説明

半導体装置とその製造方法

【課題】半導体素子裏面とダイパット間が剥離することがなく、放熱性の低下や剥離に伴う抵抗の増大による特性劣化を防止することができ、良好な歩留まりで高信頼性の半導体装置を安定して得ることができる半導体装置とその製造方法を提供する。
【解決手段】ダイパット2上に複数の半導体素子を並べて実装したものを1つのパッケージに樹脂封止してマルチ化を図る場合に、半導体素子41が厚み2μm以上15μm以下の半田61でダイパット2に実装され、残りの半導体素子42は銀ペーストなどのエポキシ樹脂からなるダイスボンド材62でダイパット2に実装される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高耐圧用素子などのように高放熱性を必要とし、同一のリードフレーム上に複数個の半導体素子が実装されて樹脂封止された半導体装置とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の低コスト化及び小型化を図るために、互いに異なる機能を有する半導体素子又は互いに異なるプロセスにより形成された半導体素子を、複数個重ならないように並べて実装するマルチ素子パッケージが提案されている。
【0003】
従来のマルチ素子パッケージとしては、図6に示す半導体装置11のように、リードフレーム5に設けられた複数のダイパット2上に、それぞれダイスボンド材6を用いて1つの半導体素子4を実装し、半導体素子4の電極とリードフレーム5のインナーリード3間や異なる半導体素子4同士の電極間を、金属細線7を用いたワイヤーボンドにより電気的に接続した構造のものがあった。
【0004】
ここで、複数のダイパット2上にそれぞれ1つずつ半導体素子4を実装する場合、同一のリードフレーム5に複数のダイパット2を設けなければならないため、ダイパット2間にデッドスペースが生じ、半導体装置11が大型化してしまうという問題があった。また、この場合、ダイパット2を支持するためのリードが複数必要となるため、機能ピンとして利用可能なリード数が減少するという問題もあった。
【0005】
さらに、マルチ素子パッケージを小型化するために、図7に示す半導体装置12のように、一つのダイパット2上に複数個の半導体素子4を実装する場合、ダイスボンド材6である半田の塗布量のばらつきなどに起因して半田が他の素子に付着するなどの不具合をもたらしてしまうことや、半田の塗布量が多くなってしまい半導体素子4が斜めに実装されてしまうこと、さらに、隣接する半導体素子4の表面にダイスボンド材6が這い上がって半導体素子4の表面が汚れてしまい、ワイヤーボンド工程において、金属細線7がうまく半導体素子4と接続されないことや、半導体素子4が電気的に短絡してしまうという問題があった。
【0006】
図7に示す半導体装置12において、特許文献1に記された先行技術によれば、ダイパット2に複数の半導体素子4が実装されるリードフレーム5を利用した半導体装置12において、各実装領域の境界部にリードフレーム5を曲げ加工した溝を形成することによって、余分なダイボンド材6が溝に流れて留まることで、隣の実装領域に流れ込むことを防止することが可能である。
【特許文献1】特開平9−283687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図6に示すような従来の半導体装置11においては、リードフレーム5に設けられた複数のダイパット2上にそれぞれ1つの半導体素子4を実装し、半導体素子4の電極とリードフレーム5のインナーリード3間や半導体素子4どうしの電極間を、金属細線7を用いてワイヤーボンドにより電気的に接続しているが、このように複数のダイパット2上にそれぞれ1つずつ半導体素子4を実装する場合、半導体素子4の搭載精度は取れるが、リードフレーム5に複数のダイパット2を設けなければならないため、ダイパット2間にデッドスペースが生じ、半導体装置11が大型化してしまうという問題点があった。
【0008】
さらに、リードフレーム5において、その搬送時やダイスボンド時の応力によって、複数のダイパット2間で高さが変わってしまうことにより、半導体素子4間の高さも変わり、ワイヤーボンド時の認識が取りづらくなるという問題点もあった。
【0009】
また、図7に示すような従来の半導体装置12においては、ダイパット2が一つであるため、図6に示す半導体装置11のようにダイパット2間のデッドスペースがなく、小型化が可能であるが、一般的に平面的なダイパット2上に複数個の半導体素子4を並べて実装するには、実装用のダイスボンド材6が必要であり、ダイスボンド材6の塗布時に、ダイスボンド材6が広がってしまい、1つ目以降の半導体素子4の実装時に、ダイスボンド材6同士が干渉し、半導体素子4の実装位置が動いてしまい、半導体素子4間の間隔が定まらないことから、隣接する半導体素子4の表面にダイスボンド材6が這い上がって半導体素子4が電気的に短絡してしまうことや、ワイヤーボンド工程において金属細線7がうまく半導体素子4と接続されないという問題点があった。
【0010】
また、特許文献1に記される先行技術によれば、ダイパット2に2個の半導体素子4が実装されるリードフレーム5を利用した半導体装置において、各実装領域の境界部にリードフレーム5を曲げ加工した溝を形成することによって、余分なダイボンド材6が溝に流れてとどまることで、隣の実装領域に流れることを防止することが可能であるが、2個目の半導体素子4の実装時において、ダイスボンド材6の融点以上の温度がリードフレーム5に加わるため、1個目の半導体素子4を実装していたダイスボンド材6が溶融し、半導体素子4が移動してしまうために、半導体素子4の搭載精度が悪くなり、ワイヤーボンド時にワイヤーボンド装置のチップ位置認識の不具合を起こすという懸念があった。
【0011】
この現象は特に、半導体素子4の電極パットと、異なる半導体素子4の電極パットを金属細線7にて接合する際に顕著であり、これは、搭載精度の悪い半導体素子4を2つ同時に認識しなければならないためである。
【0012】
以上のように、ダイスボンド材6として高熱伝導性もしくは高電子伝導性を必要とする半導体素子4においては、その素子裏面とダイパット2間が剥離する恐れがあり、もし放熱性の低下や剥離に伴う抵抗の増大があれば電気的特性が著しく劣化してしまい、半導体装置の信頼性が低下し、それに伴い製品歩留まりも低下するという問題が発生する。
【0013】
本発明は、上記従来の問題点を解決するもので、ダイスボンド材として高熱伝導性もしくは高電子伝導性を必要とする半導体素子においても、その素子裏面とダイパット間が剥離することがなく、放熱性の低下や剥離に伴う抵抗の増大による特性劣化を防止することができ、良好な歩留まりで高信頼性の半導体装置を安定して得ることができる半導体装置とその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の半導体装置は、高放熱性が必要で、1つのダイパット上に裏面の電位を同一とする複数の半導体素子が実装されて樹脂封止された半導体装置であって、前記複数の半導体素子のうち1つは厚み15μm以下の半田で前記ダイパットに実装され、残りは樹脂組成物を含有する半導体用接着剤で前記ダイパットに実装されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項2に記載の半導体装置は、請求項1に記載の半導体装置であって、前記厚み15μm以下の半田で前記ダイパットに実装されている半導体素子は、その動作時に裏面から前記ダイパッドへ電流を流す必要があるパワー半導体素子であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項3に記載の半導体装置は、請求項1または請求項2に記載の半導体装置であって、前記厚み15μm以下の半田で前記ダイパットに実装されている半導体素子は、前記高放熱性を必要とするパワー半導体素子であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項4に記載の半導体装置は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の半導体装置であって、前記厚み15μm以下の半田は、融点が270〜340℃であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項5に記載の半導体装置は、請求項4に記載の半導体装置であって、前記厚み15μm以下の半田は、鉛と錫の共晶半田であることを特徴とする。
また、本発明の請求項6に記載の半導体装置は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の半導体装置であって、前記厚み15μm以下の半田で前記ダイパットに実装されている半導体素子の前記半田との境界に、3層もしくは4層あるいは5層からなる金属の蒸着層が形成されたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項7に記載の半導体装置は、請求項6に記載の半導体装置であって、前記金属の蒸着層のうち前記半田と接する層が金であることを特徴とする。
また、本発明の請求項8に記載の半導体装置は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の半導体装置であって、前記厚み15μm以下の半田で前記ダイパットに実装されている半導体素子の少なくとも1つの電極パットと、前記樹脂組成物を含有する半導体用接着剤で前記ダイパットに実装されている半導体素子の少なくとも1つの電極パットとが、金属細線によって結線されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項9に記載の半導体装置の製造方法は、高放熱性が必要で、1つのダイパット上に裏面の電位を同一とする複数の半導体素子が実装されて樹脂封止された半導体装置の製造方法であって、前記複数の半導体素子のうち1つの半導体素子について、ウェハー時にその裏面に厚み15μm以下の半田を蒸着し、前記蒸着した半田とともにダイシングして個片化した半導体素子を、前記蒸着した半田の融点以上に加熱した前記ダイパットに実装し、前記半田で前記ダイパットに実装した半導体素子以外の1つ以上の半導体素子を、樹脂組成物を含有する半導体用接着剤によって前記ダイパットに実装する工程を有することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項10に記載の半導体装置の製造方法は、請求項9に記載の半導体装置の製造方法であって、前記厚み15μm以下の半田を蒸着を裏面に蒸着する半導体素子は、その動作時に裏面から前記ダイパッドへ電流を流す必要があるパワー半導体素子を用いることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項11に記載の半導体装置の製造方法は、請求項9または請求項10に記載の半導体装置の製造方法であって、前記厚み15μm以下の半田を蒸着を裏面に蒸着する半導体素子は、前記高放熱性を必要とするパワー半導体素子を用いることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項12に記載の半導体装置の製造方法は、請求項9から請求項11のいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって、前記厚み15μm以下の半田は、融点が270〜340℃のものを用いることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項13に記載の半導体装置の製造方法は、請求項12に記載の半導体装置の製造方法であって、前記厚み15μm以下の半田は、鉛と錫の共晶半田を用いることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の請求項14に記載の半導体装置の製造方法は、請求項9から請求項13のいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって、前記ウェハーの裏面に厚み15μm以下の半田を蒸着する工程の前工程で、3層もしくは4層あるいは5層からなる金属の蒸着層を形成することを特徴とする。
【0026】
また、本発明の請求項15に記載の半導体装置の製造方法は、請求項14に記載の半導体装置の製造方法であって、前記金属の蒸着層のうち前記半田と接する層を金で形成することを特徴とする。
【0027】
また、本発明の請求項16に記載の半導体装置の製造方法は、請求項9から請求項15のいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって、前記半田で前記ダイパットに実装した半導体素子以外の1つ以上の半導体素子を、樹脂組成物を含有する半導体用接着剤によって前記ダイパットに実装する工程は、前記半田の融点より低い260℃以下で行うことを特徴とする。
【0028】
また、本発明の請求項17に記載の半導体装置の製造方法は、請求項9から請求項16のいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって、前記半田で前記ダイパットに実装した半導体素子の少なくとも1つの電極パットと、前記樹脂組成物を含有する半導体用接着剤で前記ダイパットに実装した半導体素子の少なくとも1つの電極パットとを、金属細線によって結線する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、半導体素子が同一のリードフレーム上に複数個実装される場合にも、ダイパットが複数いらないため、ダイパット間のデッドスペースがなく小型化が可能であり、かつダイスボンド材の流れ出しを抑制し、ダイスボンド材の這い上がりによって半導体素子が電気的に短絡することを防止し、さらに半導体素子の実装箇所を精度よく定めることができる。
【0030】
また、ワイヤーボンダーによる半導体素子およびその電極パット認識が取りやすく、認識エラーによる製造設備の停止をなくすことができる。
以上により、ダイスボンド材として高熱伝導性もしくは高電子伝導性を必要とする半導体素子においても、その素子裏面とダイパット間が剥離することがなく、放熱性の低下や剥離に伴う抵抗の増大による特性劣化を防止することができ、良好な歩留まりで高信頼性の半導体装置を安定して得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を示す半導体装置とその製造方法について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は本実施の形態の半導体装置13の構造図であり、図1(a)は例えば高耐圧用の素子用に用いられる半導体装置13の平面を示し、図1(b)は図1(a)におけるa−a’の断面を示す。
【0032】
図1において、リードフレーム5は半導体素子搭載部としてのダイパット2と、前記ダイパット2の周囲にインナーリード3を有しており、ダイパット2へ電流を流す必要があるパワー半導体素子41、そしてパワー半導体素子41を制御する制御回路用の半導体素子42が、ダイスボンド材61、62によって前記ダイパット2に実装されており、半導体素子41、42どうしは金属細線71によって、また半導体素子41、42とインナーリード3は金属細線72によって、半導体素子41、42とダイパット2は金属細線73によって電気的に接続されている。
【0033】
上記において、ダイパット2は熱伝導性の良い銅アロイで形成されており、厚みが1.4mm程であり、放熱板をかねている。ダイパット2表面は、金属細線73が接続できるよう例えば銀メッキが施されている。リードフレーム5は封止樹脂8によって樹脂封止されており、樹脂封止領域から突出したアウターリード9が所望の形状に加工されている。
【0034】
このような半導体装置13において、パワー半導体素子41のダイスボンド材61は、前記パワー半導体素子41の動作時に半導体素子41の裏面からダイパット2に電流を流す必要があり、ダイスボンド材61と半導体素子41裏面間やダイスボンド材61とダイパット2間が剥離して抵抗が増えることがなく高放熱性と高信頼性を有する材料として、鉛と錫を共晶させた高融点半田(以下、ダイスボンド材61と同一の符号61で示す)が用いられる。
【0035】
このとき、半導体素子41の裏面には、半田61と半導体素子41裏面を接合するため、Ti、Ni、Auの3層からなる金属の蒸着層が形成されている。この蒸着層のうち半田61と接する層は酸化しにくい金(Au)で形成されており、半導体素子41とダイパット2間にボイドが生じることを防止している。
【0036】
なお、本実施の形態では、半導体素子がパワー半導体素子41と制御回路半導体素子42であるが、これに限定することなく、少なくとも一つの半導体素子が、ダイスボンド材として高熱伝導性もしくは高電子伝導性を必要とするパワー半導体素子41であればよい。また、本実施の形態では、ダイパット2に搭載される半導体素子は、半導体素子41、42の2つであるが、これに限定することなく、3つ以上であってもよい。
【0037】
また、本実施の形態では、ダイパット2表面は、金属細線73が接続できるように銀メッキが施されているが、これに限定することなく、金属細線73が接続できる表面処理がされておればよい。ダイパット2表面全てが表面処理されてなくてもよく、金属細線73の接続を所望する箇所のみでもよい。
【0038】
また、本実施の形態では、高融点の半田61として、鉛と錫の共晶半田を用いているが、これに限定することなく、融点が270〜340℃であり、十分な熱及び電子伝導性と半導体素子41、42の裏面やダイパット2表面と密着性を有する半田61であればよい。
【0039】
また、本実施の形態では、ダイパット2は、厚みが1.4mmで熱伝導性の良い銅アロイで形成されているが、これに限定することなく、半導体素子41として十分な放熱性を有することができる素材および形状であれば良い。
【0040】
また、本実施の形態では、半導体素子41、42どうしが金属細線71によって接続されているが、これに限定することなく、所望の電気的接合が半導体装置13内で施されていれば良い。
【0041】
また、本実施の形態では、半導体素子41の裏面の金属蒸着層のうち半田61と接する層は酸化しにくい金(Au)で形成されているが、これに限定することなく、銀(Ag)などの金属で形成されていても良い。
【0042】
また、本実施の形態では、半導体素子41裏面の金属蒸着層はTi、Ni、Auからなる3層であるが、これに限定することなく、1層以上の金属で形成されておればよい。
この半導体装置13の第1の特徴は、複数の半導体素子を実装可能な1つのダイパット2と、前記ダイパット2に導電性ダイスボンド材で実装された半導体素子を複数有する半導体装置13において、前記複数の半導体素子の裏面の電位が同一で、複数の半導体素子を並べてダイパット2上に実装したものを1つのパッケージに樹脂封止してマルチ化および小型化をはかった半導体装置であって、前記複数の半導体素子の1つが、ウェハー時にその裏面に2μm以上15μm以下の半田61を蒸着し、さらに蒸着された半田61とともにダイシングすることで個片化された半導体素子41を、蒸着された半田61の融点以上に加熱したダイパット2に実装されることによって、厚み2μm以上15μm以下の半田61でダイパット2に実装されており、残りの複数の半導体素子(例えば、半導体素子42を含む半導体素子群)は、銀ペーストなどのエポキシ樹脂やアクリル樹脂等の樹脂組成物を含有する半導体用接着剤からなるダイスボンド材62でダイパット2に実装されていることである。
【0043】
また、本実施の形態では、ダイパット2に樹脂組成物を含有する半導体用接着剤からなるダイスボンド材62によって実装される半導体素子としては、半導体素子41の1つであるが、これに限定することなく、2つ以上であってもよい。
【0044】
上記により、ダイパット2が複数いらないため、従来のようなダイパット2間のデッドスペースがなく、半導体装置13の小型化が可能である。また、動作時に半導体素子の裏面からダイパット2に電流を流す必要があり高熱伝導性が求められる半導体素子41のダイスボンド材として、高融点の半田61を用いることによって、半導体素子41裏面とダイパット2間の剥離を防止することができ、放熱性の低下や剥離に伴う抵抗の増大による特性劣化を防止することが可能である。
【0045】
さらに、ウェハー時にその裏面に15μm以下の半田61を蒸着することで、ダイスボンド材の量を制御することによって、ダイスボンド材のダイパット2上への流れ出しを抑制し、ダイスボンド材の這い上がりによって半導体素子が電気的に短絡することを防止することができる。
【0046】
ここで例えば糸半田等を用いた半田62の滴下によるダイスボンド材の塗布法を用いた際には、半導体素子裏面の十分な濡れ面積を確保しようとすると、半導体素子裏面の半田厚は15μm以上となり、染み出したダイスボンド材がダイパット2上に流れ出してしまうことから、半導体素子41を厚み2μm以上15μm以下に制御した半田61でダイパット2に実装するためには、事前にウェハー裏面に蒸着を行う必要がある。また、ウェハーへの半田61の蒸着工程においては、15μmより厚い半田層の蒸着はウェハーに過剰な熱と応力がかかって割れる危険があり、15μm以下であればその懸念がない。
【0047】
本発明にかかる半導体装置13の第2の特徴は、前記半導体素子41をダイパット2に実装する厚み2μm以上15μm以下の半田61の融点が、270〜340℃であることである。
【0048】
上記により、一度ダイパット2に搭載されたパワー半導体素子41を実装する半田61が、2つ目の半導体素子42の樹脂組成物を含有する半導体用接着剤からなるダイスボンド材62による実装時の温度である200℃以下の温度において溶融することがないため、実装の衝撃で実装位置がずれることがなく、半導体素子41、42の実装箇所を精度よく定めることが可能である。
【0049】
さらに、半田61の量を蒸着層厚みによって制御することが可能になるため、チップ高さにバラつきが生じない。
以上から半導体素子4の搭載精度が改善され、また、チップ高さがばらつかなくなるために、ワイヤーボンド時の認識が容易になる。これは特に、半導体素子41、42どうし間を金属細線71によって接続する際に有効である。
【0050】
図2は本実施の形態の半導体装置13の製造方法を示すフローチャートである。また、図3は本実施の形態の半導体装置13を形成するためのリードフレーム5の構造を示す平面図である。
【0051】
前記リードフレーム5は、複数の半導体素子が実装できる1つのダイパット2とインナーリード3を有している。ダイパット2は熱伝導性の良い銅アロイで形成されており、厚みが1.4mm程であり、放熱板をかねている。ダイパット2の表面とインナーリード3は、金属細線73、72が接続できるように、例えば銀メッキが施されている。
【0052】
なお、本実施の形態では、ダイパット2の表面は、金属細線73が接続できるように銀メッキが施されているが、これに限定することなく、金属細線73が接続できる表面処理がなされておればよい。また、ダイパット2の表面全てが表面処理されてなくてもよく、金属細線73の接続を所望する箇所のみでもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、ダイパット2は、厚みが1.4mmで熱伝導性の良い銅アロイで形成されているが、これに限定することなく、半導体素子が十分な放熱性を有することができる素材および形状であれば良い。
【0054】
動作時に半導体素子の裏面からダイパット2に電流を流す必要があるパワー半導体素子41は、拡散工程により、ウェハーに半導体素子の回路が形成された後、ウェハーは300μmの厚みにバックグラインドされる。後に前記ダイパット2に搭載される半導体素子41が形成されたウェハーの回路形成部裏面に、半田61と半導体素子41裏面を接合するためのTi、Ni、Auの3層からなる金属の蒸着層が形成される。前記蒸着層のうち半田61と接する層は酸化しにくい金(Au)で形成されており、半導体素子(チップ)とダイパット間にボイドが生じることを防止している。
【0055】
なお、本実施の形態では、半導体素子がパワー半導体素子41であるが、これに限定することなく、ダイスボンド材に高熱伝導性もしくは高電子伝導性を必要とする半導体素子であればよい。
【0056】
また、本実施の形態では、バックグラインド後のウェハー厚みは300μmであるが、これに限定することなく、所望の厚みであれば良い。
また、本実施の形態では、半導体素子裏面の金属蒸着層のうち半田と接する層は、酸化しにくい金で形成されているが、これに限定することなく、銀などの金属で形成されていても良い。
【0057】
また、本実施の形態では、半導体素子裏面の金属蒸着層は、Ti、Ni、Auの3層であるが、これに限定することなく、1層以上の金属で形成されておればよい。
さらに、ウェハーの回路形成部裏面にTi、Ni、Auの3層からなる金属の蒸着層が形成(図2のステップS20)されたのち、その蒸着層上に10μmの鉛と錫の共晶半田61が蒸着(図2のステップS21)される。
【0058】
なお、本実施の形態では、半田の蒸着厚みは10μmであるが、これに限定することなく、厚み2μm以上15μmであればよい。ここで、半田の蒸着厚みが15μmを大きく上回ると、蒸着時の熱ストレスや、応力によってウェハークラックやウェハー割れの危険性がある。また、半田61の組成は、鉛と錫の共晶半田に限定することなく、融点が270〜340℃であり、十分な熱及び電子伝導性とチップ裏面やダイパット表面と密着性を有する半田61であればよい。
【0059】
半田61の蒸着層形成後、ウェハーは、所望の大きさにダイシング(図2のステップS22)され個片の半導体素子41となる。
図4において、図3で示されたリードフレーム5のダイパット2に個片となったパワー半導体素子41が実装(図2のステップS23)される。このとき、半導体素子41裏面に既に半田61が蒸着されているため、半田61などの接着剤は滴下せず、300℃に加熱されたリードフレーム5に半導体素子41をマウントするだけで、実装が完了する。
【0060】
これにより、動作時に半導体素子の裏面からダイパット2に電流を流す必要があり、高熱伝導性が求められるパワー半導体素子41のダイスボンド材6として、半田61を用いることによって、半導体素子41の裏面とダイパット2間の剥離を防止することができ、放熱性の低下や剥離に伴う抵抗の増大による電気的特性の劣化を防止することが可能である。
【0061】
なお、本実施の形態では、リードフレーム5の加熱温度を300℃としたが、これに限定することなく、半田61の融点以上であればよい。
次に、パワー半導体素子41を制御する制御回路半導体素子42が、銀ペーストなどの樹脂組成物を含有する半導体用ダイスボンド材62でダイパット2に実装(図2のステップS24)される。前記ダイスボンド材62は、180℃でキュアされ、半導体素子42をダイパット2に固着する。
【0062】
なお、本実施の形態では、ダイスボンド材62のキュア温度を180℃としたが、これに限定することなく、前記半田61の融点以下であればよく、例えば260℃以下であれば良い。
【0063】
これにより、ダイパット2に搭載されたパワー半導体素子41を実装する半田61が、制御回路半導体素子42のダイスボンド材62による実装時の温度である200℃以下の温度において溶融することがないため、実装の衝撃で実装位置がずれることがなく、複数の半導体素子の実装箇所を精度よく定めることが可能であり、ワイヤーボンド工程において、ワイヤーボンダーによる半導体素子4およびその電極パット認識が取りやすく、認識エラーによる設備の停止を低減することが可能である。
【0064】
なお、本実施の形態では、リードフレーム5に2個目に搭載される半導体素子を制御回路半導体素子42としたが、これに限定することなく、所望の半導体素子であれば良い。また、本実施の形態では、ダイパット2に搭載される半導体素子は2つであるが、これに限定することなく、3つ以上であってもよい。
【0065】
図5において、半導体素子41、42間、半導体素子41、42−インナーリード3間、半導体素子41、42−ダイパット2間が金属細線7を用いてワイヤーボンド(図2のステップS25)され、電気的に接続される。このとき、半導体素子41、42の実装精度が高く保たれているため、ワイヤーボンダーによる半導体素子41、42およびその電極パット認識が取りやすく、認識エラーによる設備の停止がないため、低タクトで生産することが可能である。
【0066】
さらに、ワイヤーボンドされた前記半導体装置13は、トランスファーモールド方式によって樹脂封止(図2のステップS26)され、その後、樹脂8封止領域から突出したアウターリード9が所望の形状に加工(図2のステップS27)され、さらに、品種および商標などがレーザマーキング(図2のステップS28)され、電気特性などの最終検査(図2のステップS29)が行なわれた後に、本実施の形態の半導体装置13が製造される。
【0067】
以上のように、本実施の形態の半導体装置13によれば、半導体素子41、42が同一のリードフレーム5上に複数個実装される場合にも、ダイパット2が複数いらないため、ダイパット2間のデッドスペースがなく、小型化が可能であり、かつダイスボンド材61、62の流れ出しを抑制し、ダイスボンド材61、62の這い上がりによって半導体素子41、42が電気的に短絡することを防止し、さらに半導体素子41、42の実装箇所を精度よく定めることができる。
【0068】
また、ワイヤーボンダーによる半導体素子41、42およびその電極パット認識が取りやすく、認識エラーによる設備の停止をなくすことができる
以上により、ダイパット2へ電流を流す必要があるパワー半導体素子41においても、その素子裏面とダイパット2間が剥離することがなく、放熱性の低下や剥離に伴う抵抗の増大による特性劣化を防止することができ、良好な歩留まりで高信頼性の半導体装置13を安定して得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の半導体装置とその製造方法は、ダイスボンド材として高熱伝導性もしくは高電子伝導性を必要とする半導体素子においても、その素子裏面とダイパット間が剥離することがなく、放熱性の低下や剥離に伴う抵抗の増大による特性劣化を防止することができ、良好な歩留まりで高信頼性の半導体装置を安定して得ることができるもので、種々の電子機器に適用される高放熱性半導体装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態の半導体装置の構造を示す平面図とそのa−a’断面図
【図2】同実施の形態の半導体装置の製造方法を示すフローチャート
【図3】同実施の形態の半導体装置を形成するためのリードフレームの構造を示す平面図
【図4】同実施の形態の半導体装置の製造方法を示す平面図とそのb−b’断面図
【図5】同実施の形態の半導体装置の製造方法により得られた半導体装置の途中構造を示す平面図
【図6】従来の半導体装置の構造例を示す平面図
【図7】従来の半導体装置の他の構造例を示す平面図
【符号の説明】
【0071】
11、12、13 半導体装置
2 ダイパット
3 インナーリード
4 半導体素子
41、42 半導体素子
5 リードフレーム
6 ダイスボンド材
61 ダイスボンド材(半田)
62 ダイスボンド材
7 金属細線
71、72、73 金属細線
8 封止樹脂
9 アウターリード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高放熱性が必要で、1つのダイパット上に裏面の電位を同一とする複数の半導体素子が実装されて樹脂封止された半導体装置であって、
前記複数の半導体素子のうち1つは厚み15μm以下の半田で前記ダイパットに実装され、
残りは樹脂組成物を含有する半導体用接着剤で前記ダイパットに実装されている
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記厚み15μm以下の半田で前記ダイパットに実装されている半導体素子は、その動作時に裏面から前記ダイパッドへ電流を流す必要があるパワー半導体素子である
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の半導体装置であって、
前記厚み15μm以下の半田で前記ダイパットに実装されている半導体素子は、前記高放熱性を必要とするパワー半導体素子である
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記厚み15μm以下の半田は、融点が270〜340℃である
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置であって、
前記厚み15μm以下の半田は、鉛と錫の共晶半田である
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記厚み15μm以下の半田で前記ダイパットに実装されている半導体素子の前記半田との境界に、3層もしくは4層あるいは5層からなる金属の蒸着層が形成された
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置であって、
前記金属の蒸着層のうち前記半田と接する層が金である
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の半導体装置であって、
前記厚み15μm以下の半田で前記ダイパットに実装されている半導体素子の少なくとも1つの電極パットと、
前記樹脂組成物を含有する半導体用接着剤で前記ダイパットに実装されている半導体素子の少なくとも1つの電極パットとが、
金属細線によって結線されている
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
高放熱性が必要で、1つのダイパット上に裏面の電位を同一とする複数の半導体素子が実装されて樹脂封止された半導体装置の製造方法であって、
前記複数の半導体素子のうち1つの半導体素子について、ウェハー時にその裏面に厚み15μm以下の半田を蒸着し、
前記蒸着した半田とともにダイシングして個片化した半導体素子を、前記蒸着した半田の融点以上に加熱した前記ダイパットに実装し、
前記半田で前記ダイパットに実装した半導体素子以外の1つ以上の半導体素子を、樹脂組成物を含有する半導体用接着剤によって前記ダイパットに実装する工程を有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記厚み15μm以下の半田を蒸着を裏面に蒸着する半導体素子は、その動作時に裏面から前記ダイパッドへ電流を流す必要があるパワー半導体素子を用いる
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記厚み15μm以下の半田を蒸着を裏面に蒸着する半導体素子は、前記高放熱性を必要とするパワー半導体素子を用いる
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって、
前記厚み15μm以下の半田は、融点が270〜340℃のものを用いる
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記厚み15μm以下の半田は、鉛と錫の共晶半田を用いる
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項9から請求項13のいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって、
前記ウェハーの裏面に厚み15μm以下の半田を蒸着する工程の前工程で、
3層もしくは4層あるいは5層からなる金属の蒸着層を形成する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記金属の蒸着層のうち前記半田と接する層を金で形成する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項9から請求項15のいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって、
前記半田で前記ダイパットに実装した半導体素子以外の1つ以上の半導体素子を、樹脂組成物を含有する半導体用接着剤によって前記ダイパットに実装する工程は、
前記半田の融点より低い260℃以下で行う
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項9から請求項16のいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって、
前記半田で前記ダイパットに実装した半導体素子の少なくとも1つの電極パットと、
前記樹脂組成物を含有する半導体用接着剤で前記ダイパットに実装した半導体素子の少なくとも1つの電極パットとを、
金属細線によって結線する工程を有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−277949(P2009−277949A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128963(P2008−128963)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】