説明

動力伝達装置

【課題】動力伝達機構に連結する断続機構の組付け又は取り外し作業を容易にすると共に、断続機構の機能確認を実際の搭載に合う形で行うことができる動力伝達装置を提供する。
【解決手段】第1のケース3と、変速機構13と、第1のオイルとを有する動力伝達機構15と、一対の回転部材17,19と、断続部21と、アクチュエータ23と、第2のケース25と、第2のオイルとを有する断続機構27とからなる動力伝達装置1において、第2のケース25は、筒状部29と一端壁31を備えた第1のケース部材33と、筒状部29に一体的に連結する他端壁35を備えた第2のケース部材37とからなり、一対の回転部材17,19のいずれかの回転部材と一端壁31及び他端壁35との間、及び第1のケース部材33と第2のケース部材37との間に配置される第1のシール手段39,41,43を有し、第2のケース25の内部に第2のオイルを封入した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられる動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に駆動力伝達装置が記載されている。この駆動力伝達装置は、動力伝達機構の一例としてのデファレンシャル装置を収容するデファレンシャルキャリヤから延設されたドライブピニオンシャフトと連結する断続機構の一例としてのカップリング装置を含む構造である。カップリング装置は、デファレンシャルキャリヤの一端に固定されたカバーの内部空間に配置される。そして、カップリング装置は、カップリングケースとシャフトとXリングやOリングなどにより内部にオイルが密封されている。また、カバーの内部空間は、シール軸受やオイルシールなどにより流体空間(具体的にはエア室)に区画されている。さらに、デファレンシャルキャリヤ内の空間は、オイルシールなどによりデファレンシャル装置を潤滑する他のオイルが封入されている。
【0003】
特許文献2には断続機構の一例としてカップリング装置が記載されている。このカップリング装置は、特許文献1と同様にデファレンシャルキャリヤのキャリヤ本体の一端に固定されたフロントカバー内に配置されている。フロントカバー内にはオイルシールなどによりオイルが封入されている。このオイルは動力伝達機構の一例としてのリヤデフ側のオイルとは別な種類のオイルが使用され、カップリング装置の回転ケースに形成された油路からカップリング装置の内部を流通して潤滑している。
【特許文献1】特開平10−292827号公報
【特許文献2】特開2001−12507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1においては、カップリング装置のカップリングケースの内部に潤滑オイルが密封されているので、十分なオイル量を確保することができず、摩擦クラッチによるトルク伝達によってオイルが昇温・劣化する問題があった。
【0005】
このことから、特許文献2のように、フロントカバー内にオイルを封入し、カップリング装置の内部と流通させることによって、オイルの昇温・劣化を抑制することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献2の構造においては、デファレンシャルキャリヤ側との区画構造に問題があった。それは、オイルシールによってキャリヤ本体とフロントカバーのそれぞれの内部空間が別な種類のオイルを封入されるように区画されるが、カップリング装置を組付け又は取り外しに当たっては、キャリヤ本体からフロントカバーを外すと、フロントカバー内の空間に封入されたオイルが外部に漏れ出し、保持することができない。また、オイルシールを外すと、キャリヤ本体内の空間に封入されたオイルが外部に漏れ出し、保持することができない。つまり、リヤデフ及びカップリング装置の組付け又は取り外しが相互に関係し合う構造であった。この構造により、カップリング装置とリヤデフのそれぞれの動作確認や、各々の動作不具合による交換作業を単独で行うことができず、組付け又は取り外し作業の工数が多大になる課題を有していた。
【0007】
そこで、この発明は、動力伝達機構に連結する断続機構の組付け又は取り外し作業を容易にすると共に、断続機構の機能確認を実際の搭載に合う形で行うことができる動力伝達装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、第1のケースと、該第1のケース内に支承され少なくとも一組の動力伝達軸に設けられた変速ギヤ組を備えた変速機構と、前記第1のケース内に配置され前記変速機構を潤滑する第1のオイルとを有する動力伝達機構と、一対の回転部材と、該一対の回転部材間に配置され駆動力を断続する断続部と、前記断続部を操作するアクチュエータと、前記一対の回転部材と前記断続部とを収容し前記第1のケースに連結される第2のケースと、該第2のケース内に配置され前記断続部を潤滑する第2のオイルとを有する断続機構とからなる動力伝達装置であって、前記第2のケースは、筒状部と一端壁を備えた第1のケース部材と、前記筒状部に一体的に連結する他端壁を備えた第2のケース部材とからなり、前記一対の回転部材のいずれかの回転部材と前記一端壁及び前記他端壁との間、及び前記第1のケース部材と前記第2のケース部材との間に配置される第1のシール手段を有し、前記第2のケースの内部には、前記第2のオイルが封入されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の動力伝達装置であって、前記一対の回転部材は、筒状の外側回転部材と、軸状の内側回転部材とからなり、前記軸状の内側回転部材は軸心側に中空部を備え、該中空部には、前記第2のケースの内部にオイルを封入するための第2のシール手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2記載の動力伝達装置であって、前記第1のケース部材は、ベアリングを介して前記筒状の外側回転部材を支持し、前記第2のケース部材は、ベアリングを介して前記軸状の内側回転部材を支持することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、前記第2のケース部材は、外周側で前記第1のケース部材に一体的に連結し、内周側に前記一対の回転部材のいずれかの回転部材と前記他端壁との間に配置される前記第1のシール手段を固定することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、前記動力伝達機構は、前記第1のケースに支持され、一端が前記第1のケースから軸方向に突出して前記一対の回転部材のいずれか一方に一体回転可能に連結する軸部材を備え、前記第1のケースと前記軸部材との間に配置され、前記第1のオイルを前記第1のケース内に区画する第3のシール手段を有することを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項5記載の動力伝達装置であって、前記軸部材の一端には外周にスプライン部が形成され、該スプライン部は前記一対の回転部材のうち一方の軸心側に形成されたスプライン孔に嵌合連結され、前記スプライン部は、前記第1のケースと前記第2のケースと前記第1のシール手段の一部と前記第3のシール手段とによって前記第1のオイル及び前記第2のオイルから区画された第3のオイルで潤滑されることを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6記載の動力伝達装置であって、前記第3のオイルは前記スプライン部に塗布されるグリスであって、区画空間にはグリスと空気が内在していることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、前記第2のケース部材の前記他端壁には、前記第2のケース内に封入された前記第2のオイルを前記断続機構に強制的に供給するオイルポンプが設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、前記第2のケース部材は、板材の他端壁に前記第1のケース部材の内周面に固定される外周部と、前記一対の回転部材のいずれかに摺動する内周部とからなる第1のシール手段が固着形成された円盤状部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の動力伝達装置は、断続機構を収容する第2のケースが第1のケース部材と第2のケース部材とからなり、第2のケースが第1のシール手段を有して第2のケースの内部に第2のオイルが封入されているので、動力伝達機構を収容し第1のオイルを有する第1のケースから第2のケースを組付け又は取り外したとしても第2のケースから第2のオイルが外部に漏れ出すことがない。
【0018】
従って、動力伝達機構に連結する断続機構の組付け又は取り外し作業を容易にすることができると共に、断続機構の機能確認を実際の搭載に合う形で行うことができる。
【0019】
請求項2の動力伝達装置は、中空部が第2のオイルの保持空間として機能するので、第2のケース内部に封入されるオイルのオイルレベルを低減させつつも、断続機構を潤滑する適切なオイル量を保持することができる。また、断続機構の回転時には中空部のオイルが筒状の外側回転部材の外周側に排出されて、外周側を十分なオイル量で冷却することができる。
【0020】
請求項3の動力伝達装置は、第1のシール手段によって第2のケース内にオイルを封入できると共に、各ベアリングによって断続機構を確実に支持して、第1のシール手段の摺動部の偏心動作を抑制することができる。また、シール機能が安定し、耐久性を得ることができる。
【0021】
請求項4の動力伝達装置は、固定部を外周側にすることで単位面積当たりの連結部の連結強度を低減でき、シール手段の固定部を内周側にすることでシール手段の摺動半径を小径にして周速を抑制し、シール手段の耐久性を向上することができる。
【0022】
請求項5の動力伝達装置は、動力伝達機構が第1のケース内に第1のオイルよって潤滑されるように区画され、断続機構が第2のケース内に第2のオイルによって潤滑されるように区画されている。このため、各々の機構は、それぞれのケース内に配置され、それぞれ組付け又は取り外し作業を容易にすると共に、それぞれの機能確認を実際の搭載に合う形で行うことができる。また、動力伝達装置に不具合が生じた場合にも、各機能ごとに単独で交換可能になり、メンテナンス性を向上することができる。
【0023】
請求項6の動力伝達装置は、スプライン部が第1と第2のオイルから区画された第3のオイルで潤滑されるので、専用かつ少量のオイルを用いることができる。
【0024】
なお、第3のオイルは、常温で流動するメカニカルオイルや常温で固体のグリースなどスプライン部の磨耗を抑制する機能を有すればいかなるものであっても良い。
【0025】
請求項7の動力伝達装置は、空気はオイルなどの流体ではないので、第1のシール手段の一部と第3のシール手段によって区画される第1のオイル又は第2のオイルに混ざり合っても問題になることはない。従って、第1のシール手段の一部と第3のシール手段に、第1のオイル及び第2のオイルの漏れを防止する方向に安価なオイルシールを用いてコストを低減することができる。さらに、万一、第1のオイル及び第2のオイルが漏れた場合にも、即座に第1と第2のオイルが相互に混ざり合うことを抑制することができる。
【0026】
請求項8の動力伝達装置は、他端壁に対してオイルポンプを設けることで、組付けを容易にすることができる。
【0027】
請求項9の動力伝達装置は、第2のケース部材を板材に固着形成された第1のシール手段を有する円盤状部材で形成することで、組付性を向上し、軽量化を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
まず、図1を用いて各実施例の動力伝達装置が適用される車両の動力系について説明する。なお、ここでは、第1実施例の動力伝達装置1を用いるが、他の実施例の動力伝達装置が適用される車両の動力系についても同様である。
【0029】
図1に示すように、車両の動力系は、原動機としてのエンジン701及び変速機構としてのトランスミッション703と、フロントデフ705と、前車軸707,709と、前輪711,713と、トランスファ715と、後輪側プロペラシャフト717と、断続機構27と動力伝達機構15とを備えた動力伝達装置1と、リヤデフ63と、後車軸719,721と、後輪723,725などから構成されている。
【0030】
エンジン701の駆動力はトランスミッション703からデフケース727を介してフロントデフ705に伝達され、一対のサイドギヤ729,731を介して前車軸707,709から前輪711,713に配分されると共に、デフケース727に伝達された駆動力が中空軸733から変速ギヤ組735と変換ギヤ組737とを介して後輪側プロペラシャフト717に伝達され、動力伝達装置1の断続機構27と動力伝達機構15とを介してリヤデフ63に伝達され、後車軸719,721から後輪723,725に配分される。
【0031】
そして、前輪側と後輪側とは動力伝達装置1の断続機構27によって断続され、断続機構27が接続されると、車両は前後輪駆動の4輪駆動状態となり、断続機構27の接続が解除されると、車両は前輪駆動の2輪駆動状態となる。以下、動力伝達装置1について説明する。
【0032】
(第1実施例)
図2を用いて第1実施例について説明する。
【0033】
本実施例の動力伝達装置1は、第1のケース3と、第1のケース3内に支承され少なくとも一組の動力伝達軸7,9に固定して設けられた変速ギヤ組11を備えた変速機構13と、第1のケース3内に配置され変速機構13を潤滑する第1のオイル4とを有する動力伝達機構15と、一対の回転部材17,19と、一対の回転部材17,19間に配置され駆動力を断続する断続部21と、断続部21を操作するアクチュエータ23と、一対の回転部材17,19と断続部21とを収容し第1のケース3に連結される第2のケース25と、第2のケース25内に配置され断続部21を潤滑する第2のオイル26とを有する断続機構27とからなっている。そして、第2のケース25は、筒状部29と一端壁31を備えた第1のケース部材33と、筒状部29に一体的に連結する他端壁35を備えた第2のケース部材37とからなり、一対の回転部材17,19のいずれかの回転部材17と一端壁31及び他方の回転部材19と他端壁35との間、及び第1のケース部材33と第2のケース部材37との間に配置される第1のシール手段39,41,43を有し、第2のケース25の内部には、第2のオイル26が封入されている。
【0034】
また、一対の回転部材17,19は、筒状の外側回転部材17と、軸状の内側回転部材19とからなり、軸状の内側回転部材19は軸心側に中空部45を備え、中空部45には、第2のケース25の内部にオイルを封入するため、内側回転部材19と別体に形成された後、軸心側に圧入された第2のシール手段としての皿状プラグ47を備えている。
【0035】
さらに、第1のケース部材33は、ベアリング49を介して筒状の外側回転部材17を支持し、第2のケース部材37は、ベアリング51を介して軸状の内側回転部材19を支持している。なお、第1のケース部材33とベアリング49との間には後述するアクチュエータ23の一部である電磁石87が介在するが、電磁石87は第1のケース部材33にボルトなどの固定手段を介して固着されているので、実質的な支持関係は直接支持する場合と同じである。
【0036】
また、第2のケース部材37は、外周側で第1のケース部材33に一体的に連結し、内周側に第1のシール手段41を固定して内側回転部材19の外周面と摺動している。
【0037】
さらに、動力伝達機構15は、第1のケース3に支持され、一端が第1のケース3から軸方向に突出して一対の回転部材17,19のいずれか一方に一体回転可能に連結する軸部材7を備え、第1のケース3と軸部材7との間に配置され、第1のオイル4を第1のケース3内に区画する第3のシール手段53を有する。
【0038】
また、軸部材7の一端には外周にスプライン部55が形成され、スプライン部55は一対の回転部材17,19のうち一方の内側回転部材19の軸心側に形成されたスプライン孔57に嵌合連結され、スプライン部55は、第1のケース3と第2のケース25と第1のシール手段の一部としてのシール43及び41と第3のシール手段53とによって第1のオイル4及び第2のオイル26から区画された第3のオイルで潤滑される。
【0039】
さらに、第3のオイルはスプライン部55に塗布されるグリスであって、区画空間59にはグリスと空気が内在している。
【0040】
図2に示すように、動力伝達機構15は、第1のケース3と、変速機構13と、第1のオイル4とを有している。第1のケース3は、複数のケース部材の分割構造からなり、変速機構13の変速ギヤ組11を収容している。
【0041】
変速機構13は、変速ギヤ組11を備えている。変速ギヤ組11は、軸部材7と一体的に設けられたドライブピニオンギヤ61とリヤデフ63(図1)のデフケース65と別体に形成された後、固定して設けられたリングギヤ67から構成されている。軸部材7は、ベアリング69,71を介して第1のケース3に支持され、一端が第1のケース3から軸方向に突出している。ベアリング69は、軸部材7の外周に締め込まれるナット73によって固定される。また、ベアリング69,71間には、スペーサ75が設けられている。このような動力伝達機構15の摺動部材は、第1のケース3内に配置された第1のオイル4によって潤滑される。また、変速ギヤ組11は、断続機構27が接続されると駆動力が伝達され、リヤデフ63側に駆動力が伝達される。
【0042】
断続機構27は、筒状の外側回転部材17と、軸状の内側回転部材19と、断続部21と、アクチュエータ23と、第2のケース25と、第2のオイル26とを有している。
【0043】
筒状の外側回転部材17は、後輪側プロペラシャフト717(図1)に連結されたジョイント部材77にスプライン部79でスプライン連結されている。この筒状の外側回転部材17は、アクチュエータ23を支持するベアリング49を介して第2のケース25の第1のケース部材33に支持されている。軸状の内側回転部材19は、中空部45が形成されている。この中空部45には、スプライン孔57が形成され、軸部材7のスプライン部55と嵌合連結されている。この軸状の内側回転部材19は、ベアリング81を介して外側回転部材17に支持され、ベアリング51を介して第2のケース25の第2のケース部材37の内周面に支持されている。
【0044】
断続部21は、筒状の外側回転部材17の内周と軸状の内側回転部材19の外周に連結された複数のクラッチ板によって構成されている。また、クラッチ板の第1のケース3側にはクラッチ板の軸方向移動を受ける受け部材83が設けられ、この受け部材83の外周側の端部にはスナップリング85が筒状の外側回転部材17の内周に嵌合されており、受け部材83を軸方向一方に固定している。この断続部21は、アクチュエータ23によって移動操作され、断続部21が接続されると筒状の外側回転部材17と軸状の内側回転部材19とが接続、すなわち、前輪側と後輪側とが接続されてエンジン701(図1)の駆動力が後輪側に伝達される。
【0045】
アクチュエータ23は、電磁石87と、パイロットクラッチ89と、アーマチャ91と、カム機構93から構成されている。電磁石87は、第2のケース25に収容されベアリング49を介して筒状の外側回転部材17を支持している。また、電磁石87のリード線95(図1)は、第2のケース25の外部に引き出されてコントローラ(不図示)に接続され、その作動を制御されている。
【0046】
パイロットクラッチ89は、筒状の外側回転部材17の内周とカムリング97の外周に連結された複数のクラッチ板によって構成されている。アーマチャ91は、筒状の外側回転部材17の内周に連結され、電磁石87の通電により発生する磁力線が筒状の外側回転部材17とパイロットクラッチ89とアーマチャ91とを透過することにより電磁石87側に軸方向移動され、パイロットクラッチ89を締結する。パイロットクラッチ89が締結されると、カム機構93でカムスラスト力が発生される。
【0047】
カム機構93は、カムリング97と、プレッシャプレート99と、カムボール101から構成されている。カムリング97は、軸状の内側回転部材19の外周に支持され、筒状の外側回転部材17との間にカムスラスト力を受けるベアリング103が配置されている。プレッシャプレート99は、軸状の内側回転部材19の外周に支持されている。カムボール101は、カムリング97とプレッシャプレート99との間に配置されている。このカム機構93は、パイロットクラッチ89が締結することによりカムリング97とプレッシャプレート99との間に差回転が生じてカムスラスト力が発生し、プレッシャプレート99が軸方向移動され、断続部21を締結させる。これらの断続機構27は、第2のケース25に収容されている。
【0048】
第2のケース25は、第1のケース部材33と第2のケース部材37からなっている。第1のケース部材33は、筒状部29と一端壁31を備えている。筒状部29には断続機構27が収容され、一端壁31側には電磁石87が配置され、リード線95が外部に引き出されている。この第1のケース部材33は、他端側で第1のケース3にボルト105で固定されている。第2のケース部材37は、筒状部29の先端面に一体的に連結する他端壁35を備えている。この他端壁35の外周側は、第1のケース部材33にボルト107で連結固定されている。また、第2のケース部材37は、ボルト107の固定部の内周側に連続して円筒面が形成され、さらにこの円筒面に形成された環状凹溝にOリングを配置して、第1のケース部材33の内周面に対して封止嵌合されるように取り付けられている。このような断続機構27の摺動部材は、第2のケース25内に配置された第2のオイル26によって潤滑される。
【0049】
このような動力伝達装置1の第1のケース3及び第2のケース25は、各シール手段によって区画されている。
【0050】
第2のケース25は、筒状の外側回転部材17と第1のケース部材33の一端壁31との間、軸状の内側回転部材19と第2のケース部材37の他端壁35の内周側との間、及び第1のケース部材33と第2のケース部材37との間には、第1のシール手段39,41及びOリング43(第1のシール手段)が配置されている。この第1のシール手段39,41及びOリング43により、第2のケース25内に第2のオイル26が封入されている。また、軸状の内側回転部材19の中空部45には、第2のシール手段としての皿状プラグ47が配置されている。この第2のシール手段47により、第2のケース25の内部に第2のオイル26が封入されている。
【0051】
第1のケース3と軸部材7との間には、第3のシール手段53が配置され、第1のケース3に封入される第1のオイル4を第1のケース3外部から区画している。また、軸状の内側回転部材19のスプライン孔57と軸部材7のスプライン部55には、第3のオイルであるグリスが塗布されている。また、スプライン部55は、第1のケース3と第2のケース25と第1のシール手段41の一部と第3のシール手段53とによって第1のオイル4及び第2のオイル26から区画された区画空間59に配置されている。この区画空間59には、グリスと空気が内在している。なお、軸部材7の外周に締め込まれるナット73の外周側に円周面を形成して第1のケース3とナット73との間に第3のシール手段109を配置しても良い。
【0052】
このような動力伝達装置1では、断続機構27を収容する第2のケース25が第1のケース部材33と第2のケース部材37とからなり、第2のケース25が第1のシール手段39,41,43を有して第2のケース25の内部に第2のオイル26が封入されているので、動力伝達機構15を収容し第1のオイル4を有する第1のケース3から第2のケース25を組付け又は取り外したとしても第2のケース25から第2のオイル26が外部に漏れ出すことがない。
【0053】
従って、動力伝達機構15に連結する断続機構27の組付け又は取り外し作業を容易にすることができると共に、断続機構27の機能確認を実際の搭載に合う形で行うことができる。
【0054】
また、軸状の内側回転部材19の中空部45が第2のオイル26の保持空間として機能するので、第2のケース25内部に封入されるオイルのオイルレベルを低減させつつも、断続機構27を潤滑する適切なオイル量を保持することができる。また、断続機構27の回転時には中空部45のオイルが断続機構27側に流出されて、さらに、第2のオイル26は筒状の外側回転部材17に形成された開口18,20から第2のケース25内に排出される。また、開口18,20,22からは逆に断続機構27に対して第2のオイル26を供給することもできる。よって、十分なオイル量で潤滑・冷却することができる。
【0055】
さらに、第1のシール手段39,41,43によって第2のケース25内にオイルを封入できると共に、各ベアリング49,51によって断続機構27を確実に支持して、第1のシール手段39,41の摺動部の偏心動作を抑制することができる。また、シール機能が向上し、耐久性を得ることができる。
【0056】
また、第2のケース部材37と第1のケース部材33の固定部を外周側にすることで単位面積当たりの連結部の連結強度を低減して、ボルト107などによる連結構造をコンパクト化することができる。また、シール手段41の固定部を内周側にすることでシール手段41の摺動半径を小径にして周速を抑制し、シール手段41の耐久性を向上することができる。なお、第1のケース部材33と第2のケース部材37との連結構造は、ボルトに限らず、接着、圧入、溶接、ダブルナットなど他の構造を採ることもできるが、外周側に設けているので連結強度を低く抑えることができる。
【0057】
さらに、動力伝達機構15が第1のケース3内に第1のオイル4よって潤滑されるように区画され、断続機構27が第2のケース25内に第2のオイル26によって潤滑されるように区画されている。このため、各々の機構は、それぞれのケース内に配置され、それぞれ組付け又は取り外し作業を容易にすると共に、それぞれの機能確認を実際の搭載に合う形で行うことができる。また、動力伝達装置1に不具合が生じた場合にも、各機能ごとに単独で交換可能になり、メンテナンス性を向上することができる。
【0058】
また、スプライン部55が第1と第2のオイル26から区画された第3のオイルであるグリスで潤滑されるので、専用かつ少量のオイルを用いることができる。
【0059】
さらに、区画空間59には空気とグリスとが内在されており、空気はオイルなどの流体ではないので、第1のシール手段41の一部と第3のシール手段53によって区画される第1のオイル4又は第2のオイル26に混ざり合っても問題になることはない。従って、第1のシール手段41の一部と第3のシール手段53に、第1のオイル4及び第2のオイル26の漏れを防止する方向に安価なオイルシールを用いてコストを低減することができる。さらに、万一、第1のオイル4及び第2のオイル26が漏れた場合にも、即座に第1と第2のオイル26が相互に混ざり合うことを抑制することができる。
【0060】
(第2実施例)
図3を用いて第2実施例について説明する。
【0061】
本実施例の動力伝達装置201は、第2のケース部材203の他端壁205には、第2のケース25内に封入された第2のオイル26を断続機構27に強制的に供給するオイルポンプ207が設けられている。なお、第1実施例と同一の構成には、同一の記号を記して説明を省略するが、第1実施例と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0062】
図3に示すように、第2のケース部材203の他端壁205には、オイルポンプ207が設けられている。このオイルポンプ207は、図示外のボルトにより他端壁205に対して取り付けられ、第2のケース部材203と一体的に取り扱うことができる。また、オイルポンプ207は、そのロータの内周部が内側回転部材19の外周部に設けられた切欠き部に嵌合して一体に回転する。そして、第2のケース部材203内に封入された第2のオイル26を取入口206からオイルポンプ207の内部に取込み、吐出口208からベアリング209の隙間、そして断続部21の各インナープレートに形成された開口22、プレッシャプレート99に形成された開口100などを介して断続部21の摩擦摺動部やパイロットクラッチ89の摩擦摺動部などを潤滑した後、外側回転部材17の筒部に形成された開口18を通過して再び第2のケース25内の収容空間に放出され、その後取入口206に流入するオイル潤滑経路が構成されている。また、受け部材83の内周側には、ベアリング209が設けられ、軸状の内側回転部材19が安定して支持されている。
【0063】
このような動力伝達装置201では、断続機構27を収容する第2のケース25が第1のケース部材33と第2のケース部材203とからなり、第2のケース25が第1のシール手段39,41,43を有して第2のケース25の内部に第2のオイル26が封入されているので、動力伝達機構を収容し第1のオイル4を有する第1のケースから第2のケース25を組付け又は取り外したとしても第2のケース25から第2のオイル26が外部に漏れ出すことがない。
【0064】
従って、動力伝達機構に連結する断続機構27の組付け又は取り外し作業を容易にすることができると共に、断続機構27の機能確認を実際の搭載に合う形で行うことができる。
【0065】
また、他端壁205に対してオイルポンプ207を設けることで、組付けを容易にすることができる。
【0066】
(第3実施例)
図4を用いて第3実施例について説明する。
【0067】
本実施例の動力伝達装置301は、軸状の内側回転部材303の中空部305には、第2のケース25の内部にオイルを封入するための隔壁307(第2のシール手段)を備えている。なお、第1実施例と同一の構成には、同一の記号を記して説明を省略するが、第1実施例と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0068】
図4に示すように、軸状の内側回転部材303の中空部305には、第2のシール手段としての隔壁307が設けられている。この隔壁307を中空部305と対向するように軸状の内側回転部材303と一体形成して設けることにより、シール手段を別途設ける必要がなく、部品点数が増加することがない。また、軸状の内側回転部材303は、受け部材83とベアリング309を介して第1のケース部材33に支持されている。
【0069】
このような動力伝達装置301では、断続機構27を収容する第2のケース25が第1のケース部材33と第2のケース部材37とからなり、第2のケース25が第1のシール手段39,41,43を有して第2のケース25の内部に第2のオイル26が封入されているので、動力伝達機構を収容し第1のオイル4を有する第1のケースから第2のケース25を組付け又は取り外したとしても第2のケース25から第2のオイル26が外部に漏れ出すことがない。
【0070】
従って、動力伝達機構に連結する断続機構27の組付け又は取り外し作業を容易にすることができると共に、断続機構27の機能確認を実際の搭載に合う形で行うことができる。また、第2のケース部材37は、その外周面を第1のケース部材33の内周面に嵌合して互いの軸方向対向面とスナップリングの軸方向面との間で狭持されることで、組付け位置を安定して保持させることができる。
【0071】
また、軸状の内側回転部材303の中空部305が第2のオイル26の保持空間として機能するので、第2のケース25内部に封入されるオイルのオイルレベルを低減させつつも、断続機構27を潤滑する適切なオイル量を保持することができる。また、断続機構27の回転時には中空部305のオイルが筒状の外側回転部材17の外周側に排出されて、外周側を十分なオイル量で冷却することができる。
【0072】
さらに、隔壁307を中空部305に設けることで、部品点数を低減することができる。
【0073】
(第4実施例)
図5を用いて第4実施例について説明する。
【0074】
本実施例の動力伝達装置401は、第2のケース403は、筒状部405と一端壁407を備えた第1のケース部材409と、筒状部405に一体的に連結する他端壁411を備えた第2のケース部材413とからなり、一対の回転部材17,19のいずれか一方の回転部材17と他端壁411との間、及び他方の回転部材19と一端壁407との間に配置される第1のシール手段415,417を有し、第2のケース403の内部には、第2のオイル26が封入されている。なお、第1実施例と同一の構成には、同一の記号を記して説明を省略するが、第1実施例と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0075】
図5に示すように、第2のケース403は、第1のケース部材409と第2のケース部材413からなっている。第1のケース部材409は、筒状部405と一端壁407を備えている。筒状部405には断続機構27が収容され、一端壁407側で第1のケース3に固定されている。第2のケース部材413は、筒状部405に一体的に連結する他端壁411を備えている。他端壁411は第1のケース部材409に固定され、この他端壁411側にはアクチュエータ23が配置され、リード線95が外部に引き出されている。また、内側回転部材19と第1のケース部材409の一端壁407との間、及び外側回転部材17と第2のケース部材413の他端壁411との間には、第1のシール手段415,417が配置されている。そして、断続機構27の摺動部材は、第2のケース403内に配置された第2のオイル26によって潤滑される。
【0076】
このような動力伝達装置401では、断続機構27を収容する第2のケース403が第1のケース部材409と第2のケース部材413とからなり、第2のケース403が第1のシール手段415,417を有して第2のケース403の内部に第2のオイル26が封入されているので、動力伝達機構15を収容し第1のオイル4を有する第1のケース3から第2のケース403を組付け又は取り外したとしても第2のケース403から第2のオイル26が外部に漏れ出すことがない。
【0077】
従って、動力伝達機構15に連結する断続機構27の組付け又は取り外し作業を容易にすることができると共に、断続機構27の機能確認を実際の搭載に合う形で行うことができる。
【0078】
また、他端壁411に対してアクチュエータ23を配置することで、アクチュエータの組付けを容易にすることができる。
【0079】
(第5実施例)
図6を用いて第5実施例について説明する。
【0080】
本実施例の動力伝達装置501は、第2のケース503は、筒状部505と一端壁507を備えた第1のケース部材509と、筒状部505に一体的に連結する他端壁511を備えた第2のケース部材513とからなり、一対の回転部材17,19のいずれか一方の回転部材17と一端壁507との間、及び他方の回転部材19と他端壁511との間に配置される第1のシール手段515,517を有し、第2のケース503の内部には、第2のオイル26が封入されている。なお、第1実施例と同一の構成には、同一の記号を記して説明を省略するが、第1実施例と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0081】
図6に示すように、第2のケース503は、第1のケース部材509と第2のケース部材513からなっている。第1のケース部材509は、筒状部505と一端壁507を備えている。筒状部505には断続機構27が収容されている。この第1のケース部材509は、他端側で第1のケース3に固定されている。第2のケース部材513は、筒状部505に一体的に連結する他端壁511を備えている。他端壁511は第1のケース部材509に固定され、この他端壁511側にはアクチュエータ23が配置されている。このアクチュエータ23のリード線95は、他端壁511と第1のケース3との間に引き出されて外部に引き出されている。また、外側回転部材17と第1のケース部材509の一端壁507との間、内側回転部材19と第2のケース部材513の他端壁511との間には、第1のシール手段515,517が配置されている。そして、断続機構27の摺動部材は、第2のケース503内に配置された第2のオイル26によって潤滑される。
【0082】
このような動力伝達装置501では、断続機構27を収容する第2のケース503が第1のケース部材509と第2のケース部材513とからなり、第2のケース503が第1のシール手段515,517を有して第2のケース503の内部に第2のオイル26が封入されているので、動力伝達機構15を収容し第1のオイル4を有する第1のケース3から第2のケース503を組付け又は取り外したとしても第2のケース503から第2のオイル26が外部に漏れ出すことがない。
【0083】
従って、動力伝達機構15に連結する断続機構27の組付け又は取り外し作業を容易にすることができると共に、断続機構27の機能確認を実際の搭載に合う形で行うことができる。
【0084】
また、他端壁511に対してアクチュエータ23を配置することで、アクチュエータの組付けを容易にすることができると共に、アクチュエータ23の配置の自由度を向上することができる。
【0085】
(第6実施例)
図7を用いて第6実施例について説明する。
【0086】
本実施例の動力伝達装置601は、第1のケース部材603は、ベアリング605を介して筒状の外側回転部材17の一端側を支持し、第2のケース部材607は、ベアリング609を介して筒状の外側回転部材17の他端側を支持している。なお、第1実施例と同一の構成には、同一の記号を記して説明を省略するが、第1実施例と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0087】
図7に示すように、筒状の外側回転部材17は、一端壁31側をベアリング605を介して第1のケース部材603に支持され、他端壁35側をベアリング609を介して第2のケース部材607に支持されている。このように筒状の外側回転部材17の両側をベアリング605,609を介して第2のケース25に支持することにより、断続機構27が安定して支持される。
【0088】
このような動力伝達装置601では、断続機構27を収容する第2のケース25が第1のケース部材603と第2のケース部材607とからなり、第2のケース25が第1のシール手段39,41,43を有して第2のケース25の内部に第2のオイル26が封入されているので、動力伝達機構を収容し第1のオイル4を有する第1のケース3から第2のケース25を組付け又は取り外したとしても第2のケース25から第2のオイル26が外部に漏れ出すことがない。
【0089】
従って、動力伝達機構に連結する断続機構27の組付け又は取り外し作業を容易にすることができると共に、断続機構27の機能確認を実際の搭載に合う形で行うことができる。
【0090】
また、筒状の外側回転部材17の両側が第2のケース25に支持されているので、断続機構27の支持が向上し、断続特性を安定することができる。
【0091】
(第7実施例)
図8を用いて第7実施例について説明する。
【0092】
本実施例の動力伝達装置801は、第2のケース部材803は、板材の他端壁805に第1のケース部材33の内周面に固定される外周部807と、一対の回転部材17,303のいずれかに摺動する内周部809とからなる第1のシール手段811,813が固着形成された円盤状部材815である。なお、第1,3実施例と同一の構成には、同一の記号を記して説明を省略するが、第1,3実施例と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0093】
図8に示すように、第2のケース部材803は、板材の他端壁805に固着形成された外周部807と内周部809とを備えた円盤状部材815となっている。外周部807は、ゴム材で形成されて板材の他端壁805に固着形成され、第1のケース部材33の内周面に固定されることにより、第1のシール手段811として機能している。内周部809は、ゴム材で形成されて板材の他端壁805に固着形成され、軸状の内側回転部材303の外周に摺動することにより、第1のシール手段813として機能している。この第2のケース部材803は、板材とゴム材からなる円盤状部材815として構成され、第1のケース部材33の内周面に圧入固定されている。なお、第1のシール手段811,813を板材とゴム材とからなる円盤状部材815で形成しているが、強度向上のために板材に放射状や格子状、或いは同心円状などのリブを形成しても良い。
【0094】
このような動力伝達装置801では、断続機構27を収容する第2のケース25が第1のケース部材33と第2のケース部材803とからなり、第2のケース25が第1のシール手段39,811,813を有して第2のケース25の内部に第2のオイル26が封入されているので、動力伝達機構を収容し第1のオイル4を有する第1のケース3から第2のケース25を組付け又は取り外したとしても第2のケース25から第2のオイル26が外部に漏れ出すことがない。
【0095】
従って、動力伝達機構に連結する断続機構27の組付け又は取り外し作業を容易にすることができると共に、断続機構27の機能確認を実際の搭載に合う形で行うことができる。
【0096】
また、第2のケース部材803を板材に固着形成された第1のシール手段811,813を有する円盤状部材815で形成することで、組付性を向上し、軽量化を行うことができる。
【0097】
さらに、内側回転部材303のスプライン部57の端部外周に第1のシール手段811,813を設けることで、第1のケース3に支持される軸部材7の先端のスプライン部55の支持ベアリング69側に近い側に第1のシール手段811,813を配置することになる。すなわち、第1のシール手段811,813に対する軸部材7の振れの影響をできるだけ抑制することができ、耐久性を向上することができる。
【0098】
また、円盤状部材815の外周側は、第1のケース部材33の内周面に圧入固定されるので、ボルトなどの取付部材が不要であり、大きな取付スペースが不要となり、各実施例の構造に対してさらに小型化が可能になる。
【0099】
なお、アクチュエータは、電磁石を用いたものに限らず、油圧シリンダとピストンを用いたものや、一対の回転部材と回転軸心をオフセットさせ第2のケースに取り付けられた電動モータと一対の回転部材と回転軸心を合わせて取り付けられたカム機構とを用いたものなど種々のアクチュエータを適宜選択して採用することができる。
【0100】
また、断続機構も多板摩擦クラッチに限られるものではなく、伝達トルクを断続可能な構成であれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】車両の動力系を示す概略図である。
【図2】第1実施例の動力伝達装置の要部拡大断面図である。
【図3】第2実施例の動力伝達装置の要部拡大断面図である。
【図4】第3実施例の動力伝達装置の要部拡大断面図である。
【図5】第4実施例の動力伝達装置の概略図である。
【図6】第5実施例の動力伝達装置の概略図である。
【図7】第6実施例の動力伝達装置の要部拡大断面図である。
【図8】第7実施例の動力伝達装置の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0102】
1,201,301,401,501,601,801…動力伝達装置
3…第1のケース
5…キャリヤケース
7…軸部材(動力伝達軸)
9…動力伝達軸
11…変速ギヤ組
13…変速機構
15…動力伝達機構
17…外側回転部材(一対の回転部材)
19,303…内側回転部材(一対の回転部材)
21…断続部
23…アクチュエータ
25,403,503…第2のケース
27…断続機構
29,405,505…筒状部
31,407,507…一端壁
33,409,509,603…第1のケース部材
35,205,411,511,805…他端壁
37,203,413,513,607,803…第2のケース部材
39,41,415,515,811,813…第1のシール手段
43…Oリング(第1のシール手段)
45,305…中空部
47…第2のシール手段
49,51…ベアリング
53…第3のシール手段
55…スプライン部
57…スプライン孔
59…区画空間
109…第3のシール手段
207…オイルポンプ
307…隔壁(第2のシール手段)
807…外周部
809…内周部
815…円盤状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のケースと、該第1のケース内に支承され少なくとも一組の動力伝達軸に設けられた変速ギヤ組を備えた変速機構と、前記第1のケース内に配置され前記変速機構を潤滑する第1のオイルとを有する動力伝達機構と、
一対の回転部材と、該一対の回転部材間に配置され駆動力を断続する断続部と、前記断続部を操作するアクチュエータと、前記一対の回転部材と前記断続部とを収容し前記第1のケースに連結される第2のケースと、該第2のケース内に配置され前記断続部を潤滑する第2のオイルとを有する断続機構とからなる動力伝達装置であって、
前記第2のケースは、筒状部と一端壁を備えた第1のケース部材と、前記筒状部に一体的に連結する他端壁を備えた第2のケース部材とからなり、前記一対の回転部材のいずれかの回転部材と前記一端壁及び前記他端壁との間、及び前記第1のケース部材と前記第2のケース部材との間に配置される第1のシール手段を有し、前記第2のケースの内部には、前記第2のオイルが封入されていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1記載の動力伝達装置であって、
前記一対の回転部材は、筒状の外側回転部材と、軸状の内側回転部材とからなり、前記軸状の内側回転部材は軸心側に中空部を備え、該中空部には、前記第2のケースの内部にオイルを封入するための第2のシール手段を備えていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項3】
請求項2記載の動力伝達装置であって、
前記第1のケース部材は、ベアリングを介して前記筒状の外側回転部材を支持し、前記第2のケース部材は、ベアリングを介して前記軸状の内側回転部材を支持することを特徴とする動力伝達装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
前記第2のケース部材は、外周側で前記第1のケース部材に一体的に連結し、内周側に前記一対の回転部材のいずれかの回転部材と前記他端壁との間に配置される前記第1のシール手段を固定することを特徴とする動力伝達装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
前記動力伝達機構は、前記第1のケースに支持され、一端が前記第1のケースから軸方向に突出して前記一対の回転部材のいずれか一方に一体回転可能に連結する軸部材を備え、前記第1のケースと前記軸部材との間に配置され、前記第1のオイルを前記第1のケース内に区画する第3のシール手段を有することを特徴とする動力伝達装置。
【請求項6】
請求項5記載の動力伝達装置であって、
前記軸部材の一端には外周にスプライン部が形成され、該スプライン部は前記一対の回転部材のうち一方の軸心側に形成されたスプライン孔に嵌合連結され、前記スプライン部は、前記第1のケースと前記第2のケースと前記第1のシール手段の一部と前記第3のシール手段とによって前記第1のオイル及び前記第2のオイルから区画された第3のオイルで潤滑されることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項7】
請求項6記載の動力伝達装置であって、
前記第3のオイルは前記スプライン部に塗布されるグリスであって、区画空間にはグリスと空気が内在していることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
前記第2のケース部材の前記他端壁には、前記第2のケース内に封入された前記第2のオイルを前記断続機構に強制的に供給するオイルポンプが設けられていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
前記第2のケース部材は、板材の他端壁に前記第1のケース部材の内周面に固定される外周部と、前記一対の回転部材のいずれかに摺動する内周部とからなる第1のシール手段が固着形成された円盤状部材であることを特徴とする動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−19743(P2009−19743A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184544(P2007−184544)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000225050)GKN ドライブライン トルクテクノロジー株式会社 (409)
【Fターム(参考)】