説明

半導体発光素子の製造方法

【課題】基板上に、面内と周縁部の膜厚の均一な塗布膜を形成することを目的とする。
【解決手段】単結晶ウエハ1と半導体層4と、その間の結晶格子の不整合を緩和するバッファ層3を備えた半導体基板の製造方法であって、前記単結晶ウエハの外周端部1aを被覆材2で被覆した後、前記バッファ層3を前記単結晶ウエハ1の一面側に形成する工程と、前記被覆材2を取り除いた後、前記半導体層4を前記バッファ層3上の一面側に形成すると共に、前記単結晶ウエハ1の外周端部1aから前記半導体層4の外周部4bにかけて前記半導体層4の構成材料からなる堆積物4aを堆積させる工程と、前記半導体層4上に塗布液をスピンコート法により塗布する工程と、を具備してなることを特徴とする半導体基板の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体発光素子の製造工程の一つとして、単結晶ウエハからなる基板上にレジストなどの絶縁膜を形成するための方法が各種開発されている。このような方法としては、たとえば、レジストの前駆物質を溶剤に溶かして塗布液を作成し、その塗布液を半導体ウエハなどの基板の表面に塗布する手法が広く知られている。
【0003】
このように、基板の表面にたとえばレジストなどの塗布液を塗布する手法としては、基板の中央に塗布液を滴下方式で供給し、基板を回転させるスピンコート法が代表的なものとして知られている。この方法によれば、基板の回転に伴う遠心力により、少ない塗布液を基板の表面全体に展伸することができる。
【0004】
しかし、この方法においては、塗布液が基板(単結晶ウエハ)の外周端部に溜まりやすいという問題が知られている。この問題について図1を用いて以下に説明する。
まず、この方法においては図1(a)に示すように、遠心力により塗布液105(レジスト)が基板101(単結晶ウエハ)の外周端部101aに溜まりやすいという問題があった。外周端部101aに展伸した塗布液105は表面張力により基板101の中心側方向に引っ張られ、外周端部101a上に溜まった状態となる。そのため、外周端部101aに溜まった塗布液105が上方向に盛り上がった状態となり、その部分だけ膜厚が厚くなってしまう。
【0005】
このため、塗布液105が均一に塗布された面内と、塗布液105が盛り上がっている外周端部101aとで、膜厚の異なる塗布膜が形成されてしまう。そのため、基板101の中心部と外周端部101aとで露光条件が異なり、パターニングの精度に差が生じてしまいやすい。また、特にその差が酷い場合には、現像によって塗布膜を溶出させる工程の際、基板の外周端部101aと面内との露光条件の差により、塗布膜が残ってしまうこともある。
【0006】
この問題を防ぐ方法としては、図1(b)に示すように、基板101の外周端部101aの角を研磨して落とす方法が知られている(特許文献1)。この方法によれば、外周端部101aに溜まった塗布液105の盛り上がりは、外周端部101aの研磨された分と相殺されるため、見かけ上の盛り上がりを防ぐことができる。
また、その他の方法としては、基板101の外周端部101にエッチングガスを供給することにより、外周端部101a上の塗布膜をエッチングし、盛り上がりを防ぐ方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平04-137721号公報
【特許文献2】特開平06-244109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前者の方法においては、基板の外周端部の角を研磨して落とす工程および研磨した部分を洗浄する工程が増加するために生産性が低下するという問題があった。また、後者のエッチングガスを供給する方法においては、塗布膜の形成工程においてエッチングガスが別途必要となるうえに、塗布膜のエッチング量の制御が困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、薬液吐出ノズルから被処理基板に塗布液を滴下させて形成された塗布膜の膜厚均一性の改善を図り得る塗布膜形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 単結晶ウエハと半導体層と、その間の結晶格子の不整合を緩和するバッファ層を備えた半導体基板の製造方法であって、
前記単結晶ウエハの外周端部を被覆材で被覆した後、前記バッファ層を前記単結晶ウエハの一面側に形成する工程と、
前記被覆材を取り除いた後、前記半導体層を前記バッファ層上の一面側に形成すると共に、前記単結晶ウエハの外周端部から前記半導体層の外周部にかけて前記半導体層の構成材料からなる堆積物を堆積させる工程と、
前記半導体層上に塗布液をスピンコート法により塗布する工程と、を具備してなることを特徴とする半導体基板の製造方法。
〔2〕 前記被覆材で被覆する範囲が、前記単結晶ウエハの端部から0.1mm〜3mmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の製造方法。
〔3〕 前記バッファ層を0.01μm〜0.5μmの厚さで形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体基板の製造方法。
〔4〕 前記半導体層を3μm〜15μmの厚さで形成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
〔5〕 前記被覆材がアルミニウム膜で被覆されたステンレス板であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
〔6〕 半導体層が、少なくともn型半導体層、発光層及びp型半導体層をこの順で積層されてなる半導体層であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
〔7〕 単結晶ウエハと半導体層と、その間の結晶格子の不整合を緩和するバッファ層とを備えた半導体発光素子基板であって、
前記単結晶ウエハの外周端部を除き、前記バッファ層が前記単結晶ウエハの一面側に形成され、
前記バッファ層上の一面側に前記半導体層が形成されていると共に、前記単結晶ウエハの外周端部から前記半導体層の外周部にかけて前記半導体層の構成材料からなる堆積物が形成されていることを特徴とする半導体発光素子基板。
〔8〕 前記堆積物が、前記単結晶ウエハの端部から0.1mm〜3mmの範囲の外周端部に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の半導体発光素子基板。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板(単結晶ウエハ)の外周端部に被覆材を設けたままバッファ層を形成することにより、その後の半導体層を形成する工程において、基板の外周端部に凹凸形状(又は階段状)の堆積物を形成することができる。そのため、その後の塗布膜(レジスト)形成工程において、基板の周縁部に塗布液が溜まることを防ぐことが可能となる。
【0012】
また、この方法によれば、塗布膜厚が基板の面内と比べて厚い範囲を特定することができる。そのため、基板の外周端部の廃棄範囲を狭め、かつ特定することが可能となる。これにより、少ない工程で均一な膜厚の塗布膜(レジスト)を効率的に形成することができるとともに、製品歩留まりと信頼性を高くすることが可能となる。
特にこれは、近年の大型基板やオリフラを有する基板など、その面内と周縁部とで塗布膜厚の差が出やすい基板において効果的である。
このような効果は、半導体層が、少なくともn型半導体層、発光層及びp型半導体層をこの順で積層されてなる半導体発光素子基板の製造方法において顕著に見られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、従来の実施形態である塗布膜の製造工程を説明するための工程断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態である塗布膜の製造工程を説明するための工程断面図の一例である。
【図3】図3は、本発明の実施形態で形成した堆積物の断面図の一例である。
【図4】図4は、本発明の半導体発光素子の製造方法を用いて製造された半導体発光素子の一例を示した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本実施形態の半導体基板の製造方法を、図2を用いて詳細に説明する。
本実施形態の半導体基板の製造工程は、基板(単結晶ウエハ)1の外周端部1aを被覆材2で覆った状態のままバッファ層3を形成する工程と、被覆材を取り除いた後、バッファ層3上に半導体層4を形成するとともに基板1上に堆積物4aを形成する工程と、スピンコート法により半導体層4上に塗布液(レジスト5)を塗布する工程と、から概略構成されている。ここで、半導体層には、少なくともn型半導体層、発光層及びp型半導体層をこの順で積層されてなる半導体発光素子用半導体層が挙げられる。
なお、以下の説明で用いる図面は、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0015】
<バッファ層3を形成する工程>
バッファ層3を形成する工程はさらに、基板1準備工程と、被覆材2設置工程と、バッファ層3形成工程と、から構成されている。以下、それぞれについてその詳細を説明する。
【0016】
(基板1(単結晶ウエハ)準備工程)
まず始めに基板1(単結晶ウエハ)を準備する。基板1としては、例えば、後述するサファイア等からなる基板を用いることができる。また、上記基板の中では特に、c面を主面とするサファイア基板を用いることが好ましい。
【0017】
(被覆材2設置工程)
次いで、図2(a)に示すように、基板1の一面側の外周端部1a全体を被覆するように被覆材2を設置する。例えば、この被覆材2は、図示しないスパッタ装置の成長室内のスパッタターゲットに基板1を対向させて下向きに取り付けるための取り付け手段である。また、その構造は、基板1の外周全体を覆うことにより、基板1を下向きに保持することが可能なものとなっている。
また、被覆材2の構成はこれに限定されず、成長室が基板1を上向きに設置する構成となっている場合は、基板1を保持する必要はなく、基板1の外周全体を被覆する構成であればよい。
【0018】
また、このとき、被覆材2で被覆する範囲は基板1の端部から0.1mm〜3mmの範囲内とすることが好ましく、さらに0.1mm〜2mmの範囲内とすることが好ましい。被覆材2で被覆する範囲が0.1mmよりも狭いと、被覆材2が基板1から外れやすく、また、後述する工程において堆積物4aが均一に形成されない部位が生じやすくなる。また、被覆材2で被覆する範囲が2mmを超えると、廃棄面積が増えるために製品歩留まりが低下する。
【0019】
この被覆材2はたとえばアルミニウム膜で被覆されたステンレス板などを用いることができるが、被覆材2の構成としてはこれに限定されない。外周端部1aを被覆することができ、かつ、バッファ層形成において悪影響がないものであればその構成は特に限定されず、他のものを被覆材2として用いることができる。
【0020】
(バッファ層3形成工程)
次いで、基板1に被覆材2を設置した状態のまま、MOCVD(有機金属化学気相成長)装置又はスパッタ装置の成長室内に設置する。次いで、このようなMOCVD法またはスパッタ法によって、基板1の一面側にバッファ層3を形成する。
【0021】
また、このようなバッファ層3を基板1上に形成することにより、バッファ層3のバッファ機能を有効に作用させることができる。これにより、基板1と半導体層と、後述する半導体層4との間の結晶格子の不整合を緩和することができる。
【0022】
次いで、図2(b)に示すように、基板1から被覆材2を取り除く。これにより、基板1の外周端部1aは露出し、バッファ層3と、基板1の外周端部1aとの間で、バッファ層3の厚みの分だけ段差が構成される。
【0023】
<半導体層4および堆積物4aを形成する工程>
次いで、図2(c)に示すように、バッファ層3上に、たとえば、図示しない下地層とn型半導体層と発光層およびp型半導体層からなる半導体層4を形成するとともに基板1の外周端部1aに堆積物4aを形成する。
まず、はじめに、基板1をMOCVD(有機金属化学気相成長)装置の成長室内に設置する。次いで、MOCVD法によって製膜処理を行い、バッファ層3上にたとえば図示しない下地層とn型半導体層と発光層およびp型半導体層を順次積層し、半導体層4を形成する。この工程は既存の方法を用いるため、その詳細については省略する。
【0024】
このとき、下地層の材料としてはAlGa1−xN(0≦x≦1)を用いることが特に好ましいが、AlGaInN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)を用いても構わない。下地層の材料としてAlGa1−xN(0≦x≦1)を用いることにより、下地層の結晶性は特に良好となる。
また、下地層の結晶性を良くするためには、下地層には不純物をドーピングしない方が望ましい。しかし、p型あるいはn型の導電性が必要な場合には、下地層にアクセプター不純物あるいはドナー不純物を添加することができる。
【0025】
また、n型半導体層は例えば、GaN系化合物半導体からなるn型コンタクト層とn型クラッド層とを積層することにより形成する。これにより、n型半導体層はn型の電気伝導を示すドーパントを含む構成となる。
【0026】
発光層は、障壁層と井戸層とを交互に繰り返して積層することにより形成する。このとき、発光層の成長温度は600〜900℃とし、キャリアガスとしては窒素ガスを用い、n型半導体層側及びp型半導体層側に障壁層が配されるように積層する。
【0027】
p型半導体層は、pクラッド層と、pコンタクト層とを順次積層することにより形成する。これにより、p型の電気伝導を示すドーパントを含有したGaN系化合物半導体層からなるp型半導体層が形成される。
【0028】
以上により、バッファ層3上に半導体層4が形成される。
このとき、半導体層4と同時に、半導体層4の構成材料からなる堆積物4aが、基板1の外周端部1a上から半導体層4の外周部4bにかけて堆積する。この堆積物4aは、外周端部1aから立設し、バッファ層3の外周部の側壁および半導体層4の外周部4b全体を覆う構成となる。また、堆積物4aはバッファ層3上ではなく基板1上に形成されるためにその結晶性は低く、表面には微小な凹凸が生じる。
【0029】
この堆積物4aの、半導体層4の外周部4bから基板1の外周端部1a表面にかけての断面図を図3に示す。図3に示すように、堆積物4aは外周部4bを最頂部とし、その外側に向かって傾斜する構造となっている。これにより、外周部4bから外周端部1aにかけては、堆積物4aにより角度がついて傾斜した構成となる。
図3では、縦軸は外周部4bの最頂部からの傾斜深さ(単位μm)を表し、横軸は外周部4bの最頂部から外側に向かって傾斜する距離(単位μm)を表す。
【0030】
このとき、半導体層4は3μm〜15μmの膜厚で形成することが好ましい。半導体層4の膜厚が3μm未満であると、半導体層4の外周部4bから基板1の外周端部1aにかけての堆積物4aの傾斜が不十分となる。また、厚みが15μmを超えると、堆積物4aの傾斜が大きくなりすぎる。
【0031】
<塗布液(レジスト5)を塗布する工程>
次いで、図2(d)に示すように、スピンコート法により、半導体層4上にたとえば塗布液(レジスト5)を塗布する。まず始めに、基板1を図示しない基板保持装置に保持する。次いで、その状態で基板1を回転させて、半導体層4の中央に図示しないノズルから、たとえばレジスト5などの塗布液を滴下方式で供給する。これによりレジスト5は半導体層4上で、基板1の回転に伴う遠心力によって半導体層4の表面全体に展伸し、レジスト5の塗膜が形成される。
【0032】
このとき、レジスト5は遠心力により半導体層4の外周部4b側に流動する。しかし、外周部4bから外周端部1aにかけては、堆積物4aにより傾斜した構成となっており、また、堆積物4aの表面には微小な凹凸が生じているため、半導体層4の外周部4b側に溜まったレジスト5は堆積物4a上を伝って外周端部1a上に流れる。
【0033】
これにより、レジスト5は半導体層4表面全体(面内と外周部4b)を均一な厚さで覆う構成となり、また、余剰のレジスト5は堆積物4a上と基板1の外周端部1a上を覆う構成となる。
少なくともn型半導体層、発光層及びp型半導体層をこの順で積層されてなる半導体発光素子用半導体層を備えた半導体基板の場合には、その後、半導体層4のメサ加工を行い、図示しないn型電極とp型電極を形成する。次いで、前記n型電極以外の部分および前記p型電極以外の部分を覆うように図示しない絶縁保護膜を形成する。その後、ダイシングラインに沿って基板1を分割する。
以上により、本実施形態の1つである半導体発光素子が形成される。
【0034】
また、本発明では、別の実施態様として、単結晶ウエハ(基板1)と半導体層4と、その間の結晶格子の不整合を緩和するバッファ層3とを備えた半導体発光素子基板であって、単結晶ウエハの外周端部を除き、バッファ層が単結晶ウエハの一面側に形成され、バッファ層上の一面側に半導体層が形成されていると共に、単結晶ウエハの外周端部から半導体層の外周部にかけて半導体層の構成材料からなる堆積物が形成されている半導体発光素子ウエハ基板を提供することができる。
【0035】
ここで、堆積物は、単結晶ウエハの端部から0.1mm〜3mmの範囲の外周端部に形成されていることが好ましく、さらに0.1mm〜2mmの範囲内に形成されていることが好ましい。堆積物が0.1mmよりも狭いとその後の塗布膜(レジスト)形成工程において、基板の周縁部に塗布液が溜まることを防ぐことが十分できなくなる。
一方、堆積物が3mmを超えると、1枚の単結晶ウエハ(基板1)当たりに利用できる半導体層の有効面積が小さくなり、例えば、半導体発光素子基板では、得られる半導体発光素子チップ等の製品歩留まりが低下してしまう。
【0036】
以下、本実施形態で形成される半導体発光素子100の構成について、図4を用いてその概要を説明する。なお、以下の説明において参照する図面は、本発明を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の半導体発光素子の寸法関係とは異なっている。
【0037】
図4は、本発明の半導体発光素子100の一例を示した断面模式図である。
図4に示す本実施形態の半導体発光素子100は、基板1と、基板1上に積層された積層半導体層(半導体層4)と、積層半導体層の上面に積層された透光性電極15と、透光性電極15上に積層されたp型ボンディングパッド電極16と、積層半導体層の露出面4a上に積層されたn型電極17と、から概略構成されている。
【0038】
積層半導体層は、基板1側から、例えば、バッファ層3、必要に応じて下地層22、n型半導体層12、発光層13、p型半導体層14がこの順に積層されて構成されている。また、積層半導体層を、下地層22〜p型半導体層14をまとめて称してもよい。図4に示すように、n型半導体層12、発光層13、p型半導体層14は、その一部がエッチング等の手段によって除去されており、除去された部分からn型半導体層12の一部が露出されている。そして、n型半導体層12の露出面4aには、n型電極17が積層されている。
また、p型半導体層14の上面には、透光性電極15およびp型ボンディングパッド電極16が積層されている。これら、透光性電極15およびp型ボンディングパッド電極16によって、p型電極18が構成されている。
【0039】
n型半導体層12、発光層13およびp型半導体層14を構成する半導体としては、III族窒化物半導体を用いることが好ましく、窒化ガリウム系化合物半導体を用いることがより好ましい。本発明におけるn型半導体層12、発光層13およびp型半導体層14を構成する窒化ガリウム系化合物半導体としては、一般式AlInGa1−x−yN(0≦x<1,0≦y<1,0≦x+y<1)で表わされる各種組成の半導体を何ら制限なく用いることができる。
【0040】
本実施形態の半導体発光素子100は、p型電極18とn型電極17との間に電流を通じることで、積層半導体層を構成する発光層13から発光を発せられるようになっており、発光層13からの光を、p型ボンディングパッド電極16の形成された側から取り出すフェイスアップマウント型の発光素子である。なお、本発明の半導体発光素子は、フリップチップ型の発光素子であってもよい。
以下、それぞれの構成について説明する。
【0041】
<基板1>
基板1としては、例えば、サファイア、SiC、シリコン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化マンガン亜鉛鉄、酸化マグネシウムアルミニウム、ホウ化ジルコニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジウムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン、ハフニウム、タングステン、モリブデン等からなる基板を用いることができる。上記基板の中でも、特に、c面を主面とするサファイア基板を用いることが好ましい。
【0042】
(バッファ層3)
バッファ層3は、基板1と下地層22との格子定数の違いを緩和して、基板1の(0001)C面上にC軸配向した単結晶層の形成を容易にするために、設けられていることが好ましい。バッファ層3の上に単結晶の下地層22を積層すると、より一層結晶性の良い下地層22が積層できる。
【0043】
バッファ層3は、多結晶のAlGa1−xN(0≦x≦1)からなるものが好ましく、単結晶のAlGa1−xN(0≦x≦1)からなるものがより好ましい。
バッファ層3は、例えば、多結晶のAlGa1−xN(0≦x≦1)からなる厚さ0.01〜0.5μmのものとすることができる。バッファ層3の厚みが0.01μm未満であると、バッファ層3により基板1と下地層22との格子定数の違い緩和する効果が十分に得られない場合がある。また、バッファ層3の厚みが0.5μmを超えると、バッファ層3としての機能には変化が無いのにも関わらず、バッファ層3の成膜処理時間が長くなり、生産性が低下する問題がある。なお、ここではたとえば0.03μmの厚さで形成する。
【0044】
バッファ層3は、多結晶構造又は単結晶構造を有するものとすることができる。このような多結晶構造又は単結晶構造を有するバッファ層3を基板1上にMOCVD法またはスパッタ法にて成膜した場合、バッファ層3のバッファ機能が有効に作用するため、その上に成膜されたIII族窒化物半導体は良好な配向性及び結晶性を有する結晶膜となる。
【0045】
(下地層22)
下地層22としては、AlGaInN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)が挙げられるが、AlGa1−xN(0≦x≦1)を用いると結晶性の良い下地層22を形成できるため好ましい。下地層22の膜厚は0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上であり、1μm以上が最も好ましい。この膜厚以上にした方が結晶性の良好なAlGa1−xN層が得られやすい。また、下地層22の膜厚は10μm以下が好ましい。
【0046】
<積層半導体層>
積層半導体層はさらに、下地層の上に、n型半導体層12、発光層13、p型半導体層14がこの順に積層されて構成されている。以下、それぞれについて説明する。
【0047】
(n型半導体層12)
n型半導体層12はさらに、nコンタクト層12aと、nクラッド層12bとから構成されている。
【0048】
(発光層13)
発光層13は、障壁層13aと井戸層13bとが交互に複数積層された多重量子井戸構造からなる。多重量子井戸構造における積層数は3層から10層であることが好ましく、4層から7層であることがさらに好ましい。
【0049】
(p型半導体層14)
p型半導体層14は、通常、pクラッド層14aおよびpコンタクト層14bから構成される。また、pコンタクト層14bがpクラッド層14aを兼ねることも可能である。
【0050】
<n型電極17>
n型電極17は、ボンディングパットを兼ねており、積層半導体層のn型半導体層12に接するように形成されている。このため、n型電極17を形成する際には、少なくともp半導体層14および発光層13の一部を除去してn型半導体層12を露出させ、n型半導体層12の露出面4a上にボンディングパッドを兼ねるn型電極17を形成する。n型電極17としては、各種組成や構造が周知であり、これら周知の組成や構造を何ら制限無く用いることができ、この技術分野でよく知られた慣用の手段で設けることができる。
【0051】
<透光性電極15>
透光性電極15は、p型半導体層14の上に積層されるものであり、p型半導体層14との接触抵抗が小さいものであることが好ましい。また、透光性電極15は、発光層13からの光を効率良く半導体発光素子100の外部に取り出すために、光透過性に優れたものであることが好ましい。また、透光性電極15は、p型半導体層14の全面に渡って均一に電流を拡散させるために、優れた導電性を有していることが好ましい。
【0052】
<p型ボンディングパッド電極16>
p型ボンディングパッド電極16はボンディングパットを兼ねており、透光性電極15の上に積層されている。p型ボンディングパッド電極16としては、各種組成や構造が周知であり、これら周知の組成や構造を何ら制限無く用いることができ、この技術分野でよく知られた慣用の手段で設けることができる。
【0053】
<絶縁保護膜>
図示しない絶縁保護膜は、必要に応じて透光性電極15の上面および側面と、n型半導体層12の露出面4a、発光層13およびp型半導体層14の側面、n型電極17およびp型ボンディングパッド電極16の側面や周辺部を覆うよう形成される。保護膜層を形成することにより、半導体発光素子100の内部への水分等の浸入を防止でき、半導体発光素子100の劣化を抑制することができる。
【0054】
本実施形態によれば、従来と同じ工程で半導体層4を形成する際に同時に堆積物4aを形成することができる。そのため、従来の製造方法のように基板1の周縁部1aを予め研磨して落とす工程を増やすことなく、同様の形状を構成することができる。また、従来の製造方法のように、レジスト5形成後に外周部4b上のレジスト5の盛り上がりをエッチングする必要がないため、その膜厚の制御も不要となる。これらにより、工程を増やすことなく半導体層4の外周部4b上のレジスト5の盛り上がりを防ぐことが可能となる。
【0055】
また、基板1が大型になるほど、その分必要な塗布液(レジスト5)が多くなり、かつ、半導体層4の外周部4bでの遠心力も大きくなるため、外周部4bに多くのレジスト5が溜まりやすくなる。しかし、本実施形態においては堆積物4aを形成することにより、余剰のレジスト5は堆積物4a上を伝って外周端部1aへ流される。そのため、大型の基板1であっても容易に膜厚を制御することができる。
また、特に塗布液(レジスト5)が溜まりやすいオリエンテーションフラット(Orientation Flat))の部分であっても、同様に余剰のレジスト5を外周端部1aへ流すことができる。そのため、半導体層4の面内と同じ厚さでオリエンテーションフラット上にレジスト5を形成することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、被覆材2を設置した箇所に堆積物4aが形成されるため、レジスト5の膜厚が均一となる範囲を特定することができる。これにより、製品出荷時に廃棄する箇所を特定することが可能となり、歩留まりを高くすることができる。そのため、製品出荷時に、不均一な膜厚のレジスト5による不良品の混入を確実に防ぐことが可能となる。また、製品出荷時の、塗布液(レジスト5)の部分的残留による不良品混入を確実に防ぐことができる。そのため、製品の信頼性を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1…基板、1a…外周端部、2…被覆材、3…バッファ層、4…半導体層、4a…堆積物、4b…外周部、5…レジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶ウエハと半導体層と、その間の結晶格子の不整合を緩和するバッファ層を備えた半導体基板の製造方法であって、
前記単結晶ウエハの外周端部を被覆材で被覆した後、前記バッファ層を前記単結晶ウエハの一面側に形成する工程と、
前記被覆材を取り除いた後、前記半導体層を前記バッファ層上の一面側に形成すると共に、前記単結晶ウエハの外周端部から前記半導体層の外周部にかけて前記半導体層の構成材料からなる堆積物を堆積させる工程と、
前記半導体層上に塗布液をスピンコート法により塗布する工程と、を具備してなることを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項2】
前記被覆材で被覆する範囲が、前記単結晶ウエハの端部から0.1mm〜3mmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項3】
前記バッファ層を0.01μm〜0.5μmの厚さで形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項4】
前記半導体層を3μm〜15μmの厚さで形成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項5】
前記被覆材がアルミニウム膜で被覆されたステンレス板であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項6】
半導体層が、少なくともn型半導体層、発光層及びp型半導体層をこの順で積層されてなる半導体層であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項7】
単結晶ウエハと半導体層と、その間の結晶格子の不整合を緩和するバッファ層とを備えた半導体発光素子基板であって、
前記単結晶ウエハの外周端部を除き、前記バッファ層が前記単結晶ウエハの一面側に形成され、
前記バッファ層上の一面側に前記半導体層が形成されていると共に、前記単結晶ウエハの外周端部から前記半導体層の外周部にかけて前記半導体層の構成材料からなる堆積物が形成されていることを特徴とする半導体発光素子基板。
【請求項8】
前記堆積物が、前記単結晶ウエハの端部から0.1mm〜3mmの範囲の外周端部に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の半導体発光素子基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−124504(P2011−124504A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283110(P2009−283110)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】