説明

半導体用接着部材、半導体装置及び半導体装置の製造方法

【課題】放射線で反応速度を調節でき、かつ架橋密度の調節も容易でフィルム設計裕度が向上する半導体用接着部材、半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 粘接着剤層と基材層を備える接着部材であって、前記粘接着剤層が、(A)エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤、(B)官能基を有する重量平均分子量が10万以上であるポリマー、(C)プロトン供与性化合物、(D)光酸発生剤及び(E)放射線重合性化合物を含むことを特徴とする半導体用接着部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用接着部材、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の発達に伴い電子部品の搭載密度が高くなり、マルチチップスタックドパッケージ(以下MCPと略する)と呼ばれるような、半導体チップを積層していく半導体パッケージなどの新しい形式の実装方法が採用され始め、使用される半導体ウエハの厚みもさらなる薄膜化が進んでいる。
【0003】
従来の半導体搭載基板に用いられる接着部材としては液状あるいはフィルム状の接着剤が使用されるのが一般的であるが、近年の半導体素子の小型化・高性能化に伴い、使用される支持部材にも小型化・細密化が要求されるようになってきており近年、微細加工が容易である接着フィルムが多く使われている。
【0004】
この接着フィルムは、個片貼付け方式あるいはウエハ裏面貼付け方式において使用されている。前者の個片貼付け方式の接着フィルムを用いて半導体装置を製造する場合、リール状の接着フィルムをカッティングあるいはパンチングによって個片に切り出した後その個片を支持部材に接着し、上記接着フィルム付き支持部材にダイシング工程によって個片化された半導体素子を接合して半導体素子付き支持部材を作製し、その後必要に応じてワイヤボンド工程、封止工程などを経ることによって半導体装置が得られることとなる。しかし、上記個片貼付け方式の接着フィルムを用いるためには、接着フィルムを切り出して支持部材に接着する専用の組立装置が必要であることから、銀ペースト等の液状接着剤を使用する方法に比べて製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
一方、後者のウエハ裏面貼付け方式の接着フィルムを用いて半導体装置を製造する場合、まず半導体ウエハの裏面に接着フィルムを貼付けさらに接着フィルムの他方の面に半導体ウエハを固定するための粘着フィルムを貼り合わせ、その後上記ウエハからダイシングによって半導体素子を個片化し、個片化した接着フィルム付き半導体素子を粘着剤層より剥離しそれを支持部材に接合し、その後の加熱、硬化、ワイヤボンドなどの工程を経ることにより半導体装置が得られることとなる。このウエハ裏面貼付け方式の接着フィルムは、接着フィルム付き半導体素子を支持部材に接合するため、接着フィルムを個片化する装置を必要とせず、従来の銀ペースト用の組立装置をそのままあるいは熱盤を付加するなどの装置の一部を改良することにより使用できる。そのため、接着フィルムを用いた組立方法の中で製造コストが比較的安く抑えられる方法として注目されている。
【0006】
このウエハ裏面貼付け方式の接着フィルムと共に用いられる粘着フィルムは、感圧型と紫外線硬化型に大別される。前者の感圧型粘着フィルムは通常、ポリ塩化ビニル系やポリオレフィン系のベースフィルムに粘着剤を塗布したものである。この粘着フィルムは、ダイシング工程における切断時にはダイシングソウの回転、あるいはレーザーの照射によって各素子が飛散しないような十分な粘着力が求められ、半導体用支持部材に接合する時には半導体素子を傷つけることなく基材層より剥離できる程度の低い粘着力が求められる。ところが、上記のような、相反する2つの性能を充分併せ持つ感圧型粘着フィルムがなかったことより、半導体素子のサイズや加工条件毎に粘着フィルムを切替える作業が行われていた。また素子のサイズや加工条件によって粘着力の制御が必要になることから粘着フィルムの在庫管理が複雑化していた。さらに、近年、特にCPUやメモリの大容量化が進んだ結果、半導体素子が大型化する傾向にあり、またICカードあるいはメモリーカードなどの製品にあっては使用されるメモリの薄型化が進んでいる。これらの半導体素子の大型化や薄型化に伴い、接着剤層を剥離する際に素子が割れてしまう等の問題が生じていた。
【0007】
一方、後者の紫外線硬化型粘着フィルムはダイシング時には高粘着力を有するものの、接着剤層を粘着剤層より剥離する前に紫外線を照射することにより低粘着力になる。そのため、上記感圧型粘着フィルムが有する課題が改善されることより、広く採用されるに至っている。
【0008】
さらにウエハ裏面貼付け方式の接着フィルムを用いる方法にあっては、上記ダイシング工程までに、接着剤層と粘着剤層を貼付するといった2つの貼付工程が必要であった。そのため、接着剤層と粘着剤層を予め積層した接着シートが開発されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0009】
しかし、上記接着剤層と粘着剤層を積層した接着シートを長期間保存しておくとそれぞれの硬化反応が進行し、接着性が低下する傾向がある。また粘着剤層に含まれる光重合開始剤はその物質自体が紫外線等を照射してラジカルを発生する直接解裂型を用いることが多いが、これらの化合物は反応性に優れる反面、徐々に反応・劣化が進行してしまう。また高温に加熱すると分解してしまい、半導体素子を汚染する恐れがあるため、保存安定性に優れかつ熱安定性に優れる粘接着部材が望まれている。
【特許文献1】特許第3348923号公報
【特許文献2】特開平10−335271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、放射線照射で反応速度を調節でき、かつ架橋密度の調節も容易でフィルム設計裕度が向上する半導体用接着部材、半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(1)粘接着剤層と基材層を備える接着部材であって、前記粘接着剤層が、(A)エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤、(B)官能基を有する重量平均分子量が10万以上であるポリマー、(C)プロトン供与性化合物、(D)光酸発生剤及び(E)放射線重合性化合物を含むことを特徴とする半導体用接着部材に関する。
【0012】
また、本発明は、(2)前記(B)官能基を有する重量平均分子量が10万以上であるポリマーが、エポキシ基及びイソシアネート基含有(メタ)アクリル共重合体であり、かつそのエポキシ基含有反復単位の量が0.5〜6重量%であることを特徴とする前記(1)記載の半導体用接着部材に関する。
【0013】
また、本発明は、(3)前記粘接着剤層が、(A)エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤100重量部に対し、(B)官能基を有する重量平均分子量が10万以上であるポリマーを10〜400重量部、(C)プロトン供与性化合物を0.1〜20重量部、(D)光酸発生剤を0.5〜50重量部及び(E)放射線重合性化合物を1〜50重量部含むことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の半導体用接着部材に関する。
【0014】
また、本発明は、(4)前記粘接着剤層の加熱硬化後の貯蔵弾性率が、25℃で10〜5000MPa、250℃で3〜50MPaであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の半導体用接着部材に関する。
【0015】
また、本発明は、(5)前記粘接着剤層に放射線を照射することで、前記粘接着剤層と基材層界面の接着強度を制御することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の半導体用接着部材に関する。
【0016】
また、本発明は、(6)前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の半導体用接着部材を用いて、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着してなる半導体装置に関する。
【0017】
また、本発明は、(7)前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の粘接着剤層と基材層を備える半導体用接着部材の粘接着剤層に半導体ウエハを貼り付ける工程(I)、
前記半導体ウエハをダイシングして、半導体用接着部材付き半導体素子を得る工程(II)、
前記半導体用接着部材付き半導体素子の粘接着剤層に放射線を照射して硬化する工程(III)、
前記半導体用接着部材付き半導体素子の粘接着剤層と基材層の界面において剥離して粘接着剤層付き半導体素子を得る工程(IV)、
および前記粘接着剤層付き半導体素子と半導体素子搭載用支持部材上とを接着する工程(V)、とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、放射線照射で反応速度を調節でき、かつ架橋密度の調節も容易でフィルム設計裕度が向上する半導体用接着部材、半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の半導体用接着部材は、粘接着剤層と基材層を備える接着部材であって、前記粘接着剤層が、(A)エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤、(B)官能基を有する重量平均分子量が10万以上であるポリマー、(C)プロトン供与性化合物、(D)光酸発生剤及び(E)放射線重合性化合物を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明の半導体用接着部材は、ダイシング工程では半導体素子が飛散しない程度に十分な粘着力を有し、半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に接着するために半導体素子をピックアップする時には、放射線照射により粘接着剤層と基材層の界面の接着強度を制御することで各素子を傷つけることがない程度の低い粘着力を有するという、相反する要求を満足する半導体用接着部材として作用し、かつ半導体素子と半導体搭載用支持部材とを接着するダイボンド工程ではそれらの接続信頼性を優れたものとする接着部材として作用し、ダイシングおよびダイボンドの各工程を一つの接着部材で完了することができる。
【0021】
本発明の半導体接着部材における粘接着剤層を構成する各成分について説明する。
(A)エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤
本発明において用いられるエポキシ樹脂としては、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;多官能エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;複素環含有エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂など、一般に知られているものを適用することができる。これらのなかでも、ニ官能エポキシ樹脂が好ましい。
【0022】
本発明において用いられるエポキシ樹脂硬化剤としては、通常用いられている公知の硬化剤を使用することができる。例えば、アミン類;ポリアミド;酸無水物;ポリスルフィド;三フッ化ホウ素;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSのようなフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール類;フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂またはクレゾールノボラック樹脂などのフェノール樹脂;などが挙げられる。特に吸湿時の耐電食性に優れる点で、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂またはクレゾールノボラック樹脂などのフェノール樹脂が好ましい。
【0023】
(B)官能基を有する重量平均分子量が10万以上であるポリマー
本発明において(B)成分として用いられるポリマーは、官能基を有し、重量平均分子量が10万以上のポリマーである。前記ポリマーの重量平均分子量が10万以上であることにより、半導体接着部材をシート状又はフィルム状としたときの強度、可とう性及びタック性が適当であり、また、フロー性が適当であるため配線の回路充填性を確保することができる。前記ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは30万〜300万、より好ましくは50万〜200万である。なお、本発明において、重量平均分子量とはゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値を示す。
【0024】
前記ポリマーは官能基を有しており、該官能基はポリマー鎖中に有していても、ポリマー鎖末端に有していてもよい。前記官能基としては、例えば、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。これらの中でも、耐PCT性の点でエポキシ基、イソシアネート基が好ましい。かかる官能基を有するポリマーはエポキシ基及びイソシアネート基の両方を有していることが好ましく、エポキシ基及びイソシアネート基含有(メタ)アクリル共重合体がより好ましい。
【0025】
前記官能基を有する重量平均分子量が10万以上であるポリマーにおける官能基含有反復単位の量は、0.5〜6.0重量%であることが好ましく、0.5〜5.0重量%であることがより好ましい。例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体である場合は、エポキシ基含有反復単位の量は、0.5〜6.0重量%であることが好ましく、0.5〜5.0重量%であることがより好ましく、0.8〜5.0重量%であることが特に好ましい。エポキシ基含有反復単位の量が0.5〜6.0重量%の範囲にあることにより、接着強度を確保し易く、ゲル化を防止し易くなる。
【0026】
前記官能基を有する重量平均分子量が10万以上であるポリマーは、(A)エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤と非相溶性で、海島構造をとることが好ましい。
【0027】
前記官能基を有する重量平均分子量が10万以上であるポリマーの製造方法としては、例えば、官能基を有する重合性モノマーを単独で重合する方法、官能基を有する重合性モノマー及びこれと共重合可能な他の重合性モノマーとを共重合する方法などにより得ることができる。重合方法は特に制限されず、例えば、懸濁重合、溶液重合等の方法を使用することができる。
【0028】
官能基を有する重合性モノマーとしては、1分子中に少なくとも1つの重合性基を有していればよく、1分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有するモノマーであることが好ましく、エポキシ基を有する重合性モノマー及びイソシアネート基を有する重合性モノマーの両方を用いることがより好ましい。
【0029】
エポキシ基を有する重合性モノマーとしては、例えば、アリルグリシジルエーテル、カルコングリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル;グリシジル(メタ)アクリレート、ビニル安息香酸グリシジルエステル、アリル安息香酸グリシジルエステル、ケイ皮酸グリシジルエステル、シンナミリデン酢酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル、エポキシ化ステアリルアルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのエステルなどのグリシジル又はエポキシエステル;エポキシヘキセン、リモネンオキシドなどのエポキシ化された不飽和の鎖状又は環状オレフィンなどが挙げられる。これらのなかでも、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。また、これらは、二種類以上を併用してもよい。
【0030】
(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を分子内に2個以上有する多官能(メタ)アクリレート化合物が特に好ましい。例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートや、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−イソシアヌル酸エステルトリ(メタ)アクリレートなどの3官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、二種類以上を併用してもよい。
【0031】
ヒドロキシル基を有する重合性モノマーとしては、例えば、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ビニルフェノールなどが挙げられる。これらは、二種類以上を併用してもよい。
【0032】
カルボキシル基を有する重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、プロピオール酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸;ケイ皮酸などの芳香族不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノヘキシル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノ2−エチルヘキシルなどのマレイン酸モノエステルやこれらに対応するフマル酸モノエステルなどの不飽和ジカルボン酸モノエステルなどが挙げられる。また、これらは、二種類以上を併用してもよい。
【0033】
イソシアネート基を有する重合性モノマーとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、トリジンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネ−ト、4,4’−ビフェニレンジイソシアネ−ト、1,6−ヘキサンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネア−ト)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネ−ト、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネ−ト、4−ジフェニルプロパンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−ト、水添ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアネートシクロヘキシル)メタン、テトラメチルキシリレンジイソシアネ−ト、2,5(又は2,6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、シクロヘキサンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、ウンデカントリイソシアネート、ヘキサメチレントリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びこれらイソシアネート化合物の重合体、誘導体、変性体、水素添加体等が挙げられる。前記変性体としては、イソシアヌレート変性、ビューレット変性、トリメチロールプロパン等多価アルコールでアダクト変性したものなどが挙げられる。これらのなかでも、反応性および架橋密度の点でヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどが好ましい。イソシアネート基を有する重合性モノマー1分子中のイソシアネートの好ましい官能数は2又は3である。
【0034】
アミノ基を有する重合性モノマーとしては、例えば、アリルアミン、ジアリルアミンなどのアリル化合物;4−ビニルアニリン、N−ビニルジフェニルアミンなどのビニル化合物;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類が挙げられる。また、これらは、二種類以上を併用してもよい。
【0035】
アミド基を有する重合性モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、シアセトンアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミドとその誘導体;ビニルスルホンアミド、ビニルスルホンアニリド、ビニルスルホンメチルアニリド、ビニルスルホンアセトアニリドなどのビニルスルホンアミド類が含まれる。アミド基を有する好ましい重合性化合物には、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミドが含まれる。また、これらは、二種類以上を併用してもよい。
【0036】
官能基を有する重合性モノマーと共重合可能な他の重合性モノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸エステルモノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマーなどが挙げられる。エチレン性不飽和カルボン酸エステルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸トルイルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸エトキシ化フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル等が挙げられる。これらのなかでも、(メタ)アクリルメチル、(メタ)アクリルエチル、(メタ)アクリルプロピル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステルが好ましい。エチレン性不飽和ニトリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリル等が挙げられる。これらのなかでも、アクリロニトリルが好ましい。また、これらは、二種類以上を併用してもよい。前記官能基を有する重合性モノマーと共重合可能な他の重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和カルボン酸エステルモノマーを主成分としてエチレン性不飽和ニトリルモノマーを併用することが好ましい。
【0037】
(C)プロトン供与性化合物
本発明において(C)プロトン供与性化合物と(D)光酸発生剤は光重合開始剤として作用する。(C)プロトン供与性化合物としては、放射線の照射によりプロトンを生成するものであれば特に制限はなく、例えば、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−カルボキシベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾール、1−フェニル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−ヒドロキシベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メチルチオベンゾチアゾール、2−メルカプトチアゾリン、2−メチルベンゾチアゾール、2−クロロベンゾチアゾール、ベンジルメルカプタン、2−メルカプトピリジンが挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。これらのなかでも、イミダゾール類が好ましい。
【0038】
(D)光酸発生剤
本発明において用いられる(D)光酸発生剤としては、特に制限はなく、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−マレイミドアクリル酸エチル、N−マレイミドアクリル酸プロピル、N−マレイミドアクリル酸ブチル、3−メチル−N−マレイミドアクリル酸エチル、3−メチル−N−マレイミドアクリル酸プロピル、3−メチル−N−マレイミドアクリル酸ブチル、N−フタルイミドアクリル酸エチル、N−フタルイミドアクリル酸プロピル、N−フタルイミドアクリル酸ブチル、3−フェニル−N−マレイミドアクリル酸エチル、3−フェニル−N−マレイミドアクリル酸プロピル、3−フェニル−N−マレイミドアクリル酸ブチル、N−マレイミドメタクリル酸エチル、N−マレイミドメタクリル酸プロピル、N−マレイミドメタクリル酸ブチル、3−メチル−N−マレイミドメタクリル酸エチル、3−メチル−N−マレイミドメタクリル酸プロピル、3−メチル−N−マレイミドメタクリル酸ブチル、N−フタルイミドメタクリル酸エチル、N−フタルイミドメタクリル酸プロピル、N−フタルイミドメタクリル酸ブチル、3−フェニル−N−マレイミドメタクリル酸エチル、3−フェニル−N−マレイミドメタクリル酸プロピル、3−フェニル−N−マレイミドメタクリル酸ブチル、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシフェニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシナフチル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロ−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(3’−メトキシスチリル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(3’−クロロ−4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
(E)放射線重合性化合物
本発明において用いられる(E)放射線重合性化合物としては、紫外線や電子ビームなどの放射線が照射されると重合・硬化する化合物であればよく、特に制限は無いが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、ペンテニルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレートなどを使用することができる。これらの放射線重合性化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
本発明における粘接着剤層は、前記(A)エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤100重量部に対し、(B)官能基を有する重量平均分子量が10万以上であるポリマーを10〜400重量部、(C)プロトン供与性化合物を0.1〜20重量部、(D)光酸発生剤を0.5〜50重量部及び(E)放射線重合性化合物を1〜50重量部含むことが好ましい。前記(B)官能基を有する重量平均分子量が10万以上であるポリマーが10重量部未満ではフィルムにした際の成型性および耐PCT性が劣る傾向にあり、400重量部を超えると弾性率およびフィルム凝集力が低下する傾向にある。前記(C)プロトン供与性化合物が0.1重量部未満では反応が十分に進行しない傾向にあり、20重量部を超えると保存安定性が低下するため作業性が低下する傾向にある。同様に前記(D)光酸発生剤が0.5重量部未満では反応が十分に進行しない傾向にあり、50重量部を超えると保存安定性が低下するため作業性が低下する傾向にある。前記(E)放射線重合性化合物が1〜50重量部の範囲を超えると光硬化時の反応性を制御できない傾向にある。前記粘接着剤層は、前記(A)エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤100重量部に対し、(B)官能基を有する重量平均分子量が10万以上であるポリマーを100〜300重量部、(C)プロトン供与性化合物を0.3〜3重量部、(D)光酸発生剤を10〜20重量部及び(E)放射線重合性化合物を10〜40重量部含むことがより好ましい。
【0041】
本発明の半導体用接着部材における粘接着剤層の厚みは、特に制限はないが、5〜250μmが好ましい。前記粘接着剤層の厚みが5μmより薄いと応力緩和効果が乏しくなる傾向があり、250μmより厚いと経済的でなくなる上に、半導体装置の小型化の要求に応えられない可能性がある。
【0042】
また、本発明の半導体用接着部材における粘接着剤層は、所望の厚さを得るために、粘接着剤層を2層以上貼り合わせることもできる。この場合には、粘接着剤層同士の剥離が発生しにくいような貼り合わせ条件が必要である。
【0043】
一方、本発明の半導体用接着部材における粘接着剤層としては、(A)エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤および(B)官能基を有する重量平均分子量が10万以上であるポリマーからなる接着剤層と、(C)プロトン供与性化合物、(D)光酸発生剤及び(E)放射線重合性化合物等からなる粘着剤層と、から構成される2層構造としてもよい。
【0044】
また、本発明の半導体用接着部材における粘接着剤層は、放射線、例えば紫外線を照射して、光重合により基材層との接着力低下させた後加熱硬化した段階で、25℃での貯蔵弾性率は10〜5000MPa、250℃での貯蔵弾性率は3〜50MPaであることが好ましい。さらに、25℃での貯蔵弾性率は、20〜1900MPaであることがより好ましく、50〜1800MPaであることが特に好ましい。また、250℃での貯蔵弾性率は、5〜50MPaであることがより好ましく、7〜50MPaであることが特に好ましい。貯蔵弾性率が上記の範囲にあると、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材との熱膨張係数の差によって発生する熱応力を緩和させる効果が保たれ、剥離やクラックの発生を抑制できるとともに、接着剤の取り扱い性に優れ、リフロークラックの発生を抑制し易くなる。上記紫外線の照射は、通常、10mW/cmの照度で200mJ/cm程度の条件で行う。上記加熱硬化の条件は粘接着剤層の組成によっても異なるが、通常170℃、60分である。本発明において貯蔵弾性率は、例えば、動的粘弾性測定装置(レオロジ社製、DVE−V4)を使用し、粘接着剤層硬化物に引張荷重をかけて、周波数10Hz、昇温速度5〜10℃/minの条件で−50℃から300℃まで測定する、温度依存性測定モードによって測定できる。
【0045】
(カップリング剤)
また、本発明の半導体用接着部材における粘接着剤層には、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を添加することができる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系等が挙げられ、これらのなかでも添加効果が高い点でシラン系カップリング剤が好ましい。
【0046】
上記シラン系カップリング剤としては、特に制限はなく、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピル−トリス(2−メトキシ−ジエトキシ)シラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアミノプロピルトリメトキシシラン、3−4,5−ジヒドロイミダゾール−1−イル−プロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルジメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、アミルトリクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリ(メタクリロイルオキシエトキシ)シラン、メチルトリ(グリシジルオキシ)シラン、N(β−N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、γ−クロロプロピルメチルジクロロシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、トリメチルシリルイソシアネート、ジメチルシリルイソシアネート、メチルシリルトリイソシアネート、ビニルシリルトリイソシアネート、フェニルシリルトリイソシアネート、テトライソシアネートシラン、エトキシシランイソシアネートなどを使用することができ、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
また、チタン系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(アミノエチル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、テトラメチルオルソチタネート、テトラエチルオルソチタネート、テトラプロピルオルソチタネート、テトライソブチルオルソチタネート、ステアリルチタネート、クレシルチタネートモノマー、クレシルチタネートポリマー、ジイソプロポキシ−ビス(2,4−ペンタジオネート)チタニウム(IV)、ジイソプロピル−ビス−トリエタノールアミノチタネート、オクチレングリコールチタネート、テトラ−n−ブトキシチタンポリマー、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレートポリマー、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレートなどを使用することができ、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
アルミニウム系カップリング剤としては、例えば、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウム−モノイソプロポキシモノオレオキシエチルアセトアセテート、アルミニウム−ジ−n−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウム−ジ−iso−プロポキシド−モノエチルアセトアセテート等のアルミニウムキレート化合物、アルミニウムイソプロピレート、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウム−sec−ブチレート、アルミニウムエチレート等のアルミニウムアルコレートなどを使用することができ、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
上記カップリング剤の使用量は、その効果や耐熱性及びコストの面から、(A)エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤100重量部に対して、0.01〜10重量部とすることが好ましい。
【0050】
(イオン捕捉剤)
本発明の半導体用接着部材における粘接着剤層には、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性をよくするために、さらにイオン捕捉剤を添加することもできる。このようなイオン捕捉剤としては、特に制限はなく、例えば、銅がイオン化して溶け出すのを防止する銅害防止剤として知られているトリアジンチオール化合物、ビスフェノール系還元剤等の化合物、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンなどの化合物、ジルコニウム系、アンチモンビスマス系、マグネシウムアルミニウム化合物等の無機イオン吸着剤などが挙げられる。
【0051】
上記イオン捕捉剤の使用量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の点から、(A)エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤100重量部に対して、0.01〜5重量部とすることが好ましい。また接着剤層と粘着剤層との2層構造とする場合には、上記イオン捕捉剤の使用量は、接着剤層には、(A)エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤100重量部に対して、0.1〜10重量部とすることが好ましく、粘着剤層には、(E)放射線重合性化合物100重量部に対して、0.01〜100重量部とすることが好ましい。
【0052】
(無機フィラー)
本発明の半導体用接着部材における粘接着剤層には、その取り扱い性向上、熱伝導性向上、溶融粘度の調整およびチキソトロピック性付与などを目的として、無機フィラーを添加することもできる。無機フィラーとしては、特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカ、疎水性フュームドシリカ等が挙げられる。無機フィラーの形状は特に制限されるものではない。これらの無機フィラーは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。これらのなかでも、熱伝導性向上のためには、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカが好ましい。また、溶融粘度の調整やチキソトロピック性の付与の目的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカなどが好ましい。また、耐熱性及び凝集力の向上のためには、疎水性フュームドシリカが好ましい。
【0053】
また、無機フィラーの平均粒径は0.005μm〜1μmであることが好ましく、これより小さくても大きくても接着性が低下する可能性がある。
【0054】
無機フィラーの配合量は、粘接着剤層を構成する組成物100重量部に対して1〜40重量部が好ましい。前記無機フィラーの配合量が1重量部未満だと添加効果が得られない傾向があり、40重量部を超えると、粘接着剤層の貯蔵弾性率の上昇、接着性の低下、ボイド残存による電気特性の低下等の問題を起こす傾向がある。
【0055】
本発明の半導体用接着部材は、粘接着剤層と基材層を備えてなるものである。
粘接着剤層を構成する組成物は、上記の成分を溶剤とともに混合し、溶解ないし分散することによりワニスとして調製することができるが、粘接着剤層に無機フィラーを添加した際のワニスの製造には、無機フィラーの分散性を考慮して、らいかい機、3本ロール、ボールミル及びビーズミルなどを使用するのが好ましく、これらを組み合せて使用することもできる。また、無機フィラーと低分子量物をあらかじめ混合した後、高分子量物を配合することによって、混合する時間を短縮することも可能となる。また、ワニスを調製した後、真空脱気等によってワニス中の気泡を除去することもできる。
【0056】
上記のワニス化に用いることのできる溶剤としては、特に限定されないが、フィルム作製時の揮発性などを考慮すると、例えば、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどの比較的低沸点の溶媒を使用するのが好ましい。また、塗膜性を向上させるなどの目的で、たとえば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノンなどの比較的高沸点の溶媒を使用することもできる。これらの溶媒は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
次いで、得られたワニスを基材層に塗布し、乾燥することにより半導体用接着部材を得ることができる。
【0058】
また、本発明の半導体用接着部材は、例えば、粘接着剤層を構成する組成物を溶剤に溶解ないし分散してワニスとしたものを、まず、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムのような支持フィルム上に塗布、加熱し溶剤を除去することにより粘接着剤層を支持フィルム上に形成し、この粘接着剤層を基材層に貼り合せることにより、支持フィルムと基材層の間に粘接着剤層が存在する半導体用接着部材を作製することもできる。この場合には、支持フィルムをカバーフィルムとして用いることもできる。
【0059】
基材層上または支持フィルム上へのワニスの塗布方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0060】
本発明の半導体用接着部材における上記基材層としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ酢酸ビニルフィルムなどのプラスチックフィルムを使用することができ、これらプラスチックフィルムは表面を離型処理して使用することもできる。粘接着剤層に放射線を照射して硬化する際に、放射線は基材層の面側から照射するため、紫外線を用いる場合は基材層は光透過性である必要があり、電子線を用いる場合は基材層は必ずしも光透過性である必要はない。
【0061】
基材層の厚みは、特に制限はないが、30〜300μmが好ましく、40〜250μmがより好ましく、50〜200μmが特に好ましい。前記基材層の厚みが30μmより薄いと、ダイシング時に基材層まで切断され易くなり、チップが飛散し易くなる傾向があり、300μmより厚いと経済的でなくなる。
【0062】
本発明の半導体装置は、本発明の半導体用接着部材を用いて、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着してなるものである。
【0063】
本発明の半導体装置を製造する方法は、本発明の粘接着剤層と基材層を備える半導体用接着部材の粘接着剤層に半導体ウエハを貼り付ける工程(I)、
前記半導体ウエハをダイシングして、半導体用接着部材付き半導体素子を得る工程(II)、
前記半導体用接着部材付き半導体素子の粘接着剤層に放射線を照射して硬化する工程(III)、
前記半導体用接着部材付き半導体素子の粘接着剤層と基材層の界面において剥離して粘接着剤層付き半導体素子を得る工程(IV)、
および前記粘接着剤層付き半導体素子と半導体素子搭載用支持部材上とを接着する工程(V)、とを含むことを特徴とする。
【0064】
以下、本発明の半導体装置の製造方法について、図1、2を参照して説明する。
【0065】
工程(I)として、本発明の粘接着剤層と基材層を備える半導体用接着部材の粘接着剤層に半導体ウエハを貼り付ける。基材層1、粘接着剤層2および支持フィルム3を備えた本発明の半導体用接着部材(図1)から支持フィルム3を剥がし、粘接着剤層2の上面にダイシング加工すべき半導体ウエハを貼着する。
【0066】
次いで、工程(II)として、前記半導体ウエハをダイシングして、半導体用接着部材付き半導体素子を得る。前記半導体ウエハをダイシングし、洗浄、乾燥する。この際、粘接着剤層2により半導体ウエハは半導体用接着部材に充分に保持されているので、半導体ウエハが脱落することはない。
【0067】
次いで、工程(III)として、前記半導体用接着部材付き半導体素子の粘接着剤層に放射線を照射して硬化する。放射線を粘接着剤層2に照射し、放射線重合性を有する粘接着剤層2の一部又は大部分を重合硬化せしめる。本発明において照射する放射線は、150〜750nmの波長域を持つ活性光線であり、紫外線、遠紫外線、近紫外線、可視光線、電子線、赤外線、近赤外線などがある。これらの中では、特に紫外線であることが好ましい。紫外線の発生源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、エキシマランプ等が挙げられる。放射線の照射量は、10〜500mJ/cmであることが好ましく、100〜500mJ/cmであることがより好ましい。前記照射量が10mJ/cm未満ではタック性が低下せずに、粘接着剤層付き半導体素子を形成する際に基材層と粘接着剤層の剥離が困難になる傾向があり、500mJ/cmを超えると反応が進行しすぎるために、その後の工程で接着力が低下する傾向がある。放射線照射と同時あるいは放射線照射後に硬化反応を促進する目的で加熱を併用しても良い。粘接着剤層2への放射線照射は基材層1の面から行う。したがって、前述のように、放射線として紫外線を用いる場合には基材層1は光透過性である必要があるが、放射線として電子線を用いる場合には基材層1は必ずしも光透過性である必要はない。
【0068】
次いで、工程(IV)として、前記半導体用接着部材付き半導体素子の粘接着剤層と基材層の界面において剥離して粘接着剤層付き半導体素子を得る。ピックアップすべき半導体素子4を、例えば吸引コレット等により順次ピックアップする。この際、ピックアップすべき半導体素子4を基材層1の下面から、例えば針扞等により突き上げることもできる。半導体素子4と粘接着剤層2との間の接着強度は、粘接着剤層2と基材層1との間の接着強度よりも大きいため、半導体素子4のピックアップを行うと、粘接着剤層2が半導体素子4の下面に付着した状態で剥離し、粘接着剤層付き半導体素子を容易に得ることができる。
【0069】
次いで、工程(V)として、前記粘接着剤層付き半導体素子と半導体素子搭載用支持部材上とを接着する。各半導体素子4を粘接着剤層2を介して半導体素子搭載用支持部材5に載置し、加熱する。加熱により粘接着剤層2は接着強度が発現し、半導体素子4と半導体素子搭載用支持部材5との接着が完了する(図2)。次いで、ボンディングや樹脂封止などを行うことにより半導体装置が得られる。半導体搭載用支持部材としてはリードフレーム、配線基板、レジストなどの基板、半導体チップを積層していく際の半導体チップなどがあげられる。前記の半導体搭載基板用配線基板に用いる配線基板としては、セラミック基板や有機基板など基板材質に限定されることなく用いることができる。セラミック基板としては、アルミナ基板、窒化アルミ基板などを用いることができる。有機基板としては、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含漬させたFR−4基板、ビスマレイミド−トリアジン樹脂を含漬させたBT基板、さらにはポリイミドフィルムを基材として用いたポリイミドフィルム基板などを用いることができる。配線基板における配線の形状としては、片面配線、両面配線、多層配線いずれの構造でも良く、必要に応じて電気的に接続された貫通孔、非貫通孔を設けても良い。さらに、配線が半導体装置の外部表面に現れる場合には、保護樹脂層を設けることが好ましい。
【0070】
かくして得られる本発明の半導体装置の構造としては、半導体素子の電極と半導体素子搭載用支持部材とがワイヤーボンディングで接続されている構造、半導体素子の電極と半導体素子搭載用支持部材とがテープオートメーテッドボンディング(TAB)のインナーリードボンディングで接続されている構造等があるが、これらに限定されるものではなく、何れの場合でも効果がある。
【0071】
半導体素子としては、IC、LSI、VLSI等一般の半導体素子を使用することができる。
【0072】
半導体素子と半導体搭載用支持部材の間に発生する熱応力は、半導体素子と半導体搭載用支持部材の面積差が小さい場合に著しいが、本発明の半導体装置は低弾性率の粘接着剤層を有する半導体用接着部材を用いることにより、その熱応力を緩和して信頼性を確保する。これらの効果は、半導体素子の面積が、半導体搭載用支持部材の面積の70%以上である場合に非常に有効に現れるものである。また、このように半導体素子と半導体搭載用支持部材の面積差が小さい半導体装置においては、外部接続端子はエリア状に設けられる場合が多い。
【0073】
また、本発明の半導体用接着部材の特性として、前記接着部材を半導体搭載用支持部材の所望の位置に熱圧着する工程や、ワイヤーボンディングで接続する工程等、加熱される工程において、粘接着剤層からの分解物などの揮発分を抑制できる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
[半導体用接着部材の作製]
(実施例1)
4Lガラス釜を用い、純水および、分散剤としてポリビニルアルコールを加え、モノマーとしてブチルアクリレート44重量部、エチルアクリレート27重量部、グリシジルメタクリレート3重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート13重量部及びアクリロニトリル13重量部を加え、触媒としてラウロイルパーオキサイドを加え、連鎖移動剤としてノルマルオクチルメルカプタンを加え、60℃の湯浴で重合させて、アクリルゴム(1)を得た。アクリルゴム(1)の重量平均分子量(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値)は50万であった。
【0076】
エポキシ樹脂としてYDF−8170C(東都化成株式会社製商品名、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)55重量部、フェノール樹脂としてミレックスXLC−LL(三井化学株式会社製商品名、キシレン変性クレゾールノボラック型フェノール樹脂)45重量部、シランカップリング剤としてNUC A−1160(日本ユニカー株式会社製商品名、γ―ウレイドプロピルトリエトキシシラン)0.7重量部、プロトン供与性化合物としてアンテージMB(川口化学株式会社製商品名、2−メルカプトベンゾイミダゾール)1.2重量部、光酸発生剤としてイルガキュア651(チバ・ガイギー株式会社製商品名、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)18重量部、放射線重合性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学株式会社製商品名、NKエステルA−DPH)30重量部、無機フィラーとしてR−972(日本アエロジル株式会社製商品名、疎水性フュームドシリカ)10重量部からなる組成物に、シクロヘキサノンを加えて攪拌混合し、さらにビーズミルを用いて90分混練した。これにアクリルゴム(1)200重量部を混合し、真空脱気してワニスを得た。
【0077】
ワニスを厚さ75μmの表面を離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、140℃で5分間加熱乾燥して、膜厚が75μmのBステージ状態の塗膜を形成し、基材層と粘接着層を備えた半導体用接着部材(1)を作製した。
【0078】
(実施例2)
4Lガラス釜を用い、純水および、分散剤としてポリビニルアルコールを加え、モノマーとしてブチルアクリレート44重量部、エチルアクリレート27重量部、グリシジルメタクリレート3重量部、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン5重量部及びアクリロニトリル13重量部を加え、触媒としてラウロイルパーオキサイドを加え、連鎖移動剤としてノルマルオクチルメルカプタンを加え、60℃の湯浴で重合させて、アクリルゴム(2)を得た。アクリルゴム(2)の重量平均分子量(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値)は30万であった。
【0079】
アクリルゴム(1)に替えてアクリルゴム(2)を用いること以外は、実施例1と同様に操作して半導体用接着部材(2)を作製した。
【0080】
(実施例3)
4Lガラス釜を用い、純水および、分散剤としてポリビニルアルコールを加え、モノマーとしてブチルアクリレート44重量部、エチルアクリレート27重量部、グリシジルメタクリレート3重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート6重量部及びアクリロニトリル13重量部を加え、触媒としてラウロイルパーオキサイドを加え、連鎖移動剤としてノルマルオクチルメルカプタンを加え、60℃の湯浴で重合させて、アクリルゴム(3)を得た。アクリルゴム(3)の重量平均分子量(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値)は30万であった。
【0081】
アクリルゴム(1)に替えてアクリルゴム(3)を用いること以外は、実施例1と同様に操作して半導体用接着部材(3)を作製した。
【0082】
(比較例1)
4Lガラス釜を用い、純水および、分散剤としてポリビニルアルコールを加え、モノマーとしてブチルアクリレート44重量部、エチルアクリレート27重量部、グリシジルメタクリレート3重量部及びアクリロニトリル13重量部を加え、触媒としてラウロイルパーオキサイドを加え、連鎖移動剤としてノルマルオクチルメルカプタンを加え、60℃の湯浴で重合させて、アクリルゴム(4)を得た。アクリルゴム(4)の重量平均分子量(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値)は50万であった。
【0083】
アクリルゴム(1)に替えてアクリルゴム(4)を用いること以外は、実施例1と同様に操作して半導体用接着部材(4)を作製した。
【0084】
(比較例2)
実施例1で作製したアクリルゴム(1)の代わりにHTR−860P(ナガセケムテックス株式会社製、重量平均分子量80万)を用いること以外は、実施例1と同様に操作して半導体用接着部材(5)を作製した。
【0085】
[半導体用接着部材の評価]
上記により作製した半導体用接着部材(1)〜(5)を用いて、以下の方法により評価した。
【0086】
(貯蔵弾性率)
4mm×30mmのサイズに裁断した半導体用接着部材に、照度10mW/cmで200mJ/cmの紫外線を照射し、次いで、170℃、60分、対流乾燥機で硬化した際の、粘接着剤層硬化物の貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置(レオロジ社製、「DVE−V4」)を使用し、粘接着剤硬化物に引張荷重をかけて、周波数10Hz、昇温速度10℃/分の条件で−50℃から300℃まで測定する、温度依存性測定モードによって温度250℃の値を測定した。
【0087】
(ピール強度)
半導体用接着部材に紫外線反応型のダイシングテープを貼合し、25mm×50mmに裁断したサンプルのT字ピール強度を、オートグラフ(島津製作所製)を用いて300mm/secの条件で測定した。また、このサンプルに照度10mW/cmで照射量200mJ/cmの紫外線を照射し、照射後のT字ピール強度を上記と同様に測定した。
【0088】
(ピックアップ性)
半導体用接着部材の粘接着剤層に、ダイシング加工すべきテスト用回路が形成された厚さ75μmの半導体ウエハを80℃でラミネートにて貼着した。ダイシング装置上に固定して、10mm/秒の速度で5mm×5mmにダイシングし、洗浄、乾燥することにより半導体用接着部材付き半導体素子を得た。次いで、照度10mW/cmで照射量200mJ/cmの紫外線(365nm)を基材層側から照射して粘接着剤層を硬化させた。紫外線照射後、吸引コレットを用いて粘接着層付き半導体素子を基材層からピックアップを行い、ピックアップできた確率(%/チップ)でピックアップ性を評価した。
(熱時接着力)
上記ピックアップ性の評価で得られた粘接着層付き半導体素子を有機基板(PSR−4000、SR−AUS5、0.2mmt)に120℃、0.1MPa、5秒の条件でダイボンディングし、175℃、3時間の後硬化を加え評価サンプルを得た。その評価サンプルを265℃の熱板上で20秒保持した後、速度:50μm/秒、高さ:50μmの測定条件で半導体素子と有機基板との熱時接着力を「Series4000」(製品名、Dage社製)により測定した。また、85℃85%の恒温恒湿槽に48時間放置した後、同様に接着強度を測定し、これを吸湿後とした。
【0089】
(耐PCT)
5mm角に切断された半導体用接着部材付き半導体素子に、照度10mW/cmで表1に示す所定量の紫外線(365nm)を基材層側から照射して粘接着剤層を硬化させた。紫外線照射後、吸引コレットを用いてピックアップして得た粘接着層付き半導体素子と、厚み25μmのポリイミドフィルムを基材に用いた配線基板を貼り合せ、半導体装置サンプル(片面にはんだボールを形成)を作製した。サンプル表面の最高温度が260℃でこの温度を20秒間保持するように温度設定したIR(赤外線)リフロー炉にサンプルを通し、室温(25℃)で放置することにより冷却する処理を2回繰り返したサンプル中のクラックの発生を目視と超音波顕微鏡で視察した。試料10個すべてでクラックの発生していないものを○とし、1個以上発生していたものを×とした。
【表1】

【0090】
本発明により、ポリマ分子内に二重結合を持たせ、熱及びUVで反応速度を調節でき、かつ架橋密度の調節も容易でフィルム設計裕度が向上する半導体装置、その製造方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明に係る基材層と粘接着剤層とを備えた半導体用接着部材の一例の断面図である。
【図2】粘接着剤層付きの半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に熱圧着した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1 基材層
2 粘接着剤層
3 支持フィルム
4 半導体素子
5 半導体素子搭載用支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘接着剤層と基材層を備える接着部材であって、前記粘接着剤層が、(A)エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤、(B)官能基を有する重量平均分子量が10万以上であるポリマー、(C)プロトン供与性化合物、(D)光酸発生剤及び(E)放射線重合性化合物を含むことを特徴とする半導体用接着部材。
【請求項2】
前記(B)官能基を有する重量平均分子量が10万以上であるポリマーが、エポキシ基及びイソシアネート基含有(メタ)アクリル共重合体であり、かつそのエポキシ基含有反復単位の量が0.5〜6重量%であることを特徴とする請求項1記載の半導体用接着部材。
【請求項3】
前記粘接着剤層が、(A)エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤100重量部に対し、(B)官能基を有する重量平均分子量が10万以上であるポリマーを10〜400重量部、(C)プロトン供与性化合物を0.1〜20重量部、(D)光酸発生剤を0.5〜50重量部及び(E)放射線重合性化合物を1〜50重量部含むことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体用接着部材。
【請求項4】
前記粘接着剤層の加熱硬化後の貯蔵弾性率が、25℃で10〜5000MPa、250℃で3〜50MPaであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体用接着部材。
【請求項5】
前記粘接着剤層に放射線を照射することで、前記粘接着剤層と基材層界面の接着強度を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体用接着部材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体用接着部材を用いて、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着してなる半導体装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘接着剤層と基材層を備える半導体用接着部材の粘接着剤層に半導体ウエハを貼り付ける工程(I)、
前記半導体ウエハをダイシングして、半導体用接着部材付き半導体素子を得る工程(II)、
前記半導体用接着部材付き半導体素子の粘接着剤層に放射線を照射して硬化する工程(III)、
前記半導体用接着部材付き半導体素子の粘接着剤層と基材層の界面において剥離して粘接着剤層付き半導体素子を得る工程(IV)、
および前記粘接着剤層付き半導体素子と半導体素子搭載用支持部材上とを接着する工程(V)、とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−277806(P2008−277806A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99519(P2008−99519)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】