、一定値の5km)以上離れているか否かを判定する。この前回更新時位置は、最後にセンタ20から気象情報マップを受信した時点における携帯端末30の位置であるが、この位置は、車両10の走行中は、車両10の位置と同一視できると考えられる。所定距離以上離れていないと判定した場合は、今回のステップ210〜230の処理を終了する。
【0107】
所定距離以上離れていると判定した場合は、続いてステップ230で、現在位置に該当する気象情報マップを、センタ20に要求する。具体的には、センタ20に対し、気象情報取得要求信号を送信する。ただし、この気象情報取得要求信号には、直前のステップ210で取得した現在位置情報を含め、更に、通信端末17の宛先アドレス(例えば、通信端末17のIPアドレス、通信端末17の電話番号等)を含める。ステップ230の後、今回のステップ210〜230の処理を終了する。
【0108】
センタ20では、この気象情報取得要求信号を通信装置が受信して中央処理装置に出力し、中央処理装置は、当該気象情報取得要求信号に含まれる現在位置情報を含む地域の気象情報マップを記憶装置から読み出し、読み出した気象情報マップを、通信装置を用いて、送信する。送信先は、受信した気象情報取得要求信号に含まれる宛先アドレスである。すなわち、送信先は、携帯端末30を携帯するユーザの有する車両10における通信端末17である。
【0109】
すると通信端末17のコンピュータは、気象情報更新処理のステップ240で、センタ20から送信された気象情報マップを無線通信回路を介して受信し、その後、ステップ240、ステップ250で、第1(または第2)実施形態と同じ処理を実行する。
【0110】
このように、携帯端末30が、定期的に現在位置を取得し、最後に気象情報マップを更新したであろう時点(実際は、気象情報取得要求信号を送信した時点)の車両10の位置と比較し、乖離が発生した場合、センタ20から現在位置に応じた気象情報マップを取得してHV制御ECU15に記録させることで、HV制御ECU15には、車両10の移動に追従して気象情報マップが逐次更新されていく。
【0111】
このようになっていることで、HV制御ECU15が車両10の仕向け地域全ての気象情報マップを記憶しておく必要がなくなり、HV制御ECU15の記憶容量の節約になる。
【0112】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。例えば、以下のような形態も許容される。
【0113】
(1)上記各実施形態では、充電促進指令により自動的にHV電池5の充電が行われたが、HV電池5の充電不足を通信手段17によりユーザに報知し、ユーザに遠隔操作させることによりHV電池5の充電が行われるようにしてもよい。
【0114】
(2)上記実施形態では、使用範囲下限NLSOCに基づいて劣化指標SOHを算出したが、劣化係数ks、劣化係数kctや界面抵抗上昇係数klr、コンデンサ容量Cの劣化係数kcpの値を用いて劣化指標SOHを算出してもよい。ここで、界面抵抗上昇係数klrの値は電池温度や残存容量SOCの値に左右されないので、界面抵抗上昇係数klrに基づく劣化指標SOHの算出は、特に容易である。また、HV電池5から得ることができる出力も、HV電池5の劣化により経時変化するので、劣化指標SOHの算出に用いることができる。
【0115】
(3)上記実施形態では、制御装置1を、エンジン2とモータジェネレータ3とを駆動源とするハイブリッド自動車4のHV電池5の制御に用いたが、モータジェネレータ3のみを駆動源とする電気自動車の電池や、従来のガソリン車などのスタータ用電池などの制御に用いてもよい。
【0116】
(4)上記実施形態では、HV電池5としてリチウムイオン電池を用いたが、ニッケル水素電池や鉛蓄電池などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 制御装置
2 エンジン
3 モータジェネレータ
5 HV電池
10 ハイブリッド自動車
14 電池ECU
15 HV車両制御ECU
16 位置検出器
17 通信端末
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるバッテリの残存容量を制御する制御装置であって、
前記車両から離れた位置に設置されるセンタから、現時点における車両の位置を含む地域における気温の情報を有する気象情報マップを繰り返し受信する取得手段と、
前記取得手段が最後に受信した気象情報マップに基づいて、前記車両の駆動源が停止している停止期間の気温を予測する気温予測手段と、
前記気温予測手段が予測した気温に応じて、前記停止期間に前記バッテリから放電される自己放電量を算出し、算出した前記自己放電量に応じて、前記バッテリの残存容量の使用範囲下限を算出する残存容量下限算出手段と、
前記残存容量下限算出手段が算出した前記使用範囲下限算出値に基づいて、前記バッテリの残存容量を制御する充放電制御手段と、を備えた制御装置。
【請求項2】
車両に搭載されるバッテリの残存容量を制御する制御装置であって、
前記車両のエンジンの停止中において、前記車両から離れた位置に設置されるセンタから、現時点における車両の位置を含む地域における気温の情報を有する気象情報マップを繰り返し受信する取得手段と、
前記車両のエンジンが停止している停止期間において、前記取得手段が最後に受信した気象情報マップに基づいて、前記停止期間の気温を繰り返し算出する気温算出手段と、
前記車両のエンジンが停止している停止期間において、前記気温算出手段が予測した気温に応じて、前記エンジンの始動に必要な前記バッテリの必要残存容量と、現在の前記バッテリの残存容量との比較に基づいて、エンジンを始動できなくなるほどバッテリの残存容量が低下することを防ぐよう、前記エンジンを始動させるか、または、前記エンジンを始動させるよう、前記車両のユーザに通知する充電手段と、を備えた制御装置。
【請求項1】
車両に搭載されるバッテリの残存容量を制御する制御装置であって、
前記車両から離れた位置に設置されるセンタから、現時点における車両の位置を含む地域における気温の情報を有する気象情報マップを繰り返し受信する取得手段と、
前記取得手段が最後に受信した気象情報マップに基づいて、前記車両の駆動源が停止している停止期間の気温を予測する気温予測手段と、
前記気温予測手段が予測した気温に応じて、前記停止期間に前記バッテリから放電される自己放電量を算出し、算出した前記自己放電量に応じて、前記バッテリの残存容量の使用範囲下限を算出する残存容量下限算出手段と、
前記残存容量下限算出手段が算出した前記使用範囲下限算出値に基づいて、前記バッテリの残存容量を制御する充放電制御手段と、を備えた制御装置。
【請求項2】
車両に搭載されるバッテリの残存容量を制御する制御装置であって、
前記車両のエンジンの停止中において、前記車両から離れた位置に設置されるセンタから、現時点における車両の位置を含む地域における気温の情報を有する気象情報マップを繰り返し受信する取得手段と、
前記車両のエンジンが停止している停止期間において、前記取得手段が最後に受信した気象情報マップに基づいて、前記停止期間の気温を繰り返し算出する気温算出手段と、
前記車両のエンジンが停止している停止期間において、前記気温算出手段が予測した気温に応じて、前記エンジンの始動に必要な前記バッテリの必要残存容量と、現在の前記バッテリの残存容量との比較に基づいて、エンジンを始動できなくなるほどバッテリの残存容量が低下することを防ぐよう、前記エンジンを始動させるか、または、前記エンジンを始動させるよう、前記車両のユーザに通知する充電手段と、を備えた制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−65498(P2012−65498A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209523(P2010−209523)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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