説明

半導体装置の製造方法及び半導体装置

【課題】半導体装置の配線層の信頼性を高める。
【解決手段】層間絶縁膜3に形成した配線溝4内に、バリアメタル膜5を介して、CuMnシード膜6及びCu膜7を有する配線部1を形成した後、SiH4とNH3のガスに曝し、その配線部1の表面にOを含有しないSiNの保護層8を形成する。この上にキャップ膜9を形成する。キャップ膜9の形成時には、配線部1のバリアメタル膜5との界面領域にはMnO層10が形成される一方、配線部1の上面には保護層8があることでMnの析出が抑制される。配線部1のMn含有量を高めても、配線部1とキャップ膜9との間にMnを含有するバリア性の低い層が形成されることがなく、エレクトロマイグレーション耐性及びストレスマイグレーション耐性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関し、特に、銅(Cu)配線を備えた半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の配線材料としては、アルミニウム(Al)のほか、抵抗値等の観点からCuが用いられている。一般に、Cuを用いた配線形成には、配線溝を形成した絶縁膜の全面にタンタル(Ta)やチタン(Ti)等を用いたバリアメタル膜及びCu膜を順に堆積してからそれらを絶縁膜まで研磨することによってその絶縁膜内に配線を形成する、いわゆるダマシンプロセスが用いられている。このような配線形成後の表面には、通常、絶縁性のキャップ膜が形成される。
【0003】
また、近年では、Cu膜の堆積に電解メッキ法を用いる場合におけるそのシード膜として、マンガン(Mn)を含有する薄いCu膜(CuMnシード膜)を形成し、そこに厚くCu膜を堆積していく方法が提案されている。配線溝形成後の絶縁膜に、バリアメタル膜を形成することなくCuMnシード膜を形成し、電解メッキ法によりCu膜を堆積して、所定のアニール処理を行うことで、配線の絶縁膜との界面領域に、Cuの拡散バリアとしてMnシリケート(自己形成バリア膜)を形成する試み等がなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−149813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、CuMnシード膜を用いた配線形成には、次のような問題点があった。すなわち、Mnシリケートを拡散バリアとして形成する方法の場合、上記のように、配線溝形成後の絶縁膜にCuMnシード膜及びCu膜を堆積した後、所定のアニール処理を行う。酸素(O)を含有する雰囲気でのアニール処理により、配線の絶縁膜との界面領域にMnシリケートが形成され、さらに、配線の抵抗に影響する余剰Mnを堆積したCu膜表面に酸化マンガン(MnO)として析出させる。そして、表面のMnO(余剰Mn)を含むCu膜が研磨され、拡散バリアであるMnシリケート及び配線が形成される。
【0005】
上記手法におけるCu膜堆積後のアニール処理は、Cu膜表面にMnOを十分に析出させるため、高温で長時間行われる。そのようなアニール処理は、Cu等のエレクトロマイグレーションを引き起こして配線の信頼性を劣化させる可能性がある。さらに、拡散バリアとして形成されるMnシリケートは、Ta等のバリアメタル膜に比べると絶縁膜との密着力に課題が残っているのが現状である。また、Mnは、配線に含有されることでその抵抗に影響を及ぼす一方、配線のエレクトロマイグレーション耐性及びストレスマイグレーション耐性を向上させる性質も有している。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、信頼性の高い配線を備えた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。また、そのような信頼性の高い配線を備えた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、次のような半導体装置の製造方法が提供される。この半導体装置の製造方法は、第1の絶縁膜に配線溝を形成する工程、前記配線溝形成後の前記第1の絶縁膜上にバリアメタル膜を形成する工程、前記バリアメタル膜上にMnを含有する第1のCu膜を介して第2のCu膜を形成し前記配線溝を埋め込む工程、前記第2のCu膜の形成に続いて、形成された前記第2のCu膜、前記第1のCu膜及び前記バリアメタル膜の研磨を行い前記配線溝内に前記バリアメタル膜で側面及び底面を覆われた配線部を形成する工程、及び前記研磨後の前記配線部の表面にOを含有しない第2の絶縁膜を形成する工程を有する。
【0008】
このような半導体装置の製造方法によれば、第1の絶縁膜の配線溝にバリアメタル膜を介してMnを含有する配線部が形成され、その配線部の表面にOを含有しない第2の絶縁膜が形成される。
【発明の効果】
【0009】
開示する半導体装置の製造方法により、エレクトロマイグレーション耐性及びストレスマイグレーション耐性の高い高信頼性の配線が形成でき、そのような配線を備えた高信頼性の半導体装置が実現可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して詳細に説明する。なお、ここでは、半導体装置の配線層部分を中心に説明する。
まず、第1の実施の形態について説明する。
【0011】
図2は配線層形成工程の説明図であって、(A)は層間絶縁膜形成工程の要部断面模式図、(B)は配線溝形成工程の要部断面模式図、(C)はバリアメタル膜及び配線材料形成工程の要部断面模式図である。
【0012】
まず、図2(A)に示すように、下地2上に層間絶縁膜3を形成する。下地2は、トランジスタ等の回路素子が形成された半導体基板上の絶縁膜等である。続いて、図2(B)に示すように、リソグラフィ技術を用い、その層間絶縁膜3に配線溝4を形成する。
【0013】
配線溝4の形成後は、図2(C)に示すように、まず層間絶縁膜3の全面にTa等の薄いバリアメタル膜5を形成する。そして、そのバリアメタル膜5上にMnを含有する薄いCu膜(CuMnシード膜)6を形成し、次いで、電解メッキ法により、そのCuMnシード膜6上に厚いCu膜7を形成して配線溝4を埋め込む。
【0014】
配線溝4の埋め込み後は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて層間絶縁膜3まで研磨を行い、層間絶縁膜3上に形成されている不要なCu膜7、CuMnシード膜6及びバリアメタル膜5を除去する。この研磨は、配線溝4の埋め込み後、Mnシリケート形成及び余剰Mn除去を目的とするようなアニール処理を行うことなく、実施される。
【0015】
図1は第1の実施の形態の配線層形成工程の説明図であって、(A)は研磨工程後の要部断面模式図、(B)は絶縁膜形成工程の要部断面模式図、(C)はキャップ膜形成工程の要部断面模式図である。
【0016】
配線溝4をバリアメタル膜5、CuMnシード膜6及びCu膜7によって埋め込んだ後の研磨により、図1(A)に示すように、まず配線溝4内には、側面と底面をバリアメタル膜5で覆われた、CuMnシード膜6及びCu膜7を有する配線部1が形成される。
【0017】
続いて、図1(A)に示した研磨後の表面を、図1(B)に示すように、シラン(SiH4)とアンモニア(NH3)のガスに曝す。このようなガスに曝すことで、配線部1の上面に選択的に、特にそのCu膜7の上面に、Oを含有しない窒化シリコン(SiN)からなる保護層8が形成される。保護層8は、その厚さが数nmと非常に薄く形成される。なお、図1には、Cu膜7の上面にのみ保護層8が形成されている場合を図示している。
【0018】
そして、このようにして保護層8を形成した後、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、図1(C)に示すように、全面にSiC等の絶縁性のキャップ膜9を形成する。このキャップ膜9は、配線部1のCuが層間絶縁膜3或いはより上層に形成される他の配線層内に拡散するのを防止する機能のほか、上層の配線層にこの配線部1に達するビアホールをエッチングにより形成する際のエッチングストッパとして機能する。
【0019】
この第1の実施の形態において、キャップ膜9は、Oを含有していても、含有していなくても、いずれであっても構わない。例えば、SiCは、一般的な形成方法によれば、3原子%〜18原子%程度のOが含有される。Oを含有しないSiCは、その誘電率が7以上であるのに対し、Oを含有するSiCは、その誘電率を4以下に低減することができ、半導体装置の低誘電率化の点で有利である。
【0020】
このキャップ膜9の形成時には、その材質にもよるが、350℃〜450℃程度の熱が配線層にかかり、配線部1の構造は、そのときの熱によって変化する。
すなわち、その熱によって層間絶縁膜3に存在するOが拡散し、バリアメタル膜5を通過すると、配線部1の側面及び底面のバリアメタル膜5との界面領域には、そのOと図1(A),(B)に示したCuMnシード膜6のMnが反応してMnOが析出し、薄いMnO層10が形成される。また、MnO層10の形成に消費されないCuMnシード膜6のMnの一部は、その熱によってCu膜7内に拡散し、Cu膜7内においてCuとの合金を形成する。
【0021】
一方、配線部1の上面には、Oを含有しないSiNの保護層8が形成されているため、キャップ膜9にOが含有されていない場合は勿論、たとえキャップ膜9にOが含有されている場合でも、配線部1の上面へのMnの析出が効果的に抑制されるようになる。
【0022】
ここで、配線部1のMnの析出について説明する。
図3はMnを析出させた配線層の一例の要部断面模式図である。
上記の図1(A)に示したような状態から、図1(B)に示したようにSiH4とNH3のガスに曝してSiNの保護層8を形成することなく、図1(C)に示したようにキャップ膜9を形成する。ここではそのキャップ膜9としてOを含有する低誘電率のSiCを形成する場合を想定する。
【0023】
その場合、そのキャップ膜9の形成時には、そのときの熱によって、配線部1のバリアメタル膜5との界面領域にMnO層10が形成される。さらに、SiCのキャップ膜9がOを含有していることで、配線部1のMn(CuMnシード膜6のMn、或いはCuMnシード膜6からCu膜7に拡散したMn。)がキャップ膜9との界面領域に拡散し、キャップ膜9に含有されているOとの反応が起こる。その結果、配線部1のキャップ膜9との界面領域には、Mnがキャップ膜9のO、及びシリコン(Si)並びに炭素(C)と反応し、Cを含有するMnシリケートの層(MnSiOXY層)11が形成されるようになる。
【0024】
このようにして形成されるMnO層10及びMnSiOXY層11は、それらに一定量のMnが含有されている場合には、配線部1のエレクトロマイグレーション耐性及びストレスマイグレーション耐性を向上させる役割を果たす。ただし、配線部1のキャップ膜9との界面領域に形成されるMnSiOXY層11は、それに一定量以上のMnが含有されると、配線層の寿命低下を引き起こしてしまう。
【0025】
図4はエレクトロマイグレーションを説明する配線層の要部断面模式図である。
一定量以上のMnを含有するMnSiOXY層11が形成された場合には、異なる配線部1間に生じる電界により、配線部1のCu,Mn或いはMnSiOXY層11のMnが層間絶縁膜3の方へ拡散してしまう場合がある。上面をキャップ膜9で、側面及び底面をバリアメタル膜5で、それぞれ覆われた配線部1及びMnSiOXY層11からCu,Mnが外部へ拡散する場合、そのCu,Mnは層間絶縁膜3とキャップ膜9との界面を拡散していきやすい。
【0026】
MnSiOXY層11のMn含有量は、配線部1の形成時に用いるCuMnシード膜6に予め含有されているMnの量に依存してくる。CuMnシード膜6のMn含有量が配線層の寿命に与える影響をTDDB(Time-Dependent Dielectric Breakdown)試験により検討した結果を次の図5に示す。
【0027】
図5はTDDB試験の結果を示す図である。
図5には、CuMnシード膜6のMn含有率を0原子%(Cuシード膜を用いた場合。)、1原子%、2原子%とした場合についてそれぞれTDDB試験を行った結果を示している。なお、TDDB試験は、CuMnシード膜6のMn含有率を変える以外は同条件で形成した配線層について試験を行っており、また、温度、印加電圧等の試験条件はCuMnシード膜6のMn含有率によらず同じにしている。
【0028】
TDDB試験の結果、CuMnシード膜6のMn含有率が1原子%の場合には、0原子%の場合に比べて長寿命化する傾向が認められ、2原子%の場合には、短寿命化が認められた。同様の検討から、CuMnシード膜6のMn含有率が2原子%を上回ると、短寿命化が著しくなることが確認された。
【0029】
このように、配線部1の上面に直接Oを含有するSiCのキャップ膜9を形成すると、配線部1内のMnが一定量以上の場合、却ってエレクトロマイグレーション耐性が劣化してしまうようになる。
【0030】
これに対し、図1(B)に示したように、配線部1の上面にOを含有しない薄いSiNの保護層8を形成しておくと、その上に形成されるキャップ膜9がたとえOを含有していても、配線部1の上面へのMnの析出が抑えられ、MnSiOXYの生成が抑えられるようになる。したがって、Mn含有量の高いMnSiOXYが形成されることによるエレクトロマイグレーション耐性の劣化を回避することが可能になる。その結果、配線部1形成時のCuMnシード膜6のMn含有率を高め、例えばそのMn含有率を2原子%以上にしても、高いエレクトロマイグレーション耐性を確保し、かつ、高いストレスマイグレーション耐性を得ることが可能になる。
【0031】
CuMnシード膜6のMn含有率は、形成する半導体装置の要求特性等に応じて設定すればよい。ただし、CuMnシード膜6のMn含有率を高くするほど、最終的に得られる配線部1の抵抗が高くなることに留意する必要がある。エレクトロマイグレーション耐性及びストレスマイグレーション耐性のほか、さらに配線部1の抵抗を考慮すると、CuMnシード膜6のMn含有率は、1原子%〜5原子%とすることが好ましく、2原子%〜5原子%とすることがより好ましい。
【0032】
なお、保護層8は、その厚さが薄く、かつ、配線部1の上面に選択的に形成されるため、保護層8の形成による容量の増加は無視し得る程度である。
また、配線部1は、層間絶縁膜3の配線溝4に、層間絶縁膜3及び配線部1との密着性が良好なバリアメタル膜5を介して形成するようにしている。バリアメタル膜5を形成することなくMnを用いて自己形成バリア膜を形成するようにした場合に比べ、特に幅広の配線を形成するような場合の研磨時に発生するバリアメタル膜5及び配線部1の層間絶縁膜3からの剥離等を効果的に抑制することが可能になっている。
【0033】
さらに、上記のようにCuMnシード膜6を用いて配線部1を形成する場合、その周りのバリアメタル膜5は、Mnを含有しないCuシード膜を用いて配線を形成する場合に比べ、より薄い膜厚で形成することができる。一般に、バリアメタル膜の膜厚を厚くするほどCuの拡散を確実に防止することが可能になる。ただし、バリアメタル膜を厚くすると、配線内のCu占有率が減少する、Cu占有率を確保すると配線の微細化に対応できない、といった問題が生じてくる。これに対し、CuMnシード膜6を用いると、バリアメタル膜5を薄く形成した場合でも、配線部1に薄いMnO層10が形成されるため、このMnO層10とバリアメタル膜5により、配線部1からのCuの拡散を効果的に抑制することが可能になる。
【0034】
以上、第1の実施の形態の配線層について説明したが、その形成にあたっては、半導体装置の低誘電率化の観点から、層間絶縁膜3としてMSQ(methyl silsesquioxane)等のLow−k膜が好適に用いられる。なお、MSQの場合、その誘電率は2.6であり、スピンコート法によって塗布した後、350℃〜400℃程度の温度でキュアが行われる。層間絶縁膜3として、同様にスピンコート法で形成可能な炭化水素系ポリマー、例えばSiLKやポーラスSiLK(Dow Chemical社製)、或いはプラズマCVD法によって形成可能なSiOC等を用いてもよい。
【0035】
バリアメタル膜5としては、Taのほか、窒化タンタル(TaN)、Ti、窒化チタン(TiN)等を用いることができる。このバリアメタル膜5と、その上に形成されるCuMnシード膜6は、例えばスパッタリング法により形成することができる。そして、そのCuMnシード膜6上に電解メッキ法によりCu膜7が形成される。
【0036】
保護層8は、上記のように、バリアメタル膜5、CuMnシード膜6及びCu膜7を順次形成して層間絶縁膜3上の不要な部分を研磨した後に、それをSiH4とNH3のガスに曝すことによって形成される。例えば、10〜200sccmのSiH4に希釈ガスとして例えば窒素(N2)を用いて、1〜60秒の範囲でその雰囲気に曝す。その後、NH3等のNとHを含むガス、又はN2と水素(H2)の混合ガス雰囲気でプラズマを発生させてSiNの保護層8を形成する。基板温度は350℃〜400℃が好ましい。
【0037】
保護層8形成後の表面に形成するキャップ膜9としては、SiCのほか、窒化炭化シリコン(SiCN)、SiN、窒化ホウ素(BN)等を用いることもできる。半導体装置の低誘電率化の観点から、キャップ膜9には低誘電率のものが好適に用いられる。なお、上記のように保護層8を形成することによって配線部1の上面にMnが析出するのを抑制することができるため、この第1の実施の形態ではキャップ膜9がOを含有するか否かは問われない。
【0038】
上記の配線層を第1層目とした場合、その上に形成される第2層目の配線層は、例えば、次のような流れで形成することができる。
図6は第1の実施の形態のビアホール及び配線溝の形成工程の要部断面模式図である。
【0039】
まず、第2層目の配線層形成用の層間絶縁膜21を形成する。例えば、MSQを形成し、350℃〜400℃程度のキュアを行って、層間絶縁膜21を形成する。そして、その層間絶縁膜21に、デュアルダマシンプロセスに従い、第1層目の配線部1に達するビアホール22及び配線溝23を形成する。
【0040】
その際は、例えば、キャップ膜9を開口するエッチング時に、キャップ膜9と同時に、配線部1の上面に形成されている保護層8を除去する。このエッチングは、キャップ膜9の開口に適した条件で行えばよい。或いは、保護層8は、次工程のバリアメタル膜24の形成前に、アルゴン(Ar)ガスによるスパッタリングによって除去するようにしてもよい。保護層8は、配線部1の上面にごく薄く形成されているため、エッチング及びスパッタリングのいずれの方法によっても容易に除去することができる。
【0041】
図7は第1の実施の形態のビアホール及び配線溝の埋め込み工程の要部断面模式図である。
ビアホール22及び配線溝23の形成後は、第1層目の配線層と同様に、例えば、スパッタリング法によるTa等のバリアメタル膜24並びにCuMnシード膜25の形成、及び電解メッキ法によるCu膜26の形成を行う。これにより、ビアホール22及び配線溝23を同時に埋め込む。なお、CuMnシード膜25のMn含有率は、第1層目の配線層について述べたのと同様に、エレクトロマイグレーション耐性並びにストレスマイグレーション耐性及び抵抗の観点から、例えば、1原子%〜5原子%とすればよい。
【0042】
図8は第1の実施の形態のCu膜等の研磨工程の要部断面模式図である。
バリアメタル膜24、CuMnシード膜25及びCu膜26の形成後、CMP法により、層間絶縁膜21上のそれらの不要な部分を除去する。これにより、ビアホール22及び配線溝23内に、側面及び底面をバリアメタル膜24で覆われた、CuMnシード膜25及びCu膜26を有する配線部20が形成される。なお、層間絶縁膜21と配線部20との間にいずれとも密着性が良いバリアメタル膜24が形成されていることにより、この研磨の際に加わる力でバリアメタル膜24及び配線部20が層間絶縁膜21から剥離してしまうといった不具合の発生が回避される。
【0043】
図9は第1の実施の形態の保護層の形成工程の要部断面模式図である。
バリアメタル膜24、CuMnシード膜25及びCu膜26の研磨後、その表面をSiH4とNH3のガスに曝し、配線部20の上面に選択的に、Oを含有しない、厚さ数nm程度の薄いSiNの保護層27を形成する。この保護層27は、第1層目の保護層8と同様の条件で形成することができる。
【0044】
図10は第1の実施の形態のキャップ膜の形成工程の要部断面模式図である。
保護層27の形成後、プラズマCVD法により、Oを含有するSiCからなるキャップ膜28を形成する。このキャップ膜28の形成時には、層間絶縁膜21から拡散してバリアメタル膜24を通過したOと、CuMnシード膜25のMnが反応し、配線部20のバリアメタル膜24との界面領域にMnO層29が形成される。一方、配線部20の上面にはOを含有しないSiNの保護層27が形成されているため、配線部20の上面へのMnの析出は抑えられる。
【0045】
この図6〜図10に示した工程により、第2層目の配線層が形成される。第3層目以降の配線層を形成する場合は、例えば、それぞれの配線層を、この第2層目の配線層と同様にして形成していくようにすればよい。
【0046】
以上説明したように、この第1の実施の形態によれば、CuMnシード膜のMn含有率を一定以上にした場合でも、配線部上面に保護層を選択的に形成することにより、キャップ膜との間にMnを含有するバリア性の低い層が形成されない。配線部の側面及び底面にはMnO層が形成され、その外側にはバリアメタル膜が形成される。このような配線を構成することにより、配線部内の一定のMn量、及び配線部並びにバリアメタル膜の層間絶縁膜との密着力を確保しつつ、エレクトロマイグレーション耐性及びストレスマイグレーション耐性の向上を図ることができる。
【0047】
さらに、配線形成にあたっては、Mnシリケート形成及び余剰Mn除去を目的としたアニール処理が不要であり、キャップ膜形成時の熱によってエレクトロマイグレーション耐性及びストレスマイグレーション耐性の高い構造の配線を形成することができる。
【0048】
したがって、高信頼性の配線層を形成することができ、そのような配線層を備えた高信頼性の半導体装置が実現可能になる。
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0049】
図11は第2の実施の形態の配線層形成工程の説明図であって、(A)は研磨工程後の要部断面模式図、(B)はキャップ膜形成工程の要部断面模式図である。
まず、上記図2に示したように、下地2上の層間絶縁膜3に配線溝4を形成し、バリアメタル膜5、CuMnシード膜6及びCu膜7を順次形成して配線溝4を埋め込む。そして、CMP法により層間絶縁膜3上の不要な部分を除去する。これにより、図11(A)に示すように、まず配線溝4内には、側面及び底面をバリアメタル膜5で覆われた、CuMnシード膜6及びCu膜7を有する配線部1が形成される。
【0050】
この第2の実施の形態においては、この図11(A)に示した研磨後の状態から、CVD法により、図11(B)に示すように、全面にOを含有しないキャップ膜41を形成する。このようなOを含有しないキャップ膜41としては、例えば、SiCN,SiN,BN,SiC等の絶縁膜を形成することができる。特にSiCNは、誘電率が低く、半導体装置の低誘電率化の観点から好ましい。
【0051】
このようにOを含有しないキャップ膜41の形成時には、そのときの熱により、層間絶縁膜3に存在するOが拡散してバリアメタル膜5を通過し、配線部1のバリアメタル膜5との界面領域にMnO層10が形成される。CuMnシード膜6のMnの一部はCu膜7内に拡散する。配線部1とキャップ膜41との界面領域においては、キャップ膜41にOが含有されていないことで、Mnの析出が効果的に抑制される。
【0052】
このようにOを含有しないキャップ膜41を形成することによっても、CuMnシード膜6のMn含有率を一定以上にした場合でも、配線部1とキャップ膜41との界面領域にはバリア性の低い層が形成されない。さらに、MnO層10及びバリアメタル膜5はそれぞれ、配線部1から層間絶縁膜3へのCuの拡散防止に寄与し、バリアメタル膜5は、層間絶縁膜3との密着力確保にも寄与する。
【0053】
Oを含有しないキャップ膜41は、次のような条件で形成することができる。例えば、SiCNの場合は、トリメチルシラン(SiH(CH33)等のSi,Cを含む原料と、NH3等のNを含む原料ガスを用い、プラズマCVDによって成膜される。SiNの場合は、SiH4とNH3によるプラズマCVDによって成膜される。この場合、N2など希釈ガスを加えてもよい。BNの場合は、BCl3又はBH3にNH3やN2等のNを含有するガスとのプラズマCVDによって成膜される。SiCの場合は、SiH(CH33等のSi,Cを含む原料に、Ar等の希釈ガスを加えてプラズマCVDによって成膜される。いずれの場合も、350℃〜400℃の範囲で成膜される。
【0054】
上記の配線層を第1層目とした場合、その上に形成される第2層目の配線層は、例えば、次のような流れで形成することができる。
図12は第2の実施の形態のビアホール及び配線溝の形成工程の要部断面模式図である。
【0055】
まず、第2層目の配線層形成用のMSQ等の層間絶縁膜21を形成し、デュアルダマシンプロセスに従い、第1層目の配線部1に達するビアホール22及び配線溝23を形成する。
【0056】
図13は第2の実施の形態のビアホール及び配線溝の埋め込み工程の要部断面模式図である。
ビアホール22及び配線溝23の形成後、スパッタリング法によるTa等のバリアメタル膜24並びにCuMnシード膜25の形成、及び電解メッキ法によるCu膜26の形成を行う。CuMnシード膜25のMn含有率は、1原子%〜5原子%とすればよい。
【0057】
図14は第2の実施の形態のCu膜等の研磨工程の要部断面模式図である。
バリアメタル膜24、CuMnシード膜25及びCu膜26の形成後、CMP法により、層間絶縁膜21上のそれらの不要な部分を除去する。これにより、バリアメタル膜24で覆われた、CuMnシード膜25及びCu膜26を有する配線部20が形成される。
【0058】
図15は第2の実施の形態のキャップ膜の形成工程の要部断面模式図である。
バリアメタル膜24、CuMnシード膜25及びCu膜26の研磨後、プラズマCVD法により、Oを含有しないSiCNからなるキャップ膜42を形成する。このキャップ膜42は、第1層目のキャップ膜41と同様の条件で形成することができる。このキャップ膜42の形成時に、配線部20のバリアメタル膜24との界面領域にMnO層29が形成される。配線部20とキャップ膜42との界面領域には、キャップ膜42にOが含有されていないため、Mnの析出が抑制される。
【0059】
この図12〜図15に示した工程により、第2層目の配線層が形成される。第3層目以降の配線層を形成する場合は、例えば、それぞれの配線層を、この第2層目の配線層と同様にして形成していくようにすればよい。
【0060】
以上説明したように、この第2の実施の形態によっても、配線部内の一定のMn量、及び配線部並びにバリアメタル膜の層間絶縁膜との密着力を確保しつつ、エレクトロマイグレーション耐性及びストレスマイグレーション耐性の向上を図ることができる。したがって、高信頼性の配線層を形成することができ、そのような配線層を備えた高信頼性の半導体装置が実現可能になる。
【0061】
図16はTDDB試験の結果を比較する図である。
図16には、CuMnシード膜のMn含有率を0原子%、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態によらないでCuMnシード膜のMn含有率を2原子%とした場合のほか、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態においてCuMnシード膜のMn含有率を2原子%とした場合について、それぞれ行ったTDDB試験の結果を示している。
【0062】
単にCuMnシード膜のMn含有率を0原子%から2原子%に増加させると、短寿命化が著しい一方、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態の手法を用いた場合には、CuMnシード膜のMn含有率を2原子%とした場合にも0原子%のときと同様の長い寿命が得られることが確認された。
【0063】
以上、第1の実施の形態及び第2の実施の形態について説明したが、半導体装置の多層配線を形成する場合には、全配線層を第1の実施の形態の方法で形成したり全配線層を第2の実施の形態の方法で形成したりしてもよく、或いは層ごとに第1の実施の形態の方法又は第2の実施の形態の方法を適宜選択して用いるようにしてもよい。
【0064】
また、以上述べた配線層の構成及びその形成方法は、様々な形態のトランジスタ等の回路素子を備える半導体装置の配線層部分に適用可能である。
以上説明した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0065】
(付記1) 配線を備えた半導体装置の製造方法において、
第1の絶縁膜に配線溝を形成する工程と、
前記配線溝形成後の前記第1の絶縁膜上にバリアメタル膜を形成する工程と、
前記バリアメタル膜上にMnを含有する第1のCu膜を介して第2のCu膜を形成し前記配線溝を埋め込む工程と、
前記第2のCu膜の形成に続いて、形成された前記第2のCu膜、前記第1のCu膜及び前記バリアメタル膜の研磨を行い前記配線溝内に前記バリアメタル膜で側面及び底面を覆われた配線部を形成する工程と、
前記研磨後の前記配線部の表面にOを含有しない第2の絶縁膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0066】
(付記2) 前記第1のCu膜は、1原子%〜5原子%のMnを含有していることを特徴とする付記1記載の半導体装置の製造方法。
(付記3) 前記研磨後の前記配線部の表面に選択的に、前記第2の絶縁膜を形成することを特徴とする付記1又は2記載の半導体装置の製造方法。
【0067】
(付記4) 前記研磨後の表面をSiH4とNH3のガスに曝して前記配線部の表面に選択的にSiNからなる前記第2の絶縁膜を形成することを特徴とする付記3記載の半導体装置の製造方法。
【0068】
(付記5) 前記第2の絶縁膜の形成後に、前記第1の絶縁膜上及び前記第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成する工程を有することを特徴とする付記3又は4記載の半導体装置の製造方法。
【0069】
(付記6) 前記研磨後の前記配線部上、前記バリアメタル膜上及び前記第1の絶縁膜上に、前記第2の絶縁膜を形成することを特徴とする付記1又は2記載の半導体装置の製造方法。
【0070】
(付記7) 前記第2の絶縁膜は、SiCN、SiN又はBNからなることを特徴とする付記6記載の半導体装置の製造方法。
(付記8) 配線を備えた半導体装置において、
配線溝が形成された第1の絶縁膜と、
前記配線溝の表面に形成されたバリアメタル膜と、
前記配線溝内に形成され前記バリアメタル膜で側面及び底面を覆われたMn及びCuを含有する配線部と、
前記配線部の表面に形成されたOを含有しない第2の絶縁膜と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【0071】
(付記9) 前記配線部は、前記バリアメタル膜との界面領域にMnO層を有していることを特徴とする付記8記載の半導体装置。
(付記10) 前記第2の絶縁膜は、前記配線部の表面に選択的に形成されていることを特徴とする付記8又は9記載の半導体装置。
【0072】
(付記11) 前記第2の絶縁膜は、SiNからなることを特徴とする付記10記載の半導体装置。
(付記12) 前記第1の絶縁膜上及び前記第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜が形成されていることを特徴とする付記10又は11記載の半導体装置。
【0073】
(付記13) 前記第2の絶縁膜は、前記配線部上、前記バリアメタル膜上及び前記第1の絶縁膜上に形成されていることを特徴とする付記8又は9記載の半導体装置。
(付記14) 前記第2の絶縁膜は、SiCN、SiN又はBNからなることを特徴とする付記13記載の半導体装置。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】第1の実施の形態の配線層形成工程の説明図であって、(A)は研磨工程後の要部断面模式図、(B)は絶縁膜形成工程の要部断面模式図、(C)はキャップ膜形成工程の要部断面模式図である。
【図2】配線層形成工程の説明図であって、(A)は層間絶縁膜形成工程の要部断面模式図、(B)は配線溝形成工程の要部断面模式図、(C)はバリアメタル膜及び配線材料形成工程の要部断面模式図である。
【図3】Mnを析出させた配線層の一例の要部断面模式図である。
【図4】エレクトロマイグレーションを説明する配線層の要部断面模式図である。
【図5】TDDB試験の結果を示す図である。
【図6】第1の実施の形態のビアホール及び配線溝の形成工程の要部断面模式図である。
【図7】第1の実施の形態のビアホール及び配線溝の埋め込み工程の要部断面模式図である。
【図8】第1の実施の形態のCu膜等の研磨工程の要部断面模式図である。
【図9】第1の実施の形態の保護層の形成工程の要部断面模式図である。
【図10】第1の実施の形態のキャップ膜の形成工程の要部断面模式図である。
【図11】第2の実施の形態の配線層形成工程の説明図であって、(A)は研磨工程後の要部断面模式図、(B)はキャップ膜形成工程の要部断面模式図である。
【図12】第2の実施の形態のビアホール及び配線溝の形成工程の要部断面模式図である。
【図13】第2の実施の形態のビアホール及び配線溝の埋め込み工程の要部断面模式図である。
【図14】第2の実施の形態のCu膜等の研磨工程の要部断面模式図である。
【図15】第2の実施の形態のキャップ膜の形成工程の要部断面模式図である。
【図16】TDDB試験の結果を比較する図である。
【符号の説明】
【0075】
1,20 配線部
2 下地
3,21 層間絶縁膜
4,23 配線溝
5,24 バリアメタル膜
6,25 CuMnシード膜
7,26 Cu膜
8,27 保護層
9,28,41,42 キャップ膜
10,29 MnO層
11 MnSiOXY
22 ビアホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線を備えた半導体装置の製造方法において、
第1の絶縁膜に配線溝を形成する工程と、
前記配線溝形成後の前記第1の絶縁膜上にバリアメタル膜を形成する工程と、
前記バリアメタル膜上にマンガンを含有する第1の銅膜を介して第2の銅膜を形成し前記配線溝を埋め込む工程と、
前記第2の銅膜の形成に続いて、形成された前記第2の銅膜、前記第1の銅膜及び前記バリアメタル膜の研磨を行い前記配線溝内に前記バリアメタル膜で側面及び底面を覆われた配線部を形成する工程と、
前記研磨後の前記配線部の表面に酸素を含有しない第2の絶縁膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記研磨後の前記配線部の表面に選択的に、前記第2の絶縁膜を形成することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記研磨後の表面をシランとアンモニアのガスに曝して前記配線部の表面に選択的に窒化シリコンからなる前記第2の絶縁膜を形成することを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2の絶縁膜の形成後に、前記第1の絶縁膜上及び前記第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成する工程を有することを特徴とする請求項2又は3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記研磨後の前記配線部上、前記バリアメタル膜上及び前記第1の絶縁膜上に、前記第2の絶縁膜を形成することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2の絶縁膜は、炭化窒化シリコン、窒化シリコン又は窒化ホウ素からなることを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
配線を備えた半導体装置において、
配線溝が形成された第1の絶縁膜と、
前記配線溝の表面に形成されたバリアメタル膜と、
前記配線溝内に形成され前記バリアメタル膜で側面及び底面を覆われたマンガン及び銅を含有する配線部と、
前記配線部の表面に形成された酸素を含有しない第2の絶縁膜と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
前記配線部は、前記バリアメタル膜との界面領域に酸化マンガン層を有していることを特徴とする請求項7記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2の絶縁膜は、前記配線部の表面に選択的に形成されていることを特徴とする請求項7又は8記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2の絶縁膜は、前記配線部上、前記バリアメタル膜上及び前記第1の絶縁膜上に形成されていることを特徴とする請求項7又は8記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−164354(P2009−164354A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−784(P2008−784)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】