説明

化合物半導体装置及びその製造方法

【課題】化合物半導体層のクラックをより一層低減することができる化合物半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材1と、基材1の上方に形成された初期層2と、初期層2上に形成され、III−V族化合物半導体を含むコア層3と、が設けられている。初期層3として、コア層3に含まれるIII-V族化合物半導体のIII族原子の層が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上方にGaN層及びAlGaN層を順次形成し、GaN層を電子走行層として用いる電子デバイス(化合物半導体装置)の開発が活発である。このような化合物半導体装置の一つとして、GaN系の高電子移動度トランジスタ(HEMT:high electron mobility transistor)が挙げられる。
【0003】
GaNは優れた電気的特性を有している。例えば、飽和電子速度が高く、バンドギャップが広いため、GaNは高い耐圧特性を持つ。また、GaNの結晶構造はウルツ鉱型であり、GaNはc軸に平行な<0001>方向に極性を持つ。更に、上記のようなGaN層及びAlGaN層のヘテロ構造では、AlGaN層に両者の格子歪に基づくピエゾ分極が誘起されるため、界面に高濃度の2次元電子ガス(2DEG:two-dimensional electron gas)が生じる。これらの理由から、GaNは高周波デバイス材料及び電力用デバイス材料として注目を集めている。
【0004】
従来、GaN系HEMTの製造では、GaN層、AlGaN層、AlN層等の化合物半導体層を有機金属気相成長(MOVPE:metal-organic vapor phase deposition)法により形成している。しかし、異なる材料の化合物半導体層の間、及び化合物半導体層と基板との間に格子定数の相違が存在するため、化合物半導体層が厚くなるほど歪が大きくなり、化合物半導体層にクラックが生じやすくなる。このため、所望の特性を得るために十分な厚さの化合物半導体層を形成することが困難である。
【0005】
このような問題点に関し、基板と電子走行層との間にバッファ層が設けられた構造が知られている。例えば、バッファ層を構成するAlGaNのAl組成を下方から連続的に増加させた構造がある。この構造によれば、バッファ層により歪が緩和される。
【0006】
しかしながら、上述のバッファ層を備えた従来のGaN系HEMTにおいても、化合物半導体層にクラックが生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2004/066393号
【特許文献2】特開2007−258406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、化合物半導体層のクラックをより一層低減することができる化合物半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
化合物半導体装置の一態様には、基材と、前記基材の上方に形成された初期層と、前記初期層上に形成され、III−V族化合物半導体を含むコア層と、が設けられている。前記初期層として、前記コア層に含まれるIII-V族化合物半導体のIII族原子の層が形成されている。
【0010】
化合物半導体装置の他の一態様には、基板と、前記基板上方に形成された核形成層と、前記核形成層上方に形成されたバッファ層と、前記バッファ層上方に形成された電子走行層と、前記電子走行層上方に形成された電子供給層と、が設けられている。前記核形成層又は前記電子走行層の少なくとも一方には、初期層と、前記初期層上に形成され、III−V族化合物半導体を含むコア層と、が設けられており、前記初期層として、前記コア層に含まれるIII-V族化合物半導体のIII族原子の層が形成されている。
【0011】
化合物半導体装置の製造方法の一態様では、基材の上方に初期層を形成し、前記初期層上に、III−V族化合物半導体を含むコア層を形成する。前記初期層として、前記コア層に含まれるIII-V族化合物半導体のIII族原子の層を形成する。
【0012】
化合物半導体装置の製造方法の他の一態様では、基板上方に核形成層を形成し、前記核形成層上方にバッファ層を形成し、前記バッファ層上方に電子走行層を形成し、前記電子走行層上方に電子供給層を形成する。前記核形成層の形成、又は前記電子走行層の形成の少なくとも一方では、初期層を形成し、前記初期層上に、III−V族化合物半導体を含むコア層を形成する。前記初期層として、前記コア層に含まれるIII-V族化合物半導体のIII族原子の層を形成する。
【発明の効果】
【0013】
上記の化合物半導体装置等によれば、初期層として、コア層に含まれるIII-V族化合物半導体のIII族原子の層が形成されるため、クラックをより一層低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図2】第2の実施形態に係るGaN系HEMTの構造を示す図である。
【図3A】第2の実施形態に係るGaN系HEMTの製造方法を工程順に示す断面図である。
【図3B】図3Aに引き続き、GaN系HEMTの製造方法を工程順に示す断面図である。
【図4】第2の実施形態の変形例を示す断面図である。
【図5】高出力増幅器の外観の例を示す図である。
【図6】電源装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、種々のバッファ層が設けられた従来の化合物半導体装置において、化合物半導体層にクラックが発生する原因について鋭意検討を行った結果、以下の事項を見出した。即ち、基板と核形成層との間の格子定数の相違、及びバッファ層と電子走行層との間の格子定数の相違が解消されておらず、これらの格子定数の相違に起因する歪によりクラックが生じているのである。
【0016】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0018】
第1の実施形態では、先ず、図1(a)に示すように、基材1上に初期層2を形成する。基材1としては、例えばSi基板、SiC基板、サファイア基板、GaN基板等を用いることができる。また、これらの基板上に種々の化合物半導体層が形成されたものを用いてもよい。初期層2を形成した後には、初期層2上にコア層3を形成する。コア層3としては、AlN、GaN、及びAlGaN等のIII-V族化合物半導体を含むものを形成する。また、初期層2としては、コア層3に含まれるIII-V族化合物半導体のIII族原子の層、例えばAl層又はGa層を形成する。
【0019】
その後、コア層3上に、製造しようとする化合物半導体装置の機能に必要な層等を形成する。
【0020】
このように、第1の実施形態では、III-V族化合物半導体を含むコア層3の形成前に、初期層2としてIII族原子の層を形成している。III族原子の層は、III-V族化合物半導体層と比較して高い展延性を有しているため、基材1とコア層3との間に格子定数の相違が存在していても、この相違に起因する歪は初期層2により緩和される。従って、コア層3にはクラックが生じにくい。このような初期層2及びコア層3の組み合わせを核形成層、及び/又は電子走行層(チャネル層)に用いることにより、クラックの発生を抑制することができる。
【0021】
また、III族原子の層とIII-V族化合物半導体の層とを比較すると、III族原子の層の方が、その形成の際にピットが生じにくい。これは、III-V族化合物半導体の層の形成の場合には、III族原子のマイグレーションがV族原子により抑制されるのに対し、III族原子の層の形成の場合には、このような抑制がなく、III族原子がマイグレーションしやすいためである。従って、本実施形態では、初期層2にピットが生じにくく、初期層2がより平坦になりやすく、その上に形成されるコア層3もより平坦になりやすい。このため、HEMTに適用した場合には、より高い電子の移動度を得ることができる。
【0022】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図2は、第2の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の構造を示す図である。
【0023】
第2の実施形態では、図2(a)に示すように、基板11上に、核形成層12、バッファ層13、電子走行層14、電子供給層15、及びキャップ層16が形成されている。基板11は、例えば、Si基板、SiC基板、又はサファイア基板であり、特に抵抗の高いものを用いることが好ましい。基板11への電流リークを抑制するためである。
【0024】
核形成層12には、初期層12a及びコア層12bが含まれている。例えば、初期層2aはAl層であり、コア層12bはAlN層である。初期層12aの厚さは2nm〜3nm程度であり、コア層12bの厚さは100nm〜500nm程度(例えば300nm)である。
【0025】
バッファ層13には、初期層13a、コア層13b、初期層13c、及びコア層13dが形成されている。例えば、初期層13aはAl0.7Ga0.3層であり、コア層13bはAl0.7Ga0.3N層である。初期層13aの厚さは2nm〜3nm程度であり、コア層13bの厚さは200nm〜1000nm程度である。また、例えば、初期層13cはAl0.3Ga0.7層であり、コア層13dはAl0.3Ga0.7N層である。初期層13cの厚さは2nm〜3nm程度であり、コア層13dの厚さは200nm〜1000nm程度である。
【0026】
電子走行層14には、初期層14a及びコア層14bが含まれている。例えば、初期層14aはGa層であり、コア層14bはノンドープのi−GaN層である。初期層14aの厚さは2nm〜3nm程度であり、コア層14bの厚さは500nm〜2000nm程度(例えば1000nm)である。
【0027】
電子供給層15には、ノンドープのi−AlGaN層15a及びn型のn−AlGaN層15bが含まれている。i−AlGaN層15aの厚さは1nm〜30nm程度(例えば5nm)であり、n−AlGaN層15bの厚さは3nm〜30nm程度(例えば15nm)程度である。i−AlGaN層15a及びn−AlGaN層15bのAl組成は0.3以下であることが好ましい。格子不整合に伴う結晶性の低下を回避するためである。なお、n−AlGaN層15bには、Siが1×1018cm-3〜1×1020cm-3程度(例えば5×1018cm-3)ドーピングされている。
【0028】
キャップ層16には、n型のn−GaN層が含まれている。キャップ層16の厚さは2nm〜20nm程度(例えば10nm)である。キャップ層16には、Siが1×1018cm-3〜1×1020cm-3程度(例えば5×1018cm-3)ドーピングされている。
【0029】
キャップ層16上に、ソース電極17s及びドレイン電極17dが形成されている。ソース電極17s及びドレイン電極17dはキャップ層16にオーミック接触している。ソース電極17s及びドレイン電極17dには、例えば、Ti膜とその上に形成されたAl膜とが含まれている。キャップ層16上には、ソース電極17s及びドレイン電極17dを覆うパッシベーション膜18も形成されている。パッシベーション膜18としては、例えばシリコン窒化膜が形成されている。パッシベーション膜18の、ソース電極17s及びドレイン電極17dの間に位置する部分に、ゲート電極用の開口部18aが形成されている。そして、パッシベーション膜18上に、開口部18aを介してキャップ層16とショットキー接触するゲート電極17gが形成されている。ゲート電極17gには、例えば、Ni膜とその上に形成されたAu膜とが含まれている。パッシベーション膜18上には、ゲート電極17gを覆うパッシベーション膜19も形成されている。パッシベーション膜19としては、例えばシリコン窒化膜が形成されている。パッシベーション膜18及び19には、外部端子等の接続のための開口部が形成されている。
【0030】
なお、基板11の表面側から見たレイアウトは、例えば図2(b)のようになる。つまり、ゲート電極17g、ソース電極17s及びドレイン電極17dの平面形状が櫛歯状となっており、ソース電極17s及びドレイン電極17dが交互に配置されている。つまり、複数のゲート電極17gがゲート配線25gにより共通接続され、複数のソース電極17sがソース配線25sにより共通接続され、複数のドレイン電極17dがドレイン配線25dにより共通接続されている。そして、これらの間にゲート電極17gが配置されている。このようなマルチフィンガーゲート構造を採用することにより、出力を向上させることができる。なお、図2(a)に示す断面図は、図2(b)中のI−I線に沿った断面を示している。また、活性領域30には、核形成層12、バッファ層13及び電子走行層14等が含まれており、活性領域30の周囲はイオン注入又はメサエッチング等により不活性領域とされている。
【0031】
このように、第2の実施形態では、核形成層12のコア層12bの下に初期層12aが形成されている。また、電子走行層14のコア層14aの下に初期層14aが形成されている。そして、初期層12aはコア層12bより高い展延性を有し、初期層14aはコア層14bより高い展延性を有している。従って、基板11とコア層12bとの間に格子定数の相違が存在していても、この相違に起因する歪は初期層12aにより緩和される。同様に、バッファ層13とコア層14bとの間に格子定数の相違が存在していても、この相違に起因する歪は初期層14aにより緩和される。従って、コア層12b及び14bにはクラックが生じにくい。また、バッファ層13のコア層13bの下に初期層13aが形成され、コア層13dの下に初期層13cが形成されている。そして、初期層13aはコア層13bより高い展延性を有し、初期層13cはコア層13dより高い展延性を有している。従って、コア層13b及び13dにもクラックが生じにくい。
【0032】
次に、第2の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)を製造する方法について説明する。図3A乃至図3Bは、第2の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0033】
先ず、図3A(a)に示すように、基板11上に核形成層12、バッファ層13、電子走行層14、電子供給層15、及びキャップ層16を形成する。核形成層12、バッファ層13、電子走行層14、電子供給層15、及びキャップ層16の形成は、例えば有機金属気相成長(MOVPE)法等の結晶成長法により行う。この場合、原料ガスを選択することにより、これらの層を連続して形成することができる。アルミニウム(Al)の原料、ガリウム(Ga)の原料としては、例えば、夫々トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)を使用することができる。また、窒素(N)の原料として、例えばアンモニア(NH3)を使用することができる。また、n型不純物であるシリコン(Si)の原料としては、例えばシラン(SiH4)を使用することができる。
【0034】
核形成層12の形成では、例えば、先ず、反応炉にNH3を供給せずにTMAを数秒間供給し、初期層12aとしてAl層を2nm〜3nm程度成長させ、その後に、NH3の供給を開始して、コア層12bとしてAlN層を100nm〜500nm程度成長させる。つまり、初期層12aとして、コア層12bよりもIII族原子の含有率が高いものを形成する。
【0035】
バッファ層13の形成では、例えば、先ず、反応炉にNH3を供給せずにTMA及びTMGを数秒間供給し、初期層13aとしてAl0.3Ga0.7層を2nm〜3nm程度成長させ、その後に、NH3の供給を開始して、コア層13bとしてAl0.3Ga0.7N層を200nm〜1000nm程度成長させる。次いで、NH3の供給を停止し、TMAの流量を増加させ、TMGの流量を低下させて、初期層13cとしてAl0.7Ga0.3層を2nm〜3nm程度成長させ、その後に、NH3の供給を再開し、コア層13dとしてAl0.7Ga0.3N層を200nm〜1000nm程度成長させる。つまり、初期層13aとして、コア層13bよりもIII族原子の含有率が高いものを形成し、初期層13cとして、コア層13dよりもIII族原子の含有率が高いものを形成する。なお、バッファ層13に含まれるコア層(AlGaN層)は2層である必要はなく、1層であっても、3層以上であってもよい。また、各コア層のAl組成が変化していてもよい。
【0036】
電子走行層14の形成では、例えば、先ず、反応炉にNH3を供給せずにTMGを数秒間供給し、初期層14aとしてGa層を2nm〜3nm程度成長させ、その後に、NH3の供給を開始して、コア層14bとしてGaN層を500nm〜2000nm程度成長させる。つまり、初期層14aとして、コア層14bよりもIII族原子の含有率が高いものを形成する。
【0037】
キャップ層16の形成後には、例えばリフトオフ法により、図3A(b)に示すように、ソース電極17s及びドレイン電極17dをキャップ層16上に形成する。ソース電極17s及びドレイン電極17dの形成では、ソース電極17s及びドレイン電極17dを形成する領域を開口するレジストパターンを形成し、Ti及びAlの蒸着を行い、その後、レジストパターン上に付着したTi及びAlをレジストパターンごと除去する。そして、窒素雰囲気中で400℃〜1000℃(例えば600℃)で熱処理を行い、オーミック接触を確立する。
【0038】
次いで、図3A(c)に示すように、キャップ層16上に、ソース電極17s及びドレイン電極17dを覆うようにしてパッシベーション膜18を形成する。パッシベーション膜18としては、例えばプラズマCVD(chemical vapor deposition)法によりシリコン窒化膜を形成する。
【0039】
その後、開口部18aを形成する予定の領域を開口するレジストパターンを形成する。続いて、レジストパターンを用いたエッチングを行うことにより、図3B(d)に示すように、パッシベーション膜18に開口部18aを形成する。次いで、パッシベーション膜18上に、開口部18aを介してキャップ層16と接するゲート電極17gをリフトオフ法により形成する。ゲート電極17gの形成では、開口部18aを形成する際に用いたレジストパターンを除去した後、ゲート電極17gを形成する領域を開口する新たなレジストパターンを形成し、Ni及びAuの蒸着を行い、その後、レジストパターン上に付着したNi及びAuをレジストパターンごと除去する。
【0040】
その後、図3B(e)に示すように、パッシベーション膜18上に、ゲート電極17gを覆うようにしてパッシベーション膜19を形成する。パッシベーション膜19としては、例えばプラズマCVD法によりシリコン窒化膜を形成する。
【0041】
続いて、複数のゲート電極17gを共通接続するゲート配線25g、複数のソース電極17sを共通接続するソース配線25s、及び複数のドレイン電極17dを共通接続するドレイン配線25d等を形成する(図2(b)参照)。このようにして、図2に示す構造のGaN系HEMTを得ることができる。
【0042】
この製造方法では、核形成層12の形成の際に、初期層12aとしてAl層を形成し、その後にコア層12bとしてAlN層を形成している。従って、ピットの少ない初期層12aを形成することができ、その上に形成するコア層12bにおけるピットの発生を抑制し、平坦なコア層12bを形成することができる。同様に、電子走行層14の形成の際に、初期層14aとしてGa層を形成し、その上にコア層14bとしてGaN層を形成している。従って、ピットの少ない初期層14aを形成することができ、その上に形成するコア層14bにおけるピットの発生を抑制し、平坦なコア層14bを形成することができる。このため、より高い電子の移動度を得ることが可能となる。また、バッファ層13の形成の際には、初期層13aとしてAl0.3Ga0.7層を形成し、その上にコア層13bとしてAl0.3Ga0.7N層を形成している。また、初期層13cとしてAl0.7Ga0.3層を形成し、その上にコア層13dとしてAl0.7Ga0.3N層を形成している。従って、ピットの少ない初期層13a及び13cを形成することができ、平坦なコア層13b及び13dを形成することができる。
【0043】
なお、図4に示すように、キャップ層16に、ソース電極17s及びドレイン電極17d用の開口部を儲け、ソース電極17s及びドレイン電極17dをn−AlGaN層15bに接するようにして形成してもよい。この場合、開口部の深さに関し、キャップ層16の一部を残してもよく、また、n−AlGaN層15bの一部を除去してもよい。つまり、開口部の深さがキャップ層16の厚さと一致している必要はない。
【0044】
また、抵抗体及びキャパシタ等をも基板11上に実装してモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)としてもよい。
【0045】
これらの実施形態に係るGaN系HEMTは、例えば高出力増幅器として用いることができる。図5に、高出力増幅器の外観の例を示す。この例では、ソース電極に接続されたソース端子81sがパッケージの表面に設けられている。また、ゲート電極に接続されたゲート端子81g、及びドレイン電極に接続されたドレイン端子81dがパッケージの側面から延出している。
【0046】
また、これらの実施形態に係るGaN系HEMTは、例えば電源装置に用いることもできる。図6(a)は、PFC(power factor correction)回路を示す図であり、図6(b)は、図6(a)に示すPFC回路を含むサーバ電源(電源装置)を示す図である。
【0047】
図6(a)に示すように、PFC回路90には、交流電源(AC)が接続されるダイオードブリッジ91に接続されたコンデンサ92が設けられている。コンデンサ92の一端子にはチョークコイル93の一端子が接続され、チョークコイル93の他端子には、スイッチ素子94の一端子及びダイオード96のアノードが接続されている。スイッチ素子94は上記の実施形態におけるHEMTに相当し、当該一端子はHEMTのドレイン電極に相当する。また、スイッチ素子94の他端子はHEMTのソース電極に相当する。ダイオード96のカソードにはコンデンサ95の一端子が接続されている。コンデンサ92の他端子、スイッチ素子94の当該他端子、及びコンデンサ95の他端子が接地される。そして、コンデンサ95の両端子間から直流電源(DC)が取り出される。
【0048】
そして、図6(b)に示すように、PFC回路90は、サーバ電源100等に組み込まれて用いられる。
【0049】
このようなサーバ電源100と同様の、より高速動作が可能な電源装置を構築することも可能である。また、スイッチ素子94と同様のスイッチ素子は、スイッチ電源又は電子機器に用いることができる。更に、これらの半導体装置を、サーバの電源回路等のフルブリッジ電源回路用の部品として用いることも可能である。
【0050】
いずれの実施形態においても、基板として、炭化シリコン(SiC)基板、サファイア基板、シリコン基板、GaN基板又はGaAs基板等を用いてもよい。基板が、導電性、半絶縁性又は絶縁性のいずれであってもよい。
【0051】
また、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極の構造は上述の実施形態のものに限定されない。例えば、これらが単層から構成されていてもよい。また、これらの形成方法はリフトオフ法に限定されない。更に、オーミック特性が得られるのであれば、ソース電極及びドレイン電極の形成後の熱処理を省略してもよい。また、ゲート電極に対して熱処理を行ってもよい。
【0052】
また、各層の厚さ及び材料等も上述の実施形態のものに限定されない。例えば、核形成層の初期層として、Ga層又はAlGa層を形成し、コア層として、GaN層又はAlGaN層を形成してもよい。また、電子走行層の初期層として、Al層又はAlGa層を形成し、コア層として、AlN層又はAlGaN層を形成してもよい。更に、バッファ層の初期層として、Al層又はGa層を形成し、コア層として、AlN層又はGaN層を形成してもよい。
【0053】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0054】
(付記1)
基材と、
前記基材の上方に形成された初期層と、
前記初期層上に形成され、III−V族化合物半導体を含むコア層と、
を有し、
前記初期層として、前記コア層に含まれるIII-V族化合物半導体のIII族原子の層が形成されていることを特徴とする化合物半導体装置。
【0055】
(付記2)
前記基材として基板が用いられ、
前記初期層及び前記コア層が、前記基板上の核形成層として設けられていることを特徴とする付記1に記載の化合物半導体装置。
【0056】
(付記3)
前記初期層としてAl層が形成され、
前記コア層としてAlN層が形成されていることを特徴とする付記2に記載の化合物半導体装置。
【0057】
(付記4)
前記初期層及び前記コア層が、トランジスタの電子走行層として設けられていることを特徴とする付記1に記載の化合物半導体装置。
【0058】
(付記5)
前記初期層としてGa層が形成され、
前記コア層としてGaN層が形成されていることを特徴とする付記4に記載の化合物半導体装置。
【0059】
(付記6)
基板と、
前記基板上方に形成された核形成層と、
前記核形成層上方に形成されたバッファ層と、
前記バッファ層上方に形成された電子走行層と、
前記電子走行層上方に形成された電子供給層と、
を有し、
前記核形成層又は前記電子走行層の少なくとも一方は、
初期層と、
前記初期層上に形成され、III−V族化合物半導体を含むコア層と、
を有し、
前記初期層として、前記コア層に含まれるIII-V族化合物半導体のIII族原子の層が形成されていることを特徴とする化合物半導体装置。
【0060】
(付記7)
前記初期層としてAl層、Ga層又はAlGa層が形成され、
前記コア層としてAlN層、GaN層又はAlGaN層が形成されていることを特徴とする付記6に記載の化合物半導体装置。
【0061】
(付記8)
前記バッファ層は、
第2の初期層と、
前記第2の初期層上に形成され、III−V族化合物半導体を含む第2のコア層と、
を有し、
前記第2の初期層として、前記第2のコア層に含まれるIII-V族化合物半導体のIII族原子の層が形成されていることを特徴とする付記6又は7に記載の化合物半導体装置。
【0062】
(付記9)
前記基板は、Si基板、SiC基板又はサファイア基板であることを特徴とする付記6乃至8のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0063】
(付記10)
付記1乃至9のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする電源装置。
【0064】
(付記11)
付記1乃至9のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする高出力増幅器。
【0065】
(付記12)
基材の上方に初期層を形成する工程と、
前記初期層上に、III−V族化合物半導体を含むコア層を形成する工程と、
を有し、
前記初期層として、前記コア層に含まれるIII-V族化合物半導体のIII族原子の層を形成することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【0066】
(付記13)
前記基材として基板を用い、
前記基板上の核形成層として、前記初期層及び前記コア層を形成することを特徴とする付記12に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0067】
(付記14)
前記初期層としてAl層を形成し、
前記コア層としてAlN層を形成することを特徴とする付記13に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0068】
(付記15)
前記初期層及び前記コア層を、トランジスタの電子走行層として形成することを特徴とする付記12に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0069】
(付記16)
前記初期層としてGa層を形成し、
前記コア層としてGaN層を形成することを特徴とする付記15に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0070】
(付記17)
基板上方に核形成層を形成する工程と、
前記核形成層上方にバッファ層を形成する工程と、
前記バッファ層上方に電子走行層を形成する工程と、
前記電子走行層上方に電子供給層を形成する工程と、
を有し、
前記核形成層を形成する工程、又は前記電子走行層を形成する工程の少なくとも一方は、
初期層を形成する工程と、
前記初期層上に、III−V族化合物半導体を含むコア層を形成する工程と、
を有し、
前記初期層として、前記コア層に含まれるIII-V族化合物半導体のIII族原子の層を形成することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【0071】
(付記18)
前記初期層としてAl層、Ga層又はAlGa層を形成し、
前記コア層としてAlN層、GaN層又はAlGaN層を形成することを特徴とする付記17に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0072】
(付記19)
前記バッファ層を形成する工程は、
第2の初期層を形成する工程と、
前記第2の初期層上に、III−V族化合物半導体を含む第2のコア層を形成する工程と、
を有し、
前記第2の初期層として、前記第2のコア層に含まれるIII-V族化合物半導体のIII族原子の層を形成することを特徴とする付記17又は18に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0073】
(付記20)
前記基板として、Si基板、SiC基板又はサファイア基板を用いることを特徴とする付記17乃至19のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0074】
1:基材
2:初期層
3:コア層
11:基板
12:核形成層
12a:初期層
12b:コア層
13:バッファ層
13a、13c:初期層
13b、13d:コア層
14:電子走行層
14a:初期層
14b:コア層
15:電子供給層
15a:i−AlGaN層
15b:n−AlGaN層
16:キャップ層
17g:ゲート電極
17s:ソース電極
17d:ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の上方に形成された初期層と、
前記初期層上に形成され、III−V族化合物半導体を含むコア層と、
を有し、
前記初期層として、前記コア層に含まれるIII-V族化合物半導体のIII族原子の層が形成されていることを特徴とする化合物半導体装置。
【請求項2】
前記基材として基板が用いられ、
前記初期層及び前記コア層が、前記基板上の核形成層として設けられていることを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項3】
前記初期層及び前記コア層が、トランジスタの電子走行層として設けられていることを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項4】
基板と、
前記基板上方に形成された核形成層と、
前記核形成層上方に形成されたバッファ層と、
前記バッファ層上方に形成された電子走行層と、
前記電子走行層上方に形成された電子供給層と、
を有し、
前記核形成層又は前記電子走行層の少なくとも一方は、
初期層と、
前記初期層上に形成され、III−V族化合物半導体を含むコア層と、
を有し、
前記初期層として、前記コア層に含まれるIII-V族化合物半導体のIII族原子の層が形成されていることを特徴とする化合物半導体装置。
【請求項5】
前記初期層としてAl層、Ga層又はAlGa層が形成され、
前記コア層としてAlN層、GaN層又はAlGaN層が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の化合物半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする高出力増幅器。
【請求項8】
基材の上方に初期層を形成する工程と、
前記初期層上に、III−V族化合物半導体を含むコア層を形成する工程と、
を有し、
前記初期層として、前記コア層に含まれるIII-V族化合物半導体のIII族原子の層を形成することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【請求項9】
基板上方に核形成層を形成する工程と、
前記核形成層上方にバッファ層を形成する工程と、
前記バッファ層上方に電子走行層を形成する工程と、
前記電子走行層上方に電子供給層を形成する工程と、
を有し、
前記核形成層を形成する工程、又は前記電子走行層を形成する工程の少なくとも一方は、
初期層を形成する工程と、
前記初期層上に、III−V族化合物半導体を含むコア層を形成する工程と、
を有し、
前記初期層として、前記コア層に含まれるIII-V族化合物半導体のIII族原子の層を形成することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記初期層としてAl層、Ga層又はAlGa層を形成し、
前記コア層としてAlN層、GaN層又はAlGaN層を形成することを特徴とする請求項9に記載の化合物半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−119581(P2012−119581A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269663(P2010−269663)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】