説明

半導体製造装置用保持体

【課題】 被処理物保持面の加工が安価で部品コストの低減を図ることができ、且つ被処理物保持面における均熱性に優れ、必要に応じて急速昇温及び急速冷却が可能な半導体製造装置用の保持体を提供する。
【解決手段】 抵抗発熱体7を有する板状でAlN等からなるセラミックスヒータ5の上に、被処理物9を保持するAl等からなる金属製保持部10を備えている。金属製保持部10内には、冷却媒体が中央付近から放射状に移動し、外周縁に排気されるように流路12が形成されている。この保持体10は、コータデベロッパでのフォトリソグラフィー用樹脂の加熱硬化又は半導体絶縁膜の加熱焼成に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用の保持体に関するものであり、特にコータデベロッパでのフォトリソグラフィー用樹脂膜の加熱硬化や、Low−k膜のような低誘電率の絶縁膜の加熱焼成に用いられる保持体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造において、シリコンウエハ上のAl回路やCu回路はAlスパッタやCuメッキ等によって形成するが、近年の半導体の高集積化や小型化に伴って配線幅及び配線間幅は年々細くなってきている。
【0003】
AlやCuの配線パターンはフォトリングラフィー技術により形成される。例えばAl膜上に樹脂を均一に塗布した後、ステッパと呼ばれる露光装置で樹脂膜にパターンが刷り込まれ、樹脂膜を加熱硬化させて不要部分を除去することにより、配線用のAl膜上に抜きパターン樹脂膜を形成する。その後、エッチング装置で抜きパターン部分に沿ってAl膜をエッチングし、樹脂膜を除去することでパターン化されたAl配線が得られる。
【0004】
また、配線同士が近づくと配線間の信号の相互作用が生じるため、配線間や積層した層間は低誘電率の絶縁材料で埋めることにより、配線間の相互作用を無くすことが必要である。従来このための絶縁材料として酸化ケイ素が用いられていたが、更に誘電率の低い絶縁膜としてLow−kと呼ばれる材料が用いられるようになってきた。Low−kの絶縁膜は、その材料を溶剤に溶いてスラリー状にし、これをスピンコートして均一膜を形成し、上記と同様にフォトリソグラフィー技術によりパターン形成した後、ヒータで加熱焼成して固化させる方法により形成されている。
【0005】
上記のようなフォトリソグラフィー用樹脂膜の加熱硬化や、Low−k膜のような低誘電率の絶縁膜の加熱焼成は、コータデベロッパと呼ばれる装置において行われるが、そのヒータとして従来は抵抗発熱体であるSUS箔を石英板でサンドイッチしたヒータを用いていた。このヒータの裏面に抵抗発熱体の電極端子を設け、引出線を接続して系外の電源装置から電力を供給していた。
【0006】
一方、熱伝導率が高いセラミックス中に抵抗発熱体を埋設したヒータを用いると、抵抗発熱体で発生した熱がセラミックス内で拡散し、ウエハ保持面において均熱性が確保できる。また、更に耐熱性の高いセラミックスを用いると、耐久性の優れたヒータを構成できる。そのため、CVD装置においては、高熱伝導率で高耐食性のAlNやSi中にMoコイルを埋設したセラミックスヒータを用いて、ウエハを保持して直接加熱する保持体としていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、半導体製造におけるコスト低減のためSiウエハの大型化が進められており、8インチから12インチへと移行しつつある。そのため、フォトリソグラフィー用樹脂の加熱硬化やLow−kの加熱焼成に用いるコータデベロッパでは、ウエハを保持して加熱する保持体に対して、更なる均熱性の向上が要望されている。これらの用途に対する保持体の被処理物保持面における均熱性は、±1.0%以内が必要とされ、更に望むらくは±0.5%以内が要求されている。
【0008】
また、被処理物のスループットを向上させることも求められている。しかし、従来のセラミックスヒータからなる保持体では、抵抗発熱体で発生した熱をできるだけ水平方向に拡散させて被処理物保持面での均熱を上げるために、保持体を厚く形成していた。そのためセラミックス製の保持部の熱容量が大きく、急速昇温及び急速冷却ができなかった。無理やり高電力を供給して急速昇温したり、冷却装置を用いて急速冷却しようとすると、保持体に熱応力が掛かって脆性材料であるセラミックスが割れるというトラブルが発生していた。
【0009】
更に、セラミックスヒータからなる保持体の被処理物保持面には、各種の加工が行われている。例えば、ウエハ等の被処理物を置いて均一に加熱するため、被処理物を置く際ずれないように、被処理物保持面と保持体をチャンバーに支持している支持部材端面との平行度が必要である。そのため、セラミックスからなる保持体の被処理物保持面を高精度に平面加工していた。被処理物のずれ防止のために、被処理物保持面の外周縁に厚さ0.4〜0.8mm程度のマウントを設ける加工も行っていた。
【0010】
また、ウエハ等の被処理物の表面が貼り付いて脱粒を起こす等の問題が発生することを防ぐために、被処理物保持面にディンプル加工など、セラミックスの加工としては非常に難しく高価な加工を施していた。このような保持体の被処理物保持面の加工は、セラミックスであるため難しく且つ加工費が非常に高価であり、部品コストの中でかなりの比重を占めていた。そのため、これらの被処理物保持面の加工を安価に行う方法も求められていた。
【0011】
本発明は、このような従来の事情に鑑み、被処理物保持面の加工が安価で、部品コストの低減を図ることができ、且つ被処理物保持面における均熱均熱性に優れ、スループットを上げるため急速昇温及び急速冷却が可能な半導体製造装置用の保持体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明が提供する半導体製造装置用保持体は、抵抗発熱体を有する板状のセラミックスヒータの上に、被処理物を保持する金属製保持部を備えたことを特徴とする。
【0013】
上記本発明の半導体製造装置用保持体においては、前記セラミックスヒータが、AlN、SiC、Al、Siから選ばれたセラミックスで構成されていることを特徴とする。また、前記金属製保持部が、熱伝導率50W/mK以上の金属で構成されていることを特徴とする。
【0014】
また、上記本発明の半導体製造装置用保持体においては、前記金属製保持部の表面に、耐熱及び耐食性のコート層を有することを特徴とする。前記コート層は、ダイヤモンド状炭素、酸化物、窒化物、炭化物から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0015】
更に、上記本発明の半導体製造装置用保持体においては、前記金属製保持部内に冷却媒体を流す流路が形成されていることを特徴とする。前記冷却媒体は金属製保持部内の中央付近に供給され、金属製保持部内を放射状に延びる複数の放射流路に添って移動し、外周縁に排気されることが好ましい。
【0016】
上記本発明の半導体製造装置用保持体は、コータデベロッパでのフォトリソグラフィー用樹脂の加熱硬化又は半導体絶縁膜の加熱焼成に用いられることを特徴とするものである。また、本発明は、上記本発明の半導体製造装置用保持体を用いた半導体製造装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被処理物保持面の加工が安価であって部品コストの低減を図ることができ、しかも被処理物保持面における均熱性に優れ、必要に応じて冷却媒体用の流路を設けることができ、急速昇温及び急速冷却が可能な半導体製造装置用の保持体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における金属製保持部の作製に用いる冷却媒体用の流路を設けた2枚の金属板を示す概略の斜視図である。
【図2】図1の2枚の金属板を接合した状態を示す概略の斜視図である。
【図3】図1の2枚の金属板を接合し、流路の出入口にパイプを取り付けた本発明における金属製保持部の一具体例を示す概略の斜視図である。
【図4】本発明における金属製保持部をセラミックスヒータ上に載せる状態を示す概略の斜視図である。
【図5】本発明による別の金属製保持部を用いた半導体製造装置用保持体を示す概略の断面図である。
【図6】本発明による別の金属製保持部を示す概略の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一般に、絶縁性のセラミックス中に抵抗発熱体を埋設し、裏面にヒータ回路を形成するセラミックスヒータの場合、抵抗発熱体で発生した熱は被処理物までの間で平面方向に拡散して均一化する。このような均熱を必要とするのは被処理物保持面であるため、被処理物保持面は高熱伝導率の材料にする必要がある。
【0020】
しかし、AlやSiの熱伝導率は20W/mK程度であり、高熱伝導率タイプのSiでも100W/mK程度、高熱伝導率のセラミックスとされるAlNやSiCでも100〜200W/mK程度である。このため、被処理物保持表面をセラミックスで構成すると、セラミックスの熱伝導率が律速となり、被処理物保持面の均熱性に限界があった。
【0021】
一方、金属においては、Cuが403W/mK、Alが236W/mKと、安価な金属がAlN等の高熱伝導率セラミックスを凌駕する高熱伝導率を有している。そこで、本発明においては、熱を発生する部分には抵抗発熱体を有するセラミックスヒータを用い、その上に熱媒体として高熱伝導率の金属板の保持体を載置することによって、簡単に且つ安価に被処理物保持面を構成することができ、その被処理物保持面の均熱性を向上させ得ることを見出した。
【0022】
セラミックスヒータを構成するセラミックスは、耐熱性、耐食性、熱伝導率の観点から、AlN、SiC、Si、Alが好ましく、その中でもAlNが最も好ましい。また、セラミックスヒータに設ける抵抗発熱体としては、耐熱性や発熱効率等を考えると、W、Mo、Pt、Ag、Pd、Ni、Crから選ばれた少なくとも1種の金属を主成分とすることが好ましい。
【0023】
セラミックスヒータ上に設ける金属製保持部は、被処理物保持面の均熱性を高める点から、熱伝導率50W/mK以上の金属で構成することが好ましい。具体的には、Cu、Al、W、Mo、Ag、Ni、Mg、Si、Fe、Coから選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0024】
本発明に係わる金属製保持部は半導体製造装置全般に用いられるが、比較的高熱伝導率タイプの金属を腐食するような反応ガスは用いられないコータデベロッパやLow−k膜の熱処理等において、特に好適である。高熱伝導率の金属が不純物として嫌われる反応装置への適用は難しいが、不純物とならない耐熱及び耐食性のコート層を設ければ、適用が可能である。このようなコート層としては、ダイヤモンド状炭素(DLC)、酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物から選ばれた少なくとも1種がある。
【0025】
従来のセラミックスのみで構成した保持体の場合、セラミックスは複雑な加工を行うことが難しいので、被処理物保持面等の加工が高価であった。また、セラミックスは脆性材料であるため、急速な昇温や冷却を行うと熱応力で割れてしまうという問題がある。このため、被処理物の急速冷却を行うことが難しく、スループットを上げることが困難であった。
【0026】
これに対して本発明では、被処理物の保持体を金属で構成するため、被処理物保持面の面加工や外周部のマウント加工やディンプル等の複雑な加工が簡単であるばかりか、金属はセラミックスに比べはるかに靭性が高いため、冷却媒体を流して強制冷却しても割れることがないため、被処理物を急速冷却することが可能となり、スループットを上げることができる。また、冷却媒体の流路を断面方向で被処理物保持面の近くに設けることにより、セラミックスヒータへの熱応力負荷を少なくしながら効率的に被処理物を冷却することができる。しかも、被処理物を冷却してもセラミックスヒータは未だ蓄熱しているので、次に昇温する際のラグタイムが少なくて済む等の利点がある。
【0027】
また、被処理物の加熱を均一に行うためには、セラミックスヒータの抵抗発熱体で発生した熱が、被処理物に達するまでの間にできるだけ水平方向に拡散することが望ましい。そのためにはセラミックスを厚くする必要があるが、その場合には熱容量が大きくなるため、なかなかヒータが冷めず急速冷却が困難であった。また、セラミックスを厚くして急速な昇温や冷却を行うと、セラミックスに大きな熱勾配ができてしまうため割れが発生しやすかった。
【0028】
本発明では、抵抗発熱体を設けるセラミックスヒータはできるだけ薄くし、好ましくは10mm以下の厚みとすることにより、急速冷却を行っても熱勾配がつき難くなるため、急速な昇温や冷却によってもセラミックスが割れ難くなる。しかも、熱の水平方向への拡散は金属製保持部内で行うことができるため、被処理物の均一加熱と急速冷却を同時に実現することができる。また、高価なセラミックスを小さくすることができるため、コストも低く抑えられる。
【0029】
スループットを改善する観点から、金属製保持部は10℃/分以上の速度で昇温又は冷却可能であることが好ましい。このような被処理物の急速冷却のため、金属製保持部に冷却媒体を流すための流路を形成することができる。流路の形成は、簡単な貫通穴ならドリルで穴開けしたり、半割状の溝を加工した板を2枚あるいは溝加工した板に平板を溶接して貼り合わせたり、パイプを差し込んだりして、簡単に作製することができる。
【0030】
例えば、図1に示すように、2枚の金属板1a、1bの片面に冷却媒体を流すための連続した流路2を形成し、外周面に流路2の出入口となる開口3a、3bを設ける。この2枚の金属板1a、1bを、図2に示すように、重ね合わせて接合する。更に、図3に示すように、外周面の出入口3にパイプ4を連結して、内部に流路を有する金属製保持部1とする。この金属製保持部1は、図4に示すように、筒状支持部材6に支持されたセラミックスヒータ5の上に載置される。尚、効率良く急速冷却を行うためには、図1に示すように、被処理物保持面を構成する方の金属板1bを薄くして、その被処理物保持面の近くに流路2を配置することが好ましい。
【0031】
特に、冷却が効率的で製作が容易な構造として、図5及び図6のような金属製保持部が好ましい。即ち、この金属保持体は2枚に分けて作製する。片方の金属保持体11a(又は他方の金属保持体11b)に、中央部から放射状に延びる複数の放射流路12を形成し、この金属保持体11a上に他方の金属保持体11bを載置する。冷却媒体は、チャンバー8の底部、セラミックスヒータ5及び金属保持体11aの中央付近を貫通したパイプ13を通して、金属製保持部11aと金属製保持部11bの間に供給され、複数の放射状流路12に添って移動し、外周縁から排出される。尚、図5の9は被処理物である。
【0032】
通路に流す冷却媒体は、ガスであっても、液体であっても良い。しかし、金属製保持部を高温で使用しながら冷却する場合には、液体は突沸して不安定になる場合があるから、冷却媒体はガスである方が好ましい。一方、冷却媒体が液体である方が、冷却効率はより高くなる。冷却媒体としてのガスは、冷却効率、安定性、コストの観点から、空気、N、Ar、Heガスから選ばれた少なくとも1種であることが望ましい。また、冷却媒体としての液体としては、水、ハロゲン化カーボン等を使用することができる。
【0033】
金属製保持部を高熱伝導率の金属で構成したり、金属製保持部を厚く形成したりすることにより、被処理物保持面の均熱性を向上させることができ、特に±1.0%以下の均熱性になるようにすると、被処理物上での反応や熱処理が均一に行えるため好ましい。また、セラミックスヒータに埋設する抵抗発熱体を2ゾーン以上に分割し、TCで適時温度測定しながら場所毎に個別に温度制御すれば、場所による温度ばらつきを補正できるため好ましい。
【0034】
金属製保持部とセラミックスヒータを接合しないことによって、金属とセラミックスの熱膨張率差に基づく熱応力が発生せず、セラミックスヒータの割れ等の発生を防止することができる。また、金属製保持部とセラミックスヒータの接触面をそれぞれ鏡面に磨いて接触させることにより、断熱層がなくなり、熱伝達が良くなるので、熱応答性が向上する。更に、金属製保持部とセラミックスヒータの間にガスを流せる機構を備えることにより、減圧下での昇温時に断熱層を作ることがなく、被処理物保持面を急速昇温することができる。
【0035】
上記した本発明の金属製保持部は、ウエハ等の被処理物を保持すると同時に、急速な加熱昇温と急速な冷却が可能であり、高い均熱性を有するため、高性能な半導体製造装置用保持体として好適である。特に、コータデベロッパでのフォトリソグラフィー用樹脂の加熱硬化、又は半導体絶縁膜の加熱焼成に用いられる半導体製造装置用保持体として極めて有効である。
【実施例】
【0036】
[実施例1]
窒化アルミニウム(AlN)粉末に、焼結助剤として0.5重量%のイットリア(Y)と有機バインダーを添加して分散混合した後、スプレードライにより造粒した。この造粒粉末を、焼結後に直径350mm×厚さ2.5mmの円板状となる寸法に、一軸プレスにより2枚成形した。
【0037】
これら2枚の円板状の成形体を900℃の窒素気流中で脱脂し、更に窒素気流中にて1900℃で5時間燒結した。得られたAlN焼結体の熱伝導率は180W/mKであった。これらの焼結体の全表面をダイヤモンド砥粒で研磨した。
【0038】
W粉末に焼結助剤とエチルセルロース系のバインダーを添加混練したWスラリーを用いて、円板状のAlN焼結体の片方に抵抗発熱体回路を印刷した。ヒータゾーンは1ゾーン制御用の回路とした。これを900℃の窒素気流中で脱脂した後、1850℃で1時間加熱して焼き付けた。
【0039】
残りの円板状の焼結体上には、接合用のガラスにエチルセルロース系のバインダーを添加混練したスラリーを塗布し、900℃の窒素気流中で脱脂した。この接合用ガラス面と上記焼結体の抵抗発熱体面とを重ね合わせ、ずれ防止のために50g/cmの荷重を掛けた状態で、1800℃で2時間加熱して接合することにより、内部に抵抗発熱体が埋設されたセラミックスヒータ(直径350mm×厚さ5mm)を作製した。
【0040】
このセラミックスヒータの裏面に、抵抗発熱体のW電極端子を接合し、更に系外の電源に接続されるNiの引出線を接合した。このセラミックスヒータを、外径100mm×内径80mm×100mmのAl製パイプからなる筒状支持部材上に載せ、チャンバー8内に支持した。W電極端子及びNi引出線は、この筒状支持部材内に収納した。
【0041】
一方、直径350×厚さ10mmの2枚のAl板に、図1に示すように、冷却媒体を流すための流路を形成した後、2枚のAl板を溶接して金属製保持部とした。このAlからなる金属製保持部を、上記のAlN製のセラミックスヒータ上に接合することなく載置した。
【0042】
チャンバー内をN雰囲気で0.1torrの減圧とし、系外からセラミックスヒータに200Vの電圧で電力を供給し、その被処理物保持面を500℃まで昇温した。被処理物保持面全面の均熱性を測定したところ、500℃±0.40%であった。その後、電源をOFFにし、金属製保持部の流路に空気を流して冷却したところ、冷却速度20℃/分で降温し、且つセラミックスヒータに割れ等の問題は全く生じなかった。
【0043】
上記試料1と同じAlN製のセラミックスヒータと筒状支持部材を用い、その上に上記試料1と同じ構造の金属製保持部を載置したが、試料ごとに金属製保持部の材質をAl、Cu、W、Mo、Ag、Ni、Ti、SUS、Mg、Si、Fe、Zr、Coにそれぞれ変更した。各試料について上記と同じ評価を行った結果を、試料1の結果と併せて下記表1に示した。
【0044】
【表1】

【0045】
[実施例2]
上記実施例1と同じAlN製のセラミックスヒータと、Al製の筒状支持部材を用い、その上に載置する金属製保持部はAl製で実施例1と同じ構造を有するが、その表面上にそれぞれDLC、Al、AlN、AlFを蒸着してコート層を形成した。
【0046】
各試料について、金属製保持部の流路に空気を流して冷却したところ、冷却速度20℃/分で降温し、且つセラミックスヒータに割れ等の問題は全く生じなかった。また、上記実施例1と同じ評価を行うと共に、加熱における被処理物保持面の表面粗さRaを測定し、その結果を試料1の場合と共に下記表2に示した。
【0047】
【表2】

【0048】
[実施例3]
上記実施例1と同じAlN製のセラミックスヒータを用いたが、その厚みをそれぞれ2、7、10mmに変化させた。各セラミックスヒータは、実施例1と同じAl製の筒状支持部材で支持し、その上にAl製で実施例1と同じ構造を有する金属製保持部を載置した。
【0049】
各試料について、金属製保持部の流路に空気を流して冷却したところ、冷却速度は下記表3のとおりであったが、セラミックスヒータに割れ等の問題は全く生じなかった。また、実施例1と同じ評価を行い、その結果を試料1(セラミックスヒータの厚さ5mm)の場合と共に下記表3に示した。
【0050】
【表3】

【0051】
[実施例4]
炭化ケイ素(SiC)粉末に、焼結助剤として2重量%の炭化ホウ素(BC)を加えて分散混合した後に、スプレードライにより造粒した。この造粒粉末を、焼結後に直径350mm×厚さ2.5mmとなる寸法に一軸プレスにより2枚成形した。これをアルゴン中にて800℃で脱脂し、更にアルゴン中にて2000℃で6時間焼結した。得られたSiC焼結体の熱伝導率は150W/mKであった。これを用いて、実施例1と同様に、試料22のセラミックスヒータを作製した。
【0052】
次に、窒化ケイ素(Si)粉末に、焼結助剤として2重量%のイットリア(Y)と1重量%のアルミナ(Al)を加えて分散混合した後、スプレードライにより造粒した。この造粒粉末を、焼結後に直径350mm×厚さ2.5mmとなる寸法に一軸プレスにより2枚成形した。これをN中にて900℃で脱脂後、N中にて1650℃で5時間焼結した。得られたY焼結体の熱伝導率は30W/mKであった。これを用いて、W焼成の焼結助剤に低融点のものを用いて1600℃で焼成した以外は、実施例1と同様に、試料23のセラミックスヒータを作製した。
【0053】
更に、酸化アルミニウム(Al)粉末に、焼結助剤として2重量%のマグネシア(MgO)を加えて分散混合した後、スプレードライにより造粒した。この造粒粉末を、焼結後に直径350mm×厚さ2.5mmとなる寸法に、一軸プレスにより2枚成形した。これを大気中にて1500℃で3時間焼結した。得られたAl焼結体の熱伝導率は20W/mKであった。これを用いて、W焼成の焼結助剤に低融点のものを用いて1450℃で焼成した以外は、実施例1と同様に、試料24のセラミックスヒータを作製した。
【0054】
これらの試料22〜24のセラミックスヒータを用い、また上記実施例1と同じAlの金属製保持部を使用して、実施例1と同様の評価を行った。その結果を、試料1の場合と共に下記表4に示した。
【0055】
【表4】

【0056】
[実施例5]
実施例1と同じ方法でAlN焼結体を製造した。その上に、それぞれMo、Pt、Ag−Pd、Ni−Crを金属主成分とし、焼結助剤とバインダーを添加したスラリーを用いて回路を形成し、窒素中にて800℃で脱脂後、それぞれ窒素中にて1500℃、890℃、850℃、800℃で焼成して、抵抗発熱体を形成した。
【0057】
上記以外は実施例1と同じ方法でセラミックスヒータを作製し、金属製保持部は実施例1と同じ構造でAlを用いて作製した。各試料について、実施例1と同じ評価を行ったところ、下記表5に示す結果が得られた。
【0058】
【表5】

【0059】
[実施例6]
上記実施例1と同じAlN製のセラミックスヒータ、及びAlからなる金属製保持部を用いた。実施例1と同様にして評価を行ったが、その際の冷却媒体としてN、Ar、He、水、ガルデンを用いた。得られた結果を、試料1の場合と共に、下記表6に示した。
【0060】
【表6】

【0061】
[実施例7]
抵抗発熱体のヒータゾーン、金属製保持部の材質、冷却媒体用の流路の有無、セラミックスヒータと金属製保持部の接合の有無等を変えた以外は上記実施例1と同様にして、下記試料34〜37の保持体を作製した。
【0062】
即ち、試料34では、実施例1と同じAlN製のセラミックスヒータを用い、金属保持部は実施例1と同じ構造であるがWで作製した。これらのセラミックスヒータと金属製保持部を、ガラスを塗布して窒素中にて700℃で脱脂した後、窒素中にて800℃で接合した。
【0063】
試料35では、実施例1と同じAlN製のセラミックスヒータを用い、金属保持部は実施例1と同じ構造でAl製であるが、冷却媒体用の流路を形成しなかった。また、試料36は、抵抗発熱体を2ゾーンにし、それぞれで制御できるようにした以外は、実施例1と同じAlN製のセラミックスヒータを製造した。金属製保持部は実施例1と同じ構造でAl製とした。
【0064】
更に、試料37では、実施例1と同じAlN製のセラミックスヒータを用いた。金属製保持部は図5に示すように2枚セットになったAl製であり、片方に図6に示す放射状流路を形成し、これら2枚を図5に示すように接合することなく載置して保持体とした。
【0065】
これらの各試料について、実施例1と同様の評価を行った。ただし、流路を有しない試料35では冷却媒体での冷却を行わず、その他の流路を有する試料では冷却媒体として空気を用いて冷却した。得られた結果を下記表7に示した
【0066】
【表7】

【符号の説明】
【0067】
1 金属製保持部
1a、1b、11a、11b 金属板
2、12 流路
4 パイプ
5 セラミックスヒータ
6 筒状支持部材
7 抵抗発熱体
8 チャンバー
9 被処理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2ゾーン以上に分割された抵抗発熱体を有する板状のセラミックスヒータの上に、耐熱性及び耐食性を有するコート層が被覆された、被処理物を保持する金属製保持部を備えたことを特徴とする半導体製造装置用保持体。
【請求項2】
前記金属製保持部が銅またはアルミニウムからなり、前記セラミックスヒータの厚みが10mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の半導体製造装置用保持体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体製造装置用保持体を用いたことを特徴とする半導体製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−283364(P2010−283364A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161097(P2010−161097)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【分割の表示】特願2006−303543(P2006−303543)の分割
【原出願日】平成14年3月22日(2002.3.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】