説明

半導体装置および半導体装置の製造方法

【課題】 SOI基板を用いることなく、ボディの複数面にゲート電極が配されたSOIトランジスタを形成する。
【解決手段】 半導体基板1上に凸部3を設け、凸部3の側方から内側に向かって進入するように凸部3と半導体基板1との間に酸化膜2を形成し、ゲート絶縁膜4を介して凸部3に跨るように配置されたゲート電極5を半導体基板1上に形成することにより、凸部3上および左右の3面にゲート電極5を配するとともに、ゲート電極の側方にそれぞれ配置されたソース層6aおよびドレイン層6bを凸部3に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置および半導体装置の製造方法に関し、特に、3面にゲート電極が配置されたトリプルゲートSOI(Silicon On Insulator)トランジスタに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
SOI基板上に形成された電界効果型トランジスタは、素子分離の容易性、ラッチアップフリー、ソース/ドレイン接合容量が小さいなどの点から、その有用性が注目されている。特に、完全空乏型SOIトランジスタは、低消費電力かつ高速動作が可能で、低電圧駆動が容易なため、SOIトランジスタを完全空乏モードで動作させるための研究が盛んに行われている。ここで、完全空乏型SOIトランジスタでは、SOI層を薄膜化する必要があるため、寄生抵抗の増大を引き起こし、SOIトランジスタの微細化の利点を損なっている。
【0003】
これに対して、例えば、非特許文献1には、ボディの上下、あるいは、左右、あるいは3面にゲート電極を配したSOIトランジスタが開示されている。この構造では、ボディ電位に対するゲート電極の支配力を高めることができ、比較的厚いSOI層でも、パンチスルーを抑制し、良好なサブスレッショルド特性を維持することができる。
【非特許文献1】Robert Chau,Brian Doyle,Jack Kavalieros,Doug Barlage,Anand,Murthy,Mark Doczy,Reza Arghavani and Suman Datta “Advanced Depleted−Substrate Transistors:Single−gate,Double−gate and Tri−gate” Extended Abstracts of the 2002 International Conference on Solid State Devices and Materials,Nagoya,2002,pp.68−69
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された構造では、ボディの3面にゲート電極を配するために、SOI層を細線状にエッチング加工する必要がある。このため、SOI基板を用いる必要があり、コストアップを招くという問題があった。
そこで、本発明の目的は、SOI基板を用いることなく、ボディの複数面にゲート電極を配することが可能な半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る半導体装置によれば、凸部が設けられた半導体基板と、前記凸部の側方から内側に向かって形成され、前記凸部を前記半導体基板から絶縁する酸化膜と、前記凸部に跨るように配置されたゲート電極と、前記ゲート電極の側方にそれぞれ配置され、前記凸部に形成されたソース/ドレイン層とを備えることを特徴とする。
【0006】
これにより、凸部が設けられた半導体基板の熱酸化を行うことで、凸部を半導体基板から絶縁することが可能となる。このため、SOI基板を用いることなく、ボディの複数面にゲート電極を配することが可能となり、コストアップを抑制しつつ、ボディ電位に対するゲート電極の支配力を高めることができる。この結果、ボディの膜厚が比較的厚い場合においても、パンチスルーを抑制しつつ、良好なサブスレッショルド特性を維持することが可能となり、寄生抵抗を低減させることができる。
【0007】
また、本発明の一態様に係る半導体装置によれば、半導体基板のエッチング加工を行うことにより、前記半導体基板に凸部を形成する工程と、前記凸部を埋め込む絶縁膜を前記半導体基板上に形成する工程と、前記絶縁膜を薄膜化することにより、前記絶縁膜を前記半導体基板上に残した状態で、前記凸部の側壁を露出させる工程と、前記凸部を埋め込む酸化防止膜を前記凸部の側壁が露出された半導体基板上に形成する工程と、前記酸化防止膜をエッチバックすることにより、前記凸部の先端が前記酸化防止膜で覆われるようにして前記絶縁膜を露出させる工程と、前記半導体基板上に残る前記絶縁膜を除去することにより、前記凸部の側壁を露出させる工程と、前記酸化防止膜をマスクとして前記半導体基板の熱酸化を行うことにより、前記凸部を前記半導体基板から絶縁する酸化膜を形成する工程と、前記前記凸部の先端を覆う前記酸化防止膜を除去する工程と、前記凸部の表面の熱酸化を行うことにより、前記凸部の表面にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜を介して前記凸部に跨るように配置されたゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極の側方にそれぞれ配置されたソース/ドレイン層を前記凸部に形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
これにより、凸部の先端が酸化防止膜で覆われた状態で凸部の側壁を酸化することが可能となり、凸部の先端が酸化されることを防止しつつ、凸部と半導体基板との間に酸化膜を形成することができる。このため、SOI基板を用いることなく、ボディの複数面にゲート電極を配することが可能となり、コストアップを抑制しつつ、ボディ電位に対するゲート電極の支配力を高めることができる。
【0009】
また、本発明の一態様に係る半導体装置によれば、前記絶縁膜のエッチングレートは、前記酸化防止膜のエッチングレートよりも大きいことを特徴とする。
これにより、酸化防止膜を残したまま、半導体基板上に残存する絶縁膜を除去することができ、凸部の先端が酸化防止膜で覆われた状態で凸部の側壁を露出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る半導体装置およびその製造方法について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す斜視図である。
図1において、半導体基板1上には凸部3が設けられ、凸部3と半導体基板1との間には酸化膜2が形成されている。ここで、酸化膜2は、凸部3の側方から内側に向かって進入するように半導体基板1上に形成することができる。なお、半導体基板1の材質としては、例えば、Si、Ge、SiGe、SiC、SiSn、PbS、GaAs、InP、GaP、GaNまたはZnSeなどを用いることができる。
【0011】
そして、半導体基板1上には、ゲート絶縁膜4を介して凸部3に跨るように配置されたゲート電極5が形成されている。ここで、凸部3に跨るようにゲート電極5を形成することで、凸部3上および左右の3面にゲート電極5を配することができる。そして、凸部3には、ゲート電極の側方にそれぞれ配置されたソース層6aおよびドレイン層6bが形成されている。
【0012】
これにより、凸部3が設けられた半導体基板1の熱酸化を行うことで、凸部3と半導体基板1との間に酸化膜2を形成することが可能となる。このため、SOI基板を用いることなく、ボディの複数面にゲート電極5を配することが可能となり、コストアップを抑制しつつ、ボディ電位に対するゲート電極5の支配力を高めることができる。この結果、ボディの膜厚が比較的厚い場合においても、パンチスルーを抑制しつつ、良好なサブスレッショルド特性を維持することが可能となり、ソース層6aおよびドレイン層6bの寄生抵抗を低減させることができる。
【0013】
図2および図3は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図2(a)において、半導体基板1の熱酸化を行うことにより、半導体基板1の表面に熱酸化膜11を形成する。そして、CVDなどの方法により絶縁膜を熱酸化膜11上に堆積させ、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて絶縁膜をパターニングする。絶縁膜12の材質としては、例えば、シリコン窒化膜を用いることができる。
【0014】
次に、半導体基板1のエッチングを行うことにより、半導体基板1上に凸部3を形成する。そして、半導体基板1の熱酸化を行うことにより、凸部3の側壁および半導体基板1の表面に熱酸化膜13を形成する。そして、CVDなどの方法により、凸部3を埋め込む絶縁膜14を半導体基板1上に形成する。なお、絶縁膜14としては、例えば、シリコン酸化膜を用いることができる。
【0015】
次に、図2(b)に示すように、ドライエッチングまたはウェットエッチングにて絶縁膜14を薄膜化することにより、絶縁膜14を半導体基板1上に残した状態で、凸部3の側壁を露出させる。
次に、図2(c)に示すように、CVDなどの方法により、凸部3を埋め込む酸化防止膜15を半導体基板1上に形成する。ここで、酸化防止膜15のエッチングレートは、絶縁膜14のエッチングレートよりも小さくなるようにすることができる。なお、絶縁膜14がシリコン酸化膜の場合、酸化防止膜15としては、例えば、シリコン窒化膜を用いることができる。そして、酸化防止膜15をエッチバックすることにより、凸部3の先端が酸化防止膜15で覆われるようにして絶縁膜14を露出させる。
【0016】
次に、図3(a)に示すように、ドライエッチングまたはウェットエッチングにて絶縁膜14を除去することにより、凸部3の先端が酸化防止膜15で覆われたままの状態で、凸部3の側壁を露出させる。
ここで、絶縁膜14のエッチングレートを酸化防止膜15のエッチングレートよりも大きくすることにより、酸化防止膜15を残したまま、半導体基板1上に残存する絶縁膜14を除去することができ、凸部3の先端が酸化防止膜15で覆われた状態で凸部3の側壁を露出させることができる。
【0017】
次に、図3(b)に示すように、酸化防止膜15をマスクとして、凸部3の側壁および半導体基板1の表面の熱酸化を行うことにより、凸部3を半導体基板1から絶縁する酸化膜2を形成する。ここで、凸部3を半導体基板1から絶縁する場合、凸部3の側方から内側に向かって酸化膜2を進入させ、凸部3の側方から進入した酸化膜2を凸部3の中央で接合させることができる。なお、酸化膜2を形成した後の凸部3の高さおよび幅は、例えば、500Å程度とすることができる。
【0018】
次に、図3(c)に示すように、凸部3を覆う酸化防止膜15を除去する。なお、酸化防止膜15がシリコン窒化膜の場合、熱リン酸を用いたウェットエッチングにて酸化防止膜15を除去することができる。
次に、図1に示すように、熱酸化膜11、13を除去した後、凸部3の表面の熱酸化を行うことにより、凸部3の表面にゲート絶縁膜4を形成する。そして、CVDなどの方法により、ゲート絶縁膜4が形成された凸部3が埋め込まれるようにして多結晶シリコン層を酸化膜2上に形成する。そして、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて多結晶シリコン層をパターニングすることにより、凸部3に跨るように配置されたゲート電極5を半導体基板1上に形成する。そして、ゲート電極5をマスクとして、As、P、Bなどの不純物を凸部3内にイオン注入することにより、ゲート電極5の両側にそれぞれ配置されたソース層6aおよびドレイン層6bを凸部3に形成する。
【0019】
これにより、凸部3の先端が酸化防止膜15で覆われた状態で凸部3の側壁を酸化することが可能となり、凸部3の先端が酸化されることを防止しつつ、凸部3と半導体基板1との間に酸化膜2を形成することができる。このため、SOI基板を用いることなく、ボディの複数面にゲート電極5を配することが可能となり、コストアップを抑制しつつ、ボディ電位に対するゲート電極5の支配力を高めることができる。
【0020】
なお、上述した実施形態では、トリプルゲートSOIトランジスタを半導体基板1上に単体で形成する方法について説明したが、半導体基板1上に直接形成されたトランジスタと混載するようにしてもよい。この場合、図2(a)の工程で、半導体基板1上にトランジスタが直接形成される領域をフォトレジストで覆ってから、絶縁膜14を薄膜化することにより、半導体基板1上にトランジスタが直接形成される領域の絶縁膜14をそのまま残すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図。
【符号の説明】
【0022】
1 半導体基板、2 酸化膜、3 凸部、4 ゲート絶縁膜、5 ゲート電極、6a ソース層、6b ドレイン層、11、13 熱酸化膜、12、14 絶縁膜、15 酸化防止膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸部が設けられた半導体基板と、
前記凸部の側方から内側に向かって形成され、前記凸部を前記半導体基板から絶縁する酸化膜と、
前記凸部に跨るように配置されたゲート電極と、
前記ゲート電極の側方にそれぞれ配置され、前記凸部に形成されたソース/ドレイン層とを備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
半導体基板のエッチング加工を行うことにより、前記半導体基板に凸部を形成する工程と、
前記凸部を埋め込む絶縁膜を前記半導体基板上に形成する工程と、
前記絶縁膜を薄膜化することにより、前記絶縁膜を前記半導体基板上に残した状態で、前記凸部の側壁を露出させる工程と、
前記凸部を埋め込む酸化防止膜を前記凸部の側壁が露出された半導体基板上に形成する工程と、
前記酸化防止膜をエッチバックすることにより、前記凸部の先端が前記酸化防止膜で覆われるようにして前記絶縁膜を露出させる工程と、
前記半導体基板上に残る前記絶縁膜を除去することにより、前記凸部の側壁を露出させる工程と、
前記酸化防止膜をマスクとして前記半導体基板の熱酸化を行うことにより、前記凸部を前記半導体基板から絶縁する酸化膜を形成する工程と、
前記前記凸部の先端を覆う前記酸化防止膜を除去する工程と、
前記凸部の表面の熱酸化を行うことにより、前記凸部の表面にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜を介して前記凸部に跨るように配置されたゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極の側方にそれぞれ配置されたソース/ドレイン層を前記凸部に形成する工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁膜のエッチングレートは、前記酸化防止膜のエッチングレートよりも大きいことを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−86188(P2006−86188A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266769(P2004−266769)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】