説明

動力伝達装置

【課題】エンジンの始動後、その回転速度をワンウェイベアリングの出力側回転速度(伝達側回転速度Ni)に制御しようとする場合に、ワンウェイベアリングが急激に締結されることによる、動力伝達機構のショック、及びユーザに体感されうる振動の発生を抑える。
【解決手段】エンジン12の始動後、エンジン12の回転速度を、エンジン12に対する要求動力に応じて定まる目標回転速度にフィードバック制御する。これとともに、CVT22のギア比を操作することで、ワンウェイベアリング28の出力側の回転速度を目標回転速度にフィードバック制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに連動して回転する複数の回転体であって且つ回転電機、内燃機関および駆動輪間で動力を分割するための複数の動力分割用回転体を備える動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の動力伝達装置としては、たとえば下記特許文献1に見られるように、遊星歯車機構を構成する回転体の1つが内燃機関に始動用の回転力を付与する始動用回転体として利用され、また別の回転体が内燃機関の動力供給のなされる伝達側回転体として利用されるものも提案されている。詳しくは、内燃機関と伝達側回転体との間には、ワンウェイベアリングが備えられている。これにより、内燃機関の始動後、内燃機関の回転速度が上昇することで内燃機関の動力がワンウェイベアリングを介して伝達側回転体に伝達されるようになるため、内燃機関の動力の供給開始制御を簡素化することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−285140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内燃機関の始動後、その回転速度を伝達側回転体の回転速度に制御しようとすると、伝達側回転体の回転速度が変化する場合等において、ワンウェイベアリングが急激に締結され、動力伝達装置にショックが生じうることが発明者らによって見出された。また、始動用回転体の回転力を内燃機関に付与した後に内燃機関の燃焼制御を開始することで、内燃機関の回転速度が急上昇し、ワンウェイベアリングが急激に締結されて、動力伝達装置にショックが生じるおそれがあることも発明者らによって見出された。さらに、運転状態によっては、内燃機関の始動後、ワンウェイベアリングの締結までに要する時間が長くなり、ひいては加速性能の低下を招くおそれがあることも発明者らによって見出された。
【0005】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、互いに連動して回転する複数の回転体であって且つ回転電機、内燃機関および駆動輪間で動力を分割するための複数の動力分割用回転体を備える新たな動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、互いに連動して回転する複数の回転体であって且つ回転電機、内燃機関および駆動輪間で動力を分割するための複数の動力分割用回転体を備える動力伝達装置において、前記動力分割用回転体は、前記内燃機関に始動用の回転力を付与する始動用回転体と、該始動用回転体とは別に、前記内燃機関に機械的に連結された伝達側回転体とを備え、前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度の比である変速比を可変とする変速比可変手段と、前記始動用回転体から前記内燃機関への動力の伝達および遮断を切り替える始動用動力伝達規制手段と、前記内燃機関から前記伝達側回転体側への動力の伝達および遮断を切り替える伝達用動力伝達規制手段と、前記内燃機関の始動要求が生じる場合、前記内燃機関の目標回転速度を該内燃機関に対する要求動力に基づき設定する目標速度設定手段と、前記内燃機関の燃焼制御開始後、前記内燃機関の動力を前記伝達用動力伝達規制手段の出力側に出力すべく、前記内燃機関の回転速度を前記目標回転速度に制御するとともに、前記変速比可変手段を操作することで前記伝達用動力伝達規制手段の出力側である前記伝達側回転体側の回転速度を、前記内燃機関の回転速度が前記目標回転速度となるときの前記伝達用動力伝達規制手段の入力側の回転速度に制御する伝達開始制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記発明において、内燃機関の動力を伝達用動力伝達規制手段を介して出力するには、伝達用動力伝達規制手段の入力側の回転速度と出力側の回転速度とを一致させることが要求される。ここで、伝達用動力伝達規制手段による動力の伝達がなされていない状況下にあっては、内燃機関の回転速度を上昇させることが容易である。このため、内燃機関の動力の伝達を迅速に開始する上では、伝達用動力伝達規制手段の出力側の回転速度に入力側の回転速度を制御すべく、内燃機関の回転速度を上昇制御させることが有効である。ただし、この場合、伝達用動力伝達規制手段による動力伝達の開始に伴い振動が生じやすいことが発明者らによって見出された。上記発明では、この点に鑑み、内燃機関の回転速度を内燃機関の要求動力に応じて定まる目標回転速度に制御するとともに、伝達用動力伝達規制手段の出力側の回転速度を上記目標回転速度に基づき制御することで、上記振動が生じる事態を好適に回避することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の相対回転速度を上昇させることで前記始動用回転体の回転速度が上昇するロー始動設定がなされていることを特徴とする。
【0010】
内燃機関の燃焼制御の開始に伴って内燃機関の出力軸の回転速度が急激に上昇する場合、伝達用動力伝達規制手段の入力側の回転速度が出力側の回転速度以上となる事態が生じうる。これに対し、上記発明では、始動用回転体の回転速度を上昇させることで、伝達側回転体の回転速度が上昇するため、こうした事態を好適に抑制することができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度の上昇処理のなされる期間、または該期間が終了してから前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度の低下処理がなされる前に前記内燃機関の燃焼制御を開始するロー始動制御手段をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
上記発明では、伝達側回転体の回転速度の低下操作がなされる以前に燃焼制御を開始するために、内燃機関の燃焼制御の開始に伴って伝達用動力伝達規制手段の入力側の回転速度が出力側の回転速度以上となる事態を好適に抑制することができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記ロー始動制御手段は、前記伝達用動力伝達規制手段の入力側である前記内燃機関側に対する出力側である前記伝達側回転体側の相対回転速度が規定速度以上となることを条件に前記内燃機関の燃焼制御を開始する速度差確保手段を備えることを特徴とする。
【0014】
上記発明では、速度差確保手段を備えることで、内燃機関の燃焼制御の開始に伴って伝達用動力伝達規制手段の入力側の回転速度が出力側の回転速度以上となる事態を確実に回避することができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度を低下させることで前記始動用回転体の回転速度が上昇するハイ始動設定がなされていることを特徴とする。
【0016】
内燃機関の動力を伝達側回転体側に出力する場合、内燃機関の要求動力に応じて出力側の目標とする回転速度が定まる。このため、内燃機関の始動前に出力側の回転速度がその目標とする回転速度よりも高い場合、これを低下させる必要が生じる。この点、上記発明では、始動用回転体の回転速度を上昇させて内燃機関の始動処理を行なう前の伝達側回転体の回転速度が内燃機関の動力伝達時に要求される回転速度よりも高い場合であっても、始動用回転体の回転速度の上昇処理によって伝達側回転体の回転速度が低下するために、伝達側回転体の回転速度を要求される回転速度に迅速に制御することができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度の低下処理のなされる期間に前記内燃機関の燃焼制御を開始するハイ始動制御手段をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
上記発明では、始動用回転体の回転速度を上昇させて内燃機関の始動処理を行なう前の伝達側回転体の回転速度が内燃機関の動力伝達時に要求される回転速度よりも高い場合であっても、ハイ始動制御手段を備えることで、要求される回転速度にいっそう迅速に制御することができる。
【0019】
請求項7記載の発明は、互いに連動して回転する複数の回転体であって且つ回転電機、内燃機関および駆動輪間で動力を分割するための複数の動力分割用回転体を備える動力伝達装置において、前記動力分割用回転体は、前記内燃機関に始動用の回転力を付与する始動用回転体と、該始動用回転体とは別に、前記内燃機関に機械的に連結された伝達側回転体とを備え、前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度の比である変速比を可変とする変速比可変手段と、前記始動用回転体から前記内燃機関への動力の伝達および遮断を切り替える始動用動力伝達規制手段と、前記内燃機関から前記伝達側回転体側への動力の伝達および遮断を切り替える伝達用動力伝達規制手段とを備え、前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度を上昇させることで前記始動用回転体の回転速度が上昇するロー始動設定がなされていることを特徴とする。
【0020】
内燃機関の燃焼制御の開始に伴って内燃機関の出力軸の回転速度が急激に上昇する場合、伝達用動力伝達規制手段の入力側の回転速度が出力側の回転速度以上となる事態が生じうる。これに対し、上記発明では、始動用回転体の回転速度を上昇させることで、伝達側回転体の回転速度が上昇するため、こうした事態を好適に抑制することができる。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の発明において、前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度の上昇処理のなされる期間、または該期間が終了してから前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度の低下処理がなされる前に前記内燃機関の燃焼制御を開始するロー始動制御手段をさらに備えることを特徴とする。
【0022】
上記発明では、伝達側回転体の回転速度の低下操作がなされる以前に燃焼制御を開始するために、内燃機関の燃焼制御の開始に伴って伝達用動力伝達規制手段の入力側の回転速度が出力側の回転速度以上となる事態を好適に抑制することができる。
【0023】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明において、前記ロー始動制御手段は、前記伝達用動力伝達規制手段の入力側である前記内燃機関側に対する出力側である前記伝達側回転体側の相対回転速度が規定速度以上となることを条件に前記内燃機関の燃焼制御を開始する速度差確保手段を備えることを特徴とする。
【0024】
上記発明では、速度差確保手段を備えることで、内燃機関の燃焼制御の開始に伴って伝達用動力伝達規制手段の入力側の回転速度が出力側の回転速度以上となる事態を確実に回避することができる。
【0025】
請求項10記載の発明は、互いに連動して回転する複数の回転体であって且つ回転電機、内燃機関および駆動輪間で動力を分割するための複数の動力分割用回転体を備える動力伝達装置において、前記動力分割用回転体は、前記内燃機関に始動用の回転力を付与する始動用回転体と、該始動用回転体とは別に、前記内燃機関に機械的に連結された伝達側回転体とを備え、前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度の比である変速比を可変とする変速比可変手段と、前記始動用回転体から前記内燃機関への動力の伝達および遮断を切り替える始動用動力伝達規制手段と、前記内燃機関から前記伝達側回転体側への動力の伝達および遮断を切り替える伝達用動力伝達規制手段とを備え、前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度を低下させることで前記始動用回転体の回転速度が上昇するハイ始動設定がなされていることを特徴とする。
【0026】
内燃機関の動力を伝達側回転体側に出力する場合、内燃機関の要求動力に応じて出力側の目標とする回転速度が定まる。このため、内燃機関の始動前に出力側の回転速度がその目標とする回転速度よりも高い場合、これを低下させる必要が生じる。この点、上記発明では、始動用回転体の回転速度を上昇させて内燃機関の始動処理を行なう前の伝達側回転体の回転速度が内燃機関の動力伝達時に要求される回転速度よりも高い場合であっても、始動用回転体の回転速度の上昇処理によって伝達側回転体の回転速度が低下するために、伝達側回転体の回転速度を要求される回転速度に迅速に制御することができる。
【0027】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明において、前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度の低下処理のなされる期間に前記内燃機関の燃焼制御を開始するハイ始動制御手段をさらに備えることを特徴とする。
【0028】
上記発明では、始動用回転体の回転速度を上昇させて内燃機関の始動処理を行なう前の伝達側回転体の回転速度が内燃機関の動力伝達時に要求される回転速度よりも高い場合であっても、ハイ始動制御手段を備えることで、要求される回転速度にいっそう迅速に制御することができる。
【0029】
請求項12記載の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の発明において、前記伝達用動力伝達規制手段は、前記伝達側回転体側である出力側に対する前記内燃機関側である入力側の相対回転速度が負でないことを条件に前記入力側の動力を前記出力側に出力する一方向伝達機構を備えることを特徴とする。
【0030】
一方向伝達機構を備える場合、入力側の回転速度が上昇して出力側の回転速度に一致することで動力の伝達が開始される。このため、動力伝達開始制御を簡素化することが容易となる。
【0031】
ただし、入力側の回転速度が急激に上昇する場合等には、動力伝達の開始に伴い振動が生じるおそれがある。このため、上記発明においては、この振動の発生を抑制または回避する手段を備えることが有効である。
【0032】
請求項13記載の発明は、請求項1〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記始動用回転体は、前記回転電機および前記駆動輪の回転速度がゼロでない状況下、その回転速度がゼロとなることが可能に設定されており、前記内燃機関の始動要求が生じる場合、前記変速比可変手段の操作によって前記始動用回転体の回転速度を内燃機関の出力軸の回転速度から漸増させる処理を行なう漸増処理手段を備えることを特徴とする。
【0033】
内燃機関の回転速度は、燃焼制御のなされる以前には、略ゼロとなっている蓋然性が高い。このため、始動用回転体によって内燃機関に回転力を付与する処理を円滑に行なう上では、始動用回転体の回転速度をゼロとすることができることが望ましい。上記発明では、この点に鑑み、始動用回転体の回転速度がゼロとなることが可能に設定した。
【0034】
請求項14記載の発明は、請求項1〜13のいずれか1項に記載の発明において、前記動力分割用回転体は、遊星歯車機構を構成するサンギア、キャリアおよびリングギアを備え、前記変速比可変手段は、前記遊星歯車機構に機械的に連結された無段変速装置であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態における車両発進時の動力伝達態様を示す図。
【図3】同実施形態にかかるEV走行時の動力伝達態様を示す図。
【図4】同実施形態にかかるエンジン始動時の動力伝達態様を示す図。
【図5】同実施形態にかかるエンジン走行時の動力伝達態様を示す図。
【図6】同実施形態にかかる動力伝達装置のギア比と伝達効率とを示す図。
【図7】同実施形態にかかるモード2におけるエンジン始動の設定を示す図。
【図8】同実施形態にかかるエンジン始動処理の手順を示す流れ図。
【図9】同実施形態にかかるモード2におけるエンジン始動処理を示すタイムチャート。
【図10】同実施形態にかかるモード1のエンジン始動の設定を示す図。
【図11】同実施形態にかかるモード1におけるエンジン始動処理を示すタイムチャート。
【図12】第2の実施形態にかかるシステム構成図。
【図13】同実施形態にかかるモード2におけるエンジン始動の設定を示す図。
【図14】同実施形態にかかるモード2におけるエンジン始動処理を示すタイムチャート。
【図15】第3の実施形態にかかるシステム構成図。
【図16】同実施形態にかかるモード1のエンジン始動の設定を示す図。
【図17】同実施形態にかかるモード1におけるエンジン始動処理を示すタイムチャート。
【図18】上記各実施形態の変形例にかかるシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる動力伝達装置の第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0037】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。
【0038】
図示されるモータジェネレータ10は、3相交流の電動機兼発電機である。このモータジェネレータ10は、内燃機関(エンジン12)とともに、車両走行用の動力発生装置としての機能を有する。一方、動力分割機構20は、これらモータジェネレータ10、エンジン12、および駆動輪14間の動力を分割する装置である。
【0039】
動力分割機構20は、1の遊星歯車機構からなり、動力分割用回転体としてのサンギアS,キャリアC、およびリングギアRを備えている。本実施形態にかかる遊星歯車機構は、サンギアSとリングギアRとの回転速度の符号が同一である場合にキャリアCの回転速度がゼロとなり得るいわゆるダブルピニオンを有するものである。
【0040】
上記動力分割機構20のリングギアRには、ギアG2、クラッチC1およびギアG6を介してモータジェネレータ10の回転軸10aが機械的に連結されている。また、サンギアSには、無段変速装置(CVT22)、クラッチC1、およびギアG2を介してリングギアRが機械的に連結されている。このため、モータジェネレータ10も、ギアG6およびCVT22を介してサンギアSに機械的に連結されている。すなわち、モータジェネレータ10とサンギアSとは、互いに連動して回転するための機械的な結合経路として、動力分割機構20を構成するほかの動力分割用回転体を備えない経路を有している。ちなみに、CVT22として、本実施形態では、機械式のものを想定している。詳しくは、金属ベルトやゴムベルトを用いたベルト式のものを想定している。また、ギアG2、G6は、入力側と出力側との回転速度の比を固定された比率で変換する手段であって且つ入力側と出力側との回転速度の符号を反転させない手段(正転ギア)である。さらに、クラッチC1は、入力側および出力側間の締結状態および解除状態を切り替えるべく油圧駆動される電子制御式の締結手段である。なお、入力側、出力側は、それぞれエネルギの入力側とエネルギの出力側とを意味するが、この関係は、固定されたものではなく変化しうるものである。
【0041】
動力分割機構20のキャリアCには、駆動輪14が機械的に連結されている。詳しくは、キャリアCには、ギアG5およびディファレンシャルギア24を介して駆動輪14が機械的に連結されている。ここで、ギアG5は、入力側と出力側との回転速度の比を固定された比率で変換する手段であって且つ入力側と出力側とで回転速度の符号を反転させる手段(カウンタギア)である。
【0042】
動力分割機構20のリングギアRには、ギアG2、クラッチC1,C2およびギアG4を介してキャリアCが機械的に連結されている。ここで、ギアG4は、入力側と出力側との回転速度の比を固定された比率で変換する手段であって且つ入力側と出力側との回転速度の符号を反転させる手段(カウンタギア)である。また、クラッチC2は、入力側および出力側間の締結状態および解除状態を切り替えるべく油圧駆動される電子制御式の締結手段である。なお、クラッチC1とクラッチC2とは、その入力側および出力側のいずれか一方が同一の1の回転軸に直結されている。
【0043】
上記リングギアRには、さらに、クラッチC3およびワンウェイベアリング26を介してエンジン12のクランク軸(出力軸12a)が機械的に連結されている。ワンウェイベアリング26は、出力側(出力軸12a側)に対する入力側(リングギアR側)の相対回転速度が負でないことを条件に動力を伝達させる一方向伝達機構である。換言すれば、出力側の回転速度の方が入力側の回転速度よりも大きくならない限り、入力側によって出力側がつれまわされるようにするものである。一方、クラッチC3は、入力側および出力側間の締結状態および解除状態を切り替えるべく油圧駆動される電子制御式の締結手段である。詳しくは、本実施形態では、ノーマリーオープン式のものを用いている。
【0044】
エンジン12の出力軸12aは、さらに、ワンウェイベアリング28を介してサンギアSが機械的に連結可能とされている。ここで、ワンウェイベアリング28は、出力側(サンギアS側)に対する入力側(出力軸12a側)の相対回転速度が負でないことを条件に動力を伝達させる一方向伝達機構である。換言すれば、出力側の回転速度の方が入力側の回転速度よりも大きくならない限り、入力側によって出力側がつれまわされるようにするものである。
【0045】
なお、ギアG2、G4、G5,G6は、実際には、複数の歯車を備えて入力側と出力側との回転速度の比を固定された比率で変換する手段であってもよい。
【0046】
制御装置40は、上記動力伝達装置を制御対象とする制御装置である。詳しくは、制御装置40は、クラッチC1,C2,C3やCVT22を操作することで動力伝達態様を制御する処理や、エンジン12の制御量を制御する処理、さらには、電力変換回路42の操作によってモータジェネレータ10の制御量を制御する処理を行う。
【0047】
特に、制御装置40は、クラッチC1が締結状態であって且つクラッチC2が解除状態であるモード1と、クラッチC1が解除状態であって且つクラッチC2が締結状態であるモード2とのいずれかの状態を実現する処理を行う。以下では、「モード1」に特有の処理を説明した後、「モード2」に特有の処理について説明し、次に、「モード1からモード2への切替」について説明し、最後に、「エンジン12の始動処理の詳細」について説明する。
「モード1」
図2に、本実施形態にかかるモータジェネレータ10による車両の発進処理について説明する。ここで、図2(a)に、発進時における動力伝達経路を示し、図2(b)に、このときの動力分割機構20の共線図を、エンジン12の回転速度とともに示す。なお、図2(b)において、キャリアCの回転速度の負方向を前進と定義しているが、これは、ギアG5がカウンタギアであるためである。また、共線図において、矢印は、トルクの向きを示すものである。
【0048】
図示されるように、この場合には、上記クラッチC2を解除状態とし、エンジン12を停止状態とする。この場合、動力分割機構20が備える動力分割用回転体の回転速度は、モータジェネレータ10の回転速度と、CVT22の変速比とによって制御される。すなわち、共線図において、サンギアSの回転速度、リングギアRの回転速度およびキャリアCの回転速度は、一直線上に並ぶ。このため、サンギアSの回転速度とリングギアRの回転速度とを定めることで、残りの回転体であるキャリアCの回転速度が一義的に定まることとなる。
【0049】
ここで、本実施形態では、モード1において、図2(c)に示すように、動力分割機構20を構成するキャリアC以外の回転体であるサンギアSおよびリングギアRの動力(パワー)の符号が互いに相違し、サンギアSおよびリングギアR間で動力循環が生じる。すなわち、リングギアRから出力される動力がギアG2、クラッチC1およびCVT22を備える経路を介してサンギアSに流入する。この動力循環が生じる場合、モータジェネレータ10を稼働した状態で、駆動輪14の回転速度をゼロとするギアードニュートラル状態を実現したり、回転速度の符号を反転させたりすることができる。そして、特に駆動輪14の回転速度を極低速にすることで、駆動輪14に付与されるトルクを高トルクとすることができる。このため、モータジェネレータ10を大型化することなく、モータジェネレータ10による発進に際して高トルクが生成可能となる。ちなみに、各動力分割用回転体の動力の符号は、当該動力分割用回転体が動力分割機構20の外部に対して仕事をする場合を正と定義する。
「モード2」
図3(a)に、モード2において、特にモータジェネレータ10のみによって車両を走行させるいわゆるEV走行時の動力伝達経路を示す。
【0050】
図示されるように、この場合には、動力分割機構20を介すことなく、ギアG6、クラッチC2、ギアG4およびギアG5を介してモータジェネレータ10および駆動輪14間で動力が伝達される。これは、キャリアC、サンギアSおよびリングギアRのトルクが互いに比例関係にあることから、リングギアRにトルクが加わらない場合、サンギアSおよびキャリアCについてもトルクが加わらないためである。
【0051】
この状態では、モータジェネレータ10の動力がCVT22を介すことなくダイレクトに駆動輪14に伝達されるため、動力損失を低減することができる。
【0052】
図4(a)に、モード2におけるエンジン12の始動時の動力伝達経路を示し、図4(b)に、その際の共線図を示す。
【0053】
図示されるように、クラッチC3が締結状態とされることで、動力分割機構20を介したトルクの伝達が可能となる。すなわち、ワンウェイベアリング26によって、エンジン12を始動するための始動用回転体(リングギアR)の動力が、エンジン12の出力軸12aに伝達される。図4(c)に、動力分割機構20の各回転体の動力等の符号を示す。図示されるように、この場合、サンギアSの動力の符号とキャリアCの動力の符号とが互いに相違し、サンギアSおよびキャリアC間で動力循環が生じる。すなわち、サンギアSから出力される動力がキャリアCに流入する。このため、モータジェネレータ10や駆動輪14の出力の絶対値がゼロではない場合であっても、リングギアRの回転速度をゼロや極低速とすることや、リングギアRの動力の絶対値を小さい値にすることができる。このため、エンジン12の出力軸12aが停止している際にクラッチC3を締結状態に切り替えたとしても、ワンウェイベアリング26の出力側に対する入力側の回転速度差を極めて小さくすることができる。このため、クラッチC3の締結状態への切替に起因して動力分割機構20に振動が生じる事態を好適に抑制することができる。
【0054】
なお、クラッチC3を締結状態とするのは、エンジン12の回転速度がエンジン12を安定して稼動状態に保つための最小回転速度以下である場合とすることが望ましい。それ以外の場合には、回転中のエンジン12において燃焼制御を開始すればよい。
【0055】
図5(a)に、モード2におけるエンジン12による車両走行時の動力伝達経路を示す。
【0056】
図示されるように、エンジン12の回転速度が上昇し、ワンウェイベアリング28の入力側の回転速度が出力側の回転速度となることで、ワンウェイベアリング28を介してエンジン12の駆動力がワンウェイベアリング28の出力側に出力される。ただし、この場合、クラッチC3を解除状態とすることで、動力分割機構20を介すことなく、モータジェネレータ10およびエンジン12と駆動輪14との間で動力が伝達される。ここで、エンジン12の出力は、その回転速度がCVT22によって変速された後、駆動輪14に伝達される。
【0057】
なお、エンジン12による走行時においては、モータジェネレータ10を、必ずしも電動機として機能させる必要はなく、例えば発電機として機能させてもよい。また、これに代えて、モータジェネレータ10の駆動を停止させることで、無負荷状態としてもよい。
「モード1からモード2への切替」
図6(a)に、エンジン12から駆動輪14までのトータルのギア比と、CVT22のギア比との関係を示し、図6(b)に、モータジェネレータ10から駆動輪14までのトータルのギア比と、CVT22のギア比との関係を示す。ここで、aからbまでのトータルのギア比とは、「(bの回転速度)/(aの回転速度)」のことであり、変速比の逆数である。
【0058】
図示されるように、モード1において、CVT22のギア比を連続的に変化させていくことで、駆動輪14の反転(後退)から速度ゼロを経て高速側へと変化させることができる。そして、所定のギア比となることで、モード2へと切り替える。これにより、エンジン12に関してはトータルのギア比の可変領域を拡大することができる。
【0059】
すなわち、図6(a)に示すように、モード1においてCVT22のギア比を変化させることで、エンジン12から駆動輪14までのトータルのギア比を増加させることができる。そして、モード切替点Pにおいてモード2に切り替えるとともにCVT22のギア比の変化方向を逆方向に切り替える(折り返し処理)ことで、トータルのギア比を更に増加させることができる。
【0060】
この設定は、CVT22のギア比の変化に対するトータルのギア比の変化速度の符号を、モード1とモード2とで互いに逆とする設定によって実現されるものである。この条件は、CVT22のギア比を独立変数としトータルのギア比を従属変数とする関数のCVT22のギア比による微分値について、モード1およびモード2のそれぞれにおける値の符号が互いに逆となる条件である。これを実現する手段は、上記ギアG2、G4、G5である。詳しくは、これらのギア比の積の符号によって、折り返し処理が実現可能か否かが定まる。なお、図6(b)に示すように、モータジェネレータ10から駆動輪14までのトータルギア比は、モード2では変化しないが、これは、モード2において、駆動輪14とモータジェネレータ10とが直結されるためである。
【0061】
上記のように、本実施形態では、モード1とモード2との切替を行うことで、トータルのギア比の可変領域を拡大することができるため、CVT22を小型化することが可能となる。さらに、モード2においては、基本的に動力循環が生じないため、モード1のみとした場合と比較して、入力エネルギと出力エネルギとの比である動力伝達効率を高くすることもできる。図6(c)に、エンジン12についてのトータルのギア比と伝達効率との関係を示す。図示されるように、モード1においては伝達効率が非常に低い領域が存在するものの、モード2においては伝達効率は高いものとなっている。なお、図6(c)では、モード2への切替直前におけるモード1の伝達効率がモード2の伝達効率よりも高くなっているが、このことは、モード1のみとした場合にモード2に切り替える場合と比較して伝達効率を高くできることを意味しない。
【0062】
このように、本実施形態では、モード1を採用することで、伝達効率は低いものの、駆動輪14に付与するトルクを大きくすることができることから、モータジェネレータ10の小型化が可能となる。そして駆動輪14の回転速度が所定以上となる領域においてモード2に切り替えることで、伝達効率を向上させるとともに、トータルのギア比の可変領域を拡大できるというメリットを有する。しかも、モード2に切り換えた場合、動力分割機構20は、駆動輪14へ駆動力を伝達させる上で必要がなくなるのであるが、利用されなくなったリングギアRを用いてエンジン12に初期回転を付与することが可能となる。このため、エンジン12の起動のための手段を、モード2において利用されない部材を流用して構成することができる。
【0063】
「エンジン始動処理の詳細」
上述したように、モード2においてエンジン12を始動させる場合、始動用回転体であるリングギアRの回転速度を極低速またはゼロとしてクラッチC3を締結し、その後、リングギアRの回転速度を上昇させることで、エンジン12の出力軸12aの回転速度を上昇させる処理がなされる。ただし、エンジン12の燃焼開始に伴ってエンジン12の回転速度が急上昇する場合、ワンウェイベアリング28が急激に締結状態となることで、車両に振動が生じるおそれがある。そこで本実施形態では、図7に示すように、始動用回転体であるリングギアRの回転速度を上昇させることでワンウェイベアリング28の出力側の回転速度が上昇する設定とした。図7では、先の図1に示すように、ワンウェイベアリング26の入力側の回転速度(始動用回転速度Ns)、ワンウェイベアリング28の出力側の回転速度(伝達側回転速度Ni)、およびギアG5の出力側の回転速度(出力側回転速度No)を用いている。
【0064】
図示されるように、CVT22のギア比を操作することで、出力側回転速度Noに対する伝達側回転速度Niの比を増大させると、始動用回転速度Nsが上昇する。このため、クラッチC3の締結後、出力側回転速度Noに対する伝達側回転速度Niの比であるトータル変速比をロー側に操作することで、エンジン12の回転速度を上昇させることができるようになっている。したがって、エンジン12の回転速度を上昇させるに際し、ワンウェイベアリング28の入力側に対する出力側の相対回転速度を、エンジン12の燃焼開始に伴う回転上昇量以上とすることが容易となる。すなわち、CVT22の応答性による制約に起因して、CVT22のギア比の変更に要する時間は、エンジン12の燃焼開始に伴ってその回転速度が急上昇するのに要する時間よりも長い。このため、エンジン12の回転速度を上昇させることでワンウェイベアリング28の入力側に対する出力側の相対回転速度が縮まる設定とする場合にあっては、エンジン12の回転速度の上昇処理後、燃焼開始に先立って、CVT22のギア比を再度逆方向に変更する要求が生じるおそれがある。
【0065】
本実施形態では、さらに、図8に示す処理によって、エンジン12の燃焼開始に伴う振動を確実に回避する。
【0066】
図8は、本実施形態にかかるエンジン12の始動処理の手順である。この処理は、制御装置40によって、たとえば所定周期でくり返し実行される。
【0067】
この一連の処理では、まずステップS10において、エンジン始動要求があるか否かを判断する。エンジン始動要求は、図示しないバッテリの充電率の低下時や、ユーザのアクセル操作に応じて算出される車両の要求動力をモータジェネレータ10単独で満たすことができない場合等に生じるものである。始動要求があると判断される場合、ステップS12において、始動用回転速度Nsを上昇させるべく、上記トータルの変速比をロー側に変更する処理を行う。
【0068】
続くステップS14においては、(ア)エンジン回転速度Neが閾値速度Nth以上となる旨の条件と、(イ)伝達側回転速度Niがエンジン回転速度Neを閾値Δth以上上回る旨の条件との論理積が真であるか否かを判断する。ここで、条件(ア)は、エンジン12の燃焼制御を開始することでエンジン12が自立運転可能な状態に移行できるか否かを判断するためのものである。この閾値速度Nthは、自立運転可能な状態に移行できると想定される下限速度以上の極力低速度に設定されている。一方、条件(イ)は、エンジン12の燃焼開始に伴う回転速度の急上昇によって、ワンウェイベアリング28が締結されることがないか否かを判断するためのものである。ここで、閾値Δthは、エンジン12の燃焼開始に伴うエンジン回転速度Neの急上昇によっても、ワンウェイベアリング28の入力側の回転速度が出力側の回転速度を上回ることがないと想定される値に設定される。なお、トータル変速比をロー側に操作するのみでは伝達側回転速度Niを始動用回転速度Nsよりも規定速度Δth以上大きくすることが困難な場合等にあっては、上記(ア)の条件の成立後、クラッチC3を解除しつつさらにロー側への操作を継続してもよい。
【0069】
上記ステップS14において肯定判断される場合、ステップS16において、燃焼制御を開始する。続くステップS18においては、エンジン12の始動が完了したか否かを判断する。そしてエンジン12の始動が完了する場合、ステップS20において、エンジン12に対する要求動力に応じて、エンジン12の目標回転速度Netを算出する。これはたとえば、トルクおよび回転速度からなるエンジン12の動作点のうち、エンジン12に対する要求動力を満たして且つ、燃料消費率を最小とする動作点に対応する回転速度を選択する処理等とすればよい。
【0070】
続くステップS22においては、エンジン回転速度Neと、伝達側回転速度Niとのそれぞれを、目標回転速度Netにフィードバック制御する。ここで、伝達側回転速度Niの制御は、CVT22のギア比の操作によって行われる。なお、CVT22のギア比は、CVT22の両側の回転速度の比によって定まるものであり、CVT22の両側のそれぞれの回転速度の検出値に応じてフィードバック制御される。このため、本実施形態のように、CVT22とワンウェイベアリング28との間に変速比を変更する手段が介在しない構成においては、ワンウェイベアリング28の出力側の回転速度についてのCVT22の操作のために用いる検出値を直接の制御量としてワンウェイベアリング28の出力側の回転速度を制御することができる。したがって、ワンウェイベアリング28の入力側の回転速度を同一の回転速度に高精度に制御することが容易となる。
【0071】
なお、ステップS22の処理が完了する場合や、ステップS10において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0072】
図9(a)、図9(b)に本実施形態の効果を示す。なお、図9においては、エンジン12の燃焼開始に伴う出力軸12aの回転速度の上昇についてはこれを正確に記載していない。これは、CVT22の操作によって実現される始動用回転体であるリングギアRの回転速度の上昇と、伝達側回転体であるサンギアSの回転速度との関係を明記するためである。
【0073】
図示されるように、CVT22の操作によって始動用回転体の回転速度を上昇させることでエンジン回転速度Neが上昇する。この際、伝達側回転速度Niも上昇するため、エンジン回転速度Neと伝達側回転速度Niとの間に余裕を持たせることができる。このため、始動用回転体の回転速度を上昇させる期間においてエンジン12の燃焼制御を開始しやすくなる。なお、図では、始動用回転体の回転速度が上昇する間に燃焼制御が開始される例を示しており、図9(a)では、燃焼制御の開始後、トータル変速比をハイ側に操作して伝達側回転速度Niを低下させる例を示している。
【0074】
しかも、本実施形態では、エンジン回転速度Neおよび伝達側回転速度Niの双方を、目標回転速度Netに制御することで、ワンウェイベアリング28を締結状態に円滑に移行させることができる。これに対し、図9(c)には、エンジン回転速度Neを一旦、伝達側回転速度Niに制御することでワンウェイベアリング28を締結する場合を示す。この場合、ワンウェイベアリング28の締結状態への移行が急激になされやすくなり、ひいては締結時に振動を生じさせやすくなる。
【0075】
また本実施形態では、モード1についてもエンジン12の始動用に同様の設定を行っている。図10に本実施形態にかかるモード1の設定を示す。図示されるように、モード1においても、出力側回転速度Noに対して伝達側回転速度Niを上昇させることで、始動用回転速度Nsも上昇する設定としている。図11(a)および図11(b)に、モード1におけるエンジン始動処理を示す。図11の例では、モータジェネレータ10や駆動輪14の回転速度がゼロでない限りモード1において始動用回転体であるリングギアRの回転速度をゼロとすることができないことから、クランキングに際してエンジン12の回転速度がステップ的に上昇している。これは、クラッチC3の締結に伴ってエンジン12がリングギアRに連れまわされるようになることで、エンジン回転速度NeがリングギアRの回転速度まで急上昇することを示している。
【0076】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0077】
(1)エンジン12の燃焼制御開始後、ワンウェイベアリング28を締結すべく、エンジン回転速度Neを目標回転速度Netに制御するとともに、CVT22を操作することで伝達側回転体(サンギアS)側の回転速度を目標回転速度Netに制御した。これにより、ワンウェイベアリング28の締結を円滑に行なうことができ、ひいては締結に伴って振動が生じる事態を好適に回避することができる。
【0078】
(2)駆動輪14の回転速度(出力側回転速度No)に対する伝達側回転速度Niを上昇させることで始動用回転速度Nsが上昇するロー始動設定とした。これにより、エンジン12の燃焼開始に伴ってエンジン回転速度Neが吹き上がったとしても、この吹き上がりに起因したワンウェイベアリング28の入力側の回転速度のピーク値が出力側の回転速度を上回る事態を好適に抑制することができる。
【0079】
(3)出力側回転速度Noに対する伝達側回転速度Niの上昇処理のなされる期間において、エンジン12の燃焼制御を開始した。これにより、エンジン12の燃焼開始直前におけるエンジン回転速度Neと伝達側回転速度Niとの速度差を確保することができる。
【0080】
(4)ワンウェイベアリング28の入力側であるエンジン回転速度Neに対する出力側である伝達側回転速度Niの速度差が規定速度以上となることを条件にエンジン12の燃焼制御を開始した。これにより、エンジン12の燃焼制御の開始に伴ってワンウェイベアリング28の入力側の回転速度が出力側の回転速度以上となる事態を確実に回避することができる。
【0081】
(5)モード2において、モータジェネレータ10および駆動輪14の回転速度がゼロでない状況下、始動用回転体であるリングギアRの回転速度がゼロとなることが可能に設定し、エンジン12の始動要求が生じる場合、CVT22のギア比の操作によってリングギアRの回転速度をエンジン12の出力軸の回転速度から漸増させる処理を行なった。このように、リングギアRについてギアードニュートラル状態を実現可能とすることで、始動用回転体の動力をエンジン12に供給する処理を円滑に開始することができる。また、この場合、エンジン12の回転速度を上昇させる処理によって、CVT22のギア比の変化量が大きくなる傾向にあるが、この場合であっても伝達側回転体(サンギアS)の回転速度が上昇するため、エンジン回転速度Neと伝達側回転速度Niとの速度差を確保することが容易となる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0082】
図12に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図12において、先の図1に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0083】
図示されるように、本実施形態では、始動用回転体がサンギアSとされ、伝達側回転体がキャリアCとされる。また、リングギアRを駆動輪14に機械的に連結するに際し、ギアG3,G5を用いている。ここで、本実施形態では、ギアG2〜G5は、いずれもカウンタギアであり、ギアG6が正転ギアである。
【0084】
こうした構成により、モード2において、図13に示すように、出力側回転速度Noに対する伝達側回転速度Niを低下させることで、始動用回転速度Nsが上昇する設定とした。換言すれば、出力側回転速度Noで伝達側回転速度Niを除算した値であるトータル変速比をハイ側に操作することで、始動用回転速度Nsが上昇する設定とした。
【0085】
図14(a)および図14(b)に、本実施形態にかかるエンジン始動処理を示す。本実施形態によれば、図14(a)に示すように、エンジン始動以前の伝達側回転速度Niがエンジン回転速度Neやエンジン12の目標回転速度Netと比較して十分に高い場合であっても、ワンウェイベアリング28の締結状態への移行を迅速に行なうことができる。なお、図14では、始動用回転体の回転速度が上昇する間に燃焼制御を開始する例を示している。また、図14(b)では、エンジン12の始動処理によってトータル変速比を一旦ハイ側に操作した後にロー側に操作することでワンウェイベアリング28が締結される例を示しているが、目標回転速度Netに対してエンジン12の始動以前の伝達側回転速度Niが過度に高くなる状況がない限り、ワンウェイベアリング28の締結に要する時間が過度に長くなることはない。
【0086】
ちなみに、本実施形態では、モード1においてはエンジン12を始動しないシステムを想定している。
【0087】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1),(4)の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0088】
(6)駆動輪14の回転速度(出力側回転速度No)に対する伝達側回転速度Niを低下させることで始動用回転速度Nsが上昇するハイ始動設定とした。これにより、エンジン12の始動後、ワンウェイベアリング28の締結に要する時間を短縮することができる。
【0089】
(7)出力側回転速度Noに対する伝達側回転速度Niの低下処理のなされる期間において、エンジン12の燃焼制御を開始した。これにより、エンジン12の始動後、ワンウェイベアリング28の締結に要する時間をいっそう短縮することが可能となる。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0090】
図15に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図15において、先の図12に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0091】
本実施形態では、リングギアRとクラッチC3との間にカウンタギア(ギアG2)を備える。こうした構成によれば、モード2においてはロー始動設定がなされて且つ、モード1において、図16に示すようにハイ始動設定がなされる。
【0092】
図17(a)および図17(b)に、本実施形態にかかるモード1におけるエンジン始動処理を示す。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0093】
「伝達開始制御手段について」
この手段を備えない構成も可能である。すなわちたとえば、ワンウェイベアリング28の出力側回転速度を目標回転速度としてこれに制御したとしても、ロー始動設定やハイ始動設定を行なうなら、これらロー始動設定やハイ始動設定の効果を奏することはできる。
【0094】
「目標速度設定手段について」
上記実施形態では、エンジン12の始動完了をトリガとして目標回転速度Netを算出したが、これに限らず、たとえば、エンジン12の始動要求が生じることをトリガとしてもよい。
【0095】
「ロー始動制御手段について」
上記第1の実施形態では、トータル変速比をロー側に操作している期間にエンジン12の燃焼制御を開始したがこれに限らず、トータル変速比をロー側に操作した後、ハイ側への操作がなされる以前であってもよい。
【0096】
また、ワンウェイベアリング28の入力側回転速度(エンジン回転速度Ne)に対する出力側回転速度(伝達側回転速度Ni)の相対速度が規定速度以上となることを条件に燃焼制御を開始するものにも限らない(速度差確保手段を備えるものに限らない)。この条件を満たさない場合であっても、トータル変速比のロー側への操作時等に燃焼制御を開始するなら、ワンウェイベアリング28を介した動力の伝達ショックを緩和することはできる。
【0097】
「伝達用動力伝達規制手段について」
エンジン12のトルクを駆動輪14に付与すべく、出力側(動力分割機構20の伝達側回転体側)の回転速度に対する入力側(エンジン12側)の相対回転速度が負でないことを条件に動力を伝達する一方向伝達機構としては、ワンウェイベアリング28に限らず、例えばワンウェイクラッチであってもよい。また、入力側によって出力側が滑ることなくつれまわされるものに限らず、滑りつつも動力が付与されるものであってもよい。
【0098】
さらに、一方向伝達機構と電子制御式のクラッチとを併用してもよい。
【0099】
なお、一方向伝達機構を備えるものにも限らない。たとえば一方向伝達機構を備えず、電子制御式のクラッチのみを備えてもよい。この場合であっても、クラッチの両側の回転体の回転速度を一致させる制御を行なう上では、これらのそれぞれをともにエンジン12の目標回転速度Netに制御する手段(伝達開始制御手段)を備えることは有効である。また、エンジン12の燃焼開始に際しての伝達側回転体側の回転速度に関する条件を緩和する上では、ロー始動設定を行なったりロー始動設定手段を備えたりすることは有効である。さらに、エンジン12の燃焼開始後クラッチを迅速に締結するうえでは、ハイ始動設定を行ったりハイ始動制御手段を備えたりすることは有効である。
【0100】
「始動用動力伝達規制手段について」
エンジン12を始動すべくエンジン12と動力分割機構20の始動用回転体との間のトルクの伝達および遮断を切り替える始動用動力伝達規制手段としては、クラッチC3およびワンウェイベアリング26を備えて構成されるものに限らない。例えば、クラッチC3のみを備えるものであってもよい。この場合、例えばエンジン12の出力軸12aに初期回転を付与した後、エンジン12の燃焼開始に先立ちクラッチC3を遮断するなら、エンジン12における燃焼開始時に急増するトルクが動力分割機構20に伝達されることを好適に回避することができる。また例えばワンウェイベアリング26のみを備えるものであってもよい。
【0101】
また、ワンウェイベアリング26の入力側にクラッチC3を設けてもよい。
【0102】
さらに、エンジン12の出力軸12a側(出力側)に対する動力分割機構20の始動用回転体側(入力側)の相対回転速度が負でないことを条件に動力を伝達させる一方向伝達機構としては、ワンウェイベアリング26に限らず、例えばワンウェイクラッチであってもよい。また、入力側によって出力側が滑ることなくつれまわされるものに限らず、滑りつつも動力が付与されるものであってもよい。
【0103】
エンジン12始動のために動力分割機構20からエンジン12の出力軸12aへと動力を伝達する経路の動力伝達を遮断する遮断手段としては、ノーマリーオープン式のクラッチC3に限らない。例えばノーマリークローズ式のクラッチであってもよい。
【0104】
「変速比可変手段について」
機械式の無段変速装置としては、ベルト式のものに限らず、例えばトラクションドライブ式のものであってもよい。また、機械式のものに限らず、油圧式のものであってもよい。更に、無段変速装置にも限らず、有段変速装置であってもよい。
【0105】
「動力循環(モード1)の利用について」
上記各実施形態では、駆動源(モータジェネレータ10等)の回転速度の符号を固定しつつ駆動輪14の回転速度を正、ゼロ、負に切り替えるために動力循環を利用したが、これに限らない。例えば、駆動源の回転速度の符号が一定に保たれた状態における駆動輪14の回転速度を、ゼロを境とする一方向の領域に限ってもよい。この場合、モータジェネレータ10を反転させることで駆動輪14の回転速度の符号を反転させることができる。もっともこれに代えて、動力分割用回転体と駆動源や駆動輪14との機械的な連結態様を変更することで、モータジェネレータ10の回転速度の符号を反転させることなく駆動輪14の回転速度の符号を反転させてもよい。
【0106】
このように、CVT22のギア比を操作することで駆動輪14の回転速度の符号が反転するような利用をしない場合、モード1におけるCVT22のギア比の操作に対するトータルギア比の変化量を小さくでき、CVT22の耐量を低減できることが発明者らによって見出されている。
【0107】
「動力分割機構について」
動力分割機構としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、上記各実施形態において、サンギアS、キャリアCおよびリングギアRを入れ替えてもよい。この場合であっても、遊星歯車機構とモータジェネレータ10、エンジン12、駆動輪14との間に介在するギアの設定によって、上記各実施形態と同様の効果を奏することが可能となる。
【0108】
また、遊星歯車機構を1つのみ備えるものに限らず、たとえば特開平2010−285140号公報に記載されているように、2つ備えるものであってもよい。
【0109】
「動力分割用回転体について」
上記実施形態では、動力分割用回転体を構成する遊星歯車機構として、サンギアSとリングギアRとの回転速度の符号が同一である場合にキャリアCの回転速度がゼロとなり得るいわゆるダブルピニオンを有する遊星歯車機構を採用したが、これに限らない。たとえば、サンギアSとリングギアRの回転速度の符号が互いに相違する場合にキャリアCの回転速度がゼロとなりうる、いわゆるシングルピニオンタイプのものであってもよい。
【0110】
また、遊星歯車機構を構成するものにも限らず、例えばデフギアを構成するものであってもよい。
【0111】
「そのほか」
上記各実施形態では、モード2において、モータジェネレータ10がCVT22を介すことなく駆動輪14に動力を伝達可能としたが、これに限らない。たとえば図18に示すように、ワンウェイベアリング28とCVT22との間にモータジェネレータ10の回転軸10aを機械的に連結することで、モード2において、CVT22を介してモータジェネレータ10の動力を駆動輪14に連結するようにしてもよい。なお、図18において、先の図1に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を付している。
【0112】
モード1、モード2の切替が可能な構成に限らない。
【符号の説明】
【0113】
10…モータジェネレータ、12…エンジン、20…動力分割機構、26…ワンウェイベアリング(始動用動力伝達規制手段の一実施形態)、28…ワンウェイベアリング(伝達用動力伝達規制手段の一実施形態)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連動して回転する複数の回転体であって且つ回転電機、内燃機関および駆動輪間で動力を分割するための複数の動力分割用回転体を備える動力伝達装置において、
前記動力分割用回転体は、前記内燃機関に始動用の回転力を付与する始動用回転体と、該始動用回転体とは別に、前記内燃機関に機械的に連結された伝達側回転体とを備え、
前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度の比である変速比を可変とする変速比可変手段と、
前記始動用回転体から前記内燃機関への動力の伝達および遮断を切り替える始動用動力伝達規制手段と、
前記内燃機関から前記伝達側回転体側への動力の伝達および遮断を切り替える伝達用動力伝達規制手段と、
前記内燃機関の始動要求が生じる場合、前記内燃機関の目標回転速度を該内燃機関に対する要求動力に基づき設定する目標速度設定手段と、
前記内燃機関の燃焼制御開始後、前記内燃機関の動力を前記伝達用動力伝達規制手段の出力側に出力すべく、前記内燃機関の回転速度を前記目標回転速度に制御するとともに、前記変速比可変手段を操作することで前記伝達用動力伝達規制手段の出力側である前記伝達側回転体側の回転速度を、前記内燃機関の回転速度が前記目標回転速度となるときの前記伝達用動力伝達規制手段の入力側の回転速度に制御する伝達開始制御手段と、
を備えることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の相対回転速度を上昇させることで前記始動用回転体の回転速度が上昇するロー始動設定がなされていることを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度の上昇処理のなされる期間、または該期間が終了してから前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度の低下処理がなされる前に前記内燃機関の燃焼制御を開始するロー始動制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項2記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記ロー始動制御手段は、前記伝達用動力伝達規制手段の入力側である前記内燃機関側に対する出力側である前記伝達側回転体側の相対回転速度が規定速度以上となることを条件に前記内燃機関の燃焼制御を開始する速度差確保手段を備えることを特徴とする請求項3記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度を低下させることで前記始動用回転体の回転速度が上昇するハイ始動設定がなされていることを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度の低下処理のなされる期間に前記内燃機関の燃焼制御を開始するハイ始動制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項5記載の動力伝達装置。
【請求項7】
互いに連動して回転する複数の回転体であって且つ回転電機、内燃機関および駆動輪間で動力を分割するための複数の動力分割用回転体を備える動力伝達装置において、
前記動力分割用回転体は、前記内燃機関に始動用の回転力を付与する始動用回転体と、該始動用回転体とは別に、前記内燃機関に機械的に連結された伝達側回転体とを備え、
前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度の比である変速比を可変とする変速比可変手段と、
前記始動用回転体から前記内燃機関への動力の伝達および遮断を切り替える始動用動力伝達規制手段と、
前記内燃機関から前記伝達側回転体側への動力の伝達および遮断を切り替える伝達用動力伝達規制手段とを備え、
前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度を上昇させることで前記始動用回転体の回転速度が上昇するロー始動設定がなされていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項8】
前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度の上昇処理のなされる期間、または該期間が終了してから前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度の低下処理がなされる前に前記内燃機関の燃焼制御を開始するロー始動制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項7記載の動力伝達装置。
【請求項9】
前記ロー始動制御手段は、前記伝達用動力伝達規制手段の入力側である前記内燃機関側に対する出力側である前記伝達側回転体側の相対回転速度が規定速度以上となることを条件に前記内燃機関の燃焼制御を開始する速度差確保手段を備えることを特徴とする請求項8記載の動力伝達装置。
【請求項10】
互いに連動して回転する複数の回転体であって且つ回転電機、内燃機関および駆動輪間で動力を分割するための複数の動力分割用回転体を備える動力伝達装置において、
前記動力分割用回転体は、前記内燃機関に始動用の回転力を付与する始動用回転体と、該始動用回転体とは別に、前記内燃機関に機械的に連結された伝達側回転体とを備え、
前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度の比である変速比を可変とする変速比可変手段と、
前記始動用回転体から前記内燃機関への動力の伝達および遮断を切り替える始動用動力伝達規制手段と、
前記内燃機関から前記伝達側回転体側への動力の伝達および遮断を切り替える伝達用動力伝達規制手段とを備え、
前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度を低下させることで前記始動用回転体の回転速度が上昇するハイ始動設定がなされていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項11】
前記変速比可変手段によって前記駆動輪の回転速度に対する前記伝達側回転体の回転速度の低下処理のなされる期間に前記内燃機関の燃焼制御を開始するハイ始動制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項10記載の動力伝達装置。
【請求項12】
前記伝達用動力伝達規制手段は、前記伝達側回転体側である出力側に対する前記内燃機関側である入力側の相対回転速度が負でないことを条件に前記入力側の動力を前記出力側に出力する一方向伝達機構を備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
【請求項13】
前記始動用回転体は、前記回転電機および前記駆動輪の回転速度がゼロでない状況下、その回転速度がゼロとなることが可能に設定されており、
前記内燃機関の始動要求が生じる場合、前記変速比可変手段の操作によって前記始動用回転体の回転速度を内燃機関の出力軸の回転速度から漸増させる処理を行なう漸増処理手段を備えることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
【請求項14】
前記動力分割用回転体は、遊星歯車機構を構成するサンギア、キャリアおよびリングギアを備え、
前記変速比可変手段は、前記遊星歯車機構に機械的に連結された無段変速装置であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−245920(P2012−245920A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120408(P2011−120408)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】