説明

半導体装置の製造方法および半導体装置

【課題】硬化時のボイドを含まず、良好な熱時接着性を備え、高温環境における経時的変化が小さく、耐熱性および耐久性に優れた半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】リードフレーム上に導電性接着剤を介して半導体素子をダイボンディングし、前記接着剤を加熱硬化して固定する半導体装置の製造方法において、前記接着剤が反応性希釈剤を含み、前記反応性希釈剤の沸点が250℃以上であり、前記接着剤の加熱硬化を100℃以上250℃未満と250℃以上350℃未満の少なくとも二回に分けて行うことを特徴とする半導体装置の製造方法および同製造方法により作製された半導体装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化時のボイドを含まず、良好な熱時(150〜300℃)接着性を備え、高温環境における経時的変化が小さく、耐熱性および耐久性に優れた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造は、半導体素子をダイボンディングペーストと呼ばれる導電性接着剤を介してリードフレームに搭載され、オーブン中で熱硬化させることにより製造されている。近年、実装効率の向上のために、短時間硬化の導電性接着剤を用いたインライン硬化ラインが使用されるようになった。しかしながら、インライン硬化により導電性接着剤を硬化させる場合、硬化物中に気泡が残り、信頼性や接着性を阻害することがある。また、リードフレーム上にランプ型やSMD(表面実装部品)型の、LED部品またはレーザーダイオード(LD)部品を製造する際には、LEDチッブまたはLDチップとリードフレームとを接着するために、特に、LEDチッブまたはLDチップとリードフレームとの接合体が、ワイヤーボンディングの工程において高温環境にさらされる場合には、耐熱性の硬化物を与える多官能エポキシ樹脂およびイミド系樹脂が、ダイボンディングペーストのバインダーとして検討され、採用されている。
このようなLED部品においては、LEDチップやLDチップが発熱するため、LED部品やLD部品が長時間にわたって高温環境にさらされる。このため、従来のエポキシ樹脂系ダイボンディングペースト以上に高い信頼性が求められている。
そのため、従来の熱硬化性樹脂接着剤を、インラインキュアラインで加熱硬化させるためにさまざまな工夫がなされている。
例えば、無溶剤の導電性接着剤を使用し、導電性接着剤を低粘度化させる低温硬化と高温硬化との2回に分けて行う方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
また、接着剤の熱硬化反応開始温度より低い温度で蒸発し始める希釈剤を用い、接着剤をその熱硬化反応開始温度より低い温度で予備硬化させた後、より高い温度で硬化させる方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
また、仮硬化と本硬化という2段階硬化工程で硬化させる方法も提案されている(例えば、特許文献3)。
さらに、熱硬化機構の異なる2種の低温側硬化成分と高温側硬化成分を含む絶縁性接着剤が提案されている(例えば、特許文献4〜6)。
【0003】
しかしながら、特許文献1や2の方法は低温での温度維持により生産性が低下してしまう。また、特許文献2においては、低温で蒸散する希釈剤を使用することが記載されているのみである。従来の多官能エポキシ樹脂は、他のエポキシ樹脂よりも10〜20℃程度高いTgを発現するに過ぎない。一方、ポリイミド樹脂は、200〜300℃の高いTgを示すが、200℃以上で数時間といった高温長時間の硬化条件を必要とする。そして、一般に、その硬化物は硬くて脆いため、接着剤としての機能を十分に発揮することができない。
特許文献3の方法では、まず、表面部分を硬化させて搬送時の衝撃耐性を付与し、その後、本硬化させるものであるが、第1段階で紫外線硬化させ、次いで第2段階で紫外線または加熱による硬化を行うので低温と高温の2段階硬化とは内容を異にする。
また、特許文献4〜6の絶縁性接着剤では、反応機構の異なる2種類の硬化剤によりリペアを可能にしているものである。
【0004】
【特許文献1】特開平5−327028号公報
【特許文献2】特開平7−273134号公報
【特許文献3】特開平11−45904号公報
【特許文献4】特開2001−323246号公報
【特許文献5】特開2004−277745号公報
【特許文献6】特開2007−262412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解消するためになされたもので、従来のインライン硬化による製造方法では実現できなかった高性能の半導体装置を実現させ、且つ、ボイドの発生がない上、良好な熱時(150〜300℃)接着性を発現するなど、高温環境における経時的変化が小さく、耐熱性および耐久性に優れた半導体装置を与える製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、沸点がある数値以上の特定の反応性希釈剤を含む接着剤を特定の温度および時間でインライン加熱反応させて得られた半導体装置がボイドを含まず、良好な熱時(150〜300℃)接着性を発現するなど、高温環境における経時的変化が小さく、耐熱性および耐久性に優れることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、以下、
(1)リードフレーム上に導電性接着剤を介して半導体素子をダイボンディングし、前記接着剤を加熱硬化して固定する半導体装置の製造方法において、前記接着剤が反応性希釈剤を含み、前記反応性希釈剤の沸点が250℃以上であり、前記接着剤の加熱硬化を100℃以上250℃未満と250℃以上350℃未満の少なくとも二回に分けて行うことを特徴とする半導体装置の製造方法、
(2)前記導電性接着剤が前記反応性希釈剤を含むポリイミド変性エポキシ樹脂組成物である上記(1)に記載の半導体装置の製造方法、
(3)前記ポリイミド変性エポキシ樹脂組成物が、さらに(A)(a−1)グリシジルアミン型液状エポキシ樹脂と(a−2)数平均分子量200〜10000のビスマレイミド基含有ポリイミド樹脂とを120〜220℃の温度で0.5〜5時間加熱反応させてなる液状反応物、(B)アミン系硬化剤、(C)導電性フィラーならびに(D)イミダゾール系硬化促進剤を含む上記(2)に記載の半導体装置の製造方法、
(4)前記(a−2)成分のビスマレイミド基含有ポリイミド樹脂が、下記一般式(1)または(2)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R1〜R6は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)
で表される化合物である上記(3)に記載の半導体装置の製造方法、
(5)前記(B)成分のアミン系硬化剤が、ジシアンジアミド、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタンおよびジエチレントリアミンから選ばれる少なくとも一種の化合物であり、その配合量が、前記(A)成分の液状反応物100質量部に対し、0.05〜20質量部である上記(3)又は(4)に記載の半導体装置の製造方法、
(6)前記(D)成分のイミダゾール系硬化促進剤が、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−デシル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノメチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2'−メチルイミダゾリル−(1'))−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付与物、2−メチルイミダゾール イソシアヌル酸付与物、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールおよび2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ(1,2−a)ベンズイミダゾールから選ばれる一種以上の化合物である上記(3)〜(5)のいずれかに記載の半導体装置の製造方法、
(7)前記反応性希釈剤が、C10〜C24の脂肪族化合物の一または二塩基酸、一または二価水酸基含有化合物、一または二級アミンのいずれかをグリシジル化したものである上記(1)〜(6)のいずれかに記載の半導体装置の製造方法
および
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法により得られる半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の半導体装置の製造方法により、ボイドの発生が無く、良好な熱時(150〜300℃)接着性を発現するなど、高温環境における経時的変化が小さく、耐熱性および耐久性に優れた半導体装置を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、沸点が250℃以上の反応性希釈剤を含む導電性接着剤を使用してインラインキュアにより高性能の半導体装置を得るための製造方法である。
本発明の製造方法においては、最初の加熱硬化を100℃以上250℃未満、すなわち、反応性希釈剤の沸点より低い温度とすることにより、硬化物中に気泡が発生することなく、リードフレームとの接着状態のよい半導体装置を得ることができる。加熱硬化を100℃以上とすることにより、樹脂内の水分を充分に蒸散させることができ、250℃未満とすることにより、反応性希釈剤の揮発によるボイドや「巣」の発生を防止することができる。
2回目の加熱硬化を250℃以上350℃未満で行うことにより、良好な熱時接着性が発現し、高温環境における経時的変化が小さく、耐熱性および耐久性に優れた半導体装置を与えることができる。加熱硬化が350℃以上であると、ほとんどの樹脂において熱分解が生じるので、好ましくない。2回目の加熱硬化の好ましい範囲は250〜300℃である。
硬化時間は最初の加熱硬化では30〜150秒、好ましくは、60〜120秒、2回目の加熱硬化30〜150秒、好ましくは、60〜120秒であり、生産性を考慮するとトータルで、120秒未満、好ましくは、90秒以下である。
本発明における反応性希釈剤は常圧(0.101325MPa)における沸点が250℃以上であることが必須である。本発明における反応性希釈剤は、後で述べるエポキシ樹脂の開環重合に対する反応性を備えたものである。
沸点が250℃以上である反応性希釈剤としては、脂肪族系のC10〜C24の一または二塩基酸、一または二価水酸基含有化合物、一または二級アミンのいずれかをグリシジル化したものであり、例えば、o-sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル(換算沸点285℃/1.01325MPa)、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル(例えば、日本化薬社製、TGE−H、沸点165℃/1866.5Pa、換算沸点302℃/0.101325MPa)、ジエチレングリコールグリシジルエーテル(換算沸点320℃/0.101325MPa)等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、本発明においては、t−ブチルフェニルグリシジルエーテルが好ましい。
本発明で用いる換算沸点というのは、常圧(0.101325MPa)より低圧で測定された沸点を沸点換算表により常圧における沸点に換算したものである。
この反応性希釈剤の使用量は、本発明において用いられる導電性接着剤の25℃における粘度(E型粘度計を用い、3°コーンの条件で測定した値)が、通常20〜300Pa・s程度、好ましくは50〜150Pa・sとなる量を用いる。
この反応性希釈剤は、通常、後で述べるポリイミド変性エポキシ樹脂や硬化剤等他の成分を混合した後に添加するのが好ましい。
【0011】
導電性接着剤中の硬化性樹脂成分としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等、半導体装置の製造方法において通常用いられているものであればいずれも使用可能である。これらの中で、LED製品のような小型チップ実装製品においては、耐熱性の硬化物を与えることのできる耐熱タイプのエポキシ樹脂やポリイミド変性エポキシ樹脂、組成物、特にポリイミド変性エポキシ樹脂が好ましく使用される。
ポリイミド変性エポキシ樹脂組成物は、(A)(a−1)グリシジルアミン型液状エポキシ樹脂と(a−2)数平均分子量200〜10000のビスマレイミド基含有ポリイミド樹脂とを120〜220℃の温度で0.5〜5時間加熱反応させてなる液状反応物に、前述の反応性機借財とともに後述する(B)〜(D)成分を配合してなるものである。
【0012】
本発明で用いる(a−1)成分のグリシジルアミン型液状エポキシ樹脂としては、p−アミノフェノール型グリシジルエポキシ樹脂、m−アミノフェノール型グリシジルエポキシ樹脂、ジグリシジルアニリン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンおよびテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。本発明においては、構造中に三級アミンで変性した極性の高い低粘度アミン変性液状エポキシ樹脂が好ましい。(a−1)成分のグリシジルアミン型液状エポキシ樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
本発明で用いる(a−2)成分のビスマレイミド基含有ポリイミド樹脂は、数平均分子量が200〜10000であることが好ましく、より好ましくは200〜2000である。数平均分子量が200〜10000の範囲であると、希釈後の樹脂の粘度が低く、接着剤にした際の作業性が良好である。
(a−2)成分のビスマレイミド基含有ポリイミド樹脂としては、極性溶媒との強い相互作用を有する側鎖置換基を導入した構造のもの、主鎖の非平面構造のもの、非対称極性溶媒との強い相互作用の側鎖置換基を導入した構造のもの、柔軟な屈曲構造を有するビスマレイミド型ポリイミド樹脂などが挙げられる。本発明においては、高いガラス転移温度を有しているという観点から下記一般式(1)または(2)で表されるビスマレイミド型ポリイミド樹脂が好ましい。このビスマレイミド型ポリイミド樹脂のガラス転移温度は
200〜250℃程度であり、従来の多官能エポキシ樹脂と比べて充分に高いガラス転移温度を有している。
【0014】
【化2】

【0015】
上記一般式(1)および(2)において、R1〜R6は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基およびエチル基が好ましい。
上記一般式(1)で表されるビスマレイミド型ポリイミド樹脂としては、ビスフェノールAジフェニルエーテル ビスマレイミドなどが挙げられ、上記一般式(2)で表されるビスマレイミド型ポリイミド樹脂としては、3,3'−ジメチル−5,5'−ジエチル−4,4'−ジフェニルメタン ビスマレイミド等が挙げられる。(a−2)成分のビスマレイミド基含有ポリイミド樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
上述したように、本発明においては、(a−1)成分と(a−2)成分とを120〜220℃の温度で0.5〜5時間加熱反応させてなる液状反応物を用いる。(a−1)成分と(a−2)成分とをこの条件で加熱反応させると、安定した液状反応物を得ることができると共に、該液状反応物を含む接着剤において熱時接着性等の耐熱性が発現される。上記加熱反応は、好ましくは120〜190℃の温度で1.0〜3.0時間行う。上記加熱反応の終点は、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィ)分析によって反応が完結したことが確認された時点とすることが肝要である。
また、加熱反応の温度および反応時間以外の製造条件は特に限定されないが、酸化により着色等を防止する観点から、窒素気流下で加熱反応を行うことが好ましい。必要に応じて、非アミド溶媒中で加熱反応を行うこともできる。
【0017】
(a−1)成分と(a−2)成分とを加熱反応させてなる液状反応物において、(a−1)成分と(a−2)成分の使用量比は、(a−1)成分100質量部に対して、(a−2)成分25〜100質量部であることが好ましく、30〜70質量部であることがより好ましい。(a−1)成分100質量部に対して、(a−2)成分が25質量部以上であると、良好な熱時(150〜300℃)接着性を発現する接着剤を得ることができる。また、(a−2)成分が100質量部以下であると、接着剤の粘度を低減することができるので、吐出性の良好な接着剤を得ることができる。
(a−1)成分と(a−2)成分とを加熱反応させてなる液状反応物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、(a−1)成分のエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を(a−1)成分の一部と置き換えることができる。他のエポキシ樹脂の含有量は(a−1)成分100質量部に対して50質量部以下、好ましくは25質量部以下の割合である。
なお、(a−1)成分と(a−2)成分とを所定量一度に添加して反応させてもよいし、まず、(a−1)成分の一部と(a−2)成分とを反応させ、次いで残りの(a−1)成分を添加して反応させてもよい。
【0018】
本発明で用いる(B)成分のアミン系硬化剤としては、ジシアンジアミド、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタンおよびジエチレントリアミン等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。(B)成分の使用量は、適度の硬化性を得る点から、(a−1)成分と(a−2)成分とを加熱反応させてなる(A)液状反応物100質量部に対して0.05〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましい。
【0019】
(C)成分の導電性フィラーとしては、例えば、銀粉末、銅粉末、ニッケル粉末等の金属粉末、およびカーボンブラック等が挙げられる。本発明においては、平均粒径20μm以下、タップ密度3〜7g/cm3、比表面積0.05〜1.5m2/gの鱗片形状の銀粉末が好ましい。本発明のダイボンディングペーストにおける導電性フィラーの充填率は、50〜98質量%が好ましく、より好ましくは60〜95質量%である。この充填率が50質量%以上であると良好な導電性が得られ、また、導電性フィラーの充填率の上限は、通常98質量%程度である。
【0020】
本発明で用いる(D)成分のイミダゾール系硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−デシル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノメチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2'−メチルイミダゾリル−(1'))−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付与物、2−メチルイミダゾール イソシアヌル酸付与物、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールおよび2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ(1,2−a)ベンズイミダゾール等が挙げられる。
これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。(D)成分の使用量は、適度の硬化促進効果を得る点から、(a−1)成分と(a−2)成分とを加熱反応させてなる(A)液状反応物100質量部に対して0.05〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0021】
また、(a−1)成分と(a−2)成分とを加熱反応させて液状反応物を調製する際に、この液状反応物の粘度を調整するため、前記必須成分である反応性希釈剤と共に有機溶媒を添加してもよく、液状反応物を調製した後に添加してもよい。この有機溶媒としては、酢酸セロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジアセトンアルコール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンおよび3,5−ジメチル−1−アダマンタンアミン(DMA)等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのうち、本発明においては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジチルアセトアミド(DMAc)および3,5−ジメチル−1−アダマンタンアミン(DMA)が好ましい。
この有機溶媒の使用量は、(a−1)成分と(a−2)成分とを反応させてなる(A)液状反応物100質量部に対して5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。この有機溶媒は反応後に除去するのが好ましい。
【0022】
本発明において用いられる接着剤には、上記成分の他に、基材に対する濡れ性や接着性を改善させるためのシランカップリング剤、チクソ性を付与するためのチクソ剤、非水系塗料用湿潤・分散剤および消泡剤等を必要に応じて添加することができる。上記シランカップリング剤としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランやγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。非水系塗料用湿潤・分散剤としては、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ポリカルボン酸のアミン塩等が挙げられる。
また、(a−2)成分のポリイミド樹脂の硬化を促進するために、有機過酸化物を添加することができる。有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ターシャルブチルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、アシルパーオキサイドおよびクメンパーオキサイド等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。有機過酸化物の添加量は、(a−2)成分100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
【0023】
本発明において用いられる接着剤は、まず、(a−1)成分と(a−2)成分とを反応させて(A)液状反応物を調製し、次いで、この液状反応物に、常法に従い各成分を十分混合した後、さらに、ディスパース、ニーダー、3本ロール混練機等により混練処理を行い、その後減圧脱泡することで容易に製造することができる。
上記液状反応物の調製においては、通常120〜220℃程度、好ましくは120〜190℃に加熱して、(A)成分および必要に応じて用いる上記他の樹脂を完全に溶解させる。また、反応性希釈剤とともに必要に応じて、有機溶媒を用いて、この液状反応物の粘度を調整してもよい。
【0024】
このようにして得られた本発明において用いられる接着剤を、例えば、シリンジに充填し、ディスペンサーを用いて基板上に吐出後、半導体素子を装着し、接着剤の硬化により半導体素子を基板上に接合することができる。さらにワイヤボンディングを行い、封止剤である樹脂を用いて封止することにより、樹脂封止型の半導体装置を製造することができる。
【実施例】
【0025】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。以下の実施例および比較例において「部」は「質量部」を意味する。
実施例1
m−アミノフェノール型エポキシ樹脂(商品名jER630、ジャパンエポキシレジン社製)10部に、3,3'−ジメチル−5,5'−ジエチル−4,4'−ジフェニルメタン ビスマレイミド(ビスマレイド型ポリイミド樹脂、商品名 BMI−5000、大和化成工業社製、分子量 442.5)10部を加え、窒素気流下、100℃において30分間攪拌した。次いで、125℃まで60分間かけて昇温させ、この反応液の一部をサンプリングし、70℃における粘度(E型粘度計を用い、3°コーンの条件で測定した値)を測定したところ、0.7Pa・sであった。
粘度が目標値に達したことを確認した後、100℃まで冷却し、m−アミノフェノール型エポキシ樹脂(商品名jER630、ジャパンエポキシレジン社製)10部を投入し、全体が均一になるまで攪拌し、反応液を得た。その後、濾紙を用いて濾過し、エポキシ樹脂とポリイミド樹脂との液状反応物1(ポリイミド変性エポキシ樹脂)を製造した。このポリイミド変性エポキシ樹脂1のガラス転移温度は215℃であった。
この液状反応物1を15部、ジシアンジアミド1部、2-ウンデシルイミダゾール(イミダゾール系硬化促進剤、商品名 C11Z、四国化成社製)0.5部、銀粉(鱗片状、タップ密度4.5g/cm3、比表面積0.5m2/g、平均粒径5μm)80部、シランカップリング剤(商品名 A−187、GE東芝シリコーン社製)0.5部および非水系塗料用湿潤・分散剤(商品名 ディスパロン1831、楠本化成社製)0.4部を3本ロール混練機にて混練した後、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル(反応性希釈剤、沸点165℃/1866.5Pa、換算沸点302℃/0.101325MPa、商品名 TGE−H、日本化薬社製)5部を加えて、導電性接着剤1を製造した。得られた導電性接着剤1について、下記の特性評価法により評価を行った。結果を表1に示す。
【0026】
<特性評価法>
(1)ブリードアウト
アルミナ系セラミックの板上に、導電性接着剤を直径が1〜2mm程度となるように塗布し、25℃の環境に12時間放置した後の、塗布された導電性接着剤周辺への樹脂および反応性希釈剤の滲み出しの有無を目視で確認し、滲み出しが認められた場合をブリードアウト有りとした。
(2)ボイド観察
金メッキを施したニッケル・パラジウムリードフレームに、1mm×1mm×300μmのシリコンチップを、導電性接着剤を用いて接着し、インラインキュア炉(キャノンマシナリー製)にて150℃×90秒および250℃×90秒の加熱条件で導電性接着剤を硬化させた。硬化後、導電性接着剤層の断面観察によりボイド発生の有無を観察した。
(3)接着性〔熱時せん断強度1〕
上記のように作製したサンプルを200℃、260℃または300℃の熱板上に載せ、上記リードフレームに対して水平方向から力を加えることにより、上記シリコンチップに力を加え、シリコンチップが剥がれたときの力を、熱時せん断強度1とした。
(4)接着性〔吸湿後熱時せん断強度〕
金メッキを施したニッケル・パラジウムリードフレームに、1mm×1mm×300μmのシリコンチップを、導電性接着剤を用いて接着し、上記(2)と同様にして導電性接着剤を硬化させた。次いで、85℃、85%RHの吸湿条件下に24時間放置した後、260℃の熱板上に載せ、上記リードフレームに対して水平方向から力を加えることにより、上記シリコンチップに力を加え、シリコンチップが剥がれたときの力を、吸湿後熱時せん断強度とした。
(5)接着性〔熱時せん断強度2〕
金メッキを施したニッケル・パラジウムリードフレームに、0.3mm×0.3mm×300μmのガリウム砒素化合物チップを、導電性接着剤を用いて接着し、上記(2)と同様にして導電性接着剤を硬化させた。次いで、室温まで放冷した後、200℃、260℃または300℃の熱板上に載せ、上記リードフレームに対して水平方向から力を加えることにより、上記ガリウム砒素化合物チップに力を加え、ガリウム砒素化合物チップが剥がれたときの力を、熱時せん断強度2とした。
(6)反応性希釈剤添加後の粘度
E型粘度計(3°コーン使用)を用いて25℃において測定した。
【0027】
実施例2
3,3'−ジメチル−5,5'−ジエチル−4,4'−ジフェニルメタン ビスマレイミド(ビスマレイド型ポリイミド樹脂、商品名 BMI−5000、大和化成工業社製、分子量 442.5)10部に、m−アミノフェノール型エポキシ樹脂(商品名jER630、ジャパンエポキシレジン社製)20部とジエチレングリコールジメチルエーテル5部を加え、全体が均一になるように20分間攪拌した後、濾紙を用いて濾過し、液状反応物2(ポリイミド変性エポキシ樹脂)を製造した。このポリイミド変性エポキシ樹脂のガラス転移温度は205℃であった。
この液状反応物2を15部、ジシアンジアミド1部、2-ウンデシルイミダゾール(イミダゾール系硬化促進剤、商品名C11Z、四国化成社製)0.5部、銀粉(鱗片状、タップ密度4.5g/cm3、比表面積0.5m2/g、平均粒径5μm)80部およびシランカップリング剤(商品名A−187、GE東芝シリコーン社製)1部および非水系塗料用湿潤・分散剤(商品名:ディスパロン1831、楠本化成社製)0.4部を3本ロール混練機にて混練した後、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル5部を加えて、導電性接着剤2を製造した。得られた導電性接着剤2について、上記の特性評価法により評価を行った。結果を表1に示す。
【0028】
比較例1
t−ブチルフェニルグリシジルエーテルの替わりにフェニルグリシジルエーテル(反応性希釈剤、商品名 PGE−H、日本化薬社製、沸点245℃/1.01325MPa)を用いた以外は実施例1と同様に行い、比較用導電性接着剤1を製造した。得られた比較用導電性接着剤1について、上記の特性評価法により評価を行った。結果を表1に示す。
【0029】
比較例2
t−ブチルフェニルグリシジルエーテルの替わりにジエチレングリコールジエチルエーテルを用いた以外は実施例1と同様に行い、比較用導電性接着剤2を製造した。得られた比較用導電性接着剤2について、上記の特性評価法により評価を行った。結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の導電性接着剤1および2は、ブリードを生じることなくボイドも発生せず、かつ、接着性に優れており、半導体パッケージ等の信頼性向上に寄与し得るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードフレーム上に導電性接着剤を介して半導体素子をダイボンディングし、前記接着剤を加熱硬化して固定する半導体装置の製造方法において、前記接着剤が反応性希釈剤を含み、前記反応性希釈剤の沸点が250℃以上であり、前記接着剤の加熱硬化を100℃以上250℃未満と250℃以上350℃未満の少なくとも二回に分けて行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記導電性接着剤が前記反応性希釈剤を含むポリイミド変性エポキシ樹脂組成物である請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ポリイミド変性エポキシ樹脂組成物が、さらに(A)(a−1)グリシジルアミン型液状エポキシ樹脂と(a−2)数平均分子量200〜10000のビスマレイミド基含有ポリイミド樹脂とを120〜220℃の温度で0.5〜5時間加熱反応させてなる液状反応物、(B)アミン系硬化剤、(C)導電性フィラーならびに(D)イミダゾール系硬化促進剤を含む請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記(a−2)成分のビスマレイミド基含有ポリイミド樹脂が、下記一般式(1)または(2)
【化1】

(式中、R1〜R6は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す)
で表される化合物である請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記(B)成分のアミン系硬化剤が、ジシアンジアミド、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタンおよびジエチレントリアミンから選ばれる少なくとも一種の化合物であり、その配合量が、前記(A)成分の液状反応物100質量部に対し、0.05〜20質量部である請求項3又は4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記(D)成分のイミダゾール系硬化促進剤が、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−デシル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノメチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2'−メチルイミダゾリル−(1'))−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付与物、2−メチルイミダゾール イソシアヌル酸付与物、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールおよび2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ(1,2−a)ベンズイミダゾールから選ばれる一種以上の化合物である請求項3〜5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記反応性希釈剤が、C10〜C24の脂肪族化合物の一または二塩基酸、一または二価水酸基含有化合物、一または二級アミンのいずれかをグリシジル化したものである請求項1〜6のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法により得られる半導体装置。

【公開番号】特開2009−295688(P2009−295688A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146128(P2008−146128)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】