説明

半導体装置の製造方法及びコンピュータ記録媒体

【課題】効率良く多段の良好な形状の階段状の構造を形成することのできる半導体装置の製造方法及びコンピュータ記録媒体を提供する。
【解決手段】第1の誘電率の第1の膜と、第1の誘電率とは異なる第2の誘電率の第2の膜とが交互に積層された多層膜と、多層膜の上層に位置しエッチングマスクとして機能するフォトレジスト層とを有する基板をエッチングして、階段状の構造を形成する半導体装置の製造方法であって、フォトレジスト層をマスクとして第1の膜をプラズマエッチングする第1工程と、水素含有プラズマにフォトレジスト層を晒す第2工程と、フォトレジスト層をトリミングする第3工程と、第3工程によってトリミングしたフォトレジスト層及び第1工程でプラズマエッチングした第1の膜をマスクとして第2の膜をエッチングする第4工程とを有し、第1工程乃至第4工程を繰り返して行うことにより、多層膜を階段状の構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及びコンピュータ記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置の製造工程では、半導体ウエハ等の基板にプラズマを作用させて、エッチングや成膜等の処理を施すプラズマ処理が行われている。このような半導体装置の製造工程、例えば、NAND型フラッシュメモリの製造工程では、誘電率の異なる2種の膜、例えば、絶縁膜と導電膜とが交互に積層された多層膜に対して、プラズマエッチングとマスクのトリミングを行い、階段状の構造を形成することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−170661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、誘電率の異なる2種の膜、例えば、絶縁膜と導電膜とが交互に積層された多層膜から階段状の構造を形成する半導体装置の製造工程では、工程数が多くなり製造効率が悪化するとともに、堆積物の影響等で、多段の良好な形状の階段状の構造を形成することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたもので、効率良く多段の良好な形状の階段状の構造を形成することのできる半導体装置の製造方法及びコンピュータ記録媒体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体装置の製造方法の一態様は、第1の誘電率を有する第1の膜と、前記第1の誘電率とは異なる第2の誘電率を有する第2の膜とが交互に積層された多層膜と、前記多層膜の上層に位置しエッチングマスクとして機能するフォトレジスト層とを有する基板をエッチングして、階段状の構造を形成する半導体装置の製造方法であって、前記フォトレジスト層をマスクとして前記第1の膜をプラズマエッチングする第1工程と、水素含有プラズマに前記フォトレジスト層を晒す第2工程と、前記フォトレジスト層をトリミングする第3工程と、前記第3工程によってトリミングしたフォトレジスト層及び前記第1工程でプラズマエッチングした前記第1の膜をマスクとして前記第2の膜をエッチングする第4工程とを有し、前記第1工程乃至前記第4工程を繰り返して行うことにより、前記多層膜を階段状の構造とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、効率良く多段の良好な形状の階段状の構造を形成することのできる半導体装置の製造方法及びコンピュータ記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に用いるプラズマ処理装置の概略構成を模式的に示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係る半導体ウエハの断面の概略構成を模式的に示す図。
【図3】本発明の一実施形態の工程を示すフローチャート。
【図4】SiFの流量とトリムレシオとの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、実施形態に係る半導体装置の製造方法に用いるプラズマ処理装置の構成を示すものである。プラズマ処理装置は、気密に構成され、電気的に接地電位とされた処理チャンバー1を有している。
【0010】
この処理チャンバー1は、円筒状とされ、例えば表面に陽極酸化皮膜を形成されたアルミニウム等から構成されている。処理チャンバー1内には、被処理基板である半導体ウエハWが略水平に載置される載置台2が設けられている。この載置台2は、下部電極を兼ねたものであり、例えばアルミニウム等の導電性材料で構成されており、絶縁板3を介して導体の支持台4に支持されている。また、載置台2上の外周部分には、半導体ウエハWの周囲を囲むように、環状に形成されたフォーカスリング5が設けられている。
【0011】
載置台2には、第1マッチングボックス11aを介して第1高周波電源10aが接続されるとともに、第2マッチングボックス11bを介して第2高周波電源10bが接続されている。第1高周波電源10aからは、所定周波数(例えば100MHz)の高周波電力が載置台2に供給されるようになっている。一方、第2高周波電源10bからは、第1高周波電源10aより低い所定周波数(例えば13.56MHz)の高周波電力が載置台2に供給されるようになっている。
【0012】
一方、載置台2に対向してその上方には、シャワーヘッド16が載置台2と平行に対向して設けられており、このシャワーヘッド16は接地電位とされている。したがって、これらのシャワーヘッド16と載置台2とは、一対の対向電極(上部電極と下部電極)として機能するようになっている。
【0013】
載置台2の上面には、半導体ウエハWを静電吸着するための静電チャック6が設けられている。この静電チャック6は絶縁体6bの間に電極6aを介在させて構成されており、電極6aには直流電源12が接続されている。そして電極6aに直流電源12から直流電圧が印加されることにより、クーロン力等によって半導体ウエハWが吸着されるよう構成されている。
【0014】
載置台2の内部には、図示しない冷媒流路が形成されており、その中に適宜の冷媒を循環させてその温度を制御できるようになっている。また、載置台2には、半導体ウエハWの裏面側にヘリウムガス等のバックサイドガス(裏面側伝熱ガス)を供給するためのバックサイドガス供給配管30a,30bが接続されており、バックサイドガス供給源31から半導体ウエハWの裏面側にバックサイドガスを供給できるようになっている。なお、バックサイドガス供給配管30aは半導体ウエハWの中央部に、バックサイドガス供給配管30bは半導体ウエハWの周縁部にバックサイドガスを供給するためのものである。このような構成によって、半導体ウエハWを所定の温度に制御可能となっている。また、フォーカスリング5の外側下方には排気リング13が設けられている。排気リング13は支持台4を通して処理チャンバー1と導通している。
【0015】
処理チャンバー1の天壁部分に、載置台2に対向するように設けられたシャワーヘッド16には、その下面に多数のガス吐出孔18が設けられており、かつその上部にガス導入部16aが設けられている。そして、その内部には空間17が形成されている。ガス導入部16aにはガス供給配管15aが接続されており、このガス供給配管15aの他端には、プラズマエッチング用のガス(エッチングガス)等を供給する処理ガス供給系15が接続されている。
【0016】
処理ガス供給系15から供給されるガスは、ガス供給配管15a、ガス導入部16aを介してシャワーヘッド16内部の空間17に至り、ガス吐出孔18から、半導体ウエハWに向けて吐出される。
【0017】
処理チャンバー1の下部には、排気ポート19が形成されており、この排気ポート19には排気系20が接続されている。そして排気系20に設けられた真空ポンプを作動させることにより処理チャンバー1内を所定の真空度まで減圧することができるようになっている。一方、処理チャンバー1の側壁には、半導体ウエハWの搬入出口を開閉するゲートバルブ24が設けられている。
【0018】
一方、処理チャンバー1の周囲には、同心状に、リング磁石21が配置されている。このリング磁石21は、上側リング磁石21aと、この上側リング磁石21aの下側に配置された下側リング磁石21bとから構成されており、載置台2とシャワーヘッド16との間の空間に、所定の磁場を形成するようになっている。このリング磁石21は、図示しないモータ等の回転手段により回転可能となっている。
【0019】
上記構成のプラズマ処理装置は、制御部60によって、その動作が統括的に制御される。この制御部60は、CPUを備えプラズマ処理装置の各部を制御するプロセスコントローラ61と、ユーザインターフェース部62と、記憶部63とを具備している。
【0020】
ユーザインターフェース部62は、工程管理者がプラズマ処理装置を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、プラズマ処理装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成されている。
【0021】
記憶部63には、プラズマ処理装置で実行される各種処理をプロセスコントローラ61の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記憶されたレシピが格納されている。そして、必要に応じて、ユーザインターフェース部62からの指示等にて任意のレシピを記憶部63から呼び出してプロセスコントローラ61に実行させることで、プロセスコントローラ61の制御下で、プラズマ処理装置での所望の処理が行われる。また、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータで読取り可能なコンピュータ記録媒体(例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用したり、或いは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0022】
次に、上記構成のプラズマ処理装置で、半導体ウエハWをプラズマエッチングする手順について説明する。まず、ゲートバルブ24が開かれ、半導体ウエハWが図示しない搬送ロボット等により、図示しないロードロック室を介して処理チャンバー1内に搬入され、載置台2上に載置される。この後、搬送ロボットを処理チャンバー1外に退避させ、ゲートバルブ24を閉じる。そして、排気系20の真空ポンプにより排気ポート19を介して処理チャンバー1内が排気される。
【0023】
処理チャンバー1内が所定の真空度になった後、処理チャンバー1内には処理ガス供給系15から所定の処理ガスが導入され、処理チャンバー1内が所定の圧力、例えば13.3Pa(100mTorr)に保持され、この状態で第1高周波電源10a、第2高周波電源10bから載置台2に、高周波電力が供給される。このとき、直流電源12から静電チャック6の電極6aに所定の直流電圧が印加され、半導体ウエハWはクーロン力等により静電チャック6へ吸着される。
【0024】
この場合に、上述のようにして下部電極である載置台2に高周波電力が印加されることにより、上部電極であるシャワーヘッド16と下部電極である載置台2との間には電界が形成される。一方、上部電極であるシャワーヘッド16と下部電極である載置台2との間には、リング磁石21により磁界が形成されているから、半導体ウエハWが存在する処理空間には電子のドリフトによりマグネトロン放電が生じ、それによって形成された処理ガスのプラズマの作用により、半導体ウエハWに所定のプラズマ処理が施される。
【0025】
そして、所定のプラズマ処理が終了すると、高周波電力の供給及び処理ガスの供給が停止され、上記した手順とは逆の手順で、半導体ウエハWが処理チャンバー1内から搬出される。
【0026】
次に、本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態について図2、図3を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る被処理基板として半導体ウエハWの断面構成を模式的に示し、本実施形態の工程を示すものであり、図3は、本実施形態の工程を示すフローチャートである。
【0027】
図2(a)に示すように、半導体ウエハWの最上部には、所定形状にパターニングされ、マスクとしての機能を果たすフォトレジスト膜200が形成されている。このフォトレジスト膜200は、厚みが例えば5μm程度とされている。フォトレジスト膜200の下側には、絶縁膜としての二酸化シリコン(SiO)膜201aが形成され、二酸化シリコン膜201aの下側には、導電膜としてポリシリコン膜(ドープドポリシリコン膜)202aが形成されている。
【0028】
また、ポリシリコン膜202aの下側には、二酸化シリコン膜201bが形成され、二酸化シリコン膜201bの下側には、ポリシリコン膜202bが形成されている。このように、二酸化シリコン膜201とポリシリコン膜202とが交互に積層され、積層膜210が構成されている。積層膜210の積層数は、例えば二酸化シリコン膜201が32層、ポリシリコン膜202が32層、合計64層等とされる。
【0029】
なお、本実施形態では、二酸化シリコン(SiO)膜とポリシリコン膜(ドープドポリシリコン膜)とを積層した積層膜を例に説明するが、積層膜としては、第1の誘電率を有する第1の膜と、第1の誘電率とは異なる第2の誘電率を有する第2の膜とを積層した構造の積層膜について適用することができる。より具体的には、例えば、二酸化シリコン膜と窒化シリコン膜を積層して構成した積層膜、ポリシリコン膜とドープドポリシリコン膜を積層して構成した積層膜等に適用することができる。
【0030】
図2(a)に示す状態から、まず、フォトレジスト膜200をマスクとして、二酸化シリコン膜201aをプラズマエッチングして図2(b)の状態とする(図3に示す工程301)。このプラズマエッチング処理は、例えばCF+CHF等の処理ガスのプラズマを用いて行う。
【0031】
次に、プラズマエッチングによって発生した堆積物、特にフォトレジスト膜200の側壁部に堆積した堆積物220を除去するための堆積物除去処理を行い図2(c)の状態とする(図3に示す工程302)。この堆積物除去処理は、例えばO+CF等の処理ガスのプラズマを用いて行う。
【0032】
次に、フォトレジスト膜200の上面を改質する改質処理(キュア)を行い、フォトレジスト膜200の上面に改質膜200aを形成し、図2(d)の状態とする(図3に示す工程303)。この改質処理(キュア)は、フォトレジスト膜200を、水素を含むプラズマに晒すことによって行う。
【0033】
次に、フォトレジスト膜200のトリミング処理を行い、フォトレジスト膜200の開口面積を広げる。つまり、フォトレジスト膜200の下側の二酸化シリコン膜201aの一部を露出させ、図2(e)の状態とする(図3に示す工程304)。このトリミング処理は、例えばO+N等の処理ガスのプラズマを用いて行う。
【0034】
次に、フォトレジスト膜200及び一部を露出させた二酸化シリコン膜201aをマスクとして、二酸化シリコン膜201aの下側のポリシリコン膜202aをプラズマエッチングして図2(f)の状態とする(図3に示す工程305)。このプラズマエッチング処理は、例えばHBr+SF+He等の処理ガスのプラズマを用いて行う。
【0035】
上記の工程によって、一段目の階段形状が形成される。この後、上記の二酸化シリコン膜201のプラズマエッチングから、ポリシリコン膜202のプラズマエッチングまでの工程を、所定回数繰り返して実施し(図3に示す工程306)、所定の段数の階段状の構造を形成する。
【0036】
上記のように、本実施形態では、ポリシリコン膜202のプラズマエッチングを行う直前の工程で、フォトレジスト膜200のトリミング処理を行う。これは、ポリシリコン膜202のプラズマエッチングを行った直後は、フォトレジスト膜200の側壁等の堆積物の堆積量が増大し、容易にフォトレジスト膜200のトリミングを行うことができないからである。
【0037】
例えば、二酸化シリコン膜201のプラズマエッチングを行った後、次にポリシリコン膜202のプラズマエッチングを行い、この後、フォトレジスト膜200のトリミングを行うと、フォトレジスト膜200の側壁等へのポリシリコン膜202のエッチングに起因する堆積物の堆積量が増大し、容易にフォトレジスト膜200のトリミングを行うことができない。
【0038】
これに対して、本実施形態のように、ポリシリコン膜202のプラズマエッチングを行う直前の工程でフォトレジスト膜200のトリミング処理を行うことにより、より容易に短時間で大きな量のトリミングを行うことができる。
【0039】
なお、階段状の構造の次の段を形成する際には、ポリシリコン膜202のプラズマエッチングの後、二酸化シリコン膜201のプラズマエッチングと堆積物除去工程を実施しているので、同様にしてより容易に短時間で大きな量のトリミングを行うことができる。
【0040】
また、本実施形態では、トリミング処理の前にフォトレジスト膜200の上面の改質処理を行っているので、トリミング処理の際に、フォトレジスト膜200の上面がトリミングされる量を抑制することができる。したがって、トリミング処理において、フォトレジスト膜200の膜厚の減少(図2(e)に示すy)が抑制され、フォトレジスト膜200の水平方向のトリミング量(図2(e)に示すx)の方が多くなり、トリム比y/xを小さくすることができる。
【0041】
実施例として、図1に示した構造のプラズマ処理装置を使用し、図2に示したように、絶縁膜としての二酸化シリコン膜と、導電膜としてポリシリコン膜が交互に積層された積層膜に対して以下の処理条件で処理を行い、階段状の構造を形成した。
(二酸化シリコン膜のエッチング)
処理ガス:CF/CHF=175/25sccm
圧力:16.0Pa(120mTorr)
高周波電力(高い周波数の高周波/低い周波数の高周波):500W/200W
(堆積物除去)
処理ガス:O/CF=150/350sccm
圧力:26.6Pa(200mTorr)
高周波電力(高い周波数の高周波/低い周波数の高周波):1500W/0W
(フォトレジスト膜の改質)
処理ガス:H/He=300/500sccm
圧力:2.66Pa(20mTorr)
高周波電力(高い周波数の高周波/低い周波数の高周波):300W/0W
(フォトレジスト膜のトリミング)
処理ガス:O/N=300/75sccm
圧力:33.3Pa(250mTorr)
高周波電力(高い周波数の高周波/低い周波数の高周波):500W/0W
(ポリシリコン膜のエッチング)
処理ガス:HBr/SF/He=400/70/200sccm
圧力:6.66Pa(50mTorr)
高周波電力(高い周波数の高周波/低い周波数の高周波):0W/500W
上記の工程を複数回繰り返して実施した後、半導体ウエハWを電子顕微鏡で拡大して観察したところ、良好な形状の階段状の構造が形成されていることを確認することができた。
【0042】
また、上記のトリミング工程におけるトリム比(y/x)は、0.7程度であった。一方、比較例として、トリミング工程の前にフォトレジストの改質を行わなかった場合についてトリム比(y/x)を測定したところ、1.6程度となった。したがって、本実施例のようにフォトレジストの改質を行うことによって、大幅にトリム比を改善することができることを確認できた。なお、上記のように、フォトレジストの改質において処理ガスとしてH/Heの混合ガスを使用するのは、Hの単ガスを使用してフォトレジストの改質を行うと、改質の効果が高すぎて、トリミング工程におけるトリミングが難しくなるためであり、Heガスを加えることによって、フォトレジストの改質の効果を抑制することができる。
【0043】
なお、フォトレジストの改質の工程で使用できるHe/Hの流量比は、改質効果とトリミングのし易さを考慮した上で、概ね0〜10%の範囲で調整することができる。また、圧力は1.33〜6.66Pa(10〜50mT)の範囲を使用することが可能であり、圧力が高い方がトリム比を良くできるが、フォトレジスト層の側壁の荒れとトレードオフの関係になる。更に、プラズマ生成に寄与する高周波電力のパワーは、200〜500Wの範囲を使用することが可能であり、パワーが高い方がトリム比を良くできるが、フォトレジスト層の側壁の荒れとトレードオフの関係になる。
【0044】
また、上記のトリミング工程におけるx方向のトリム量は、上記の工程を複数回繰り返した際に、1回目から10回目まで300nm程度で略一定であった。一方、堆積物除去を行わなかった比較例では、1回目のx方向のトリム量が220nm程度であり、10回目では180nm程度まで低下した。したがって、本実施例のように堆積物除去を行うことにより、x方向のトリム量を多くすることができ、かつ、複数回工程を繰り返した際にも安定したx方向のトリム量とすることができることを確認できた。
【0045】
上記したフォトレジスト膜200の上面の改質処理では、処理ガスとしてHガスとHeガスとの混合ガスを使用したが、処理ガスとしてHガスとHeガスとシリコン含有ガス(例えば、SiFガス、SiClガス等)の混合ガスを使用することができる。このような混合ガスを使用した場合、Hガスの作用によるフォトレジストの改質の他、フォトレジストの表面にシリケートカーボン等のコーティング層を形成することができ、これによってトリム比(y/x)を減少させることができる。
【0046】
図4のグラフは、縦軸をトリム比(y/x)、横軸をSiFガス流量としてSiFガス流量とトリム比との関係を調べた結果を示している。なお、この場合のフォトレジスト膜200の上面の改質処理は、以下の条件で行った。
処理ガス:H/He/SiF=100/700/XXsccm
圧力:20.0Pa(150mTorr)
高周波電力(高い周波数の高周波/低い周波数の高周波):300W/300W
【0047】
図4のグラフに示されるように、SiFガスの流量を0から20sccmまで増加させていくと、SiFの流量に応じてトリム比が低下することを確認できた。なお、トリム比を低下させる効果を得るためには、ある程度の量のSiFガスを流す必要がある。一方、SiFガス流量を多くし過ぎるとトリム比は低下するが、フォトレジスト膜のトリミング速度が低下して、所望のトリミング量を得るための処理時間が長くなる。このため、SiFガスの流量は、Hガスに対する流量比(SiFガス流量/Hガス流量)を5〜30%の範囲内とすることが好ましく、10〜20%の範囲内とすることがさらに好ましい。
【0048】
また、上記の実施形態及び実施例では、積層膜210が、絶縁膜としての二酸化シリコン(SiO)膜201a等と、導電膜としてポリシリコン膜(ドープドポリシリコン膜)202a等とから構成されている場合について説明した。しかし、前述したとおり、誘電率の異なる2種の膜、例えば、二酸化シリコン膜と窒化シリコン膜を積層して構成した積層膜、ポリシリコン膜とドープドポリシリコン膜を積層して構成した積層膜等に適用することができる。
【0049】
この場合、堆積物除去、フォトレジスト上面の改質、フォトレジストのトリミングについては、上述した実施例と同様にして行うことができる。また、エッチングについても、二酸化シリコン膜、ポリシリコン膜及びドープドポリシリコン膜については、上述した実施例と同様にして行うことができる。窒化シリコン膜のエッチングについては、例えば、CH、CHF、CF、CHF等のガス系を用いることができる。より具体的には、例えば、
処理ガス:CF/CHF=25/175sccm
圧力:16.0Pa(120mTorr)
高周波電力(高い周波数の高周波/低い周波数の高周波):500W/200W
等の条件で窒化シリコン膜のエッチングを行うことができる。
【0050】
なお、本発明は上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、各種の変形が可能である。例えば、プラズマ処理装置は、図に示した平行平板型の下部2周波印加型に限らず、例えば、上部電極と下部電極に夫々高周波を印加するタイプのプラズマ処理装置や、下部電極に1周波の高周波電力を印加するタイプのプラズマ処理装置等、各種のプラズマ処理装置を用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
200……フォトレジスト膜、201……二酸化シリコン膜、202……ポリシリコン膜、210……積層膜、W……半導体ウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の誘電率を有する第1の膜と、前記第1の誘電率とは異なる第2の誘電率を有する第2の膜とが交互に積層された多層膜と、前記多層膜の上層に位置しエッチングマスクとして機能するフォトレジスト層とを有する基板をエッチングして、階段状の構造を形成する半導体装置の製造方法であって、
前記フォトレジスト層をマスクとして前記第1の膜をプラズマエッチングする第1工程と、
水素含有プラズマに前記フォトレジスト層を晒す第2工程と、
前記フォトレジスト層をトリミングする第3工程と、
前記第3工程によってトリミングしたフォトレジスト層及び前記第1工程でプラズマエッチングした前記第1の膜をマスクとして前記第2の膜をエッチングする第4工程とを有し、
前記第1工程乃至前記第4工程を繰り返して行うことにより、前記多層膜を階段状の構造とする
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1の膜は絶縁膜であり、前記第2の膜は導電膜であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1の膜と前記第2の膜は、
二酸化シリコン膜とドープドポリシリコン膜、
二酸化シリコン膜と窒化シリコン膜、
ポリシリコン膜とドープドポリシリコン膜
のいずれかであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1工程と、前記第2工程との間に、前記フォトレジスト層に付着した堆積物を除去する堆積物除去工程を具備する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第2工程では、水素ガスとヘリウムガスの混合ガスのプラズマを使用する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第2工程では、水素ガスとヘリウムガスとシリコン含有ガスの混合ガスのプラズマを使用する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第2工程では、処理チャンバー内の圧力が1.33〜6.66Paに調整されている
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1の膜と、前記第2の膜は、合計64層以上積層されている
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
被処理基板を収容する処理チャンバーと、
前記処理チャンバー内に処理ガスを供給する処理ガス供給機構と、
前記処理ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生機構と
を具備したプラズマ処理装置を制御する制御プログラムが記録されたコンピュータ記録媒体であって、
前記制御プログラムは、請求項1〜8いずれか1項記載の半導体装置の製造方法が実行されるように前記プラズマ処理装置を制御する
ことを特徴とするコンピュータ記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−195569(P2012−195569A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−33954(P2012−33954)
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】