説明

反射型液晶表示装置およびその製造方法ならびにパネル

【課題】 画素電極間からの侵入光が基板に到達するのを防止し、表示品質を向上させることが可能な反射型液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 電極基板4に、第1誘電体部47および第2誘電体部48を形成する。これらの誘電体部における屈折率の差を利用し、画素電極44間への侵入光L2を、第1誘電体部47内に封じ込める。侵入光L2がSi基板41へ到達するのを防止し、Si基板41に対する侵入光L2の影響を除去することができる。よって、スイッチング素子46の誤動作などを防ぎ、表示品質を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の画素電極を有する電極基板を備えた反射型液晶表示装置およびその製造方法、ならびにこの反射型液晶表示装置に用いるのに好適なパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プロジェクタなどに用いる液晶表示装置として、アクティブマトリクス型の反射型液晶表示装置が知られている。図13は、従来の反射型液晶表示装置の断面構造を表すものである。この反射型液晶表示装置91は、透明基板92と、複数の画素電極を有する電極基板94との間に、液晶層93を備えている。透明基板92は、ガラス基板921上に、対向電極としての透明電極922を形成したものである。また、電極基板94は、シリコン(Si)基板941上に、スイッチング素子946と、画素電位保持容量945と、配線層942と、層間絶縁層943と、複数の画素電極944とを形成したものである。画素電位保持容量945およびスイッチング素子926は、コンタクト部CTにより各画素電極944と電気的に接続され、各画素を駆動する役割を果たすものである。
【0003】
このような構成の反射型液晶表示装置91では、画像を表示する際、外部からの入射光L3が、透明基板92を介して液晶層93中に入射し、画素電極944で反射されると共に、その後さらに液晶層93および透明電極92を通過して、外部に出射される。つまり、各画素電極944は、各画素に電圧を印加すると共に、入射光を反射する役割も果たしている。この反射型液晶表示装置91では、透過型の液晶表示装置とは異なり、画素電極944の下層にスイッチング素子926や画素電位保持容量945を配置することができ、画素の高密度化が可能になる。
【0004】
このような利点を有する反射型液晶表示装置ではあるが、明るい表示画像を得る目的で一般に非常に強い照射光が用いられることから、以下のような問題が生じていた。
【0005】
つまり、照射光には、上記のように画素電極924で反射される光(入射光L4)の他に、画素電極944のすき間から電極基板94の内部へ侵入してしまう光(侵入光L5)も、一部には存在する。このような侵入光も、大部分は、画素電極944の裏面や配線層942で反射されると共に層間絶縁膜943を伝播していくことで減衰され、最終的にはSi基板941に到達する前に吸収されてしまう。しかしながら、図のように一部の侵入光には、減衰されながらも、Si基板941に到達してしまうものもある。侵入光L5がSi基板941に入射すると、電子とホールとに分離し、電荷キャリアを発生する。そして、電荷キャリアは電位保持容量945を介してスイッチング素子946の誤動作を引き起こし、その結果、表示品質を劣化させてしまう。したがって、非常に強い照射光を用いると、表示品質劣化の原因となる侵入光L5の光量も増加してしまい、問題となっていた。
【0006】
そこで、配線層942に遮光機能を持たせて遮光層として用いたり、画素電極944と配線層942との間に光吸収効果の優れた窒化チタン(TiN)の薄膜を設けたりするなどして、侵入光L5が基板941へ到達するのを抑制する試みがなされている。
【0007】
例えば、特許文献1には、このような侵入光の経路を狭めるガード金属層を、画素電極と遮光層との間、または遮光層とスイッチングトランジスタとの間に設けるようにする技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−279953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらの技術では、遮光用の専用部材である遮光層やガード金属層を設け、侵入光の影響を考慮した設計をする必要があるので、設計の自由度が低下してしまい、簡易に実現するのは困難であった。また、このような専用部材を設けることにより、部材コストが高くなってしてしまうという問題もあった。さらに、これらの技術では、あくまでも侵入光が基板に到達するのを抑制するにとどまり、完全に防止するのは困難であった。
【0010】
また、上記特許文献1の技術では、同文献中の図1〜図4に示されているように、ガード金属層を、金属からなる画素電極や配線層の層間に設けているので、製造の際に発生する異物などにより配線間の短絡を引き起こし、製造時の歩留りを低下させる虞がある。同文献には、金属ガード層の大きさについて範囲を指定し、これにより製造歩留りの低下を極力抑えることができると記載されているが、やはり製造時の歩留りの低下を極力抑えるにとどまり、完全に防止するのは困難である。
【0011】
このように、遮光用の専用部材を設けている従来の技術では、画素電極間からの侵入光が基板に到達するのを容易に防止し、高い表示品質を有する反射型液晶表示装置を得るのが困難であった。
【0012】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、画素電極間からの侵入光が基板に到達するのを容易に防止し、表示品質を向上させることが可能な反射型液晶表示装置およびその製造方法を提供することにある。
【0013】
また、本発明の第2の目的は、上記反射型液晶表示装置に用いるのに好適なパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の反射型液晶表示装置は、基板上に形成された複数のスイッチング素子と、これら複数のスイッチング素子と電気的に接続された複数の画素電極と、これらスイッチング素子と画素電極との層間に形成されると共に複数の配線からなる1または2以上の配線層とを有する電極基板を備えたものであって、この電極基板が、画素電極とスイッチング素子との層間に複数の誘電体部を有すると共に、これら複数の誘電体部における屈折率の差を利用し、電極基板への入射光のうち複数の画素電極間への侵入光の基板側への進行を阻止するものである。この場合において、上記複数の誘電体部は、画素電極または配線層の少なくとも1の直下の層間絶縁層において、複数の画素電極の間、または複数の配線の間に対応する領域に形成されると共に、第1誘電体からなる第1誘電体部と、層間絶縁層および第1誘電体部の間に対応する領域に形成されると共に、第1誘電体の屈折率よりも低い屈折率を有する第2誘電体からなる第2誘電体部とを含み、上記侵入光を、第1誘電体部と第2誘電体部との界面で反射することにより、第1誘電体部に封じ込めるようにするのが好ましい。
【0015】
本発明のパネルは、基板上に形成された複数のスイッチング素子と、これら複数のスイッチング素子と電気的に接続された複数の電極と、これらスイッチング素子と電極との層間に形成されると共に複数の配線からなる1または2以上の配線層とを有すると共に、入射媒質を介して入射した入射光を反射するものであって、これら電極とスイッチング素子との層間に複数の誘電体部を有すると共に、これら複数の誘電体部における屈折率の差を利用し、上記入射光のうち複数の電極間への侵入光の基板側への進行を阻止するものである。この場合において、上記複数の誘電体部は、電極または配線層の少なくとも1の直下の層間絶縁層において、複数の電極の間、または複数の配線の間に対応する領域に形成されると共に、第1誘電体からなる第1誘電体部と、層間絶縁層および第1誘電体部の間に対応する領域に形成されると共に、第1誘電体の屈折率よりも低い屈折率を有する第2誘電体からなる第2誘電体部とを含み、上記侵入光を、第1誘電体部と第2誘電体部との界面で反射することにより、第1誘電体部内に封じ込めるようにするのが好ましい。
【0016】
本発明の反射型液晶表示装置では、電極基板において、複数の誘電体部における屈折率の差を利用することで、画素電極間への侵入光の基板側への進行が阻止される。すなわち、侵入光の進行が画素電極とスイッチング素子との層間で阻止され、侵入光は基板へは到達しない。これら複数の誘電体部が、上述した形状の第1の誘電体部および第2誘電体部を含むようにした場合には、侵入光は、第1誘電体部と第2誘電体部との界面で反射され、第1誘電体部内に封じ込められる。
【0017】
本発明のパネルでは、複数の誘電体部における屈折率の差を利用することで、電極間への侵入光の基板側への進行が阻止される。すなわち、侵入光の進行が電極とスイッチング素子との層間で阻止され、侵入光は基板へは到達しない。これら複数の誘電体部が、上述した形状の第1の誘電体部および第2誘電体部を含むようにした場合には、侵入光は、第1誘電体部と第2誘電体部との界面で反射され、第1誘電体部内に封じ込められる。
【0018】
本発明の反射型液晶表示装置の製造方法は、電極基板の製造工程において、以下の工程(A)〜(E)を含むものである。
(A)基板上に複数のスイッチング素子を形成する工程
(B)スイッチング素子の上層に、複数の配線からなる1または2以上の配線層を形成する工程
(C)配線層の上層に、複数のスイッチング素子と電気的に接続された複数の画素電極を形成する工程
(D)画素電極または配線層の少なくとも1の直下である層間絶縁層において、複数の画素電極の間、または複数の配線の間に対応する領域に、第1誘電体からなる第1誘電体部を形成する工程
(E)層間絶縁層および第1誘電体部の間に対応する領域に、第1誘電体の屈折率よりも低い屈折率を有する第2誘電体からなる第2誘電体部を形成する工程
この場合において、上記配線層のうちの一の配線層上に層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層のうち、第1誘電体部および第2誘電体部となる部分を選択的に除去して第2誘電体からなる層を埋め込み、さらにこの第2誘電体からなる層のうち、第1誘電体部となる部分を選択的に除去して第1誘電体からなる層を埋め込み、その後、これらの上部に画素電極または他の配線層を形成することにより、第1誘電体部および第2誘電体部を形成するようにするのが好ましい。
【0019】
本発明の反射型液晶表示装置の製造方法では、電極基板の製造工程において、基板上に複数のスイッチング素子が形成され、これら複数のスイッチング素子の上層に1または2以上の配線層が形成され、これら配線層の上層に複数の画素電極が形成される。また、画素電極または配線層の少なくとも1の直下の層間絶縁層において、複数の画素電極の間または複数の配線の間に対応する領域に、第1誘電体からなる第1誘電体部が形成される。さらに、この層間絶縁層および第1誘電体部の間に対応する領域に、第2誘電体からなる第2誘電体部が形成される。この際、第2誘電体としては、第1誘電体の屈折率よりも低い屈折率を有するものが用いられる。したがって、複数の画素電極間への侵入光が、第1誘電体部と第2誘電体部との界面で反射され、第1誘電体部内に封じ込められる。すなわち、侵入光の進行が画素電極とスイッチング素子との層間で阻止され、侵入光は基板へは到達しない。
【発明の効果】
【0020】
本発明の反射型液晶表示装置によれば、複数の誘電体部における屈折率の差を利用し、画素電極間への侵入光の基板側への進行を阻止するようにしたので、侵入光が基板へ到達するのを防止し、基板に対する侵入光の影響を容易に除去することができる。よって、侵入光に起因するスイッチング素子の誤動作などを防止し、表示品質を向上させることができる。
【0021】
本発明のパネルによれば、複数の誘電体部における屈折率の差を利用し、電極間への侵入光の基板側への進行を阻止するようにしたので、侵入光が基板へ到達するのを防止し、基板に対する侵入光の影響を容易に除去することができる。
【0022】
また、本発明の反射型液晶表示装置の製造方法によれば、層間絶縁層および第1誘電体部の間に第2誘電体部を形成し、画素電極間への侵入光を、これらの誘電体部の界面での反射により第1誘電体部内に封じ込めるようにしたので、侵入光が基板へ到達するのを防止し、基板に対する侵入光の影響を容易に除去することができる。よって、侵入光に起因するスイッチング素子の誤動作などを防止し、表示品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る反射型液晶表示装置の断面構造を表すものである。また、図2は、この反射型液晶表示装置の電極基板側の平面構造を表すものである。この反射型液晶表示装置1は、アクティブマトリクス型の液晶表示装置であり、透明基板2と、複数の画素電極を有する電極基板4との間に、液晶層3を備えている。
【0025】
透明基板2は、ガラス基板21上に透明電極22を形成したものである。ガラス基板21は、可視光に対して透明な基板である。ただし、そのような基板であればガラス基板には限られず、例えばプラスチック基板などから構成されていてもよい。透明電極22は、やはり可視光に対して透明な電極であり、例えば、ITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウムスズ)から構成される。この透明電極22は、各画素に対して共通の対向電極として機能する。
【0026】
液晶層3は、例えば、ネマチック液晶を用いたTN(Twisted Nematic)モード、またはOCB(Optically Compensated Bend)型、VAN(Vertically-Aligned Nematic)型、HAN(Hybrid-Aligned Nematic)型、Π配列型の他、MVA(Multi-domain Vertical Alignment)モード、IPS(In-Plane-Switching)モードなどから構成される。特に、VAN型配向モードから構成した場合には、従来より一般的なTN型配向モードよりも速い応答速度を得ることができる。この液晶層3は、図示しない駆動回路からの印加電圧により、外部からの入射光(例えば、入射光L1)を、各画素ごとに透過または遮断する機能を有する。
【0027】
電極基板4は、シリコン(Si)基板41上に、配線層42と、層間絶縁層43と、複数の画素電極44と、画素電位保持容量45と、スイッチング素子46と、第1誘電体部47と、第2誘電体部48とを形成したものである。
【0028】
Si基板41は、上記のようにこの基板上に各層を成膜し、電極基板4を形成するためのものである。ただし、Siの他に、例えばプラスチック材料などから構成するようにしてもよい。
【0029】
配線層42は、画素電極44、画素電位保持容量45およびスイッチング素子46を相互に接続するための配線である。この配線層42は、一般的な半導体装置の場合と同様に、アルミニウム(Al)や銅(Cu)などの金属材料から構成される。なお、配線層42には、各画素電極44を駆動するための配線(例えば、ゲート線やデータ線など)も含まれる。
【0030】
層間絶縁層43は、図1に示したように、画素電位保持容量45、スイッチング素子46、各配線層42および画素電極44などの層間に形成されている絶縁層である。この層間絶縁層42は、シリコン酸化物(SiOx)などから構成される。
【0031】
画素電極44は、配線層42と同様に、例えばAlやCuなどの金属材料から構成され、各画素ごとの電極として機能すると共に、外部からの入射光を反射する役割を果たす。画素電位保持容量45は、各画素に印加される画素電位を保持するための容量であり、Si基板41上に形成されている。なお、この画素電位保持容量45および下記のスイッチング素子46は、コンタクト部CTにより各画素電極44と電気的に接続されている。
【0032】
スイッチング素子46は、例えば図示しないゲート線やデータ線などからの駆動信号により各画素電極44を駆動し、各画素に画素電位を印加するためのアクティブ素子である。このスイッチング素子46は、トランジスタやダイオードなどから構成され、上記の画素電位保持容量45と同様、Si基板41上に形成されている。
【0033】
第1誘電体部47は、第1誘電体から構成され、画素電極44の直下の層間絶縁層43において、各画素電極44の間の領域に形成されている。第1誘電体としては、例えば、ハフニウム酸化物(HfOx;屈折率1.95)、シリコン窒化物(SiNx;屈折率1.90)、およびシリコンオキシナイトライド(SiON;屈折率2.30)のうちの少なくとも1種の材料を適用することができる。
【0034】
第2誘電体部48は、第2誘電体から構成され、画素電極44の直下の層間絶縁層43において、第1誘電体部47と層間絶縁層43との間の領域に形成されている。第2誘電体は、第1誘電体の屈折率よりも低屈折率のものである。具体的には、例えば、シリコン酸化物(SiOx;屈折率1.45)、ハフニウム酸化物(HfOx;屈折率1.95)、シリコン窒化物(SiNx;屈折率1.90)のうちの少なくとも1種の材料を適用することができる。
【0035】
これら第1誘電体部47および第2誘電体部48、ならびに各画素電極44、層間絶縁層43およびコンタクト部CTの配置関係を平面図で表すと、図2のようになる。つまり、画素電極44の直下の層間絶縁層43において、各画素電極44の間に第1誘電体部47が配置され、これと層間絶縁層43との間に第2誘電体部48が配置されている。また、画素電極44直下の層間絶縁層43内には、コンタクト部CTが配置されている。
【0036】
次に、このような構成の反射型液晶表示装置1の製造方法の一例について、図3ないし図5を参照して説明する。なお、この反射型液晶表示装置1の特徴部分は、画素電極4における第1誘電体部47、第2誘電体部48、および画素電極44付近の構造にあるので、特にその部分の製造方法を説明する。
【0037】
まず、図3(A)に示したように、画素電極4において配線層42を形成後、この配線層42上に、例えば蒸着法、スパッタリング法または化学的気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法により、上述した材料よりなる層間絶縁層43を形成する。この層間絶縁層43の厚みd1は、例えば1μm程度とする。
【0038】
続いて、図3(B)に示したように、層間絶縁層43を所定の形状にパターニングする。つまり、層間絶縁層43のうち、第1誘電体部47および第2誘電体部48となる部分を選択的に除去する。所定の形状へのパターニングは、例えばフォトリソグラフィ法などにより行う。この第1誘電体部47および第2誘電体部48となる部分の幅w12は、例えば3μm程度とする。
【0039】
続いて、図3(C)に示したように、この選択的に除去した部分に、上述した材料よりなる第2誘電体を埋め込み、第2誘電体部48を形成する。第2誘電体の埋め込みは、例えば蒸着法、スパッタリング法またはCVD法により行う。
【0040】
続いて、図4(A)に示したように、第2誘電体部48を所定の形状にパターニングする。つまり、第2誘電体部48のうち、第1誘電体部47となる部分を選択的に除去する。所定の形状へのパターニングは、例えばフォトリソグラフィ法などにより行う。この第1誘電体部47となる部分の幅w1は、例えば1μm程度とする。
【0041】
続いて、図4(B)に示したように、この選択的に除去した部分に、上述した材料よりなる第1誘電体を埋め込み、第1誘電体部47を形成する。第1誘電体の埋め込みは、例えば蒸着法、スパッタリング法またはCVD法により行う。
【0042】
続いて、図5(A)に示したように、これら層間絶縁層43、第1誘電体部47および第2誘電体部48の上に、上述した材料よりなる画素電極44を形成する。画素電極の形成は、例えば、蒸着法、スパッタリング法またはCVD法、ならびにフォトリソグラフィ法などにより行う。
【0043】
最後に、図5(B)に示したように、各画素電極44の間に、例えば蒸着法、スパッタリング法またはCVD法により、上述した材料よりなる層間絶縁層43を形成する。
【0044】
このようにして作製された電極基板4を、別途作製された透明基板2と対向させ、液晶注入口以外の部分をシール剤によってシールする。次に、その内部に液晶を注入して充填し、液晶層3とする。最後に、その注入口を封止することで、図1に示した反射型液晶表示装置1が製造される。
【0045】
この反射型液晶表示装置1では、対向基板である透明基板2側から入射し、液晶層3を通過した入射光L1が、画素電極44により反射される。画素電極44において反射された光L1は、入射時とは逆方向に、液晶層3および透明電極2を通過して、外部に出射される。この際、液晶層3は、スイッチング素子46および画素電位保持容量45により各画素電極44に印加された電圧と、透明電極22の電圧との電位差に応じて、その光学的な特性が変化し、通過する光L1を変調させる。この光変調により階調表現が可能となり、その変調された光L1が、画像表示に利用される。
【0046】
ここで、外部からの入射光のうち、各画素電極44の間から電極基板4の内部、つまり第1誘電体部47に侵入した光(侵入光L2)は、図1に示したように、第1誘電体部47と第2誘電体部48との界面P1,P2で全反射され、第1誘電体部47内に封じ込められる。なぜならば、第2誘電体部48を構成する第2誘電体の屈折率が、第1誘電体部47を構成する第1誘電体の屈折率よりも低くなるように設定されているからである。したがって、各画素電極44間からの侵入光L2が、第2誘電体部48および層間絶縁層43を伝播し、Si基板41へ到達するのを防止することができる。このようにして、侵入光L2がSi基板41に入射することに起因するスイッチング素子46の誤動作など、Si基板41に対する侵入光L2の影響を除去することができる。
【0047】
以上のように、本実施の形態では、電極基板4に第1誘電体部47および第2誘電体部48を形成し、これらの誘電体部における屈折率の差を利用して、画素電極44間への侵入光L2を第1誘電体部47内に封じ込めるようにしたので、侵入光L2がSi基板41へ到達するのを防止し、Si基板41に対する侵入光L2の影響を除去することができる。よって、侵入光L2に起因するスイッチング素子46の誤動作などを防止し、表示品質を向上させることができる。
【0048】
また、遮光用の専用部材の設計および形成は不要であり、画一的に誘電体部を形成すればよいので、一般的な反射型液晶表示装置の製造プロセスに対する大規模な変更は必要はなく、容易にかつ低コストで製造することができる。また、一般的な製造プロセスのみで製造することが可能なので、歩留りを低下させることなく、製造することができる。
【0049】
また、Si基板41に対する侵入光L2の影響を、誘電体部により画一的に除去することが可能なので、設計時に遮光を考慮する必要がなく、設計の自由度を向上させることができる。
【0050】
さらに、Si基板41に対する侵入光L2の影響を除去することが可能なので、照射光の光量を増加させつつも表示品質を確保することができ、これにより高輝度化、高コントラスト化を図ることができる。
【0051】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0052】
上記第1の実施の形態においては、電極基板4において、画素電極44の直下の層間絶縁層43に、第1誘電体部47および第2誘電体部48を形成するようにした反射型液晶表示装置について説明したが、本実施の形態では、第2誘電体部を層間絶縁層から構成するようにした反射型液晶表示装置について説明する。なお、説明の簡潔化を図るため、以下、第1の実施の形態と同様の部位については、同じ符号を付して説明する。
【0053】
図6は、本実施の形態に係る反射型液晶表示装置の断面構造を表すものである。また、図7は、この反射型液晶表示装置の電極基板側の平面構造を表すものである。この反射型液晶表示装置1は、透明基板2と、複数の画素電極を有する電極基板4との間に、液晶層3を備えている。
【0054】
透明基板2は、ガラス基板21上に透明電極22を形成したものである。また電極基板4は、Si基板41上に、配線層42と、層間絶縁層43と、複数の画素電極44と、画素電位保持容量45と、スイッチング素子46と、第1誘電体部47とを形成したものである。第1の実施の形態の電極基板と異なるのは、層間絶縁層43が、第2誘電体部としての機能を兼有している点である。
【0055】
層間絶縁層43は、基本的には第1の実施の形態と同様に、画素電位保持容量45、スイッチング素子46、各配線層42および画素電極44などの層間に形成されている絶縁層として機能する。ただし、上記のように、本実施の形態の層間絶縁層43は、第2誘電体部としての機能も兼有するので、第1誘電体部を構成する第1誘電体よりも低い屈折率を有する。したがって、この層間絶縁層43としては、第1の実施の形態における第2誘電体部と同様に、例えば、シリコン酸化物(SiOx;屈折率1.45)、ハフニウム酸化物(HfOx;屈折率1.95)、シリコン窒化物(SiNx;屈折率1.90)のうちの少なくとも1種の材料から構成される。
【0056】
第1誘電体部47は、第1の実施の形態と同様の材料よりなる第1誘電体から構成され、画素電極44の直下の層間絶縁層43において、各画素電極44の間の領域に形成されている。第1の実施の形態における第1誘電体部と異なるのは、上記のように層間絶縁層43が第2誘電体部としての機能を兼有するので、層間絶縁層43と接している点である。
【0057】
第1誘電体部47、各画素電極44、層間絶縁層43およびコンタクト部CTの配置関係を、第1の実施の形態における図2と同様に平面図で表すと、図7のようになる。つまり、画素電極44の直下の層間絶縁層43において、各画素電極44の間に第1誘電体部47が配置されている。また、画素電極44直下の層間絶縁層43内には、コンタクト部CTが配置されている。
【0058】
次に、このような構成の反射型液晶表示装置1の製造方法の一例について、図8を参照して説明する。なお、本実施の形態の反射型液晶表示装置では、第1誘電体部47を形成するまでの工程は、第1の実施の形態における工程(図3(A)〜図3(C))と同様であるので、それ以後の工程について説明する。
【0059】
まず、図8(A)に示したように、第1誘電体部47を形成後、層間絶縁層43および第1誘電体部47の上に、例えば、蒸着法、スパッタリング法またはCVD法、ならびにフォトリソグラフィ法などにより、画素電極44を形成する。すなわち、第1の実施の形態の場合のように、第2誘電体部48を別途形成する必要がないので、その工程(図4(A)〜図4(B))が除かれていることになる。
【0060】
続いて、図8(B)に示したように、各画素電極44の間に、例えば蒸着法、スパッタリング法またはCVD法により、上述した材料よりなる層間絶縁層43を形成する。
【0061】
最後に、このようにして作製された電極基板4を、第1の実施の形態と同様に、別途作製された透明基板2と対向させてシールし、液晶を注入して液晶層3とし、注入口を封止することで、図6に示した反射型液晶表示装置1が製造される。
【0062】
この反射型液晶表示装置1では、外部からの入射光のうち、各画素電極44の間から第1誘電体部47への侵入光L3は、図6に示したように、第1誘電体部47と第2誘電体部としての層間絶縁層43との界面P3,P4で全反射され、第1誘電体部47内に封じ込められる。なぜならば、第2誘電体部としての層間絶縁層43の屈折率が、第1誘電体部47を構成する第1誘電体の屈折率よりも低くなるように設定されているからである。したがって、第1の実施の形態と同様、各画素電極44間からの侵入光L3が層間絶縁層43を伝播してSi基板41へ到達するのを防止し、Si基板41に対する侵入光L3の影響を除去することができる。
【0063】
以上のように、本実施の形態では、電極基板4に第1誘電体部47を形成すると共に層間絶縁層43を第2誘電体部として機能させ、これらの領域における屈折率の差を利用して、画素電極44間への侵入光L3を第1誘電体部47内に封じ込めるようにしたので、第1の実施の形態における効果に加え、第2誘電体部を別途形成する必要がないので、より容易にかつ低コストで製造することができる。
【0064】
以上、第1および第2の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0065】
例えば、上記実施の形態では、第1誘電体部47および第2誘電体部48を、画素電極44と配線層42の最上層との間に形成した場合について説明してきたが、例えば図9および図10に示したように、それよりも下層に位置する配線層42の間に形成するようにしてもよい。つまり、第1誘電体部47および第2誘電体部48は、画素電極44とスイッチング素子との間に配置されていればよく、このような場合でも上記実施の形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0066】
また、図11および図12に示したように、第1誘電体部47および第2誘電体部48を、複数層に形成するようにしてもよい。このように配置した場合、侵入光がSi基板41へ到達するのを、より確実に防止することができる。
【0067】
また、例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、また他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【0068】
さらに、上記実施の形態では、反射型液晶表示装置の構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る反射型液晶表示装置の概略構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した電極基板の概略構成を説明するための平面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る反射型液晶表示装置の製造方法を説明するための工程図である。
【図4】図3に続く工程図である。
【図5】図4に続く工程図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る反射型液晶表示装置の概略構成を表す断面図である。
【図7】図6に示した電極基板の概略構成を説明するための平面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る反射型液晶表示装置の製造方法を説明するための工程図である。
【図9】本発明の変形例に係る反射型液晶表示装置の概略構成を表す断面図である。
【図10】本発明の変形例に係る反射型液晶表示装置の概略構成を表す断面図である。
【図11】本発明の変形例に係る反射型液晶表示装置の概略構成を表す断面図である。
【図12】本発明の変形例に係る反射型液晶表示装置の概略構成を表す断面図である。
【図13】従来の反射型液晶表示装置の概略構成を表す断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1…反射型液晶表示装置、2…透明基板、21…ガラス基板、22…透明電極、3…液晶層、4…電極基板、41…Si基板、42…配線層、43…層間絶縁層、44…画素電極、45…画素電位保持容量、46…スイッチング素子、47…第1誘電体部、48…第2誘電体部、CT…コンタクト部、P1〜P4…界面、L1,L4…入射光、L2,L3,L5…侵入光。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された複数のスイッチング素子と、これら複数のスイッチング素子と電気的に接続された複数の画素電極と、前記スイッチング素子と前記画素電極との層間に形成されると共に複数の配線からなる1または2以上の配線層とを有する電極基板を備えた反射型液晶表示装置であって、
前記電極基板は、前記画素電極と前記スイッチング素子との層間に複数の誘電体部を有すると共に、これら複数の誘電体部における屈折率の差を利用し、前記電極基板への入射光のうち前記複数の画素電極間への侵入光の前記基板側への進行を阻止する
ことを特徴とする反射型液晶表示装置。
【請求項2】
前記複数の誘電体部は、
前記画素電極または前記配線層の少なくとも1の直下の層間絶縁層において、前記複数の画素電極の間、または前記複数の配線の間に対応する領域に形成されると共に、第1誘電体からなる第1誘電体部と、
前記層間絶縁層および前記第1誘電体部の間に対応する領域に形成されると共に、前記第1誘電体の屈折率よりも低い屈折率を有する第2誘電体からなる第2誘電体部とを含み、
前記侵入光を、前記第1誘電体部と前記第2誘電体部との界面で反射することにより、第1誘電体部内に封じ込める
ことを特徴とする請求項1に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項3】
前記第2誘電体部が、前記層間絶縁層からなる
ことを特徴とする請求項2に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項4】
前記第1誘電体が、ハフニウム酸化物(HfOx)、シリコン窒化物(SiNx)、およびシリコンオキシナイトライド(SiON)のうちの少なくとも1種の材料である
ことを特徴とする請求項2に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項5】
前記第2誘電体が、シリコン酸化物(SiOx)、ハフニウム酸化物(HfOx)、シリコン窒化物(SiNx)のうちの少なくとも1種の材料である
ことを特徴とする請求項2に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項6】
複数の画素電極を有する電極基板を備えた反射型液晶表示装置の製造方法であって、
前記電極基板の製造工程において、
基板上に複数のスイッチング素子を形成する工程と、
前記スイッチング素子の上層に、複数の配線からなる1または2以上の配線層を形成する工程と、
前記配線層の上層に、前記複数のスイッチング素子と電気的に接続された前記複数の画素電極を形成する工程と、
前記画素電極または前記配線層の少なくとも1の直下の層間絶縁層において、前記複数の画素電極の間、または前記複数の配線の間に対応する領域に、第1誘電体からなる第1誘電体部を形成する工程と、
前記層間絶縁層および前記第1誘電体部の間に対応する領域に、前記第1誘電体の屈折率よりも低い屈折率を有する第2誘電体からなる第2誘電体部を形成する工程と
を含むことを特徴とする反射型液晶表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記配線層のうちの一の配線層上に前記層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層のうち、前記第1誘電体部および前記第2誘電体部となる部分を選択的に除去して前記第2誘電体からなる層を埋め込み、さらにこの第2誘電体からなる層のうち、前記第1誘電体部となる部分を選択的に除去して前記第1誘電体からなる層を埋め込み、その後、これらの上部に前記画素電極または他の配線層を形成することにより、前記第1誘電体部および前記第2誘電体部を形成する
ことを特徴とする請求項6に記載の反射型液晶表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2誘電体部を、前記層間絶縁層により構成する
ことを特徴とする請求項6に記載の反射型液晶表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記配線層のうちの一の配線層上に前記層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層のうち、前記第1誘電体部となる部分を選択的に除去して前記第1誘電体からなる層を埋め込み、その後、これらの上部に前記画素電極または他の配線層を形成することにより、前記第1誘電体部および前記第2誘電体部を形成する
ことを特徴とする請求項8に記載の反射型液晶表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1誘電体および前記第2誘電体の屈折率を、前記電極基板へ入射した光のうち前記第1誘電体部への侵入光が、第1誘電体部と前記第2誘電体部との界面で反射され、第1誘電体部内で封じ込められるように設定する
ことを特徴とする請求項6に記載の反射型液晶表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1誘電体として、ハフニウム酸化物(HfOx)、シリコン窒化物(SiNx)、およびシリコンオキシナイトライド(SiON)のうちの少なくとも1種の材料を用いる
ことを特徴とする請求項6に記載の反射型液晶表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2誘電体として、シリコン酸化物(SiOx)、ハフニウム酸化物(HfOx)、シリコン窒化物(SiNx)のうちの少なくとも1種の材料を用いる
ことを特徴とする請求項6に記載の反射型液晶表示装置の製造方法。
【請求項13】
基板上に形成された複数のスイッチング素子と、これら複数のスイッチング素子と電気的に接続された複数の電極と、前記スイッチング素子と前記電極との層間に形成されると共に複数の配線からなる1または2以上の配線層とを有すると共に、入射媒質を介して入射した入射光を反射するパネルであって、
前記電極と前記スイッチング素子との層間に複数の誘電体部を有すると共に、これら複数の誘電体部における屈折率の差を利用し、前記入射光のうち前記複数の電極間への侵入光の前記基板側への進行を阻止する
ことを特徴とするパネル。
【請求項14】
前記複数の誘電体部は、
前記電極または前記配線層の少なくとも1の直下の層間絶縁層において、前記複数の電極の間、または前記複数の配線の間に対応する領域に形成されると共に、第1誘電体からなる第1誘電体部と、
前記層間絶縁層および前記第1誘電体部の間に対応する領域に形成されると共に、前記第1誘電体の屈折率よりも低い屈折率を有する第2誘電体からなる第2誘電体部とを含み、
前記侵入光を、前記第1誘電体部と前記第2誘電体部との界面で反射することにより、第1誘電体部内に封じ込める
ことを特徴とする請求項13に記載のパネル。
【請求項15】
前記第2誘電体部が、前記層間絶縁膜からなる
ことを特徴とする請求項14に記載のパネル。
【請求項16】
前記入射媒質が、液晶層からなる
ことを特徴とする請求項13に記載のパネル。
【請求項17】
前記電極が、電界により各画素を駆動するための画素電極である
ことを特徴とする請求項13に記載のパネル。
【請求項18】
前記第1誘電体が、ハフニウム酸化物(HfOx)、シリコン窒化物(SiNx)、およびシリコンオキシナイトライド(SiON)のうちの少なくとも1種の材料である
ことを特徴とする請求項14に記載のパネル。
【請求項19】
前記第2誘電体が、シリコン酸化物(SiOx)、ハフニウム酸化物(HfOx)、シリコン窒化物(SiNx)のうちの少なくとも1種の材料である
ことを特徴とする請求項14に記載のパネル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−72069(P2006−72069A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256652(P2004−256652)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】