説明

半導体材料、半導体材料の製造方法及び半導体素子

【課題】pn接合のI−V特性を向上させる半導体材料を提供すること。
【解決手段】本発明に係る半導体材料は、酸化亜鉛の結晶を含有する粒子を備え、酸化亜鉛の結晶子の大きさが5〜50nmであり、酸化亜鉛の結晶における窒素の含有率が500〜10000質量ppmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体材料、半導体材料の製造方法及び半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛(ZnO)は、他の半導体材料に比べて安価であり、酸化亜鉛を用いた発光素子は紫外線を発光することから、半導体材料として期待されている。従来、酸化亜鉛を用いた半導体素子の製造では、有機金属気相成長法(MOCVD法)又は分子線エピタキシャル成長法(MBE法)等、真空蒸着装置を要する方法を用いて、基板上に酸化亜鉛の結晶薄膜を形成していた(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3540275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の従来の方法では、高価な設備の導入が必須であり、工程が煩雑であるため、安価な半導体素子を工業的に量産することは容易ではなかった。この課題を解決する方法として、酸化亜鉛の粒子を製造し、これを薄膜状に成形することが考えられる。酸化亜鉛の粒子は、アーク放電法によってバルク状の亜鉛(金属亜鉛)を蒸発させて、蒸発した亜鉛を酸化することにより製造することが可能である。しかし、pn接合を構成するp型半導体層を、従来の方法により製造した酸化亜鉛の粒子から形成した場合、十分なI−V特性(整流作用)が得られないことを本発明者らは見出した。
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、pn接合のI−V特性を向上させる半導体材料、当該半導体材料の製造方法、及び当該半導体材料を用いた半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る半導体材料は、酸化亜鉛の結晶を含有する粒子を備え、酸化亜鉛の結晶子の大きさが5〜50nmであり、酸化亜鉛の結晶における窒素の含有率が500〜10000質量ppmである。
【0007】
本発明に係る半導体素子は、第一電極と、第一電極に積層されたn型半導体層と、n型半導体層に積層されたp型半導体層と、p型半導体層に積層された第二電極と、を備え、p型半導体層が上記本発明に係る半導体材料を含有する。
【0008】
上記本発明によれば、pn接合のI−V特性を向上させることが可能となる。
【0009】
本発明に係る半導体材料の製造方法は、有機亜鉛化合物の溶液を大気中で加熱して有機亜鉛化合物を酸化する工程を備える。
【0010】
本発明に係る半導体材料の製造方法によれば、上記本発明に係る半導体材料を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、pn接合のI−V特性を向上させる半導体材料、当該半導体材料の製造方法、及び当該半導体材料を用いた半導体素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る半導体素子の模式断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施例及び比較例のpn接合のI−V特性の測定方法を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の実施例1及び比較例1のI−V特性(I−Vカーブ)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。なお、図面に示す各要素の寸法及び形状は限定されない。以下では、図面を参照しながら、半導体素子がLED(Light Emitting Diode)である場合について説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る半導体素子100は、基板2と、基板2上に積層された第一電極4と、第一電極4上に積層されたn型半導体層6と、n型半導体層6上に積層されたp型半導体層8と、p型半導体層8上に積層された第二電極10と、を備える。n型半導体層6とp型半導体層8は、pn接合部を構成している。
【0015】
p型半導体層8は、酸化亜鉛の結晶を主成分とする複数の粒子(半導体材料)から構成されている。粒子自体が酸化亜鉛の単結晶体又は多結晶体であってもよい。酸化亜鉛の結晶を主成分とする粒子は透明であり、p型半導体層8も透明である。なお、p型半導体とは、正孔(ホール)と呼ばれる電子の欠落が正の電荷を有するキャリアとして機能する半導体である。p型半導体の内部では、結晶内に生じた正孔が移動することによって電流が生じる。
【0016】
酸化亜鉛の結晶子の大きさは5〜50nmである。好ましくは、酸化亜鉛の結晶子の大きさは10〜40nmである。酸化亜鉛の結晶を主成分とする粒子の平均粒径は、酸化亜鉛の結晶子の大きさに略等しい。ただし、結晶子とは、単結晶とみなせるものであり、粒子は複数の結晶子によって構成されている場合がある。
【0017】
「結晶子の大きさ」とは、下記のScherrerの式(1)に従って、X線回折法(XRD法)の測定結果から算出される結晶子の大きさの平均値である。
hkl=(K・λ)/(βcosθ) (1)
【0018】
式(1)中、Dhklは、結晶子の(hkl)面に垂直な方向における「結晶子の大きさ」である。KはScherrer定数である。λは、XRD法に用いるX線の波長である。βは(hkl)面の回折X線ピークの広がり(半値幅又は積分幅)である。θは回折X線のブラッグ角である。本実施形態における酸化亜鉛の結晶子の大きさは、結晶子のab面の回折X線ピークの半値幅に基づく値である。
【0019】
本実施形態では、酸化亜鉛の結晶子の大きさ(粒子の粒径)が、従来の製法で作製した酸化亜鉛粒子よりも小さい。そのため、本実施形態のp型半導体層8における酸化亜鉛の結晶の充填率は、従来の酸化亜鉛粒子から形成したp型半導体層に比べて高い。よって、本実施形態では、p型半導体層8中に存在する酸化亜鉛の結晶間の接点数又は接触面積が、従来よりも増加する。つまり、本実施形態のp型半導体層8中の導電経路は、従来の粗大な酸化亜鉛粒子から形成したp型半導体層に比べて増加する。これにより、pn接合のI−V特性が実用できる水準まで向上する。なお、酸化亜鉛の結晶子の大きさが小さ過ぎる場合、粒子の表面積が極めて大きくなるため、大気中の酸素や水分の影響により粒子表面の半導体特性が変動するとともに、粒子内部への酸素や水分の拡散が容易になり、粒子自体が変質することが問題となる。
【0020】
酸化亜鉛のバンドギャップは近紫外域に対応するため、pn接合部におけるキャリアの再結合によって紫外線が発生する。この紫外線はp型半導体層8内の粒子によって散乱される場合がある。粒子の粒径(酸化亜鉛の結晶子の大きさ)が光の波長の1/2程度である場合、光の散乱が最も起き易い。しかし、本実施形態では、粒子の粒径(酸化亜鉛の結晶子の大きさ)が紫外線の波長(400nm弱)の1/2よりも小さい。したがって、本実施形態によれば、従来の粗大な酸化亜鉛粒子を用いたLEDに比べて、p型半導体層8における紫外線の散乱が抑制され、高い効率での発光が可能となる。つまり、本実施形態によれば、従来の粗大な酸化亜鉛粒子を用いたLEDに比べて、p型半導体層8における紫外線の透過率が高くなる。
【0021】
酸化亜鉛の結晶における窒素の含有率は500〜10000質量ppmである。換言すれば、酸化亜鉛の結晶における窒素の含有率は1.22×1020〜2.44×1021cm−3である。本実施形態に係る酸化亜鉛の結晶における窒素の含有率は、従来の製法によって得られる酸化亜鉛粒子に比べて高い。よって、本実施形態に係るp型半導体層8におけるアクセプタ又は正孔の濃度は、従来の製法によって得られる酸化亜鉛粒子から形成したp型半導体層に比べて高い。これにより、pn接合のI−V特性が実用できる水準まで向上する。
【0022】
酸化亜鉛の結晶を主成分とする粒子は、本発明の効果を阻害しない程度の微量であれば、窒素以外にNa、Mg、Si、P、S、Cl、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Pt、Au等の元素を含有してもよい。
【0023】
上記の酸化亜鉛の結晶を主成分とする粒子は、有機亜鉛化合物の溶液を大気中で加熱して有機亜鉛化合物を酸化することにより製造できる。具体的には、大気中で有機亜鉛化合物を含む溶液を火炎中に噴霧し、有機亜鉛化合物の酸化分解反応を促進させる。酸化反応中、反応物の周囲に存在する窒素が反応物中に取り込まれる。これにより、結晶子の大きさが5〜50nmであり、窒素の含有率が500〜10000質量ppmである酸化亜鉛の結晶粒子が生成する。結晶子の大きさや窒素の含有率は、有機亜鉛化合物の種類、火炎の温度、溶液の噴霧量、溶質の濃度、火炎へ供給する酸素量を調整することによって制御できる。なお、溶液の噴霧量は、製造装置(加熱装置)の大きさに依存するため、一概には定まらない。小規模な加熱装置を用いる場合の溶液の噴霧量は0.1〜10g/min程度である。大規模な加熱装置を用いる場合の噴霧量は約1kg/min以下である。噴霧する溶液の溶質濃度も製造装置(加熱装置)の大きさに依存するため、一概には定まらない。小規模な加熱装置を用いる場合の溶液の溶質濃度は0.1〜20重量%程度である。ただし、溶液の噴霧量及び溶質濃度は、上記の数値範囲に限定されない。
【0024】
本実施形態の製造方法によれば、結晶子の大きさを上記数値範囲内で自在に制御するとともに、酸化亜鉛の結晶における窒素の含有率を上記の広い範囲内で制御することにより、半導体素子の機能・用途に応じて結晶中のアクセプタの濃度を自在に調整することができる。従来の金属亜鉛を原料としたアーク放電による酸化亜鉛粒子の製造方法では、酸化亜鉛粒子中に金属亜鉛が混入し易く、所望の半導体特性を有する酸化亜鉛粒子を製造することは容易ではかなった。このような問題は原料として金属亜鉛を要しない本実施形態では起き難い。また、本実施形態によれば、MOCVDやMBEのような煩雑な工程を要することなく、酸化亜鉛粒子を簡便な工程で工業的に量産することが可能である。
【0025】
有機亜鉛化合物の溶液は、バーナーやコンロ等の中心部に設けた噴霧口を通じて火炎の内側に噴霧してもよい。火炎の外側から火炎に向けて有機亜鉛化合物溶液を噴霧してもよい。
【0026】
有機亜鉛化合物の溶液を加熱する手段は、火炎に限定されない。溶液の加熱手段として、アーク放電、プラズマ放電、レーザーアブレーション等の方法を用いてもよい。
【0027】
有機亜鉛化合物の溶液の加熱温度は1500℃以上であることが好ましい。加熱手段が火炎である場合、有機亜鉛化合物の燃焼温度を高めるために、酸素を助燃剤として使用することが好ましい。有機亜鉛化合物の溶液を助燃剤と共に燃焼することにより、2000℃以上の火炎を得ることができる。火炎以外の加熱手段を用いる場合も、有機亜鉛化合物の酸化の促進(未酸化物の生成の抑制)のために酸素を使用することが好ましい。また、酸素と同様の効果を得るために大量の空気を加熱手段へ供給してもよい。溶液を加熱するための大気の露点温度又は助燃剤として供給される空気の露点温度は、0℃以下であることが好ましい。これにより、火炎の温度が水分により低下することを抑制できる。水素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、アセチレン、エチレン、プロピレン、都市ガス等の可燃性ガスと上記の助燃剤とを併用して、火炎を生成させたり、溶液の加熱温度を高めたりしてもよい。
【0028】
有機亜鉛化合物しては、酢酸亜鉛、蓚酸亜鉛、ジメトキシ亜鉛、ジエトキシ亜鉛、ジ-2-プロポキシ亜鉛、ジ-2-ブトキシ亜鉛、亜鉛アセチルアセトナート、安息香酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、蟻酸亜鉛、クエン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、シクロヘキサン酪酸亜鉛、酒石酸亜鉛、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、ビス(ジピバロイルメタナト)亜鉛、ステアリン酸亜鉛、乳酸亜鉛、ビス(2,4−ペンタンジオナト)亜鉛、ナフテン酸亜鉛、オクタデカン酸亜鉛、亜鉛tert−ブトキシド、亜鉛2−メトキシエトキシド、ジフェニル亜鉛、テレフタル酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、p−t−ブチル安息香酸亜鉛、ジメタクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、ラウリル酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、2,4−ペンタンジオン酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、その他の有機亜鉛化合物を用いればよい。
【0029】
有機亜鉛化合物の溶液を作製するための溶媒としては、上記の有機亜鉛化合物を溶解するものであればよく、ミネラルスピリット等の有機溶媒又は水を用いればよい。特に、水よりも熱容量が小さく、且つ燃焼による発熱量が大きい有機溶媒を用いることが好ましい。これにより、有機亜鉛化合物を高温で確実に酸化し易くなる。
【0030】
基板2としては、透明なガラス基板(石英基板)が好適である。基板2の厚さは、特に限定されないが、0.5〜2.0mm程度である。第一電極4及び第二電極10としては、金属材料や導電性酸化物が挙げられる。その中でも酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide)等から構成される透明導電膜が好適である。第一電極4及び第二電極10の各厚さは、特に限定されないが、10nm〜1.0μm程度である。
【0031】
n型半導体層6としては、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、ホウ素ドープ酸化亜鉛又はマンガンドープ酸化亜鉛からなる透明な層が好適である。n型半導体層6の厚さは、特に限定されないが、10nm〜1.0μm程度である。n型半導体層6は、ゾルゲル法、スプレー法、無電界めっき法、スパッタ法、CVD法、MOCVD法、反応蒸着法、パルスレーザー蒸着法、印刷法又はディップコート法等によって形成することができる。
【0032】
p型半導体層8は、酸化亜鉛の結晶を主成分とする粒子が分散した塗料をブレード法、バーコート法、ナイフ法、カーテン法、スプレー法、ディップ法、インクジェット法又はスピンコータ法などによりn型半導体層6の表面に塗布することにより形成すればよい。塗料を作製するための溶媒としては、アルコール等の有機溶媒を用いればよい。また、塗料は、粒子を結着させたり、塗料の成形性を向上させたりするために、有機バインダを含んでもよい。p型半導体層8の厚さは、特に限定されないが、0.2〜1.0μm程度である。
【0033】
本実施形態によれば、塗料からp型半導体層8を形成することが可能であるため、MOCVD法又はMBE法等の従来の煩雑な方法に比べて、p型半導体層8の厚さの制御や均一化が容易となる。p型半導体層8の厚さの均一化によって、p型半導体層8の電気的特性の位置依存性が解消する。また、本実施形態では、塗料中の酸化亜鉛粒子の含有量を調製することにより、p型半導体層8中における酸化亜鉛粒子の充填率を制御できる。充填率の制御によって、pn接合面の状態を自在に変化させることができるため、I−V特性等の半導体特性の調整が容易となる。
【0034】
本実施形態では、基板2、第一電極4、n型半導体層6、p型半導体層8及び第二電極10が透明であることにより、n型半導体層6及びp型半導体層8の両側から紫外線を発光させることが可能となる。本実施形態によれば、JIS7105に基づく半導体素子100の積層方向における光学透過率を、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上に調整することが可能となる。
【0035】
以上、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0036】
例えば、本実施形態に係る半導体材料を用いて透明電極を形成してもよい。粒子の粒径(酸化亜鉛の結晶子の大きさ)を可視光の波長に応じて適宜制御することにより、可視光の透過率の高い透明導電膜を形成することも可能である。また、本実施形態に係る半導体材料及び半導体素子は、LED以外にも、レーザ素子等の発光素子、ダイオード等の整流素子、トランジスタ素子、半導体メモリ素子、その他の集積回路用素子、太陽電池用素子にも適用できる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
2−エチルヘキサン酸亜鉛(有機亜鉛化合物)をミネラルスピリット(溶剤)に溶解して、溶液を作製した。溶液中の2−エチルヘキサン酸亜鉛の含有率は、金属亜鉛に換算して5.03重量%に調整した。大気雰囲気中において、バーナーにプロパンガス(供給量:1L/min)及び酸素(5L/min)を供給して火炎を生成した。この火炎中に上記の溶液を3g/minの供給量でキャリアガスと共に噴霧し、2−エチルヘキサン酸亜鉛を酸化した。これにより、実施例1の粒子状の半導体材料を得た。キャリアガスとしては酸素を用いた。キャリアガスの供給量は9L/minに調整した。
【0039】
(実施例2)
溶液中の2−エチルヘキサン酸亜鉛の含有率を10.06重量%に調整したこと以外は実施例1と同様の条件で、実施例2の粒子状の半導体材料を作製した。
【0040】
(実施例3)
溶液中の2−エチルヘキサン酸亜鉛の含有率を7.55重量%に調整したこと以外は実施例1と同様の条件で、実施例3の粒子状の半導体材料を作製した。
【0041】
(実施例4)
溶液中の2−エチルヘキサン酸亜鉛の含有率を2.52重量%に調整したこと以外は実施例1と同様の条件で、実施例4の粒子状の半導体材料を作製した。
【0042】
(実施例5)
溶液中の2−エチルヘキサン酸亜鉛の含有率を1.26重量%に調整したこと以外は実施例1と同様の条件で、実施例5の粒子状の半導体材料を作製した。
【0043】
(実施例6)
溶液中の2−エチルヘキサン酸亜鉛の含有率を0.50重量%に調整したこと以外は実施例1と同様の条件で、実施例6の粒子状の半導体材料を作製した。
【0044】
(実施例7)
溶液中の2−エチルヘキサン酸亜鉛の含有率を0.25重量%に調整したこと以外は実施例1と同様の条件で、実施例7の粒子状の半導体材料を作製した。
【0045】
(実施例8)
実施例8では、有機亜鉛化合物として、2−エチルヘキサン酸亜鉛の代わりにステアリン酸亜鉛を用いた。また、実施例8では溶剤として、ミネラルスピリットの代わりにトルエンを用いた。これらの事項以外は実施例1と同様の条件で、実施例8の粒子状の半導体材料を作製した。
【0046】
(実施例9)
溶液中の2−エチルヘキサン酸亜鉛の含有率を2.52重量%に調整したこと以外は実施例7と同様の条件で、実施例9の粒子状の半導体材料を作製した。
【0047】
(実施例10)
実施例10では、有機亜鉛化合物として、2−エチルヘキサン酸亜鉛の代わりにジエチル亜鉛を用いた。また、実施例10では溶剤として、ミネラルスピリットの代わりにトルエンを用いた。これらの事項以外は実施例1と同様の条件で、実施例10の粒子状の半導体材料を作製した。
【0048】
(実施例11)
溶液中のジエチル亜鉛の含有率を2.52重量%に調整したこと以外は実施例10と同様の条件で、実施例11の粒子状の半導体材料を作製した。
【0049】
(比較例1)
比較例1として、気相合成法により作製した古河電子(株)社製の酸化亜鉛粒子を準備した。
【0050】
(比較例2)
比較例2として、真空冶金製微粒子生成装置GE−970を用いて作製した酸化亜鉛粒子を準備した。
【0051】
比較例1,2の酸化亜鉛粒子のいずれも、蒸発させた金属亜鉛を酸化することで作製したものである。
【0052】
[組成分析]
LECO社製TC600装置を用いたインパルス加熱溶融抽出法により、各実施例の粒子中の窒素の含有量を測定した。同様に、各比較例の酸化亜鉛粒子中の窒素の含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
[構造分析]
PANalytical社製X’ pert MPDを用いて、各実施例及び各比較例の粒子の格子定数の精密化及び結晶子のサイズの計測を行った。計測の結果、各実施例の粒子は結晶性の酸化亜鉛であることが確認された。各実施例及び各比較例の酸化亜鉛粒子の結晶子の大きさ(結晶子サイズ)を表1に示す。
【0054】
[I−V特性の測定]
図2に示すように、石英基板2に積層された電極4の表面にガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)からなるn型半導体層6をスパッタ法で形成した。実施例1の酸化亜鉛粒子をアルコールに分散した塗料(固形分濃度:10重量%)をバーコート法によってn型半導体層6の表面に塗布して、厚さが約300nmであるp型半導体層8を形成した。これにより、n型半導体層6及びp型半導体層8から構成されたpn接合部を備える実施例1のサンプルを得た。同様に、各実施例及び各比較例の酸化亜鉛粒子をそれぞれ単独で用いて、pn接合部を備える各実施例及び各比較例のサンプルを作製した。
【0055】
図2に示すように、I−V特性測定装置(図2中の「I−V」)に実施例1のp型半導体層8及び電極4をそれぞれ電気的に接続して、実施例1のpn接合部におけるI−V特性を測定した。I−V特性測定装置としては、(株)ADC社製の直流電圧電流源を用いた。同様に、各実施例及び各比較例のpn接合部のI−V特性を測定した。各実施例及び各比較例の立上がり電圧(Vf)及び降伏電圧(Vz)を表1に示す。また、実施例1及び比較例1の各I−Vカーブを図3に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
全実施例では、良好なI−V特性(整流作用)が確認された。一方、全比較例では、十分なI−V特性(整流作用)が確認できなかった。
【0058】
(積層型半導体素子)
第一透明フィルム上にITOからなる第一透明導電膜を形成した。スパッタリング法により第一透明導電膜上にガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)からなるn型半導体層を形成した。実施例7の酸化亜鉛粒子をアルコールに分散した塗料(固形分濃度:10重量%)をバーコート法によってn型半導体層の表面に塗布した。これにより、p型半導体層を形成した。p型半導体層上にITOからなる第二透明導電膜を形成した。第二透明導電膜上に第二透明フィルムを積層した。以上の工程により、積層型半導体素子(透明発光体)を作製した。
【0059】
第一透明フィルム及び第二透明フィルムとしては、AR(Anti Reflection)層付きPETを用いた。各透明フィルムの厚さは100μmであった。第一透明導電膜及び第二透明導電膜の厚さはそれぞれ100nmであった。n型半導体層の厚さは100nmであった。p型半導体層の厚さは300nmであった。
【0060】
JIS7105に基づいて測定した透明発光体の光学透過率は80%であった。
【符号の説明】
【0061】
2・・・基板、4・・・第一電極、6・・・n型半導体層、8・・・p型半導体層、10・・・第二電極、100・・・半導体素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛の結晶を含有する粒子を備え、
前記酸化亜鉛の結晶子の大きさが5〜50nmであり、
前記酸化亜鉛の結晶における窒素の含有率が500〜10000質量ppmである、
半導体材料。
【請求項2】
第一電極と、
前記第一電極に積層されたn型半導体層と、
前記n型半導体層に積層されたp型半導体層と、
前記p型半導体層に積層された第二電極と、
を備え、
前記p型半導体層が請求項1に記載の半導体材料を含有する、
半導体素子。
【請求項3】
有機亜鉛化合物の溶液を大気中で加熱して前記有機亜鉛化合物を酸化する工程を備える、
半導体材料の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−209390(P2012−209390A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73156(P2011−73156)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】