説明

半導体デバイスの製造方法及び基板処理装置

【課題】酸化膜の成膜温度を低下させつつ、溝の凹部への埋め込み性を高める。
【解決手段】処理室内に基板を搬入する工程と、処理室内に成膜原料と、酸化原料と、触媒原料とを同時に供給する工程と、各原料の供給を停止して処理室内を不活性ガスでパージする工程と、を1回もしくは複数回実施することで、基板上に酸化膜を堆積させる工程と、酸化膜堆積後の基板を処理室内から搬出する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に酸化膜を形成する工程を有する半導体デバイスの製造方法、及び基板上に酸化膜を形成する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、DRAM等の半導体デバイスの高密度化、多層配線化に伴い、酸化膜の成膜温度の低温化が要求されている。更に、表面の平坦性、凹部への埋めこみ性、ステップカバレッジ性に優れた酸化膜の形成方法が求められている。例えば、CMOS LSIをSTI(Shallow Trench Isolation)法により素子分離する際、ウエハ上に形成された深い溝を絶縁膜で埋め込む工程(ギャップフィル)が行われる。ITRS(International Technology Roadmap for Semiconductors)によると、ウエハ上に形成する溝の深さとトップ幅は、hp90ノードではそれぞれ384nm,90nmであるが、hp32ノードではそれぞれ314nm,32nmとなる。このように、ウエハ上に形成する溝のトップ幅が狭くなることから、凹部への埋め込み性の向上が求められることになる。
【0003】
STI法で用いる低温酸化膜形成方法としては、HDP(High Density Plasma)法が従来から用いられている。HDP法によれば、膜の堆積とエッチングとが同時に進行する適当な条件を選択すると、深い溝にも均一性良く酸化膜を埋め込むことが出来る。形成温度としては、例えば375℃〜700℃が用いられている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
HDP法以外の低温酸化膜形成方法としては、TEOS(Si(OC)とオゾン(O)とを用いた成膜法(以下、TEOS/オゾン法)が知られている。TEOS/オゾン法によれば、例えば300℃〜400℃の成膜温度にてTEOSとOとを反応室内に同時に供給すると、高分子重合体が生成される。そして、例えば375℃付近で膜のフロー効果が得られ、凹部への埋め込み性を向上できる。また、OとTEOSとの流量比を大きく取ることにより、膜のフロー効果を増大でき、凹部への埋め込み性を向上できる。更には、TEOSとHOとを用いたプラズマ処理による方法も知られている。係る方法によれば、成膜時圧力を例えば1330Pa程度の高圧、成膜温度を例えば150℃以下の低温とした場合に、膜のフロー効果を増大でき、凹部への埋め込み性を向上できる(例えば非特許文献1参照)。
【0005】
HDP法、及びTEOS/オゾン法以外の低温酸化膜形成方法としては、真空紫外光を用いた成膜法が知られている。真空紫外光を用いた成膜法は、材料(TEOS)ガスの分子結合の一部をフォトンエネルギーにより気相中で切断し、切断により生じた分子の一部をウエハ表面に吸着させて酸化膜を成膜する方法である。例えば、キセノンエキシマランプからの真空紫外光(波長172nm、フォトンのエネルギー7.2eV)をTEOSに照射すると、TEOSの分子結合のうち、結合エネルギーが6eV以下のC−H結合やC−C結合は切断されるが、結合エネルギーが9.6eVのSi−O結合は切断されない。そして、ここで生じたSi−O結合を有する分子をウエハ表面に吸着させることで酸化膜を形成することが出来る。この方法を用いると、25℃程度の室温で例えば200nm/min以上の成膜速度が得られ、しかも凹部への優れた埋め込み性を向上させることが出来る(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,395,150号明細書
【特許文献2】特開2001−274156号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】I.A.Shareef,J.Vac.Sci.Technol.B13(4),(1995),p.1888
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上述のHDP法では、溝幅が狭くなるに従い、溝の凹部を埋め込むことは困難となってきた。また、TEOS/オゾン法では、高い成膜速度が得られるものの、溝の凹部を完全に埋め込むことができない。溝の凹部を完全に埋め込むためには形成する膜の流動化を高める必要があり、このためには100℃以下の室温付近での成膜が必要とされる。
【0009】
これに対し、真空紫外光を用いた成膜法は、室温近傍での成膜方法であり、形成する膜の流動化が得られ、凹部への優れた埋め込み特性と高い成膜速度とが得られる。しかしながら、真空紫外光を用いた成膜法では、キセノンエキシマランプ等の真空紫外光ランプや、真空紫外光を反応室内に取り入れるための窓等を備えた成膜装置が必要となる。そのため、ランプの寿命や窓への膜の堆積などの特有の課題が生じてしまう場合がある。
【0010】
本発明は、酸化膜の成膜温度を低下させつつ、溝の凹部への埋め込み性を高めることが可能な半導体デバイスの製造方法及び基板処理装置を提供することを目的とする。また、真空紫外光ランプや窓等を必要としない半導体デバイスの製造方法及び基板処理装置を提供し、半導体デバイスの製造コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、処理室内に基板を搬入する工程と、前記処理室内に成膜原料と、酸化原料と、触媒原料とを同時に供給する工程と、前記各原料の供給を停止して前記処理室内を不活性ガスでパージする工程と、を1回もしくは複数回実施することで、前記基板上に酸化膜を堆積させる工程と、前記酸化膜堆積後の前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、を有する半導体デバイスの製造方法が提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、処理室内に基板を搬入する工程と、前記処理室内に成膜原料と、酸化原料と、触媒原料とを同時に供給する工程と、前記各原料の供給を停止して前記処理室内を不活性ガスでパージする工程と、前記処理室内に活性酸素を供給する工程と、前記活性酸素の供給を停止して前記処理室内を不活性ガスでパージする工程と、を1回もしくは複数回実施することで、前記基板上に酸化膜を堆積させる工程と、前記酸化膜堆積後の前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、を有する半導体デバイスの製造方法が提供される。
【0013】
本発明の更に他の態様によれば、基板を処理する処理室と、前記処理室内に成膜原料を供給する成膜原料供給系と、前記処理室内に酸化原料を供給する酸化原料供給系と、前記処理室内に触媒原料を供給する触媒原料供給系と、前記処理室内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、前記処理室内を排気する排気系と、前記処理室内に成膜原料と、酸化原料と、触媒原料とを同時に供給し、前記各原料の供給を停止して前記処理室内を不活性ガスでパージし、これを1回もしくは複数回実施することで、前記基板上に酸化膜を堆積させるように、前記成膜原料供給系、前記酸化原料供給系、前記触媒原料供給系、前記不活性ガス供給系、および、前記排気系を制御する制御部と、を有する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る半導体デバイスの製造方法及び基板処理装置によれば、酸化膜の成膜温度を低下させつつ、溝の凹部への埋め込み性を高めることができる。また、真空紫外光ランプや窓等を必要としないため、基板処理装置の構成を簡便にでき、半導体デバイスの製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の斜透視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の側面透視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る基板処理装置が備える処理炉の縦断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る基板処理装置が備える処理炉の横断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る基板処理工程のガス供給シーケンスを示すフロー図である。
【図6】成膜原料としてTEOSを、酸化原料としてHOを、触媒としてピリジンを用いた場合の酸化膜の成膜プロセスを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1)発明者等が得た知見
まず、本発明の実施形態の説明に先立ち、発明者等が得た種々の知見について説明する。
【0017】
(成膜温度について)
上述したように、真空紫外光を用いた成膜法では、キセノンエキシマランプ等からの真空紫外光(波長172nm、フォトンのエネルギー7.2eV)をTEOSに照射する。すると、以下の(1)式に示すように、TEOSのエチル基が切断され、Si−O−Si結合を含む分子((HO−)Si−O−Si(−OC)が生成される。ここで生じたSi−O結合を有する分子をウエハ表面に吸着させることで、ウエハ上に酸化膜を形成することができる。
【0018】
2Si(−OC+hν(172nm)→(HO−)Si−O−Si(−OC+2COH ・・・式(1)
【0019】
真空紫外光を用いた成膜法では、優れた成膜速度と埋め込み性とが得られる。しかしながら、係る方法では、キセノンエキシマランプ等の真空紫外光ランプや、真空紫外光を反応室内に取り入れるための窓等を備えた成膜装置が必要となり、ランプの寿命や、窓への膜の堆積など、特有の課題が生じてしまう。発明者等は、真空紫外線の照射を行わずに、凹部への埋め込み性を向上させることの可能な酸化膜の形成方法について、鋭意検討を行った。
【0020】
TEOSへの紫外線の照射を行わずに、TEOSへ酸化原料(例えばO)を供給した場合の反応は、以下の(2)式のようになる。
【0021】
Si(−OC+8O→SiO+10HO+8CO ・・・式(2)
【0022】
式(2)の反応にて発生する水(HO)により、TEOSの加水分解が以下の(3)式のように進行し、中間生成物のシラノール((HO−)Si−OH)とエタノール(COH)とが生成される。
【0023】
Si(−OC+HO→(HO−)Si−OH+COH
・・・式(3)
【0024】
式(3)の反応にて発生するシラノールは、以下の(4)式のようにSi−O−Si結合を含む分子((HO−)Si−O−Si(−OC)とHOとを生成させる。
【0025】
2(HO−)Si−OH→(HO−)Si−O−Si(−OC+HO ・・・式(4)
【0026】
また、TEOSとシラノールとは、以下の(5)式のようにSi−O−Si結合を含む分子((HO−)Si−O−Si(−OC)とエタノール(COH)とを生成させる。
【0027】
(HO−)Si−OC+HO−Si(−OC→(HO−)Si−O−Si(−OC+COH ・・・式(5)
【0028】
このように、TEOSへOを供給することで、ゾル化反応、すなわち加水分解と縮合反応とが進行する。これにより、形成する酸化膜の流動性を高めることが可能となる。特に、式(4)や式(5)において発生する水やエタノールは、媒体として作用し、ゾル化反応をさらに促進させるものと考えられる。
【0029】
発明者等は、上述の反応式を検討した結果、式(2)〜式(5)に示す反応を100℃以下の低温下で進行させることで、水やエタノール等の媒体中にシリカが混在した状態(ゾル状態)を生成することができ、形成する膜の流動性を高め、溝の凹部への酸化膜の埋め込み性を向上させることができるとの知見を得た。そして、式(2)〜式(5)に示す反応を100℃超の温度で行うと、流動化のための溶媒が減少してシリカの縮合が進むため、流動性が低下してしまうとの知見を得た。
【0030】
(成膜原料について)
Siを含む成膜原料(Si化合物)としては、TEOSに限らず、例えばHCD(Hexachlorodisilane)のような塩素系誘導体材料を用いることも考えられる。HCDと触媒であるピリジン(CN)とを用いたALD法により、低温下でSiO膜を形成することが可能である。しかしながら、発明者等の知見によれば、Siを含む成膜原料としては、HCDのような塩素系誘導体材料よりも、酸化原料(例えばO)との反応により水やエタノール等の媒体を生成できるような原料を用いることが好ましい。例えば、TES(Tetraethylsilane)のようなエチル誘導体、TRIES(Triethoxysilane)やTEOS(Tetraethoxysilane)のようなエトキシ誘導体、DADBS(Di−acetoxy−di−t−butoxy−silane)のようなアルコキサイド誘導体、OMCTS(Octamethylsyclotetrasiloxisane)のようなシロキサン誘導体などを用いることが好ましい。式(2)〜式(5)に示す反応をこのような材料を用いて進行させることで、水やエタノール等の媒体中にシリカが混在した状態を作り出すことができ、膜の流動性をより高めることが可能となる。
【0031】
(酸化原料について)
酸化原料については、上述のオゾンに限らず、メタノール(CHO)あるいはエタノール(COH)のようなアルコール類、過酸化水素(H)、水(HO)、水とオゾン(O)との混合物、水と過酸化水素との混合物、酸素(O)あるいは原子状酸素(O)のいずれかを用いることができる。なお、上述したとおり、形成する膜の流動性を向上させるには、式(2)〜式(5)の反応を100℃以下で進行させることが好
ましい。反応室内の温度がこのように低く、酸化原料の活性度を十分に高めることが出来ない場合には、ウエハ近傍にて酸化原料を予備加熱して活性化させたり、プラズマにより励起させたりしてもよい。例えば、酸化原料としてオゾンを用いる場合、200℃以下の低温では、その活性化の度合いが極めて小さい。すなわち、オゾンは、反応室内において気相中にて加熱されて活性化されるが、反応室内の温度が200℃以下の低温であると、活性化に十分なエネルギーを受け取ることが出来ない。係る場合、ウエハ近傍にてオゾンを予備加熱する等して活性化させるとよい。なお、上記の方法で形成された酸化原料は、酸化膜形成時の酸化剤として利用されるだけでなく、酸化膜形成後におけるアニール処理、すなわち酸化膜を加熱して、酸化膜中に残留したカーボン、メチル基、エチル基、ダングリングボンドを低減する処理にも利用することができる。
【0032】
(触媒原料について)
上述の成膜原料及び酸化原料と、触媒原料としてのピリジンと、を反応室内に同時に供給することにより、成膜温度を100℃以下に低下させつつ、酸化膜の埋め込み性及び成膜速度を向上させることができる。図6に、成膜原料としてTEOSを、酸化原料としてHOを、触媒としてピリジンを用いた場合の酸化膜の成膜プロセスを示す。なお、触媒原料としては、ピリジンに限らず、ピコリン(CN)或いはアンモニア(NH)を用いることも可能である。
【0033】
<本発明の一実施形態>
以下に、上述の知見に基づいてなされた本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1は、本実施形態に係る基板処理装置101の斜透視図である。図2は、本実施形態に係る基板処理装置101の側面透視図である。図3は、本実施形態に係る基板処理装置101が備える処理炉202の縦断面図である。図4は、本実施形態に係る基板処理装置101が備える処理炉202の横断面図である。図5は、本実施形態に係る基板処理工程のガス供給シーケンスを例示するフロー図である。
【0035】
(1)基板処理装置の構成
まず、本実施形態にかかる基板処理装置101の構成例について、図1、図2を用いて説明する。
【0036】
図1および図2に示すように、本実施形態にかかる基板処理装置101は筐体111を備えている。筐体111の正面壁111aの下方には、筐体111内をメンテナンス可能なように設けられた開口部としての正面メンテナンス口103が設けられている。正面メンテナンス口103には、正面メンテナンス口103を開閉する正面メンテナンス扉104が設けられている。シリコンからなるウエハ(基板)200を筐体111内外へ搬送するには、複数のウエハ200を収納するウエハキャリア(基板収納容器)としてのカセット110が使用される。正面メンテナンス扉104には、カセット110を筐体111内外へ搬送する開口であるカセット搬入搬出口(基板収納容器搬入搬出口)112が、筐体111内外を連通するように設けられている。カセット搬入搬出口112は、フロントシャッタ(基板収納容器搬入搬出口開閉機構)113によって開閉されるように構成されている。カセット搬入搬出口112の筐体111内側には、カセットステージ(基板収納容器受渡し台)114が設けられている。カセット110は、図示しない工程内搬送装置によってカセットステージ114上に載置され、また、カセットステージ114上から筐体111外へ搬出されるように構成されている。
【0037】
カセット110は、工程内搬送装置によって、カセット110内のウエハ200が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステー
ジ114上に載置される。カセットステージ114は、カセット110を筐体111の後方に向けて縦方向に90°回転させ、カセット110内のウエハ200を水平姿勢とさせ、カセット110のウエハ出し入れ口を筐体111内の後方に向かせることが可能なように構成されている。
【0038】
筐体111内の前後方向の略中央部には、カセット棚(基板収納容器載置棚)105が設置されている。カセット棚105は、複数段、複数列にて複数個のカセット110を保管するように構成されている。カセット棚105には、後述するウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。また、カセットステージ114の上方には、予備カセット棚107が設けられ、予備的にカセット110を保管するように構成されている。
【0039】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置(基板収納容器搬送装置)118が設けられている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ(基板収納容器昇降機構)118aと、カセット110を保持したまま水平移動可能な搬送機構としてのカセット搬送機構(基板収納容器搬送機構)118bと、を備えている。これらカセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連続動作により、カセットステージ114、カセット棚105、予備カセット棚107、移載棚123の間で、カセット110を搬送するように構成されている。
【0040】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構(基板移載機構)125が設けられている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bと、を備えている。なお、ウエハ移載装置125aは、ウエハ200を水平姿勢で保持するツイーザ(基板保持体)125cを備えている。これらウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連続動作により、ウエハ200を移載棚123上のカセット110内からピックアップして後述するボート(基板保持具)217へ装填(チャージング)したり、ウエハ200をボート217から脱装(ディスチャージング)して移載棚123上のカセット110内へ収納したりするように構成されている。
【0041】
筐体111の後部上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部には開口が設けられ、かかる開口は炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。なお、処理炉202の構成については後述する。
【0042】
処理炉202の下方には、ボート217を昇降させて処理炉202内外へ搬入搬出させる昇降機構としてのボートエレベータ(基板保持具昇降機構)115が設けられている。ボートエレベータ115の昇降台には、連結具としてのアーム128が設けられている。アーム128上には、ボート217を垂直に支持するとともに、ボートエレベータ115によりボート217が上昇したときに処理炉202の下端部を気密に閉塞する蓋体としてのシールキャップ219が水平姿勢で設けられている。
【0043】
ボート217は複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚〜150枚程度)のウエハ200を、水平姿勢で、かつその中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に保持するように構成されている。
【0044】
カセット棚105の上方には、供給ファンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット134aが設けられている。クリーンユニット134aは、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0045】
また、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびボートエレベータ115側と反対側である筐体111の左側端部には、クリーンエアを供給するよう供給フアンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット(図示せず)が設置されている。図示しない前記クリーンユニットから吹き出されたクリーンエアは、ウエハ移載装置125a、ボート217を流通した後に、図示しない排気装置に吸い込まれて、筐体111の外部に排気されるように構成されている。
【0046】
(2)基板処理装置の動作
次に、本実施形態にかかる基板処理装置101の動作について説明する。
【0047】
まず、カセット110がカセットステージ114上に載置されるに先立って、カセット搬入搬出口112がフロントシャッタ113によって開放される。その後、カセット110が、工程内搬送装置によってカセット搬入搬出口112から搬入され、ウエハ200が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、筐体111の後方に向けて縦方向に90°回転させられる。その結果、カセット110内のウエハ200は水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口は筐体111内の後方を向く。
【0048】
次に、カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセット棚105ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へ自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、カセット棚105ないし予備カセット棚107から移載棚123に移載されるか、もしくは直接移載棚123に搬送される。
【0049】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ200は、ウエハ移載装置125aのツイーザ125cによって、ウエハ出し入れ口を通じてカセット110からピックアップされ、ウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連続動作によって移載室124の後方にあるボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載機構125は、カセット110に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する。
【0050】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端部が、炉口シャッタ147によって開放される。続いて、シールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されることにより、ウエハ200群を保持したボート217が処理炉202内へ搬入(ローディング)される。ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に任意の処理が実施される。かかる処理については後述する。処理後は、ウエハ200およびカセット110は、上述の手順とは逆の手順で筐体111の外部へ払出される。
【0051】
(3)処理炉の構成
続いて、本実施形態にかかる処理炉202の構成について、図3、図4を参照しながら説明する。
【0052】
(処理室)
本実施形態にかかる処理炉202は、プロセスチューブとしての反応管203及びマニホールド209を備えている。反応管203は、基板としてのウエハ200が収容されるインナチューブ203b、及びインナチューブ203bを取り囲むアウタチューブ203aを備えている。インナチューブ203b及びアウタチューブ203aは、それぞれ例えば石英(SiO)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性を有する非金属材料から構成され、
上端が閉塞され、下端が開放された円筒形状となっている。マニホールド209は、例えばSUS等の金属材料から構成され、上端及び下端が開放された円筒形状となっている。インナチューブ203b及びアウタチューブ203aは、マニホールド209により下端側から縦向きに支持されている。インナチューブ203b、アウタチューブ203a、及びマニホールド209は、互いに同心円状に配置されている。マニホールド209とアウタチューブ203aとの間には、Oリングなどの封止部材220aが設けられている。マニホールド209の下端(炉口)は、上述したボートエレベータ115が上昇した際に、蓋体としての円盤状のシールキャップ219により気密に封止されるように構成されている。マニホールド209の下端とシールキャップ219との間には、インナチューブ203b内を気密に封止するOリングなどの封止部材220bが設けられている。
【0053】
インナチューブ203bの内部には、ウエハ200を処理する処理室201が形成されている。インナチューブ203b内(処理室201内)には基板保持具としてのボート217が下方から挿入されるように構成されている。インナチューブ203b及びマニホールド209の内径は、ウエハ200を装填したボート217の最大外形よりも大きくなるように構成されている。
【0054】
ボート217は、複数枚(例えば75枚から100枚)のウエハ200を、略水平状態で所定の隙間(基板ピッチ間隔)をもって多段に保持するように構成されている。ボート217は、ボート217からの熱伝導を遮断する断熱キャップ218上に搭載されている。断熱キャップ218は、図示しない回転軸により下方から支持されている。回転軸は、処理室201内の気密を保持しつつ、シールキャップ219の中心部を貫通するように設けられている。シールキャップ219の下方には、回転軸を回転させる回転機構267が設けられている。回転機構267により回転軸を回転させることにより、処理室201内の気密を保持したまま、複数のウエハ200を搭載したボート217を回転させることが出来るように構成されている。
【0055】
反応管203の外周には、加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207が設けられている。ヒータ207は円筒形状であり、図示しないヒータベースに支持されることにより反応管203と同心円状に垂直に据え付けられている。
【0056】
(バッファ室)
インナチューブ203bとアウタチューブ203aとの間には、バッファ管312が設けられている。バッファ管312内には、円弧状のバッファ室320が形成されている。バッファ室320と処理室201とは、貫通孔211dを介して連通している。バッファ室320内には、後述する酸素含有ガス供給ノズル233d、及び後述する一対のプラズマ電極330,331がそれぞれ設けられている。
【0057】
(ガス供給系)
マニホールド209には成膜原料供給ノズル233a、酸化原料供給ノズル233b、酸素含有ガス供給ノズル233dが接続されている。成膜原料供給ノズル233a、酸化原料供給ノズル233b、酸素含有ガス供給ノズル233dは、それぞれ垂直部と水平部とを有するL字形状に構成されている。成膜原料供給ノズル233a、酸化原料供給ノズル233bの垂直部は、インナチューブ203bとアウタチューブ203aとの間であってバッファ室320外に設けられ、ウエハ200の積層方向に沿って鉛直方向に延在されている。酸素含有ガス供給ノズル233dの垂直部は、バッファ室320内に設けられ、ウエハ200の積層方向に沿って鉛直方向に延在されている。成膜原料供給ノズル233a、酸素含有ガス供給ノズル233d、酸化原料供給ノズル233bの水平部は、マニホールド209の側壁を貫通しており、水平端(上流端)がマニホールド209の側壁外側へ突出するように構成されている。
【0058】
成膜原料供給ノズル233a、酸化原料供給ノズル233b、酸素含有ガス供給ノズル233dの垂直部には、それぞれガス供給孔234a,234b,234dが鉛直方向に複数設けられている。ガス供給孔234a,234bは、インナチューブ203bの側壁に設けられた貫通孔211a,211bにそれぞれ直結している。すなわち、成膜原料供給ノズル233aから供給されるガスは、ガス供給孔234a及び貫通孔211aを介して処理室201内に供給されるように構成されている。また、酸化原料供給ノズル233bから供給されるガスは、ガス供給孔234b及び貫通孔211bを介して処理室201内に供給されるように構成されている。また、ガス供給孔234dは、後述する一対のプラズマ電極330,331の間に向けてガスを噴出するように開口している。ガス供給孔234a,234b,234dの開口径は、それぞれ下部から上部にわたって同一とされていてもよく、下部から上部にわたって徐々に大きくされていてもよい。
【0059】
マニホールド209の側壁外側へ突出した成膜原料供給ノズル233aの水平端(上流端)には、成膜原料としてのTEOS(Si(OC)ガスを供給する成膜原料供給管232aが接続されている。成膜原料供給管232aには、上流側から順に、図示しない成膜原料供給源、流量制御装置240a、バルブ242aが設けられている。成膜原料供給管232aのバルブ242aの下流側には、パージガス或いはキャリアガスとしての不活性ガスであるNガスを供給する不活性ガス供給管244aの下流端が接続されている。不活性ガス供給管244aには、上流側から順に、図示しない不活性ガス供給源、流量制御装置241a、バルブ243aが設けられている。
【0060】
また、マニホールド209の側壁外側へ突出した酸化原料供給ノズル233bの水平端(上流端)には、酸化原料としての水蒸気(HOガス)を供給する酸化原料供給管232bが接続されている。酸化原料供給管232bには、上流側から順に、図示しない酸化原料供給源、流量制御装置240b、バルブ242bが設けられている。酸化原料供給管232bのバルブ242bの下流側には、触媒原料としてのピリジン(CN)ガスを供給する触媒原料供給管232cが接続されている。触媒原料供給管232cには、上流側から順に、図示しない触媒原料供給源、流量制御装置240c、バルブ242cが設けられている。また、酸化原料供給管232bにおける触媒原料供給管232cとの接続箇所より上流側であってバルブ242bの下流側には、パージガス或いはキャリアガスとしての不活性ガスであるNガスを供給する不活性ガス供給管244bの下流端が接続されている。不活性ガス供給管244bには、上流側から順に、図示しない不活性ガス供給源、流量制御装置241b、バルブ243bが設けられている。
【0061】
また、マニホールド209の側壁外側へ突出した酸素含有ガス供給ノズル233dの水平端(上流端)には、酸素含有ガスとしての酸素(O)ガスを供給する酸素含有ガス供給管232dが接続されている。酸素含有ガス供給管232dには、上流側から順に、図示しない酸素含有ガス供給源、流量制御装置240d、バルブ242dが設けられている。酸素含有ガス供給管232dのバルブ242dの下流側には、パージガス或いはキャリアガスとしての不活性ガスであるNガスを供給する不活性ガス供給管244dの下流端が接続されている。不活性ガス供給管244dには、上流側から順に、図示しない不活性ガス供給源、流量制御装置241d、バルブ243dが設けられている。
【0062】
主に、成膜原料供給ノズル233a、ガス供給孔234a、成膜原料供給管232a、図示しない成膜原料供給源、流量制御装置240a、バルブ242a、不活性ガス供給管244a、図示しない不活性ガス供給源、流量制御装置241a、バルブ243aにより、処理室201内に成膜原料としてのTEOSを供給する成膜原料供給系が構成されている。
【0063】
また、主に、酸化原料供給ノズル233b、ガス供給孔234b、酸化原料供給管232b、図示しない酸化原料供給源、流量制御装置240b、バルブ242b、不活性ガス供給管244b、図示しない不活性ガス供給源、流量制御装置241b、バルブ243bにより、処理室201内に酸化原料としての水蒸気(HOガス)を供給する酸化原料供給系が構成されている。
【0064】
また、主に、酸化原料供給ノズル233b、ガス供給孔234b、酸化原料供給管232b、触媒原料供給管232c、図示しない触媒原料供給源、流量制御装置240c、バルブ242c、不活性ガス供給管244b、図示しない不活性ガス供給源、流量制御装置241b、バルブ243bにより、処理室201内に触媒原料としてのピリジンを供給する触媒原料供給系が構成されている。
【0065】
また、主に、酸素含有ガス供給ノズル233d、ガス供給孔234d、酸素含有ガス供給管232d、図示しない酸素含有ガス供給源、流量制御装置240d、バルブ242d、不活性ガス供給管244d、図示しない不活性ガス供給源、流量制御装置241d、バルブ243dにより、バッファ室320内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給系が構成されている。
【0066】
また、主に、成膜原料供給ノズル233a、ガス供給孔234a、成膜原料供給管232a、不活性ガス供給管244a、図示しない不活性ガス供給源、流量制御装置241a、バルブ243a、酸化原料供給ノズル233b、ガス供給孔234b、酸化原料供給管232b、不活性ガス供給管244b、図示しない不活性ガス供給源、流量制御装置241b、バルブ243b、酸素含有ガス供給ノズル233d、ガス供給孔234d、不活性ガス供給管244d、図示しない不活性ガス供給源、流量制御装置241d、バルブ243dにより、処理室201及びバッファ室320内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系が構成されている。
【0067】
また、主に、成膜原料供給系、酸化原料供給系、触媒原料供給系、酸素含有ガス供給系、不活性ガス供給系により、本実施形態に係るガス供給系が構成されている。
【0068】
(プラズマ電極)
バッファ室320内には、上述したように一対のプラズマ電極330,331が設けられている。プラズマ電極330,331は、それぞれ垂直部と水平部とを有するL字形状に構成されている。プラズマ電極330,331の垂直部及び水平部は、例えば石英や炭化珪素等からなる保護管318,319によりそれぞれ覆われている。プラズマ電極330,331の垂直部は、ウエハ200の積層方向に沿って、バッファ室320内に鉛直方向に延在されている。プラズマ電極330,331の水平部は、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。マニホールド209の側壁から突出したプラズマ電極330,331の水平部には、インピーダンス調整装置(同調ユニット)332を介して、高周波交流電力を供給する電源装置333の出力側(二次側)がそれぞれ接続されている。
【0069】
主に、一対のプラズマ電極330,331、保護管318,319、インピーダンス調整装置332、電源装置333により、プラズマ生成部が構成されている。
【0070】
(排気系)
インナチューブ203bの側壁には、貫通孔211a,211b,211dと対向する位置に、複数の貫通孔或いはスリット状のガス排気孔212が鉛直方向に設けられている。また、マニホールド209の側壁には、処理室201内の雰囲気を排気するガス排気管231が接続されている。ガス排気管231には、上流側から順に、圧力検出器としての
圧力センサ245、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ243e、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。真空ポンプ246を作動させつつ、APCバルブ243eの開閉弁の開度を調整することにより、処理室201内を所望の圧力とすることが可能なように構成されている。
【0071】
主に、ガス排気孔212、ガス排気管231、圧力センサ245、APCバルブ243e、真空ポンプ246により、処理室201内を排気する排気系が構成される。
【0072】
(コントローラ)
制御部(制御手段)であるコントローラ280は、ヒータ207、APCバルブ243e、真空ポンプ246、回転機構267、ボートエレベータ115、バルブ242a,242b,242c,242d,243a,243b,243d、流量制御装置240a、240b、240c,240d,241a,241b,241d、電源装置333、インピーダンス調整装置332等に接続されている。コントローラ280により、ヒータ207の温度調整動作、APCバルブ243eの開閉及び圧力調整動作、真空ポンプ246の起動・停止、回転機構267の回転速度調節、ボートエレベータ115の昇降動作、バルブ242a,242b,242c,242d,243a,243b,243dの開閉動作、流量制御装置240a、240b、240c,240d,241a,241b,241dの流量制御動作、電源装置333による高周波電力の供給動作、インピーダンス調整装置332によるインピーダンス調整動作が制御される。
【0073】
(4)基板処理工程
続いて、本実施形態に係る基板処理工程について図5を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ280により制御される。
【0074】
(基板搬入工程)
まず、複数枚のウエハ200をボート217に装填(ウエハチャージ)する。そして、複数枚のウエハ200を保持したボート217を、ボートエレベータ115によって持ち上げて処理室201内に搬入(ボートローディング)する。この状態で、シールキャップ219はOリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。基板搬入工程においては、バルブ243a,243b,243dを開けて、処理室201内やバッファ室320内にパージガスとしてのNガスを供給し続けることが好ましい。
【0075】
(減圧及び昇温工程)
続いて、バルブ243a,243b,243dを閉じ、処理室201内が所望の圧力(26〜10000Paの範囲であって、例えば133Pa)となるように、処理室201内を真空ポンプ246により排気する。この際、処理室201内の圧力を圧力センサ245で測定して、この測定された圧力に基づき、APCバルブ243eの開度をフィードバック制御する。また、処理室201内が所望の温度(0℃〜100℃)となるように、ヒータ207によって加熱する。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサが検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合をフィードバック制御する。そして、回転機構267によりボート217を回転させ、ウエハ200を回転させる。
【0076】
(成膜工程)
続いて、ウエハ200上に酸化膜としてのSiO膜を形成する。すなわち、以下のステップ1〜4を1サイクルとし、このサイクルを所定回数行うことにより、ウエハ200上に所定膜厚のSiO膜を形成する。
【0077】
(ステップ1)
ステップ1では、バルブ242aを開け、成膜原料供給管232a内に成膜原料としてのTEOSガスを流す。TEOSガスは、流量制御装置240aにより流量調整されながら、成膜原料供給管232a内を流通して成膜原料供給ノズル233a内に流入し、ガス供給孔234a及び貫通孔211aを介して処理室201内に供給され、ウエハ200表面に接触した後、ガス排気管231から排気される。
【0078】
また、バルブ242bを開け、酸化原料供給管232b内に酸化原料としてのHOガスを流す。HOガスは、流量制御装置240bにより流量調整されながら、酸化原料供給管232b内を流通して酸化原料供給ノズル233b内に流入し、ガス供給孔234b及び貫通孔211bを介して処理室201内に供給され、ウエハ200表面に接触した後、ガス排気管231から排気される。
【0079】
また、バルブ242cを開け、触媒原料供給管232c内に触媒原料としてのピリジンガスを流す。ピリジンガスは、流量制御装置240cにより流量調整されながら、触媒原料供給管232c内及び酸化原料供給管232b内を流通して酸化原料供給ノズル233b内に流入し、ガス供給孔234b及び貫通孔211bを介して処理室201内に供給され、ウエハ200表面に接触した後、ガス排気管231から排気される。
【0080】
このとき、ガス排気管231のAPCバルブ243eを適正に調整し、処理室201内の圧力を26〜10000Pa、好ましくは133〜10000Paの範囲であって、例えば133Paに維持する。また、ウエハ200の温度が0℃〜100℃、好ましくは室温〜100℃の範囲であって、例えば25℃となるように、ヒータ207を制御する。
【0081】
以上のステップ1では、ウエハ200上に供給されたTEOSとHOとがピリジンを触媒としつつ反応し、ウエハ200上にSiO膜(TEOS酸化膜)が形成される。なお、TEOSとHOとが反応する際には、上述のゾル化反応、すなわち加水分解と縮合反応とが進行するが、係る反応を100℃以下の低温下で進行させることにより、媒体中にシリカが混在した状態(ゾル状態)を生成することができる。これにより、形成されるSiO膜の流動性を高めることができ、ウエハ200表面に形成されている溝の凹部への埋め込み性を向上させることができる。
【0082】
(ステップ2)
所定時間が経過したら、成膜原料供給管232aのバルブ242a、酸化原料供給管232bのバルブ242b、触媒原料供給管232cのバルブ242cを閉じ、処理室201内へのTEOSガス、HOガス、ピリジンガスの供給をそれぞれ停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ243eは開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内及びバッファ室320内を20Pa以下となるまで排気し、残留しているTEOS、HO、ピリジンを処理室201内及びバッファ室320内から排気する。
【0083】
このとき、成膜原料供給管232aのバルブ242a、酸化原料供給管232bのバルブ242b、触媒原料供給管232cのバルブ242cを閉じた状態で、不活性ガス供給管244aのバルブ243a、不活性ガス供給管244bのバルブ243b、不活性ガス供給管244dのバルブ243dを開ける。そして、流量制御装置241a,241b,241dにより流量調整されたNガス(パージガス)を処理室201内及びバッファ室320内に供給し、処理室201内及びバッファ室320内をNガスでパージする。
【0084】
(ステップ3)
処理室201内及びバッファ室320内の排気及びパージが完了したら、バルブ242dを開け、酸素含有ガス供給管232d内に酸素含有ガスとしての酸素(O)ガスを流
す。Oガスは、流量制御装置240dにより流量調整されながら、酸素含有ガス供給管232d内を流通して酸素含有ガス供給ノズル233d内に流通し、ガス供給孔234dを介してバッファ室320内に供給される。
【0085】
このとき、電源装置333からインピーダンス調整装置332を介して一対のプラズマ電極330,331に高周波電力を供給することで、バッファ室320内に供給されたOガスをプラズマ状態とする。そして、活性酸素としての励起されたOガス(Oラジカル)を生成する。Oラジカルは、貫通孔211dを介して処理室201内に供給され、ウエハ200上に形成されたSiO膜(TEOS酸化膜)に接触した後、ガス排気管231から排気される。
【0086】
このとき、ガス排気管231のAPCバルブ243eを適正に調整し、処理室201内の圧力を26〜10000Pa、好ましくは133〜10000Paの範囲であって、例えば133Paに維持する。ウエハ200をOラジカルに晒す時間を概ね10〜120秒間とする。また、ステップ1と同じく、ウエハ200の温度が0℃〜100℃、好ましくは室温〜100℃の範囲であって、例えば25℃となるように、ヒータ207を制御する。
【0087】
以上のステップ3では、処理室201内に供給されたOラジカルが、ウエハ200の表面に形成したSiO膜中の残留カーボン、メチル基、エチル基、ダングリングボンドと反応し、これらを低減させる。これにより、ウエハ200に形成したSiO膜の膜質が改善される。なお、ステップ3をアニール工程とも呼ぶ。
【0088】
(ステップ4)
所定時間が経過したら、酸素含有ガス供給管232dのバルブ242dを閉じ、バッファ室320内へのOガスの供給を停止すると共に、電源装置333からの一対のプラズマ電極330,331への電力供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ243eは開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内及びバッファ室320内を20Pa以下となるまで排気し、残留しているOガスを処理室201内及びバッファ室320内から排気する。
【0089】
このとき、酸素含有ガス供給管232dのバルブ242dを閉じた状態で、不活性ガス供給管244aのバルブ243a、不活性ガス供給管244bのバルブ243b、不活性ガス供給管244dのバルブ243dを開ける。そして、流量制御装置241a,241b,241dにより流量調整されたNガス(パージガス)を処理室201内及びバッファ室320内に供給し、処理室201内及びバッファ室320内をNガスでパージする。
【0090】
(昇圧工程、基板搬出工程)
ステップ1〜4を1サイクルとし、このサイクルを所定回数行うことにより、ウエハ200上に所定膜厚のSiO膜を形成したら、不活性ガス供給管244aのバルブ243a、不活性ガス供給管244bのバルブ243b、不活性ガス供給管244dのバルブ243dを開けると共に、APCバルブ243eの開度を小さくし、処理室201内の圧力が大気圧になるまで処理室201内にパージガスとしての不活性ガスを供給する。
【0091】
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200がボート217に保持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済みのウエハ200はボート217より取り出され(ウエハディスチャージ)、本実施形態に係る基板処理工程を終了する。なお、ボート217を搬出す
るときには、バルブ243a,243b,243dを開け、処理室201内にパージガスを供給し続けることが好ましい。
【0092】
(5)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0093】
(a)本実施形態に係る成膜工程のステップ1では、ウエハ200上に成膜原料としてのTEOSと、酸化原料としてのHOと、触媒原料としてのピリジンと、を同時に供給している。そして、TEOSとHOとをピリジンを触媒として反応させることで、ウエハ200上にSiO膜を形成している。TEOSとHOとが反応する際には、ゾル化反応、すなわち加水分解と縮合反応とが進行するが、本実施形態に係る成膜工程のステップ1では、係る反応を100℃以下の低温下で進行させることにより、媒体中にシリカが混在した状態(ゾル状態)を生成することができる。これにより、形成されるSiO膜の流動性を高めることができ、ウエハ200表面に形成されている溝の凹部への埋め込み性を向上させることができる。
【0094】
(b)本実施形態によれば、ウエハ200上にTEOSとHOとピリジンとを同時に供給することにより、ウエハ200上にSiO膜を形成している。係る成膜方法はALD法によるものではないため、溝の凹部への埋め込みに適した高い成膜速度を得ることができる。
【0095】
(c)本実施形態に係る基板処理工程では、キセノンエキシマランプ等の真空紫外光ランプや、真空紫外光を反応室内に取り入れるための窓等を備えた成膜装置を必要としない。そのため、基板処理装置の構成を簡便化でき、半導体デバイスの製造コストを低減させることが可能となる。
【0096】
(d)本実施形態に係る成膜工程のステップ3(アニール工程)では、該成膜工程のステップ1で形成したSiO膜上に、活性酸素としてのOラジカルを供給している。供給されたOラジカルは、SiO膜中の残留カーボン、メチル基、エチル基、ダングリングボンドと反応し、これらを低減させる。これにより、ウエハ200に形成したSiO膜の膜質が改善される。なお、ステップ1〜ステップ4を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うようにすることで、すなわち、SiO膜の膜厚が所定の膜厚に到達するたびにステップ3を実行することで、SiO膜中からカーボン等を確実に除去することができ、SiO膜中の膜質をさらに改善することが可能となる。
【0097】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0098】
例えば、成膜原料としては、TEOSに限らず、TESのようなエチル誘導体、TRIESやTEOSのようなエトキシ誘導体、DADBSのようなアルコキサイド誘導体、OMCTSのようなシロキサン誘導体などを用いることも可能である。また、酸化原料については、上述のオゾンに限らず、メタノールあるいはエタノールのようなアルコール類、過酸化水素、水、水とオゾンとの混合物、水と過酸化水素との混合物、酸素あるいは原子状酸素のいずれかを用いることも可能である。また、触媒原料としては、ピリジンに限らず、ピコリン、或いはアンモニアを用いることも可能である。
【0099】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0100】
本発明の一態様によれば、
処理室内に基板を搬入する工程と、
前記処理室内に成膜原料と、酸化原料と、触媒原料とを同時に供給する工程と、前記各原料の供給を停止して前記処理室内を不活性ガスでパージする工程と、を1回もしくは複数回実施することで、前記基板上に酸化膜を堆積させる工程と、
前記酸化膜堆積後の前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、
を有する半導体デバイスの製造方法が提供される。
【0101】
本発明の他の態様によれば、
処理室内に基板を搬入する工程と、
前記処理室内に成膜原料と、酸化原料と、触媒原料とを同時に供給する工程と、前記各原料の供給を停止して前記処理室内を不活性ガスでパージする工程と、前記処理室内に活性酸素を供給する工程と、前記活性酸素の供給を停止して前記処理室内を不活性ガスでパージする工程と、を1回もしくは複数回実施することで、前記基板上に酸化膜を堆積させる工程と、
前記酸化膜堆積後の前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、
を有する半導体デバイスの製造方法が提供される。
【0102】
好ましくは、前記酸化膜は、酸化シリコン膜である。
【0103】
また好ましくは、前記成膜原料が、シリコン原子を含む有機化合物原料である。
【0104】
また好ましくは、前記酸化原料が、メタノールあるいはエタノールのようなアルコール類、オゾン、過酸化水素、水、水とオゾンとの混合物、水と過酸化水素との混合物、酸素あるいは原子状酸素のいずれかである。
【0105】
また好ましくは、前記触媒原料が、ピリジン、ピコリン、またはアンモニアである。
【0106】
また好ましくは、前記不活性ガスが、ヘリウム、ネオン、アルゴン、または、窒素のいずれかである。
【0107】
また好ましくは、前記酸化膜を堆積させる工程では、前記処理室内の温度を0℃以上、100℃以下とする。
【0108】
また好ましくは、前記酸化膜を堆積させる工程では、前記処理室内の圧力を133Pa以上10000Pa以下とする。
【0109】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に成膜原料を供給する成膜原料供給系と、
前記処理室内に酸化原料を供給する酸化原料供給系と、
前記処理室内に触媒原料を供給する触媒原料供給系と、
前記処理室内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
前記処理室内に成膜原料と、酸化原料と、触媒原料とを同時に供給し、前記各原料の供給を停止して前記処理室内を不活性ガスでパージし、これを1回もしくは複数回実施することで、前記基板上に酸化膜を堆積させるように、前記成膜原料供給系、前記酸化原料供給系、前記触媒原料供給系、前記不活性ガス供給系、および、前記排気系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0110】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に成膜原料を供給する成膜原料供給系と、
前記処理室内に酸化原料を供給する酸化原料供給系と、
前記処理室内に触媒原料を供給する触媒原料供給系と、
前記処理室内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
前記処理室内に活性酸素を供給する活性酸素供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
前記処理室内に成膜原料と、酸化原料と、触媒原料とを同時に供給し、前記各原料の供給を停止して前記処理室内を不活性ガスでパージし、前記処理室内に活性酸素を供給し、前記活性酸素の供給を停止して前記処理室内を不活性ガスでパージし、これを1回もしくは複数回実施することで、前記基板上に酸化膜を堆積させるように、前記成膜原料供給系、前記酸化原料供給系、前記触媒原料供給系、前記不活性ガス供給系、前記活性酸素供給系、および、前記排気系を制御する制御部と、を有する基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0111】
101 基板処理装置
200 ウエハ(基板)
201 処理室
280 コントローラ(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内に基板を搬入する工程と、
前記処理室内に成膜原料と、酸化原料と、触媒原料とを同時に供給する工程と、前記各原料の供給を停止して前記処理室内を不活性ガスでパージする工程と、を1回もしくは複数回実施することで、前記基板上に酸化膜を堆積させる工程と、
前記酸化膜堆積後の前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、
を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
処理室内に基板を搬入する工程と、
前記処理室内に成膜原料と、酸化原料と、触媒原料とを同時に供給する工程と、前記各原料の供給を停止して前記処理室内を不活性ガスでパージする工程と、前記処理室内に活性酸素を供給する工程と、前記活性酸素の供給を停止して前記処理室内を不活性ガスでパージする工程と、を1回もしくは複数回実施することで、前記基板上に酸化膜を堆積させる工程と、
前記酸化膜堆積後の前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、
を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に成膜原料を供給する成膜原料供給系と、
前記処理室内に酸化原料を供給する酸化原料供給系と、
前記処理室内に触媒原料を供給する触媒原料供給系と、
前記処理室内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
前記処理室内に成膜原料と、酸化原料と、触媒原料とを同時に供給し、前記各原料の供給を停止して前記処理室内を不活性ガスでパージし、これを1回もしくは複数回実施することで、前記基板上に酸化膜を堆積させるように、前記成膜原料供給系、前記酸化原料供給系、前記触媒原料供給系、前記不活性ガス供給系、および、前記排気系を制御する制御部と、
を有することを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−61007(P2011−61007A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209143(P2009−209143)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】