半導体素子の製造方法
【課題】改良された性質を有するアモルファスシリコンデバイスを製造するための改良された方法を提供する。
【解決手段】約20℃〜約250℃の基板温度;水素、重水素及びこれらの組み合わせからなる群より選択される希釈剤気体で、約5:1〜約1000:1の希釈剤気体:供給ガスの希釈比で希釈された珪素含有供給ガス;及び約0.2Torr〜約50Torrの圧力の条件でアモルファスシリコン層のプラズマ励起化学気相成長(PECVD)を行う。
【解決手段】約20℃〜約250℃の基板温度;水素、重水素及びこれらの組み合わせからなる群より選択される希釈剤気体で、約5:1〜約1000:1の希釈剤気体:供給ガスの希釈比で希釈された珪素含有供給ガス;及び約0.2Torr〜約50Torrの圧力の条件でアモルファスシリコン層のプラズマ励起化学気相成長(PECVD)を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアモルファスシリコンおよびその合金から製作される光起電デバイスおよび電子デバイス、特に光起電デバイスおよび電子デバイスの光学的および電気的性質を強めるプラズマ蒸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池および他の光起電デバイスは、太陽光線および他の光を有用な電気エネルギーに変換する。このエネルギー変換は光起電効果の結果として起きる。光起電デバイスに衝突しそして半導体材料の活性領域、例えばアモルファスシリコンの真性i−層により吸収される太陽光線(日光)が活性領域内で電子−正孔対を発生する。電子および正孔は光起電デバイス中の接合の電界により分離される。接合による電子および正孔の分離が電流および電圧の発生をもたらす。電子はn−タイプ伝導性を有する半導体材料の領域に向かって流れる。光が光起電デバイス中で電子−正孔対を発生し続ける限り、電流はn−タイプ領域をp−タイプ領域に連結する外部回路を通って流れるであろう。
【0003】
アモルファスシリコン太陽電池は、シランのグロー放電で製造することができる水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)材料の本体から構成される。そのような電池は1977年12月20日にDavid E.Carlson に対して発行されたアモルファスシリコンの本体を有する半導体装置という名称の米国特許第4,064,521号に記載されているタイプのものであってよい。電池の本体内には、異なる伝導性タイプの本体を含む半導体領域から生ずる電界がある。
【0004】
アモルファスシリコン太陽電池は、シラン(SiH4)のグロー放電によりしばしば製作されている。グロー放電プロセスは部分的に真空にされた室内での相対的に低い圧力および高い温度における気体によるエネルギーの放出を含む。アモルファスシリコン太陽電池を製作するための典型的な方法は、基板を真空室内の加熱された部品の上に置くことを含む。スクリーン電極またはグリッドが電力源の1つの端子と連結されており、そして第二の電極が電力源の他の端子と連結されており、基板が第二の電極とスクリーン電極の間にある。シランは低圧において真空室内に入るため、グロー放電が2つの電極の間で確立され、そしてアモルファスシリコン膜が基板上に堆積する。
【0005】
アモルファスシリコンは不純物をシランに加えることによりドーピングできる。例えば、第一のドーピング剤はジボラン(B2H6)であってもよく、それをシランに加えてp−タイプアモルファスシリコン層を生成する。p−タイプ層が100オングストローム(Å)の桁の厚さまで形成された後に、ジボラン流を停止して数千オングストロームの桁の厚さを有する真性領域を形成する。その後、n−タイプドーピング剤、例えばホスフィン(PH3)をシラン流に加えて数百オングストロームの厚さを有するn−タイプアモルファスシリコン層を形成する。n−タイプ層の上に、透明な伝導性層が形成される。一般的には酸化亜鉛(ZnO)を使用して透明な伝導性層を形成する。
【0006】
p−i−n構造またはn−i−p構造を有する単接合アモルファスシリコン太陽電池を形成することができる。太陽電池の基板はガラスまたは金属、例えばアルミニウム、ニオブ、チタン、クロム、鉄、ビスマス、アンチモンもしくは鋼から製造することができる。ガラス基板が製造されるなら、透明な伝導性コーテイング、例えば酸化錫(SnO2)をアモルファスシリコンの形成前にガラス基板に塗布することができる。金属電極を基板の背面に形成することもできる。
【0007】
半導体材料により吸収される異なるエネルギーおよび波長の光子の合計数を増加させることにより、光起電デバイスの電流出力は最大になる。太陽スペクトルは、それぞれ約4.2eVから約0.59eVに相当する約300ナノメートルから約2200ナノメートルの波長の領域に大体及ぶ。光起電デバイスにより吸収される太陽スペクトルの部分は半導体材料の禁制帯幅エネルギーの大きさにより決められる。結晶性珪素(c−Si)は約1.1eVの禁制帯幅エネルギーを有する。この禁制帯幅エネルギーより少ないエネルギーを有する太陽光線(日光)は半導体材料により吸収されず、従って光起電デバイスの電気(電流および電圧)の発生に寄与しない。
【0008】
アモルファスシリコン太陽電池は20年前に最初に製造された。太陽電池素子の第一世代は、低い効率並びに現在ではステブラー−ロンスキー効果として知られている現象である光劣化に悩まされていた。数年間にわたり、初期性能および安定性の両者における多くの改良がなされ、現在では多くのモノリシック的に連結された電池(セル)からなる一般的な大面積多重接合モジュールは9%より低い安定化された性能を示す。
【0009】
最初の電池はショットキバリアデバイスでありそして約0.55Vの開放電圧(Voc)を有していた。最初のp−i−nホモ接合およびその後のp−SiC/i、n−Siヘテロ接合を含む太陽電池の構造における一連の改良が開放電圧(Voc)の実質的な改良をもたらした。別の改良はp−SiC層とi−層との間への薄いi−SiC層の挿入から生じた。Vocにおける増加は、改良されたp−層の使用によるp−i界面層における改良によってまたは電池中への比較的高い禁制帯幅i−層の加入による透明伝導体上の改良によって、実現ができる。しかしながら、最後の2つの技術、すなわちp−i界面の改良およびSiC合金の使用もしくはi−層蒸着条件の変更による真性層の間隙の拡大は、光劣化に対する比較的低い耐性を有する材料を生ずることがある。蒸着方法およびデバイス構造の正確な詳細事項が非常に重要である。
【0010】
水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)系太陽電池の性能は露光により劣化する。p−i−n太陽電池中の真性a−Si:H層の電子的性質の劣化がデバイス性能の劣化の大部分に寄与すると信じられている。a−Si:H層は伝統的には約250℃の基板温度における純粋シランのグロー放電から蒸着される。そのような条件下で製造されるデバイスに関しては、太陽電池の効率は100mW/cm2強度における10,000時間までの光ソーキングでは露光時間の対数に正比例して劣化しそして次にこの時間枠を越えると飽和する。
【0011】
従来法(水素希釈しない)により製造される単接合シリコン電池の特徴は、変換効率、すなわち太陽光線を電気に変換させる際の太陽電池の効率、の経時損失(劣化)である。時間の対数に対してプロットされた効率は、ある場合には少なくとも10,000時間を越えるまで観察されて直線を与える。幾つかの例外では、この効率の直線依存性から逸脱しないが時間が経つにつれて衰微し続けることが観察された。直線の傾斜は原則的にはi−層厚さの関数であった。経験的な原則は、10年当たりの効率の損失が300により割算されたオングストローム単位でのi−層の厚さであることである。一例として、4000Å厚さの電池は4000/300=13%/10年を損失するであろう。p−i界面層の適切な設計によりこの線の傾斜に影響を与えることなく初期効率を改良できることが見いだされた。しかしながら、界面層設計が正確でないと、効率−対数時間曲線の傾斜は増加するであろう。水素希釈なしでの比較的低い蒸着温度への移行が線の傾斜を実質的に増加させるであろう。低い蒸着速度、例えば4〜10Å/秒では、劣化速度は蒸着速度により影響を受けない。しかしながら、高い蒸着速度では劣化速度は増加する。
【0012】
多重接合電池の劣化速度は多重接合電池を構成する成分セルの劣化速度のほぼ平均である。一例として、高温において且つ水素希釈なしに製造される4000Å厚さのi−層を有する単接合アモルファスシリコン電池は1000時間の光ソーキングでその初期効率の40%を損失するかもしれない。i−層の同じ合計厚さ(表面i−層700Å、裏面i−層3300Å)を有するSi/Siタンデムは約20%(表面i−層損失約7%、裏面i−層損失約33%)しか損失しない。
【0013】
安定性は、太陽電池の効率(性能)が連続的またはパルス式の太陽照射下でどのように変化または劣化するかという特性である。a−Si:H光起電(PV)技術における最大の難問の一つは不安定性の問題であった。従来の先行技術の水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)太陽電池は、特に厚いi−層を有する電池に関しては、光ソーキングで非常に劣化する可能性がある。光電気産業では水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)に対する少量の炭素の添加が、1000Åより少ないi−層厚さを有する薄い電池であっても、太陽電池を非常に不安定化させることが知られている。従来の先行技術を使用する予め蒸着させた非晶質炭化珪素(a−SiC:H)太陽電池は数百時間の模擬太陽照射後に効率低下が70%を越えることが多かった。
【0014】
これまでは、アモルファスシリコンおよびその合金を低濃度の水素希釈を用いて少なくとも250℃の温度および0.5Torrより低い圧力におけるグロー放電により蒸着させていた。この従来のグロー放電方法および他の方法の例は米国特許第4,064,521号、第4,109,271号、第4,142,195号、第4,217,148号、第4,317,844号、第4,339,470号、第4,450,787号、第4,481,230号、第4,451,538号、第4,776,894号、および第4,816,082号に記載されているものである。これらの従来の先行技術方法の成功度は変動する。これまで、光起電およびアモルファスシリコン蒸着技術の専門家は一般的には低温蒸着は、安定性に劣り、低品質の製品しか製造できないと信じていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、改良された性質を有するアモルファスシリコンデバイスを製造するための改良された方法を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
電子デバイス、特に太陽電池モジュールにおいて使用するための太陽電池を製作するための改良方法が提供される。有利なことに、この新規な方法は予期せぬことに且つ驚くべきことに、アモルファスシリコン系太陽電池の安定性、変換効率、曲線因子(FF)および開放電圧(Voc)を非常に改良する。0.7より大きい曲線因子(FF)、0.9Vより大きい開放電圧、好適には1.0Vより大きい開放電圧、および比較的広い光学禁制帯幅を有する強力な単接合および多重接合アモルファスシリコン系太陽電池を製造することができる。重要なことに、この独特な方法により製造される太陽電池の活性な真性i−層の部分は例えば100〜1500時間の直射日光中での光ソーキングにより完全に飽和して太陽電池のそれ以上の光劣化(光変性)を防止する。
【0017】
新規な方法では、アモルファスシリコンまたはその合金の活性な真性i−層もしくは領域、p−i界面またはi−n界面を低い蒸着温度および高い蒸着圧力において、例えば水素(H2)および/または重水素(D2)の如き希釈剤気体で高度に希釈されたシランまたは他の蒸着気体(原料)のプラズマ励起化学蒸着(PECVD)により蒸着させる。望ましくは、基板の蒸着温度(Ts)は最良の結果のためには実質的に250℃より低く、そして好適には220℃より低く、且つ実質的に80℃より高い。蒸着圧力は実質的に0.5〜1.0Torrより大きく且つ50Torrより小さく、そして好適には2Torrより大きく且つ20Torrより小さい。
【0018】
プラズマ蒸着は一般的には陰極直流(DC)グロー放電、陽極DCグロー放電、無線周波数(RF)グロー放電、非常に高い周波数の(VHF)グロー放電、マイクロ波蒸着(マイクロ波グロー放電)または交流(AC)グロー放電によるものであってよい。アモルファスシリコンベース領域は水素化アモルファスシリコン、水素化非晶質炭化珪素、または水素化アモルファスシリコンゲルマニウムを含んでいることができる。好適には、少なくとも1つの接合が半導体デバイスまたは太陽電池のアモルファスシリコン層と作用可能に連結されている。接合は、半導体接合、三重接合、二重接合または他の多重接合、並びにタンデム接合、ヘテロ接合、整流接合、トンネル接合、またはショットキバリアを含むバリア接合であってよい。p−i−nまたはn−i−p接合を有する太陽電池を新規な方法により製造することができる。
【0019】
望ましくは、最良の結果のためには希釈剤気体流速および希釈比は高い。希釈剤(水素および/または重水素)の濃度のシラン(SiH4)または一部の他の蒸着気体(原料)に対する希釈比は好適には少なくとも10:1であり、例えば10,000:1のように実質的に100:1より大きくてもよく、好適には1000:1より小さく、最も好適にはRF蒸着用には300:1より小さく、そしてDC蒸着用には200:1より小さい。シラン(SiH4)がアモルファスシリコン太陽電池および半導体用の好適な蒸着気体である。ある環境では、シランに代えてまたはシランと組み合わせて他の蒸着気体(原料)、例えばジシラン(Si2H6)、テトラメチルシラン[Si(CH3)4]、SiF4、SiHF3、Si2H2Cl4、および一般式:SiNH2N+2-MYM
[式中、Si=珪素、
H=水素または重水素、
Y=ハロゲン、
N=1以上の正の整数、
M=正の整数、および
2N+2−M≧0]
を有する他の蒸着気体を使用することが望ましい。
【0020】
シラン(SiH4)およびメタン(CH4)がアモルファスシリコン太陽電池および半導体用の好適な蒸着気体である。シランおよび/またはメタンに代えてまたはそれらと組み合わせて他の蒸着気体(原料)、例えばメチルシランまたはシリルメタン(CH3SiH3)、トリシリルメタン[CH(SiH3)3]、および一般式CHN(SiH3)4-N[式中、Nは0〜4の範囲の整数である]を有する他の蒸着気体、並びに他の炭化水素蒸着気体、例えばアセチレン(C2H2)、エチレン/エテン(C2H4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)、および/またはハロカーボン(ハロゲン−炭素)気体、例えばCF4、CDCl3を使用することができる。重要なことに、本発明の方法はアモルファスシリコンを含む素子の安定性を改良する。上記のように、本発明の方法は水素の存在下での低温高圧化学蒸着(CVD)によるアモルファスシリコン系材料の少なくとも一部の製作を含む。そのようなCVDはDC、AC、RFおよびマイクロ波蒸着を含むことができる。
【0021】
有利には、本発明の方法は光起電デバイスに関して特に有用であり、アモルファスシリコンの反射コーテイングを有する太陽電池、太陽モジュール、太陽パネル、太陽屋根、建物窓、およびガラスパネルにおける光誘導劣化を減少させる。本発明の方法は電子デバイス、例えば薄膜電界トランジスター(TFT)、半導体、ダイオード、テレビジョン、コンピューターディスプレイ、マトリックスアドレスアレイ、イメージセンサーアレイ、活性マトリックス液晶ディスプレイ(LCD)、医学用X線撮影装置、光受容器、光複写機、光学的走査器(スキャナ)、ファクシミリ機、レーザープリンター、光学センサー、および光偏向器中での電流−誘導(注入)劣化を減少させるにも有用である。
【0022】
望ましくは、本発明の方法では太陽電池の光誘導劣化は、太陽電池の自然太陽光線または模擬太陽光線への露光(光ソーキング)の飽和水準に達した後に、例えば100から1,000〜1,500時間後に、好適には100〜500時間後に、実質的に防止される。これはアモルファスシリコン領域、例えば真性層またはp−i界面を太陽電池中で、自然太陽光線または模擬太陽光線への露光飽和時間後に、例えば100〜1,500時間後に、好適には100〜500時間後に電池の光誘導劣化の飽和を引き起こすのに十分な温度および圧力におけるグロー放電により蒸着させることによって達成される。望ましくは、アモルファスシリコン領域を有する単接合太陽電池は、飽和時間前に、1,000Å厚当たり実質的に15%より少なく、好適には10%より少なく、最も好適には約7.5%もしくはそれ以下だけ劣化する。非晶質炭化珪素領域を有する単接合太陽電池は、飽和時間前に、1,500Å厚当たり実質的に55%より少なく、好適には5%〜30%だけ劣化する。
【0023】
DCグロー放電は80〜210℃の範囲の温度において、0.1〜10Torrの範囲の圧力において、10:1〜200:1の範囲の希釈剤対原料(蒸着気体)の希釈比で行うことができる。RFグロー放電は80〜220℃の範囲の温度において、1〜50Torrの、好適には2〜20Torrの範囲の圧力において、1,000:1より小さい、好適には10:1〜400:1のそして最も好適には20:1〜200:1の範囲の希釈比で行うことができる。
【0024】
新規な方法は、0.9ボルトより大きい開放電圧(Voc)および0.7より大きい曲線因子(FF)を有する太陽電池を製造するために特に有用である。RFおよびDCグロー放電を用いる本発明の方法では、アモルファスシリコンまたは非晶質炭化珪素を含む活性領域を有する太陽電池は単接合電池に関しては1より大きい開放電圧を有するように製造され、多重接合電池に関しては11%よりはるかに大きい変換効率を有するように製造される。
【0025】
予期せぬことに且つ驚くべきことに、安定性が水素希釈および蒸着温度の関数であることが見いだされた。一定の蒸着温度におけるしきい値までの希釈剤気体(例えば水素)対蒸着気体(例えばシラン)の希釈比の有意な増加が、好適には1,000〜1,500時間以内の、そして最も好適には100〜200時間の光ソーキングの飽和期間後に太陽電池の光誘導劣化を実質的に最少にしそして防止することにより、太陽電池の安定性を大きく改良する。希釈比のしきい値は約210℃の蒸着温度において約10:1である。希釈比のしきい値は約150℃の蒸着温度において約30:1である。太陽電池の安定性を、蒸着圧力およびプラズマ蒸着力を相対的に低く保つことにより、並びに活性層の成長速度を減少させることにより、さらに増加させることもできる。
【0026】
本発明は上記の技術および工程段階のいずれかにより製造される太陽電池も含む。好適な太陽電池は、太陽電池を自然太陽光線または模擬太陽光線に上記の時間、すなわち1,000〜1,500時間、好適には100〜500時間の期間にわたり露光(光ソーキング)した後に太陽電池の光誘導劣化を実質的に防止する急速光飽和可能なアモルファスシリコン含有領域を有する。太陽電池は光ソーキングされた飽和領域を有する。好適な形態では、太陽電池は0.9ボルトより大きい、最も好適には1ボルトより大きい開放電圧(Voc)、および0.7より大きい曲線因子(FF)を有する高電圧領域を有する。高電圧領域は好適には9%より大きい、最も好適には11%より大きい変換効率を有する。この領域は活性な真性i−層、i−n界面またはP−i界面であることができる。珪素含有領域は好適には水素化アモルファスシリコンまたは水素化非晶質炭化珪素を含むが、ある環境では水素化アモルファスシリコンゲルマニウムを使用することも望ましい。
【好ましい実施形態の説明】
【0027】
本発明のさらに詳細な説明が添付図面と一緒にされた以下の記述および付随する請求の範囲の中でなされている。
図1は太陽電池の出力のグラフであり、
図2は曲線因子(FF)を示すグラフであり、
図3は蒸着パラメーターの特定セットに関する蒸着温度の関数としての光学禁制帯幅のグラフであり、
図4は低温膜の赤外線スペクトルのグラフであり、
図5は蒸着温度に対するVocおよびEg/2の依存性を示すグラフであり、
図6は波長の関数としての量子効率のグラフであり、
図7は光ソーキング時間にわたる正規化された効率のグラフであり、
図8は光ソーキング時間にわたる正規化された効率に対する水素希釈の増加の影響のグラフであり、
図9は種々の非晶質炭化珪素膜に関する周囲孔拡散長さの変動を示すグラフであり、
図10は非晶質炭化珪素膜に関するウルバッフエネルギーのグラフであり、
図11は種々の禁制帯幅に関する光電子μτのグラフであり、
図12は種々の禁制帯幅に関する周囲孔拡散のグラフであり、
図13は水素化非晶質炭化珪素太陽電池に関するメタン対シラン気体比の関数としての開放電圧(Voc)および曲線因子(FF)のグラフであり、
図14は単接合非晶質炭化珪素太陽電池に関する電流密度および電圧のグラフであり、
図15は正規化された効率および開放電圧(Voc)の劣化のグラフであり、
図16は光ソーキングの前および後の電流密度および電圧のグラフであり、
図17は効率劣化および初期曲線因子(FF)のグラフであり、
図18は種々の水素希釈に関する正規化された効率の劣化のグラフであり、
図19は種々の蒸着温度における正規化された効率の劣化のグラフであり、そして
図20は固定されたi−層光学禁制帯幅に関する開放電圧および基板温度の関係を示すグラフである。
【0028】
[好適態様の詳細な記述]
[素子の物理的性質]
単接合素子は3つの層からなる。これらは外部領域またはドーピングされるp−およびn−層並びに真性領域またはドーピングされていない(少なくとも意図的なドーピングを含まない)i−層である。i−層はドーピングされた層よりはるかに厚い。これは主としてi−層で吸収される光が外部回路で使用できる電力に変換されるためである。i−層(時には吸収層と称される)の厚さはどのくらい多くの光が吸収されるかを決める。光の光子がi−層で吸収される時には、それが1単位の電流(1つの電子−正孔対)を生じさせる。しかしながら、この電流はそれ自身ではどこにも行かないであろう。それ故、p−およびn−層がある。荷電されたドーピング剤イオンを含有するこれらの層がi−層を越えて強い電界を設定する。i−層から電荷を引き抜き、電荷が機能できる(すなわち電球に電力を与える)外部回路の中に電荷を送るのはこの電界である。
【0029】
典型的なp−i−n単接合太陽電池が表1に示されている。
【0030】
【表1】
【0031】
p−i−界面層はp−層の端部に多分5%の炭素を含有するa−SiCであろう。この組成を次にそれがi−層の端部に炭素を含有しなくなるまで線形に傾斜させる。しかしながら、p−i界面層を製造するための多くの方法があり、それらの全てが傾斜または炭素の使用を含むとは限らない。
【0032】
表1に示されているように、単接合太陽電池は金属および好適にはガラスから製造される基板を有することができる。透明な伝導性金属酸化物(TCO)、例えば酸化錫、を含む表面電極を基板上に蒸着させることができる。p−i−n接合が表面電極と例えばアルミニウムまたは銀の如き金属から製造される裏面(リア)電極との間に挟まれる。p−i−n接合は、(1)p−層を製造するための例えばジボラン(B2H6)の如きp−タイプドーピング剤がドーピングされたアモルファスシリコン系半導体材料の層、(2)活性な真性i−層を生成するアモルファスシリコン系半導体材料のドーピングされていない層、および(3)n−層を製造するための例えばホスフィン(PH3)の如きn−タイプドーピング剤でドーピングされたアモルファスシリコン系半導体材料の層を含む。n−タイプドーピング層はi−層と整流接合を形成することができ、そして裏面電極とのオーム性電極を形成することができる。ガラス基板上の入射光は、基板、表面電極、およびp−i−n接合中を通る。裏面電極により光をp−i−n接合に反射させることができる。
【0033】
太陽電池は単接合または多重接合電池であってよい。多重接合またはタンデム電池は単に単接合p−i−n電池の積層である。タンデム電池には2つの利点があり、第一は光吸収である。異なる非晶質合金は太陽スペクトルの異なる部分を吸収する。非晶質炭化珪素(a−SiC)は紫外(UV)線を効率的に吸収するが、ほとんどの可視光線および全ての赤外線を通過させる。アモルファスシリコン(a−Si)は紫外線を吸収し(しかしa−SiCほど効率的でない)、可視光線を効率的に吸収するが、多くの赤外(IR)線は吸収しない。アモルファスシリコンゲルマニウム(a−SiGe)はIRを効率的にそしてUVおよび可視光線を一般的には非効率的に吸収する。
【0034】
タンデム太陽電池の1つの利点は、各々の層(接合)が異なる吸収層を有するため事実上全ての光の波長を効率的に吸収できることである。タンデム電池の第二の利点は、吸収層が太陽スペクトルに適応されておりそして光を効率的に吸収するためそれらが比較的薄くてよいことである。比較的薄い層はステブラー−ロンスキー効果に関して安定性が大きい。従って、タンデム太陽電池は、同じ光吸収能力を有する単接合光起電デバイスより本質的に安定性が大きい。
【0035】
タンデム太陽電池はトンネル接合により分離され、そして積層構造に配置された水素化アモルファスシリコンの層を有することができる。層の厚さを調節して効率を最大にし、そして各層で発生した電流を等しくすることができる。タンデム太陽電池は、アモルファスシリコン層中の水素濃度を調節することにより変動するアモルファスシリコン層の禁制帯幅を有することができる。
【0036】
一部の典型的な多重接合太陽電池が表2〜4に示されている。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
[電池試験および特性]
初期性能の二種の標準試験がある。第一の光I−V測定では、電池を模擬太陽光線を与える光源下に置き、そしてその電気的性能を測定する。商業用または改変された商業用のシミュレーターを使用することができる。第二の標準試験は量子効率測定と称され、そして異なる波長の光を使用するための電池の能力に関する情報を与える。アモルファスシリコンおよびその結果としてa−Si系太陽電池の性質は露光で劣化する。ナトリウム放電ランプが明るい一定の光源を与える。これらの灯のスペクトルは太陽スペクトルと異なるが、光強度が同一である限りスペクトル分布はあまり問題でなく、そして説明できることを我々は見いだした。電池を灯の上に置き、それらをシミュレーターと同じ方法で目盛り付けし、そして電気的性質を時間の関数として監視する。
【0041】
太陽電池の最も重要な測定はその変換効率である。変換効率は外部負荷、例えば電球、により使用できる電気エネルギーに変換される電池上で衝突する光のエネルギーの百分率である。
【0042】
太陽光線(正午における平らな表面の衝撃)中のエネルギーは約100mW/cm2である。簡便さのために、ソーラーシミュレーターが照射するエネルギーが100mW/cm2にできるだけ近くなるように目盛り付けする。従って、この工程はどのくらいのエネルギーが電池により照明時に製造されたかを測定するためのものである。
【0043】
太陽電池の出力は図1に示されており、そこではVoc=開放電圧であり、Pmax=最大太陽電池出力であり、Jsc=短絡電流である。太陽電池は電力を図1の右下四分円内でJscとVocの間で発生する。太陽電池は図1の右上および左下四分円内で電子試験回路からの電力を吸収する。生じた電力は、電流および電圧の積である。図1における左から右への曲線に沿っていくと、曲線が電流軸と交差する点は電力が生じないかまたは吸収されないところである(電力=電圧×電流=0×Jsc)。この点における電流は短絡電流(Jsc)である。図1の曲線に沿って進むにつれて、最終的にPmaxの印が付けられた点において電圧と電流との積が最大になるまで、電圧および電流の積が増加する。さらに図1の曲線に沿っていくと電流と電圧との積の減少が生ずる。最終的には、電圧軸に達する。この点において、電流=0であるため発生する電力は0である。この点における電圧が開放電圧と称される。最大出力点における電圧および電流はそれぞれVmaxおよびJmaxと称される。
【0044】
電池効率は、それが発生できる電力の最大量により決められ、それは最大出力点における電力である。変換効率は発生するエネルギー対注入エネルギーの比であると定義することができ、それは電力により定義することもできる。太陽電池の変換効率は以下の通りに測定することができる:
効率(%)=(Pmax/Pincident)×100
=(Pmax/100)×100
=Pmax
効率=Pmax =Vmax×Jmax
=Voc×Jsc×FF
Voc=開放電圧、すなわち電流が引っ張られない(電池が開路である)状況において電池により発生した電圧。あなたが電圧計付きの自動車のバッテリーの端子間の電圧を測定するなら、あなたは開放電圧(12Vより少し上)を測定するであろう。
【0045】
Jsc=短絡電流、すなわちそれが短絡されているなら電池を通過する電流。あなたがあなたの自動車のバッテリーの端子間にレンチを落とすなら、あなたはレンチを通る短絡電流(数百アンペア)を測定するであろう。太陽電池上の短絡電流ははるかに小さくそしてほとんど危険性はない。
【0046】
FF=Pmax対Voc×Jscの比である。
効率は本当は、効率=(Pmax/Pincident)×100により与えられる。しかしながら、実際にはPincident(電池上の入射光の電力)は100に設定されているため、効率=Pmaxである。曲線因子(FF)は開放電圧(Voc)および短絡電流(Jsc)により効率を表すために使用される数である。曲線因子(FF)は図2における小さい長方形対大きい長方形の比であると定義することができる。
【0047】
[H2で希釈されたSiH4から低温蒸着したアモルファスシリコン系太陽電池]
改良された初期変換効率および光誘導劣化に対する比較的大きい耐性の両者を有するアモルファスシリコン系太陽電池が開発された。改良された初期効率は、水素(H2)で希釈されたシラン(SiH4)からの低温におけるi−層の蒸着の結果である比較的高い開放電圧(Voc)から生ずる。開放電圧(Voc)における改良は、蒸着温度が低下するにつれて観察される光学禁制帯幅における小さい増加から予期されるものより驚異的に実質的に大きい。また、電池を横断する電荷移動は、蒸着温度が低下するにつれて変化するかもしれない。蒸着パラメーターを最適化することにより、我々は全体的な光誘導劣化を有利に減少させるだけでなく、光ソーキング時間に対する変換効率の機能的依存性における質的変化にも影響を与えて、数百時間の光ソーキング時間後に効率が限界飽和値に漸近的に到達することができた。
【0048】
安定性に対する蒸着温度の影響を研究しながら、我々はこの温度低下が太陽電池の開放電圧(Voc)を光学ギャップより速く増加させたこと並びに蒸着温度が低下するにつれて電圧における実質的な増加が得られたことに注目した。今までは、我々の経験は低温において蒸着した材料は高温において蒸着したものより大きい劣化を受ける、ということであった。しかしながら、高い開放電圧(Voc)が得られるように蒸着条件を最適化することにより、高温で製造された従来の標準電池に比べて大きく改良された安定性を示す太陽電池を製造することができた。
【0049】
[実験の詳細:a−Si:H]
真性膜およびp−i−n太陽電池の両者を試験した。膜を石英および単結晶Si基板の両者に蒸着させた。一部の石英基板には、ニッケルクロム(NiCr)パッドを予め蒸着させて、共平面伝導性および拡散長さ測定を可能にした。膜は0.5および1ミクロンの間の厚さであり、そして電池中のi−層と同じ方法で蒸着させた。希釈しないシラン(SiH4)および水素(H2)中で希釈されたSiH2から270℃以下の温度範囲で成膜させた。我々の通常の蒸着方法は270℃における未希釈の蒸着を含む。膜の光学的測定は、パーキンエルマー分光計(モデルラムダ9)およびPEフーリエ変換赤外線分光計(FTIR)(モデル1750)を使用して行った。光学的測定は、光熱偏向分光計(PDS)を使用しても行われ、そして暗所および光伝導性測定は4点プローブシステムを使用しても行われた。少数キャリア拡散長さを定常状態光キャリア回折格子(SSPG)技術を使用して測定した。
【0050】
太陽電池は、酸化錫(TCO)がコーテイングされたガラス上に蒸着させたものであり、ガラス/TCO/p−SiC/i−Si(4000Å)/n−Si/ZnO/Agの構造を有していた。ある場合には、p−層とi−層の間にi−SiC界面層があった。i−層は希釈せずにまたは水素(H2)で希釈されたシラン(SiH4)から、種々の温度において、種々の希釈度で蒸着させた。H2で希釈されたSiH4から蒸着させた太陽電池はドーピング層およびp−i界面層の小さいが非常に重要な変化並びに蒸着パラメーターの注意深い最適化を必要とする。これらの電池の一部は多重室システム(3室−p、i、およびn層に関して各々1つ)の中で蒸着させ、他のものは単独室蒸着システム中で蒸着させた。太陽電池性能を多重源ソーラーシミュレーターで測定した。光ソーキングをナトリウム(Na)放電ランプで行った。
【0051】
図3は、蒸着温度が低下するにつれてのシラン(SiH4)および水素(H2)中で希釈されたSiH4から蒸着した膜に関する光学禁制帯幅を示す。蒸着中にSiH4がH2中で希釈されているかまたはいないかにかかわらず、ギャップは蒸着温度の全範囲にわたり約0.25eVだけ変化する。しかしながら、H2希釈の効果は図4における低温膜の赤外線(IR)スペクトルにおいてさらに明白に見ることができる。希釈度が増加するにつれて、2090cm-1および640cm-1におけるピークはさらに小さく成長し、それは膜の合計水素含有量が減少していることを示す。希釈は図4のスペクトルにより示されているように材料の構造を改良するが、2000cm-1におけるピークの幅は、H2希釈せずに270℃において製造された膜の中にあるものより依然として広い。これらの膜は光ソーキングされなかったが、電池の安定性は一般的にはそれらのi−層を含む材料のIRスペクトルでの2090cm-1におけるピークの大きさと反比例関係にある。
【0052】
i−層を単接合p−i−n素子中に加えた太陽電池を製造した。図5は蒸着温度に対するVocおよびEg/2の依存性を示す。開放電圧は光学禁制帯幅よりも多く依存している。この結果は単室または多室蒸着システムのいずれかで製造された電池に関しても真実である。図5は、両者の場合とも蒸着温度の関数として、膜に関して2により割算された光学禁制帯幅および対応する電池に関する開放電圧を示している。これらの結果は特定の希釈に関するものである。しかしながら、全希釈範囲にわたり同じ結果が得られる。蒸着中にシラン(SiH4)が水素(H2)中で希釈されているかまたはいないかにかかわらず、蒸着温度が200℃から300℃に変化するにつれて禁制帯幅は約0.04eVだけ変化する。開放電圧(Voc)はこれも希釈とは関係なく、この蒸着温度範囲にわたり約3倍ほど大きく変化する。Vocにおける改良は曲線因子(FF)の減少とは関係ないことがわかったが、禁制帯幅収縮による電流のわずかな損失がある。
【0053】
表5は、本発明の方法で示されているような低温において蒸着させたi−層を有する電池の特性に対する、270℃においてシラン(SiH4)から蒸着させたi−層を有する従来の標準電池の太陽電池特性を比較している。
【0054】
【表5】
【0055】
表5からわかるように、効率における大きな全体的な増加を生ずるVocにおける実質的な増加およびJscにおける小さい損失がある。
図6は表5における2つの素子に関する量子効率を比較する。図6は電流損失が低温蒸着による禁制帯幅におけるわずかな増加の結果であることを示す。表5および図6に示されている差は蒸着温度の低下による。H2希釈が使用されたかまたはされないかは、非常に低い温度以外は、初期電池効率に対してほとんどまたは全く影響を与えない。
【0056】
270℃における水素(H2)希釈なしの標準条件下で製造された太陽電池は露光時間の対数に関する効率が線形的に減少する。しかしながら、低温において製造された電池は、露光時間に対する効率の質的に異なる関数依存性を示す。比較が図7に示されており、そこではH2希釈下で低温において製作された太陽電池が劣化速度の遅延を示し、飽和に近付くことがわかる。経時性能変化が図7に示されている太陽電池は、a−SiC p−i界面層を有していない。これらの電池が最適化されたSiC p−i界面層を具備しており、結果として、相当高い初期効率が与えられるなら、それらは大きな光誘導劣化を受けない。H2−希釈で低温において蒸着された電池は、比較的高い開放電圧(Voc)だけでなくそれらの開放電圧(Voc)における改良された安定性も示す。低温H2で希釈された素子は、それらが比較的高い開放電圧(Voc)減衰を有していても、約2または3%だけしか衰微しない。
【0057】
我々は安定性に対するH2−希釈量の影響を研究した。我々は図4に示された膜の赤外線(IR)スペクトルに対する希釈の影響が図8における効率対時間の曲線に反映されることを見いだした。そこで明らかなように、増加した希釈度では膜の安定性が改良されるため、電池の安定性はi−層成長で使用される希釈量が増加するにつれて改良される。
【0058】
暗所I−V測定を電池の一部に対して行った。これらは、高温において蒸着させた電池に対して我々が典型的に測定した約1.7と比べて1.98程度の高いダイオード係数を示した。さらに、ダイオード特性の劣化は比較的小さい。これまでは、光ソーキングでダイオード係数は約1.7から約2.35に増加していた。低温で蒸着させた電池は典型的には2.0から約2.2までのはるかに小さい増加を示す。
【0059】
これらの測定は、周囲孔拡散長さ(SSPGによる)、光伝導性および暗所伝導性(共平面測定)並びにウルバッフ(Urbach)エネルギーおよび副間隙吸収(PDSによる)が水素(H2)希釈の存在または不存在に依存せず、そして温度の非常に弱い関数であることを示す。禁制帯幅におけるわずかな変化以外の唯一の観察された有意差は、低温蒸着における希釈度に対して非常に依存性がある赤外線(IR)スペクトル中にあった。270℃におけるH2−希釈なしで成長した膜と低温においてH2−希釈で成長したものとの間の近い類似性を仮定すると、2つの条件下で製造された電池の間の差は驚異的である。電圧における増加は禁制帯幅における増加により部分的にのみ説明することができる。増加の残りは、ダイオード性質係数における差により例示されているように移動度における差と関連するはずである。これはi−層中でおよび/またはp−i界面において生ずる再結合工程における差を反映しているかもしれない。高温において製造される電池では、ダイオード係数は典型的には1.7〜1.75であり、決して1.9ほど高くない。電池中のVocの増加に部分的に寄与するかもしれない移動度における改良が主としてp−i界面領域で起きるかもしれない。蒸着温度が低下するにつれて、「移動度間隙」はEgより速く増加するかもしれない。
【0060】
蒸着温度に対する開放電圧(Voc)の強い依存性がある。蒸着温度に対するVocの依存性は電池構造の関数である。
安定性における改良は蒸着パラメーターおよび電池構造の最適化の結果である。低温においては、我々が安定性と関連させた膜の性質である赤外線(IR)スペクトルは、希釈度が増加するにつれて意義ある改良を示した。今までは、我々は常にi−層の厚さが0に近づくにつれて劣化がほぼ線形依存性で0になるため、ステブラー−ロンスキー効果は嵩効果であると考えていた。ある種の環境下ではp−i界面が安定性を悪化させることを示すことができるが、これは一般的には厚さの効果と比べて小さい効果であった。
【0061】
水素(H2)中で希釈されたシラン(SiH4)からの低温における水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)の蒸着が、開放電圧(Voc)における増加により改良された効率をもたらし、該増加は禁制帯幅における小さい増加から生ずる短絡電流(Jsc)における小さな減少よりはるかに大きい。蒸着パラメーターの最適化が、改良された安定性および光ソーキング時間に対する効率の関数依存性の特性における変化をもたらす。数百時間後の効率の飽和は、我々が今までに見たものとは質的に異なる挙動である。これが電池およびモジュール性能の両者における実質的な改良を生ずる。重要なことに、小面積電池および大面積モジュールの両者に関する初期効率は、今や11%を越える。1000時間における15%程度の効率の小さい劣化が観察された。我々は9%を越える安定化された効率を有する小面積電池およびちょうど9%の安定化された効率を有するモジュールを製造した。全体的な光誘導劣化における減少の他に、劣化動力学の性質における質的変化もある。
【0062】
上記の試験では、膜およびセルの両者が製造された。シラン(SiH4)から希釈せずに270℃の名目温度において、そして水素(H2)中で希釈されたSiH4から150℃〜280℃の範囲の温度において、成膜した。H2:SiH4の比は400:1程度に高いものであった。セルは、酸化錫でコーテイングされたガラス上に蒸着させたものであり、ガラス/TCO/p−SiC/i−Si/n−Si/ZnO/Agの構造を有していた。i−層は希釈せずにまたはH2−希釈されたSiH4から種々の温度においてそして、種々の希釈度を用いて、上記で概略説明した膜と同じ方法で蒸着させた。
【0063】
[非晶質炭化珪素合金太陽電池]
蒸着条件の最適化における本発明による最近の進歩が、真性a−SiC:H合金の光電子性質を意義あるほど改良した。これらの改良は単接合p−i−n太陽電池中に加えられた。1.04V程度に高い開放電圧(Voc)および0.75程度に高い曲線因子(FF)が本発明の方法により示された。これらの素子の安定性も顕著に且つ驚異的に改良された。1000Åまでの厚さのa−SiC:H i層を有する本発明の単接合太陽電池は、AM1.5当量の照明下での1700時間の光ソーキング後に、13%しか劣化を示さず、Voc=0.98VおよびFF=0.68を保持する。
【0064】
a−SiC:H系太陽電池の安定化した性能は、多重接合方式を使用することにより増加させることができ、最も魅力的なものは3つの接合が互いに頂部で格子状にされており三重接合の各部分のi−層がEg1>Eg2>Eg3>の順序であるようなモノリシック的な素子構造であり、ここで光はEg1側から入り、ここでEgは各々のi−層の禁制帯幅である。三重接合方式では、電池の各部分の禁制帯幅および厚さを最適化して、太陽スペクトルの異なる部分に応じるようにし、比較的高い性能および比較的良好な安定性を可能にする。2.0eV/1.7eV/1.45eVの禁制帯幅の組み合わせで光電子性質を有するa−Si:H合金を用いると、最大変換効率はa−Si:Hのものと比べて24%程度高くできることが理論的に示されている。水素化非晶質炭化珪素合金(a−SiC:H)は、それらを例えばシラン(SiH4)+メタン(CH4)の如き容易に入手できる原料から蒸着させることができ且つ禁制帯幅を1.7eVから2.0eVに適合させられるため魅力的である。
【0065】
我々はこの目的のためにa−SiC:H真性層を開発した。我々は例えばトリシリルメタン(TSM)の如き新規な炭素含有源の分解により、そして水素で希釈されたメタンの分解により、製造される真性グロー放電a−SiC:H合金の光電子性質を研究した。
【0066】
[実験の詳細:a−SiC:H]
水素化非晶質炭化珪素(a−Si:H)膜および太陽電池を負荷−固定された無線周波数(RF)グロー放電室の中で成長させた。膜は光学的禁制帯幅、ウルバッフエネルギー、サブ禁制帯幅光学吸収スペクトル(PDSにより誘導される)、定常状態の光伝導性および誘導される電子移動度と寿命との積(μτ)、暗所伝導性(σd)およびその温度依存性、赤外線(IR)透過スペクトル、並びに定常状態の周囲孔拡散長さ(Lh)により同定される。光学禁制帯幅(Eg)は、光学吸収係数が2×103cm-1に等しくなるエネルギーとして経験的に定義されている。p−i−n単接合太陽電池はZnO/Ag裏面電極を有するテクスチャ−SnO2コーテイングガラス基板上に蒸着させた。p−層はホウ素がドーピングされたa−SiC:Hであり、n−層はa−Si:Hであり、両方とも従来のa−Si:H素子で使用されるものと同様である。
【0067】
[ドーピングされないa−SiC:H膜の性質]
広い禁制帯幅の水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)合金の光電子性質は、光学禁制帯幅の強い関数であり、そして禁制帯幅が増加するにつれて急速に劣化する。同じ禁制帯幅を有する膜を比較することが重要である。
【0068】
図9は、水素希釈を用いておよび用いずにトリシリルメタン(TSM)からまたはシラン(SiH4)+メタン(CH4)から蒸着させた多数のa−SiC:H膜の孔拡散長さ(Lh)の変動を示す。拡散長さはSSPG(定常状態の光キャリア回折格子)法により測定された。対照として、真性a−Si:H(Eg〜1.76eV)に関するLh値は約1400Åである。TSMまたはSiH4+CH4混合物のH2−希釈のいずれかから蒸着させた膜は、H2−希釈なしで蒸着させたものより高い拡散長さを有する。同様な結果が電子移動度データでも見られ、CH4+H2およびTSM(H−希釈なし)膜は匹敵するμτ値を示し、それらは気相H2希釈なしで製造されたCH4系膜からの対照データより著しく高い。
【0069】
図10は、TSMおよびH2−希釈のCH4から製造された代表的なa−SiC:H膜に関するPDS誘導ウルバッフエネルギー(Eo)のEgにつれての変動を示す。一般的な合金化されていないa−Si:Hに関するウルバッフエネルギーは57〜58eVである。また、H2−希釈なしで製造されたCH4系合金からのデータも比較用に含まれている。CH4+H2方法は同じ禁制帯幅(Eg=1.90eV)のTSM系膜に関するものより低いEo値を生じた。近中間ギャップ欠陥吸収レベルはTSMおよびCH4+H2系合金に匹敵する。
【0070】
シラン(SiH4)+メタン(CH4)の水素希釈がa−SiC:H膜の性質を意義あるほど改良することが見いだされた。この原料混合物を用いて製造される膜を2つの温度領域:(i)Tg>300℃および(ii)Tg<250℃で試験した。低温膜は一般的に高温膜より優れている。a−SiC:Hの光学禁制帯幅の拡大を助けるためにさらに水素(低温において)を加えることが有利である。
【0071】
図11は定常状態の光電流から誘導された電子移動度と寿命との積μτにおける変動およびμτ対室温暗所伝導性σd の比を2つのTg範囲である(1)170〜230℃および(2)300〜320℃で製造されたa−SiC:H膜の禁制帯幅の関数として示している。
【0072】
図12は、図11と同じ2つの温度範囲でH2−希釈で製造された水素化非晶質炭化珪素(a−SiC:H)膜に関する孔拡散(Lh)の変動を示す。孔拡散長さは低温で製造された膜に関する方が高い。1.90eV〜1.95eVの禁制帯幅領域では、約800Åの孔拡散長さはほとんど変動を示さない。重要なことに、水素で希釈されたSiH4+CH4混合物から適度な蒸着温度において蒸着させたa−SiC:H膜(Eg<2.0eV)は意義ある電子移動度と寿命との積および比較的大きい周囲孔拡散長さを示す。それらは、H2−希釈なしで蒸着させた膜およびH2−希釈でTg>300℃で製造された膜と比べて、鋭い光学的吸収(ウルバッフ)端部、比較的低いサブ禁制帯幅光学吸収、および改良された原子結合構造も示す。
【0073】
[初期性能:a−SiC:H太陽電池]
5種の水素化非晶質炭化珪素合金太陽電池の初期光起電パラメーターを以下の表6に示す。
【0074】
【表6】
【0075】
真性a−SiC:H合金の材料性質における改良が、比較的高い開放電圧(Voc)および比較的良好な曲線因子(FF)を有するp−i−n太陽電池を生じさせた。三重接合太陽電池中での表面接合として使用される素子用では非常に薄いi−層が必要である。表面接合から7mA/cm2より大きい電流を発生するためには、真性層の禁制帯幅によるが、禁制帯幅が1.7eVから2.0eV近くに変動するにつれてi−層の厚さは650Å以下から1000Å以下に変動してもよい。1.04V程度の高さのVocおよび0.75程度の高さの曲線因子(FF)を有する単接合p−i−n素子が本発明の方法により製作された。
【0076】
図13は、同様な条件下で製作された水素化非晶質炭化珪素(a−SiC:H)のi−層を有する一連のp−i−n太陽電池に関するメタン対シラン(CH4/SiH4)気体比(i−層禁制帯幅)の関数としての開放電圧(Voc)および曲線因子(FF)の変動を示す。開放電圧(Voc)は約1.03〜1.04Vにおいて飽和し始める。a−SiC:H i−層の禁制帯幅における増加は曲線因子(FF)が相対的に高い(すなわち0.6より大きい)ままであっても高いVocを生じず、このa−SiC:H p−層およびa−Si:H n−層がドーピングされた層によるVocおよび生ずる増加した電位に対する制限を課す。比較的高い開放電圧(Voc)をドーピングされた層、特にp−層、における改良で得ることもできる。
【0077】
図20は、その禁制帯幅が1.9eVで固定されているa−SiC電池に関する基板温度によるVocの変動を示す。驚くべきことにそして予期せぬことに、図20のグラフは従来の理解とは逆に、意義ある高いVocが一定のi−層禁制帯幅に関して低温で達成できることを示す。
【0078】
高い開放電圧(Voc)を有する単接合水素化非晶質炭化珪素(a−SiC:H)太陽電池の電流および電圧(J−V)特性が図14に示されている。この素子は1.04VのVocを0.72の曲線因子(FF)と共に有する。
【0079】
我々は、本発明の方法でa−Si:H/a−SiH/a−SiGe:H三重接合モジュールに関して11%を越える初期効率を示した。高品質a−SiC:H i−層を三重接合素子の頂部接合中に加える時には、変換効率は比較的高い開放電圧(Voc)により4〜5%増加させることができる。
【0080】
[a−SiC:H太陽電池の安定性]
非晶質炭化珪素合金i−層素子は、これまで連続的な光ソーキングに対する劣悪な安定性に悩まされていた。本発明に従う比較的良好な品質の真性a−SiC:H合金の蒸着でなされる改良は単接合素子の改良された安定性ももたらした。
【0081】
図15は、2種のa−SiC:H i−層単接合太陽電池の正規化された変換効率および開放電圧(Voc)における劣化を示す。i−層の厚さは約1000Åであり、そしてEg〜1.90eVである。改良された電池はシラン(SiH4)+メタン(CH4)混合物のH2−希釈のこの最適条件下で製造され、そして1.0Vの初期VocおよびFF>0.72を有していた。対照電池は、0.93Vの初期VocおよびFF=0.61を有しており、そして高温におけるH2−希釈で製作された。有利には、改良された電池は、三重接合素子中におけるその用途に関して要求される優れた安定性を示す。改良されたa−SiC:H電池に関する効率の低下は、例えば対照電池の如き予め蒸着されたa−SiC:H電池の中で観察されるものより少ない。
【0082】
図16はナトリウム(Na)放電ランプ下での約50℃の温度における長時間の模擬太陽照明期間の前および後の水素化非晶質炭化珪素太陽電池の電流−電圧(JV)曲線を示す。a−SiC:H素子の改良された安定性が図16に示されており、そこでは単接合素子の電流−電圧(J−V)特性が模擬AM1.5照明下での1700時間の光ソーキングの前および後にプロットされている。重要なことに、全体的な性能は13%だけ低下し、そして素子は0.98Vの開放電圧(Voc)および0.68の曲線因子(FF)を保有している。これまでで、これらは我々が製作したどの単接合a−SiC:H i−層の光ソーキング後のものの中で最高のパラメーターである。
【0083】
a−SiC:H i−層の劣化速度は初期開放電圧(Voc)またはi−層炭素含有量の増加に伴い急速に加速できる。例えば、1.02〜1.03VのVocを有する数個のa−SiC:H太陽電池(i<1000Å)は、ナトリウム(Na)放電ランプでの1000時間の模擬AM1.5光ソーキング後に約50〜70mVのVoc損失および約11%のFF減少を示した。
【0084】
図17は、異なる蒸着条件下で製作された水素化非晶質炭化珪素(a−SiC:H)太陽電池に関する曲線因子(FF)により測定された初期性能と100時間のAM1.5照明後の効率の損失により測定された光誘導劣化との間の関係を示している。i−層禁制帯幅は全ての電池に関してほぼ同じである(Eg≡1.90eV)である。これらのデータはa−SiC:H i層を加えた太陽電池中の傾向を示している。初期性能が良ければ良いほど、安定性が良くなる。
【0085】
上記のことから、水素中で希釈されたシラン(SiH4)+メタン(CH4)混合物から低温において蒸着させたグロー放電水素化非晶質炭化珪素(a−SiC:H)合金の光電子性質は意義ある改良を示すことがわかる。これらの改良が比較的高い開放電圧(Voc)および比較的高い曲線因子(FF)による比較的高い初期性能を有する単接合素子を生じた。これらの素子も長い光−ソーキングに対してかなり大きな安定性を示す。
【0086】
[方法の意義]
水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)およびその合金、特に20%より低い炭素濃度を有する広い禁制帯幅のドーピングされていない水素化非晶質炭化珪素(a−SiC:H)、および1.85eVより小さい光学禁制帯幅を有する水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)、に関する発明されたグロー放電プロセスの重要性は2倍である。最初に新規な蒸着工程を使用して、我々は1.00ボルト以上および1.04ボルト程度に高い(このタイプの素子に関する世界記録である)開放電圧(Voc)を有するa−Si:H系太陽電池を製造することができた。これらの太陽電池は、ドーピングされていないa−SiC:Hおよび次に活性なi−層として炭素合金化しないa−Si:Hを使用すると0.70より大きい高い曲線因子(FF)を有する。VocおよびFFの積は世界記録である。これまでの素子では、約1.0Vの開放電圧(Voc)が観察されているが、それらの場合のFFは典型的には劣悪である(0.4〜0.6)。
【0087】
新規な蒸着方法は、光起電または他の電子/光電子用途のためにこれまでに入手できなかった高品質の広い禁制帯幅のa−SiC:Hおよびa−Si:Hを製造する。高品質の広い禁制帯幅のa−Si:Hおよびa−SiC:H合金は、i−層自身としてまたはp/i界面における緩衝層(界面層)として使用することができる。三重接合太陽電池の開放電圧(Voc)および変換効率は、三重接合素子の少なくとも第一および第二接合に関して、本発明に従い製造されるそのような高品質の広い禁制帯幅i−層または界面層を使用することにより約3〜10%ほど増加させることができる。
【0088】
a−Si:H系太陽電池の実際的な用途および商業化にとって重要なことであるが、新規な方法を使用して蒸着させたa−SiC:Hおよびa−Si:H太陽電池の連続的な露光下での安定性が驚異的に優れていることが見いだされた。本発明の方法により製作されるa−SiC:H太陽電池は、1,700時間の光ソーキング後に約13%の劣化を示した。これは、従来の結果を越える大きな改良である。従って、本発明の方法は、広い禁制帯幅のドーピングされていないa−SiC:Hをa−Si:H系太陽電池中に多重接合電池の第一接合中のかさ高いi−層としてまたはa−Si:Hおよびその合金太陽電池中のp/i緩衝層として最初に加えることを可能にする。a−SiC:Hおよび広い禁制帯幅のa−Si:H太陽電池の大きく改良された安定性が本発明の蒸着方法の最も重要な寄与である。
【0089】
予期せぬことに且つ驚くべきことに、高圧無線周波数(RF)グロー放電蒸着で優れたa−Si:H電池が得られることが見いだされた。典型的には、RFまたは直流(DC)グロー放電a−Si:Hおよびその合金の従来の処理では、圧力は0.1〜0.5Torrである。一般的にはDCグロー放電に関しては、蒸着室内の気圧は約3Torrより高くなく、その理由はこの圧力以上だと安定なプラズマを維持しそして膜蒸着の良好な均一性を保つことが困難であるからである。本発明の方法に関する5.0Torr(好適には約10Torr)より高い蒸着圧力は任意の温度または水素(H2)希釈比または電力においてこれまでに実施されたものよりはるかに高い。本発明の方法は例えば500:1までの非常に高いH2−希釈比も特徴としており、それはアモルファスシリコンおよびその合金を製造するためにこれまで試みられていなかった。先行技術と比較して、低温における安定なa−Si:H合金の製造は明らかに顕著な達成事項である。
【0090】
以下の表7および8には、a−Si:Hおよびその合金を製造するための新規な技術におけるRFおよびDC蒸着条件の範囲が挙げられている。新規な方法を有利に使用して広い禁制帯幅(禁制帯幅>1.80eV)のa−Si:H合金、例えばa−SiC:Hおよびa−Si:H、を製造することができる。
【0091】
【表7】
【0092】
表7におけるH2−希釈比はH2対他の気体、例えばシラン(SiH4)およびメタン(CH4)の気体流比をさしている。a−SiC:H蒸着に関しては、200のH2−希釈比はSiH4およびCH4の合計1部に対して蒸着システム中に流入する200部のH2があることを意味する。これはH2対SiH4およびCH4の気体容量比でもある。全ての気体の合計流量は蒸着システムの寸法および排気システムのポンプ速度に依存するであろう。上記の数字は13インチ×12インチ(約1,000cm2)の太陽モジュールを製作するために特に有用である。選択されるRF電力密度、基板温度、蒸着圧力および蒸着速度は水素希釈比に依存する。RFグロー放電方法は、高い水素希釈度H2/(CH4+SiH4)>80、高い圧力(〜9Torr)、および低い温度(〜150℃)を含むことができる。
【0093】
反応性プラズマがDCまたはRF励起グロー放電により生成される反応器システム中におかれた基板上に薄膜を蒸着させることができる。放電は、種々のプロセスにより損失されるものを均衡するのに十分な数のイオンおよび電子の反応により維持される。主な損失は反応器システムの電極における荷電された粒子の再結合である。中性気体の衝撃イオン化を引き起こすに十分なエネルギーがある電子の生成用にRFグロー放電で利用できる2つの機構があるが、これらの機構の1つだけがDCグロー放電において作用する:(1)電子は弾性衝突によるRF電界からのエネルギーを吸収できそして(2)二次電子は荷電された粒子により衝突される反応室表面から放出される。これらの二次電子がそのような表面近くのいわゆるシース電位による励起によりエネルギーを得る。しかしながら、後者の機構だけがDCグロー放電システムで作用する。
【0094】
RFグロー放電システムは、反応性気体の広い範囲の圧力にわたってだけでなく相対的に低い電界においてそしてさらに相対的に大きな容量でのグロー放電の作用を可能にする励起機構を与える。これらの条件の1つまたは全てにより、RFグロー放電システムが大面積薄膜素子の製造において有用となり且つ魅力的になる。
【0095】
そのような膜を蒸着させることができる反応性グロー放電は、反応室の周りで外部を取り巻くコイルにより、反応器の外部に置かれた容量板により、並びに内部電極により、RFで励起することができる。内部電極を有するそのようなRF反応器中で発生したプラズマは、電極が反応器の外部に置かれている反応器と比べて不均一である傾向がある。そのような外部電極反応器中のプラズマはその部品近くの壁に閉じこめられる傾向がある。
【0096】
それらがDCまたはRF励起タイプであるかどうかにかかわらずグロー放電プラズマ蒸着システムに存在する問題は、グロー放電から生ずる荷電された粒子衝突により引き起こされる蒸着膜に対して生ずる損傷である。この問題はグロー放電領域が膜を蒸着させようとする基板の表面中に伸びるにつれて特に深刻になる。グロー放電蒸着の有害な影響を減少させるための試みの1つの方法は、DC電圧によるグロー方法が進行する場所、すなわちDC電圧がプレートとシステムの陰極の間に印加される場所より十分離れた領域に基板を位置づけることである。これは、グロー放電により成長したイオン化粒子がスクリーンを通過して基板上に至るように、平らなスクリーン電極を有する陰極を配置することにより行われる。
【0097】
無線周波数(RF)グロー放電を発生可能なプラズマ蒸着反応器装置に、反応器システムの陽極と電気的に連結されておりそしてその陰極と陽極の間の配置された有孔スクリーンを装着することができる。このスクリーンは、陰極とスクリーンの間の領域にグロー放電を閉じこめる。伝導性の反応気体から膜を蒸着させようとする基板は、グロー放電領域中でなくスクリーン近くに置かれる。反応性気体を反応器の中心部分の中に有孔スクリーンと陰極の間に加えて、基板上に蒸着されるかもしれない荷電粒子の動力学エネルギーを十分減少させて基板上での膜に対する損傷を最少にすることができる。
【0098】
【表8】
【0099】
蒸着方法における重要な面は、高圧、非常に高い水素(H2)希釈比、低い基板温度、および中程度の励起電力密度の組み合わせである。これらを別個にすると、上記のパラメーターのそれぞれは単独では望まれる結果を得られない。例えば、>8Torrの如き高圧を使用せずに、>150:1の如き高いH2希釈、および<160℃の如き低い温度だけを100mW/cm2の如き中程度の電力密度と共に使用すると、蒸着は水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)の代わりに、それより望ましくない微結晶性シリコン(μc−Si)i−層を生ずるであろう。本発明の蒸着方法は上記の極端なパラメーターの全てを同時に成功裡に使用する最初の例である。
【0100】
[代替原料]
シランおよび水素が最良の結果のための好適な原料であるが、ドーピングされていないプラズマ励起化学蒸着(PECVD)グロー放電a−Si:Hおよびa−SiC:H合金用の多くの代替原料がある。希釈剤である水素(H2)を重水素(D)により交換することができ、希釈剤気体はHDまたはD2である。SiH4に加えてまたはSiH4の代わりのシラン(SiH4)の代替原料は下記の一般式:SiNH2N+2-MYM[式中、Siはシリコンであり、Hは水素または重水素であり、Yはハロゲン、例えば弗素(F)、塩素(Cl)、などであり、NおよびMはN>1および2N+2−M>0の制約を受ける正の整数である]により表すことができる。上記の表示の例は、シラン(SiH4)(N=1、M=0)、ジシラン(Si2H6)(N=2、M=0)、SiF4(N=1、M=4、Yは弗素)、SiHF3(N=1、M=3、Y=弗素)、Si2H2Cl4(N=2、M=4、Y=塩素)、テトラメチルシラン[Si(CH3)4]、などを含む。代替Si原料が使用される時には、最適なまたは好適な蒸着条件に合わせるべきである。
【0101】
水素化非晶質炭化珪素(a−SiC:H)蒸着に関しては、代替炭素原料は実際に多数ある。一般的には、最も典型的な炭化水素類または水素−ハロゲン−炭素化合物、例えばCH4、C2H2、C2H4、C2H6、CF4、C3H8、CDCl3を使用することができる。組み込まれた炭素−珪素結合を含有しておりそして式:CHN(SiH3)4-N[式中、Nは0〜4の範囲の整数である]により表される他の炭素原料、例えばCH3SiH3(メチルシランまたはシリルメタン)、CH(SiH3)3(トリシリルメタン)を使用することができる。例えばCH(SiF3)3のように、上記式における第二の化合物(SiH3)中のHがハロゲンにより置換されていてもよい。メタン(CH4)に加えてまたはその代わりに代替炭素原料が使用される時には、例えばH2−希釈比および電力密度の如き蒸着パラメーターをそれに応じて調節することができる。本発明の方法では、高圧、低温および高い希釈剤濃度の蒸着条件を使用して、高い開放電圧(Voc)および高い曲線因子(FF)を有する安定な太陽電池が得られる。
【0102】
【表9】
【0103】
p/i界面等級を有するかまたは有していない水素化非晶質炭化珪素太陽電池を表9に示されているようにして製作することができる。
ガラス/テクスチャーCTO/p−SiC/i−SiC/n−Si(厚い)/ZnO/金属(Ag、Al、またはNiCr)を非晶質ドーピング層と共に有する水素化アモルファスシリコン単接合太陽電池を上記の蒸着条件に従い製作した。これらの単接合電池は表10および表11に示されているような予期せぬ驚異的に良好な結果を生じた。高い開放電圧(Voc)および高い曲線因子(FF)は、禁制帯幅が>1.95eVである時でもi−層(a−SiC:H)品質が優れていることを示す。
【0104】
【表10】
【0105】
【表11】
【0106】
高い開放電圧(Voc)およびすばらしい安定性を有する非常に改良された水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)および水素化非晶質炭化珪素(a−SiC:H)単接合素子を生じた蒸着条件のいくつかの例を表12に示す。表12における太陽電池モジュールは、4つのi−層、2つのa−Si:Hおよび2つのa−SiC:Hを有する。表12における太陽電池は、1.6cmの電極間隔を有する無線周波数(RF)13.56MHzグロー放電蒸着により製造された。
【0107】
【表12】
【0108】
表12におけるA2357−3に関する劣化は1000時間の光ソーキング後に約25%である。一般的には、比較的低い基板温度が比較的高い開放電圧(Voc)をもたらす。水素(H2)希釈が十分高い限り、低温電池の安定性は非常に良好であるようである。
【0109】
上記のことから、優れた品質のアモルファスシリコン太陽電池を高圧、高い水素(H2)希釈、および低温の条件下でアモルファスシリコン合金プラズマ化学蒸着(CVD)により製造できることがわかる。本発明の方法は、中圧ないし高圧(>4Torr、例えば10Torr)、原料の高いH2希釈(例えば>50:1)、および相対的に低い温度(例えば室温ないし150℃もしくは200℃)の組み合わせ条件下で、高品質の安定な電子材料、例えばa−Si:Hおよびその合金、のプラズマCVD蒸着(グロー放電)を生じる。パラメーターのこの独特な組み合わせはこれまでは成功するとは考えられていなかった。
【0110】
本発明の方法は、比較的高い開放電圧(Voc)、比較的良好な曲線因子(FF)、光照明下での比較的遅い劣化および比較的高い長時間効率を有する素子(太陽電池)用途のための高い電子品質を有する広い禁制帯幅の非晶質の水素化Si−C合金(a−SiC:H)を製作する。これまでは、>1.00ボルトの高い開放電圧(Voc)を良好な曲線因子(>0.70)と共に有するa−SiC:Hまたはa−SiH太陽電池をグロー放電方法により製造することはできなかった。
【0111】
本発明の蒸着方法はプラズマ励起CVDを用いるa−Si:Hまたは他の材料の蒸着に適用することができる。本発明は上記のものと同様な条件下で材料の直接的および遠隔プラズマCVD蒸着を包括する。例えば電力密度または電気バイアスの如き蒸着パラメーターは希望により変えることができる。本発明の方法は、a−Si:Hおよびa−SiC:H膜、電池および太陽モジュールを製造するために特に有用である。本発明の方法で優れた移動性質が得られる。非晶質炭化珪素中のかなりの量の炭素基の存在が、そうでなければ微結晶性珪素(μc−Si)をもたらす可能性がある非常に高いH2希釈の条件下でも微結晶の生成を防止することができる。水素希釈の増加がa−SiC:Hのワイドギャップ材料を改良できる。この方法はまた成長中の水素による比較的良好な表面被覆も与えて、成長前駆体の比較的高い表面移動性および不足分の水素補充の比較的良好な機会を得る。この方法はまた、比較的良好な微細構造、比較的均一な成長および成長表面における比較的少ないイオン衝突を与えることもできる。高いH2希釈、低温および高圧の組み合わせは、膜成長表面においてH−基を飽和させ、それにより室温近くの蒸着後のH−再構成を回避または減少させることにより、さらに安定なa−Si合金を製造することもできる。望ましくは、高圧a−SiC膜は、従来の低圧および低温で製作された膜とは異なり、基板に良好に付着する。このことは、膜における比較的小さい応力、比較的良好な膜性質および安定性を示唆している。
【0112】
プロセス条件は、相対的に低い温度における比較的高い圧力(例えば>10Torr)および比較的高いH2希釈(例えば>100:1)を含み得る。圧力は安定なプラズマを維持する能力により制限されるかもしれない。放電(rf)電力密度は、通常の蒸着条件(200〜300℃、中程度のH2希釈、低圧すなわち0.2〜1.5Torr)下のものと異なっていてもよい。比較的高い圧力にプラズマを維持するためには比較的高い電力が必要となるかもしれない。
【0113】
基板温度および水素希釈に対する太陽電池の安定性の依存性
比較的低い基板温度(<250℃)における本発明の方法による蒸着が太陽電池の開放電圧(Voc)を意義あるほど改良することが発見された。さらに、水素(H2)希釈を比較的低い基板温度と組み合わせて使用する時には、太陽電池の安定性も意義あるほど改良される。対照的に、比較的低い基板温度をH2希釈なしに使用する時には、素子の安定性は一般的に悪化する。
【0114】
SiCおよびSi電池の安定性は、新規な低温H2希釈蒸着により劇的に改良された。260℃においてH2希釈なしに製造された電池に関すると、劣化速度の最も重要な要素はi−層の厚さである。第二の最も重要な要素はp−i界面層の性質であった。しかしながら、i−層蒸着温度および蒸着速度は劣化速度に強く影響する。
【0115】
[試験]
種々の水素(H2)希釈水準を用いて数種の温度において、単接合a−Si:H p−i−n太陽電池を製造した。これらの素子の安定性を評価した。安定性に影響を与える可能性のある素子中のi−層の厚さは、試験で使用された全ての素子に関して大体一定に保たれていた(1700Å〜2200Å)。
【0116】
表13は、長期間の光ソーキング(100mW/cm2強度における519時間)の前および後のこれらの試験で使用された選択された代表的素子に関する光起電パラメーターを示す。
【0117】
【表13】
【0118】
素子の安定性に関する多くの傾向を表13から見いだすことができる。安定性は長期化された露光後の正規化された電池効率として定義することができる。最初に、H2希釈比があるしきい値以下である時には、a−Si:Hの蒸着における水素(H2)希釈の増加で素子の安定性が改良される。このしきい値は、例えば、210℃における約10:1および150℃における約30:1である。
【0119】
図18は、水素(H2)希釈度を変動させて150℃で製造された一連の素子に関して対数目盛りで露光時間の関数として正規化された電池効率をプロットすることにより上記の傾向を説明している。図18では、H2希釈で製造された素子中では光誘導劣化がH2希釈なしで製造された素子での光誘導劣化(>1000時間)よりはるかに早く(〜100時間)飽和することも明らかである。
【0120】
これらの試験から見いだすことができる第二の傾向は、一定のH2希釈比では素子の安定性は基板温度の低下につれて劣化することである。これは、それぞれ210℃および150℃においてしかし同じH2希釈比(10:1)で製造された2つの電池の正規化された効率を示す図19から明らかにわかる。図19における正規化された効率は、対数露光時間の関数としてプロットされている。
【0121】
上記の2つの傾向を組み合わせることにより、我々は素子の開放電圧(Voc)および安定性を同時に最適化するためには十分高いH2希釈比と共に十分低い基板温度を使用してa−Si:H系太陽電池を蒸着させるべきである、と結論づけることができる。上記の発見を適用する温度およびH2希釈比に関する範囲は、80℃〜280℃の範囲の温度および1:1〜100:1の水素(H2)希釈であるべきである。
【0122】
[改良]
低温、H2希釈された珪素蒸着から生ずる単接合および多接合電池には多くの重要な改良がある。図19に示されているように、本発明の方法により製造される電池の劣化は時間に対する異なる関数依存性を有する。長期間の露光後に、時間の対数に対してプロットされる時に効率はほぼ直線的に変化する。さらに、i−層の厚さに対する劣化速度の依存性が大きく減じられて、約3000Åより大きい厚さに関しては劣化速度はi−層の厚さに対してはるかに減じられた依存性を有する。希釈の増加は安定性を改良するが、直線的ではない。比較的低い成長速度は比較的良好な安定性をもたらすことができる。その他の全てが一定に保たれると、蒸着温度が低下するにつれて安定性は悪化する。しかしながら、温度が低下し、希釈度が増加するなら、安定性は保たれるようである。
【0123】
水素希釈を用いるか又は用いないプラズマCVD蒸着により製造される単接合および多重接合セルの劣化速度の比較が表14で評価されている。
【0124】
【表14】
【0125】
[アモルファスシリコンゲルマニウム]
本発明の蒸着方法を用いる素子改良は、安定性のためのグロー放電蒸着におけるシラン/水素比の最適化、中間および底部i−層中へのゲルマニウムの加入、並びに比較的薄いi−層を含む。本発明の蒸着方法は11.35%の初期変換効率を有する900cm2モジュールを製造した。1000時間の光ソーキング後に、太陽電池モジュールは約9%の効率で安定化した。
【0126】
本発明の態様を示しそして記載してきたが、本発明の新規な精神および範囲から逸脱しない限り当技術の専門家により種々の改変および置換、並びに部品、成分、および工程段階の再配置を行えることは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は太陽電池の出力のグラフである。
【図2】図2は曲線因子(FF)を示すグラフである。
【図3】図3は蒸着パラメーターの特定セットに関する蒸着温度の関数としての光学禁制帯幅のグラフである。
【図4】図4は低温膜の赤外線スペクトルのグラフである。
【図5】図5は蒸着温度に対するVocおよびEg/2の依存性を示すグラフである。
【図6】図6は波長の関数としての量子効率のグラフである。
【図7】図7は光ソーキング時間にわたる正規化された効率のグラフである。
【図8】図8は光ソーキング時間にわたる正規化された効率に対する水素希釈の増加の影響のグラフである。
【図9】図9は種々の非晶質炭化珪素膜に関する周囲孔拡散長さの変動を示すグラフである。
【図10】図10は非晶質炭化珪素膜に関するウルバッフエネルギーのグラフである。
【図11】図11は種々の禁制帯幅に関する光電子μτのグラフである。
【図12】図12は種々の禁制帯幅に関する周囲孔拡散のグラフである。
【図13】図13は水素化非晶質炭化珪素太陽電池に関するメタン対シラン気体比の関数としての開放電圧(Voc)および曲線因子(FF)のグラフである。
【図14】図14は単接合非晶質炭化珪素太陽電池に関する電流密度および電圧のグラフである。
【図15】図15は正規化された効率および開放電圧(Voc)の劣化のグラフである。
【図16】図16は光ソーキングの前および後の電流密度および電圧のグラフである。
【図17】図17は効率劣化および初期曲線因子(FF)のグラフである。
【図18】図18は種々の水素希釈に関する正規化された効率の劣化のグラフである。
【図19】図19は種々の蒸着温度における正規化された効率の劣化のグラフである。
【図20】図20は固定されたi−層光学禁制帯幅に関する開放電圧および基板温度の関係を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明はアモルファスシリコンおよびその合金から製作される光起電デバイスおよび電子デバイス、特に光起電デバイスおよび電子デバイスの光学的および電気的性質を強めるプラズマ蒸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池および他の光起電デバイスは、太陽光線および他の光を有用な電気エネルギーに変換する。このエネルギー変換は光起電効果の結果として起きる。光起電デバイスに衝突しそして半導体材料の活性領域、例えばアモルファスシリコンの真性i−層により吸収される太陽光線(日光)が活性領域内で電子−正孔対を発生する。電子および正孔は光起電デバイス中の接合の電界により分離される。接合による電子および正孔の分離が電流および電圧の発生をもたらす。電子はn−タイプ伝導性を有する半導体材料の領域に向かって流れる。光が光起電デバイス中で電子−正孔対を発生し続ける限り、電流はn−タイプ領域をp−タイプ領域に連結する外部回路を通って流れるであろう。
【0003】
アモルファスシリコン太陽電池は、シランのグロー放電で製造することができる水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)材料の本体から構成される。そのような電池は1977年12月20日にDavid E.Carlson に対して発行されたアモルファスシリコンの本体を有する半導体装置という名称の米国特許第4,064,521号に記載されているタイプのものであってよい。電池の本体内には、異なる伝導性タイプの本体を含む半導体領域から生ずる電界がある。
【0004】
アモルファスシリコン太陽電池は、シラン(SiH4)のグロー放電によりしばしば製作されている。グロー放電プロセスは部分的に真空にされた室内での相対的に低い圧力および高い温度における気体によるエネルギーの放出を含む。アモルファスシリコン太陽電池を製作するための典型的な方法は、基板を真空室内の加熱された部品の上に置くことを含む。スクリーン電極またはグリッドが電力源の1つの端子と連結されており、そして第二の電極が電力源の他の端子と連結されており、基板が第二の電極とスクリーン電極の間にある。シランは低圧において真空室内に入るため、グロー放電が2つの電極の間で確立され、そしてアモルファスシリコン膜が基板上に堆積する。
【0005】
アモルファスシリコンは不純物をシランに加えることによりドーピングできる。例えば、第一のドーピング剤はジボラン(B2H6)であってもよく、それをシランに加えてp−タイプアモルファスシリコン層を生成する。p−タイプ層が100オングストローム(Å)の桁の厚さまで形成された後に、ジボラン流を停止して数千オングストロームの桁の厚さを有する真性領域を形成する。その後、n−タイプドーピング剤、例えばホスフィン(PH3)をシラン流に加えて数百オングストロームの厚さを有するn−タイプアモルファスシリコン層を形成する。n−タイプ層の上に、透明な伝導性層が形成される。一般的には酸化亜鉛(ZnO)を使用して透明な伝導性層を形成する。
【0006】
p−i−n構造またはn−i−p構造を有する単接合アモルファスシリコン太陽電池を形成することができる。太陽電池の基板はガラスまたは金属、例えばアルミニウム、ニオブ、チタン、クロム、鉄、ビスマス、アンチモンもしくは鋼から製造することができる。ガラス基板が製造されるなら、透明な伝導性コーテイング、例えば酸化錫(SnO2)をアモルファスシリコンの形成前にガラス基板に塗布することができる。金属電極を基板の背面に形成することもできる。
【0007】
半導体材料により吸収される異なるエネルギーおよび波長の光子の合計数を増加させることにより、光起電デバイスの電流出力は最大になる。太陽スペクトルは、それぞれ約4.2eVから約0.59eVに相当する約300ナノメートルから約2200ナノメートルの波長の領域に大体及ぶ。光起電デバイスにより吸収される太陽スペクトルの部分は半導体材料の禁制帯幅エネルギーの大きさにより決められる。結晶性珪素(c−Si)は約1.1eVの禁制帯幅エネルギーを有する。この禁制帯幅エネルギーより少ないエネルギーを有する太陽光線(日光)は半導体材料により吸収されず、従って光起電デバイスの電気(電流および電圧)の発生に寄与しない。
【0008】
アモルファスシリコン太陽電池は20年前に最初に製造された。太陽電池素子の第一世代は、低い効率並びに現在ではステブラー−ロンスキー効果として知られている現象である光劣化に悩まされていた。数年間にわたり、初期性能および安定性の両者における多くの改良がなされ、現在では多くのモノリシック的に連結された電池(セル)からなる一般的な大面積多重接合モジュールは9%より低い安定化された性能を示す。
【0009】
最初の電池はショットキバリアデバイスでありそして約0.55Vの開放電圧(Voc)を有していた。最初のp−i−nホモ接合およびその後のp−SiC/i、n−Siヘテロ接合を含む太陽電池の構造における一連の改良が開放電圧(Voc)の実質的な改良をもたらした。別の改良はp−SiC層とi−層との間への薄いi−SiC層の挿入から生じた。Vocにおける増加は、改良されたp−層の使用によるp−i界面層における改良によってまたは電池中への比較的高い禁制帯幅i−層の加入による透明伝導体上の改良によって、実現ができる。しかしながら、最後の2つの技術、すなわちp−i界面の改良およびSiC合金の使用もしくはi−層蒸着条件の変更による真性層の間隙の拡大は、光劣化に対する比較的低い耐性を有する材料を生ずることがある。蒸着方法およびデバイス構造の正確な詳細事項が非常に重要である。
【0010】
水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)系太陽電池の性能は露光により劣化する。p−i−n太陽電池中の真性a−Si:H層の電子的性質の劣化がデバイス性能の劣化の大部分に寄与すると信じられている。a−Si:H層は伝統的には約250℃の基板温度における純粋シランのグロー放電から蒸着される。そのような条件下で製造されるデバイスに関しては、太陽電池の効率は100mW/cm2強度における10,000時間までの光ソーキングでは露光時間の対数に正比例して劣化しそして次にこの時間枠を越えると飽和する。
【0011】
従来法(水素希釈しない)により製造される単接合シリコン電池の特徴は、変換効率、すなわち太陽光線を電気に変換させる際の太陽電池の効率、の経時損失(劣化)である。時間の対数に対してプロットされた効率は、ある場合には少なくとも10,000時間を越えるまで観察されて直線を与える。幾つかの例外では、この効率の直線依存性から逸脱しないが時間が経つにつれて衰微し続けることが観察された。直線の傾斜は原則的にはi−層厚さの関数であった。経験的な原則は、10年当たりの効率の損失が300により割算されたオングストローム単位でのi−層の厚さであることである。一例として、4000Å厚さの電池は4000/300=13%/10年を損失するであろう。p−i界面層の適切な設計によりこの線の傾斜に影響を与えることなく初期効率を改良できることが見いだされた。しかしながら、界面層設計が正確でないと、効率−対数時間曲線の傾斜は増加するであろう。水素希釈なしでの比較的低い蒸着温度への移行が線の傾斜を実質的に増加させるであろう。低い蒸着速度、例えば4〜10Å/秒では、劣化速度は蒸着速度により影響を受けない。しかしながら、高い蒸着速度では劣化速度は増加する。
【0012】
多重接合電池の劣化速度は多重接合電池を構成する成分セルの劣化速度のほぼ平均である。一例として、高温において且つ水素希釈なしに製造される4000Å厚さのi−層を有する単接合アモルファスシリコン電池は1000時間の光ソーキングでその初期効率の40%を損失するかもしれない。i−層の同じ合計厚さ(表面i−層700Å、裏面i−層3300Å)を有するSi/Siタンデムは約20%(表面i−層損失約7%、裏面i−層損失約33%)しか損失しない。
【0013】
安定性は、太陽電池の効率(性能)が連続的またはパルス式の太陽照射下でどのように変化または劣化するかという特性である。a−Si:H光起電(PV)技術における最大の難問の一つは不安定性の問題であった。従来の先行技術の水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)太陽電池は、特に厚いi−層を有する電池に関しては、光ソーキングで非常に劣化する可能性がある。光電気産業では水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)に対する少量の炭素の添加が、1000Åより少ないi−層厚さを有する薄い電池であっても、太陽電池を非常に不安定化させることが知られている。従来の先行技術を使用する予め蒸着させた非晶質炭化珪素(a−SiC:H)太陽電池は数百時間の模擬太陽照射後に効率低下が70%を越えることが多かった。
【0014】
これまでは、アモルファスシリコンおよびその合金を低濃度の水素希釈を用いて少なくとも250℃の温度および0.5Torrより低い圧力におけるグロー放電により蒸着させていた。この従来のグロー放電方法および他の方法の例は米国特許第4,064,521号、第4,109,271号、第4,142,195号、第4,217,148号、第4,317,844号、第4,339,470号、第4,450,787号、第4,481,230号、第4,451,538号、第4,776,894号、および第4,816,082号に記載されているものである。これらの従来の先行技術方法の成功度は変動する。これまで、光起電およびアモルファスシリコン蒸着技術の専門家は一般的には低温蒸着は、安定性に劣り、低品質の製品しか製造できないと信じていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、改良された性質を有するアモルファスシリコンデバイスを製造するための改良された方法を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
電子デバイス、特に太陽電池モジュールにおいて使用するための太陽電池を製作するための改良方法が提供される。有利なことに、この新規な方法は予期せぬことに且つ驚くべきことに、アモルファスシリコン系太陽電池の安定性、変換効率、曲線因子(FF)および開放電圧(Voc)を非常に改良する。0.7より大きい曲線因子(FF)、0.9Vより大きい開放電圧、好適には1.0Vより大きい開放電圧、および比較的広い光学禁制帯幅を有する強力な単接合および多重接合アモルファスシリコン系太陽電池を製造することができる。重要なことに、この独特な方法により製造される太陽電池の活性な真性i−層の部分は例えば100〜1500時間の直射日光中での光ソーキングにより完全に飽和して太陽電池のそれ以上の光劣化(光変性)を防止する。
【0017】
新規な方法では、アモルファスシリコンまたはその合金の活性な真性i−層もしくは領域、p−i界面またはi−n界面を低い蒸着温度および高い蒸着圧力において、例えば水素(H2)および/または重水素(D2)の如き希釈剤気体で高度に希釈されたシランまたは他の蒸着気体(原料)のプラズマ励起化学蒸着(PECVD)により蒸着させる。望ましくは、基板の蒸着温度(Ts)は最良の結果のためには実質的に250℃より低く、そして好適には220℃より低く、且つ実質的に80℃より高い。蒸着圧力は実質的に0.5〜1.0Torrより大きく且つ50Torrより小さく、そして好適には2Torrより大きく且つ20Torrより小さい。
【0018】
プラズマ蒸着は一般的には陰極直流(DC)グロー放電、陽極DCグロー放電、無線周波数(RF)グロー放電、非常に高い周波数の(VHF)グロー放電、マイクロ波蒸着(マイクロ波グロー放電)または交流(AC)グロー放電によるものであってよい。アモルファスシリコンベース領域は水素化アモルファスシリコン、水素化非晶質炭化珪素、または水素化アモルファスシリコンゲルマニウムを含んでいることができる。好適には、少なくとも1つの接合が半導体デバイスまたは太陽電池のアモルファスシリコン層と作用可能に連結されている。接合は、半導体接合、三重接合、二重接合または他の多重接合、並びにタンデム接合、ヘテロ接合、整流接合、トンネル接合、またはショットキバリアを含むバリア接合であってよい。p−i−nまたはn−i−p接合を有する太陽電池を新規な方法により製造することができる。
【0019】
望ましくは、最良の結果のためには希釈剤気体流速および希釈比は高い。希釈剤(水素および/または重水素)の濃度のシラン(SiH4)または一部の他の蒸着気体(原料)に対する希釈比は好適には少なくとも10:1であり、例えば10,000:1のように実質的に100:1より大きくてもよく、好適には1000:1より小さく、最も好適にはRF蒸着用には300:1より小さく、そしてDC蒸着用には200:1より小さい。シラン(SiH4)がアモルファスシリコン太陽電池および半導体用の好適な蒸着気体である。ある環境では、シランに代えてまたはシランと組み合わせて他の蒸着気体(原料)、例えばジシラン(Si2H6)、テトラメチルシラン[Si(CH3)4]、SiF4、SiHF3、Si2H2Cl4、および一般式:SiNH2N+2-MYM
[式中、Si=珪素、
H=水素または重水素、
Y=ハロゲン、
N=1以上の正の整数、
M=正の整数、および
2N+2−M≧0]
を有する他の蒸着気体を使用することが望ましい。
【0020】
シラン(SiH4)およびメタン(CH4)がアモルファスシリコン太陽電池および半導体用の好適な蒸着気体である。シランおよび/またはメタンに代えてまたはそれらと組み合わせて他の蒸着気体(原料)、例えばメチルシランまたはシリルメタン(CH3SiH3)、トリシリルメタン[CH(SiH3)3]、および一般式CHN(SiH3)4-N[式中、Nは0〜4の範囲の整数である]を有する他の蒸着気体、並びに他の炭化水素蒸着気体、例えばアセチレン(C2H2)、エチレン/エテン(C2H4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)、および/またはハロカーボン(ハロゲン−炭素)気体、例えばCF4、CDCl3を使用することができる。重要なことに、本発明の方法はアモルファスシリコンを含む素子の安定性を改良する。上記のように、本発明の方法は水素の存在下での低温高圧化学蒸着(CVD)によるアモルファスシリコン系材料の少なくとも一部の製作を含む。そのようなCVDはDC、AC、RFおよびマイクロ波蒸着を含むことができる。
【0021】
有利には、本発明の方法は光起電デバイスに関して特に有用であり、アモルファスシリコンの反射コーテイングを有する太陽電池、太陽モジュール、太陽パネル、太陽屋根、建物窓、およびガラスパネルにおける光誘導劣化を減少させる。本発明の方法は電子デバイス、例えば薄膜電界トランジスター(TFT)、半導体、ダイオード、テレビジョン、コンピューターディスプレイ、マトリックスアドレスアレイ、イメージセンサーアレイ、活性マトリックス液晶ディスプレイ(LCD)、医学用X線撮影装置、光受容器、光複写機、光学的走査器(スキャナ)、ファクシミリ機、レーザープリンター、光学センサー、および光偏向器中での電流−誘導(注入)劣化を減少させるにも有用である。
【0022】
望ましくは、本発明の方法では太陽電池の光誘導劣化は、太陽電池の自然太陽光線または模擬太陽光線への露光(光ソーキング)の飽和水準に達した後に、例えば100から1,000〜1,500時間後に、好適には100〜500時間後に、実質的に防止される。これはアモルファスシリコン領域、例えば真性層またはp−i界面を太陽電池中で、自然太陽光線または模擬太陽光線への露光飽和時間後に、例えば100〜1,500時間後に、好適には100〜500時間後に電池の光誘導劣化の飽和を引き起こすのに十分な温度および圧力におけるグロー放電により蒸着させることによって達成される。望ましくは、アモルファスシリコン領域を有する単接合太陽電池は、飽和時間前に、1,000Å厚当たり実質的に15%より少なく、好適には10%より少なく、最も好適には約7.5%もしくはそれ以下だけ劣化する。非晶質炭化珪素領域を有する単接合太陽電池は、飽和時間前に、1,500Å厚当たり実質的に55%より少なく、好適には5%〜30%だけ劣化する。
【0023】
DCグロー放電は80〜210℃の範囲の温度において、0.1〜10Torrの範囲の圧力において、10:1〜200:1の範囲の希釈剤対原料(蒸着気体)の希釈比で行うことができる。RFグロー放電は80〜220℃の範囲の温度において、1〜50Torrの、好適には2〜20Torrの範囲の圧力において、1,000:1より小さい、好適には10:1〜400:1のそして最も好適には20:1〜200:1の範囲の希釈比で行うことができる。
【0024】
新規な方法は、0.9ボルトより大きい開放電圧(Voc)および0.7より大きい曲線因子(FF)を有する太陽電池を製造するために特に有用である。RFおよびDCグロー放電を用いる本発明の方法では、アモルファスシリコンまたは非晶質炭化珪素を含む活性領域を有する太陽電池は単接合電池に関しては1より大きい開放電圧を有するように製造され、多重接合電池に関しては11%よりはるかに大きい変換効率を有するように製造される。
【0025】
予期せぬことに且つ驚くべきことに、安定性が水素希釈および蒸着温度の関数であることが見いだされた。一定の蒸着温度におけるしきい値までの希釈剤気体(例えば水素)対蒸着気体(例えばシラン)の希釈比の有意な増加が、好適には1,000〜1,500時間以内の、そして最も好適には100〜200時間の光ソーキングの飽和期間後に太陽電池の光誘導劣化を実質的に最少にしそして防止することにより、太陽電池の安定性を大きく改良する。希釈比のしきい値は約210℃の蒸着温度において約10:1である。希釈比のしきい値は約150℃の蒸着温度において約30:1である。太陽電池の安定性を、蒸着圧力およびプラズマ蒸着力を相対的に低く保つことにより、並びに活性層の成長速度を減少させることにより、さらに増加させることもできる。
【0026】
本発明は上記の技術および工程段階のいずれかにより製造される太陽電池も含む。好適な太陽電池は、太陽電池を自然太陽光線または模擬太陽光線に上記の時間、すなわち1,000〜1,500時間、好適には100〜500時間の期間にわたり露光(光ソーキング)した後に太陽電池の光誘導劣化を実質的に防止する急速光飽和可能なアモルファスシリコン含有領域を有する。太陽電池は光ソーキングされた飽和領域を有する。好適な形態では、太陽電池は0.9ボルトより大きい、最も好適には1ボルトより大きい開放電圧(Voc)、および0.7より大きい曲線因子(FF)を有する高電圧領域を有する。高電圧領域は好適には9%より大きい、最も好適には11%より大きい変換効率を有する。この領域は活性な真性i−層、i−n界面またはP−i界面であることができる。珪素含有領域は好適には水素化アモルファスシリコンまたは水素化非晶質炭化珪素を含むが、ある環境では水素化アモルファスシリコンゲルマニウムを使用することも望ましい。
【好ましい実施形態の説明】
【0027】
本発明のさらに詳細な説明が添付図面と一緒にされた以下の記述および付随する請求の範囲の中でなされている。
図1は太陽電池の出力のグラフであり、
図2は曲線因子(FF)を示すグラフであり、
図3は蒸着パラメーターの特定セットに関する蒸着温度の関数としての光学禁制帯幅のグラフであり、
図4は低温膜の赤外線スペクトルのグラフであり、
図5は蒸着温度に対するVocおよびEg/2の依存性を示すグラフであり、
図6は波長の関数としての量子効率のグラフであり、
図7は光ソーキング時間にわたる正規化された効率のグラフであり、
図8は光ソーキング時間にわたる正規化された効率に対する水素希釈の増加の影響のグラフであり、
図9は種々の非晶質炭化珪素膜に関する周囲孔拡散長さの変動を示すグラフであり、
図10は非晶質炭化珪素膜に関するウルバッフエネルギーのグラフであり、
図11は種々の禁制帯幅に関する光電子μτのグラフであり、
図12は種々の禁制帯幅に関する周囲孔拡散のグラフであり、
図13は水素化非晶質炭化珪素太陽電池に関するメタン対シラン気体比の関数としての開放電圧(Voc)および曲線因子(FF)のグラフであり、
図14は単接合非晶質炭化珪素太陽電池に関する電流密度および電圧のグラフであり、
図15は正規化された効率および開放電圧(Voc)の劣化のグラフであり、
図16は光ソーキングの前および後の電流密度および電圧のグラフであり、
図17は効率劣化および初期曲線因子(FF)のグラフであり、
図18は種々の水素希釈に関する正規化された効率の劣化のグラフであり、
図19は種々の蒸着温度における正規化された効率の劣化のグラフであり、そして
図20は固定されたi−層光学禁制帯幅に関する開放電圧および基板温度の関係を示すグラフである。
【0028】
[好適態様の詳細な記述]
[素子の物理的性質]
単接合素子は3つの層からなる。これらは外部領域またはドーピングされるp−およびn−層並びに真性領域またはドーピングされていない(少なくとも意図的なドーピングを含まない)i−層である。i−層はドーピングされた層よりはるかに厚い。これは主としてi−層で吸収される光が外部回路で使用できる電力に変換されるためである。i−層(時には吸収層と称される)の厚さはどのくらい多くの光が吸収されるかを決める。光の光子がi−層で吸収される時には、それが1単位の電流(1つの電子−正孔対)を生じさせる。しかしながら、この電流はそれ自身ではどこにも行かないであろう。それ故、p−およびn−層がある。荷電されたドーピング剤イオンを含有するこれらの層がi−層を越えて強い電界を設定する。i−層から電荷を引き抜き、電荷が機能できる(すなわち電球に電力を与える)外部回路の中に電荷を送るのはこの電界である。
【0029】
典型的なp−i−n単接合太陽電池が表1に示されている。
【0030】
【表1】
【0031】
p−i−界面層はp−層の端部に多分5%の炭素を含有するa−SiCであろう。この組成を次にそれがi−層の端部に炭素を含有しなくなるまで線形に傾斜させる。しかしながら、p−i界面層を製造するための多くの方法があり、それらの全てが傾斜または炭素の使用を含むとは限らない。
【0032】
表1に示されているように、単接合太陽電池は金属および好適にはガラスから製造される基板を有することができる。透明な伝導性金属酸化物(TCO)、例えば酸化錫、を含む表面電極を基板上に蒸着させることができる。p−i−n接合が表面電極と例えばアルミニウムまたは銀の如き金属から製造される裏面(リア)電極との間に挟まれる。p−i−n接合は、(1)p−層を製造するための例えばジボラン(B2H6)の如きp−タイプドーピング剤がドーピングされたアモルファスシリコン系半導体材料の層、(2)活性な真性i−層を生成するアモルファスシリコン系半導体材料のドーピングされていない層、および(3)n−層を製造するための例えばホスフィン(PH3)の如きn−タイプドーピング剤でドーピングされたアモルファスシリコン系半導体材料の層を含む。n−タイプドーピング層はi−層と整流接合を形成することができ、そして裏面電極とのオーム性電極を形成することができる。ガラス基板上の入射光は、基板、表面電極、およびp−i−n接合中を通る。裏面電極により光をp−i−n接合に反射させることができる。
【0033】
太陽電池は単接合または多重接合電池であってよい。多重接合またはタンデム電池は単に単接合p−i−n電池の積層である。タンデム電池には2つの利点があり、第一は光吸収である。異なる非晶質合金は太陽スペクトルの異なる部分を吸収する。非晶質炭化珪素(a−SiC)は紫外(UV)線を効率的に吸収するが、ほとんどの可視光線および全ての赤外線を通過させる。アモルファスシリコン(a−Si)は紫外線を吸収し(しかしa−SiCほど効率的でない)、可視光線を効率的に吸収するが、多くの赤外(IR)線は吸収しない。アモルファスシリコンゲルマニウム(a−SiGe)はIRを効率的にそしてUVおよび可視光線を一般的には非効率的に吸収する。
【0034】
タンデム太陽電池の1つの利点は、各々の層(接合)が異なる吸収層を有するため事実上全ての光の波長を効率的に吸収できることである。タンデム電池の第二の利点は、吸収層が太陽スペクトルに適応されておりそして光を効率的に吸収するためそれらが比較的薄くてよいことである。比較的薄い層はステブラー−ロンスキー効果に関して安定性が大きい。従って、タンデム太陽電池は、同じ光吸収能力を有する単接合光起電デバイスより本質的に安定性が大きい。
【0035】
タンデム太陽電池はトンネル接合により分離され、そして積層構造に配置された水素化アモルファスシリコンの層を有することができる。層の厚さを調節して効率を最大にし、そして各層で発生した電流を等しくすることができる。タンデム太陽電池は、アモルファスシリコン層中の水素濃度を調節することにより変動するアモルファスシリコン層の禁制帯幅を有することができる。
【0036】
一部の典型的な多重接合太陽電池が表2〜4に示されている。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
[電池試験および特性]
初期性能の二種の標準試験がある。第一の光I−V測定では、電池を模擬太陽光線を与える光源下に置き、そしてその電気的性能を測定する。商業用または改変された商業用のシミュレーターを使用することができる。第二の標準試験は量子効率測定と称され、そして異なる波長の光を使用するための電池の能力に関する情報を与える。アモルファスシリコンおよびその結果としてa−Si系太陽電池の性質は露光で劣化する。ナトリウム放電ランプが明るい一定の光源を与える。これらの灯のスペクトルは太陽スペクトルと異なるが、光強度が同一である限りスペクトル分布はあまり問題でなく、そして説明できることを我々は見いだした。電池を灯の上に置き、それらをシミュレーターと同じ方法で目盛り付けし、そして電気的性質を時間の関数として監視する。
【0041】
太陽電池の最も重要な測定はその変換効率である。変換効率は外部負荷、例えば電球、により使用できる電気エネルギーに変換される電池上で衝突する光のエネルギーの百分率である。
【0042】
太陽光線(正午における平らな表面の衝撃)中のエネルギーは約100mW/cm2である。簡便さのために、ソーラーシミュレーターが照射するエネルギーが100mW/cm2にできるだけ近くなるように目盛り付けする。従って、この工程はどのくらいのエネルギーが電池により照明時に製造されたかを測定するためのものである。
【0043】
太陽電池の出力は図1に示されており、そこではVoc=開放電圧であり、Pmax=最大太陽電池出力であり、Jsc=短絡電流である。太陽電池は電力を図1の右下四分円内でJscとVocの間で発生する。太陽電池は図1の右上および左下四分円内で電子試験回路からの電力を吸収する。生じた電力は、電流および電圧の積である。図1における左から右への曲線に沿っていくと、曲線が電流軸と交差する点は電力が生じないかまたは吸収されないところである(電力=電圧×電流=0×Jsc)。この点における電流は短絡電流(Jsc)である。図1の曲線に沿って進むにつれて、最終的にPmaxの印が付けられた点において電圧と電流との積が最大になるまで、電圧および電流の積が増加する。さらに図1の曲線に沿っていくと電流と電圧との積の減少が生ずる。最終的には、電圧軸に達する。この点において、電流=0であるため発生する電力は0である。この点における電圧が開放電圧と称される。最大出力点における電圧および電流はそれぞれVmaxおよびJmaxと称される。
【0044】
電池効率は、それが発生できる電力の最大量により決められ、それは最大出力点における電力である。変換効率は発生するエネルギー対注入エネルギーの比であると定義することができ、それは電力により定義することもできる。太陽電池の変換効率は以下の通りに測定することができる:
効率(%)=(Pmax/Pincident)×100
=(Pmax/100)×100
=Pmax
効率=Pmax =Vmax×Jmax
=Voc×Jsc×FF
Voc=開放電圧、すなわち電流が引っ張られない(電池が開路である)状況において電池により発生した電圧。あなたが電圧計付きの自動車のバッテリーの端子間の電圧を測定するなら、あなたは開放電圧(12Vより少し上)を測定するであろう。
【0045】
Jsc=短絡電流、すなわちそれが短絡されているなら電池を通過する電流。あなたがあなたの自動車のバッテリーの端子間にレンチを落とすなら、あなたはレンチを通る短絡電流(数百アンペア)を測定するであろう。太陽電池上の短絡電流ははるかに小さくそしてほとんど危険性はない。
【0046】
FF=Pmax対Voc×Jscの比である。
効率は本当は、効率=(Pmax/Pincident)×100により与えられる。しかしながら、実際にはPincident(電池上の入射光の電力)は100に設定されているため、効率=Pmaxである。曲線因子(FF)は開放電圧(Voc)および短絡電流(Jsc)により効率を表すために使用される数である。曲線因子(FF)は図2における小さい長方形対大きい長方形の比であると定義することができる。
【0047】
[H2で希釈されたSiH4から低温蒸着したアモルファスシリコン系太陽電池]
改良された初期変換効率および光誘導劣化に対する比較的大きい耐性の両者を有するアモルファスシリコン系太陽電池が開発された。改良された初期効率は、水素(H2)で希釈されたシラン(SiH4)からの低温におけるi−層の蒸着の結果である比較的高い開放電圧(Voc)から生ずる。開放電圧(Voc)における改良は、蒸着温度が低下するにつれて観察される光学禁制帯幅における小さい増加から予期されるものより驚異的に実質的に大きい。また、電池を横断する電荷移動は、蒸着温度が低下するにつれて変化するかもしれない。蒸着パラメーターを最適化することにより、我々は全体的な光誘導劣化を有利に減少させるだけでなく、光ソーキング時間に対する変換効率の機能的依存性における質的変化にも影響を与えて、数百時間の光ソーキング時間後に効率が限界飽和値に漸近的に到達することができた。
【0048】
安定性に対する蒸着温度の影響を研究しながら、我々はこの温度低下が太陽電池の開放電圧(Voc)を光学ギャップより速く増加させたこと並びに蒸着温度が低下するにつれて電圧における実質的な増加が得られたことに注目した。今までは、我々の経験は低温において蒸着した材料は高温において蒸着したものより大きい劣化を受ける、ということであった。しかしながら、高い開放電圧(Voc)が得られるように蒸着条件を最適化することにより、高温で製造された従来の標準電池に比べて大きく改良された安定性を示す太陽電池を製造することができた。
【0049】
[実験の詳細:a−Si:H]
真性膜およびp−i−n太陽電池の両者を試験した。膜を石英および単結晶Si基板の両者に蒸着させた。一部の石英基板には、ニッケルクロム(NiCr)パッドを予め蒸着させて、共平面伝導性および拡散長さ測定を可能にした。膜は0.5および1ミクロンの間の厚さであり、そして電池中のi−層と同じ方法で蒸着させた。希釈しないシラン(SiH4)および水素(H2)中で希釈されたSiH2から270℃以下の温度範囲で成膜させた。我々の通常の蒸着方法は270℃における未希釈の蒸着を含む。膜の光学的測定は、パーキンエルマー分光計(モデルラムダ9)およびPEフーリエ変換赤外線分光計(FTIR)(モデル1750)を使用して行った。光学的測定は、光熱偏向分光計(PDS)を使用しても行われ、そして暗所および光伝導性測定は4点プローブシステムを使用しても行われた。少数キャリア拡散長さを定常状態光キャリア回折格子(SSPG)技術を使用して測定した。
【0050】
太陽電池は、酸化錫(TCO)がコーテイングされたガラス上に蒸着させたものであり、ガラス/TCO/p−SiC/i−Si(4000Å)/n−Si/ZnO/Agの構造を有していた。ある場合には、p−層とi−層の間にi−SiC界面層があった。i−層は希釈せずにまたは水素(H2)で希釈されたシラン(SiH4)から、種々の温度において、種々の希釈度で蒸着させた。H2で希釈されたSiH4から蒸着させた太陽電池はドーピング層およびp−i界面層の小さいが非常に重要な変化並びに蒸着パラメーターの注意深い最適化を必要とする。これらの電池の一部は多重室システム(3室−p、i、およびn層に関して各々1つ)の中で蒸着させ、他のものは単独室蒸着システム中で蒸着させた。太陽電池性能を多重源ソーラーシミュレーターで測定した。光ソーキングをナトリウム(Na)放電ランプで行った。
【0051】
図3は、蒸着温度が低下するにつれてのシラン(SiH4)および水素(H2)中で希釈されたSiH4から蒸着した膜に関する光学禁制帯幅を示す。蒸着中にSiH4がH2中で希釈されているかまたはいないかにかかわらず、ギャップは蒸着温度の全範囲にわたり約0.25eVだけ変化する。しかしながら、H2希釈の効果は図4における低温膜の赤外線(IR)スペクトルにおいてさらに明白に見ることができる。希釈度が増加するにつれて、2090cm-1および640cm-1におけるピークはさらに小さく成長し、それは膜の合計水素含有量が減少していることを示す。希釈は図4のスペクトルにより示されているように材料の構造を改良するが、2000cm-1におけるピークの幅は、H2希釈せずに270℃において製造された膜の中にあるものより依然として広い。これらの膜は光ソーキングされなかったが、電池の安定性は一般的にはそれらのi−層を含む材料のIRスペクトルでの2090cm-1におけるピークの大きさと反比例関係にある。
【0052】
i−層を単接合p−i−n素子中に加えた太陽電池を製造した。図5は蒸着温度に対するVocおよびEg/2の依存性を示す。開放電圧は光学禁制帯幅よりも多く依存している。この結果は単室または多室蒸着システムのいずれかで製造された電池に関しても真実である。図5は、両者の場合とも蒸着温度の関数として、膜に関して2により割算された光学禁制帯幅および対応する電池に関する開放電圧を示している。これらの結果は特定の希釈に関するものである。しかしながら、全希釈範囲にわたり同じ結果が得られる。蒸着中にシラン(SiH4)が水素(H2)中で希釈されているかまたはいないかにかかわらず、蒸着温度が200℃から300℃に変化するにつれて禁制帯幅は約0.04eVだけ変化する。開放電圧(Voc)はこれも希釈とは関係なく、この蒸着温度範囲にわたり約3倍ほど大きく変化する。Vocにおける改良は曲線因子(FF)の減少とは関係ないことがわかったが、禁制帯幅収縮による電流のわずかな損失がある。
【0053】
表5は、本発明の方法で示されているような低温において蒸着させたi−層を有する電池の特性に対する、270℃においてシラン(SiH4)から蒸着させたi−層を有する従来の標準電池の太陽電池特性を比較している。
【0054】
【表5】
【0055】
表5からわかるように、効率における大きな全体的な増加を生ずるVocにおける実質的な増加およびJscにおける小さい損失がある。
図6は表5における2つの素子に関する量子効率を比較する。図6は電流損失が低温蒸着による禁制帯幅におけるわずかな増加の結果であることを示す。表5および図6に示されている差は蒸着温度の低下による。H2希釈が使用されたかまたはされないかは、非常に低い温度以外は、初期電池効率に対してほとんどまたは全く影響を与えない。
【0056】
270℃における水素(H2)希釈なしの標準条件下で製造された太陽電池は露光時間の対数に関する効率が線形的に減少する。しかしながら、低温において製造された電池は、露光時間に対する効率の質的に異なる関数依存性を示す。比較が図7に示されており、そこではH2希釈下で低温において製作された太陽電池が劣化速度の遅延を示し、飽和に近付くことがわかる。経時性能変化が図7に示されている太陽電池は、a−SiC p−i界面層を有していない。これらの電池が最適化されたSiC p−i界面層を具備しており、結果として、相当高い初期効率が与えられるなら、それらは大きな光誘導劣化を受けない。H2−希釈で低温において蒸着された電池は、比較的高い開放電圧(Voc)だけでなくそれらの開放電圧(Voc)における改良された安定性も示す。低温H2で希釈された素子は、それらが比較的高い開放電圧(Voc)減衰を有していても、約2または3%だけしか衰微しない。
【0057】
我々は安定性に対するH2−希釈量の影響を研究した。我々は図4に示された膜の赤外線(IR)スペクトルに対する希釈の影響が図8における効率対時間の曲線に反映されることを見いだした。そこで明らかなように、増加した希釈度では膜の安定性が改良されるため、電池の安定性はi−層成長で使用される希釈量が増加するにつれて改良される。
【0058】
暗所I−V測定を電池の一部に対して行った。これらは、高温において蒸着させた電池に対して我々が典型的に測定した約1.7と比べて1.98程度の高いダイオード係数を示した。さらに、ダイオード特性の劣化は比較的小さい。これまでは、光ソーキングでダイオード係数は約1.7から約2.35に増加していた。低温で蒸着させた電池は典型的には2.0から約2.2までのはるかに小さい増加を示す。
【0059】
これらの測定は、周囲孔拡散長さ(SSPGによる)、光伝導性および暗所伝導性(共平面測定)並びにウルバッフ(Urbach)エネルギーおよび副間隙吸収(PDSによる)が水素(H2)希釈の存在または不存在に依存せず、そして温度の非常に弱い関数であることを示す。禁制帯幅におけるわずかな変化以外の唯一の観察された有意差は、低温蒸着における希釈度に対して非常に依存性がある赤外線(IR)スペクトル中にあった。270℃におけるH2−希釈なしで成長した膜と低温においてH2−希釈で成長したものとの間の近い類似性を仮定すると、2つの条件下で製造された電池の間の差は驚異的である。電圧における増加は禁制帯幅における増加により部分的にのみ説明することができる。増加の残りは、ダイオード性質係数における差により例示されているように移動度における差と関連するはずである。これはi−層中でおよび/またはp−i界面において生ずる再結合工程における差を反映しているかもしれない。高温において製造される電池では、ダイオード係数は典型的には1.7〜1.75であり、決して1.9ほど高くない。電池中のVocの増加に部分的に寄与するかもしれない移動度における改良が主としてp−i界面領域で起きるかもしれない。蒸着温度が低下するにつれて、「移動度間隙」はEgより速く増加するかもしれない。
【0060】
蒸着温度に対する開放電圧(Voc)の強い依存性がある。蒸着温度に対するVocの依存性は電池構造の関数である。
安定性における改良は蒸着パラメーターおよび電池構造の最適化の結果である。低温においては、我々が安定性と関連させた膜の性質である赤外線(IR)スペクトルは、希釈度が増加するにつれて意義ある改良を示した。今までは、我々は常にi−層の厚さが0に近づくにつれて劣化がほぼ線形依存性で0になるため、ステブラー−ロンスキー効果は嵩効果であると考えていた。ある種の環境下ではp−i界面が安定性を悪化させることを示すことができるが、これは一般的には厚さの効果と比べて小さい効果であった。
【0061】
水素(H2)中で希釈されたシラン(SiH4)からの低温における水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)の蒸着が、開放電圧(Voc)における増加により改良された効率をもたらし、該増加は禁制帯幅における小さい増加から生ずる短絡電流(Jsc)における小さな減少よりはるかに大きい。蒸着パラメーターの最適化が、改良された安定性および光ソーキング時間に対する効率の関数依存性の特性における変化をもたらす。数百時間後の効率の飽和は、我々が今までに見たものとは質的に異なる挙動である。これが電池およびモジュール性能の両者における実質的な改良を生ずる。重要なことに、小面積電池および大面積モジュールの両者に関する初期効率は、今や11%を越える。1000時間における15%程度の効率の小さい劣化が観察された。我々は9%を越える安定化された効率を有する小面積電池およびちょうど9%の安定化された効率を有するモジュールを製造した。全体的な光誘導劣化における減少の他に、劣化動力学の性質における質的変化もある。
【0062】
上記の試験では、膜およびセルの両者が製造された。シラン(SiH4)から希釈せずに270℃の名目温度において、そして水素(H2)中で希釈されたSiH4から150℃〜280℃の範囲の温度において、成膜した。H2:SiH4の比は400:1程度に高いものであった。セルは、酸化錫でコーテイングされたガラス上に蒸着させたものであり、ガラス/TCO/p−SiC/i−Si/n−Si/ZnO/Agの構造を有していた。i−層は希釈せずにまたはH2−希釈されたSiH4から種々の温度においてそして、種々の希釈度を用いて、上記で概略説明した膜と同じ方法で蒸着させた。
【0063】
[非晶質炭化珪素合金太陽電池]
蒸着条件の最適化における本発明による最近の進歩が、真性a−SiC:H合金の光電子性質を意義あるほど改良した。これらの改良は単接合p−i−n太陽電池中に加えられた。1.04V程度に高い開放電圧(Voc)および0.75程度に高い曲線因子(FF)が本発明の方法により示された。これらの素子の安定性も顕著に且つ驚異的に改良された。1000Åまでの厚さのa−SiC:H i層を有する本発明の単接合太陽電池は、AM1.5当量の照明下での1700時間の光ソーキング後に、13%しか劣化を示さず、Voc=0.98VおよびFF=0.68を保持する。
【0064】
a−SiC:H系太陽電池の安定化した性能は、多重接合方式を使用することにより増加させることができ、最も魅力的なものは3つの接合が互いに頂部で格子状にされており三重接合の各部分のi−層がEg1>Eg2>Eg3>の順序であるようなモノリシック的な素子構造であり、ここで光はEg1側から入り、ここでEgは各々のi−層の禁制帯幅である。三重接合方式では、電池の各部分の禁制帯幅および厚さを最適化して、太陽スペクトルの異なる部分に応じるようにし、比較的高い性能および比較的良好な安定性を可能にする。2.0eV/1.7eV/1.45eVの禁制帯幅の組み合わせで光電子性質を有するa−Si:H合金を用いると、最大変換効率はa−Si:Hのものと比べて24%程度高くできることが理論的に示されている。水素化非晶質炭化珪素合金(a−SiC:H)は、それらを例えばシラン(SiH4)+メタン(CH4)の如き容易に入手できる原料から蒸着させることができ且つ禁制帯幅を1.7eVから2.0eVに適合させられるため魅力的である。
【0065】
我々はこの目的のためにa−SiC:H真性層を開発した。我々は例えばトリシリルメタン(TSM)の如き新規な炭素含有源の分解により、そして水素で希釈されたメタンの分解により、製造される真性グロー放電a−SiC:H合金の光電子性質を研究した。
【0066】
[実験の詳細:a−SiC:H]
水素化非晶質炭化珪素(a−Si:H)膜および太陽電池を負荷−固定された無線周波数(RF)グロー放電室の中で成長させた。膜は光学的禁制帯幅、ウルバッフエネルギー、サブ禁制帯幅光学吸収スペクトル(PDSにより誘導される)、定常状態の光伝導性および誘導される電子移動度と寿命との積(μτ)、暗所伝導性(σd)およびその温度依存性、赤外線(IR)透過スペクトル、並びに定常状態の周囲孔拡散長さ(Lh)により同定される。光学禁制帯幅(Eg)は、光学吸収係数が2×103cm-1に等しくなるエネルギーとして経験的に定義されている。p−i−n単接合太陽電池はZnO/Ag裏面電極を有するテクスチャ−SnO2コーテイングガラス基板上に蒸着させた。p−層はホウ素がドーピングされたa−SiC:Hであり、n−層はa−Si:Hであり、両方とも従来のa−Si:H素子で使用されるものと同様である。
【0067】
[ドーピングされないa−SiC:H膜の性質]
広い禁制帯幅の水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)合金の光電子性質は、光学禁制帯幅の強い関数であり、そして禁制帯幅が増加するにつれて急速に劣化する。同じ禁制帯幅を有する膜を比較することが重要である。
【0068】
図9は、水素希釈を用いておよび用いずにトリシリルメタン(TSM)からまたはシラン(SiH4)+メタン(CH4)から蒸着させた多数のa−SiC:H膜の孔拡散長さ(Lh)の変動を示す。拡散長さはSSPG(定常状態の光キャリア回折格子)法により測定された。対照として、真性a−Si:H(Eg〜1.76eV)に関するLh値は約1400Åである。TSMまたはSiH4+CH4混合物のH2−希釈のいずれかから蒸着させた膜は、H2−希釈なしで蒸着させたものより高い拡散長さを有する。同様な結果が電子移動度データでも見られ、CH4+H2およびTSM(H−希釈なし)膜は匹敵するμτ値を示し、それらは気相H2希釈なしで製造されたCH4系膜からの対照データより著しく高い。
【0069】
図10は、TSMおよびH2−希釈のCH4から製造された代表的なa−SiC:H膜に関するPDS誘導ウルバッフエネルギー(Eo)のEgにつれての変動を示す。一般的な合金化されていないa−Si:Hに関するウルバッフエネルギーは57〜58eVである。また、H2−希釈なしで製造されたCH4系合金からのデータも比較用に含まれている。CH4+H2方法は同じ禁制帯幅(Eg=1.90eV)のTSM系膜に関するものより低いEo値を生じた。近中間ギャップ欠陥吸収レベルはTSMおよびCH4+H2系合金に匹敵する。
【0070】
シラン(SiH4)+メタン(CH4)の水素希釈がa−SiC:H膜の性質を意義あるほど改良することが見いだされた。この原料混合物を用いて製造される膜を2つの温度領域:(i)Tg>300℃および(ii)Tg<250℃で試験した。低温膜は一般的に高温膜より優れている。a−SiC:Hの光学禁制帯幅の拡大を助けるためにさらに水素(低温において)を加えることが有利である。
【0071】
図11は定常状態の光電流から誘導された電子移動度と寿命との積μτにおける変動およびμτ対室温暗所伝導性σd の比を2つのTg範囲である(1)170〜230℃および(2)300〜320℃で製造されたa−SiC:H膜の禁制帯幅の関数として示している。
【0072】
図12は、図11と同じ2つの温度範囲でH2−希釈で製造された水素化非晶質炭化珪素(a−SiC:H)膜に関する孔拡散(Lh)の変動を示す。孔拡散長さは低温で製造された膜に関する方が高い。1.90eV〜1.95eVの禁制帯幅領域では、約800Åの孔拡散長さはほとんど変動を示さない。重要なことに、水素で希釈されたSiH4+CH4混合物から適度な蒸着温度において蒸着させたa−SiC:H膜(Eg<2.0eV)は意義ある電子移動度と寿命との積および比較的大きい周囲孔拡散長さを示す。それらは、H2−希釈なしで蒸着させた膜およびH2−希釈でTg>300℃で製造された膜と比べて、鋭い光学的吸収(ウルバッフ)端部、比較的低いサブ禁制帯幅光学吸収、および改良された原子結合構造も示す。
【0073】
[初期性能:a−SiC:H太陽電池]
5種の水素化非晶質炭化珪素合金太陽電池の初期光起電パラメーターを以下の表6に示す。
【0074】
【表6】
【0075】
真性a−SiC:H合金の材料性質における改良が、比較的高い開放電圧(Voc)および比較的良好な曲線因子(FF)を有するp−i−n太陽電池を生じさせた。三重接合太陽電池中での表面接合として使用される素子用では非常に薄いi−層が必要である。表面接合から7mA/cm2より大きい電流を発生するためには、真性層の禁制帯幅によるが、禁制帯幅が1.7eVから2.0eV近くに変動するにつれてi−層の厚さは650Å以下から1000Å以下に変動してもよい。1.04V程度の高さのVocおよび0.75程度の高さの曲線因子(FF)を有する単接合p−i−n素子が本発明の方法により製作された。
【0076】
図13は、同様な条件下で製作された水素化非晶質炭化珪素(a−SiC:H)のi−層を有する一連のp−i−n太陽電池に関するメタン対シラン(CH4/SiH4)気体比(i−層禁制帯幅)の関数としての開放電圧(Voc)および曲線因子(FF)の変動を示す。開放電圧(Voc)は約1.03〜1.04Vにおいて飽和し始める。a−SiC:H i−層の禁制帯幅における増加は曲線因子(FF)が相対的に高い(すなわち0.6より大きい)ままであっても高いVocを生じず、このa−SiC:H p−層およびa−Si:H n−層がドーピングされた層によるVocおよび生ずる増加した電位に対する制限を課す。比較的高い開放電圧(Voc)をドーピングされた層、特にp−層、における改良で得ることもできる。
【0077】
図20は、その禁制帯幅が1.9eVで固定されているa−SiC電池に関する基板温度によるVocの変動を示す。驚くべきことにそして予期せぬことに、図20のグラフは従来の理解とは逆に、意義ある高いVocが一定のi−層禁制帯幅に関して低温で達成できることを示す。
【0078】
高い開放電圧(Voc)を有する単接合水素化非晶質炭化珪素(a−SiC:H)太陽電池の電流および電圧(J−V)特性が図14に示されている。この素子は1.04VのVocを0.72の曲線因子(FF)と共に有する。
【0079】
我々は、本発明の方法でa−Si:H/a−SiH/a−SiGe:H三重接合モジュールに関して11%を越える初期効率を示した。高品質a−SiC:H i−層を三重接合素子の頂部接合中に加える時には、変換効率は比較的高い開放電圧(Voc)により4〜5%増加させることができる。
【0080】
[a−SiC:H太陽電池の安定性]
非晶質炭化珪素合金i−層素子は、これまで連続的な光ソーキングに対する劣悪な安定性に悩まされていた。本発明に従う比較的良好な品質の真性a−SiC:H合金の蒸着でなされる改良は単接合素子の改良された安定性ももたらした。
【0081】
図15は、2種のa−SiC:H i−層単接合太陽電池の正規化された変換効率および開放電圧(Voc)における劣化を示す。i−層の厚さは約1000Åであり、そしてEg〜1.90eVである。改良された電池はシラン(SiH4)+メタン(CH4)混合物のH2−希釈のこの最適条件下で製造され、そして1.0Vの初期VocおよびFF>0.72を有していた。対照電池は、0.93Vの初期VocおよびFF=0.61を有しており、そして高温におけるH2−希釈で製作された。有利には、改良された電池は、三重接合素子中におけるその用途に関して要求される優れた安定性を示す。改良されたa−SiC:H電池に関する効率の低下は、例えば対照電池の如き予め蒸着されたa−SiC:H電池の中で観察されるものより少ない。
【0082】
図16はナトリウム(Na)放電ランプ下での約50℃の温度における長時間の模擬太陽照明期間の前および後の水素化非晶質炭化珪素太陽電池の電流−電圧(JV)曲線を示す。a−SiC:H素子の改良された安定性が図16に示されており、そこでは単接合素子の電流−電圧(J−V)特性が模擬AM1.5照明下での1700時間の光ソーキングの前および後にプロットされている。重要なことに、全体的な性能は13%だけ低下し、そして素子は0.98Vの開放電圧(Voc)および0.68の曲線因子(FF)を保有している。これまでで、これらは我々が製作したどの単接合a−SiC:H i−層の光ソーキング後のものの中で最高のパラメーターである。
【0083】
a−SiC:H i−層の劣化速度は初期開放電圧(Voc)またはi−層炭素含有量の増加に伴い急速に加速できる。例えば、1.02〜1.03VのVocを有する数個のa−SiC:H太陽電池(i<1000Å)は、ナトリウム(Na)放電ランプでの1000時間の模擬AM1.5光ソーキング後に約50〜70mVのVoc損失および約11%のFF減少を示した。
【0084】
図17は、異なる蒸着条件下で製作された水素化非晶質炭化珪素(a−SiC:H)太陽電池に関する曲線因子(FF)により測定された初期性能と100時間のAM1.5照明後の効率の損失により測定された光誘導劣化との間の関係を示している。i−層禁制帯幅は全ての電池に関してほぼ同じである(Eg≡1.90eV)である。これらのデータはa−SiC:H i層を加えた太陽電池中の傾向を示している。初期性能が良ければ良いほど、安定性が良くなる。
【0085】
上記のことから、水素中で希釈されたシラン(SiH4)+メタン(CH4)混合物から低温において蒸着させたグロー放電水素化非晶質炭化珪素(a−SiC:H)合金の光電子性質は意義ある改良を示すことがわかる。これらの改良が比較的高い開放電圧(Voc)および比較的高い曲線因子(FF)による比較的高い初期性能を有する単接合素子を生じた。これらの素子も長い光−ソーキングに対してかなり大きな安定性を示す。
【0086】
[方法の意義]
水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)およびその合金、特に20%より低い炭素濃度を有する広い禁制帯幅のドーピングされていない水素化非晶質炭化珪素(a−SiC:H)、および1.85eVより小さい光学禁制帯幅を有する水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)、に関する発明されたグロー放電プロセスの重要性は2倍である。最初に新規な蒸着工程を使用して、我々は1.00ボルト以上および1.04ボルト程度に高い(このタイプの素子に関する世界記録である)開放電圧(Voc)を有するa−Si:H系太陽電池を製造することができた。これらの太陽電池は、ドーピングされていないa−SiC:Hおよび次に活性なi−層として炭素合金化しないa−Si:Hを使用すると0.70より大きい高い曲線因子(FF)を有する。VocおよびFFの積は世界記録である。これまでの素子では、約1.0Vの開放電圧(Voc)が観察されているが、それらの場合のFFは典型的には劣悪である(0.4〜0.6)。
【0087】
新規な蒸着方法は、光起電または他の電子/光電子用途のためにこれまでに入手できなかった高品質の広い禁制帯幅のa−SiC:Hおよびa−Si:Hを製造する。高品質の広い禁制帯幅のa−Si:Hおよびa−SiC:H合金は、i−層自身としてまたはp/i界面における緩衝層(界面層)として使用することができる。三重接合太陽電池の開放電圧(Voc)および変換効率は、三重接合素子の少なくとも第一および第二接合に関して、本発明に従い製造されるそのような高品質の広い禁制帯幅i−層または界面層を使用することにより約3〜10%ほど増加させることができる。
【0088】
a−Si:H系太陽電池の実際的な用途および商業化にとって重要なことであるが、新規な方法を使用して蒸着させたa−SiC:Hおよびa−Si:H太陽電池の連続的な露光下での安定性が驚異的に優れていることが見いだされた。本発明の方法により製作されるa−SiC:H太陽電池は、1,700時間の光ソーキング後に約13%の劣化を示した。これは、従来の結果を越える大きな改良である。従って、本発明の方法は、広い禁制帯幅のドーピングされていないa−SiC:Hをa−Si:H系太陽電池中に多重接合電池の第一接合中のかさ高いi−層としてまたはa−Si:Hおよびその合金太陽電池中のp/i緩衝層として最初に加えることを可能にする。a−SiC:Hおよび広い禁制帯幅のa−Si:H太陽電池の大きく改良された安定性が本発明の蒸着方法の最も重要な寄与である。
【0089】
予期せぬことに且つ驚くべきことに、高圧無線周波数(RF)グロー放電蒸着で優れたa−Si:H電池が得られることが見いだされた。典型的には、RFまたは直流(DC)グロー放電a−Si:Hおよびその合金の従来の処理では、圧力は0.1〜0.5Torrである。一般的にはDCグロー放電に関しては、蒸着室内の気圧は約3Torrより高くなく、その理由はこの圧力以上だと安定なプラズマを維持しそして膜蒸着の良好な均一性を保つことが困難であるからである。本発明の方法に関する5.0Torr(好適には約10Torr)より高い蒸着圧力は任意の温度または水素(H2)希釈比または電力においてこれまでに実施されたものよりはるかに高い。本発明の方法は例えば500:1までの非常に高いH2−希釈比も特徴としており、それはアモルファスシリコンおよびその合金を製造するためにこれまで試みられていなかった。先行技術と比較して、低温における安定なa−Si:H合金の製造は明らかに顕著な達成事項である。
【0090】
以下の表7および8には、a−Si:Hおよびその合金を製造するための新規な技術におけるRFおよびDC蒸着条件の範囲が挙げられている。新規な方法を有利に使用して広い禁制帯幅(禁制帯幅>1.80eV)のa−Si:H合金、例えばa−SiC:Hおよびa−Si:H、を製造することができる。
【0091】
【表7】
【0092】
表7におけるH2−希釈比はH2対他の気体、例えばシラン(SiH4)およびメタン(CH4)の気体流比をさしている。a−SiC:H蒸着に関しては、200のH2−希釈比はSiH4およびCH4の合計1部に対して蒸着システム中に流入する200部のH2があることを意味する。これはH2対SiH4およびCH4の気体容量比でもある。全ての気体の合計流量は蒸着システムの寸法および排気システムのポンプ速度に依存するであろう。上記の数字は13インチ×12インチ(約1,000cm2)の太陽モジュールを製作するために特に有用である。選択されるRF電力密度、基板温度、蒸着圧力および蒸着速度は水素希釈比に依存する。RFグロー放電方法は、高い水素希釈度H2/(CH4+SiH4)>80、高い圧力(〜9Torr)、および低い温度(〜150℃)を含むことができる。
【0093】
反応性プラズマがDCまたはRF励起グロー放電により生成される反応器システム中におかれた基板上に薄膜を蒸着させることができる。放電は、種々のプロセスにより損失されるものを均衡するのに十分な数のイオンおよび電子の反応により維持される。主な損失は反応器システムの電極における荷電された粒子の再結合である。中性気体の衝撃イオン化を引き起こすに十分なエネルギーがある電子の生成用にRFグロー放電で利用できる2つの機構があるが、これらの機構の1つだけがDCグロー放電において作用する:(1)電子は弾性衝突によるRF電界からのエネルギーを吸収できそして(2)二次電子は荷電された粒子により衝突される反応室表面から放出される。これらの二次電子がそのような表面近くのいわゆるシース電位による励起によりエネルギーを得る。しかしながら、後者の機構だけがDCグロー放電システムで作用する。
【0094】
RFグロー放電システムは、反応性気体の広い範囲の圧力にわたってだけでなく相対的に低い電界においてそしてさらに相対的に大きな容量でのグロー放電の作用を可能にする励起機構を与える。これらの条件の1つまたは全てにより、RFグロー放電システムが大面積薄膜素子の製造において有用となり且つ魅力的になる。
【0095】
そのような膜を蒸着させることができる反応性グロー放電は、反応室の周りで外部を取り巻くコイルにより、反応器の外部に置かれた容量板により、並びに内部電極により、RFで励起することができる。内部電極を有するそのようなRF反応器中で発生したプラズマは、電極が反応器の外部に置かれている反応器と比べて不均一である傾向がある。そのような外部電極反応器中のプラズマはその部品近くの壁に閉じこめられる傾向がある。
【0096】
それらがDCまたはRF励起タイプであるかどうかにかかわらずグロー放電プラズマ蒸着システムに存在する問題は、グロー放電から生ずる荷電された粒子衝突により引き起こされる蒸着膜に対して生ずる損傷である。この問題はグロー放電領域が膜を蒸着させようとする基板の表面中に伸びるにつれて特に深刻になる。グロー放電蒸着の有害な影響を減少させるための試みの1つの方法は、DC電圧によるグロー方法が進行する場所、すなわちDC電圧がプレートとシステムの陰極の間に印加される場所より十分離れた領域に基板を位置づけることである。これは、グロー放電により成長したイオン化粒子がスクリーンを通過して基板上に至るように、平らなスクリーン電極を有する陰極を配置することにより行われる。
【0097】
無線周波数(RF)グロー放電を発生可能なプラズマ蒸着反応器装置に、反応器システムの陽極と電気的に連結されておりそしてその陰極と陽極の間の配置された有孔スクリーンを装着することができる。このスクリーンは、陰極とスクリーンの間の領域にグロー放電を閉じこめる。伝導性の反応気体から膜を蒸着させようとする基板は、グロー放電領域中でなくスクリーン近くに置かれる。反応性気体を反応器の中心部分の中に有孔スクリーンと陰極の間に加えて、基板上に蒸着されるかもしれない荷電粒子の動力学エネルギーを十分減少させて基板上での膜に対する損傷を最少にすることができる。
【0098】
【表8】
【0099】
蒸着方法における重要な面は、高圧、非常に高い水素(H2)希釈比、低い基板温度、および中程度の励起電力密度の組み合わせである。これらを別個にすると、上記のパラメーターのそれぞれは単独では望まれる結果を得られない。例えば、>8Torrの如き高圧を使用せずに、>150:1の如き高いH2希釈、および<160℃の如き低い温度だけを100mW/cm2の如き中程度の電力密度と共に使用すると、蒸着は水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)の代わりに、それより望ましくない微結晶性シリコン(μc−Si)i−層を生ずるであろう。本発明の蒸着方法は上記の極端なパラメーターの全てを同時に成功裡に使用する最初の例である。
【0100】
[代替原料]
シランおよび水素が最良の結果のための好適な原料であるが、ドーピングされていないプラズマ励起化学蒸着(PECVD)グロー放電a−Si:Hおよびa−SiC:H合金用の多くの代替原料がある。希釈剤である水素(H2)を重水素(D)により交換することができ、希釈剤気体はHDまたはD2である。SiH4に加えてまたはSiH4の代わりのシラン(SiH4)の代替原料は下記の一般式:SiNH2N+2-MYM[式中、Siはシリコンであり、Hは水素または重水素であり、Yはハロゲン、例えば弗素(F)、塩素(Cl)、などであり、NおよびMはN>1および2N+2−M>0の制約を受ける正の整数である]により表すことができる。上記の表示の例は、シラン(SiH4)(N=1、M=0)、ジシラン(Si2H6)(N=2、M=0)、SiF4(N=1、M=4、Yは弗素)、SiHF3(N=1、M=3、Y=弗素)、Si2H2Cl4(N=2、M=4、Y=塩素)、テトラメチルシラン[Si(CH3)4]、などを含む。代替Si原料が使用される時には、最適なまたは好適な蒸着条件に合わせるべきである。
【0101】
水素化非晶質炭化珪素(a−SiC:H)蒸着に関しては、代替炭素原料は実際に多数ある。一般的には、最も典型的な炭化水素類または水素−ハロゲン−炭素化合物、例えばCH4、C2H2、C2H4、C2H6、CF4、C3H8、CDCl3を使用することができる。組み込まれた炭素−珪素結合を含有しておりそして式:CHN(SiH3)4-N[式中、Nは0〜4の範囲の整数である]により表される他の炭素原料、例えばCH3SiH3(メチルシランまたはシリルメタン)、CH(SiH3)3(トリシリルメタン)を使用することができる。例えばCH(SiF3)3のように、上記式における第二の化合物(SiH3)中のHがハロゲンにより置換されていてもよい。メタン(CH4)に加えてまたはその代わりに代替炭素原料が使用される時には、例えばH2−希釈比および電力密度の如き蒸着パラメーターをそれに応じて調節することができる。本発明の方法では、高圧、低温および高い希釈剤濃度の蒸着条件を使用して、高い開放電圧(Voc)および高い曲線因子(FF)を有する安定な太陽電池が得られる。
【0102】
【表9】
【0103】
p/i界面等級を有するかまたは有していない水素化非晶質炭化珪素太陽電池を表9に示されているようにして製作することができる。
ガラス/テクスチャーCTO/p−SiC/i−SiC/n−Si(厚い)/ZnO/金属(Ag、Al、またはNiCr)を非晶質ドーピング層と共に有する水素化アモルファスシリコン単接合太陽電池を上記の蒸着条件に従い製作した。これらの単接合電池は表10および表11に示されているような予期せぬ驚異的に良好な結果を生じた。高い開放電圧(Voc)および高い曲線因子(FF)は、禁制帯幅が>1.95eVである時でもi−層(a−SiC:H)品質が優れていることを示す。
【0104】
【表10】
【0105】
【表11】
【0106】
高い開放電圧(Voc)およびすばらしい安定性を有する非常に改良された水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)および水素化非晶質炭化珪素(a−SiC:H)単接合素子を生じた蒸着条件のいくつかの例を表12に示す。表12における太陽電池モジュールは、4つのi−層、2つのa−Si:Hおよび2つのa−SiC:Hを有する。表12における太陽電池は、1.6cmの電極間隔を有する無線周波数(RF)13.56MHzグロー放電蒸着により製造された。
【0107】
【表12】
【0108】
表12におけるA2357−3に関する劣化は1000時間の光ソーキング後に約25%である。一般的には、比較的低い基板温度が比較的高い開放電圧(Voc)をもたらす。水素(H2)希釈が十分高い限り、低温電池の安定性は非常に良好であるようである。
【0109】
上記のことから、優れた品質のアモルファスシリコン太陽電池を高圧、高い水素(H2)希釈、および低温の条件下でアモルファスシリコン合金プラズマ化学蒸着(CVD)により製造できることがわかる。本発明の方法は、中圧ないし高圧(>4Torr、例えば10Torr)、原料の高いH2希釈(例えば>50:1)、および相対的に低い温度(例えば室温ないし150℃もしくは200℃)の組み合わせ条件下で、高品質の安定な電子材料、例えばa−Si:Hおよびその合金、のプラズマCVD蒸着(グロー放電)を生じる。パラメーターのこの独特な組み合わせはこれまでは成功するとは考えられていなかった。
【0110】
本発明の方法は、比較的高い開放電圧(Voc)、比較的良好な曲線因子(FF)、光照明下での比較的遅い劣化および比較的高い長時間効率を有する素子(太陽電池)用途のための高い電子品質を有する広い禁制帯幅の非晶質の水素化Si−C合金(a−SiC:H)を製作する。これまでは、>1.00ボルトの高い開放電圧(Voc)を良好な曲線因子(>0.70)と共に有するa−SiC:Hまたはa−SiH太陽電池をグロー放電方法により製造することはできなかった。
【0111】
本発明の蒸着方法はプラズマ励起CVDを用いるa−Si:Hまたは他の材料の蒸着に適用することができる。本発明は上記のものと同様な条件下で材料の直接的および遠隔プラズマCVD蒸着を包括する。例えば電力密度または電気バイアスの如き蒸着パラメーターは希望により変えることができる。本発明の方法は、a−Si:Hおよびa−SiC:H膜、電池および太陽モジュールを製造するために特に有用である。本発明の方法で優れた移動性質が得られる。非晶質炭化珪素中のかなりの量の炭素基の存在が、そうでなければ微結晶性珪素(μc−Si)をもたらす可能性がある非常に高いH2希釈の条件下でも微結晶の生成を防止することができる。水素希釈の増加がa−SiC:Hのワイドギャップ材料を改良できる。この方法はまた成長中の水素による比較的良好な表面被覆も与えて、成長前駆体の比較的高い表面移動性および不足分の水素補充の比較的良好な機会を得る。この方法はまた、比較的良好な微細構造、比較的均一な成長および成長表面における比較的少ないイオン衝突を与えることもできる。高いH2希釈、低温および高圧の組み合わせは、膜成長表面においてH−基を飽和させ、それにより室温近くの蒸着後のH−再構成を回避または減少させることにより、さらに安定なa−Si合金を製造することもできる。望ましくは、高圧a−SiC膜は、従来の低圧および低温で製作された膜とは異なり、基板に良好に付着する。このことは、膜における比較的小さい応力、比較的良好な膜性質および安定性を示唆している。
【0112】
プロセス条件は、相対的に低い温度における比較的高い圧力(例えば>10Torr)および比較的高いH2希釈(例えば>100:1)を含み得る。圧力は安定なプラズマを維持する能力により制限されるかもしれない。放電(rf)電力密度は、通常の蒸着条件(200〜300℃、中程度のH2希釈、低圧すなわち0.2〜1.5Torr)下のものと異なっていてもよい。比較的高い圧力にプラズマを維持するためには比較的高い電力が必要となるかもしれない。
【0113】
基板温度および水素希釈に対する太陽電池の安定性の依存性
比較的低い基板温度(<250℃)における本発明の方法による蒸着が太陽電池の開放電圧(Voc)を意義あるほど改良することが発見された。さらに、水素(H2)希釈を比較的低い基板温度と組み合わせて使用する時には、太陽電池の安定性も意義あるほど改良される。対照的に、比較的低い基板温度をH2希釈なしに使用する時には、素子の安定性は一般的に悪化する。
【0114】
SiCおよびSi電池の安定性は、新規な低温H2希釈蒸着により劇的に改良された。260℃においてH2希釈なしに製造された電池に関すると、劣化速度の最も重要な要素はi−層の厚さである。第二の最も重要な要素はp−i界面層の性質であった。しかしながら、i−層蒸着温度および蒸着速度は劣化速度に強く影響する。
【0115】
[試験]
種々の水素(H2)希釈水準を用いて数種の温度において、単接合a−Si:H p−i−n太陽電池を製造した。これらの素子の安定性を評価した。安定性に影響を与える可能性のある素子中のi−層の厚さは、試験で使用された全ての素子に関して大体一定に保たれていた(1700Å〜2200Å)。
【0116】
表13は、長期間の光ソーキング(100mW/cm2強度における519時間)の前および後のこれらの試験で使用された選択された代表的素子に関する光起電パラメーターを示す。
【0117】
【表13】
【0118】
素子の安定性に関する多くの傾向を表13から見いだすことができる。安定性は長期化された露光後の正規化された電池効率として定義することができる。最初に、H2希釈比があるしきい値以下である時には、a−Si:Hの蒸着における水素(H2)希釈の増加で素子の安定性が改良される。このしきい値は、例えば、210℃における約10:1および150℃における約30:1である。
【0119】
図18は、水素(H2)希釈度を変動させて150℃で製造された一連の素子に関して対数目盛りで露光時間の関数として正規化された電池効率をプロットすることにより上記の傾向を説明している。図18では、H2希釈で製造された素子中では光誘導劣化がH2希釈なしで製造された素子での光誘導劣化(>1000時間)よりはるかに早く(〜100時間)飽和することも明らかである。
【0120】
これらの試験から見いだすことができる第二の傾向は、一定のH2希釈比では素子の安定性は基板温度の低下につれて劣化することである。これは、それぞれ210℃および150℃においてしかし同じH2希釈比(10:1)で製造された2つの電池の正規化された効率を示す図19から明らかにわかる。図19における正規化された効率は、対数露光時間の関数としてプロットされている。
【0121】
上記の2つの傾向を組み合わせることにより、我々は素子の開放電圧(Voc)および安定性を同時に最適化するためには十分高いH2希釈比と共に十分低い基板温度を使用してa−Si:H系太陽電池を蒸着させるべきである、と結論づけることができる。上記の発見を適用する温度およびH2希釈比に関する範囲は、80℃〜280℃の範囲の温度および1:1〜100:1の水素(H2)希釈であるべきである。
【0122】
[改良]
低温、H2希釈された珪素蒸着から生ずる単接合および多接合電池には多くの重要な改良がある。図19に示されているように、本発明の方法により製造される電池の劣化は時間に対する異なる関数依存性を有する。長期間の露光後に、時間の対数に対してプロットされる時に効率はほぼ直線的に変化する。さらに、i−層の厚さに対する劣化速度の依存性が大きく減じられて、約3000Åより大きい厚さに関しては劣化速度はi−層の厚さに対してはるかに減じられた依存性を有する。希釈の増加は安定性を改良するが、直線的ではない。比較的低い成長速度は比較的良好な安定性をもたらすことができる。その他の全てが一定に保たれると、蒸着温度が低下するにつれて安定性は悪化する。しかしながら、温度が低下し、希釈度が増加するなら、安定性は保たれるようである。
【0123】
水素希釈を用いるか又は用いないプラズマCVD蒸着により製造される単接合および多重接合セルの劣化速度の比較が表14で評価されている。
【0124】
【表14】
【0125】
[アモルファスシリコンゲルマニウム]
本発明の蒸着方法を用いる素子改良は、安定性のためのグロー放電蒸着におけるシラン/水素比の最適化、中間および底部i−層中へのゲルマニウムの加入、並びに比較的薄いi−層を含む。本発明の蒸着方法は11.35%の初期変換効率を有する900cm2モジュールを製造した。1000時間の光ソーキング後に、太陽電池モジュールは約9%の効率で安定化した。
【0126】
本発明の態様を示しそして記載してきたが、本発明の新規な精神および範囲から逸脱しない限り当技術の専門家により種々の改変および置換、並びに部品、成分、および工程段階の再配置を行えることは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は太陽電池の出力のグラフである。
【図2】図2は曲線因子(FF)を示すグラフである。
【図3】図3は蒸着パラメーターの特定セットに関する蒸着温度の関数としての光学禁制帯幅のグラフである。
【図4】図4は低温膜の赤外線スペクトルのグラフである。
【図5】図5は蒸着温度に対するVocおよびEg/2の依存性を示すグラフである。
【図6】図6は波長の関数としての量子効率のグラフである。
【図7】図7は光ソーキング時間にわたる正規化された効率のグラフである。
【図8】図8は光ソーキング時間にわたる正規化された効率に対する水素希釈の増加の影響のグラフである。
【図9】図9は種々の非晶質炭化珪素膜に関する周囲孔拡散長さの変動を示すグラフである。
【図10】図10は非晶質炭化珪素膜に関するウルバッフエネルギーのグラフである。
【図11】図11は種々の禁制帯幅に関する光電子μτのグラフである。
【図12】図12は種々の禁制帯幅に関する周囲孔拡散のグラフである。
【図13】図13は水素化非晶質炭化珪素太陽電池に関するメタン対シラン気体比の関数としての開放電圧(Voc)および曲線因子(FF)のグラフである。
【図14】図14は単接合非晶質炭化珪素太陽電池に関する電流密度および電圧のグラフである。
【図15】図15は正規化された効率および開放電圧(Voc)の劣化のグラフである。
【図16】図16は光ソーキングの前および後の電流密度および電圧のグラフである。
【図17】図17は効率劣化および初期曲線因子(FF)のグラフである。
【図18】図18は種々の水素希釈に関する正規化された効率の劣化のグラフである。
【図19】図19は種々の蒸着温度における正規化された効率の劣化のグラフである。
【図20】図20は固定されたi−層光学禁制帯幅に関する開放電圧および基板温度の関係を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件:
約20℃〜約250℃の基板温度;
水素、重水素及びこれらの組み合わせからなる群より選択される希釈剤気体で、約5:1〜約1000:1の希釈剤気体:供給ガスの希釈比で希釈された珪素含有供給ガス;及び
約0.2Torr〜約50Torrの圧力
でアモルファスシリコン層のプラズマ励起化学気相成長(PECVD)を行うことを含む、基板上に担持されたアモルファスシリコン層を具備する半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記供給ガスは、シラン、ジシラン、テトラメチルシラン、SiF4、SiHF3、SiH2Cl4及び一般式:SiNH2N+2-MYM
[式中、Si=珪素、
H=水素または重水素、
Y=ハロゲン、
N=1以上の正の整数、
M=正の整数、および
2N+2−M≧0]
を有する他の気体からなる群より選択される少なくとも一員を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記条件は、約5mW/cm2〜約1000mW/cm2のプラズマ放電電力密度をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基板温度は約80℃〜約180℃であり、前記希釈剤気体:供給ガスの希釈比は約20:1〜約400:1であり、前記圧力は約0.5Torr〜約20Torrである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プラズマ放電電力密度は約20mW/cm2〜約150mW/cm2である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
下記条件:
室温〜約500℃の基板温度;
水素、重水素及びこれらの組み合わせからなる群より選択される希釈剤気体で、約0.5:1〜約200:1の希釈剤気体:供給ガスの希釈比で希釈された珪素含有供給ガス;及び
約0Torr〜約20Torrの圧力
でアモルファスシリコン層のプラズマ励起化学気相成長(PECVD)を行うことを含む、基板上に担持されたアモルファスシリコン層を具備する半導体素子の製造方法。
【請求項7】
前記供給ガスは、シラン、ジシラン、テトラメチルシラン、SiF4、SiHF3、SiH2Cl4及び一般式:SiNH2N+2-MYM
[式中、Si=珪素、
H=水素または重水素、
Y=ハロゲン、
N=1以上の正の整数、
M=正の整数、および
2N+2−M≧0]
を有する他の気体からなる群より選択される少なくとも一員を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記条件は、約0.01A/cm2〜約5A/cm2のプラズマ放電電流密度をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記基板温度は約80℃〜約300℃であり、前記希釈剤気体:供給ガスの希釈比は約1:1〜約50:1であり、前記圧力は約0.1Torr〜約10Torrである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記プラズマ放電電流密度は約0.03A/cm2〜約0.5A/cm2である、請求項6に記載の方法。
【請求項1】
下記条件:
約20℃〜約250℃の基板温度;
水素、重水素及びこれらの組み合わせからなる群より選択される希釈剤気体で、約5:1〜約1000:1の希釈剤気体:供給ガスの希釈比で希釈された珪素含有供給ガス;及び
約0.2Torr〜約50Torrの圧力
でアモルファスシリコン層のプラズマ励起化学気相成長(PECVD)を行うことを含む、基板上に担持されたアモルファスシリコン層を具備する半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記供給ガスは、シラン、ジシラン、テトラメチルシラン、SiF4、SiHF3、SiH2Cl4及び一般式:SiNH2N+2-MYM
[式中、Si=珪素、
H=水素または重水素、
Y=ハロゲン、
N=1以上の正の整数、
M=正の整数、および
2N+2−M≧0]
を有する他の気体からなる群より選択される少なくとも一員を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記条件は、約5mW/cm2〜約1000mW/cm2のプラズマ放電電力密度をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基板温度は約80℃〜約180℃であり、前記希釈剤気体:供給ガスの希釈比は約20:1〜約400:1であり、前記圧力は約0.5Torr〜約20Torrである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プラズマ放電電力密度は約20mW/cm2〜約150mW/cm2である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
下記条件:
室温〜約500℃の基板温度;
水素、重水素及びこれらの組み合わせからなる群より選択される希釈剤気体で、約0.5:1〜約200:1の希釈剤気体:供給ガスの希釈比で希釈された珪素含有供給ガス;及び
約0Torr〜約20Torrの圧力
でアモルファスシリコン層のプラズマ励起化学気相成長(PECVD)を行うことを含む、基板上に担持されたアモルファスシリコン層を具備する半導体素子の製造方法。
【請求項7】
前記供給ガスは、シラン、ジシラン、テトラメチルシラン、SiF4、SiHF3、SiH2Cl4及び一般式:SiNH2N+2-MYM
[式中、Si=珪素、
H=水素または重水素、
Y=ハロゲン、
N=1以上の正の整数、
M=正の整数、および
2N+2−M≧0]
を有する他の気体からなる群より選択される少なくとも一員を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記条件は、約0.01A/cm2〜約5A/cm2のプラズマ放電電流密度をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記基板温度は約80℃〜約300℃であり、前記希釈剤気体:供給ガスの希釈比は約1:1〜約50:1であり、前記圧力は約0.1Torr〜約10Torrである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記プラズマ放電電流密度は約0.03A/cm2〜約0.5A/cm2である、請求項6に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−153646(P2008−153646A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306162(P2007−306162)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【分割の表示】特願平7−525183の分割
【原出願日】平成7年3月9日(1995.3.9)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【分割の表示】特願平7−525183の分割
【原出願日】平成7年3月9日(1995.3.9)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】
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