説明

半導体基板ホルダ及び温度検出装置

【課題】温度検出装置が半導体処理装置内で、または半導体処理装置間を移動して用いられる場合、温度検出装置から引き出される配線ケーブルの取り回しが常に問題となる。その上、その移動できる範囲はおよそ配線ケーブルの長さに制限される。
【解決手段】半導体基板を保持する半導体基板ホルダであって、半導体基板を保持するに替えて、温度センサを内蔵する温度検出装置を保持したときに、温度検出装置の接触端子に対応する位置に設けられた接続端子を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板ホルダ及び温度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より半導体製造工程においては、ウェハが熱処理される工程を多く含んでおり、そのような工程において熱処理されるウェハの温度を検出することが、工程の管理上重要であった。このような要請に対し、例えば、ウェハと同じ面形状を有する治具内部に熱電対を埋め込んだ温度検出装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−112254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温度検出装置が半導体処理装置内で、または半導体処理装置間を移動して用いられる場合、温度検出装置から引き出される配線ケーブルの取り回しが常に問題となる。その上、その移動できる範囲はおよそ配線ケーブルの長さに制限される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、半導体基板を保持する半導体基板ホルダであって、半導体基板を保持するに替えて、温度センサを内蔵する温度検出装置を保持したときに、温度検出装置の接触端子に対応する位置に設けられた接続端子を備える。
【0006】
また、本発明の第2の態様においては、半導体基板ホルダと共に用いられる温度検出装置であって、半導体基板ホルダ上に載置される本体と、本体に内蔵する温度センサと、温度センサに接続され、半導体基板ホルダに設けられた接続端子と接触する接触端子とを備え、温度センサの出力信号は、接触端子及び半導体基板ホルダを介して外部装置へ伝達される。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】温度検出装置100の外観斜視図である。
【図2】ワークシリコンウェハ101を剥がした状態の、温度検出装置100の上面外略図である。
【図3】スペーサシリコンウェハ110に設けたスリット320の拡大斜視図である。
【図4】スペーサシリコンウェハ110に設けた溝部420の拡大斜視図である。
【図5】スペーサシリコンウェハ110に設けたスリット520の拡大斜視図である。
【図6】スペーサシリコンウェハ110に設けた溝部620の拡大斜視図である。
【図7】スペーサシリコンウェハ110を分割して形成した空間を説明するための、温度検出装置100の上面外略図である。
【図8】スペーサシリコンウェハ111を、ワークシリコンウェハ102上に位置決めする方法の説明図である。
【図9】スペーサシリコンウェハ111を、ワークシリコンウェハ103上に位置決めする方法の説明図である。
【図10】シース型熱電対が配置された空間の断面図である。
【図11】シース型熱電対が配置された空間の他の断面図である。
【図12】シース型熱電対が配置された空間の他の断面図である。
【図13】ワークシリコンウェハ102を剥がした状態の、温度検出装置200の下面外略図である。
【図14】温度検出装置200をウェハホルダ300に載置して用いる場合の説明図である。
【図15】温度検出装置500を備える接合装置600の構造を模式的に示す断面図である。
【図16】接合装置600における、シールド部671の下降状態を示す図である。
【図17】温度検出装置500を基板保持部610に載置する様子を示す図である。
【図18】温度検出装置700を備える接合装置800の構造を模式的に示す断面図である。
【図19】シールド部671周辺部材の第1の例としての上面図である。
【図20】シールド部671周辺部材の第2の例としての上面図である。
【図21】接合装置600におけるウェハ接合の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
最初に、本実施形態の接合装置に組み込んで用いる温度検出装置のバリエーションについて説明する。図1は、温度検出装置の一例である温度検出装置100の外観斜視図である。温度検出装置100は、加熱、加圧を受ける2枚のワークシリコンウェハ101、102が、スペーサシリコンウェハ110を厚み方向に挟み込む構成を採用する。
【0011】
温度検出装置100は、ワークシリコンウェハ101、102の中心部の1点及び周辺部の4点の温度検出領域において温度を検出する。温度検出領域の数および位置は、測定目的に応じて任意に設定され得る。スペーサシリコンウェハ110には、それぞれの温度検出領域に対応して後述のスリットが設けられており、各スリットからケーブル121、122、123、124、125が引き出されている。引き出されたケーブル121、122、123、124、125は、配線ケーブル190の一端に設けられたコネクタで一纏めにされる。配線ケーブル190の他端に設けられたコネクタは、接合装置の所定の回路、演算装置等に接続される。
【0012】
ワークシリコンウェハ101、102は、形状、材質において、実際のウェハに忠実であることが望ましい。そのため、ワークシリコンウェハ101、102は、例えば直径200mm、厚さ760μmの、規格化されたウェハと同じ外形となるように、単結晶シリコンインゴットからスライス切断して製作する。特に、図示するように、ワークシリコンウェハ101、102の温度検出面は、平滑化された均質な平面であって、凹凸を発生させる追加加工、別体の構造物の貼着などはなされていないことが好ましい。
【0013】
スペーサシリコンウェハ110は、温度検出面を有しないが、広い面積で直接的にワークシリコンウェハ101、102に接触するため、熱分布への影響等を考慮して、規格化されたウェハと同じ外形となるように、単結晶シリコンインゴットからスライス切断して製作する。なお、ワークシリコンウェハ101、102とスペーサシリコンウェハ110の接着には、シリカ及びアルミナを主成分とする耐熱性に優れた無機質の耐熱セメントが用いられる。
【0014】
図2は、ワークシリコンウェハ101を剥がした状態の、温度検出装置100の上面外略図である。スペーサシリコンウェハ110には、5つの温度検出領域に対応してシース型熱電対131、132、133、134、135を配置する空間、及びケーブル121、122、123、124、125を外部に引き出す空間を形成するために、5つのスリット141、142、143、144、145が設けられている。
【0015】
シース型熱電対131、132、133、134、135は、ステンレスシース管の内部に一対の熱電対素線を配置して、シース管中に無機絶縁物を高圧で充填している。これらは、熱電対先端の感温部がステンレスで覆われているので機械的強度にすぐれており、加圧される温度検出装置100への適用に好ましい。また、シース管内で熱電対に接続され、シース管から外部に導かれるケーブル121、122、123、124、125には、耐熱性に優れたシリコン被膜加工がされている。
【0016】
なお、以下においては、温度センサとして上記のシース型熱電対を例として説明するが、温度センサはこれに限られるものではない。熱電対は異種金属間に発生する熱起電力の現象であるゼーベック効果を利用した温度センサであるが、これ以外にも金属の抵抗値が温度と一定の関係にある現象を利用した測温抵抗体の温度センサ等も利用できる。シース型熱電対の場合は、熱電対がシース管の内部に配置されているので、その外形の高さ方向はシース管の直径となるが、他の温度センサの場合には、例えばセンサ部分とケーブルの接続部が高さ方向の最大値になることもある。この最大値が温度センサの最大厚さとなる。したがって、温度センサを配置する空間のうちワークシリコンウェハの厚み方向である高さは、少なくともその温度センサの最大厚さ以上であることが求められる。
【0017】
次に、スペーサシリコンウェハ110に設ける、シース型熱電対を配置する空間のバリエーションについて説明する。図3は、スペーサシリコンウェハ110に設けたスリット320の拡大斜視図である。スリット320は、スペーサシリコンウェハ110の外周部から内側へ向かって直線状に設けられており、このスリット320にシース型熱電対136を矢印方向に挿入する。スリット320は直線状であるので、加工が容易である。また、後述の溝部と異なり、温度検出装置100をワークシリコンウェハ101、102の表面に対して、厚み方向に対称に製作することができるので、温度検出面の違いによる熱分布の偏りが生じにくい。
【0018】
図4は、スペーサシリコンウェハ110に設けた溝部420の拡大斜視図である。溝部420は、外周部から内側へ向かって直線状に設けられており、この溝部420にシース型熱電対136を矢印方向に挿入する。溝部420は直線状であるので、加工が容易である。また、スリットと異なり、スペーサシリコンウェハ110の底部は円形を保っており、高い剛性を有する。
【0019】
図5は、スペーサシリコンウェハ110に設けたスリット520の拡大斜視図である。スリット520は、スペーサシリコンウェハ110の外周部から内側へ向かって、内側へ進むほど幅が狭くなるように設けられており、このスリット520にシース型熱電対136を矢印方向に挿入する。スリット520は、内側へ進むほど幅が狭くなるので、挿入されたシース型熱電対136が目標位置でスリットの両側面とはじめて接するように形成すれば、温度検出装置100の組み立てが容易になる。また、溝部と異なり、温度検出装置100をワークシリコンウェハ101、102の表面に対して、厚み方向に対称に製作することができるので、温度検出面の違いによる熱分布の偏りが生じにくい。
【0020】
図6は、スペーサシリコンウェハ110に設けた溝部620の拡大斜視図である。溝部620は、スペーサシリコンウェハ110の外周部から内側へ向かって、内側へ進むほど浅くなるように設けられており、この溝部620にシース型熱電対136を矢印方向に挿入する。溝部620は、内側へ進むほど浅くなるので、挿入されたシース型熱電対136が目標位置で溝部620の底面及びワークシリコンウェハ101の面とはじめて接するように形成すれば、温度検出装置100の組み立てが容易になる。また、スリットと異なり、スペーサシリコンウェハ110の底部は円形を保っており、高い剛性を有する。なお、図5及び図6で示した空間は、外周部から内側へ向かって狭くなるように作られる空間であるが、例えば溝部620の側面についても、内側へ進むほど幅が狭くなるように構成しても良い。また、シース型熱電対136のシース管形状に合わせて、溝部及びスリットの壁面が円弧状になるように構成しても良い。
【0021】
図7は、スペーサシリコンウェハ110を分割して形成した空間を説明するための、温度検出装置100の上面外略図である。単結晶シリコンインゴットからスライス切断して作成されたスペーサシリコンウェハ110を、さらに複数に分割して、これらを並べて配置することで、シース型熱電対を配置する空間を形成している。具体的には、スペーサシリコンウェハ110を、扇形状の5つのスペーサシリコンウェハ111、112、113、114、115に分割する。分割は、ワークシリコンウェハ102上に、外周部が一致するようにスペーサシリコンウェハ111、112、113、114、115を互いに離間させて載置したときに、シース型熱電対131、132、133、134、135を配置する空間が確保されるように行う。
【0022】
図8は、扇形状のスペーサシリコンウェハ111を、ワークシリコンウェハ102上に位置決めする方法の説明図である。上述のように、扇形状のスペーサシリコンウェハ111の円弧部である外周部を、ワークシリコンウェハ102の外周部に一致させる。外周部を一致させるには、まず、治具上に設けられた位置決めピン801、802に対し、ワークシリコンウェハ102の外周部が接するように押し当てる。そして、ワークシリコンウェハ102上で、スペーサシリコンウェハ111の外周部を位置決めピン801、802に押し当てる。他のスペーサシリコンウェハ112、113、114、115も同様に、各々に用意された位置決めピンを利用して外周部を一致させる。このようにして、ワークシリコンウェハ102上の適切な位置に、扇形状の5つのスペーサシリコンウェハ111、112、113、114、115を配置することができる。
【0023】
5つのスペーサシリコンウェハ111、112、113、114、115を位置決めする方法は、上記の方法に限らない。図9は、スペーサシリコンウェハ111を、ワークシリコンウェハ103上に位置決めする方法の説明図である。ここでの方法を実現するため、ワークシリコンウェハ102に替えて、スペーサシリコンウェハと接する側を加工したワークシリコンウェハ103を用いる。具体的には、スペーサシリコンウェハ111、112、113、114、115を押し当てるための隆起した位置決め部901を、ワークシリコンウェハ103上に設ける。図示するワークシリコンウェハ103は、エッチング加工により、位置決め部901が所定の深さとなるように、他の部分を除去することで位置決め部901を形成している。これに限らず、位置決め部901を別体として製作しておき、平坦なワークシリコンウェハ102に別体である位置決め部901を取り付けてワークシリコンウェハ103としても良い。
【0024】
例えば、エッチングにより除去された面は、それぞれのスペーサシリコンウェハ111、112、113、114、115の外形にほぼ一致する。したがって、例えばスペーサシリコンウェハ111を、矢印方向に位置決め部901へ押し当てるだけで、外周部を一致させることができる。
【0025】
シース型熱電対を配置する空間は、位置決め部901と、スペーサシリコンウェハ111、112、113、114、115と、ワークシリコンウェハ101に囲まれた空間である。したがって、位置決め部901の高さは、スペーサシリコンウェハ111、112、113、114、115の厚さより小さく、その差はシース管の直径以上でなければならない。なお、図3ないし図8を用いて説明したスペーサシリコンウェハ111、112、113、114、115の厚さは、スリットを用いてシース型熱電対を配置する空間を形成する場合は、シース管の直径以上であり、溝部を用いてシース型熱電対を配置する空間を形成する場合は、シース管の直径よりも大きい。一方で、スペーサシリコンウェハ111、112、113、114、115の厚さが大きすぎると、温度検出面からシース型熱電対131、132、133、134、135までの距離が大きくなってしまうので、上記の条件を満たす限りで薄くする方が好ましい。そのため、スペーサシリコンウェハは、予め適切な厚さで切り出したものを用いるか、もしくは、CMPなどにより研磨して薄くして用いることが好ましい。その結果、シース管の直径にもよるが、スペーサシリコンウェハはワークシリコンウェハよりも薄くすることができる場合もある。
【0026】
次に、上記のように形成された空間内に、シース型熱電対を固定する方法について説明する。図10は、シース型熱電対が配置された空間の断面図である。例えば、ワークシリコンウェハ101、102及びスペーサシリコンウェハ110に囲まれて形成された空間に配置されたシース型熱電対137は、ワークシリコンウェハ101側に接するように寄せられて、少なくともシース管が密封されるように、その隙間が充填材910により充填される。充填材910は、ワークシリコンウェハ101、102と同等の熱膨張係数を有するシリコン系樹脂が用いられる。このようにして、シース型熱電対137は空間内部で固定される。
【0027】
固定方法は上記に限らない。図11は、シース型熱電対が配置された空間の他の断面図である。ここでは充填材910を用いる代わりに、付勢部材911を用いて、シース型熱電対137をワークシリコンウェハ101側に押し付けることにより固定する。付勢部材911としては、スプリングコイル、板バネ、耐熱性ゴム等を用いることができる。
【0028】
シース型熱電対の空間への配置は、上記に限らない。図12は、シース型熱電対が配置された空間の他の断面図である。シース型熱電対137は、図示するようにシース管151の内部に一対の熱電対素線152を収めて構成されている。
【0029】
シース型熱電対137を空間に配置しようとする場合、シース管151の直径Dは、スペーサシリコンウェハ110の高さtよりも小さくなければならない。しかしながら、用いたいシース型熱電対が常にこの条件を満たすとは限らない。そのような場合であっても、熱電対素線152が外部に露出しない程度にシース管151をカットすれば、空間に収めることができる場合がある。具体的には、シース管151の内径をdとしたときに、(D+d)/2がtよりも小さければ、熱電対素線152を外部に露出させないように肉厚を残して、シース管151の一部をカットすることができる。
【0030】
このように予め加工されたシース型熱電対137を用いれば、スペーサシリコンウェハ110をワークシリコンウェハ102に位置決めした後にこのシース型熱電対137を収容し、その上からワークシリコンウェハ101を覆い被せて温度検出装置100を完成させることができる。このように構成することにより、シース型熱電対137は、上下のワークシリコンウェハ101、102の両方と密着するので、より正確に温度を測定することができる。
【0031】
なお、以上の説明においてはいずれにおいても、スペーサシリコンウェハ110を位置決めする位置決め工程の後に、スペーサシリコンウェハ110を2枚のワークシリコンウェハ101、102で挟み込んで接合する接合工程を行う。一方、シース型熱電対131、132、133、134、135を配置する空間は、位置決め工程によって形成されるので、これらを収容する収容工程は、接合工程の前に行っても、後に行っても良い。
【0032】
図13は、温度検出装置の別の例である温度検出装置200の、ワークシリコンウェハ102を剥がした状態の下面外略図である。温度検出装置200は、加熱、加圧を受ける2枚のワークシリコンウェハ101、102が、スペーサシリコンウェハ210を厚み方向に挟み込む構成を採用する。温度検出装置200においても温度検出装置100と同様に、ステンレスシース管の内部に一対の熱電対素線を配置するシース型熱電対を利用するものとして説明する。
【0033】
スペーサシリコンウェハ210には、5つの温度検出領域に対応してシース型熱電対131、132、133、134、135を配置する空間、及びそれぞれのシース型熱電対に接続されたケーブル121、122、123、124、125を収容する空間として、穿孔241、242、243、244、245が設けられている。穿孔241、242、243、244、245は、スペーサシリコンウェハ210を上下に貫通する孔であり、ワークシリコンウェハ101、102によって上下から挟み込まれたときに、閉ざされた空間を形成する。信号配線パターン221、222、223、224、225は、スペーサシリコンウェハ210上に形成されたメタルパターンであり、それぞれの一端は、ケーブル121、122、123、124、125の信号線に接続され、シース型熱電対131、132、133、134、135の信号を伝送する。
【0034】
温度検出装置200のスペーサシリコンウェハ210は、規格化されたウェハに比べて端子部211が突出した形状をなす。端子部211には、シース型熱電対131、132、133、134、135の出力信号を外部へ伝達する接触端子230が形成されている。接触端子230は、信号配線パターン221、222、223、224、225にそれぞれ接続される信号端子231、232、233、234、235とグランド端子236からなる。なお、図では信号配線パターン221、222、223、224、225のみを示し、ケーブル121、122、123、124、125のグランド線に接続されるグランド配線パターンは示していない。グランド配線パターンも、信号配線パターンと同様に、スペーサシリコンウェハ210上に形成されたメタルパターンである。グランド配線パターンは、ケーブル121、122、123、124、125のグランド線に接続され、その他端はいずれもグランド端子236に接続される。なお、用いる温度センサの種類によって、配線のパターン及び端子の数は適宜変更され得る。
【0035】
図14は、温度検出装置200をウェハホルダ300に載置して用いる場合の説明図である。上述の温度検出装置100は、配線ケーブル190の一端に設けられたコネクタを接合装置の所定の回路等に直接接続することができるので、温度検出装置100単体でも、ウェハを保持する汎用のウェハホルダに載置しても、更には、汎用のウェハホルダで上下から挟持した状態でも利用することができる。ただし、温度検出装置100が半導体処理装置内で、または半導体処理装置間を移動して用いられる場合、配線ケーブル190の取り回しが常に問題となる。その上、その移動できる範囲はおよそ配線ケーブル190の長さに制限される。
【0036】
一方、ウェハホルダには、通常、対向するウェハホルダとクランプ状態を実現する素子、及びウェハをウェハホルダに吸着させる素子などの電力の供給を必要とする素子が設けられている。したがって、これらの素子に電力を供給する電力供給端子がウェハホルダに設けられている。ウェハホルダが複数の半導体処理装置間を搬送装置を介して移動する場合、それぞれの半導体処理装置及び搬送装置には、この電力供給端子に電力を供給するそれぞれに対応した端子が通常設けられている。これにより、ウェハホルダは電力供給端子を介していずれの半導体処理装置からも電力の供給を受けられる。これに倣い、ウェハホルダに特別の端子を設け、更に温度検出を必要とする半導体処理装置側にもこれに対応する端子を設けて接続できるように構成すれば、配線ケーブルの問題を解消することができる。
【0037】
ウェハホルダ300は、配線ケーブルの問題を解消すべく、上記の構成を備える。まず、汎用のウェハホルダとおよそ共通する構成を説明する。ウェハホルダ300は、全体としてはウェハよりも径がひとまわり大きな円板状をなす。ホルダ本体310は、セラミックス、金属等の高剛性材料により一体成形される。吸着子311は電磁石により形成され、ウェハを保持する保持面314において、保持したウェハよりも外側である外周領域に複数配される。また、吸着子311は、ウェハを保持する平面と略同じ平面内にその上面が位置するように、ホルダ本体310に形成された陥没領域に配される。図の場合、2個を一組として120度毎に合計6個の吸着子311が配されている。吸着子311が、重ね合わせるウェハを保持した対向するウェハホルダに配置された永久磁石に吸着することで、重ね合わされるウェハを挟んで2つのウェハホルダが一体的に固定される。なお、吸着子311には、保持面314の裏面側に埋設された電圧印加端子を介して電圧が加えられる。
【0038】
ホルダ本体310は、ウェハを載置する領域の外側に、ホルダ本体310を表裏に貫通して形成された、複数の位置決め穴312を有する。位置決め穴312は、位置決めピン等に嵌合して、ウェハホルダ300の位置決めに与する。更に、ホルダ本体310は、保持面314の内側に、ホルダ本体310を表裏に貫通して形成された、複数の挿通孔313を有する。挿通孔313には半導体処理装置側に設けられたプッシュアップピンが挿通され、ウェハはウェハホルダ300から取り外される。また、保持面314の下部にはウェハを静電吸着により保持するための電極プレートが埋設されている。電極プレートへの電力は、保持面314の裏面側に埋設された電力供給端子を介して供給される。
【0039】
次に、ウェハホルダ300に特有の構成について説明する。温度検出装置200は、保持面314に載置され、必要に応じて電極プレートに電力が供給されて静電吸着される。上述のように、接触端子230が設けられた端子部211は、規格化されたウェハに比べて突出した形状をなすが、ウェハホルダ300には、保持面314よりも外側である外周領域に、接触端子230に対向するように接触端子330が設けられている。接触端子330は、接触端子230の信号端子231、232、233、234、235とグランド端子236のそれぞれ対応するように、信号端子331、332、333、334、335とグランド端子336からなる。信号端子331、332、333、334、335とグランド端子336のそれぞれは、対応する端子との接続を確実にすべく内部にバネ等の弾性部材が組み込まれており、端子同士が接触したときに相手側の端子に付勢される構造を有する。
【0040】
接触端子330を保持面314の外周領域に設けると、ウェハホルダ300を通常の使用であるウェハの保持に用いるときには、ウェハは接触端子330に触れることは無い。したがって、ウェハにごみ及びキズ等を与えたり、圧力ムラ、加熱ムラを引き起こすようなことも無い。
【0041】
信号端子331、332、333、334、335とグランド端子336のそれぞれは、ホルダ本体310内の配線を介して、電圧印加端子及び電力供給端子と同様に設けられた、保持面314の裏面側に埋設された伝送端子のそれぞれに接続される。接合装置等の半導体処理装置側には、電圧印加端子及び電力供給端子の対向端子と同様に、ウェハホルダ300の伝送端子のそれぞれと接触する端子が設けられている。このように構成することで、半導体処理装置側の制御により、ウェハホルダ300を介して、温度検出装置200の温度検出信号を授受することができる。この場合、温度検出装置200に接続されるケーブル類は存在しないので、温度検出装置200の移動範囲が大きく広がることが期待できる。
【0042】
次に、これまで説明した温度検出装置のいずれかを、特定の半導体処理装置に組み込んで使用する形態について説明する。ここではその一例として、重ね合わされた少なくとも2枚のウェハを加熱及び加圧し、接合された積層ウェハを製造する接合装置に、温度検出装置を組み込んで使用する場合を説明する。
【0043】
図15は、温度検出装置500を備える接合装置600の構造を模式的に示す断面図である。枠体601は、互いに平行で水平な天板及び底板等から構成され、位置合わせされたウェハ531とウェハ532を挟持したウェハホルダ533とウェハホルダ534の全体を加圧しても、その反力で変形しない程度の剛性を有している。枠体601によって密閉された空間としてのチャンバが形成され、真空装置602の作用によりチャンバ内は所定の真空度の真空状態に設定できる。また、真空装置602に加え、窒素充填装置603を更に備え、チャンバ内を窒素雰囲気に設定することもできる。チャンバ内の雰囲気は、真空装置602及び窒素充填装置603を制御する制御部によって調整される。
【0044】
チャンバ内には、押圧部604が配置される。押圧部604は、枠体601の底板に固定されたシリンダ605と、シリンダ605の内側に配置されたピストン606とを有する。ピストン606は、図示されない空圧駆動部により駆動されてZ方向に昇降する。
【0045】
ピストン606の上端には、加圧ステージ607が搭載される。加圧ステージ607は、ピストン606の上端に結合された水平な板状の支持部608と、支持部608に平行な板状の基板保持部610とを有する。基板保持部610は、複数のアクチュエータ609を介して、支持部608から支持される。アクチュエータ609は、支持部608と基板保持部610との間にXY平面方向に複数配置され、それぞれ独立に動作されることで、基板保持部610の傾斜を一定の範囲で任意に変えることができる。また、基板保持部610には、発熱部としてのヒータ611が埋設されており、ヒータ611が制御部の制御に従って発熱することにより、基板保持部610はウェハを加熱する加熱部として機能する。
【0046】
位置合わせされた2枚のウェハ531、532を挟み込んで一体となっている2枚のウェハホルダ533、534は、外部の搬送装置により基板保持部610の上面に載置される。このとき、基板保持部610と接するウェハホルダ533の電圧印加端子及び電力供給端子が、基板保持部610の上面に設けられた対向端子に接触して、2枚のウェハ531、532と2枚のウェハホルダ533、534の一体化された固定状態を維持する。また、これらは、真空吸着等により基板保持部610の上面に安定的に固定される。
【0047】
受圧ステージ612は、基板接触部613及び複数の懸架部614を有する。懸架部614は、枠体601の天板の下面から垂下される。基板接触部613は、懸架部614により下面から持ち上げられるように支持され、加圧ステージ607に対向して配置される。また、基板接触部613には、発熱部としてのヒータ615が埋設されており、ヒータ615が制御部の制御に従って発熱することにより、基板接触部613はウェハを加熱する加熱部として機能する。
【0048】
基板接触部613は、下面から持ち上げられるように支持されているので、上方への移動は懸架部614により拘束されない。ただし、枠体601の天板と基板接触部613の間には、XY平面方向に複数のロードセル616が配置されており、基板接触部613の上方への移動を制限する。同時に、複数のロードセル616は圧力検知部として機能し、その信号が制御部へ送信されることにより、制御部は印加圧力の大きさ及び分布を検知することができる。
【0049】
2枚のウェハ531、532を挟み込んで一体となっている2枚のウェハホルダ533、534が基板保持部610に固定された状態で押圧部604を駆動すると、加圧ステージ607が受圧ステージ612に向かって上昇して、これらを押圧する。さらに、押圧中にヒータ611、615により加圧ステージ607及び受圧ステージ612を加熱することで、ウェハ531、532の接合が行われる。
【0050】
温度検出装置500は、温度検出を行わない不使用時には、枠体601の天板の下面から垂下される支持ラック630に、2枚のウェハホルダ501、502に挟持されて収納されている。支持ラック630は温度検出装置500の収納部を形成する。なお、ここでは温度検出装置500として、上述の温度検出装置100と同等の温度検出装置を用いる例を説明する。したがって、2枚のウェハホルダ501、502は、温度検出装置500の適用について特に追加の仕様が施されたものでない、汎用のウェハホルダである。
【0051】
収納部には、収納されている温度検出装置500の複数の温度検出領域に対して均一に熱を加えることができる恒温部631を備える。恒温部631にはヒータ632が埋設されており、ヒータ632は、恒温部631として温度検出装置500の温度検出領域に対して均一に熱を加えることができるように、制御部により制御される。
【0052】
恒温部631は、温度検出装置500のキャリブレーション時に用いる。ここで、温度検出装置500のキャリブレーションについて説明する。上述のように、温度検出装置には複数の温度検出領域のそれぞれに温度センサが使用されているが、通常、個々の温度センサの出力にはばらつきがあり、同じ温度の熱を加えたとしても出力値は異なる。また、一つの温度センサに着目しても、計時変化等により同じ温度の熱を加えたとしても出力値が異なってくる場合もある。したがって、温度検出装置を実際に使用する前に、既知の温度の熱を加えて、温度センサの出力が一定となるように調整する必要がある。この作業がキャリブレーションである。キャリブレーションは、所定の期間をおいて、必要に応じて繰り返し行われる。
【0053】
キャリブレーションは、接合装置600がウェハの接合を実行していないときに行われることが好ましい。ウェハの接合を実行しているときには、ヒータ611、615が発熱状態にあるので、恒温部631が一定の温度を保つ場合に外乱となるからである。ただし、ヒータ611、615が発熱状態にあっても、その輻射熱が収納部に収納されている温度検出装置500に直接届かないなどの対策が講じられている場合にはこの限りではない。
【0054】
キャリブレーション動作の開始時には、制御部は窒素充填装置603を制御してチャンバ内を窒素充填状態に調整する。これは、真空状態では複数の温度検出領域に対して均一に熱を与えることが困難であるが、窒素充填状態では窒素が熱媒として作用するので、温度検出装置500近傍の恒温状態を作りやすいからである。そして、ヒータ632を発熱状態にして、恒温部631が予め定められた温度で温度検出装置500を加熱する。制御部は、各温度センサからの出力を受け、与えた温度に相当する出力との差を演算して補正値を求め、それぞれの温度センサの出力を調整する。この調整は温度を変更して複数回行うことが好ましい。なお、温度検出装置500の配線ケーブル503は、制御部と接続されているコネクタ633に接続されており、制御部は、コネクタ633を介してそれぞれの温度センサの出力を取得する。
【0055】
上記のキャリブレーションは、恒温部631を用いて行う場合を説明したが、これに限らない。基板保持部610を加熱部として予め定められた一定の温度に発熱するように制御すれば、温度検出装置500を基板保持部610に載置して行うこともできる。この場合、基板接触部613も加熱部として制御すれば、温度検出装置500に対して両面から一定の熱を与えることができる。
【0056】
接合装置600は、温度検出装置500を搬送する搬送ロボット650を備える。搬送ロボット650は、ウェハホルダ501、502と一体化された温度検出装置500を把持するハンド部651と、伸縮回転することにより把持した温度検出装置500を収納部と加圧ステージ607の間で往復させるアーム部652とを有する。
【0057】
チャンバ内には、ヒータ611が発熱することによって加熱部として機能する基板保持部610と、ヒータ615が発熱することによって加熱部として機能する基板接触部613との外周部取り囲むシールド部671が設置されている。ウェハホルダ533、534が略円形をしていることから、多くの場合基板保持部610及び基板接触部613は、ウェハホルダの載置面が円形をした円柱形をしている。したがって、シールド部671は、これらを周囲から取り囲んで覆うような、ウェハホルダの載置面に直交する方向であるZ軸方向を軸線とする円筒形状をなすことが好ましい。このように構成することにより、発熱中の基板保持部610及び基板接触部613の輻射熱を、直接的に収納部に収納された温度検出装置500に照射することがない。しがたって、温度検出装置500は、自身が温度検出を行う期間以外に熱ストレス、熱疲労を受けることが少なくなり、温度検出装置500の長寿命化を図ることができる。なお、接合装置600においては、Z軸方向は接合方向に相当する。
【0058】
シールド部671が基板保持部610及び基板接触部613の全周を取り囲む構成であれば、シールド部671の内部に熱を留める効果も期待できる。さらに、基板保持部610及び基板接触部613に載置されたウェハ531、532が、近傍の部品群と輻射による不均質な熱のやり取りを行うことを防ぐことができるので、ウェハ531、532に生じる温度分布を抑制することができる。全周を取り囲まなくとも、発熱中の基板保持部610及び基板接触部613と収納部の間に配置され、少なくとも直接的な輻射熱を遮断する構成をシールド部671が有するのであれば、熱ストレス、熱疲労を軽減する観点においては十分な効果が期待できる。
【0059】
シールド部は、シート形状が好ましい。その素材は、輻射率が小さく、周囲温度に順化しやすい一様な素材が好ましいが、例えばCu材のシートが好ましい。シールド部は、単一の素材で構成される必要は無く、芯材にCu材をコーティング、貼着しても良い。あるいは、頻繁に交換することを考慮して、低コストであるAl材を用いても良い。
【0060】
シールド部は、制御部によって協調制御される複数の昇降機672によって、Z軸方向に上下する。例えば、昇降機672は、Z方向から見たときに基板保持部610を取り囲んで120度毎に3台配置されている。各々の昇降機672は、シールド部671を把持する把持部673、把持部673が固定されるピストン674、及びピストン674を上下させるシリンダ675を備える。把持部673は、シールド部671を着脱可能に保持する。したがって、シールド部671は、消耗部材として交換することができ、均質な熱輻射を得る観点からも、汚損時には取り替えることが好ましい。特に、シールド部671が押圧部604を覆う大きさを備える場合、ピストン606の移動に伴う塵埃の飛散が予想されるが、温度検出装置500にその塵埃が付着することを防止できる観点からは望ましいものの、シールド部671は汚損する。このように汚損が生じうる状況においては、シールド部671の交換は効果的である。
【0061】
なお、図15で示す接合装置600の状態は、シールド部671の上昇状態を示す図である。図示するように、この状態において、2枚のウェハ531、532は押圧及び加熱されて接合が行われる。また、このとき温度検出装置500は、収納部に収納されている。したがって、少なくとも基板保持部610及び基板接触部613が発熱中の期間において、シールド部671は、収納部との間に介在する。これにより、加熱部からの輻射熱の少なくとも一部を遮断する機能を有する。なお、接合後に加熱を終了した後も、一定温度以上の余熱が発生している場合には、シールド部671の上昇状態を保っても良い。
【0062】
それぞれの昇降機672のピストン674が同時に下げられることにより、シールド部671も引き下げられる。図16は、シールド部671の下降状態を示す図である。また、押圧部604のピストン606が駆動されて基板保持部610も引き下げられ、対向する基板接触部613との間に空間を生じている。この状態において、ウェハ及びウェハホルダを外部から搬送して基板保持部610に載置することができるし、また、ウェハホルダ501、502に挟持された温度検出装置500を基板保持部610に載置することもできる。したがって、その作業性から、シールド部671の上端は、引き下げられた基板保持部610の上面に対して、同じ高さかそれ以下となるまで引き下げられることが好ましい。
【0063】
図17は、温度検出装置500を基板保持部610に載置する様子を示す図である。図16で示した状態において、搬送ロボット650のハンド部651は、支持ラック630に収納されている、ウェハホルダ501、502と一体化された温度検出装置500を把持する。そして、アーム部652を伸縮回転させて、温度検出装置500を基板保持部610の載置面まで搬送し、ハンド部651から温度検出装置500を開放する。このとき、コネクタ633は、搬送ロボット650の設置箇所である収納部と基板保持部610の間付近に設けられており、配線ケーブル503は温度検出装置500の移動に追従できるだけの長さを有する。温度検出装置500を基板保持部610から収納部へ搬送する場合は、この逆の手順を辿ればよい。なお、温度検出装置500の基板保持部610への搬送は、その開始時にシールド部671が引き下げられている必要は無く、搬送ロボット650による搬送動作と、昇降機672によるシールド部671の引き下げ動作を並行して行っても良い。
【0064】
図15から図17では、温度検出装置500として、上述の温度検出装置100と同等の温度検出装置を用いる例を説明したが、もちろん上述の温度検出装置200と同等の温度検出装置を用いることもできる。図18は、温度検出装置200と同等の温度検出装置700を備える接合装置800の構造を模式的に示す断面図である。接合装置800は、接合装置600とほぼ同一の構成であるので、特に必要ない限り同一である構成の説明を省略して、相違する構成について説明する。
【0065】
収納部を形成する支持ラック830は、複数の温度検出装置700を収納できるように多段で構成されており、必要に応じて複数の温度検出装置700が載置されている。なお、キャリブレーションを実行するときには、恒温部631に対向するようにキャリブレーションを行う温度検出装置700を最上段に移動させても良い。上述のウェハホルダ300に相当するウェハホルダ702は、接合されるウェハが接合装置800に搬入されるのと同様に、外部から基板保持部610へ搬入され固定される。また、対向するウェハホルダである701も同様、外部から基板接触部613に搬入され固定される。
【0066】
搬送ロボット650は、そのハンド部651で選択された一つの温度検出装置700を把持する。そして、アーム部652を伸縮回転させて、既に設置されているウェハホルダ702の載置面にそれぞれの接触端子が対向するように載置する。そして、押圧部604のピストン606が上昇することにより、温度検出装置700は、ウェハホルダ701、702によって挟み込まれた状態となり、温度検出ができる状態となる。温度検出装置700の温度検出時においては、制御部は、ウェハホルダ702の伝送端子と接触する基板保持部610に設けられた端子から温度検出信号を授受する。また、支持ラック830に他の温度検出装置700が収納されている場合には、温度検出時にシールド部671を上昇状態にすることが望ましい。
【0067】
このように構成された接合装置800においては、配線ケーブルの長さに移動範囲が制限されることが無いので、温度検出装置700も、ウェハホルダ701、702と同様に、外部へ搬出、または外部から搬入することができる。したがって、温度検出装置700の交換時においても、自動搬入及び自動搬出を行うことができる。また、ウェハホルダ701、702で挟持した状態でも温度検出装置700を搬入及び搬出することができるので、そのまま他の半導体処理装置に運び込んで使用することもできる。
【0068】
なお、接合装置600には一つの温度検出装置500が収納されるものとして説明したが、接合装置800のように、複数の温度検出装置500が収納されるものであっても良い。また、温度検出装置500は、ウェハホルダ501、502に挟持されて収納されるものとして説明したが、ウェハホルダ501、502は、ウェハホルダ701、702のように、外部から基板保持部610へ搬入されるように構成しても良い。逆に、接合装置800においても、接合装置600のように、温度検出装置700がウェハホルダ701、702で挟持された状態で収納されていても良い。
【0069】
次に、シールド部671周辺部材のバリエーションについて説明する。図19は、シールド部671周辺部材の第1の例としての上面図である。矢印は温度検出装置の搬入方向を表す。シールド部681は、基板保持部610の周囲で、長方形のシートを円筒状に丸めて使用される。そして、3箇所で把持部673に把持され、シールド部681全体が上下方向に移動する。
【0070】
図20は、シールド部671周辺部材の第2の例としての上面図である。矢印は温度検出装置の搬入方向を表す。シールド部682は二体構造をなし、移動シールド部683と固定シールド部684を備える。移動シールド部683は、把持部673に把持されて、上下方向に移動する。一方、固定シールド部684は、上下に移動しない把持部676に把持されている。このような構成においては、ウェハ、ウェハホルダ及び温度検出装置の搬入、搬出時に、部分的にシールド部を上下させれば良いので、シールド部の上下移動を高速に行うことができる。なお、移動シールド部683と固定シールド部684のそれぞれの大きさは、ウェハ、ウェハホルダ及び温度検出装置の搬入、搬出に必要な空間を考慮して設定される。
【0071】
次に、接合装置600における温度検出装置500の利用について説明する。温度検出装置500は、接合装置600のにおいて、複数のウェハを接合する接合条件の補正に利用される。処理フローとしては、接合装置800における温度検出装置700の利用についてもほぼ同様である。図21は、接合装置600におけるウェハ接合の処理フロー図である。この処理フローは、複数のウェハを接合し、接合された積層ウェハが予定された数に達するまで実行される処理手順を表す。いずれの工程においても、制御部の制御に従って各要素が動作し、または制御部の判断よって実行される。
【0072】
接合装置600の動作が開始されると、ステップS101では、接合装置600が前回使用されてから今回使用するまでの経過時間Tが、予め設定された時間Tを超えているか否かを判断する。つまり、不使用状態であった時間が予定の時間を超えているかを判断する。長い時間不使用状態が続くと、発熱部である基板保持部610及び基板接触部613が、前回の使用時と同様に一定の性能を発揮するかの確認が必要となるからである。時間Tは、この観点において適宜設定される。
【0073】
経過時間Tが時間Tを超えていると判断された場合は、ステップS102へ進み、温度分布の測定を実行する。具体的には、まず、シールド部671及び基板保持部610を下降状態とする。そして、搬送ロボット650により、ウェハホルダ501、502で挟持された温度検出装置500を、基板保持部610に載置、固定する。基板保持部610に固定された温度検出装置500を、押圧部604により、ウェハホルダ501の上面が基板接触部613に接触するまで持ち上げ、更に予め設定された圧力になるまで押圧する。その後、基板保持部610に埋設されたヒータ611、及び基板接触部613に埋設されたヒータ615を制御し、予め定められた発熱パターに従って温度検出装置500を加熱する。制御部は、このとき温度検出装置500から出力される出力信号を解析し、複数の温度検出領域における絶対温度と、温度検出領域間の相対的なばらつきである温度分布を取得する。
【0074】
ステップS102で温度分布の測定が終了すると、ステップS103に進み、測定結果に基づいて接合条件の補正を行う。ウェハを接合する処理を開始するにあたっては、例えば、ウェハ上に設けられたバンプ密度、ウェハ表面の酸化進行度合い、ウェハの厚さ、既に接合されている積層枚数などが考慮されて、ユーザにより、ウェハを接合する条件が予めレシピとして接合装置600に入力されている。レシピとしては、例えば、接合されるウェハが達すべき温度、加えられる圧力、チャンバ内の雰囲気が、開始時刻から終了時刻まで時間軸に沿って定められる。チャンバ内の雰囲気としては、真空状態、窒素充填状態が選択できる。また、これを繰り返していくつの積層ウェハを製造するかについても定められる。ステップS103では、このレシピのいずれかの項目を、測定した温度分布の結果に基づいて補正する。例えば、制御部が与える目標温度に対して、温度検出装置500で得られた検出温度が低ければ、それに応じてレシピの加熱時間を長くしたり、加圧圧力を大きくしたりできる。また、温度分布が生じないように温度目標を設定しているにも関わらず、特定の領域のみ目標温度に到達しない検出結果が得られれば、逆に、その領域のみ高い目標温度を設定することもできる。
【0075】
ステップS101で経過時間Tが時間Tを超えていないと判断された場合、及びステップS103で接合条件の補正が行われた場合は、ステップS104に進む。ステップS104では、ユーザからウェハを接合する条件としてのレシピの変更入力があったか否かを判断する。なお、レシピの変更入力は、接合装置600が備えるユーザインターフェイスを用いてユーザが行うが、制御部はユーザの入力を受け取り、各種項目の設定を変更する。レシピが変更されると、ヒータ611、615の制御も変更されるので、設定どおりの出力が得られるかを確認する必要がある。したがって、レシピの変更入力があったと判断した場合は、ステップS102へ進み、温度検出装置500を用いて予め温度分布を測定する。レシピの変更入力が無かったと判断した場合は、ステップS105へ進む。
【0076】
ステップS105からステップS107では、2枚のウェハを重ね合わされた2枚のウェハを加熱及び加圧し、接合された積層ウェハを製造する工程である。重ね合わされるウェハの一方、または両方が既に積層された積層ウェハであっても良い。例えば、2枚のウエハが既に積層された積層ウェハに単独のウェハを重ねて接合すれば、3枚のウェハが積層された積層ウェハが得られる。
【0077】
ステップS105では、精確に位置合わせされて重ね合わされた2枚のウェハを面方向から挟持したウェハホルダを、接合装置600に搬入する。搬入は、外部に設置された搬送ロボットにより行われる。ステップS106では、ユーザによって入力されたレシピに従って、または、ステップS103で補正されたレシピに従って、搬入されたウェハを接合する。具体的な動作については上述の通りであるが、簡単には、基板保持部610に固定されたウェハホルダを、押圧部604により、その上面が基板接触部613に接触するまで持ち上げる。その後、基板保持部610に埋設されたヒータ611、基板接触部613に埋設されたヒータ615、及び押圧部604を制御し、予めレシピに定められた加圧、加熱パターに従ってウェハを加圧、加熱する。ウェハの加熱中は、加熱部の輻射熱が収納部の温度検出装置500に直接照射されないように、シールド部671が上昇状態となるように制御される。接合が完了すると、押圧部604を引き下げ、並行してシールド部671も下降状態にする。ステップS107では、外部に設置された搬送ロボットにより、接合されて積層ウェハになっているであろう2枚のウェハを、挟持するウェハホルダごと接合装置600から搬出する。なお、この工程を経た2枚のウェハを以下では積層後ウェハという。
【0078】
ステップS108では、ステップS105からステップS107の間に、接合装置600の異常停止があったか否かを判断する。異常停止があれば、レシピどおりの制御が行えなかったはずであり、次回の接合工程がレシピどおり行えるように、接合装置600の状態をチェックする必要がある。したがって、異常停止があったと判断した場合は、復旧動作後にステップS102へ進み、温度検出装置500を用いて温度分布を測定する。異常停止が無かったと判断した場合は、ステップS109へ進む。
【0079】
ステップS109では、ウェハおよびウェハホルダが接合工程中に破壊されたか否かを判断する。ウェハホルダについては、搬出に用いる搬送ロボットの制御情報を制御部が受け取ることにより、破壊を判断できる。ウェハについては、搬出後の、ウェハホルダから積層後ウェハを取り出す工程を担う装置の制御情報を制御部が受け取ることにより、破壊を判断できる。ウェハ、ウェハホルダの破壊が発生したのであれば、レシピの設定に不備があったか、または、レシピの設定を逸脱した出力が生じたか等の原因が考えられる。したがって、ウェハ、ウェハホルダの破壊があったと判断した場合は、復旧動作後にステップS102へ進み、温度検出装置500を用いて温度分布を測定する。ウェハ、ウェハホルダの破壊が無かったと判断した場合は、ステップS110へ進む。
【0080】
ステップS110では、接合工程中に取得した各種センサの出力に異常値が含まれているか否かを判断する。接合装置600には、ウェハに加えられる圧力を検出するロードセル616、基板保持部610のヒータ611の近傍に埋設され、また、基板接触部613のヒータ615の近傍に埋設されたヒータ温度制御用センサが設置されている。これらのセンサの出力に、所定量以上のドリフトが見られるとき、許容誤差範囲を超えるばらつきが見られるときを含め、異常値が検出された場合にはその対処が必要である。センサ自身の交換が必要となる場合もあるが、レシピ側で誤差を織り込んだ設定に補正することもできる。例えば、圧力変動は、接触熱抵抗を変化させるので、結果的に温度特性も変化させる。このとき、圧力変動を打ち消すように、時間軸に沿って目標温度を変化させても良い。そこで、各種センサの出力に異常値が含まれていると判断した場合は、ステップS102へ進み、温度検出装置500を用いて温度分布を測定する。各種センサの出力に異常値が含まれないと判断した場合は、ステップS111へ進む。
【0081】
ステップS111では、今回の接合工程で使用したウェハホルダが、累計で何回目の使用であるかを判断する。具体的には、ウェハホルダごとに管理、記憶されている使用回数Uが、予め定められた使用回数Uを超えるか否かを判断する。ウェハホルダの使用回数が増加すると、塵埃の付着、堆積が無視できないものとなり、熱の伝導に影響を与えるからである。判断には、経時的な要素を勘案して、例えば、長期間に亘っての使用であれば、Uを小さな値にするなどの修正を行っても良い。したがって、使用回数UがUを超えたと判断した場合はステップS102へ進み、温度検出装置500を用いて温度分布を測定する。使用回数UがUを超えていないと判断した場合は、ステップS112へ進む。
【0082】
ステップS112では、今回の接合工程で製造した積層後ウェハが外部装置で検査されて送信されてくる不良判定結果を制御部が受信し、これまで受信した一連の不良判定結果と総合して、不良率Bが予め定められた不良率Bを超えているか否かを判断する。不良判定は、積層後ウェハが正常に接合されているか否かについて、電気信号の入出力を行うことにより行う。一定の割合以上の不良品が発生している場合には、レシピどおりに接合装置600が動作していない恐れがある。したがって、不良率BがBを超えたと判断した場合はステップS102へ進み、温度検出装置500を用いて温度分布を測定する。不良率BがBを超えていないと判断した場合は、ステップS113へ進む。
【0083】
ステップS113では、基板保持部610のヒータ611、または基板接触部613のヒータ615が交換されたか否かを判断する。ヒータは消耗品であり、定期的に交換される。経時的な変化、個体差などを考慮すれば、交換前のヒータと交換後のヒータはその特性が異なるので、再度温度分布を測定しなおす必要がある。したがって、ヒータ611、615が交換されたと判断した場合はステップS102へ進み、温度検出装置500を用いて温度分布を測定する。交換されていないと判断した場合は、ステップS114へ進む。なお、消耗品はヒータ611、615に限らないので、温度制御にかかわる他の部品、センサが交換された場合に同様の判断を行っても良い。例えば、基板保持部610、基板接触部613に冷却部が設けられており、冷却管を備えるのであれば、冷却管が交換された場合に判断を行っても良い。
【0084】
ステップS114では、レシピに設定された所定個数の積層後ウェハが製造されたか否かを判断する。製造が完了していなければステップS104へ戻り、接合工程を再開する。完了していれば、一連の処理を終了する。
【0085】
上記の処理フローにおいては、この順に従って温度分布を測定するか否かを判断する必要は無く、順番は適宜変更される。また、他の判断材料をこの処理フローに組み込んでも良い。例えば、積層後ウェハが一つ製造されるたびに温度分布測定を行っても良いし、加熱部の定期清掃、定期点検後に温度分布測定を行っても良い。
【0086】
また、ステップS102の温度分布測定の結果、何らかの異常結果が得られた場合には、ステップS103の接合条件の補正のみならず、接合装置600に備えられた他の自動メンテナンス機能を作動させたり、警報を発したりするように制御しても良い。以上のように処理工程を管理することにより、適切な設定条件、装置の状態において積層ウェハを製造することができるので、スループットの向上が望める。
【0087】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0088】
100 温度検出装置、101、102 ワークシリコンウェハ、110、111、112、113、114、115 スペーサシリコンウェハ、121、122、123、124、125 ケーブル、131、132、133、134、135、136、137 シース型熱電対、141、142、143、144、145、320、520 スリット、151 シース管、152 熱電対素線、190 配線ケーブル、200 温度検出装置、210 スペーサシリコンウェハ、211 端子部、221、222、223、224、225 信号配線パターン、230 接触端子、231、232、233、234、235 信号端子、236 グランド端子、241、242、243、244、245 穿孔、300 ウェハホルダ、310 ホルダ本体、311 吸着子、312 位置決め穴、313 挿通孔、314 保持面、330 接触端子、331、332、333、334、335 信号端子、336 グランド端子、420、620 溝部、500 温度検出装置、503 配線ケーブル、531、532 ウェハ、533、534 ウェハホルダ、600 接合装置、601 枠体、602 真空装置、603 窒素充填装置、604 押圧部、605 シリンダ、606 ピストン、607 加圧ステージ、608 支持部、609 アクチュエータ、610 基板保持部、611 ヒータ、612 受圧ステージ、613 基板接触部、614 懸架部、615 ヒータ、616 ロードセル、630 支持ラック、631 恒温部、632 ヒータ、633 コネクタ、650 搬送ロボット、651 ハンド部、652 アーム部、671 シールド部、672 昇降機、673 把持部、674 ピストン、675 シリンダ、682 シールド部、683 移動シールド部、684 固定シールド部、676 把持部、801、802 位置決めピン、901 位置決め部、910 充填材、911 付勢部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板を保持する半導体基板ホルダであって、
前記半導体基板を保持するに替えて、温度センサを内蔵する温度検出装置を保持したときに、前記温度検出装置の接触端子に対応する位置に設けられた接続端子を備える半導体基板ホルダ。
【請求項2】
前記接続端子は、前記半導体基板の接触領域の外側に設けられる請求項1に記載の半導体基板ホルダ。
【請求項3】
前記接続端子に接続される配線は、外部装置と接続する他の接続端子に接続される請求項1または2に記載の半導体基板ホルダ。
【請求項4】
前記他の接続端子は、前記温度検出装置を保持する面とは反対の面側に設けられる請求項3に記載の半導体基板ホルダ。
【請求項5】
半導体基板ホルダと共に用いられる温度検出装置であって、
前記半導体基板ホルダ上に載置される本体と、前記本体に内蔵する温度センサと、前記温度センサに接続され、前記半導体基板ホルダに設けられた接続端子と接触する接触端子とを備え、
前記温度センサの出力信号は、前記接触端子及び前記半導体基板ホルダを介して外部装置へ伝達される温度検出装置。
【請求項6】
前記半導体基板ホルダの半導体基板の接触領域の外側の領域に対向する対向部を備え、前記接触端子は、前記対向部に設けられる請求項5に記載の温度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−109040(P2011−109040A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265502(P2009−265502)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】