説明

半導体装置の製造方法

【課題】CMP(化学的機械研磨)法による金属膜の研磨をウエハ全体で過不足なく行うことが可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、窪み5aが設けられた絶縁膜5の上にバリア層6を形成する工程S5と、金属膜7の一部7aが窪み5aに埋め込まれるようにバリア層6の上に金属膜7を形成する工程S6と、一部7aを残すように金属膜6をCMP法により研磨する工程S7とを具備する。バリア層6は、その配向性が半導体ウエハ1のウエハ面の全体で一様になるように形成される。よって、金属膜7の配向性がウエハ面の全体で一様になる。金属膜の結晶構造は、下地材料の表面状態の影響を受けるためである。金属膜の配向性の違いによりCMP法による研磨速度が異なるから、金属膜7の配向性がウエハ面の全体で一様であるとCMP法による研磨に過不足が生じることが防がれる。ゆえに、チップ歩留まりが向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、1枚の半導体ウエハから複数の半導体装置を製造する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置における下層配線と上層配線との接続にはタングステン(W)よりなるプラグ(タングステンプラグ)が使用されている。タングステンプラグを形成する方法について説明する。はじめに、ヴィアホール(層間接続孔)が形成された層間絶縁膜の上にチタン膜(Ti膜)及び窒化チタン膜(TiN膜)を含むバリア層を形成する。次に、バリア層の上にCVD(Chemical Vapor Deposition)法によりタングステン膜(W膜)を形成する。次に、バリア層及びタングステン膜のヴィアホールに埋め込まれた部分を残すように余分な部分(層間絶縁膜の平坦部上に存在する部分)をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により除去する。
【0003】
タングステンプラグを形成する方法においては、バリア層及びタングステン膜の層間絶縁膜の平坦部上に存在する部分をCMP法により除去する工程の終点を精度良く検出することが重要である。工程を終了するタイミングが遅過ぎる場合、研磨過多によりタングステンプラグの接続抵抗が増加する。工程を終了するタイミングが早過ぎる場合、研磨不足により隣り合うタングステンプラグどうしが短絡する。
【0004】
特許文献1は、CMP法によりタングステン膜を除去する工程の終点を精度良く検出するために、結晶面が(110)面に配向した多結晶膜としてタングステン膜を形成する技術を開示している。さらに、特許文献1には、In−plane型X線回折装置を用いた2θ法で測定した場合、窒化チタン膜における結晶面が(220)面に2°以下の半値幅となるように配向していると、タングステン膜の結晶配向性が確実に向上することが記載されている。
【0005】
ところで、特許文献2は、チタン膜が(002)配向し、その上の窒化チタン膜が(111)配向していると、チタン膜をアニールにより窒化するときのアニール温度を低くできることを開示している。チタンの(002)面は比較的活性であるために窒化されやすく、且つ、窒化チタンの(111)面の法線方向には窒素が拡散しやすいためである。
【0006】
特許文献3は、チタン層の上に窒化チタン層を形成する場合、スパッタリングにより形成すると窒化チタン層が(111)配向となり、CVDにより形成すると窒化チタン層が(200)配向となることを開示している。
【0007】
【特許文献1】特開2002−203858号公報
【特許文献2】特開平8−162530号公報
【特許文献3】特開2003−142577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、CMP法による金属膜の研磨をウエハ全体で過不足なく行うことが可能な半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、(発明を実施するための最良の形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための最良の形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法は、窪み(5a、11)が設けられた絶縁膜(5、9及び10)の上にバリア層(6、12)を形成する工程(S5、S12)と、金属膜(7、13)の第1部分(7a、13a)が前記窪みに埋め込まれるように前記バリア層の上に前記金属膜を形成する工程(S6、S13)と、前記第1部分を残すように前記金属膜をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨する工程(S7、S14)とを具備する。前記絶縁膜は、半導体ウエハ(1)に形成されている。前記バリア層を形成する前記工程において、前記バリア層は、その配向性が前記半導体ウエハのウエハ面の全体で一様になるように形成される。
【0011】
したがって、バリア層の上に形成される金属膜の配向性は、ウエハ面の全体で一様になる。金属膜の結晶構造は、下地材料の表面状態の影響を受けるためである。金属膜の配向性の違いによりCMP法による研磨速度が異なるから、金属膜の配向性がウエハ面の全体で一様であるとCMP法による研磨に過不足が生じることが防がれる。ゆえに、チップ歩留まりが向上する。なお、バリア層の配向性がウエハ面の全体で一様であるとは、バリア層がウエハ面の全体で特定の配向性を主配向として有する場合と、バリア層がウエハ面の全体で主配向を実質的に有さない場合とを含む。
【0012】
本発明の半導体装置の製造方法においては、前記バリア層が高融点金属の窒化物膜としての金属窒化物膜を含むことが好ましい。前記バリア層を形成する前記工程は、配向性が前記ウエハ面の全体で一様になるように前記金属窒化物膜を形成する工程を含む。
【0013】
本発明の半導体装置の製造方法における前記金属窒化物膜を形成する前記工程において、前記金属窒化物膜は反応性スパッタ法により形成されることが好ましい。前記反応性スパッタ法において、前記半導体ウエハと前記高融点金属のターゲット(24)とが互いに対向するように反応室(21)内に配置される。アルゴンガスと窒素ガスとを含む混合ガスが、前記半導体ウエハの周辺部から中心部に向かう方向に流れるように、前記半導体ウエハと前記ターゲットとの間に導入される。前記ターゲットに直流の負電位が印加される。前記半導体ウエハに高周波電力が印加される。前記混合ガスが含む窒素ガスの比率としての窒素ガス流量比は、0%より大きく100%より小さい範囲から所定の範囲を除いた範囲に属する。前記所定の範囲は、前記窒素ガス流量比の変化に対する前記金属窒化物膜の成膜速度の変化において履歴現象が観察される範囲である。
【0014】
本発明の半導体装置の製造方法は、前記所定の範囲を予備実験により求める工程を具備することが好ましい。前記所定の範囲を予備実験により求める前記工程は、前記半導体ウエハとは別の半導体ウエハを、前記別の半導体ウエハと前記ターゲットとが対向するように前記反応室内に配置する工程と、アルゴンガスと窒素ガスとを含む予備実験用の混合ガスを、前記別の半導体ウエハの周辺部から中心部に向かう方向に流れるように、前記別の半導体ウエハと前記ターゲットとの間に導入する工程と、前記ターゲットに直流の負電位を印加する工程と、前記別の半導体ウエハに高周波電力を印加する工程と、前記別の半導体ウエハ上に形成される前記高融点金属の窒化物膜の成膜速度を測定する工程と、前記成膜速度に基づいて前記所定の範囲を決定する工程とを含む。前記別の半導体ウエハと前記ターゲットとの間に導入する前記工程は、前記予備実験用の混合ガスが含む窒素ガスの比率を増加させながら前記予備実験用の混合ガスを導入する工程と、前記予備実験用の混合ガスが含む窒素ガスの比率を減少させながら前記予備実験用の混合ガスを導入する工程とを含む。
【0015】
本発明の半導体装置の製造方法においては、前記金属窒化物膜が窒化チタン膜であり、前記金属膜がタングステン膜であることが好ましい。前記金属膜を形成する前記工程において、前記タングステン膜がCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される。
【0016】
本発明の半導体装置の製造方法における前記金属窒化物膜を形成する前記工程において、自己イオン化プラズマを用いたスパッタ法により前記窒化チタン膜が形成されることが好ましい。
【0017】
本発明の半導体装置の製造方法における前記スパッタ法において、前記半導体ウエハとチタンターゲット(24)とが反応室内(21)に配置され、前記半導体ウエハの基板温度が室温より高く50℃より低くなるように制御され、アルゴンガスと窒素ガスとを含む混合ガスが前記反応室内に導入され、前記チタンターゲットに直流の負電位が印加され、前記半導体ウエハに高周波電力が印加され、前記高周波電力の周波数が40MHzより高く200MHzより低くなるように制御され、前記反応室内の圧力が0.5mTorrより高く2mTorrより低くなるように制御されることが好ましい。
【0018】
本発明の半導体装置の製造方法においては、前記バリア層はチタン膜を含むことが好ましい。前記バリア層を形成する前記工程は、自己イオン化プラズマを用いたスパッタ法により前記チタン膜を形成する工程を含む。前記チタン膜を形成する前記工程は、前記高融点金属の窒化物膜を形成する前記工程の前に実行される。
【0019】
本発明の半導体装置の製造方法においては、前記窪みは、多層配線のヴィアホールであることが好ましい。
【0020】
本発明の半導体装置の製造方法においては、前記窪みは、配線を形成するための溝であることが好ましい。
【0021】
本発明の半導体装置の製造方法においては、前記金属膜は銅膜であることが好ましい。
【0022】
本発明の半導体装置の製造方法においては、前記高融点金属の窒化物膜は窒化タンタル膜であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、CMP法による金属膜の研磨をウエハ全体において過不足なく行うことが可能な半導体装置の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
添付図面を参照して、本発明による半導体装置の製造方法を実施するための最良の形態を以下に説明する。
【0025】
はじめに、図1及び図2Aから2Fを参照して、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の概要を説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフロー図である。図1には、トランジスタが形成された半導体ウエハ1に多層配線を形成する工程が示されている。半導体ウエハ1は、多層配線が形成された後、パッシベーションが形成され、複数の半導体チップにダイシングされる。各々の半導体チップは、リードフレームに固定され、半導体チップの電極パッドとリードフレームの端子とが結線され、樹脂でモールドされる。その後、検査工程を経て半導体装置(半導体集積回路)が完成する。半導体装置としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、及びロジック集積回路が例示される。
【0027】
図2Aから2Fは、本発明の実施形態に係る半導体製造装置の製造方法において、タングステンプラグ7aを含む多層配線を形成する工程を説明するための半導体ウエハ1の断面図である。
【0028】
(工程S1)
図2Aに示される半導体ウエハ1に下層配線層4を形成する。図2Aに示される半導体ウエハ1は、基板2上に素子分離領域(図示されず)を形成し、トランジスタ(図示されず)を形成し、絶縁膜3を堆積し、絶縁膜3を平坦化し、絶縁膜3の上にコンタクト層(図示されず)を形成することで準備された。下層配線層4は、絶縁膜3の上に形成される。下層配線層4は、図2Bに示されるように、Ti膜上にTiN膜を積層したTiN/Ti膜4a、AlCu膜4b及びTiN膜4cからなる積層構造を有している。下層配線層4の中で、TiN/Ti膜4aは絶縁膜3に近い側に配置され、TiN膜4cは絶縁膜3に遠い側に配置され、AlCu膜4bはTiN/Ti膜4aとTiN膜4cとの間に配置されている。TiN/Ti膜4aは、絶縁膜3により近いチタン膜(Ti膜)とその上に配置された窒化チタン膜(TiN膜)とを含んでいる。例えば、TiN/Ti膜4aのチタン膜の厚さは20nm、TiN/Ti膜4aの窒化チタン膜の厚さは30nm、AlCu膜4bの厚さは300nm、TiN膜4cの厚さは50nmである。
【0029】
(工程S2)
次に、層間絶縁膜としての絶縁膜5を半導体ウエハ1に形成する。絶縁膜5は、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成されるシリコン酸化膜(SiO膜)である。
【0030】
(工程S3)
次に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法により絶縁膜5を平坦化する。
【0031】
(工程S4)
次に、絶縁膜5の窪み(凹部)としてのヴィアホール5aを形成する。ヴィアホール5aが形成された半導体ウエハ1が図2Cに示されている。ヴィアホール5aの底には下層配線層4が露出している。ヴィアホール5aが形成されていない絶縁膜5の部分は平坦部5bである。
【0032】
(工程S5)
次に、絶縁膜5の上にバリア層6を形成する。バリア層6は、反応性スパッタ法で形成される窒化チタン膜(TiN膜)である。窒化チタン膜は、平坦部5b上の部分の膜厚が50nmになるように形成される。バリア層6は、窒化チタン膜の下地としてのチタン膜(Ti膜)を含んでもよい。バリア層6は、後の工程において耐熱性が要求されるため、高融点金属の窒化物膜であることが好ましい。高融点金属とは、例えば、チタン(Ti)、タングステン(Ta)及びモリブデン(Mo)である。
【0033】
(工程S6)
次に、バリア層6の上にタングステン膜(W膜)7を形成する。タングステン膜7は、CVD法により堆積される、図2Dはタングステン膜7が形成された半導体ウエハ1を示している。タングステン膜7は、その一部がヴィアホール5aに埋め込まれ、他の部分が平坦部5bの上に配置されている。タングステン膜7は、他の部分の膜厚が400nmになるように形成される。ところで、タングステン膜7をCVD法により形成する際には、六フッ化タングステン(WF)を含む原料ガスが用いられる。バリア層6により、WFと下層配線層4が反応することが防がれる。また、絶縁膜5の上に直接タングステン膜7を形成した場合には絶縁膜5とタングステン膜7の密着性が問題となるが、これらの間にバリア層6が介在すると良好な密着性が得られる。
【0034】
(工程S7)
次に、タングステン膜7をCMP法により研磨し、平坦部5bの上に配置されている他の部分を除去する。これにより、図2Eに示されるように、ヴィアホール5aに埋め込まれたタングステンプラグ7aが形成される。
【0035】
(工程S8)
次に、図2Fに示されるように、絶縁膜5の上に上層配線層8を形成する。上層配線層8は、タングステンプラグ7aに接続されるように形成される。上層配線層8は、TiN/Ti膜8a、AlCu膜8b及びTiN膜8cからなる積層構造を有している。上層配線層8の中で、TiN/Ti膜8aは絶縁膜5に近い側に配置され、TiN膜8cは絶縁膜5に遠い側に配置され、AlCu膜8bはTiN/Ti膜8aとTiN膜8cとの間に配置されている。TiN/Ti膜8aは、絶縁膜5により近いチタン膜(Ti膜)とその上に配置された窒化チタン膜(TiN膜)とを含んでいる。
【0036】
次に、図3から図12を参照して、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を詳細に説明する。
【0037】
図3は、バリア層6を形成する工程(工程S5)に用いられる反応性スパッタ装置20の概略図である。反応性スパッタ装置20は、ガス導入口21a及びガス導出口21bが設けられた反応室21と、直流電源26及び27と、高周波電源28と、高周波電源28を介して接地されたサセプタ22と、直流電源27を介して接地されたシールド23と、直流電源26を介して接地されたターゲット24と、反応室21内に磁場を発生するマグネット25とを備えている。反応室21は、接地され、真空ポンプ(図示されず)により減圧自在である。サセプタ22、シールド23、及びターゲット24は、反応室21内に配置されている。ターゲット24はチタンターゲットである。サセプタ22は、半導体ウエハ1がターゲット24に対向するように半導体ウエハ1を保持する。直流電源26は、ターゲット24に直流の負電位を印加する。すなわち、直流電源26は、ターゲット24の電位を接地電位よりも低くする。直流電源27は、シールド23に直流の負電位を印加する。すなわち、直流電源27は、シールド23の電位を接地電位よりも低くする。高周波電源28は、高周波電力としてのRF(Radio Frequency)バイアスをサセプタ22に保持された半導体ウエハ1に印加する。また、温度制御装置(図示されず)により基板2の温度が制御される。
【0038】
工程S5においては、アルゴンガス(Arガス)と窒素ガス(Nガス)とを含む混合ガスをガス導入口21aから反応室21内に供給する。混合ガスを半導体ウエハ1の周辺部から中心部に向かう方向に流れるように半導体ウエハ1とターゲット24との間に導入しながら、半導体ウエハ1にRFバイアスを印加する。すると、反応室21内にプラズマが発生し、半導体ウエハ1上に窒化チタン膜が形成される。プラズマは、マグネット25が発生する磁場により一定の領域に閉じ込められる。窒化チタン膜の組成や結晶方位(配向性)のような膜質は、成膜条件によって異なる。導入された混合ガスに含まれる窒素ガスの一部はターゲット24中のチタンと結びついて消費される。窒素ガスの濃度が減少した(Arガスの比率が増加した)混合ガスは、半導体ウエハ1とターゲット24との間を半導体ウエハ1の中心部から周辺部に向かう方向に拡散し、ガス導出口21bから排出される。したがって、半導体ウエハ1とターゲット24との間には、半導体ウエハ1の周辺部に対応する領域で高く中心部に対応する領域で低い窒素ガス分圧の同心円状の分布が生じる。この窒素ガス分圧の分布は、ガス導入口21aから導入される混合ガスの総流量が小さいほど、また、半導体ウエハ1の直径Dが大きいほど顕著になる。半導体ウエハ1の直径Dが12インチ(300mm)以上の場合、窒素ガス分圧の分布は特に顕著になる。
【0039】
図4は、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法における窒化チタン膜の成膜条件としての第1条件及び第3条件を示している。第2条件は、第1条件と比較するための成膜条件である。各条件について、成膜する窒化チタン膜の膜厚(膜厚)、成膜に要する時間(時間)、高周波電源28が印加するRFバイアスのパワー(パワー)、混合ガスの総流量中の窒素ガスの流量の比率(N流量比)、混合ガス中のアルゴンガスの流量(Ar流量)、混合ガス中の窒素ガスの流量(N流量)、半導体ウエハ1とターゲット24との間隔H(H)、及び半導体ウエハ1の直径D(D)が設定されている。
【0040】
はじめに、第2条件でバリア層6としての窒化チタン膜を成膜した場合について説明する。第2条件においては、膜厚は50nm、時間は39sec、パワーは12kW、N流量比は80.0%、Ar流量は24sccm、N流量は96sccm、間隔Hは86mm、直径Dは300mmである。
【0041】
図5Aは、第2条件で成膜された窒化チタン膜のX線回折スペクトルを半導体ウエハ1の中心部で測定した結果を示すグラフである。図5Bは、第2条件で成膜された窒化チタン膜のX線回折スペクトルを半導体ウエハ1の周辺部で測定した結果を示すグラフである。ここで、窒化チタン膜は、チタンターゲットを用いた反応性DCマグネトロンスパッタ法で形成された。図5A及び5Bにおいて、縦軸はX線回折強度、横軸はX線回折角2θである。半導体ウエハ1の中心部においては、図5Aに示されるように、2θが約36.5度のところにTiN(111)の配向性を示すピークが観察され、2θが約42.5度のところにTiN(200)の配向性を示すピークが観察された。半導体ウエハ1の中心部においては、TiN(111)の配向性を示すピークにおけるX線回折強度は38count/s、TiN(200)の配向性を示すピークにおけるX線回折強度は82count/sであった。半導体ウエハ1の周辺部においては、図5Bに示されるよに、TiN(111)の配向性を示すピークは検出されず、2θが約42.5度のところにTiN(200)の配向性を示すピークが観察された。半導体ウエハ1の周辺部においては、TiN(200)の配向性を示すピークにおけるX線回折強度は140count/sであった。すなわち、第2条件で成膜された窒化チタン膜は、半導体ウエハ1の中心部においてはTiN(111)の配向性とTiN(200)の配向性とを有していたが、半導体ウエハ1の周辺部においてはTiN(111)の配向性を有さず、TiN(200)の配向性をより強く有していた。
【0042】
図6Aは、第2条件で成膜した窒化チタン膜の上に重ねて形成したタングステン膜7のX線回折スペクトルを半導体ウエハ1の中心部で測定した結果を示すグラフである。図6Bは、第2条件で成膜した窒化チタン膜の上に重ねて形成したタングステン膜7のX線回折スペクトルを半導体ウエハ1の周辺部で測定した結果を示すグラフである。ここで、タングステン膜7はCVD法で堆積された。図6A及び6Bにおいて、縦軸はX線回折強度、横軸はX線回折角2θである。タングステン膜7においては、図6A及び6Bに示されるように、2θが約40度のところにW(110)の配向性を示すピークが観察され、2θが約58.5度のところにW(200)の配向性を示すピークが観察された。半導体ウエハ1の中心部においては、図6Aに示されるように、W(110)の配向性を示すピークにおけるX線回折強度が3169count/sであったのに対し、W(200)の配向性を示すピークにおけるX線回折強度は592count/sと僅かであった。半導体ウエハ1の周辺部においては、図6Bに示されるように、W(110)の配向性を示すピークにおけるX線回折強度は1518count/s、W(200)の配向性を示すピークにおけるX線回折強度は4461count/sであった。すなわち、半導体ウエハ1の中心部においてはW(110)の配向性が主配向であったのに対し、半導体ウエハ1の周辺部においてはW(110)の配向性が弱くW(200)の配向性が強かった。
【0043】
図7は、第2条件で窒化チタン膜を成膜し、その上にタングステン膜7を成膜し、タングステン膜7にCMPを行った場合の半導体ウエハ1の上面図である。ここで、CMPは、半導体ウエハ1の中心部のタングステン膜7がジャストポリッシュされたところで終了した。CMPに要した時間は50秒であった。半導体ウエハ1全体に同じCMP処理を施したにも関わらず、ウエハの周辺部でタングステン膜7の膜残りが発生した。これは、同一のCMPの処理条件におけるタングステン膜7の研磨速度がW(110)の配向性を有する部分とW(200)の配向性を有する部分とで異なるためである。この処理条件におけるタングステン膜7の研磨速度は、W(200)の配向性を有する部分では200mm/min、W(110)の配向性を有する部分ではその2.5倍程度であった。したがって、タングステン膜7の配向性を半導体ウエハ1のウエハ面内において揃えることが均一な研磨速度を達成する上で重要である。すなわち、タングステン膜7の配向性を半導体ウエハ1のウエハ面内において一様にすることが重要である。
【0044】
なお、半導体ウエハ1の周辺部のタングステン膜7を除去するためにCMPの処理時間を長く設定することは以下の理由から好ましくない。CMPの処理時間を長く設定すると、半導体ウエハ1の中心部においては絶縁膜5が研磨されて薄くなり、ヴィアホール5aの周囲で凹み(ディッシング)が大きくなる。その結果、下層配線層4と上層配線層8との間の寄生容量が増加し、下層配線層4及び上層配線層8を含む電気回路のRC時定数(Resistive−Capacitive time constant)が増加して信号伝播が遅延する。また、ディッシングにより半導体ウエハ1の被処理面(ウエハ面)に凹凸が形成されるため、露光プロセスにおける解像不良や、その後の加工プロセスにおける加工不良等の問題が生じる。
【0045】
次に、第1条件でバリア層6としての窒化チタン膜を成膜した場合について説明する。第1条件においては、膜厚は50nm、時間は28sec、パワーは11kW、N流量比は73.5%、Ar流量は18sccm、N流量は50sccm、間隔Hは56mm、直径Dは300mmである。第1条件におけるN流量比は、第2条件におけるN流量比よりも小さい。第1条件で成膜すると、ストイキオメトリーよりもややチタンリッチな組成の窒化チタン膜が成膜される。
【0046】
図8Aは、第1条件で成膜された窒化チタン膜のX線回折スペクトルを半導体ウエハ1の中心部で測定した結果を示すグラフである。図8Bは、第1条件で成膜された窒化チタン膜のX線回折スペクトルを半導体ウエハ1の周辺部で測定した結果を示すグラフである。ここで、窒化チタン膜は、チタンターゲットを用いた反応性DCマグネトロンスパッタ法で形成された。図8A及び8Bにおいて、縦軸はX線回折強度、横軸はX線回折角2θである。図8A及び8Bに示されるように、2θが約36.5度のところにTiN(111)の配向性を示すピークが観察され、2θが約42.5度のところにTiN(200)の配向性を示すピークが観察された。半導体ウエハ1の中心部においては、図8Aに示されるように、TiN(111)の配向性を示すピークにおけるX線回折強度は93count/s、TiN(200)の配向性を示すピークにおけるX線回折強度は25count/sであった。半導体ウエハ1の周辺部においては、図8Bに示されるように、TiN(111)の配向性を示すピークにおけるX線回折強度は49count/s、TiN(200)の配向性を示すピークにおけるX線回折強度は69count/sであった。すなわち、第1条件で成膜された窒化チタン膜は、半導体ウエハ1の中心部と周辺部の両方においてTiN(111)の配向性を有していた。
【0047】
図9Aは、第1条件で成膜した窒化チタン膜の上に重ねて形成したタングステン膜7のX線回折スペクトルを半導体ウエハ1の中心部で測定した結果を示すグラフである。図9Bは、第1条件で成膜した窒化チタン膜の上に重ねて形成したタングステン膜7のX線回折スペクトルを半導体ウエハ1の周辺部で測定した結果を示すグラフである。ここで、タングステン膜7はCVD法で堆積された。図9A及び9Bにおいて、縦軸はX線回折強度、横軸はX線回折角2θである。タングステン膜7においては、図9A及び9Bに示されるように、2θが約40度のところにW(110)の配向性を示すピークが観察され、2θが約58.5度のところにW(200)の配向性を示すピークが観察された。半導体ウエハ1の中心部においては、図9Aに示されるように、W(110)の配向性を示すピークにおけるX線回折強度が6409count/s、W(200)の配向性を示すピークにおけるX線回折強度は321count/sであった。半導体ウエハ1の周辺部においては、図9Bに示されるように、W(110)の配向性を示すピークにおけるX線回折強度は3123count/s、W(200)の配向性を示すピークにおけるX線回折強度は409count/sであった。すなわち、半導体ウエハ1の中心部と周辺部との両方において、W(110)の配向性が主配向であった。
【0048】
図10は、第1条件で窒化チタン膜を成膜し、その上にタングステン膜7を成膜し、タングステン膜7にCMPを行った場合の半導体ウエハ1の上面図である。ここで、CMPは、半導体ウエハ1の中心部のタングステン膜7がジャストポリッシュされたところで終了した。図10に示されるように、タングステン膜7の膜残りは発生せず、半導体ウエハ1のウエハ面全体において絶縁膜5又はバリア層6が露出した。
【0049】
次に、バリア層6としての窒化チタン膜を成膜する第3条件について説明する。第3条件においては、膜厚は50nm、時間は36sec、パワーは12kW、N流量比は70.0%、Ar流量は60sccm、N流量は140sccm、間隔Hは55mm、直径Dは300mmである。第3条件における混合ガスの総流量(Ar流量とN流量とを合わせた流量)は、第1条件における混合ガスの総流量よりも大きい。混合ガスの総流量が大きいと半導体ウエハ1とターゲット24との間に生じる窒素ガス分圧の分布が緩和されるから、第3条件で成膜される窒化チタン膜は第1条件で成膜される窒化チタン膜よりも配向性が一様になる。
【0050】
一般的には、工程S5における窒化チタン膜の成膜条件を以下のようにして設定することができる。工程S5における窒化チタン膜の成膜条件を設定する方法について、図11を参照して説明する。図11において、縦軸は窒化チタン膜の成膜速度、横軸はN流量比である。反応性スパッタ装置20を用いて窒化チタン膜を成膜する際に、混合ガスの総流量及びRFバイアスを一定に保ちながら、N流量比を変化させながら窒化チタン膜の成膜速度を測定すると曲線31及び32が観察される。曲線31は、N流量比が増加しているときの成膜速度の変化を示す。曲線32は、N流量比が減少しているときの成膜速度の変化を示す。N流量比が0%より大きくP%より小さい範囲では、曲線31及び曲線32は互いに一致している。N流量比が0%より大きくP%より小さい範囲をメタリックモードの範囲という。N流量比がP%と等しいか大きく、且つ、Q%より小さいか等しい範囲では、曲線31及び曲線32は互いに一致しないでヒステリシスループを形成している。ここで、0<P<Q<100である。N流量比がP%と等しいか大きく、且つ、Q%より小さいか等しい範囲を遷移モードの範囲という。N流量比がQ%より大きく100%より小さい範囲では、曲線31及び曲線32は互いに一致している。N流量比がQ%より大きく100%より小さい範囲をナイトライドモードの範囲という。
【0051】
ところで、N流量比が大きいほど、ターゲット24の表面が窒化されて窒化チタン(TiN)が形成される。ターゲット24の表面が窒化されるとターゲット24のスパッタ率Sが低下し、半導体ウエハ1に堆積する窒化チタン膜の成膜速度が低下する。ここでスパッタ率Sは、ターゲット24に入射した粒子(イオン)の数をnとし、粒子によりスパッタされたターゲット24の原子(または分子)の数をnとした場合、S=n/nで定義される。したがって、遷移モードの範囲においては、ターゲット24の表面状態の影響により曲線31と曲線32とが一致しない履歴現象が観察される。遷移モードの範囲となる成膜条件で半導体ウエハ1に窒化チタン膜を形成すると、ターゲット24の周辺部で窒化が強く中心部で窒化が弱いため、窒化チタン膜の膜質がウエハ面全体で一様になりにくい。より具体的には、半導体ウエハ1の中心部と周辺部とで窒化チタン膜の配向性が異なり易い。半導体ウエハ1の直径が大きいと、半導体ウエハ1の中心部と周辺部とで窒化チタン膜の膜質が顕著に異なり易い。
【0052】
ナイトライドモードの範囲となる成膜条件で半導体ウエハ1に窒化チタン膜を形成すると、窒化チタン膜はストイキオメトリーに近い組成となる。一方、メタリックモードの範囲となる成膜条件で半導体ウエハ1に窒化チタン膜を形成すると、窒化チタン膜はチタンリッチな組成となる。窒化チタン膜の下地である絶縁膜6がアモルファスのシリコン酸化膜(SiO膜)の場合、ナイトライドモードの範囲となる成膜条件で成膜するとウエハ面全体でTiN(200)が主配向となりやすく、メタリックモードの範囲となる成膜条件で成膜するとウエハ面全体で組成がチタンリッチとなり且つ主配向がTiN(111)となりやすい。したがって、予備実験により図11に示されるデータを得ておいて、N流量比が0%より大きく100%より小さい範囲から遷移モードの範囲を除いた範囲(メタリックモードの範囲又はナイトライドモードの範囲)となる成膜条件で窒化チタン膜を成膜すればよい。ウエハ面の全体で配向が一様な窒化チタン膜を形成するためには、導入される混合ガスの総流量、スパッタ圧力(反応室1内の圧力)、及び基板温度(基板2の温度)を、ターゲット24全体が一様に窒化された状態に保たれるように制御することが好ましい。このように、ウエハ面の全体で主配向が一様になるように窒化チタン膜を形成し、その上にCVD法でタングステン膜7を形成すると、タングステン膜7のCMPによる研磨速度がウエハ面の全体で一様になる。ゆえに、タングステン膜7の膜残りが防がれる。
【0053】
バリア層6としての窒化チタン膜をウエハ面の全体で主配向が実質的に認められないように形成することでタングステン膜7の膜残りを防ぐことも可能である。主配向が実質的に認められないとは、主配向が認められないか、または極めて弱い主配向しか認められないことを意味する。
【0054】
バリア層6としての窒化チタン膜をウエハ面の全体で主配向が実質的に認められないように形成する方法として、高イオン化スパッタ法を用いた場合について説明する。高イオン化スパッタ法は、プラズマを用いる反応性スパッタ法である。高イオン化スパッタ法では、反応室内の圧力を低く制御し、イオン化率が高い条件で成膜する。高イオン化スパッタ法では、反応性スパッタ装置20を用い、反応室21内の圧力が0.5mTorrより高く2mTorrより低い圧力になるように制御し、半導体ウエハ1の基板温度が室温より高く50℃より低くなるように制御し、マグネット25によりターゲット24の表面近くに強い磁場を形成し、RFバイアスの周波数を40MHzより高く200MHzより低くなるように制御し、イオン化率を高めて窒化チタン膜を半導体ウエハ1に成膜する。周波数を200MHzより高くすることも可能であるが、その場合には反射波を抑えるためにインピーダンスのマッチングを調整することが重要となる。図12A及び12Bは、反応室21内の圧力が2mTorrをやや下回る低い圧力となるように制御し、半導体ウエハ1の基板温度が室温程度になるように制御した高イオン化スパッタ法により成膜した窒化チタン膜のX線回折スペクトルのグラフを示している。図12Aは、半導体ウエハ1の中心部で測定した結果を示している。図12Bは、半導体ウエハ1の周辺部で測定した結果を示している。図12A及び12Bにおいて、縦軸はX線回折強度、横軸はX線回折角2θである。TiN(111)の配向性及びTiN(200)の配向性に対応するX線回折角2θが、矢印で示されている。ウエハの中央部及び周辺部の両方において、特定の配向性は認められなかった。
【0055】
このように形成された窒化チタン膜の上にCVD法でタングステン膜7を形成すると、体心立方格子が最密構造であるタングステン膜7はウエハ面全体で弱いW(110)の配向性を有するように形成された。この場合も、タングステン膜7に対してCMPを行うと、第1条件で窒化チタン膜を成膜した場合と同様にタングステン膜7の膜残りは発生しなかった。
【0056】
高イオン化スパッタ法には、自己イオン化スパッタ法が含まれる。ヴィアホール5aにおいてバリア層6のカバレジ(被覆率)を適切にすることが可能であれば、通常のマグネトロンスパッタ法、ターゲットと基板との間隔を大きくして低圧で成膜する高指向性スパッタ法、コリメータを使用するスパッタ法、フラックスの指向性を電界で制御するスパッタ法を用いてもよい。
【0057】
これまで述べたように、ウエハ面の全体で膜質(配向性)が一様になるように窒化チタン膜をバリア層6として形成し、その上にタングステン膜7を形成することでウエハ面の全体でタングステン膜7の膜質(配向性)が一様になる。タングステン膜7の結晶構造は、下地材料の表面状態の影響を受けるためである。したがって、タングステン膜7に対してCMPを行うと、半導体ウエハ1の中心部と周辺部とにおいて同じ研磨速度でタングステン膜7が除去される。研磨不足によるタングステン膜7の膜残り、及び過剰研磨によるヴィアホール5aの周囲におけるディッシングの問題が解決される。ゆえに、チップ歩留まりが向上する。
【0058】
窒化チタン膜は、CVD法により形成することも可能である。CVD法では原料ガスに由来する残留不純物の処理に注意を払う必要がある。チタンの有機物を含む原料ガスを用いると残留不純物としてカーボンが残るので、その後にプラズマ処理や加熱処理が必要である。チタンの塩化物を含む原料ガスを用いると塩素が窒化チタン膜の中に残留するので、その後に水素ガスを含む雰囲気中でのプラズマ処理が必要である。これらの処理を適切に行うことにより、CVD法をバリア層6の形成方法として適用できる。
【0059】
次に、図13及び図14を参照して、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例について説明する。
【0060】
図13は、本発明の実施形態に係る半導体製造装置の製造方法の変形例を示すフロー図である。図13に示された工程S9から工程S14は、図1に示された工程S8のかわりに実行される。工程S9から工程S14は、上層配線層8のかわりに上層配線層13aを形成する工程である。上層配線層13aは、ダマシン法により形成される銅配線である。
【0061】
図14Aから14Dは、本発明の実施形態に係る半導体製造装置の製造方法の変形例において、上層配線層13aを形成する工程を説明するための半導体ウエハの断面図である。
【0062】
(工程S9)
図2Eに示された半導体ウエハ1に絶縁膜9を形成する。絶縁膜9は、シリコン酸化膜であり、タングステンプラグ7aを覆うように絶縁膜5の上に形成される。
【0063】
(工程S10)
次に、絶縁膜9の上にシリコン窒化膜(SiN膜)10を形成する。
【0064】
(工程S11)
次に、絶縁膜9及びSiN膜10の窪み(凹部)としての配線溝11を形成する。絶縁膜9及びSiN膜10に配線溝11が形成された半導体ウエハ1が図14Aに示されている。配線溝11の底にはタングステンプラグ7aが露出している。配線溝11が形成されていないSiN膜10の部分は平坦部10bである。
【0065】
(工程S12)
次に、図14Bに示されるように、SiN膜10の上にバリア層12を形成する。バリア層12は、反応性スパッタ法で形成される窒化タンタル膜(TaN膜)である。バリア層12は、上述の窒化チタン膜を形成する方法と同様の方法により、配向性がウエハ面の全体で一様になるように形成される。この場合、タンタル(Ta)のターゲット24が用いられる。
【0066】
(工程S13)
次に、図14Cに示されるように、バリア層12の上に銅膜13を形成する。銅膜13は、メッキ法又はスパッタ法により形成される。銅膜13は、その一部が配線溝11に埋め込まれ、他の部分が平坦部10bの上に配置されている。銅膜13は、その結晶構造が下地であるバリア層12の状態の影響を受けるため、配向性がウエハ面の全体で一様になるように形成される。
【0067】
(工程S14)
次に、銅膜13をCMP法により研磨し、平坦部10bの上に配置されている他の部分を除去する。これにより、図14Dに示されるように、配線溝11に埋め込まれた上層配線層13aが形成される。上層配線層13aは、タングステンプラグ7aと接続されている。このとき、銅膜13の配向性がウエハ面の全体で一様であるため、半導体ウエハ1の中心部と周辺部とにおいて同じ研磨速度で銅膜13が除去される。したがって、研磨不足による銅膜13の膜残り、及び過剰研磨による配線溝11の周囲におけるディッシングの問題が解決される。ゆえに、チップ歩留まりが向上する。
【0068】
タングステンプラグ7a及び上層配線層13aをデュアルダマシン法により形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る半導体製造装置の製造方法を示すフロー図である。
【図2A】図2Aは、本発明の実施形態に係る半導体製造装置の製造方法において、タングステンプラグを含む多層配線を形成する工程を説明するための半導体ウエハの断面図である。
【図2B】図2Bは、本発明の実施形態に係る半導体製造装置の製造方法において、タングステンプラグを含む多層配線を形成する工程を説明するための半導体ウエハの断面図である。
【図2C】図2Cは、本発明の実施形態に係る半導体製造装置の製造方法において、タングステンプラグを含む多層配線を形成する工程を説明するための半導体ウエハの断面図である。
【図2D】図2Dは、本発明の実施形態に係る半導体製造装置の製造方法において、タングステンプラグを含む多層配線を形成する工程を説明するための半導体ウエハの断面図である。
【図2E】図2Eは、本発明の実施形態に係る半導体製造装置の製造方法において、タングステンプラグを含む多層配線を形成する工程を説明するための半導体ウエハの断面図である。
【図2F】図2Fは、本発明の実施形態に係る半導体製造装置の製造方法において、タングステンプラグを含む多層配線を形成する工程を説明するための半導体ウエハの断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る半導体製造装置の製造方法に用いられる反応性スパッタ装置の概略図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法において、反応性スパッタ法により窒化チタン膜を成膜するときの成膜条件を示す図である。
【図5A】図5Aは、図4の第2条件で成膜された窒化チタン膜のX線回折スペクトルを半導体ウエハの中心部で測定した結果を示すグラフである。
【図5B】図5Bは、図4の第2条件で成膜された窒化チタン膜のX線回折スペクトルを半導体ウエハの周辺部で測定した結果を示すグラフである。
【図6A】図6Aは、図4の第2条件で成膜された窒化チタン膜の上に成膜されたタングステン膜のX線回折スペクトルを半導体ウエハの中心部で測定した結果を示すグラフである。
【図6B】図6Bは、図4の第2条件で成膜された窒化チタン膜の上に成膜されたタングステン膜のX線回折スペクトルを半導体ウエハの周辺部で測定した結果を示すグラフである。
【図7】図7は、図4の第2条件で窒化チタン膜を成膜し、その上にタングステン膜を成膜し、タングステン膜にCMPを行った場合の半導体ウエハの上面図である。
【図8A】図8Aは、図4の第1条件で成膜された窒化チタン膜のX線回折スペクトルを半導体ウエハの中心部で測定した結果を示すグラフである。
【図8B】図8Bは、図4の第1条件で成膜された窒化チタン膜のX線回折スペクトルを半導体ウエハの周辺部で測定した結果を示すグラフである。
【図9A】図9Aは、図4の第1条件で成膜された窒化チタン膜の上に成膜されたタングステン膜のX線回折スペクトルを半導体ウエハの中心部で測定した結果を示すグラフである。
【図9B】図9Bは、図4の第1条件で成膜された窒化チタン膜の上に成膜されたタングステン膜のX線回折スペクトルを半導体ウエハの周辺部で測定した結果を示すグラフである。
【図10】図10は、図4の第1条件で窒化チタン膜を成膜し、その上にタングステン膜を成膜し、タングステン膜にCMPを行った場合の半導体ウエハの上面図である。
【図11】図11は、反応性スパッタ法により窒化チタン膜を成膜する場合のスパッタレートと導入ガスの窒素ガス流量比との関係を示すグラフである。
【図12A】図12Aは、高イオン化スパッタ法により成膜された窒化チタン膜のX線回折スペクトルを半導体ウエハの中心部で測定した結果を示すグラフである。
【図12B】図12Bは、高イオン化スパッタ法により成膜された窒化チタン膜のX線回折スペクトルを半導体ウエハの周辺部で測定した結果を示すグラフである。
【図13】図13は、本発明の実施形態に係る半導体製造装置の製造方法の変形例を示すフロー図である。
【図14A】図14Aは、本発明の実施形態に係る半導体製造装置の製造方法の変形例において、上層配線層を形成する工程を説明するための半導体ウエハの断面図である。
【図14B】図14Bは、本発明の実施形態に係る半導体製造装置の製造方法の変形例において、上層配線層を形成する工程を説明するための半導体ウエハの断面図である。
【図14C】図14Cは、本発明の実施形態に係る半導体製造装置の製造方法の変形例において、上層配線層を形成する工程を説明するための半導体ウエハの断面図である。
【図14D】図14Dは、本発明の実施形態に係る半導体製造装置の製造方法の変形例において、上層配線層を形成する工程を説明するための半導体ウエハの断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1…半導体ウエハ
2…基板
3、5、9…絶縁膜
4…下層配線層
4a…TiN/Ti膜
4b…AlCu膜
4c…TiN膜
5a…ヴィアホール
5b…平坦部
6、12…バリア層
7…タングステン膜
7a…タングステンプラグ
8…上層配線層
8a…TiN/Ti膜
8b…AlCu膜
8c…TiN膜
10…SiN膜
10b…平坦部
11…配線溝
13…銅膜
13a…上層配線層
20…反応性スパッタ装置
21…反応室
21a…ガス導入口
21b…ガス導出口
22…サセプタ
23…シールド
24…ターゲット
25…マグネット
26、27…直流電源
28…高周波電源
31、32…曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窪みが設けられた絶縁膜の上にバリア層を形成する工程と、
金属膜の第1部分が前記窪みに埋め込まれるように前記バリア層の上に前記金属膜を形成する工程と、
前記第1部分を残すように前記金属膜をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨する工程と
を具備し、
前記絶縁膜は、半導体ウエハに形成され、
前記バリア層を形成する前記工程において、前記バリア層は、その配向性が前記半導体ウエハのウエハ面の全体で一様になるように形成される
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記バリア層は、高融点金属の窒化物膜としての金属窒化物膜を含み、
前記バリア層を形成する前記工程は、配向性が前記ウエハ面の全体で一様になるように前記金属窒化物膜を形成する工程を含む
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記金属窒化物膜を形成する前記工程において、前記金属窒化物膜は反応性スパッタ法により形成され、
前記反応性スパッタ法において、
前記半導体ウエハと前記高融点金属のターゲットとが互いに対向するように反応室内に配置され、
アルゴンガスと窒素ガスとを含む混合ガスが、前記半導体ウエハの周辺部から中心部に向かう方向に流れるように、前記半導体ウエハと前記ターゲットとの間に導入され、
前記ターゲットに直流の負電位が印加され、
前記半導体ウエハに高周波電力が印加され、
前記混合ガスが含む窒素ガスの比率としての窒素ガス流量比は、0%より大きく100%より小さい範囲から所定の範囲を除いた範囲に属し、
前記所定の範囲は、前記窒素ガス流量比の変化に対する前記金属窒化物膜の成膜速度の変化において履歴現象が観察される範囲である
請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記所定の範囲を予備実験により求める工程を具備し、
前記所定の範囲を予備実験により求める前記工程は、
前記半導体ウエハとは別の半導体ウエハを、前記別の半導体ウエハと前記ターゲットとが対向するように前記反応室内に配置する工程と、
アルゴンガスと窒素ガスとを含む予備実験用の混合ガスを、前記別の半導体ウエハの周辺部から中心部に向かう方向に流れるように、前記別の半導体ウエハと前記ターゲットとの間に導入する工程と、
前記ターゲットに直流の負電位を印加する工程と、
前記別の半導体ウエハに高周波電力を印加する工程と、
前記別の半導体ウエハ上に形成される前記高融点金属の窒化物膜の成膜速度を測定する工程と、
前記成膜速度に基づいて前記所定の範囲を決定する工程と
を含み、
前記別の半導体ウエハと前記ターゲットとの間に導入する前記工程は、前記予備実験用の混合ガスが含む窒素ガスの比率を増加させながら前記予備実験用の混合ガスを導入する工程と、前記予備実験用の混合ガスが含む窒素ガスの比率を減少させながら前記予備実験用の混合ガスを導入する工程とを含む
請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記金属窒化物膜は窒化チタン膜であり、
前記金属膜はタングステン膜であり、
前記金属膜を形成する前記工程において、
前記タングステン膜がCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される
請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記金属窒化物膜を形成する前記工程において、自己イオン化プラズマを用いたスパッタ法により前記窒化チタン膜が形成される
請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記スパッタ法において、
前記半導体ウエハとチタンターゲットとが反応室内に配置され、
前記半導体ウエハの基板温度が室温より高く50℃より低くなるように制御され、
アルゴンガスと窒素ガスとを含む混合ガスが前記反応室内に導入され、
前記チタンターゲットに直流の負電位が印加され、
前記半導体ウエハに高周波電力が印加され、
前記高周波電力の周波数が40MHzより高く200MHzより低くなるように制御され、
前記反応室内の圧力が0.5mTorrより高く2mTorrより低くなるように制御される
請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記バリア層はチタン膜を含み、
前記バリア層を形成する前記工程は、自己イオン化プラズマを用いたスパッタ法により前記チタン膜を形成する工程を含み、
前記チタン膜を形成する前記工程は、前記高融点金属の窒化物膜を形成する前記工程の前に実行される
請求項6又は7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記窪みは、多層配線のヴィアホールである
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記窪みは、配線を形成するための溝である
請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記金属膜は銅膜である
請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記高融点金属の窒化物膜は窒化タンタル膜である
請求項11に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図2E】
image rotate

【図2F】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14A】
image rotate

【図14B】
image rotate

【図14C】
image rotate

【図14D】
image rotate


【公開番号】特開2008−108860(P2008−108860A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289442(P2006−289442)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】