説明

力学量センサ及びその製造方法

【課題】外力の大きさ及び方向並びに加速度を検出することができ、低コストに製造することのできる力学量センサ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る力学量センサは、第1基板と、前記第1基板上に配置された固定部と、前記固定部に一端部が支持されて前記第1基板から離隔して配置された可動電極と、前記可動電極の周囲に位置し力学量の検出方向に配置された固定電極と、前記固定部に電気的に接続された第1端子と、前記固定電極に電気的に接続された第2端子と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外力に応じて抵抗値が変化する素子を用いて力学量を検出する力学量センサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の小型軽量化、多機能化や高機能化が進み、実装される電子部品にも高密度化が要求されている。このような要求に応じて各種電子部品が半導体デバイスとして製造されるものが増加している。このため、回路素子として製造される半導体デバイス以外に力学量を検出するセンサ等も半導体デバイスを用いて製造され、小型軽量化が図られている。例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて形成される小型で単純な構造を有する加速度センサには、外力に応じて変位する可動部を半導体基板に形成し、この可動部の変位をピエゾ抵抗素子や静電容量素子等を利用して検出するタイプのセンサが実用化されている。
【0003】
また、従来、接触式半導体センサとして、半導体基板上に形成した可動電極と固定電極との接触の有無により、振動等の有無を検出するものがある(例えば、特許文献1参照。)。他にも、半導体基板上の固定部を中心に渦巻き状に複数巻回した構造の外周部に、リング状の可動電極を形成し、可動電極と、可動電極の周囲に配置された固定電極との接触の有無により、傾きを検出するものがある(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−303974号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Yasushiro Nishioka,他5名,”MEMS Tilt Sensor Fabricated Utilizing Anodic Bonding of Thin Silicon Film on Glass Substrate”,電学論E,129巻10号,2009年,p.328−332
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1及び非特許文献1により提案された接触式半導体センサでは、可動電極と固定電極との接触の有無を検出することしかできず、可動電極と固定電極とが接触したときに生じる電気信号の出力レベルが小さいため、その電気信号を増幅させるための増幅回路等を、センサの外部に設ける必要があった。また、検出される外力の方向も限られるものであった。
【0007】
さらに、従来のピエゾ抵抗素子を利用して力学量を検出するタイプのセンサや、静電容量型の半導体センサは、製造プロセスが複雑で、製造コストが高くなるという問題点があった。
【0008】
本発明は上述した従来の問題点に鑑み、外力の大きさ及び方向並びに加速度を検出することができ、低コストに製造することのできる力学量センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施の形態に係る力学量センサは、第1基板と、前記第1基板上に配置された固定部と、前記固定部に一端部が支持されて前記第1基板から離隔して配置された可動電極と、前記可動電極の周囲に位置し力学量の検出方向に配置された固定電極と、前記固定部に電気的に接続された第1端子と、前記固定電極に電気的に接続された第2端子と、を備えることを特徴とする。本発明の実施の形態に係る力学量センサによれば、印加された外力の大きさ及び方向並びに加速度を検出することができる。さらに、従来の力学量センサと比べ、構造を簡単なものとすることができるため、製造が容易な力学量センサを実現できる。
【0010】
本発明の実施の形態に係る力学量センサは、前記可動電極は印加される外力により変形されて前記固定電極の一部と接触し、前記可動電極が前記固定電極に接触した際の前記固定部と前記固定電極との間の電気抵抗値の変化に基づいて前記外力の大きさを検出してもよい。本発明の実施の形態に係る力学量センサによれば、外力の変化を抵抗値の変化として検出できるため、従来の力学量センサと比べ、検出信号レベルを高くすることができる。これにより、増幅回路が不要となり、製造コストを低減させることもできる。
【0011】
本発明の実施の形態に係る力学量センサは、前記可動電極は、最外周の側面に突起部が配置されてもよい。本発明の実施の形態に係る力学量センサによれば、可動電極の外周側の重みにより、外力が印加された際に固定電極と接触しやすくなる為、印加される外力が小さい場合であっても、抵抗値の変化として検出でき、外力の検出感度を向上させることができる。
【0012】
本発明の実施の形態に係る力学量センサは、前記可動電極は、前記固定部から遠ざかるに従って、その幅が徐々に大きくなるものであってもよい。本発明の実施の形態に係る力学量センサによれば、可動電極の外周側の重みにより、外力が印加された際に固定電極と接触しやすくなる為、印加される外力が小さい場合であっても、抵抗値の変化として検出でき、外力の検出感度を向上させることができる。
【0013】
本発明の実施の形態に係る力学量センサは、前記可動電極は、前記最外周よりも内側の一部の幅がもっとも大きいものであってもよい。本発明の実施の形態に係る力学量センサによれば、可動電極の内側の一部の重みにより、外力が印加された際に、外周側が固定電極と接触しやすくなる為、印加される外力が小さい場合であっても、抵抗値の変化として検出でき、外力の検出感度を向上させることができる。
【0014】
本発明の実施の形態に係る力学量センサは、前記可動電極は、第1可動電極及び第2可動電極を含み、前記第1可動電極の最外周の端部は、リング状の可動電極の内周面に接続され、前記リング状の可動電極は、前記第1可動電極の最外周の周囲に前記第1基板から離隔して配置され、前記リング状の可動電極の外周面には、前記第2可動電極の最内周の端部が接続され、前記第2可動電極は、前記リング状の可動電極の外周に前記第1基板から離隔して渦巻き状に配置され、前記リング状の可動電極の幅は、前記第1可動電極及び前記第2可動電極の各幅より大きくてもよい。本発明の実施の形態に係る力学量センサによれば、リング状の可動電極の重みにより、外力が印加された際に、第2可動電極が固定電極と接触しやすくなる為、印加される外力が小さい場合であっても、抵抗値の変化として検出でき、外力の検出感度を向上させることができる。
【0015】
本発明の実施の形態に係る力学量センサは、前記可動電極は、前記固定部から遠ざかるに従って、渦巻きの間隔が徐々に狭くなるものであってもよい。本発明の実施の形態に係る力学量センサによれば、可動電極の外周側の重みにより、外力が印加された際に固定電極と接触しやすくなる為、印加される外力が小さい場合であっても、抵抗値の変化として検出でき、外力の検出感度を向上させることができる。
【0016】
本発明の実施の形態に係る力学量センサは、前記固定電極は、前記第1基板に対して垂直な方向又は平行な方向に、前記可動電極と対向して配置されてもよい。本発明の実施の形態に係る力学量センサによれば、3軸方向(X方向、Y方向、Z方向)の外力の大きさ及び方向並びに加速度を検知することができる。
【0017】
本発明の実施の形態に係る力学量センサは、前記固定部及び前記固定電極上に配置された第2基板をさらに備え、前記第2基板は、前記固定部及び前記固定電極の位置に合わせて配置されるとともに前記第1端子又は前記第2端子に電気的に接続される電極又は配線を有してもよい。本発明の実施の形態に係る力学量センサによれば、従来の力学量センサと比べ、構造が単純なものとなる。従って、製造工程を削減でき、製造コストを低減することができる。
【0018】
本発明の実施の形態に係る力学量センサは、前記固定電極は、前記固定部から一定距離に配置されてもよい。本発明の実施の形態に係る力学量センサによれば、可動電極が固定電極に接触するときの接触位置の違いによる抵抗値の差を低減することができる。
【0019】
本発明の実施の形態に係る力学量センサの製造方法は、3層からなる第1基板の上層及び中間層をエッチングして、固定部と、前記固定部に一端部が支持されて前記第1基板から離隔された渦巻き状の可動電極と、前記可動電極の周囲に配置される固定電極と、を形成し、第2基板上に、前記固定部及び前記固定電極の形成位置に合わせて電極又は配線を形成し、前記固定部、前記可動電極、及び前記固定電極が形成された前記第1基板の面と、前記電極又は前記配線が形成された前記第2基板の面とを接合することを含んでもよい。本発明の実施の形態に係る力学量センサの製造方法によれば、従来の力学量センサの製造方法と比べて、力学量センサの構造が単純なものとなるため、製造工程を削減でき、製造コストを低減することができる。
【0020】
本発明の実施の形態に係る力学量センサの製造方法は、ガラス基板に、エッチングにより凹部を形成し、前記凹部が形成された前記ガラス基板の面上に、電極又は配線を形成し、前記電極又は前記配線が形成された前記ガラス基板の面上に、半導体基板を接合し、前記半導体基板の前記ガラス基板が接合されていない面をエッチングして、固定部と、前記固定部に一端部が支持されて前記ガラス基板から離隔された渦巻き状の可動電極と、前記可動電極の周囲に配置される固定電極と、を形成することを含んでもよい。本発明の実施の形態に係る力学量センサの製造方法によれば、従来の力学量センサの製造方法と比べて、力学量センサの構造が単純なものとなるため、製造工程を削減でき、製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、外力の大きさに応じて抵抗値が変化するように可動電極と固定電極とを構成することにより、外力の大きさを検出することができ、外力により変形した可動電極の固定電極への接触位置に基づき外力の方向を検出することができ、低コストに製造することのできる力学量センサ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】本発明の第1の実施形態に係る力学量センサの概略構造を示した平面図である。
【図1B】図1Aに示した力学量センサをA−A´線から見た断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る力学量センサの製造工程を説明するための図であり、(A)は加工前の半導体基板を示す断面図、(B)は半導体基板に凹部を形成する工程を示す断面図、(C)は半導体基板に固定部、可動電極、及び固定電極を形成する工程を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る力学量センサの動作の説明図であり、(a)は、外力F1が印加されたときの可動電極が固定電極に接触した状態を示し、(b)は、外力F2が印加されたときの可動電極が固定電極に接触した状態を示し、(c)は、外力F3が印加されたときの可動電極が固定電極に接触した状態を示す。
【図4】図3に示した各動作状態に対応する可動電極の長さの変化を模式的に示す図であり、(a)は、図3(a)に示した動作状態に対応する可動電極の長さを例示し、(b)は、図3(b)に示した動作状態に対応する可動電極の長さを例示し、(c)は、図3(c)に示した動作状態に対応する可動電極の長さを例示する。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る力学量センサの製造工程を説明するための図であり、(A)は加工前の半導体基板を示す断面図、(B)は半導体基板に凹部を形成する工程を示す断面図、(C)は半導体基板に固定部、可動電極、及び固定電極を形成する工程を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る力学量センサを示した断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る力学量センサの第2半導体基板を上面から見たときの概略構造を示す平面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る力学量センサの第2半導体基板の変形例を示す平面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る力学量センサを示した断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る力学量センサの第2半導体基板を底面から見たときの概略構造を示す平面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る力学量センサの第2半導体基板の変形例を示す平面図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る力学量センサを示した断面図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る力学量センサの第2半導体基板を底面から見たときの概略構造を示す平面図である。
【図14】本発明の第5の実施形態に係る力学量センサの製造工程を説明するための図であり、(A)は加工前のガラス基板を示す断面図、(B)はガラス基板に凹部を形成する工程を示す断面図、(C)はガラス基板に配線用端子を形成する工程を示す断面図である。
【図15】本発明の第5の実施形態に係る力学量センサの製造工程を説明するための図であり、(A)は配線用端子が形成されたガラス基板に半導体基板を接合する工程を示す断面図、(B)は半導体基板に固定部、可動電極、及び固定電極を形成する工程を示す断面図である。
【図16】本発明の第5の実施形態に係る力学量センサのガラス基板を上面から見たときの概略構造を示す平面図である。
【図17】本発明に係る力学量センサの変形例を示した平面図である。
【図18】本発明に係る力学量センサの変形例を示した平面図である。
【図19】本発明に係る力学量センサの変形例を示した平面図である。
【図20】本発明に係る力学量センサの変形例を示した平面図である。
【図21】本発明に係る力学量センサの変形例を示した平面図である。
【図22】本発明の一実施形態に係る力学量センサにより検出される信号を処理する処理回路の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施することができる。
【0024】
(第1の実施形態)
<力学量センサの構造>
まず、本発明の第1の実施形態に係る力学量センサの基本的な構造について、図1A及び図1Bを参照して説明する。図1Aは本発明の第1の実施形態に係る力学量センサの概略構造を示した平面図である。図1Bは図1Aに示した力学量センサをA−A´線から見た断面図である。力学量センサ100は、半導体基板104と、半導体基板104上に形成された固定部101と、可動電極102と、固定電極103a、103b、103c、103dと、を含む。固定部101は、半導体基板104上に固定されている。可動電極102は、その一端部が固定部101に接続され、固定部101から周囲に向かって渦巻き状に複数巻回して薄板状に形成される。可動電極102は可撓性を有し、印加される外力に応じて図中に示すX方向、Y方向及びZ方向に変形する。可動電極102の構造は、図1A及び図1Bに示す形状に限定されるものではなく、例えば、内周側と外周側で巻回する間隔を変更し、あるいは、内周側と外周側で幅を変更するようにしてもよい。可動電極102は、所定の抵抗率ρ(Ω・cm)を有する導電体であり、固定部101に接続された一端部から最外周の他端部までの長さLに応じた抵抗値Rを有する。なお、可動電極102の抵抗率ρは、例えば含まれる不純物濃度により制御されてもよく、四探針測定器により測定した値として、0.001Ω・cm以上、0.02Ω・cm以下であってもよい。可動電極102上に、メタル成膜やガス拡散、またはイオン注入により、下層にTiまたはCr等を30nm〜100nm程度成膜し、その上層にAu等を100nm〜300nm程度成膜し、可動電極102のコンタクト性能を向上させてもよい。
【0025】
固定電極103a〜103dは、可動電極102の周囲に位置し力学量の検出方向に配置される。図1A及び図1Bでは、X方向とY方向の4箇所に固定電極103a〜103dを配置した例を示す。固定電極の数や配置位置は、力学量センサ100の仕様に応じて適宜変更される。
【0026】
可動電極102は、印加される外力の大きさに応じて渦巻き状の構造が変形し、外力が印加された方向に配置された固定電極103a〜103dに、可動電極102の渦巻き状の構造の一部が接触する。このとき、可動電極102の抵抗体としての長さは、固定部101に接続された一端部から接触部までの長さになり、抵抗値が変化する。力学量センサ100は、可動電極102による抵抗値の変化を利用して外力の大きさを検出する。
【0027】
この可動電極102の変形による抵抗値の変化を電気的に検出するため、固定部101には第1端子(図示せず)が接続され、固定電極103a〜103dには各々第2端子(図示せず)が接続される。これらの第1端子と第2端子は、力学量センサ100が実装される電子機器内の力学量検出信号を処理する回路に接続される。
【0028】
可動電極102は、図1Aに図示したように、渦巻き状の構造の最外周の末端部に開口部102aを有してもよい。開口部102aは、可動電極102の末端部が、最外周より一つ内側の内周から、例えば、渦巻きの間隔と等しい間隔だけ離隔されることにより構成されてもよい。なお、可動電極102は開口部102aを有さない形状であってもよく、末端部が内周に接合された形状であってもよい。
【0029】
本発明の一実施形態において、可動電極102は、幅が15μm、Z方向の高さが50μmの薄板状に形成されてもよい。可動電極102は、一周以上の渦巻き状の構造を有しており、隣り合うk周目とk−1週目(但し、k>1)との間隔は、50μmであってもよい。なお、可動電極102の幅、厚み、及び渦巻きの間隔は、固定部101から最外周の末端部まで一定でなくともよい。固定部101は、半径が75μm、Z方向の高さが50μmの円柱形状を有してもよい。また、固定電極103a〜103dは、縦が1190μm、横が100μm、厚み(Z方向の高さ)が50μmの薄板状に形成されてもよく、可動電極102の周囲に配置されてもよい。固定電極103a〜103dから固定部101までの距離は、70μmであってもよく、一定としてもよい。なお、本発明の実施形態においては、仕様に応じて各部の寸法は適宜変更される。
【0030】
<力学量センサの製造方法>
次に、第1の実施形態に係る力学量センサ100の製造方法について、図2を参照して説明する。図2は、力学量センサ100の断面の概略構造を示した製造工程を説明するための図であり、(A)は加工前の半導体基板を示す断面図、(B)は半導体基板に凹部を形成する工程を示す断面図、(C)は半導体基板に固定部、可動電極、及び固定電極を形成する工程を示す断面図である。なお、図2(C)は、図1Bと同様に、図1Aに示した力学量センサをA−A´線から見た断面図である。
【0031】
(1)半導体基板Wの準備(図2(A)参照)
シリコン膜106、BOX層105、シリコン基板104を積層してなる半導体基板(SOI基板)Wを用意する。シリコン膜106、BOX層105、シリコン基板104は、その外周が例えば1.55mm×1.55mmの略正方形状であり、これらのZ方向の高さはそれぞれ50μm、0.5μm、400μmである。これらの外形、高さは一例であり、上記に限定されるものではない。シリコン膜106は、力学量センサ100の固定部101、可動電極102、および固定電極103a〜103dを構成する層である。BOX層105は、シリコン膜106とシリコン基板104とを接合する層であり、かつエッチングストッパ層として機能する層である。シリコン基板104は、力学量センサ100の第1半導体基板104を構成する。半導体基板Wは、SIMOXないし、貼り合せ法等により作製される。
【0032】
(2)シリコン膜106の加工(図2(B)参照)
固定部101、可動電極102、および固定電極103a〜103dを加工するためのマスク(図示せず)を形成し、該マスクを介してシリコン膜106をエッチングすることにより、固定部101、可動電極102、および固定電極103a〜103dが形成される位置を除いた凹部106aを形成する。エッチング方法として、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)を用いることができる。
【0033】
(3)BOX層105の加工(図2(C)参照)
BOX層105をサイドエッチングすることにより、可動電極102が形成される位置のシリコン膜106と接していたBOX層105が除去され、第1半導体基板104から離隔された可動電極102が形成される。なお、図2(C)には、第1半導体基板104から離隔された可動電極102について、外周部が重みで下方に下がった形状を図示している。図2(C)に図示したように、固定部101および固定電極103a〜103dと第1半導体基板104との間にのみ必要なBOX層105a〜105eが残される。図2(B)に図示したように、固定部101および固定電極103a〜103dが形成される位置に対応するシリコン膜106は、BOX層105と接している面積が、可動電極102が形成される位置のBOX層105と接している面積よりも大きいため、BOX層105a〜105eを一部残して、固定部101および固定電極103a〜103dを第1半導体基板104から離隔させずに形成することができる。エッチング方法としては、HF希釈(例えば、50%HFを10%に希釈する)をエッチング液として用いるウェットエッチングを挙げることができる。また、ドライエッチングによって可動電極102を第1半導体基板104から離隔させることともできる。
【0034】
以上の工程により、本発明の第1の実施形態に係る力学量センサ100が形成される。
【0035】
<力学量センサの動作>
次に、第1の実施形態に係る力学量センサ100の動作について、図3及び図4を参照して説明する。上述したように、力学量センサ100は、可動電極102の一端部が、半導体基板104に形成された固定部101により支持され、固定電極103a〜103dに囲まれた空間内で変位できるように構成されている。可動電極102は、印加される外力により変形され、固定電極103a〜103dの一部と接触する。固定部101及び固定電極103a〜103dは、第1端子及び第2端子(図示せず)に電気的に接続されている。可動電極102が接続されている固定部101の固定端と、可動電極102が固定電極103a〜103dの接触した位置との間の長さにより抵抗値が変化し、この抵抗値の変化が第1端子及び第2端子に接続される処理回路により検出される。
【0036】
以下、図3及び図4に基づき、力学量センサ100の動作例について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る力学量センサの動作の説明図であり、(a)は、外力F1が印加されたときの可動電極102が固定電極103bに接触した状態を示し、(b)は、外力F1よりも大きい外力F2が印加されたときの可動電極102が固定電極103bに接触した状態を示し、(c)は、外力F2よりも大きい外力F3が印加されたときの可動電極102が固定電極103bに接触した状態を示す。図4は、図3(a)〜(c)の各動作状態に対応する可動電極102の長さLの変化を模式的に示す図であり、(a)は、図3(a)に示した動作状態に対応する可動電極の長さを例示し、(b)は、図3(b)に示した動作状態に対応する可動電極の長さを例示し、(c)は、図3(c)に示した動作状態に対応する可動電極の長さを例示する。
【0037】
図3(a)に図示したように、X方向の外力F1が印加されたとき、可動電極102は変形し、最外周の一部B1において固定電極103bと接触し、図3(b)に図示したように、X方向の外力F2が印加されたとき、可動電極102は変形し、最外周よりも一つ内側の内周の一部B2において固定電極103bと接触し、図3(c)に図示したように、X方向の外力F3が印加されたとき、可動電極102は変形し、最外周よりも二つ内側の内周の一部B3において固定電極103bと接触する。このとき、外力Fは、F1<F2<F3である。なお、図3では、可動電極102が固定部101に接続された固定端をA1とし、可動電極102が固定電極103bに接触した接触位置をB1〜B3として図示している。
【0038】
図4(a)に図示したように、X方向の外力F1が印加されたとき、固定端A1から接触位置B1までの可動電極102の長さをL1とし、図4(b)に図示したように、X方向の外力F2が印加されたとき、固定端A1から接触位置B2までの可動電極102の長さをL2とし、図4(c)に図示したように、X方向の外力F3が印加されたとき、固定端A1から接触位置B3までの可動電極102の長さをL3とする。図4に示したように、固定端A1から接触位置B1〜B3までの長さLは、L1>L2>L3である。また、可動電極102の電気抵抗率を、ρ(Ω・cm)とすると、図4(a)に図示した固定端A1から接触位置B1までの電気抵抗値R1は、R1∝L1・ρである。同様に、図4(b)に図示した固定端A1から接触位置B2までの電気抵抗値R2は、R2∝L2・ρであり、図4(c)に図示した固定端A1から接触位置B3までの電気抵抗値R3は、R3∝L3・ρである。従って、印加される外力FがF1<F2<F3と大きくなるにつれ、電気抵抗値Rは、L1・ρ>L2・ρ>L3・ρと小さくなり、外力の大きさに応じて可動電極102の抵抗値Rが変化することがわかる。
【0039】
さらに、力学量センサ100を加速度センサとして用いる場合は、加速度の作用に起因して生じる可動電極102の抵抗値Rの時間当たりの変位を検出すればよい。X、Y軸方向の加速度は、可動電極102の変位による抵抗値の変化を時間軸で測定することにより検出可能である。
【0040】
また、力学量センサ100は、可動電極102の周囲に配置された固定電極103a〜103dのいずれかに可動電極102が接触したかを検出することにより、外力の方向を検出することもできる。例えば、図3(a)〜(c)に図示したように、固定電極103bに可動電極102が接触した場合には、力学量センサ100に対して、X方向の外力F1〜F3が印加されたことがわかる。また、固定電極103a〜103dの数をさらに増やして配置することにより、外力の検出方向分解能を高めることができる。例えば、固定電極の数を8個に増やして、固定部101を挟んで上下左右(X,Y方向)にそれぞれ2個ずつ配置することにより、外力が印加される方向を検出する検出方向分解能を高めることができる。なお、固定電極の数は限定されるものではなく、要求される仕様に応じて適宜変更され得る。
【0041】
本発明の第1の実施形態に係る力学量センサ100によれば、外力の変化を、抵抗値の変化として検出できるため、従来のピエゾ抵抗素子を利用したタイプのセンサや、静電容量型のセンサと比べて、検出信号レベルを高くすることができる。これにより、増幅回路が不要となり、製造コストを低減させることができる。また、固定電極103a〜103dを可動電極の周囲に複数配置することにより、外力の方向を検出することもできる。さらに、従来の力学量センサと比べ、構造を簡単なものにすることができるため、製造が容易な力学量センサを実現できる。
【0042】
(第2の実施形態)
<力学量センサの製造方法>
第2の実施形態に係る力学量センサ200の製造方法について、図5(A)〜(C)、図6、及び図7を参照して説明する。図5(A)〜(C)及び図6は、力学量センサ200の断面の概略構造を示した製造工程を説明するための図であり、図7は、図6の力学量センサ200の第2半導体基板207を上面から見たときの概略構造を示す平面図である。なお、図6は、図7に示した力学量センサ200をB−B´線から見た断面を示す。
【0043】
(1)半導体基板Wの準備(図5(A)参照)
シリコン膜206、BOX層205、シリコン基板204を積層してなる半導体基板(SOI基板)Wを用意する。シリコン膜206、BOX層205、シリコン基板204は、その外周が例えば1.55mm×1.55mmの略正方形状であり、これらのZ方向の高さはそれぞれ50μm、0.5μm、400μmである。これらの外形、高さは一例であり、上記に限定されるものではない。シリコン膜206は、力学量センサ200の固定部201、可動電極202、および固定電極203a〜203hを構成する層である。BOX層205は、シリコン膜206とシリコン基板204とを接合する層であり、かつエッチングストッパ層として機能する層である。シリコン基板204は、力学量センサ200の第1半導体基板204を構成する。半導体基板Wは、SIMOXないし、貼り合せ法等により作製される。
【0044】
(2)シリコン膜206の加工(図5(B)参照)
固定部201、可動電極202、および固定電極203a〜203hを加工するためのマスク(図示せず)を形成し、該マスクを介してシリコン膜206をエッチングすることにより、固定部201、可動電極202、および固定電極203a〜203hが形成される位置を除いた凹部206aを形成する。エッチング方法として、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)を用いることができる。
【0045】
(3)BOX層205の加工(図5(C)参照)
BOX層205をサイドエッチングすることにより、可動電極202が形成される位置のシリコン膜206と接していたBOX層205が除去され、第1半導体基板204から離隔された可動電極202が形成される。このとき、固定部201および固定電極203a〜203hと第1半導体基板204との間にのみ必要なBOX層205a〜205i(図6参照)が残される。図5(B)に図示したように、固定部201および固定電極203a〜203hが形成される位置に対応するシリコン膜206は、BOX層205と接している面積が、可動電極202が形成される位置のBOX層205と接している面積よりも大きいため、BOX層205a〜205iを一部残して、固定部201および固定電極203a〜203hを第1半導体基板204から離隔させずに形成することができる。なお、エッチング方法として、HF希釈(例えば、50%HFを10%に希釈する)をエッチング液として用いるウェットエッチングを挙げることができる。また、CFガスとOガスとの混合ガスを用いたRIE法によるドライエッチングも適用可能である。
【0046】
(4)第2半導体基板207の形成(図6、図7参照)
図6及び図7に図示した第2半導体基板207は、ガラス材料、半導体、金属材料、絶縁性樹脂材料のいずれかにより構成される。以下では、第2半導体基板207としてガラス材料を用いる場合について説明する。可動イオンを含むガラス基板(例えばテンパックス(登録商標)ガラス)を用いてもよい。図6に図示するように、第2半導体基板207には、エッチングあるいはサンドブラストにより、第1半導体基板204の可動電極202と対向する位置に対応させて、凹部207aを形成する。
【0047】
(5)貫通電極208a〜208iの形成(図6、図7参照)
第2半導体基板207には、図6に図示するように、上下に貫通した貫通電極208a〜208iが形成される。貫通電極208a〜208iは、後述する製造工程において、第1半導体基板204と第2半導体基板207とが接合されると、第1半導体基板204の固定部201および固定電極203a〜203hにそれぞれ電気的に接続されるため、固定部201および固定電極203a〜203hと対向する位置にそれぞれ形成される。所定のマスクが形成された第2半導体基板207をサンドブラストにより、貫通電極208a〜208iの各形成位置に貫通孔(図示せず)を形成する。この貫通孔の内部に、導電性ペースト充填(スクリーン印刷)、CVD(Chemical Vapaor Deposition)法あるいは電解めっき法等を用いて導電性を有する導電材を配置することにより、貫通電極208a〜208iを形成する。例えば、CVD法により、貫通孔の内壁に多結晶シリコン(Poly−Si)からなる導電層を堆積させて、貫通電極208a〜208iを形成してもよい。導電層としては、多結晶シリコン以外に、例えば、金属材料(Ti,Cuなど)を用いてもよい。
【0048】
(6)第1半導体基板204と第2半導体基板207の接合(図6参照)
第1半導体基板204と第2半導体基板207とを、陽極接合等により接合する。このとき、図6に図示したように、第2半導体基板207に形成された貫通電極208a〜208iと、第1半導体基板204に形成された固定部201および固定電極203a〜203hとがそれぞれ電気的に接続されるように接合される。また、第2半導体基板207に形成された凹部207aと、第1半導体基板204に形成された可動電極202とが対向した位置で接合される。なお、図6に示すように、可動電極202が接触される固定電極203a〜203hの各端部から、貫通電極208a〜208hの接続部までの距離d1を、それぞれ同じ距離とする。また、固定電極203a〜203hは、固定部201から一定距離d2に配置される。これにより、可動電極202が固定電極203a〜203hに接触するときの接触位置の違いによる抵抗値の差を低減することができる。
【0049】
(7)配線用端子208a´〜208i´の形成(図6、図7参照)
図7は、図6に示した第2半導体基板207の上面の一例を示した平面図である。図6及び図7に図示するように、第2半導体基板207の上面には、配線用端子208a´〜208i´が、貫通電極208a〜208iが露出する上面部に対応させて、貫通電極208a〜208iと電気的に接続されるように、例えば、Alからなるパターンによって形成されてもよい。これらの配線用端子208a´〜208i´は、力学量センサ200が実装される電子機器内の力学量検出信号を処理する回路に接続される。なお、固定部201に接続される貫通電極208i及び配線用端子208i´が上述した第1端子として機能し、固定電極203a〜203hに接続される貫通電極208a〜208h及び配線用端子208a´〜208h´が上述した第2端子として機能する。配線用端子208a´〜208i´は、第1半導体基板204と第2半導体基板207との接合前に、第2半導体基板207に形成されてもよい。
【0050】
以上の工程により、本発明の第2の実施形態に係る力学量センサ200が形成される。
【0051】
なお、本発明の第2の実施形態に係る力学量センサ200は、図7に示した第2半導体基板207の構成に限定されるものではなく、例えば、図8に示すような構成としてもよい。
【0052】
図8は、第2半導体基板207の他の実施形態を図示しており、配線用端子208a´〜208i´が形成された第2半導体基板207を上面から見た平面図である。図8に図示するように、第2半導体基板207の上面の一側端部近傍(図中の第2半導体基板207の右辺)に、配線用端子208a´〜208i´に接続された配線用端子208a´´〜208i´´が形成されてもよい。配線用端子208a´〜208i´、208a´´〜208i´´は、いずれも、例えば、Cr層、Au層の順に金属層を蒸着法やスパッタ法等により形成し、不要な金属層をエッチングにより除去して形成してもよい。
【0053】
本発明の第2の実施形態に係る力学量センサ200によれば、印加される外力により可動電極202が変位し、周囲に配置された固定電極203a〜203hのいずれかに可動電極202の一部が接触する。このとき、可動電極202の抵抗体としての長さが、固定部201に接続された一端部から接触部までの長さとなり、印加される外力の大きさに応じて抵抗値が変化する。この抵抗値の変化に応じた検出信号を、力学量センサ200に接続された処理回路によって検出することにより、外力の大きさを検出することができる。また、本発明の第2の実施形態に係る力学量センサ200は、従来のピエゾ抵抗素子を利用したタイプのセンサや、静電容量型のセンサと比べ、構造が単純なものとなる。従って、製造工程を削減でき、製造コストを低減することができる。
【0054】
(第3の実施形態)
<力学量センサの製造方法>
次に、図9及び図10を参照して、本発明の第3の実施形態に係る力学量センサ300の製造方法を説明する。図9は、力学量センサ300の断面の概略構造を示し、図10は、力学量センサ300の第2半導体基板307を底面から見たときの概略構造を示す。なお、図9は、図10に示した力学量センサ300をC−C´線から見た断面を示す。
【0055】
図9に図示したように、本発明の第3の実施形態に係る力学量センサ300は、第1半導体基板304上に、図5(A)〜(C)に示した製造工程と同様の工程を経て、固定部301、可動電極302、固定電極303a〜303hが形成される。また、固定電極303a〜303hと同様の製造工程を経て、固定部301と電気的に接続される固定部電極303jが形成される。
【0056】
第2半導体基板307は、図6に示した力学量センサ200の第2半導体基板207と同様に、ガラス基板を用いてもよい。第2半導体基板307は、エッチングあるいはサンドブラストにより、第1半導体基板304の可動電極302と対向する位置に対応させて、凹部307aが形成される。
【0057】
凹部307aが形成された第2半導体基板307の面(図9では下面)上には、図10に示す電極309a〜309iの各形成位置に合わせて、絶縁層308が、パターニングすることにより形成され、絶縁層308の上には、電極309a〜309iが形成される。電極309a〜309iは、第1半導体基板304の固定部301及び固定電極303a〜303hとそれぞれ電気的に接続され、上述した第1端子及び第2端子として機能するため、固定部301および固定電極303a〜303hと対向する位置にそれぞれパターニングすることにより形成される。
【0058】
絶縁層308は、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物等の無機絶縁層からなる。シリコン酸化物の場合には、熱酸化法、CVD(Chemiclal Vapaor Deposition)法を用いて形成してもよい。また、シリコン窒化物の場合にはCVD法を用いて形成してもよい。電極309a〜309iは、金属あるいは多結晶シリコン等の材料からなり、その材料は接合される第1半導体基板304及び第2半導体基板307の材料や接合方法等により適宜選択することが可能である。
【0059】
なお、第2半導体基板307全体の大きさは、第1半導体基板304全体の大きさより小さいため、第2半導体基板307は、第1半導体基板304と接合されるとき、第1半導体基板304の外周領域を露出するように接合される。このとき、第2半導体基板307は、第1半導体基板304上に形成された固定電極303a〜303h及び固定部電極303jの端部近傍の一部を露出するように接合される。
【0060】
第1半導体基板304と第2半導体基板307とが接合されると、第1半導体基板304に形成された固定部301及び固定電極303a〜303hは、第2半導体基板207の電極309a〜309iにそれぞれ電気的に接続される。なお、図9に示すように、可動電極302が接触される固定電極303a〜303hの各端部から、電極309a〜309hの接続部までの距離d1を、それぞれ同じ距離とする。また、固定電極303a〜303hは、固定部301から一定距離d2に配置される。これにより、可動電極302が固定電極303a〜303hに接触するときの接触位置の違いによる抵抗値の差を低減することができる。
【0061】
図10は、力学量センサ300の、電極309a〜309iが形成された第2半導体基板307を底面から見た平面図である。なお、図10には、第1半導体基板304が接合されたときに、第1半導体基板304、固定電極303a〜303h、及び固定部301が配置される位置を点線で示している。また、図示していないが、電極309a〜309iと第2半導体基板307との間には、絶縁層308が形成されている。
【0062】
図10に図示するように、固定部301と電気的に接続される電極309iは、第1半導体基板304に形成された固定部電極303jと電気的に接続される。図示していないが、固定電極303a〜303h及び固定部電極303jの、第2半導体基板307より外側に露出された領域には、ワイヤボンディング等の方法によって配線が接続される。これらの配線は、力学量センサ300が実装される電子機器内の力学量検出信号を処理する回路に接続される。
【0063】
以上の工程により、本発明の第3の実施形態に係る力学量センサ300が形成される。
【0064】
なお、本発明の第3の実施形態に係る力学量センサ300は、図10に示した第2半導体基板307の構成に限定されるものではなく、例えば、図11に示すような構成としてもよい。
【0065】
図11は、第2半導体基板307の他の実施形態を図示しており、電極309a〜309iが形成された第2半導体基板307を底面から見た平面図である。図11は、第2半導体基板307の外周領域にダミー端子310jを形成して、第1半導体基板304との接合時のバランスを図るようにした例を示す。
【0066】
図11に図示するように、第2半導体基板307には、電極309a〜309iが電気的に接続される配線パターン309a´〜309i´が形成され、第1半導体基板304の一側端部近傍(図中の第1半導体基板304の右辺)に形成された配線用端子310a〜310iに、それぞれ接続されるように形成されてもよい。なお、図11には、第1半導体基板304が接合されるときに、第1半導体基板304、固定電極303a〜303h、固定部301、配線用端子310a〜310i、及び複数のダミー端子310jが配置される位置を点線で示している。なお、図示していないが、電極309a〜309i及び配線パターン309a´〜309iと、第2半導体基板307との間には、絶縁層が形成される。
【0067】
ダミー端子310jは、配線用端子310a〜310iが形成された一側端部近傍を除く第1半導体基板304の外周領域の端部近傍に形成される。ダミー端子310jは、第1半導体基板304と第2半導体基板307とが接合されるとき、第1半導体基板304の一側端部のみに形成された配線用端子310a〜310iにより、安定的に接合されなくなることを防ぎ、第1半導体基板304の外周全体と第2半導体基板307の外周全体が接合されるように形成される。このため、各ダミー端子310jの形状は、配線用端子310a〜310iのそれぞれと同じ形状であることが望ましい。図11に図示した第2半導体基板307は、配線用端子310a〜310iの一部と重なり、一部を露出するように接合される。図示していないが、配線用端子310a〜310iの第2半導体基板307より外側に露出された領域は、ワイヤボンディング等によって、外部回路と接続されてもよい。
【0068】
以上の工程により製造された本発明の第3の実施形態に係る力学量センサ300は、第2の実施形態に係る力学量センサ200と同様に、2軸方向(X方向、Y方向)の外力の大きさを検知することができる。また、従来のピエゾ抵抗素子を利用したタイプのセンサや、静電容量型のセンサと比べ、構造が単純なものとなる。従って、製造工程を削減でき、製造コストを低減することができる。
【0069】
(第4の実施形態)
<力学量センサの製造方法>
さらに、3軸方向(X方向、Y方向、Z方向)の外力の大きさ及び方向並びに加速度を検知することのできる力学量センサ400の構成及び製造方法について、図12及び図13を参照して述べる。
【0070】
図12は、本発明の第4の実施形態に係る力学量センサ400を示す断面図である。図13は、図12に示した力学量センサ400の第2半導体基板407を底面から見た平面図である。なお、図12は、図13に示した力学量センサ400をD−D´線から見た断面を示す。
【0071】
力学量センサ400は、第3の実施形態に係る力学量センサ300と同様の製造工程を経て、第1半導体基板404に、固定部401、可動電極402、固定電極403a〜403h、及び固定部電極403jが形成され、第2半導体基板407に、凹部407a、絶縁層408、及び電極409a〜409iが形成される。
【0072】
また、力学量センサ400は、第3の実施形態に係る力学量センサ300とは異なり、Z方向の外力の大きさ及び方向並びに加速度を検知するために、第2半導体基板407に、固定電極403a〜403hと同様の機能を有する電極409kが、電極409a〜409iと同様の製造工程を経て形成される。また、第1半導体基板404には、電極409kに電気的に接続される固定電極403kが、固定電極403a〜403hと同様の製造工程を経て形成される。
【0073】
電極409kは、可動電極402と対向した位置にある第2半導体基板407の凹部407aに形成され、Z方向の外力によって変形した可動電極402が接触される位置に配置される。図12に示すように、第2半導体基板407の凹部407aには、絶縁層408が、電極409kの形成位置に合わせてパターニングすることにより形成され、絶縁層408の上に、電極409kがパターニングすることにより形成される。なお、図12及び図13には、Z方向の外力を検知する電極409kを一つだけ図示しているが、これに限定されず、仕様に応じて複数の電極を形成してもよい。検出方向に応じて固定電極409kを複数配置することにより、Z方向の外力の検出方向分解能を高めることができる。
【0074】
また、図12に図示した第1及び第3の実施形態に係る力学量センサ200、300と同様に、力学量センサ400においても、可動電極402が接触される固定電極403a〜403hの各端部から、電極409a〜409hの接続部までの距離d1は、それぞれ同じ距離とする。また、固定電極403a〜403hは、固定部401から一定距離d2に配置される。これにより、可動電極402が固定電極403a〜403hに接触するときの接触位置の違いによる抵抗値の差を低減することができる。
【0075】
固定電極403a〜403h、403k、及び固定部電極403jの、第2半導体基板407より外側に露出された部分には、ワイヤボンディング等によって力学量検出信号を処理する外部回路と接続されてもよい。これにより、力学量センサ400は、Z方向の外力の印加により、可動電極102が電極409kに接触されたときに、抵抗値の変化を検出することができるため、Z方向の外力の大きさを検出することが可能となる。
【0076】
以上の工程により製造された本発明の第4の実施形態に係る力学量センサ400によれば、3軸方向(X方向、Y方向、Z方向)の外力の大きさ及び方向並びに加速度を検知することができる。また、従来のピエゾ抵抗素子を利用したタイプのセンサや、静電容量型のセンサと比べ、構造が単純なものとなる。従って、製造工程を削減でき、製造コストを低減することができる。
【0077】
(第5の実施形態)
<力学量センサの製造方法>
以下、さらに、図14〜図16を参照して、本発明の第5の実施形態に係る力学量センサ500の製造方法を説明する。図14(A)〜(C)及び図15(A)、(B)は、力学量センサ500の断面の概略構造を示した製造工程を説明するための図であり、図16は、力学量センサ500のガラス基板504を上面から見たときの概略構造を示す平面図である。なお、図15(B)は、図16に示した力学量センサ500をE−E´線から見た断面を示す。
【0078】
(1)ガラス基板504の形成(図14(A),(B)参照)
ガラス基板504は、可動イオンを含むガラス基板(例えばテンパックス(登録商標)ガラス)を用いてもよい。図14(B)に図示したように、エッチングあるいはサンドブラストにより、ガラス基板504に、凹部504aを形成する。凹部504aは、後述する工程において、ガラス基板504と接合される半導体基板506に形成された可動電極502の形成位置に対応させて形成される。
【0079】
(2)配線用端子505a〜505e、505a´〜505e´の形成(図14(C)及び図16参照)
凹部504aの形成された側のガラス基板504の面上に、図14(C)及び図16に図示するように、配線用端子505a〜505e、505a´〜505e´を形成する。配線用端子505a〜505e、505a´〜505e´は、例えば、Cr層、Au層の順に金属層を蒸着法やスパッタ法等により形成し、不要な金属層をエッチングにより除去して形成してもよい。配線用端子505a〜505eは、後述する工程において、ガラス基板504と半導体基板506とが接合されると、半導体基板506に形成される固定部501及び固定電極503a〜503dにそれぞれ電気的に接続されるように、固定部501及び固定電極503a〜503dと対向する位置に形成される。配線用端子505a´〜505e´は、配線用端子505a〜505eに接続され、図16に図示するように、凹部504aの形成された側のガラス基板504の面上の一側端部近傍(図中のガラス基板504の上辺)に形成されてもよい。
【0080】
(3)ガラス基板504と半導体基板506との接合(図15(A)参照)
ガラス基板504と半導体基板506とを、陽極接合等により接合する。半導体基板506は、所望の抵抗率を有するように不純物が拡散された半導体基板である。図15(A)に図示したように、半導体基板506は、配線用端子505a〜505e、505a´〜505e´が形成された側のガラス基板504の面上に接合される。
【0081】
(4)半導体基板506の加工(図15(B)参照)
固定部501、可動電極502、および固定電極503a〜503dを加工するためのマスク(図示せず)を形成し、該マスクを介して半導体基板506をエッチングすることにより、固定部501、可動電極502、および固定電極503a〜503dが形成される位置を除いた凹部506aが形成される。これにより、ガラス基板504上には、配線用端子505a〜505eに電気的に接続された固定部501、可動電極502、および固定電極503a〜503dが形成される。エッチング方法として、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)を用いることができる。
【0082】
以上の工程により製造された本発明の第5の実施形態に係る力学量センサ500によれば、第1及び第3の実施形態に係る力学量センサ200、300と同様に、2軸方向(X方向、Y方向)の外力の大きさを検知することができる。また、従来のピエゾ抵抗素子を利用したタイプのセンサや、静電容量型のセンサと比べ、構造が単純なものとなる。従って、製造工程を削減でき、製造コストを低減することができる。
【0083】
上述したように、本発明の第1乃至第5の実施形態に係る力学量センサ200〜500は、2層または3層からなる基板を用いて、従来のエッチング方法やパターニング方法によって形成されるため、製造工程が簡易なものとなる。これにより、製造コストを増加させることなく、低コストに力学量センサ200〜500を製造することが可能となる。
【0084】
(変形例)
次に、以下では、図17〜図21を参照して、力学量センサの変形例について述べる。図17〜図21は、本発明の一実施形態に係る力学量センサ600〜1000の概略構造を示した平面図である。
【0085】
図17に図示したように、力学量センサ600は、可動電極602の内周側の渦巻きの間隔が広く、可動電極602の外周側の渦巻きの間隔が狭く形成されてもよい。これにより、外力が印加された際に、可動電極602の外周側の重みにより、固定電極603a〜603dと接触しやすくなる為、印加される外力が小さい場合であっても、抵抗値の変化として検出でき、外力の検出感度を向上させることができる。
【0086】
また、図18に図示したように、力学量センサ700は、可動電極702の最外周の、固定電極703a〜703dと対向する位置に、突起部702a〜702dを形成してもよい。突起部702a〜702dは、可動電極702の一部として形成され、可動電極702の製造工程と同じ製造工程により、同じ半導体基板をエッチングすることにより形成される。突起部702a〜702dを有することにより、外力が印加された際に、可動電極702は外周側に重みが付加され、且つ突起部702a〜702dが固定電極703a〜703dと接触しやすくなる為、外力の検出感度を向上させることができる。なお、図18には、矩形形状の突起部702a〜702dを図示しているが、この形状に限定されず、円形や三角形状であってもよい。突起部702a〜702dの厚みについても、仕様に応じて適宜変更される。また、突起部702a〜702dの数についても、図18に図示された数に限定されず、固定電極703a〜703dに対応させて複数配置することにより、外力の方位に対する解像度を向上させることができるため、仕様に応じて適宜変更される。
【0087】
さらに、図19に図示したように、力学量センサ800は、可動電極802の幅が、内周から外周に巻回するにつれて大きくなるように形成してもよい。図19には、可動電極802の最外周から三周内側の部分より外周に向かうにつれ、徐々に幅が大きくなる形状を図示している。可動電極802の幅を外周近傍ほど大きく形成することにより、外力が印加された際に、可動電極802の外周側の重みにより、固定電極803a〜803dと接触しやすくなる為、印加される外力が小さい場合であっても、抵抗値の変化として検出でき、外力の検出感度を向上させることができる。
【0088】
また、図20に図示したように、力学量センサ900は、可動電極902の幅が、最外周よりも内側の内周において最も大きくなるように形成してもよい。例えば、図20に図示したように、可動電極902の最外周から三周内側の部分を、幅が最も大きくなるように形成することにより、最外周から二周内側までの可動電極902が、三周内側の部分の重みにより、固定電極903a〜903dと接触しやすくなる。これにより、印加される外力が小さい場合であっても、抵抗値の変化として検出できる。また、幅の最も大きい部分よりも外側の複数巻回している部分が固定電極903a〜903dと接触しやすくなることから、外力に対する抵抗値の変化を大きくすることができる。従って、外力の検出感度を向上させることができる。なお、図20には、最外周から三周内側の部分の幅が最も大きくなる構造を図示したが、この形状に限定されず、可動電極902は、最外周よりも内側の部分に、幅の大きな箇所を複数有してもよい。
【0089】
また、図21に図示したように、力学量センサ1000は、可動電極1002の最外周よりも内側に、リング状の可動電極1002rを有してもよい。例えば、図21に図示したように、可動電極1002は、リング状の可動電極1002rの内周面に接続される第1可動電極1002aと、リング状の可動電極1002rの外周面に接続される第2可動電極1002bとを有し、可動電極1002の最外周から三周内側に、第1可動電極1002a及び第2可動電極1002bの各幅よりも厚い幅を有するリング状の可動電極1002rを有してもよい。第1可動電極1002a、リング状の可動電極1002r、及び第2可動電極1002bは、それぞれ第1基板1004から離隔して配置され、第1可動電極1002a及び第2可動電極1002bは、リング状の可動電極1002rの内側と外側に、それぞれ渦巻き状に配置される。
【0090】
第1可動電極1002a、リング状の可動電極1002r、及び第2可動電極1002bのZ方向の高さは、それぞれ50μmであってもよい。第1可動電極1002a及び第2可動電極1002bの幅は、例えば、15μmであってもよく、リング状の可動電極1002rの幅は、例えば、100μmであってもよい。リング状の可動電極1002rの幅を第1可動電極1002a及び第2可動電極1002bの幅より大きくすることにより、リング状の可動電極1002rの外側に配置された第2可動電極1002bは、固定電極1003a〜1003dと接触しやすくなる。また、第1可動電極1002aの渦巻きの間隔を50μmとし、第2可動電極1002bの渦巻きの間隔を15μmとしてもよい。リング状の可動電極1002rの外側に配置された第2可動電極1002bの間隔を、内側に配置された第1可動電極1002aの間隔よりも狭くすることにより、第2可動電極1002bが固定電極1003a〜1003dと接触しやすくなる。このような構成により、図20に図示した力学量センサ900と同様に、図21に図示した力学量センサ1000は、印加される外力が小さい場合であっても、抵抗値の変化として検出でき、外力に対する抵抗値の変化を大きくすることができる。従って、外力の検出感度を向上させることができる。なお、図21には、最外周から三周内側にリング状の可動電極1002rを有する形状を図示したが、この形状に限定されず、最外周よりも内側にリング状の可動電極1002rを複数有する形状であってもよい。
【0091】
以上のように、本発明の実施形態に係る力学量センサ600〜1000は、可動電極602〜1002の形状を変化させることにより、外力の検出感度を高めることができる。
【0092】
次に、力学量センサ100〜1100により検出される各力学量検出信号を処理する処理回路1110の構成例について、図22を参照して説明する。
【0093】
<処理回路>
図22は、処理回路1110の回路構成を示す図である。図22において、処理回路1110は、フィルタ回路1101から構成される。フィルタ回路1101の入力段には、力学量センサ1100が接続される。
【0094】
力学量センサ1100は、図22に図示したように、一端部には電源電圧Vccが接続され、他端部は接地される。力学量センサ1100は、可変抵抗回路として示している。フィルタ回路1101は、電源電圧VccとGNDに接続され、その入力段には、力学量センサ1100の可変抵抗値を検出する検出ラインLsが接続されている。
【0095】
力学量センサ1100は、印加される外力の大きさによって、抵抗値が変化すると、検出ラインLsとGNDとの間の検出電圧Vsが変化し、その検出電圧Vsに応じた検出信号が、フィルタ回路1101に入力される。フィルタ回路1101は、検出信号のノイズ成分を除去して、検出出力信号Voutとして外部に出力する。
【0096】
なお、処理回路1110から出力される検出信号は、印加される外力の大きさに応じて電圧値が変化する信号である。このため、処理回路1110から出力される検出信号の電圧値と外力の大きさの値を対応付けて記憶するメモリを用意しておき、このメモリから検出信号に対応する外力の大きさ示す値を出力させるようにしてもよい。
【0097】
図22に図示したように、本発明の実施形態に係る力学量センサ1100によれば、増幅回路等を用いる必要がない。従って、周辺回路を簡易な構成とすることができる。これにより、電子機器に力学量センサ1100を実装するときにスペースができるため、スペースを有効に活用することもできる。また、処理回路1110の製造コストを低減することができる。
【0098】
上述した本発明の実施の形態に係る力学量センサ100〜1100は、例えば、IC等の能動素子を搭載する回路基板上に実装され、ワイヤボンディング接続等の周知の方法および材料によって配線用端子と、電子回路基板もしくはIC等の能動素子とを接続することにより、力学量センサと電子回路とを1つの電子部品として提供することができる。この電子部品は、例えば、ゲーム機、携帯電話等のモバイル端末機等に搭載されて市場に流通することが可能である。
【符号の説明】
【0099】
力学量センサ…100、固定部…101、可動電極…102、固定電極…103a,103b,103c,103d、半導体基板・・・104

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板上に配置された固定部と、
前記固定部に一端部が支持されて前記第1基板から離隔して配置された可動電極と、
前記可動電極の周囲に位置し力学量の検出方向に配置された固定電極と、
前記固定部に電気的に接続された第1端子と、前記固定電極に電気的に接続された第2端子と、を備えることを特徴とする力学量センサ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−209283(P2011−209283A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53761(P2011−53761)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【分割の表示】特願2010−71318(P2010−71318)の分割
【原出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】