説明

半導体材料のウエハを製造するための分子線エピタキシー装置

本発明は、処理領域(2)を取り囲む成長室(1)、この成長室(1)の側壁(3)の内面を覆う側部部分(10)を少なくとも有する主低温パネル、サンプルホルダー(6)、材料を蒸発させる少なくとも1つのエフュージョンセル(8)、気体状プレカーサーを前記成長室(1)に注入することのできるガスインジェクター(9)、前記成長室(1)に連結され、高い真空能力を提供することのできる排気手段(11)を備えている、半導体材料のウエハを製造する分子線エピタキシー装置に関する。本発明によれば、本分子線エピタキシー装置は、少なくとも成長室壁(3,4,5)の内面を覆う断熱材囲い(14)を備え、この断熱材囲い(14)は、気体状プレカーサーの融点より低いか、これと同一である温度Tminを有する低温部と、高温部を備え、この高温部は、該高温部上の気体状プレカーサーの離脱速度が、気体状プレカーサーの吸着速度の少なくとも1000倍以上であるような温度より高いか、これと同一である温度Tmaxを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体材料のウエハを製造するための分子線エピタキシー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エピタキシャル窒化ガリウム(GaN)半導体は、高ルミネセンスLEDまたは高周波トランジスタのような高出力で高周波に適応する大変に興味深い半導体特性を示している。
【0003】
GaNの薄膜のエピタキシーは、2つの主技術、すなわち分子線エピタキシー(MBE)および有機金属化学気相蒸着(MOCVD)によってなされ得る。
【0004】
分子線エピタキシー技術の場合、例えばガリウムである元素または化合物の原子または分子は、エフュージョンセル内の溶融金属から蒸発され、そして窒素元素は、プラズマ源によって解離された分子窒素によって供給されるか、基板の表面で熱的活性により化学的に分解されるガスインジェクターからの気体状のアンモニアから供給され得る。
【0005】
分子線エピタキシー装置は、通常、被覆されるべき基板を導入する装荷区画、基板を脱水する区画、基板の脱酸素操作を行う区画、成長室、および成長室の残留元素の排出を行う排気手段を備えている。
【0006】
例えばシリコンである基板は、内部が約10−8パスカルの真空度に設定された成長室に導入される。基板は、約300℃〜1100℃の間に加熱される。次いで、アンモニアのような気体状プレカーサーが成長室内に注入され、そしてエフュージョンセル内の金属が蒸発のために加熱される。気体アンモニアは、基板の表面上で蒸発された金属と反応し、GaNのエピタキシャル層を形成する。
【0007】
成長工程中に解離されなかったアンモニアの一部は、成長室の側壁の内面を覆い、処理領域を取り囲む低温パネルに捕捉される。
【0008】
−注入工程中のアンモニアの圧力が、10−5〜10−2パスカルの間で使用され、
−成長室の内壁の温度が、ほぼ室温であり、
−これらの壁の面積が、成長室の容積より大きく、そして、
−固体へのアンモニアの吸着/離脱のエネルギーが、ほぼ75〜125kJ/molであるので、
アンモニア分子は、通常、室温で感度の良い成長室壁に容易に吸着され、分から時間の時定数で離脱される。
【0009】
アンモニアの注入が停止すると、システム内に無視できない蒸発圧とアンモニアの流れが引き起こされる。この残留アンモニアは、アンモニアが望ましくないとき、成長室内での他の処理の実行を妨げるであろう。
【0010】
例えば、シリコン基板が用いられた場合、基板の加熱時におけるアンモニア圧の重要なバックグラウンドが、シリコンを覆うその表面を窒化し、それにより基板の電気特性に悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、気体状プレカーサーが望ましくないとき、成長室内の気体状プレカーサーの圧力を圧力限界以下に効率よく下げることのできる分子線エピタキシー装置を提供することにある。この圧力限界は、プレカーサーによる成長工程の動揺を制限するか、回避する圧力以下の気体状プレカーサー圧力に該当する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するため、本発明は、材料の層で覆われた基板を備えた半導体材料のウエハを製造する分子線エピタキシー装置であって、この分子線エピタキシー装置は、さらに、
−処理領域を取り囲む成長室、この成長室は、それぞれが内面を有する側壁、下壁および上壁を備える、
−前記側壁の内面を覆う側部部分を少なくとも有する主低温パネル、
−加熱手段を備え、前記基板を支持するサンプルホルダー、
−元素または化合物の原子または分子を蒸発させることのできる少なくとも一つのエフュージョンセル、
−気体状プレカーサーを前記成長室に注入することのできるガスインジェクター、前記気体状プレカーサーの一部は、層を形成する基板表面上の元素または化合物の蒸発された元素の原子または分子と反応することができる、
−前記成長室に連結され、高い真空能力を提供することのできる排気手段
備えている。
【0013】
本発明によれば、分子線エピタキシー装置は、少なくとも成長室壁の内面を覆う断熱材囲いを備え、この断熱材囲いは、気体状プレカーサーの融点より低いか、これと同一である温度Tminを有する低温部と、高温部を備え、この高温部は、該高温部上の気体状プレカーサーの離脱速度が、気体状プレカーサーの吸着速度の少なくとも1000倍以上であるような温度より高いか、これと同一である温度Tmaxを有している。
【0014】
前記低温部の温度Tminは、気体状プレカーサーを捕捉し、これを放出しないようにするのに十分なほど低い。前記高温部の温度Tmaxは、その気体状プレカーサーの固着を防止できるほど十分に高い。
【0015】
本発明は、気体状プレカーサーが不要なとき、処理の動揺を減少し、または無くすため、通常、室温(通常、TminからTmaxの範囲に含まれない温度)である成長室壁から離脱する気体状プレカーサーから処理領域を遮蔽することを容認する。本発明は、成長室内への気体状プレカーサー(例えば、アンモニア)の残留蒸発圧を制限することを容認する。基板、エフュージョンセル、ガスインジェクターおよび圧力ゲージの汚染が防止される。
【0016】
種々の実施形態によれば、本発明はまた、以下の特徴(個別に考慮されるか、すべてのそれらの技術的に可能な組み合わせが考慮される)に関する:
−エフュージョンセルは、III族の元素または化合物の原子または分子を蒸発させることができ、ガスインジェクターは、V族の元素を含む気体状プレカーサーを注入できる、
−基板はシリコン基板であり、エフュージョンセルはガリウムを蒸発させることができ、そしてガスインジェクターは気体アンモニアを注入できる、
−前記低温部の温度Tminは、−78℃であるかそれ未満であり、前記高温部の温度Tmaxは、+100℃であるかそれを超えるかであり、
−前記断熱材囲いの低温部は、
○ 前記主低温パネルの側部部分は、側壁の内面を覆い、前記主低温パネルの側部部分には、排気手段と接続するための孔が設けられており、
○ 前記主低温パネルの下部部分は、下壁の内面を覆い、前記主低温パネルの下部部分には、エフュージョンセルのための第1の孔、およびガスインジェクターのための第2の孔が設けられており、
○ 前記主低温パネルの上部部分は、上壁の内面を覆い、前記主低温パネルの上部部分には、前記サンプルホルダーが横切る孔が設けられており、
−前記排気手段は、排気ダクトを備えており、前記断熱材囲いの低温部は、排気ダクトの壁の内面を覆う低温パネルを備えており、
−前記断熱材囲いは、成長室壁の内面およびポンプウエルの排気ダクトの少なくとも80%を覆っており、
−前記エフュージョンセルは、シャッターを備え、前記ガスインジェクターは、加熱手段を備えており、前記断熱材囲いの高温部は、前記エフュージョンセル、前記ガスインジェクター、前記サンプルホルダーおよびエフュージョンセルのシャッターを含んでおり、
−前記分子線エピタキシー装置は、第2低温パネルを備えており、前記主低温パネルの側部部分は、上方端部を備えており、前記断熱材囲いの低温部は、主低温パネルの側部部分の上方端部に連結した第1熱ウイング、および第2低温パネルの外壁に連結した第2熱ウイングを備えており、これらの第1および第2熱ウイングは、横方向に延び、第2低温パネルを取り囲み、そして処理領域を成長室の上壁から隔離するため互いに対し近接しており、
−前記断熱材囲いの低温部は、主低温パネルの下部部分の第2孔内に配置され、該第2孔から延びる第4熱ウイングを備え、
−前記断熱材囲いの高温部は、ガスインジェクターに連結された第3熱ウイングを備え、該第3熱ウイングは、主低温パネルの下部部分の第2孔と成長室の下壁の内面との間に配置されているとともに、処理領域を成長室の下壁の内面から隔離するようにガスインジェクターを取り囲んでおり、
−前記断熱材囲いは、間隙dにより成長室壁から分離されており、これによって前記断熱材囲いの低温部上の凝集されたプレカーサーが前記成長室壁に接触しないようになっており、
−前記サンプルホルダーは、該サンプルホルダーと第2低温パネルの下方端部の間の熱交換を制限しあるいは回避するため、第2低温パネルの下方端部より低くされている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の記述は、以下の図面によって表される。
【図1】本発明の実施形態による分子線エピタキシー装置を示す図である。
【図2】本発明の実施形態による熱ウイングを示す図である。
【図3】本発明の他の実施形態による熱ウイングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施形態による分子線エピタキシー装置を示す。
本分子線エピタキシー装置は、処理領域2を取り囲む成長室1を備えている。この成長室1は、側壁3、下壁4および上壁5を備えている。これらの壁はそれぞれが内面を有する。成長室の側壁3、下壁4および上壁5は、閉じたシリンダーの一般的な形状を有する単一のアッセンブリを形成する。
【0019】
本分子線エピタキシー装置は、前記側壁3の内面を覆う側部部分10を少なくとも有する主低温パネルを備えている。この主低温パネル10は、例えば液体窒素のような低温流体で冷却されている。低温流体としてはグリコールも使用できる。主低温パネルの側部部分10は、シリンダー形状を有していることが好ましい。
【0020】
本分子線エピタキシー装置は、シリンダー形状を有する第2低温パネル7によって最終的に取り囲まれうるサンプルホルダー6を備えている。このサンプルホルダー6は、成長室1の頂部に配置され、基板を支持する。このサンプルホルダー6は、基板を300℃から1100℃に加熱する加熱手段を備えている。
【0021】
本分子線エピタキシー装置は、元素または化合物の原子または分子を蒸発させることのできる少なくとも一つのエフュージョンセル8、および気体状プレカーサーを前記成長室に注入することのできるガスインジェクター9を備えている。これらのエフュージョンセル8およびガスインジェクター9は、成長室1の底部に配置されている。
【0022】
前記気体状プレカーサーの一部は、例えばGANのような材料のエピタキシャル層を形成する基板表面上の元素または化合物の蒸発された原子または分子と反応することができ、気体状プレカーサーの他の部分は消費されない。
【0023】
前記基板は、例えば、シリコン テンプレート、シリコンカーバイド テンプレート、サファイヤ テンプレート、窒化アルミニウム テンプレート、ダイアモンド テンプレート、窒化ガリウム テンプレートとすることができる。
【0024】
例えば、蒸発されるべき元素または化合物の原子または分子は、III族の金属とすることができ、注入されるべき元素は、V族の元素とすることができる。
【0025】
本分子線エピタキシー装置は、好ましくは、III族の元素がガリウムであり、気体状プレカーサーがアンモニア(NH)であるV族の元素を含むとき、シリコン基板の表面上にGANのエピタキシャル層を形成するために使用される。
【0026】
各エフュージョンセル8は、可動シャッター(図示せず)を備え、そして種々の材料、例えばアルミナで形成され得る。
【0027】
本分子線エピタキシー装置は、成長室1に接続され、高い真空能力を提供できる排気手段11を備えている。
【0028】
この排気手段11は、壁15を有する排気ダクト30を備えることができる。この排気ダクト30は、第1端部12により排気装置21に接続され、第2端部13が成長室1内に出現している。
【0029】
この排気装置21は、副ポンプと協働する主ポンプとすることができる。
【0030】
主低温パネルの測部部分10には、排気手段11の第2端部13の先端に配置された孔22が設けられている。
【0031】
本発明の実施形態によれば、分子線エピタキシー装置は、少なくとも成長室壁3,4,5の内面を覆う断熱材囲い14を備えている。
【0032】
この断熱材囲い14は、気体状プレカーサーが望ましくないとき、成長室1内の気体状プレカーサーの部分圧を制限するため、処理領域2の周囲での気体状プレカーサーの吸着/離脱変化プロセスを制限するか回避するための温度を有する低温部と高温部を備えている。
【0033】
断熱材囲い14は、処理領域2を成長室壁3,4,5の内面から隔離するため、成長室壁3,4,5の内面を完全に覆っているか、またはほとんど覆っている。
【0034】
低温部の温度Tminは、該低温部上で消滅することのない気体状プレカーサーを捕捉するために、気体状プレカーサーの融点より低いか、これと同一である。
【0035】
低温部の温度Tminは、離脱の時定数が処理領域2でのアンモニアの無視できるほどの流れを引き起こす程度に高いような温度である。この温度は、例えばアンモニアである気体状プレカーサーの融点より少なくとも低く無ければならない。
【0036】
例えば、−78℃であるアンモニアの融点より低い温度では、離脱の時定数は、室温に比べて5桁小さい。したがって、処理領域2への汚染流れは、このファクター100,000により減少される。この低温部の温度は、アンモニアを捕捉し、放出させないように十分に低くなければならない。
【0037】
有利には、液体窒素の温度(−196℃)において、12桁のゲインがある。
【0038】
気体アンモニアのほとんどが、低温部において捕捉される。アンモニアのための断熱材囲い14の低温部の排気容量は、総排気容量の約99%である。低温部に捕捉されなかった残余の種は、窒素、カーボン、水、水素等であり、これらのものは排気手段11によって吸引されたものである。
【0039】
高温部の温度Tmaxは、該高温部上の気体状プレカーサーの離脱速度が、気体状プレカーサーの吸着速度の少なくとも1000倍以上であるような温度である。換言すれば、高温部の温度Tmaxは、その気体状プレカーサーの固着を防止できるほど十分に高い。
【0040】
高温部の温度Tmaxは、気体状プレカーサーが高温部に吸着するのを制限するため、該気体状プレカーサーの離脱の時定数が工程間の遷移時間より小さくなる温度であるか、またはこれより高い。
【0041】
典型的には、遷移時間が分の範囲であるとすると、離脱の時定数は、秒より小さくなければならない。具体的には、ステンレススチールまたはタンタルのような通常の材料では、温度Tmaxは+100℃以上である必要がある。
【0042】
要約すると、気体状プレカーサーとしてアンモニアが使用される場合には、低温部の温度Tminは−78℃であるかまたはそれ未満であり、そして高温部の温度Tmaxは+100℃であるかまたはそれを超える。−78℃と+100℃の間の温度を有する断熱材囲い14の表面は、制限され、そして好ましくは排除される。換言すれば、断熱材囲い14の温度は、TminとTmax(アンモニアについては−78℃と+100℃)の範囲を含まない。
【0043】
これらの温度は、例えば酸素である他の気体状プレカーサーを用いる場合には、異なってくる。
【0044】
アンモニアが必要ないとき、すなわち成長室1内への気体状アンモニアの注入の前後で、アンモニアの残留圧力が10−7パスカル未満であるべきである。これは、成長工程が乱されないか、または停止されない圧力より低い限界圧力である。アンモニアの残留圧力は、約10−8パスカルであることが好ましい。比較のため、成長工程中、気体状プレカーサーが注入されているとき、アンモニアの残留圧力は約10−5パスカルである。
【0045】
主低温パネルは、側壁3の内面を覆う側部部分10、下壁4の内面を覆う下部部分23、および上壁5の内面を覆う上部部分26を備えている。
【0046】
断熱材囲い14の低温部は、主低温パネルの側部部分10、下部部分23および上部部分26を含んでいる。
【0047】
主低温パネルの下部部分23には、エフュージョンセル8のための第1孔24、およびガスインジェクター9のための第2孔25が設けられている。
【0048】
主低温パネルの上部部分26には、サンプルホルダー6、ひいては該サンプルホルダーを取り囲む第2低温パネル7が横切る孔27が設けられている。
【0049】
他の可能な実施形態においては、断熱材囲い14の低温部は、排気手段11の排気ダクト30の壁15内面を完全に覆うか、またはほとんど覆う低温パネル16を備えている。
【0050】
本明細書において、「覆う」とは、低温パネルが、壁の内面と低温パネルの間に間隙dを持って、壁に沿って配置されていることを意味し、これによって低温部上の凝集されたプレカーサーが該壁に接触しないようになっている。この間隙dは、0.5cm〜5cmの間である。
【0051】
好ましくは、成長室1の主低温パネルの側部部分10、主低温パネルの下部部分23および主低温パネルの上部部分26は、単一のアッセンブリを形成し、このアッセンブリ内には、低温流体が循環する。
【0052】
この単一のアッセンブリは、成長室の壁3,4,5の形で適応される。
【0053】
主低温パネルの前記部分は、成長室の壁3,4,5の内面のほとんどを覆うように設計されている。この低温パネルにおける前記孔は、高温部、さらにはこの高温部が含むサンプルホルダー6、エフュージョンセル8、加熱手段を備えるガスインジェクター9およびエフュージョンセルのシャッターで満たされる。
【0054】
あるいは、主低温パネルの側部部分10、下部部分23および上部部分26は、3つの個別の低温パネルであってよい。
【0055】
図1を参照すると、室温に適合し、かつ通常、TminからTmaxの範囲に含まれない温度である成長室の壁からの直視型ではないことが有利である。
【0056】
好ましい態様では、成長室の壁の80%以上が、処理領域2に面した断熱材囲い14の高温部および低温部によって遮蔽されている。
【0057】
代替的には、主低温パネルの側部部分10は、上方端部28を備え、断熱材囲い14の低温部は、図2に示したように、主低温パネルの側部部分10の上方端部28に連結された第1熱ウイング17を備えている。
【0058】
前記断熱材囲い14の低温部は、同様に第2低温パネル7の外壁に連結した第2熱ウイング18を備えている。
【0059】
これらの第1および第2熱ウイング17,18は、横方向に延びる。第2熱ウイング18は、第2低温パネル7の外壁から横方向に延びている。これら2つの熱ウイング17,18は、第2低温パネル7を取り囲み、そして処理領域2を成長室1の上壁5から隔離するため互いに対し近接している。
【0060】
2つの熱ウイング17,18の間には、間隙29が設けられている。熱ウイング17,18は、リング形状であることが好ましい。
【0061】
第1熱ウイング17は、主低温パネルの側部部分10から第2低温パネル7の近傍まで延びている。第1熱ウイング17の端部と第2低温パネル7の壁との間には、間隙が設けられている。
【0062】
第2熱ウイング18は、第1熱ウイング17の下方に配置されている。第2熱ウイング18は、第1熱ウイング17より短く、そして第1熱ウイング17の端部と第2低温パネル7の壁の間に設けられた間隙の前面に配置されている。
【0063】
熱ウイング17,18は、熱伝導体として作用し、低温パネルによって冷却されている。
【0064】
断熱材囲い14の高温部は、ガスインジェクター9に連結した第3熱ウイング19を備えている。この第3熱ウイング19は、主低温パネルの下部部分23の第2孔25と成長室1の下壁4の内面との間に配置されている。この第3熱ウイング19は、処理領域2を成長室1の下壁4の内面から隔離するように、ガスインジェクター9を取り囲んでいる。
【0065】
第3熱ウイング19は、ガスインジェクター9の表面から延びている。この第3熱ウイング19は、リング形状とすることができる。その幅は、主低温パネルの下部部分23の第2孔25の直径にほぼ相当している。
【0066】
蒸発状態のアンモニアの循環は、第3熱ウイング19と主低温パネルの下部部分23の間で制限される。
【0067】
断熱材囲い14の低温部は、主低温パネルの下部部分23の第2孔24に挿入され、主低温パネルの下部部分23から延びる第4熱ウイング20を備えている。この第4熱ウイング20は、処理領域2を成長室1の下壁4の内面から隔離するように、ガスインジェクター9を取り囲んでいる。この第4熱ウイング20は、リング形状とすることができる。
【0068】
本発明の他の実施形態においては、サンプルホルダー6は、該サンプルホルダー6と第2低温パネル7の下端31の間の熱交換を制限するか、回避するため、第2低温パネル7の下端31より低い位置に配置されている。
【0069】
本発明は、気体状プレカーサーの注入が停止したとき、成長室1への気体状プレカーサーの残留蒸発圧力が制限されることを可能にしている。
【符号の説明】
【0070】
1 成長室
2 処理領域
3 側壁
4 下壁
5 上壁
6 サンプルホルダー
7 第2低温パネル
8 エフュ―ジョンセル
9 ガスインジェクター
10 側部部分
10 主低温パネル
11 排気手段
12 第1端部
13 第2端部
14 断熱材囲い
15 壁
16 低温パネル
17 第1熱ウイング
18 第2熱ウイング
19 第3熱ウイング
20 第4熱ウイング
21 排気装置
22 孔
23 下部部分
23 底部部分
24 第1孔
25 第2孔
26 上部部分
27 孔
28 上方端部
29 間隙
30 排気ダクト
31 下端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の層で覆われた基板を備えた半導体材料のウエハを製造する分子線エピタキシー装置であって、
−処理領域(2)を取り囲む成長室(1)、この成長室(1)は、それぞれが内面を有する側壁(3)、下壁(4)および上壁(5)を備える、
−前記側壁(3)の内面を覆う側部部分(10)を少なくとも有する主低温パネル、
−加熱手段を備え、前記基板を支持することのできるサンプルホルダー(6)、
−元素または化合物の原子または分子を蒸発させることのできる少なくとも一つのエフュージョンセル(8)、
−気体状プレカーサーを前記成長室(1)に注入することのできるガスインジェクター(9)、前記気体状プレカーサーの一部は、層を形成する基板表面上の元素または化合物の蒸発された原子または分子と反応することができる、
−前記成長室(1)に連結され、高い真空能力を提供することのできる排気手段(11)
を更に備えている分子線エピタキシー装置において、
−少なくとも成長室壁(3,4,5)の内面を覆う断熱材囲い(14)を備え、この断熱材囲い(14)は、気体状プレカーサーの融点より低いか、これと同一である温度Tminを有する低温部と、高温部を備え、この高温部は、該高温部上の気体状プレカーサーの離脱速度が、気体状プレカーサーの吸着速度の少なくとも1000倍以上であるような温度より高いか、これと同一である温度Tmaxを有している
ことを特徴とする分子線エピタキシー装置。
【請求項2】
前記エフュージョンセル(8)は、III族の元素または化合物の原子または分子を蒸発させることができ、前記ガスインジェクター(9)は、V族の元素を含む気体状プレカーサーを注入できることを特徴とする請求項1の分子線エピタキシー装置。
【請求項3】
前記基板はシリコン基板であり、前記エフュージョンセル(8)はガリウムを蒸発させることができ、そしてガスインジェクター(9)は気体アンモニアを注入できることを特徴とする請求項2の分子線エピタキシー装置。
【請求項4】
前記低温部の温度Tminは、−78℃であるかそれ未満であり、前記高温部の温度Tmaxは、+100℃であるかそれを超えるかであることを特徴とする請求項3の分子線エピタキシー装置。
【請求項5】
前記断熱材囲い(14)の前記低温部は、
−側壁(3)の内面を覆う前記主低温パネルの側部部分(10)、前記主低温パネルの側部部分(10)には、排気手段(11)と接続するための孔(22)が設けられており、
−下壁(4)の内面を覆う前記主低温パネルの下部部分(23)、前記主低温パネルの下部部分(23)には、エフュージョンセル(8)のための第1の孔(24)、およびガスインジェクター(9)のための第2の孔(25)が設けられており、
−上壁(5)の内面を覆う前記主低温パネルの上部部分(26)、前記主低温パネルの上部部分(26)には、前記サンプルホルダー(6)が横切る孔(27)が設けられている、
を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの分子線エピタキシー装置。
【請求項6】
前記排気手段(11)は、排気ダクト(30)を備えており、前記断熱材囲い(14)の低温部は、排気ダクト(30)の壁(15)の内面を覆う低温パネル(16)を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの分子線エピタキシー装置。
【請求項7】
前記断熱材囲い(14)は、成長室(1)の壁の内面およびポンプウエル(11)の排気ダクト(30)の少なくとも80%を覆っていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの分子線エピタキシー装置。
【請求項8】
前記エフュージョンセル(8)は、シャッターを備え、前記ガスインジェクター(9)は、加熱手段を備えており、前記断熱材囲い(14)の高温部は、前記エフュージョンセル(8)、前記ガスインジェクター(9)、前記サンプルホルダー(6)およびエフュージョンセルのシャッターを含んでいることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの分子線エピタキシー装置。
【請求項9】
前記分子線エピタキシー装置は、第2低温パネル(7)を備えており、前記主低温パネルの側部部分(10)は、上方端部(28)を有しており、断熱材囲い(14)の前記低温部は、主低温パネルの側部部分(10)の上方端部(28)に連結した第1熱ウイング(17)、および第2低温パネル(7)の外壁に連結した第2熱ウイング(18)を備えており、これらの第1および第2熱ウイング(17,18)は、横方向に延び、第2低温パネル(7)を取り囲み、そして処理領域(2)を成長室(1)の上壁(5)から隔離するため互いに対し近接していることを特徴とする請求項1〜8のいずれかの分子線エピタキシー装置。
【請求項10】
前記断熱材囲い(14)の低温部は、主低温パネルの下部部分(23)の第2孔(24)内に配置され、該第2孔(24)から延びる第4熱ウイングを備えていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかの分子線エピタキシー装置。
【請求項11】
前記断熱材囲い(14)の高温部は、ガスインジェクター(9)に連結された第3熱ウイング(19)を備え、該第3熱ウイング(19)は、主低温パネルの下部部分(23)の第2孔(25)と成長室(1)の下壁(4)の内面との間に配置されているとともに、処理領域(2)を成長室(1)の下壁(4)の内面から隔離するようにガスインジェクター(9)を取り囲んでいることを特徴とする請求項1〜10のいずれかの分子線エピタキシー装置。
【請求項12】
前記断熱材囲い(14)は、間隙dにより成長室壁から分離されており、これによって前記断熱材囲い(14)の低温部上の凝集されたプレカーサーが前記成長室壁に接触しないようになっていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかの分子線エピタキシー装置。
【請求項13】
前記サンプルホルダー(6)は、該サンプルホルダー(6)と第2低温パネル(7)の下端(31)の間の熱交換を制限しあるいは回避するため、第2低温パネル(7)の下端(31)より低くされていることを特徴とする請求項9〜12のいずれかの分子線エピタキシー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−530371(P2012−530371A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515501(P2012−515501)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058569
【国際公開番号】WO2010/146129
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(507354600)
【Fターム(参考)】