説明

半導体装置

【課題】CPU搭載無線タグのメモリ内のデータの書き換えを可能にした上で、CPUシステムを高速化し、無線タグの通信性能の向上を行う。
【解決手段】CPUが搭載されている無線タグにRFバッテリー付きのSRAMを搭載することで、CPUシステムの高速化による通信性能を向上させる。また、CPU搭載無線タグのメモリ内のデータの書き換えを可能にした。RFバッテリーは、アンテナ回路と、電源部と、蓄電装置と、を有する。SRAMとRFバッテリーとを組み合わせることで、SRAMに不揮発性メモリとしての機能を持たせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信用の半導体装置に関する。特に、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)を搭載した無線通信用の半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超小型ICチップと、無線通信用のアンテナ回路を組み合わせた小型の半導体装置(無線タグ)が脚光を浴びている。無線タグは、無線通信装置(以下、リーダ/ライタという)を使った通信信号の授受により、データの書き込み、データの読み出しを行うことができる。無線タグの形状は、カード状、或いはカードよりもさらに小型のチップ状であることが多いが、用途に合わせて様々な形状を採りうる。
【0003】
無線タグの応用分野として、例えば、流通業界における商品管理が挙げられる。現在では、バーコードなどを利用した商品管理が主流であるが、バーコードは光学的に読み取るため、遮蔽物があるとデータを読み取れない。一方、無線通信は無線でデータを読み取るため、電波を通すのであれば遮蔽物があっても読み取れる。したがって、商品管理の効率化、低コスト化などが期待されている。また無線タグは、その他にも、乗車券、航空旅客券、料金の自動精算など、広範な応用が期待されている。
【0004】
下記特許文献1には、メモリを有する無線タグについて記載されている。
【特許文献1】特開2005−202947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、無線タグではプログラムデータ記憶用のメモリとして、例えば、マスクROM(Read Only Memory)が使用されている。マスクROMは生産コスト、読み出し速度、データ保持の面で有利である。しかし、複数回のデータの書き換えが不可能なため、基本的にメモリ内のデータを変更することはできず、一度製造された無線タグの用途は限られてしまう。データの書き換え回数の制限を解消する方法に、記憶媒体としてフラッシュメモリを無線タグに搭載することが考えられる。フラッシュメモリを用いる場合、電気的にデータの書き換えが可能であり、データも記憶保持できるが、無線タグに搭載する上で読み出し速度の遅さが問題となる。またフラッシュメモリは、書き込み時間は読み出し時間よりも長く、消去時間は数百ミリ秒もかかり、応答時間が現在の無線タグよりも劣る性能となってしまう。さらにフラッシュメモリはプロセスが難しいためコストが高く、低コストで生産する必要のある無線タグに搭載することは現実的に非常に困難である。
【0006】
またPC(Personal Computer)に組み込まれている、DRAM(Dynamic Random Access Memory)を用いた従来のCPUシステムでは、まず、CPUシステム起動時にマスクROMに記憶されたプログラムデータをメインメモリであるDRAMに記憶させている。DRAMは集積度が高く安価であることが特徴として挙げられる。しかし、データを一定時間毎に再書き込みするリフレッシュ動作を行う必要があるために、メモリの動作は低速である。リフレッシュ動作が行われる理由は、DRAMのデータの記憶が電荷の蓄積に依り、その蓄積された電荷がリーク電流によって減少するためである。
【0007】
CPUシステムの動作を高速化するために、集積度はDRAMに劣るが、リフレッシュ動作の必要がなく、高速動作の可能なSRAM(Static Random Access Memory:エスラム)をキャッシュメモリとして用いるのは非常に有効である。特にCPUの動作において参照される頻度の高いプログラムデータを、DRAMではなくSRAMに保存することで、読み出し時間を短縮化し、システムの高速動作を可能にする。
【0008】
しかし、無線タグはPCと異なり、電力が常時供給されるものではなく、頻繁に途切れる状態にある。そのため電力が供給されている間に、短時間で応答(システムの起動や処理、等)させることが重要な要素として挙げられる。無線タグにPCと同じシステム(DRAM+SRAM)を組み込んだ場合、電力供給後、システムが安定して動作するために一定の起動時間が必要となる。これは、特にROMからデータを読み出し、DRAMやSRAMに参照頻度の高いデータの書き込みが行われていることに依る。無線タグにおいて、起動時間が長く応答までに時間がかかり過ぎてしまうと、商品管理、等の実用に不向きである。そのため、上記のPCに組み込まれているシステムを無線タグに搭載することは現実的に有効な方法ではない。
【0009】
無線タグの応答速度が遅い場合、リーダ/ライタとの通信時に無線タグを静止させるか、あるいは、無線タグを動かす場合は低速度に保たなければ、正常な応答を返すことができない。これは一定速度以上で動くタグを認識できないためであり、無線タグの使い道を狭める要因の一つとなっている。無線タグが様々な分野で利用されるためには応答速度を向上させることが重要な課題となる。
【0010】
本発明は、以上の問題を鑑みなされたものであり、CPU搭載無線タグのメモリ内のデータの書き換えを可能にした上で、CPUシステムを高速化し、無線タグの通信性能の向上を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、CPUが搭載されている半導体装置に、無線で伝送されてきた電力を蓄えることができる無線蓄電手段(RFバッテリー)と、SRAMとを設ける。そして、無線蓄電手段からSRAMへの電力の供給を行うことで、CPUシステムの高速化による通信性能を向上させた半導体装置を提供する。SRAMはメモリの中でも読み出し動作と書き込み動作の早さ、サイクル時間とアクセス時間の同一性、待機時の消費電力の小ささの点で優れている。以上の特徴からSRAMはCPUが搭載された半導体装置のシステムを高速化する上で非常に重要な役目を果たす。また、無線蓄電手段と組み合わせているためSRAMのデータを保存することができ、ROMと同様の機能を持つ。
【0012】
無線蓄電手段は、電源部と、蓄電装置と、を有する。無線蓄電手段はさらにアンテナ回路を有していても良い。アンテナ回路は、アンテナと、共振回路と、を有する。アンテナは、無線信号を受信する機能を有する。特に、アンテナは受信できる周波数帯に限りがあるため、複数のアンテナ回路を搭載することで受信可能な無線信号の周波数領域を広げることができる。共振回路は、受信した無線信号を基に起電力を生成する回路である。電源部は、アンテナ回路により得られた交流信号を直流信号に変換する機能、また、蓄電装置への充電、蓄電装置からの放電を切り替える制御回路と、を有する。蓄電装置は、電力を蓄える機能を持つバッテリーまたはコンデンサを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体装置では、無線蓄電手段付きのSRAMを搭載することにより、プログラムメモリおよびデータメモリとしてSRAMを使用し、メモリ動作の高速化を可能とする。これによりCPUシステムの高速動作が実現できる。また、製造直後は、SRAMにはデータが記憶されていないため、半導体装置の用途に応じたプログラムデータを記憶させることが可能である。さらに、製造段階において半導体装置の用途を限っていないため、大量生産により生産コストも低く抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
半導体装置のプログラムデータを記憶するためのメモリを、無線蓄電手段付きのSRAMに変更することで、プログラムデータを電源オフ時にも記憶保持できる。また、SRAMを用いることでCPUのメモリアクセス時に高速な、読み出し、書き込み、消去、が可能となる。また、プログラムデータの書き込み、書き換えが可能になるため、用途に応じたCPUシステムを持つ半導体装置が作製可能となる。以下にその構成、動作について示す。
【0016】
半導体装置のブロック構成は、図1に示すものである。
【0017】
図1に示すように、半導体装置201はロジック部206とアナログ部215とを有する。ロジック部206は、CPU202と、マスクROM203と、SRAM204aと、SRAM204bと、コントローラ205とを有する。またアナログ部215は、電源回路209と、リセット回路210と、クロック生成回路211と、復調回路212と、変調回路213と、電源管理回路214と、無線蓄電手段225とを有する。無線蓄電手段225は、アンテナ回路224と、電源部226と、蓄電装置227と、を有する。また、アンテナ回路224は、アンテナ207と、共振回路208と、を有する。
【0018】
SRAM204aは、無線蓄電手段225から電力が供給され、プログラムデータの記憶保持に使用される。つまり無線蓄電手段225は、SRAM204aのデータ保持用の電力供給源として機能する。SRAM204bは、CPU202の演算結果等の一時的な記憶保持などの作業メモリとして使用される。
【0019】
コントローラ205は、CPUインターフェース(CPUIF)216と、制御レジスタ217と、コード抽出回路218と、符号化回路219とを有する。なお、図1では、説明を簡単にするため、通信信号を受信信号220と、送信信号221とに分けて示したが、実際には、両者は一体とされた信号であり、半導体装置201およびリーダ/ライタの間で同時に送受信される。受信信号220は、アンテナ回路224で受信された後、復調回路212により復調される。また、送信信号221は、変調回路213により変調された後、アンテナ207から送信される。
【0020】
図1において、通信信号により形成される磁界中に半導体装置201を置くと、アンテナ回路224において誘導起電力が生じる。誘導起電力は、電源回路209における電気容量により保持され、また電気容量によって電位が安定化され、半導体装置201の各回路に電源電圧として供給される。リセット回路210は、半導体装置201全体の初期リセット信号を生成する。例えば、電源電圧の上昇に遅延して立ち上がる信号をリセット信号として生成する。クロック生成回路211は、電源管理回路214より生成される制御信号に応じて、クロック信号の周波数とデューティー比を変更する。復調回路212は、ASK方式の受信信号220の振幅の変動を”0”“1”の受信データ222として検出する。復調回路212は、例えばローパスフィルターとする。さらに、変調回路213は、送信データをASK方式の送信信号221の振幅を変動させて送信する。例えば、送信データ223が”0”の場合、共振回路208の共振点を変化させ、通信信号の振幅を変化させる。電源管理回路214は、電源回路209よりロジック部206に供給される電源電圧またはロジック部206における消費電流を監視し、クロック生成回路211において、クロック信号の周波数とデューティー比を変更するための制御信号を生成する。
【0021】
無線蓄電手段225において、アンテナ207が受信した無線信号を基に共振回路208で得られた誘導起電力は、電源部226により整流される。また、電源部226は、蓄電装置227に対して、蓄電、放電の制御を行なう機能を有する。蓄電装置227は、電力を保持する機能を有し、いわゆる蓄電池(バッテリー)を適用できる。例えば、リチウムイオン電池、リチウム二次電池、ニッケル水素電池、ニカド電池、有機ラジカル電池、鉛蓄電池、空気二次電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池などの二次電池が適用可能である。なお、蓄電装置227には、蓄電池(バッテリー)の他、大容量のコンデンサ(例えば、積層セラミックコンデンサ、電気二重層コンデンサなど)を適用することができる。特に、リチウムイオン電池やリチウム二次電池は充放電容量が大きいため、本発明の実施の形態の半導体装置201に適用することで小型化を図ることができる。金属リチウム電池は、正極活物質にリチウムイオン含有遷移金属酸化物、金属酸化物、金属硫化物、鉄系化合物、導電性ポリマーまたは有機イオウ系化合物等を用い、負極活物質にリチウム(合金)、電解質に有機系電解液またはポリマー電解質などを用いることで、充放電容量を大きくすることができる。
【0022】
次に、本実施の形態における半導体装置の動作を説明する。製造直後の半導体装置内のSRAM204aにはデータが記憶されていないため、CPU202の動作用のプログラムデータを書き込む必要がある。SRAM204aにおけるデータの書き込みと書き換え、CPUシステムの一連の動作を以下に説明する。
【0023】
まず、リーダ/ライタより送信された受信信号220を、半導体装置201が受信する。受信信号220にはSRAM204aに記憶させるためのプログラムデータが含まれている。なお、図1では、説明を簡単にするため、通信信号を受信信号220と、送信信号221とに分けて示したが、実際には、両者は一体とされた信号であり、半導体装置201およびリーダ/ライタの間で同時に送受信される。受信信号220は、復調回路212で復調され、コード抽出回路218で制御コマンドやプログラムデータなどに分解され、制御レジスタ217に格納される。ここで、制御コマンドは、半導体装置201の応答を指定するデータである。例えば、固有ID番号の送信、動作停止、暗号解読などを指定する。
【0024】
続いて、ロジック部206において、CPU202が、マスクROM203に格納された書き込み用プログラムデータを基に受信したプログラムデータをSRAM204aに書き込む。以降、CPU202は、SRAM204aからプログラムデータを読み出し、演算処理を実行する。演算処理結果や演算途中のデータはSRAM204bに書き込まれる。CPU202はSRAM204a、SRAM204bとデータの受渡しを行うことで処理動作を行う。
【0025】
無線蓄電手段225は、SRAM204aに書き込まれたプログラムデータ保持用の電力供給源として機能する。無線蓄電手段225からの電力供給によってSRAM204aは電源オフ時にデータを保持することができる。また、SRAM204aに記憶されたプログラムデータは、マスクROM203に記憶された消去用、または、書き換え用のプログラムデータを実行することで、容易に消去、または、書き換えが可能である。
【0026】
なお、CPU202は、CPUIF216を介してマスクROM203、SRAM204a、SRAM204b、制御レジスタ217にアクセスする。CPUIF216は、CPU202が要求するアドレスより、マスクROM203、SRAM204a、SRAM204b、制御レジスタ217のいずれかに対するアクセス信号を生成する機能を有している。
【0027】
最後に、符号化回路219において、制御レジスタ217からの信号により送信データ223を生成し、変調回路213で送信信号221を変調し、アンテナ207より送信信号221をリーダ/ライタに送信する。
【0028】
以上の説明のように、半導体装置は生産段階においてSRAM内にプログラムデータは記憶されていないため、SRAM204aに、用途に応じた任意のプログラムデータを書き込むことができる。初期状態において、プログラムデータの限定がないため、半導体装置の大量生産が可能であり、生産コストを低く抑えることができる点が特徴として挙げられる。また、SRAM搭載により、CPUシステムの起動直後でもCPUはSRAMから直接データの読み出し、書き込みが行えるため、CPUシステム全体の処理速度の向上が可能となる。
【0029】
なお、SRAM204aはプログラムメモリとしての使用に限らず、データメモリとして使用することもできる。
【0030】
以上の構成をとることで、応答速度を向上させたデータの書き換え可能な半導体装置の提供が可能となる。
【0031】
(実施の形態2)
本実施の形態では、無線蓄電手段付きSRAMとCPUを有する半導体装置について説明する。図2は、本実施の形態の半導体装置のブロック図である。
【0032】
図2を用いて半導体装置のブロック構成を説明する。図2において、半導体装置101は、ロジック部106と、アナログ部115とを有する。またロジック部106は、CPU102と、マスクROM103と、SRAM104と、コントローラ105とを有する。アナログ部115は、アンテナ回路124と、電源回路109と、リセット回路110と、クロック生成回路111と、復調回路112と、変調回路113と、電源管理回路114と、無線蓄電手段125とを有する。また、アンテナ回路124は、アンテナ107と、共振回路108と、を有する。無線蓄電手段125は、アンテナ回路124と、電源部126と、蓄電装置127と、を有する。
【0033】
コントローラ105は、CPUインターフェース(CPUIF)116と、制御レジスタ117と、コード抽出回路118と、符号化回路119とを有する。なお、図2では、説明を簡単にするため、通信信号を受信信号120と、送信信号121とに分けて示したが、実際には、両者は一体とされた信号であり、半導体装置101およびリーダ/ライタの間で同時に送受信される。受信信号120は、アンテナ回路124とで受信された後、復調回路112により復調される。また、送信信号121は、変調回路113により変調された後、アンテナ107から送信される。
【0034】
図2において、通信信号により形成される磁界中に半導体装置101を置くと、アンテナ回路124において誘導起電力が生じる。誘導起電力は、電源回路109における電気容量により保持され、また電気容量によって電位が安定化され、半導体装置101の各回路に電源電圧として供給される。リセット回路110は、半導体装置101全体の初期リセット信号を生成する。例えば、電源電圧の上昇に遅延して立ち上がる信号を初期リセット信号として生成する。クロック生成回路111は、電源管理回路114より生成される制御信号に応じて、クロック信号の周波数とデューティー比を変更する。復調回路112は、ASK方式の受信信号120の振幅の変動を”0”“1”の受信データ122として検出する。復調回路112は、例えばローパスフィルターとする。さらに、変調回路113は、送信データをASK方式の送信信号121の振幅を変動させて送信する。例えば、送信データ123が”0”の場合、共振回路108の共振点を変化させ、通信信号の振幅を変化させる。電源管理回路114は、電源回路109よりロジック部106に供給される電源電圧またはロジック部106における消費電流を監視し、クロック生成回路111において、クロック信号の周波数とデューティー比を変更するための制御信号を生成する。
【0035】
無線蓄電手段125において、アンテナ107が受信した無線信号を基に共振回路108で得られた誘導起電力は、電源部126により整流される。また、電源部126は、蓄電装置127に対して、蓄電、放電の制御を行なう機能を有する。蓄電装置127は、電力を保持する機能を有し、いわゆる蓄電池(バッテリー)を適用できる。例えば、リチウムイオン電池、リチウム二次電池、ニッケル水素電池、ニカド電池、有機ラジカル電池、鉛蓄電池、空気二次電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池などの二次電池が適用可能である。なお、蓄電装置127には、蓄電池(バッテリー)の他、蓄電器である大容量のコンデンサ(例えば、積層セラミックコンデンサ、電気二重層コンデンサなど)を適用することができる。特に、リチウムイオン電池やリチウム二次電池は充放電容量が大きいため、本発明の実施の形態の半導体装置101に適用することで小型化を図ることができる。金属リチウム電池は、正極活物質にリチウムイオン含有遷移金属酸化物、金属酸化物、金属硫化物、鉄系化合物、導電性ポリマーまたは有機イオウ系化合物等を用い、負極活物質にリチウム(合金)、電解質に有機系電解液またはポリマー電解質などを用いることで、充放電容量を大きくすることができる。
【0036】
次に、本実施の形態における半導体装置の動作を説明する。流通業界において商品管理を行う場合、どのような場所を、いつ通過したかは重要な情報である。また、この位置情報、時間情報は消費者に対して製造元、商品の信頼性を得ることのできる点として挙げられる。リーダ/ライタによって半導体装置101に搭載されたSRAM104に位置情報または時間情報を書き込む場合を以下で説明する。
【0037】
まず、リーダ/ライタより送信された受信信号120を、半導体装置101が受信する。受信信号120にはSRAM104に書き込む位置情報または時間情報が含まれている。受信信号120は、復調回路112で復調された後、コード抽出回路118で制御コマンドや位置情報または時間情報などに分解され、制御レジスタ117に格納される。ここで、制御コマンドは、半導体装置101の応答を指定するデータである。例えば、固有ID番号の送信、動作停止、暗号解読などを指定する。
【0038】
続いて、ロジック部106において、CPU102が、マスクROM103に格納された書き込み用プログラムデータを基にSRAM104に位置情報または時間情報を書き込む。また書き換え動作は書き込み動作と同様に、CPU102がマスクROM103に格納された書き換え用プログラムデータを基にSRAM104の記憶データを書き換える。SRAM104に一度書き込まれた位置情報または時間情報は位置情報または時間情報を読み出すためのプログラムデータを含む受信信号120を半導体装置101に受信させることで送信信号121を得ることができる。
【0039】
無線蓄電手段125は、SRAM104のデータ保持用の電力供給源として機能する。
【0040】
なお、CPU102は、CPUIF116を介してマスクROM103、SRAM104、制御レジスタ117にアクセスする。CPUIF116は、CPU102が要求するアドレスより、マスクROM103、SRAM104、制御レジスタ117のいずれかに対するアクセス信号を生成する機能を有している。
【0041】
最後に、符号化回路119において、応答信号から送信データ123を生成し、変調回路113で変調し、アンテナ107より送信信号121をリーダ/ライタに送信する。
【0042】
本実施の形態を用いることにより、直接SRAMから読み出すことが可能となるため、従来の不揮発性メモリと比べて読み出し時間が短縮されるので、処理時間を短縮することが可能となる。また、無線蓄電手段の付加によりSRAMに書き込んだデータの保持が可能であるため、電源再供給直後にもシステムの高速動作が可能となる。
【0043】
以上の読み出し速度、また、書き込み速度の向上により、リーダ/ライタとの通信時間が短縮できる。応答時間を短縮化したデータ書き込み可能な半導体装置を製造物、製造部品に貼付することで製造工程の履歴情報(固有ID、製造場所、製造時間、等)を得ることができる。応答時間の短縮化によって、製造ラインの速度を遅くすることなく半導体装置へのデータ書き込みが可能となり、生産ラインへの導入が容易に行える。また、半導体装置に書き込まれた情報を高速に読み取ることで、製造途中で異なる工程へ振り分ける場合や出荷先の分別を自動に行うことができ、生産ラインの効率化を計ることが可能となる。
【0044】
上記の構成をとることで、応答速度を向上させた半導体装置を提供することが可能となる。
【0045】
(実施の形態3)
次に、図3を用いて、半導体装置800の構成例を説明する。図3は、半導体装置800のブロック図である。半導体装置800は、アンテナ回路801、信号処理回路802、および蓄電装置803を有する。
【0046】
アンテナ回路801は、信号の送受信を行う。アンテナ回路801は、アンテナ回路の形状に応じた周波数の信号を検波する。アンテナ回路801で受信した信号を信号処理回路802で直流電源に変換し、電力を蓄電装置803に供給する。
【0047】
蓄電装置803はいわゆる蓄電池(バッテリー)を適用できる。例えば、リチウムイオン電池、リチウム二次電池、ニッケル水素電池、ニカド電池、有機ラジカル電池、鉛蓄電池、空気二次電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池などの二次電池が適用可能である。なお、蓄電装置803には、蓄電池(バッテリー)の他、大容量のコンデンサ(例えば、積層セラミックコンデンサ、電気二重層コンデンサなど)を適用することができる。特に、リチウムイオン電池やリチウム二次電池は充放電容量が大きいため、本発明の実施の形態の半導体装置800に適用することで小型化を図ることができる。金属リチウム電池は、正極活物質にリチウムイオン含有遷移金属酸化物、金属酸化物、金属硫化物、鉄系化合物、導電性ポリマーまたは有機イオウ系化合物等を用い、負極活物質にリチウム(合金)、電解質に有機系電解液またはポリマー電解質などを用いることで、充放電容量を大きくすることができる。
【0048】
リチウムイオン電池の活物質や電解質をスパッタリング法により形成することにより、蓄電装置803を、信号処理回路802が形成された基板上に形成することができ、また、アンテナ回路801が形成された基板上に形成することもできる。信号処理回路802やアンテナ回路801が形成された基板上に、蓄電装置803を形成することにより、半導体装置800を薄膜化、軽量化することができる。
【0049】
アンテナ回路801は、アンテナ842と、共振回路843と、を有する。アンテナ842は、無線信号を受信する機能を有する。共振回路843は、アンテナ842が受信した無線信号を基に誘導起電力を生成し、電力を得る回路である。
【0050】
信号処理回路802は、電源部820とロジック部830とに大別される。電源部820は、図3に示すように、アンテナ回路801の出力が接続された整流回路821、整流回路821の出力が接続された充電制御回路822、蓄電装置803の出力が接続された放電制御回路823、充電制御回路822および放電制御回路823を制御するスイッチ制御回路824を有する。
【0051】
充電制御回路822は、レギュレータ822a、レギュレータ822aの出力が接続されたスイッチ822bを有する。レギュレータ822aの出力は、スイッチ822bを介して蓄電装置803に接続されている。
【0052】
整流回路821は、アンテナ回路801で受信した交流信号を半波整流し、平滑化して直流電圧を作る。充電制御回路822は、整流回路821から出力される直流電圧を一定電圧にした後、蓄電装置803に供給する回路である。整流回路821から出力される直流電圧は、充電制御回路822のレギュレータ822aに入力され一定電圧の直流電圧とされる。レギュレータ822aで生成された定電圧はスイッチ822bを介して蓄電装置803に出力され、蓄電装置803に充電される。レギュレータ822aは、規格以上の電圧が蓄電装置803に印加されないように、電圧値を一定にするための回路である。なお、レギュレータ822aで、入力される直流電圧に対して、電圧値だけでなく、電流値も一定にするようにしてもよい。また、スイッチ822bをダイオードのような整流素子にすることで、レギュレータ822aを省略することができる。すなわち、充電制御回路822を整流素子のみという単純な構成とすることができる。
【0053】
放電制御回路823は、レギュレータ823a、レギュレータ823aの入力に接続されたスイッチ823bを有する。レギュレータ823aの入力は、スイッチ823bを介して、蓄電装置803の出力に接続されている。レギュレータ823aの出力はSRAM836に接続されている。蓄電装置803に充電された電力が放電制御回路823からSRAM836に供給される。蓄電装置803から供給される電力はレギュレータ823aにより定電圧電源とされるため、規格以上の電圧がSRAM836に入力されることを防ぐことができる。なお、レギュレータ823aで、入力される直流電圧について電圧値だけでなく、電流値も一定にするようにしてもよい。
【0054】
スイッチ制御回路824は、蓄電装置803の充電、および蓄電装置803からSRAM836への電源供給を制御する回路である。スイッチ制御回路824には、蓄電装置803の出力が接続され、この出力をもとに蓄電装置803の充電状態を監視する。また、スイッチ制御回路824には、整流回路821の出力が接続され、この出力から、アンテナ回路801で受信した信号の振幅の大きさ(電界の大きさ)を監視している。スイッチ制御回路824は、蓄電装置803および整流回路821の出力を監視し、スイッチ822bおよびスイッチ823bのオン、オフを制御する。例えば、スイッチ823bの制御は、蓄電装置803の電圧がある値V1以上になるとスイッチ823bをオンにし、蓄電装置803の電力をSRAM836に供給する。ある値V2(V1>V2)以下になるとスイッチ823bをオフし、SRAM836への電力の供給を停止する。例えば、V1の設定値は、SRAM836のデータを安定に記憶保持ができる電圧値とし、V2の設定値は、SRAM836のデータを記憶保持させるのに必要な電圧の最小値とする。
【0055】
ロジック部830は、図3に示すように接続された復調回路831、アンプ832、論理回路833、制御レジスタ834、CPUIF835、SRAM836、マスクROM837、CPU838、論理回路839、アンプ840、および変調回路841を有する。ロジック部830において、アンプ832はアンテナ回路801に入力される信号の振幅を増幅し、クロック信号として論理回路833に供給する。またASK変調やPSK変調された通信信号は復調回路831で復調される。復調後の信号も論理回路833に送られ解析される。論理回路833で解析された信号は制御レジスタ834に送られ、それに基づき、制御レジスタ834はCPUIF835を介して、CPU838へ制御信号を送る。
【0056】
SRAM836は、基本的には一時的なデータの記憶を行う作業メモリである。本実施の形態ではSRAM836を無線蓄電手段と組み合わせており、リーダ/ライタからの電力の供給が行われていない時においてもSRAM836においてデータの保持が可能となる。マスクROM837は、CPU838が動作するために必要となるプログラムデータを記憶している。CPU838の動作時には、マスクROM837から読み出したデータに基づいて演算処理を行う。CPU838は制御信号を基にCPUIF835を介して、SRAM836、または、マスクROM837から指定アドレスのデータを読み出し、演算処理を実行する。CPU838から送られてきたデータは、論理回路839でエンコード処理される。そして、エンコード処理されたデータを含む信号が、アンプ840で増幅され、その信号によって、変調回路841はアンテナ回路801より出力する信号に変調をかける。ここで図3における電力は、ロジック部830の外に設けられる蓄電装置803によって電源部820を介して供給している。このようにして半導体装置800のロジック部830は動作する。
【0057】
図3に示す半導体装置800において、無線蓄電手段は、アンテナ回路801、電源部820および蓄電装置803を有する。以下、無線蓄電手段を充電し、無線蓄電手段で蓄えた電力を供給する方法を説明する。
【0058】
半導体装置800は、電磁波を受信することにより蓄電装置803を自動的に充電させることが可能である。また、アンテナ回路801は、アンテナ回路の形状に応じた周波数帯域の信号を検波して、直流電源に変換し、電力を発生させることができる。また、リーダ/ライタの代わりに、充電専用に電磁波を発信する装置、いわゆる給電器を用いることで蓄電装置803を意図的に充電して、SRAM836に電力が無くなることを回避することができる。リーダ/ライタに充電専用の信号を送信する機能を備えることで、充電器として機能させることもできる。
【0059】
無線蓄電手段に充電された電力をSRAM836に供給することで、SRAM836に記憶されたデータを保持することが可能である。SRAM836に記憶されたデータが保持されることで、半導体装置とリーダ/ライタとの通信開始時に、SRAM836へのデータ書き込み時間の省略、SRAM836の高速読み出しにより、CPU838とのデータの受け渡しも高速に行えるため、システムの処理の高速化を行うことが可能となる。SRAM836の読み出し、書き込み速度がメモリの中でも非常に高速である特徴を更に活かすことができる。
【0060】
以上の説明のように、無線蓄電手段とSRAMを組み合わせて半導体装置のシステムに組み込むことで、CPUシステムの性能を向上させた半導体装置の提供が可能となる。
【実施例1】
【0061】
図4に、本発明の半導体装置の一形態を、斜視図で示す。図4において半導体装置500は、基板520と、カバー材521を有する。基板520、カバー材521として、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板またはSOI(Silicon on Insulator)基板を用いることが出来る。
【0062】
アンテナ回路522と、アンテナ回路522以外のアナログ部523と、ロジック部524とは、基板520上に形成されている。そしてカバー材521は、アンテナ回路522と、アンテナ回路522以外のアナログ部523と、ロジック部524とを覆うように、基板520と重なっている。なおアンテナ回路522は基板520上にて形成されていても良いし、アンテナ回路522を別途用意して、基板520上に貼り付けても良い。
【0063】
アンテナ回路522以外のアナログ部523には無線蓄電手段525が含まれており、ロジック部524にはSRAM526とCPU527が含まれている。本発明では、無線蓄電手段525からSRAM526に電力が供給されている。
【0064】
半導体装置500とリーダ/ライタとの間における通信は、キャリア(搬送波)として用いる電波を変調することで行うことが出来る。本実施例では950MHzのキャリアを用いた半導体装置500の構成について示したが、キャリアの周波数はこれに限定されない。キャリアとして、125kHz、13.56MHzなど様々な周波数の電波を用いることができる。信号の伝送方式は、キャリアの波長によって電磁結合方式、電磁誘導方式、マイクロ波方式など様々な種類に分類することが出来る。変調の方式も振幅変調、周波数変調、位相変調など様々な方式があるが、特に限定はされない。
【0065】
また本実施例では、電界を用いて通信を行う場合の半導体装置を例示しているので、アンテナ回路522としてダイポールアンテナを用いている。電界ではなく磁界を用いて通信を行う場合には、アンテナ回路522にコイル状のアンテナを用いることが出来る。
【0066】
また本実施例では、アンテナ回路522を有する半導体装置500の構成について説明しているが、本発明の半導体装置は必ずしもアンテナ回路522を有していなくとも良い。また図4に示した半導体装置に、発振回路を設けても良い。
【0067】
本発明の半導体装置は、無線蓄電手段525、SRAM526を含め、全て通常のMOSのプロセスで形成することが可能である。よって、半導体装置を小型化することが出来る。
【0068】
本実施例は、実施の形態1〜3と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例2】
【0069】
次に、本発明の半導体装置の作製方法について詳しく述べる。なお本実施例では薄膜トランジスタ(TFT)を半導体素子の一例として示すが、本発明の半導体装置に用いられる半導体素子はこれに限定されない。例えばTFTの他に、記憶素子、ダイオード、抵抗、コイル、容量、インダクタなどを用いることができる。
【0070】
まず図5(A)に示すように、耐熱性を有する基板300上に、絶縁膜301、剥離層302、下地膜として機能する絶縁膜303と、半導体膜304とを順に形成する。絶縁膜301、剥離層302、絶縁膜303及び半導体膜304は連続して形成することが可能である。
【0071】
基板300として、例えばバリウムホウケイ酸ガラスや、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、セラミック基板等を用いることができる。また、ステンレス基板を含む金属基板、またはシリコン基板等の半導体基板を用いても良い。プラスチック等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板は、一般的に上記基板と比較して耐熱温度は低い傾向にあるが、作製工程における処理温度に耐え得るのであれば用いることが可能である。
【0072】
プラスチック基板として、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0073】
なお本実施例では、剥離層302を基板300上の全面に設けているが本発明はこの構成に限定されない。例えばフォトリソグラフィ法などを用いて、基板300上において剥離層302を部分的に形成する様にしても良い。
【0074】
絶縁膜301、絶縁膜303は、CVD法やスパッタリング法等を用いて、酸化珪素、窒化珪素(SiNx、Si等)、酸化窒化珪素(SiOxNy)(x>y>0)、窒化酸化珪素(SiNxOy)(x>y>0)等の絶縁性を有する材料を用いて形成する。
【0075】
絶縁膜301、絶縁膜303は、基板300中に含まれるNaなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属が半導体膜304中に拡散し、TFTなどの半導体素子の特性に悪影響を及ぼすのを防ぐために設ける。また絶縁膜303は、剥離層302に含まれる不純物元素が半導体膜304中に拡散するのを防ぎ、なおかつ後の半導体素子を剥離する工程において、半導体素子を保護する役目も有している。
【0076】
絶縁膜301、絶縁膜303は、単数の絶縁膜を用いたものであっても、複数の絶縁膜を積層して用いたものであっても良い。本実施例では、膜厚100nmの酸化窒化珪素膜、膜厚50nmの窒化酸化珪素膜、膜厚100nmの酸化窒化珪素膜を順に積層して絶縁膜303を形成するが、各膜の材質、膜厚、積層数は、これに限定されるものではない。例えば、下層の酸化窒化珪素膜に代えて、膜厚0.5〜3μmのシロキサン系樹脂をスピンコート法、スリットコーター法、液滴吐出法、印刷法などによって形成しても良い。また、中層の窒化酸化珪素膜に代えて、窒化珪素膜(SiNx、Si等)を用いてもよい。また、上層の酸化窒化珪素膜に代えて、酸化珪素膜を用いていても良い。また、それぞれの膜厚は、0.05〜3μmとするのが望ましく、その範囲から自由に選択することができる。
【0077】
或いは、剥離層302に最も近い、絶縁膜303の下層を酸化窒化珪素膜または酸化珪素膜で形成し、中層をシロキサン系樹脂で形成し、上層を酸化珪素膜で形成しても良い。
【0078】
なおシロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は、置換基に水素の他、フッ素、アルキル基、または芳香族炭化水素のうち、少なくとも1種を有していても良い。
【0079】
酸化珪素膜は、SiH/O、TEOS(テトラエトキシシラン)/O等の混合ガスを用い、熱CVD、プラズマCVD、常圧CVD、バイアスECRCVD等の方法によって形成することができる。また、窒化珪素膜は、代表的には、SiH/NHの混合ガスを用い、プラズマCVDによって形成することができる。また、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜は、代表的には、SiH/NOの混合ガスを用い、プラズマCVDによって形成することができる。
【0080】
剥離層302は、金属膜、金属酸化膜、金属膜と金属酸化膜とを積層して形成される膜を用いることができる。金属膜と金属酸化膜は、単層であっても良いし、複数の層が積層された積層構造を有していても良い。また、金属膜や金属酸化膜の他に、金属窒化物や金属酸化窒化物を用いてもよい。剥離層302は、スパッタ法やプラズマCVD法等の各種CVD法等を用いて形成することができる。
【0081】
剥離層302に用いられる金属としては、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)またはイリジウム(Ir)等が挙げられる。剥離層302は、上記金属で形成された膜の他に、上記金属を主成分とする合金で形成された膜、或いは上記金属を含む化合物を用いて形成された膜を用いても良い。
【0082】
また剥離層302は珪素(Si)単体で形成された膜を用いても良いし、珪素(Si)を含む化合物で形成された膜を用いても良い。或いは、珪素(Si)と上記金属とを含む合金で形成された膜を用いても良い。珪素を含む膜は、非晶質、微結晶、多結晶のいずれでもよい。
【0083】
剥離層302は、上述した膜を単層で用いても良いし、上述した複数の膜を積層して用いても良い。金属膜と金属酸化膜とが積層された剥離層302は、元となる金属膜を形成した後、該金属膜の表面を酸化または窒化させることで形成することができる。具体的には、酸素雰囲気中またはNO雰囲気中で元となる金属膜にプラズマ処理を行ったり、酸素雰囲気中またはNO雰囲気中で金属膜に加熱処理を行ったりすればよい。また元となる金属膜上に接するように、酸化珪素膜または酸化窒化珪素膜を形成することでも、酸化を行うことが出来る。また元となる金属膜上に接するように、窒化酸化珪素膜、窒化珪素膜を形成することで、窒化を行うことが出来る。
【0084】
金属膜の酸化または窒化を行うプラズマ処理として、プラズマ密度が1×1011cm−3以上、好ましくは1×1011cm−3から9×1015cm−3以下であり、マイクロ波(例えば周波数2.45GHz)などの高周波を用いた高密度プラズマ処理を行っても良い。
【0085】
なお元となる金属膜の表面を酸化することで、金属膜と金属酸化膜とが積層した剥離層302を形成するようにしても良いが、金属膜を形成した後に金属酸化膜を別途形成するようにしても良い。
【0086】
例えば金属としてタングステンを用いる場合、スパッタ法やCVD法等により元となる金属膜としてタングステン膜を形成した後、該タングステン膜にプラズマ処理を行う。これにより、金属膜に相当するタングステン膜と、該金属膜に接し、なおかつタングステンの酸化物で形成された金属酸化膜とを、形成することができる。
【0087】
なおタングステンの酸化物はWOxで表される。xは2以上3以下の範囲内にあり、xが2の場合(WO)、xが2.5の場合(W)、xが2.75の場合(W11)、xが3の場合(WO)となる。タングステンの酸化物を形成するにあたりxの値に特に制約はなく、エッチングレート等をもとにxの値を定めれば良い。
【0088】
半導体膜304は、絶縁膜303を形成した後、大気に曝さずに形成することが望ましい。半導体膜304の膜厚は20〜200nm(望ましくは40〜170nm、好ましくは50〜150nm)とする。なお半導体膜304は、非晶質半導体であっても良いし、多結晶半導体であっても良い。また半導体は珪素だけではなくシリコンゲルマニウムも用いることができる。シリコンゲルマニウムを用いる場合、ゲルマニウムの濃度は0.01〜4.5atomic%程度であることが好ましい。
【0089】
なお半導体膜304は、公知の技術により結晶化しても良い。公知の結晶化方法としては、レーザ光を用いたレーザ結晶化法、触媒元素を用いる結晶化法がある。或いは、触媒元素を用いる結晶化法とレーザ結晶化法とを組み合わせて用いることもできる。また、基板300として石英のような耐熱性に優れている基板を用いる場合、950℃程度の高温アニールを行う結晶法と、電熱炉を使用した熱結晶化方法、赤外光を用いたランプアニール結晶化法、触媒元素を用いる結晶化法とを用いても良い。
【0090】
例えばレーザ結晶化を用いる場合、レーザ結晶化の前に、レーザに対する半導体膜304の耐性を高めるために、550℃、4時間の加熱処理を該半導体膜304に対して行なう。そして連続発振が可能な固体レーザを用い、基本波の第2高調波〜第4高調波のレーザ光を照射することで、大粒径の結晶を得ることができる。例えば、代表的には、Nd:YVOレーザ(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)を用いるのが望ましい。具体的には、連続発振のYVOレーザから射出されたレーザ光を非線形光学素子により高調波に変換し、出力10Wのレーザ光を得る。そして、好ましくは光学系により照射面にて矩形状または楕円形状のレーザ光に成形して、半導体膜304に照射する。このときのエネルギー密度は0.01〜100MW/cm程度(好ましくは0.1〜10MW/cm)が必要である。そして、走査速度を10〜2000cm/sec程度とし、照射する。
【0091】
連続発振の気体レーザとして、Arレーザ、Krレーザなどを用いることが出来る。また連続発振の固体レーザとして、YAGレーザ、YVOレーザ、YLFレーザ、YAlOレーザ、フォルステライト(MgSiO)レーザ、GdVOレーザ、Yレーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザなどを用いることが出来る。
【0092】
またパルス発振のレーザとして、例えばArレーザ、Krレーザ、エキシマレーザ、COレーザ、YAGレーザ、Yレーザ、YVOレーザ、YLFレーザ、YAlOレーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、銅蒸気レーザまたは金蒸気レーザを用いることができる。
【0093】
また、パルス発振のレーザ光の発振周波数を10MHz以上とし、通常用いられている数十Hz〜数百Hzの周波数帯よりも著しく高い周波数帯を用いてレーザ結晶化を行なっても良い。パルス発振でレーザ光を半導体膜304に照射してから半導体膜304が完全に固化するまでの時間は数十nsec〜数百nsecと言われている。よって上記周波数を用いることで、半導体膜304がレーザ光によって溶融してから固化するまでに、次のパルスのレーザ光を照射できる。したがって、半導体膜304中において固液界面を連続的に移動させることができるので、走査方向に向かって連続的に成長した結晶粒を有する半導体膜304が形成される。具体的には、含まれる結晶粒の走査方向における幅が10〜30μm、走査方向に対して垂直な方向における幅が1〜5μm程度の結晶粒の集合を形成することができる。該走査方向に沿って連続的に成長した単結晶の結晶粒を形成することで、少なくともTFTのチャネル方向には結晶粒界のほとんど存在しない半導体膜304の形成が可能となる。
【0094】
なおレーザ結晶化は、連続発振の基本波のレーザ光と連続発振の高調波のレーザ光とを並行して照射するようにしても良いし、連続発振の基本波のレーザ光とパルス発振の高調波のレーザ光とを並行して照射するようにしても良い。
【0095】
なお、希ガスや窒素などの不活性ガス雰囲気中でレーザ光を照射するようにしても良い。これにより、レーザ光照射による半導体表面の荒れを抑えることができ、界面準位密度のばらつきによって生じる閾値のばらつきを抑えることができる。
【0096】
上述したレーザ光の照射により、結晶性がより高められた半導体膜304が形成される。なお、予め半導体膜304に、スパッタ法、プラズマCVD法、熱CVD法などで形成した多結晶半導体を用いるようにしても良い。
【0097】
また本実施例では半導体膜304を結晶化しているが、結晶化せずに非晶質半導体膜または微結晶半導体膜のまま、後述のプロセスに進んでも良い。非晶質半導体、微結晶半導体を用いたTFTは、多結晶半導体を用いたTFTよりも作製工程が少ない分、コストを抑え、歩留まりを高くすることができるというメリットを有している。
【0098】
非晶質半導体は、珪素を含む気体をグロー放電分解することにより得ることができる。珪素を含む気体としては、SiH、Siが挙げられる。この珪素を含む気体を、水素、水素及びヘリウムで希釈して用いても良い。
【0099】
次に図5(B)に示すように、半導体膜304を所定の形状に加工(パターニング)し、島状の半導体膜305〜307を形成する。そして、島状の半導体膜305〜307を覆うように、ゲート絶縁膜308を形成する。ゲート絶縁膜308は、プラズマCVD法またはスパッタリング法などを用い、窒化珪素、酸化珪素、窒化酸化珪素または酸化窒化珪素を含む膜を、単層で、または積層させて形成することができる。積層する場合には、例えば、基板300側から酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化珪素膜の3層構造とするのが好ましい。
【0100】
ゲート絶縁膜308は、高密度プラズマ処理を行うことにより島状の半導体膜305〜307の表面を酸化または窒化することで形成しても良い。高密度プラズマ処理は、例えばHe、Ar、Kr、Xeなどの希ガスと酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスとを用いて行う。この場合プラズマの励起をマイクロ波の導入により行うことで、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。このような高密度のプラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体膜の表面を酸化または窒化することにより、1〜20nm、代表的には5〜10nmの絶縁膜が半導体膜に接するように形成される。この5〜10nmの絶縁膜をゲート絶縁膜308として用いる。
【0101】
上述した高密度プラズマ処理による半導体膜の酸化または窒化は固相反応で進むため、ゲート絶縁膜と半導体膜の界面準位密度をきわめて低くすることができる。また高密度プラズマ処理により半導体膜を直接酸化または窒化することで、形成される絶縁膜の厚さのばらつきを抑えることが出来る。また半導体膜が結晶性を有する場合、高密度プラズマ処理を用いて半導体膜の表面を固相反応で酸化させることにより、結晶粒界においてのみ酸化が速く進んでしまうのを抑え、均一性が良く、界面準位密度の低いゲート絶縁膜を形成することができる。高密度プラズマ処理により形成された絶縁膜を、ゲート絶縁膜の一部または全部に含んで形成されるトランジスタは、特性のばらつきを抑えることができる。
【0102】
次に図5(C)に示すように、ゲート絶縁膜308上に導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工(パターニング)することで、島状の半導体膜305〜307の上方にゲート電極309を形成する。本実施例では積層された2つの導電膜をパターニングしてゲート電極309を形成する。導電膜は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等を用いることが出来る。また上記金属を主成分とする合金を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。または、半導体膜に導電性を付与するリン等の不純物元素をドーピングした、多結晶珪素などの半導体を用いて形成しても良い。
【0103】
本実施例では、1層目の導電膜として窒化タンタル膜またはタンタル(Ta)膜を、2層目の導電膜としてタングステン(W)膜を用いる。2つの導電膜の組み合わせとして、本実施例で示した例の他に、窒化タングステン膜とタングステン膜、窒化モリブデン膜とモリブデン膜、アルミニウム膜とタンタル膜、アルミニウム膜とチタン膜等が挙げられる。タングステンや窒化タンタルは、耐熱性が高いため、2層の導電膜を形成した後の行程において、熱活性化を目的とした加熱処理を行うことができる。また、2層の導電膜の組み合わせとして、例えば、n型を付与する不純物がドーピングされた珪素とニッケルシリサイド、n型を付与する不純物がドーピングされたSiとWSix等も用いることが出来る。
【0104】
また、本実施例ではゲート電極309を積層された2つの導電膜で形成しているが、本実施例はこの構成に限定されない。ゲート電極309は単層の導電膜で形成されていても良いし、3つ以上の導電膜を積層することで形成されていても良い。3つ以上の導電膜を積層する3層構造の場合は、モリブデン膜とアルミニウム膜とモリブデン膜の積層構造を採用するとよい。
【0105】
導電膜の形成にはCVD法、スパッタリング法等を用いることが出来る。本実施例では1層目の導電膜を20〜100nmの厚さで形成し、2層目の導電膜を100〜400nmの厚さで形成する。
【0106】
なおゲート電極309を形成する際に用いるマスクとして、レジストの代わりに酸化珪素、酸化窒化珪素等をマスクとして用いてもよい。この場合、パターニングして酸化珪素、酸化窒化珪素等のマスクを形成する工程が加わるが、エッチング時におけるマスクの膜減りがレジストよりも少ないため、所望の幅を有するゲート電極309を形成することができる。またマスクを用いずに、液滴吐出法を用いて選択的にゲート電極309を形成しても良い。
【0107】
なお液滴吐出法とは、所定の組成物を含む液滴を細孔から吐出または噴出することで所定のパターンを形成する方法を意味し、インクジェット法などがその範疇に含まれる。
【0108】
次に、ゲート電極309をマスクとして、島状の半導体膜305〜307に、n型を付与する不純物元素(代表的にはP(リン)またはAs(砒素))を低濃度にドープする(第1のドーピング工程)。第1のドーピング工程の条件は、ドーズ量:1×1015〜1×1019/cm、加速電圧:50〜70keVとしたが、これに限定されるものではない。この第1のドーピング工程によって、ゲート絶縁膜308を介してドーピングがなされ、島状の半導体膜305〜307に、一対の低濃度不純物領域310がそれぞれ形成される。なお、第1のドーピング工程は、pチャネル型TFTとなる島状の半導体膜305をマスクで覆って行っても良い。
【0109】
次に図6(A)に示すように、nチャネル型TFTとなる島状の半導体膜306、307を覆うように、マスク311を形成する。そしてマスク311に加えてゲート電極309をマスクとして用い、島状の半導体膜305に、p型を付与する不純物元素(代表的にはB(ホウ素))を高濃度にドープする(第2のドーピング工程)。第2のドーピング工程の条件は、ドーズ量:1×1019〜1×1020/cm、加速電圧:20〜40keVとして行なう。この第2のドーピング工程によって、ゲート絶縁膜308を介してドーピングがなされ、島状の半導体膜305に、p型の高濃度不純物領域312が形成される。
【0110】
次に図6(B)に示すように、マスク311をアッシング等により除去した後、ゲート絶縁膜308及びゲート電極309を覆うように、絶縁膜を形成する。該絶縁膜は、プラズマCVD法やスパッタリング法等により、珪素膜、酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜または窒化酸化珪素膜や、有機樹脂などの有機材料を含む膜を、単層または積層して形成する。本実施例では、膜厚100nmの酸化珪素膜をプラズマCVD法によって形成する。
【0111】
そして、垂直方向を主体とした異方性エッチングにより、ゲート絶縁膜308及び該絶縁膜を部分的にエッチングする。上記異方性エッチングによりゲート絶縁膜308が部分的にエッチングされて、島状の半導体膜305〜307上に部分的に形成されたゲート絶縁膜313が形成される。また上記異方性エッチングにより絶縁膜が部分的にエッチングされて、ゲート電極309の側面に接するサイドウォール314が形成される。サイドウォール314は、LDD(Lightly Doped drain)領域を形成する際のドーピング用のマスクとして用いる。本実施例ではエッチングガスとしては、CHFとHeの混合ガスを用いる。なお、サイドウォール314を形成する工程は、これらに限定されるものではない。
【0112】
次にpチャネル型TFTとなる島状の半導体膜305を覆うようにマスクを形成する。そして、形成したマスクに加えてゲート電極309及びサイドウォール314をマスクとして用い、n型を付与する不純物元素(代表的にはPまたはAs)を高濃度にドープする(第3のドーピング工程)。第3のドーピング工程の条件は、ドーズ量:1×1019〜1×1020/cm、加速電圧:60〜100keVとして行なう。この第3のドーピング工程によって、島状の半導体膜306、307に、一対のn型の高濃度不純物領域315がそれぞれ形成される。
【0113】
なおサイドウォール314は、後に高濃度のn型を付与する不純物をドーピングし、サイドウォール314の下部に低濃度不純物領域またはノンドープのオフセット領域を形成する際のマスクとして機能するものである。よって、低濃度不純物領域またはオフセット領域の幅を制御するには、サイドウォール314を形成する際の異方性エッチングの条件またはサイドウォール314を形成するための絶縁膜の膜厚を適宜変更し、サイドウォール314のサイズを調整すればよい。
【0114】
次に、マスクをアッシング等により除去した後、不純物領域の加熱処理による活性化を行っても良い。例えば、50nmの酸化窒化珪素膜を形成した後、550℃、4時間、窒素雰囲気中において、加熱処理を行なえばよい。
【0115】
また、水素を含む窒化珪素膜を、100nmの膜厚に形成した後、410℃、1時間、窒素雰囲気中において加熱処理を行ない、島状の半導体膜305〜307を水素化する工程を行なっても良い。或いは、水素を含む雰囲気中で、300〜450℃で1〜12時間の加熱処理を行ない、島状の半導体膜305〜307を水素化する工程を行なっても良い。加熱処理には、熱アニール、レーザーアニール法またはRTA法などを用いることが出来る。加熱処理により、水素化のみならず、半導体膜に添加された不純物元素の活性化も行うことが出来る。また、水素化の他の手段として、プラズマ水素化(プラズマにより励起された水素を用いる)を行っても良い。この水素化の工程により、熱的に励起された水素によりダングリングボンドを終端することができる。
【0116】
上述した一連の工程により、nチャネル型TFT318、319、pチャネル型TFT317が形成される。
【0117】
次に図6(C)に示すように、TFT317〜319を保護するためのパッシベーション膜として機能する絶縁膜320を形成する。絶縁膜320は必ずしも設ける必要はないが、絶縁膜320を形成することで、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物がTFT317〜319へ侵入するのを防ぐことが出来る。具体的に絶縁膜320として、窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素などを用いるのが望ましい。本実施例では、膜厚600nm程度の酸化窒化珪素膜を、絶縁膜320として用いる。この場合、上記水素化の工程は、該酸化窒化珪素膜形成後に行っても良い。
【0118】
次に、TFT317〜319を覆うように、絶縁膜320上に絶縁膜321を形成する。絶縁膜321は、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)、アルミナ等を用いることができる。シロキサン系樹脂は、置換基に水素の他、フッ素、アルキル基、または芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有していても良い。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁膜321を形成しても良い。
【0119】
絶縁膜321の形成には、その材料に応じて、CVD法、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
【0120】
次に島状の半導体膜305〜307がそれぞれ一部露出するように絶縁膜320及び絶縁膜321にコンタクトホールを形成する。そして、導電膜322と、該コンタクトホールを介して島状の半導体膜305〜307に接する導電膜323〜326とを形成する。コンタクトホール開口時のエッチングに用いられるガスは、CHFとHeの混合ガスを用いたが、これに限定されるものではない。
【0121】
導電膜322〜326は、CVD法やスパッタリング法等により形成することができる。具体的に導電膜322〜326として、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)、炭素(C)、珪素(Si)等を用いることが出来る。また上記金属を主成分とする合金を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。導電膜322〜326は、上記金属が用いられた膜を単層または複数積層させて形成することが出来る。
【0122】
アルミニウムを主成分とする合金の例として、アルミニウムを主成分としニッケルを含むものが挙げられる。また、アルミニウムを主成分とし、ニッケルと、炭素または珪素の一方または両方とを含むものも例として挙げることが出来る。アルミニウムやアルミニウムシリコンは抵抗値が低く、安価であるため、導電膜322〜326を形成する材料として最適である。特にアルミニウムシリコン(Al−Si)膜は、導電膜322〜326をパターニングするとき、レジストベークにおけるヒロックの発生をアルミニウム膜に比べて低減することができる。また、珪素(Si)の代わりに、アルミニウム膜に0.5%程度のCuを混入させても良い。
【0123】
導電膜322〜326は、例えば、バリア膜とアルミニウムシリコン(Al−Si)膜とバリア膜の積層構造、バリア膜とアルミニウムシリコン(Al−Si)膜と窒化チタン膜とバリア膜の積層構造を採用するとよい。なお、バリア膜とは、チタン、チタンの窒化物、モリブデンまたはモリブデンの窒化物を用いて形成された膜である。アルミニウムシリコン(Al−Si)膜を間に挟むようにバリア膜を形成すると、アルミニウムやアルミニウムシリコンのヒロックの発生をより防止することができる。また、還元性の高い元素であるチタンを用いてバリア膜を形成すると、島状の半導体膜305〜307上に薄い酸化膜ができていたとしても、バリア膜に含まれるチタンがこの酸化膜を還元し、導電膜323〜326と島状の半導体膜305〜307が良好なコンタクトをとることができる。またバリア膜を複数積層するようにして用いても良い。その場合、例えば、導電膜322〜326をチタン\窒化チタン\アルミニウムシリコン\チタン\窒化チタンの5層構造とすることが出来る。
【0124】
なお、導電膜324、325はnチャネル型TFT318の高濃度不純物領域315に接続されている。導電膜325、326はnチャネル型TFT319の高濃度不純物領域315に接続されている。導電膜323はpチャネル型TFT317の高濃度不純物領域312に接続されている。pチャネル型TFT317は、導電膜323によりその不純物領域312が全て電気的に接続されている。またpチャネル型TFT317は2つのゲート電極309が電気的に接続されており、MOSバラクタとして機能する。
【0125】
次に図7(A)に示すように、導電膜322〜326を覆うように絶縁膜330を形成し、その後、導電膜322の一部が露出するように、該絶縁膜330にコンタクトホールを形成する。そして該コンタクトホールおいて導電膜322と接するように、導電膜331を形成する。導電膜322〜326に用いることが出来る材料であるならば、導電膜331の材料として使用することが出来る。
【0126】
絶縁膜330は、有機樹脂膜、無機絶縁膜またはシロキサン系絶縁膜を用いて形成することができる。有機樹脂膜ならば、例えばアクリル、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルフェノール、ベンゾシクロブテンなどを用いることが出来る。無機絶縁膜ならば酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)に代表される炭素を含む膜などを用いることができる。なおフォトリソグラフィ法で開口部を形成するのに用いるマスクを、液滴吐出法または印刷法で形成することができる。また絶縁膜330はその材料に応じて、CVD法、スパッタ法、液滴吐出法または印刷法でなどで形成することが出来る。
【0127】
次にアンテナとして機能する導電膜332を、その一部が導電膜331と接するように形成する。導電膜332は、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)などの金属を用いて形成することが出来る。導電膜332は、上記金属で形成された膜の他に、上記金属を主成分とする合金で形成された膜、或いは上記金属を含む化合物を用いて形成された膜を用いても良い。導電膜332は、上述した膜を単層で用いても良いし、上述した複数の膜を積層して用いても良い。
【0128】
導電膜332は、CVD法、スパッタリング法、スクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷法、液滴吐出法、ディスペンサ法、めっき法、フォトリソグラフィ法、蒸着法等を用いて形成することが出来る。
【0129】
例えばスクリーン印刷法を用いる場合、粒径が数nmから数十μmの導電性を有する粒子(導電体粒子)を有機樹脂に分散させた導電性のペーストを、絶縁膜330上に選択的に印刷することで導電膜332を形成することができる。導電体粒子は、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、錫(Sn)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)またはチタン(Ti)等を用いて形成することが出来る。導電体粒子は上記金属で形成されたものの他に、上記金属を主成分とする合金で形成されていても良いし、上記金属を含む化合物を用いて形成されていても良い。またハロゲン化銀の微粒子または分散性ナノ粒子も用いることができる。また、導電性ペーストに含まれる有機樹脂として、ポリイミド、シロキサン系樹脂、エポキシ樹脂、珪素樹脂等を用いることが出来る。
【0130】
上記金属の合金の一例として、銀(Ag)とパラジウム(Pd)、銀(Ag)と白金(Pt)、金(Au)と白金(Pt)、金(Au)とパラジウム(Pd)、銀(Ag)と銅(Cu)の組み合わせが挙げられる。また例えば、銅(Cu)を銀(Ag)でコートした導電体粒子なども用いることが可能である。
【0131】
なお導電膜332の形成にあたり、印刷法や液滴吐出法で導電性のペーストを押し出した後に焼成することが好ましい。例えば、導電性のペーストに、銀を主成分とする導電体粒子(例えば粒径1nm以上100nm以下)を用いる場合、150〜300℃の温度範囲で焼成することにより、導電膜332を形成することができる。焼成は、赤外ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプなどを用いたランプアニールで行なっても良いし、電気炉を用いたファーネスアニールで行なっても良い。またエキシマレーザや、Nd:YAGレーザを用いたレーザーアニール法で行なっても良い。また、半田や鉛フリーの半田を主成分とする微粒子を用いてもよく、この場合は粒径20μm以下の微粒子を用いることが好ましい。半田や鉛フリーの半田は、低コストであるといった利点を有している。
【0132】
印刷法、液滴吐出法を用いることで、露光用のマスクを用いずとも導電膜332を形成することが可能になる。また、液滴吐出法、印刷法だと、フォトリソグラフィ法と異なり、エッチングにより除去されてしまうような材料の無駄がない。また高価な露光用のマスクを用いなくとも良いので、半導体装置の作製に費やされるコストを抑えることができる。
【0133】
次に図7(B)に示すように、導電膜331及び導電膜332を覆うように、絶縁膜330上に絶縁膜333を形成する。絶縁膜333は、有機樹脂膜、無機絶縁膜またはシロキサン系絶縁膜を用いて形成することができる。有機樹脂膜ならば、例えばアクリル、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルフェノール、ベンゾシクロブテンなどを用いることが出来る。無機絶縁膜ならば酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)に代表される炭素を含む膜などを用いることができる。なおフォトリソグラフィ法で開口部を形成するのに用いるマスクを、液滴吐出法または印刷法で形成することができる。また絶縁膜333はその材料に応じて、CVD法、スパッタ法、液滴吐出法または印刷法でなどで形成することが出来る。
【0134】
次に図8(A)に示すように、絶縁膜303から絶縁膜333までの、TFTに代表される半導体素子と各種導電膜を含む層(以下、「素子形成層334」と記す)を、基板300から剥離する。本実施例では、第1のシート材335を素子形成層334の絶縁膜333側の面に貼り合わせ、物理的な力を用いて基板300から素子形成層334を剥離する。剥離層302は、全て除去せず一部が残存した状態であっても良い。
【0135】
また上記剥離は、剥離層302のエッチングを用いた方法で行っても良い。この場合、剥離層302が一部露出するように溝を形成する。溝は、ダイシング、スクライビング、UV光を含むレーザ光を用いた加工、フォトリソグラフィ法などにより、形成する。溝は、剥離層302が露出する程度の深さを有していれば良い。そしてエッチングガスとしてフッ化ハロゲンを用い、該ガスを溝から導入する。本実施例では、例えばClF(三フッ化塩素)を用い、温度:350℃、流量:300sccm、気圧:6Torr、時間:3hの条件で行なう。また、ClFガスに窒素を混ぜたガスを用いても良い。ClF等のフッ化ハロゲンを用いることで、剥離層302が選択的にエッチングされ、基板300をTFT317〜319から剥離することができる。なおフッ化ハロゲンは、気体であっても液体であってもどちらでも良い。
【0136】
次に図8(B)に示すように、素子形成層334の上記剥離により露出した面に、第2のシート材336を貼り合わせた後、素子形成層334を第1のシート材335から剥離する。
【0137】
なお基板300上に複数の半導体装置に対応する半導体素子を形成している場合には、素子形成層334を半導体装置ごとに分断する。分断は、レーザ照射装置、ダイシング装置、スクライブ装置等を用いることができる。
【0138】
なお本実施例では、アンテナを半導体素子と同じ基板上に形成する例について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。半導体素子を形成した後、別途形成したアンテナを、信号処理回路と電気的に接続するようにしても良い。この場合、アンテナと信号処理回路との電気的な接続は、異方導電性フィルム(ACF(Anisotropic Conductive Film))や異方導電性ペースト(ACP(Anisotropic Conductive Paste))等で圧着させることにより電気的に接続することが出来る。また、他にも、銀ペースト、銅ペーストまたはカーボンペースト等の導電性接着剤や半田接合等を用いて接続を行うことも可能である。
【0139】
なお、図8(B)に示す半導体装置が完成したら、絶縁膜333を覆うように第3のシート材を貼り合わせ、加熱処理と加圧処理の一方または両方を行って第2のシート材336と第3のシート材を貼り合わせる様にしても良い。第2のシート材336、第3のシート材として、ホットメルトフィルム等を用いることができる。また第3のシート材を用意せずとも、第1のシート材335を剥離せずに、第1のシート材335と第2のシート材336を貼り合わせる様にしても良い。
【0140】
また第2のシート材336、第3のシート材として、静電気等を防止する帯電防止対策を施したフィルム(以下、帯電防止フィルムと記す)を用いることもできる。帯電防止フィルムで封止を行うことによって、外部からの静電気等によって半導体素子に悪影響が及ぶことを抑制することができる。
【0141】
帯電防止フィルムは、帯電を防ぐことが出来る材料(帯電防止剤)がフィルムに練り込まれたタイプ、フィルムそのものが帯電を防ぐ効果を有するタイプ、及び帯電防止剤をフィルムにコーティングしたタイプ等が挙げられる。帯電防止剤は、ノニオンポリマー系、アニオンポリマー系、カチオンポリマー系、ノニオン界面活性剤系、アニオン界面活性剤系、カチオン界面活性剤系、両性界面活性剤系を用いることが出来る。また金属、インジウムと錫の酸化物(ITO)等も帯電防止剤として用いることが出来る。また帯電を防ぐ効果を有するフィルムの材料として、オレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン系樹脂、PMMA樹脂、ポリカーボネート系樹脂、PVCポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、変性PPO樹脂などを用いることが出来る。
【0142】
なお、本実施例は、上記実施の形態または他の実施例と組み合わせて実施することが出来る。
【実施例3】
【0143】
本実施例では、単結晶基板に形成されたトランジスタを用いて、本発明の半導体装置を作製する例について説明する。単結晶基板に形成されたトランジスタは特性のばらつきを抑えることが出来るので、半導体装置に用いるトランジスタの数を抑えることが出来る。
【0144】
まず図9(A)に示すように、半導体基板2300に、半導体素子を電気的に分離するための素子分離用絶縁膜2301を絶縁膜で形成する。素子分離用絶縁膜2301の形成により、トランジスタを形成するための領域である素子形成領域2302と、を互いに電気的に分離することが出来る。
【0145】
半導体基板2300は、例えば、n型またはp型の導電型を有する単結晶シリコン基板、化合物半導体基板(GaAs基板、InP基板、GaN基板、SiC基板、サファイア基板、ZnSe基板等)、貼り合わせ法またはSIMOX(Separation by Implanted Oxygen)法を用いて作製されたSOI(Silicon on Insulator)基板等を用いることができる。
【0146】
素子分離用絶縁膜2301の形成には、選択酸化法(LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法)またはトレンチ分離法等を用いることができる。
【0147】
また本実施例ではn型の導電型を有する単結晶シリコン基板を半導体基板2300として用い、素子形成領域2303にpウェル2304を形成した例を示している。半導体基板2300の素子形成領域2303に形成されたpウェル2304は、p型の導電型を付与する不純物元素を素子形成領域2303に選択的に導入することによって形成することができる。p型を付与する不純物元素としては、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)等を用いることができる。また半導体基板2300としてp型の導電型を有する半導体基板を用いる場合、素子形成領域2302にn型を付与する不純物元素を選択的に導入し、nウェルを形成すれば良い。
【0148】
なお本実施例では、半導体基板2300としてn型の導電型を有する半導体基板を用いているため、素子形成領域2302には不純物元素の導入を行っていない。しかし、n型を付与する不純物元素を導入することにより素子形成領域2302にnウェルを形成してもよい。n型を付与する不純物元素としては、リン(P)やヒ素(As)等を用いることができる。
【0149】
次に図9(B)に示すように、素子形成領域2302、2303を覆うように絶縁膜2305、2306をそれぞれ形成する。本実施例では、半導体基板2300を熱酸化することで素子形成領域2302、2303に形成された酸化珪素膜を、絶縁膜2305、2306として用いる。また、熱酸化により酸化珪素膜を形成した後、窒化処理を行うことによって酸化珪素膜の表面を窒化させて酸窒化珪素膜を形成し、酸化珪素膜と酸窒化珪素膜とが積層された層を絶縁膜2305、2306として用いても良い。
【0150】
他にも、上述したように、プラズマ処理を用いて絶縁膜2305、2306を形成してもよい。例えば、高密度プラズマ処理により半導体基板2300の表面を酸化または窒化することで、素子形成領域2302、2303に、絶縁膜2305、2306として用いる酸化珪素(SiOx)膜または窒化珪素(SiNx)膜を形成することができる。
【0151】
次に図9(C)に示すように、絶縁膜2305、2306を覆うように導電膜を形成する。本実施例では、導電膜として、順に積層された導電膜2307と導電膜2308とを用いた例を示している。導電膜は、単層の導電膜を用いていても良いし、3層以上の導電膜が積層された構造を用いていても良い。
【0152】
導電膜2307、2308として、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等を用いることが出来る。また導電膜2307、2308は、上記金属で形成された膜の他に、上記金属を主成分とする合金で形成された膜、或いは上記金属を含む化合物を用いて形成された膜を用いても良い。または、半導体膜に導電性を付与するリン等の不純物元素をドーピングした、多結晶珪素などの半導体を用いて形成しても良い。本実施例では、窒化タンタルを用いて導電膜2307を形成し、タングステンを用いて導電膜2308を形成する。
【0153】
次に図10(A)に示すように、積層して設けられた導電膜2307、2308を所定の形状に加工(パターニング)することによって、絶縁膜2305、2306上にゲート電極2309、2310を形成する。
【0154】
次に図10(B)に示すように、素子形成領域2302を覆うように、レジストでマスク2311を選択的に形成する。そして、素子形成領域2303に不純物元素を導入する。マスク2311に加えてゲート電極2310もマスクとして機能するので、上記不純物元素の導入により、pウェル2304にソース領域またはドレイン領域として機能する不純物領域2312と、チャネル形成領域2313が形成される。不純物元素は、n型を付与する不純物元素またはp型を付与する不純物元素を用いる。n型を付与する不純物元素としては、リン(P)やヒ素(As)等を用いることができる。p型を付与する不純物元素としては、ボロン(B)やアルミニウム(Al)やガリウム(Ga)等を用いることができる。本実施例では、不純物元素として、リン(P)を用いる。
【0155】
次にマスク2311を除去した後、図10(C)に示すように、素子形成領域2303を覆うようにレジストでマスク2314を選択的に形成する。そして素子形成領域2302に不純物元素を導入する。マスク2314に加えてゲート電極2309もマスクとして機能するので、上記不純物元素の導入により、素子形成領域2302内の半導体基板2300において、ソース領域またはドレイン領域として機能する不純物領域2315と、チャネル形成領域2316が形成される。不純物元素としては、n型を付与する不純物元素またはp型を付与する不純物元素を用いる。n型を付与する不純物元素としては、リン(P)やヒ素(As)等を用いることができる。p型を付与する不純物元素としては、ボロン(B)やアルミニウム(Al)やガリウム(Ga)等を用いることができる。本実施例では、図10(C)で素子形成領域2303に導入した不純物元素と異なる導電型を有する不純物元素(例えば、ボロン(B))を導入する。
【0156】
次に図11(A)に示すように、絶縁膜2305、2306、ゲート電極2309、2310を覆うように絶縁膜2317を形成する。そして絶縁膜2317にコンタクトホールを形成し、不純物領域2312、2315を一部露出させる。次にコンタクトホールを介して不純物領域2312、2315と接続する導電膜2318を形成する。導電膜2318は、CVD法やスパッタリング法等により形成することができる。
【0157】
絶縁膜2317は、無機絶縁膜、有機樹脂膜またはシロキサン系絶縁膜を用いて形成することができる。無機絶縁膜ならば酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)に代表される炭素を含む膜などを用いることができる。有機樹脂膜ならば、例えばアクリル、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルフェノール、ベンゾシクロブテンなどを用いることが出来る。また絶縁膜2317はその材料に応じて、CVD法、スパッタ法、液滴吐出法または印刷法でなどで形成することが出来る。
【0158】
なお本発明の半導体装置に用いるトランジスタは、本実施例において図示した構造に限定されるものではない。例えば、逆スタガ構造であっても良い。
【0159】
次に図11(B)に示すように層間膜2324を形成する。そして層間膜2324をエッチングしコンタクトホールを形成し、導電膜2318の一部を露出させる。層間膜2324は樹脂には限定せず、CVD酸化膜など他の膜であっても良いが、平坦性の観点から樹脂であることが望ましい。また、感光性樹脂を用いて、エッチングを用いずにコンタクトホールを形成しても良い。次に層間膜2324上に、コンタクトホールを介して導電膜2318と接する配線2325を形成する。
【0160】
次にアンテナとして機能する導電膜2326を、配線2325と接するように形成する。導電膜2326は、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)などの金属を用いて形成することが出来る。導電膜2326は、上記金属で形成された膜の他に、上記金属を主成分とする合金で形成された膜、或いは上記金属を含む化合物を用いて形成された膜を用いても良い。導電膜2326は、上述した膜を単層で用いても良いし、上述した複数の膜を積層して用いても良い。
【0161】
導電膜2326は、CVD法、スパッタリング法、スクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷法、液滴吐出法、ディスペンサ法、めっき法、フォトリソグラフィ法、蒸着法等を用いて形成することが出来る。
【0162】
なお本実施例では、アンテナを半導体素子と同じ基板上に形成する例について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。半導体素子を形成した後、別途形成したアンテナを、信号処理回路と電気的に接続するようにしても良い。この場合、アンテナと信号処理回路との電気的な接続は、異方導電性フィルム(ACF(Anisotropic Conductive Film))や異方導電性ペースト(ACP(Anisotropic Conductive Paste))等で圧着させることにより電気的に接続することが出来る。また、他にも、銀ペースト、銅ペーストまたはカーボンペースト等の導電性接着剤や半田接合等を用いて接続を行うことも可能である。
【0163】
上記作製方法を用いることで、本発明の半導体装置は、半導体基板にトランジスタを形成し、その上に薄膜二次電池を有する構成を取り得る。上記構成により、より極薄化、小型化された半導体装置を提供することができる。
【0164】
なお、本実施例は、上記実施の形態または他の実施例と組み合わせて実施することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明の半導体装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の半導体装置の構成を示すブロック図。
【図3】本発明の半導体装置の構成を示すブロック図。
【図4】本発明の半導体装置の斜視図。
【図5】本発明の半導体装置の作製方法を示す図。
【図6】本発明の半導体装置の作製方法を示す図。
【図7】本発明の半導体装置の作製方法を示す図。
【図8】本発明の半導体装置の作製方法を示す図。
【図9】本発明の半導体装置の作製方法を示す図。
【図10】本発明の半導体装置の作製方法を示す図。
【図11】本発明の半導体装置の作製方法を示す図。
【符号の説明】
【0166】
101 半導体装置
102 CPU
103 マスクROM
104 SRAM
105 コントローラ
106 ロジック部
107 アンテナ
108 共振回路
109 電源回路
110 リセット回路
111 クロック生成回路
112 復調回路
113 変調回路
114 電源管理回路
115 アナログ部
116 CPUIF
117 制御レジスタ
118 コード抽出回路
119 符号化回路
120 受信信号
121 送信信号
122 受信データ
123 送信データ
124 アンテナ回路
125 無線蓄電手段
126 電源部
127 蓄電装置
201 半導体装置
202 CPU
203 マスクROM
205 コントローラ
206 ロジック部
207 アンテナ
208 共振回路
209 電源回路
210 リセット回路
211 クロック生成回路
212 復調回路
213 変調回路
214 電源管理回路
215 アナログ部
216 CPUIF
217 制御レジスタ
218 コード抽出回路
219 符号化回路
220 受信信号
221 送信信号
222 受信データ
223 送信データ
224 アンテナ回路
225 無線蓄電手段
226 電源部
227 蓄電装置
300 基板
301 絶縁膜
302 剥離層
303 絶縁膜
304 半導体膜
305 半導体膜
306 半導体膜
308 ゲート絶縁膜
309 ゲート電極
310 低濃度不純物領域
311 マスク
312 不純物領域
313 ゲート絶縁膜
314 サイドウォール
315 不純物領域
317 TFT
317 TFT
318 TFT
319 TFT
320 絶縁膜
321 絶縁膜
322 導電膜
323 導電膜
324 導電膜
325 導電膜
330 絶縁膜
331 導電膜
332 導電膜
333 絶縁膜
334 素子形成層
335 シート材
336 シート材
500 半導体装置
520 基板
521 カバー材
522 アンテナ回路
523 アナログ部
524 ロジック部
525 無線蓄電手段
526 SRAM
527 CPU
800 半導体装置
801 アンテナ回路
802 信号処理回路
803 蓄電装置
820 電源部
821 整流回路
822 充電制御回路
823 放電制御回路
824 スイッチ制御回路
830 ロジック部
831 復調回路
832 アンプ
833 論理回路
834 制御レジスタ
835 CPUIF
836 SRAM
837 マスクROM
838 CPU
839 論理回路
840 アンプ
841 変調回路
842 アンテナ
843 共振回路
204a SRAM
204b SRAM
2300 半導体基板
2301 素子分離用絶縁膜
2302 素子形成領域
2303 素子形成領域
2304 pウェル
2305 絶縁膜
2307 導電膜
2308 導電膜
2309 ゲート電極
2310 ゲート電極
2311 マスク
2312 不純物領域
2313 チャネル形成領域
2314 マスク
2315 不純物領域
2316 チャネル形成領域
2317 絶縁膜
2318 導電膜
2324 層間膜
2325 配線
2326 導電膜
822a レギュレータ
822b スイッチ
823a レギュレータ
823b スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SRAMと、前記SRAMからデータを読み出す中央処理装置と、アンテナ回路が受信する電力を蓄えることができる無線蓄電手段とを有し、
前記無線蓄電手段から前記SRAMに前記電力が供給されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
SRAMと、前記SRAMからデータを読み出す中央処理装置と、前記SRAMに電力を供給する無線蓄電手段と、を有し、
前記無線蓄電手段は、アンテナ回路が受信した交流信号を直流信号に変換する電源部と、蓄電装置とを有し、
前記電源部は前記直流信号を用いて前記蓄電装置における充電または放電を制御することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
SRAMと、前記SRAMからデータを読み出す中央処理装置と、前記SRAMに電力を供給する無線蓄電手段と、を有し、
前記無線蓄電手段は、交流信号を受信するアンテナ回路と、前記交流信号を直流信号に変換する電源部と、蓄電装置とを有し、
前記電源部は前記直流信号を用いて前記蓄電装置における充電または放電を制御することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項において、
前記蓄電手段は、バッテリーまたはコンデンサを有することを特徴とする半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−165744(P2008−165744A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302541(P2007−302541)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】