説明

動力装置およびハイブリッド車両のトランスアクスル

【課題】ハイブリッド車両等のトランスアクスル内に、並列して搭載された二つの回転電機の冷却性を改善する。
【解決手段】トランスアクスル14内に第1回転電機30と第2回転電機32が並列配置されている。第1回転電機のステータコア40の外周側面と第2回転電機のステータコア42の外周側面の互いに対向する部分の間に伝熱部材44が位置する。伝熱部材は、二つのステータコアの外周側面に接している。また、伝熱部材には、これを貫通するように冷却流路46が配置され、ステータコア40,42は、伝熱部材を介して冷却流路を流れる冷却水により冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の回転電機を備えた動力装置または内燃機関と複数の回転電機を備えたハイブリッド車両のトランスアクスルに関し、特に、前記の回転電機の冷却に関する。
【背景技術】
【0002】
原動機として内燃機関と回転電機を備えたハイブリッド車両が知られている。回転電機は、車両を駆動する動力を発生する電動機として機能すると共に、制動時車両の運動エネルギを電気エネルギに変換する発電機としても機能する。以下では、電動機と発電機の双方の機能を発揮し得る原動機を回転電機と記して説明する。ハイブリッド車両において、内燃機関と2個の回転電機を遊星歯車機構の3要素(サンギア、プラネタリキャリア、リングギア)におのおの結合し、上記三つの原動機で協働して車両の駆動、制動を行う形式のものが知られている。
【0003】
下記特許文献1には、内燃機関と2個の回転電機を有するハイブリッド車両用の駆動装置が開示されている。この駆動装置においては、遊星歯車装置、減速装置および差動装置を含むトランスアクスル内に2個の回転電機が収められ、これらの回転電機が並列して配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−260669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のように2個の回転電機が並列して配置された場合、これらが近接し、回転電機で発生した熱が十分に放熱されない場合がある。
【0006】
本発明は、並列配置された回転電機の冷却性の改善を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る動力装置は、ケース内に並列配置された第1回転電機と第2回転電機を備える動力装置であって、第1回転電機のステータコアの外周側面と第2回転電機のステータコアの外周側面の間に位置し、これらのステータコアを熱的に連結する伝熱部材と、前記伝熱部材内を貫通し、冷却媒体が流れる冷却流路と、を有する。
【0008】
本発明の他の態様であるハイブリッド車両のトランスアクスルは、トランスアクスルケース内に第1回転電機と第2回転電機を並列配置して収容しており、第1回転電機のステータコアの外周側面と第2回転電機のステータコアの外周側面の間に、これらのステータコアを熱的に連結する伝熱部材が位置し、前記伝熱部材内を貫通し、かつ冷却媒体が流れる冷却流路をさらに有する。
【0009】
また、前記動力装置および前記トランスアクスルにおいて、第1回転電機のステータコアと第2回転電機のステータコアは一体に構成することができ、第1回転電機のステータコアに相当する部分と第2回転電機のステータコアに相当する部分とを繋ぐ部分を前記伝熱部材とすることができる。
【0010】
また、前記動力装置および前記トランスアクスルにおいて、前記伝熱部材は、別々に構成された第1回転電機のステータコアと第2回転電機のステータコアのそれぞれの外周側面に接触する、前記ステータコアとは別体の部材とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
並列配置された回転電機のステータコアの冷却性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の動力装置の概略構成を示す骨格図である。
【図2】トランスアクスル、特に二つの回転電機を図1の側方より視た状態を示す概略図である。
【図3】一体型ステータコアを形成するための8の字形電磁鋼板を示す図である。
【図4】一体型ステータコアの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。本発明の実施形態として、内燃機関と2個の回転電機を原動機として備えた動力装置を例に挙げて説明する。図1は、動力装置10の概略構成を示す骨格図である。オットー機関、ディーゼル機関等の内燃機関12の出力は、トランスアクスル14を介して左右の駆動輪16,18に伝達され、車両が駆動される。トランスアクスル14は遊星歯車装置20を有する。遊星歯車装置20は、回転可能なサンギア22と、サンギア22の回転軸と同軸配置され、この軸回りに回転可能なプラネタリキャリア24およびリングギア26を含む。また、プラネタリキャリア24は回転可能に複数のプラネタリピニオン28を支持しており、これらのピニオン28はそれぞれサンギア22とリングギア26とかみ合っている。したがって、プラネタリピニオン28は、プラネタリキャリア24の回転により公転し、またサンギア22とリングギア26の回転速度に基づいて自転する。遊星歯車装置20の3要素、すなわちサンギア22、プラネタリキャリア24およびリングギア26には、おのおの第1回転電機30、内燃機関12および第2回転電機32が結合されている。サンギア22には、第1回転電機30のロータ軸が直接結合される。プラネタリキャリア24には内燃機関12が結合される。内燃機関12は、直接結合されてもよいが、内燃機関12の回転変動を吸収するダンパ(不図示)を介して結合されることが好適である。
【0014】
リングギア26には、エンジン側ドライブギア33が結合されている。エンジン側ドライブギア33は、アイドルギア34とかみ合い、更にアイドルギア34はファイナルドリブンギア35とかみ合っている。アイドルギア34はまた、第2回転電機32のロータ軸に結合される回転電機側ドライブギア36とかみ合っている。ファイナルドリブンギア35は差動装置38を駆動し、差動装置38は、駆動輪16,18に動力を伝達する。
【0015】
遊星歯車装置20の3要素は、二つの要素の回転速度が定められるともう一つの要素の回転が規定される関係にある。例えば、リングギア26の速度は、車両の速度と一意の関係にあるので、ある車両速度のときに、第1回転電機30の速度を変えることで、内燃機関12の回転速度を変えることができる。したがって、遊星歯車装置20は、変速装置として機能する。
【0016】
第1回転電機30は、主に発電機として機能する。発電時には、内燃機関12の出力の一部および全部により遊星歯車装置20を介して第1回転電機30のロータを駆動する。発電された電力は、不図示の二次電池に蓄えられる。また、第1回転電機30は、内燃機関12の始動時において、クランクシャフトを駆動する電動機として使用される。
【0017】
第2回転電機32は主に電動機として機能する。発進時、軽負荷走行時には、内燃機関12は停止され、第2回転電機32単独で車両を駆動する。定常走行時には、内燃機関12と共に車両を駆動する。加速時には、二次電池に蓄えられた電力に加え、第1回転電機30で発電された電力により第2回転電機32を駆動し、より大きな加速を得るようにできる。制動時においては、第2回転電機32は車両の慣性により駆動されて発電機として機能し、発電された電力は二次電池に蓄えられる。
【0018】
第1および第2回転電機30,32のステータコアは、概略的に円筒形状であり、円筒の内周面に突起が周方向に配列されている。この突起にコイルが巻かれ、突起がステータの磁極となる。一方、ステータコアの外周面は略円筒面である。
【0019】
トランスアクスル14は、遊星歯車装置20、差動装置38および遊星歯車装置20から差動装置38に至るまでのギア列等に加え、第1および第2回転電機30,32が共通のケース内に収められた構造を有している。第1および第2回転電機30,32は、ケース内に各々のロータ軸が平行に、かつ互いの隣り合うように配置されている。この配置により、第1回転電機30のステータコア(以下、第1ステータコアと記す)40の外周側面の一部と、第2回転電機32のステータコア(以下、第2ステータコアと記す)42の外周側面の一部が対向するように配置される。そして、これらのステータコア40,42の間に伝熱部材44が位置し、コア同士を熱的に連結する。伝熱部材44内には、冷却媒体が流れる冷却流路46が配置される。冷却媒体は、例えば内燃機関の冷却水とすることができ、トランスアクスル14のケース外部から供給され、伝熱部材を冷却した後、再び外部に送り出される。
【0020】
図2は、図1の側方から視た二つの回転電機30,32の配置を示す概略図であり、特に、二つの回転電機の第1および第2ステータコア40,42を示している。二つのステータコア40,42の対向する外周側面の間に伝熱部材44が位置する。伝熱部材44内には、冷却流路46が配置されている。伝熱部材44は、熱伝導性が良好な樹脂とすることができ、冷却流路46となる管を二つのステータコア40,42の間に配置した状態で、この樹脂をコア間に充填して形成することができる。この結果、伝熱部材44は、第1および第2のステータコア40,42と接触し、これらを熱的に連結する。
【0021】
また、二つの回転電機30,32のステータコアを一体に形成することもできる。図3に示す8の字形の電磁鋼板48を使用して、ステータコアを一体に形成する。8の字形電磁鋼板48は、第1回転電機30のステータコアとなる部分50と第2回転電機32のステータコアとなる部分52、およびこれらを繋いで伝熱部材44となる部分54を有する。部分54には、冷却流路46となる管56を通すための貫通孔58が形成されている。この電磁鋼板48は、プレス成形により容易に一体ものとして形成することができる。この電磁鋼板48を、図4に示すように積層して一体型のステータコア60を形成する。二つの回転電機30,32の軸方向にずれた部分、例えば図1の第2回転電機32の右端部については、従来の略円形の電磁鋼板を積層する。積層形成された一体型ステータコア60の貫通孔58に管56を挿入して冷却流路46を形成する。図4において左側の部分が第1回転電機のステータコア40に相当し、右側部分が第2回転電機のステータコア42に相当する。そして、これらの間の部分が、これらを熱的に連結する伝熱部材44に相当する。
【0022】
以上の実施形態によれば、トランスアクスルのケースの外から冷やすのではなく、ケース内に冷却媒体を導き、直接ステータコアを冷却することができる。この結果、冷却性能が向上する。また、二つの回転電機の間の部分は、空間が小さいため、他の部品や装置が配置されることが少ない。この実施形態のステータコアの冷却に係る構成は、この空間を利用して配置されているため、トランスアクスルの外形を大きくすることがない。
【0023】
上述の動力装置10においては、変速機構と差動装置が一体化された、いわゆるトランスアクスル内に二つの回転電機を収容している。しかし、多くのFR車両に採用される差動装置とは別体の変速機に、二つの回転電機を収容する場合にも、これらの二つの回転電機の間に冷却流路を設けた伝熱部材を設けることができる。
【符号の説明】
【0024】
10 動力装置、12 内燃機関、14 トランスアクスル、20 遊星歯車装置、30 第1回転電機、32 第2回転電機、40 第1ステータコア、42 第2ステータコア、44 伝熱部材、46 冷却流路、60 一体型ステータコア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に並列配置された第1回転電機と第2回転電機を備える動力装置であって、
第1回転電機のステータコアの外周側面と第2回転電機のステータコアの外周側面の間に位置し、これらのステータコアを熱的に連結する伝熱部材と、
前記伝熱部材内を貫通し、冷却媒体が流れる冷却流路と、
を有する、動力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動力装置であって、
第1回転電機のステータコアと第2回転電機のステータコアが一体に構成され、第1回転電機のステータコアに相当する部分と第2回転電機のステータコアに相当する部分とを繋ぐ部分が前記伝熱部材となる、
動力装置。
【請求項3】
請求項1に記載の動力装置であって、
前記伝熱部材は、別々に構成された第1回転電機のステータコアと第2回転電機のステータコアのそれぞれの外周側面に接触する、前記ステータコアとは別体の部材である、
動力装置。
【請求項4】
内燃機関と第1回転電機と第2回転電機を原動機として備えたハイブリッド車両のトランスアクスルであって、
前記第1回転電機と第2回転電機は、トランスアクスルケース内に並列配置され、
第1回転電機のステータコアの外周側面と第2回転電機のステータコアの外周側面の間に位置し、これらのステータコアを熱的に連結する伝熱部材と、
前記伝熱部材内を貫通し、冷却媒体が流れる冷却流路と、
を有する、ハイブリッド車両のトランスアクスル。
【請求項5】
請求項4に記載のハイブリッド車両のトランスアクスルであって、
第1回転電機のステータコアと第2回転電機のステータコアが一体に構成され、第1回転電機のステータコアに相当する部分と第2回転電機のステータコアに相当する部分とを繋ぐ部分が前記伝熱部材となる、
ハイブリッド車両のトランスアクスル。
【請求項6】
請求項4に記載のハイブリッド車両のトランスアクスルであって、
前記伝熱部材は、別々に構成された第1回転電機のステータコアと第2回転電機のステータコアのそれぞれの外周側面に接触する、前記ステータコアとは別体の部材である、
ハイブリッド車両のトランスアクスル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−147296(P2011−147296A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7313(P2010−7313)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】