説明

圧電デバイス

【課題】
本発明の目的は、圧電デバイスの高機能化、複合デバイス化の対応が可能な圧電デバイスを提供することにある。
【解決手段】
同一密閉容器1の中に第1及び第2の圧電振動素板11,12の長手方向位置を同じにして高さ方向に保持方向が相反する位置関係で固着・収納し、第1及び第2の圧電振動素板11,12から外部に導通する引出配線14を持ち、第1及び第2の圧電振動素板11,12が容器1を構成するベース2に対して略水平に保持され、半導体部品16とで構成する圧電デバイスにおいて、第1の圧電振動素板11が第2の圧電振動素板12より高い周波数で発振する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用通信機器等の電子機器に用いられる圧電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯用通信機器等の電子機器に圧電デバイスが用いられている。
【0003】
かかる従来の圧電デバイスとしては、例えば図3に示す如く、容器101の上面に圧電振動素板111が、下面に半導体部品116が搭載されている。容器101の上側に積層されているセラミック基板上面に枠状の側壁103が形成されており、側壁103の内部に圧電振動素板111が搭載されている。圧電振動素板111は、セラミック基板の一端側に形成された配線パターンに圧電振動素板111が導電性接着剤113を介して固着され、電気的、機械的に保持されてなる。また、側壁103上面には蓋体104をシーム溶接等によって接合し、圧電振動素板111を気密封止している。
【0004】
また、容器101の下側に積層されているセラミック基板の下面には部品搭載パッド(不図示、以下同じ)が設けてあり、発振用の半導体部品116が部品搭載パッド上に搭載されている。
【0005】
さらに、セラミック基板の下面周囲(4隅部)には4つの外部端子電極106が形成されている。この外部端子電極106は例えば、圧電振動素板111から引出配線114を介して接続された入出力端子として用いられる。
【特許文献1】特開2003−46251号公報
【特許文献2】特開2003−101349号公報
【0006】
なお、出願人は前記した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を、本件出願時までに発見するに至らなかった
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の圧電デバイスにおいては、その構造上、同一密閉容器内に圧電振動素板を複数個配置するといった複合化が困難であり、圧電デバイスの高機能化、複合デバイス化、低面積化の対応が困難であるという欠点を有していた。
【0008】
本発明は上記欠点に鑑み考え出されたものであり、従ってその目的は、圧電デバイスの高機能化、複合デバイス化の対応が可能な圧電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧電デバイスは、同一密閉容器の中に第1及び第2の圧電振動素板の長手方向位置を同じにして高さ方向に保持方向が相反する位置関係で固着・収納し、前記第1及び第2の圧電振動素板から外部に導通する引出配線を持ち、前記第1及び第2の圧電振動素板が前記容器を構成するベースに対して略水平に保持され、半導体部品とで構成する圧電デバイスにおいて、第1の圧電振動素板が第2の圧電振動素板より高い周波数で発振することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の圧電デバイスは、同一密閉容器の中に第1及び第2の圧電振動素板の長手方向位置を同じにして高さ方向に保持方向が相反する位置関係で固着・収納し、前記第1及び第2の圧電振動素板から外部に導通する引出配線を持ち、前記第1及び第2の圧電振動素板が前記容器を構成するベースに対して略水平に保持され、半導体部品とで構成する圧電デバイスにおいて、第1の圧電振動素板と第2の圧電振動素板のいずれか一方が前記半導体部品により発振器としての周波数を出力し、他方の圧電振動素板は前記半導体部品を介さずに振動素板としての周波数を出力することを特徴とする。
【0011】
また、上記構成における圧電デバイスは、第1の圧電振動素板と第2の圧電振動素板に形成する励振電極は、第1の圧電振動素板と第2の圧電振動素板の対向する前記励振電極の極性が同一極性で向かい合う位置関係にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の圧電デバイスによれば、異なる周波数の圧電振動素板を同一密閉容器内に収容し、第1及び、第2の圧電振動素板が上下方向に互い違いに配置されているため、圧電振動素板から密閉容器への電極引き回しが容易になり、それにより、電極の引き回しによる浮遊容量等により生ずる発振周波数の変動等の悪影響を抑える事が可能となる。
【0013】
また、本発明の圧電デバイスによれば、第1の圧電振動素板と第2の圧電振動素板の向きが逆向きであることにより、圧電振動素板の保持間隔を狭くすることができることで圧電デバイスの全体の高さ寸法を低くすることが可能となり、また、第1の圧電振動素板と第2の圧電振動素板を立体的に上下に配置することで圧電デバイスの低面積化も可能となる。
【0014】
また、第1の圧電振動素板と第2の圧電振動素板の上下位置にある第1の圧電振動素板は、容器構造上高い周波数を得る圧電振動素板である。また、第1の圧電振動素板を高い周波数にする他の理由としては、半導体部品との接続時に容器内の配線長さを短縮することで、出力周波数波形を安定化させることができる。
【0015】
一方、第1の圧電振動素板と第2の圧電振動素板のいずれか一方が前記半導体部品により発振器としての周波数を出力し、他方の圧電振動素板は前記半導体部品を介さずに振動素板としての周波数を出力することから出力周波数の波形を適宜に選択することができる。
【0016】
また、第1の圧電振動素板と第2の圧電振動素板の対向する励振電極の極性が同一極性で向かい合う位置関係にあることで、2つの圧電振動素板同士の振動モードを合わすことにより安定化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図においての同一の符号は同じ対象を示すものとする。
【0018】
図1は本発明の実施形態にかかる圧電デバイスの断面図であり、図2はその下面図である。図1に図示する圧電デバイスは大略的に言って、容器1と、枠状脚部5、第1の圧電振動素板11と第2の圧電振動素板12、半導体部品16、樹脂17とで構成されている。図1に図示する圧電デバイスは、キャビティー部7に第1の圧電振動素板11と第2の圧電振動素板12を収容した容器1に、容器1の底面には枠状脚部5が接続され、かつ固定させるとともに、図2に図示するように枠状脚部5の下面の四隅部と枠状電極5の長辺側に各1個の外部端子電極6が配置されている。
【0019】
なお、半導体部品16に近い第1の圧電振動素板11は、第2の圧電振動素板12よりも高い周波数で発振する。その理由には、ひとつには容器構造的に圧電振動素板の外形寸法の小さいものを搭載することになるが、半導体部品との接続時に容器内の配線長さを短縮することで、高い出力周波数の波形を安定化させることができるためでもある。
【0020】
また、枠状脚部5で囲まれる容器1の下面に半導体部品16を搭載した構造を有しており、半導体部品16と枠状脚部5内部は樹脂17で被われている。また、半導体部品16の回路形成面(下面)を保護膜等で被われていれば、特に樹脂17は必要ない。また、上述の外部端子電極5のうち4隅部の外部端子電極6は主に発振器の機能として動作する端子として、また、枠状脚部5の長辺側に設けた外部端子電極6は主に振動素板単体の機能として動作する端子として用いられるが、特に規制はなくどの端子を用いてもよい。
【0021】
前記容器1は、例えば、ガラス−セラミック、アルミナセラミックス等のセラミック材料から成るベース2、ベース2と同様のセラミック材料から成る側壁3、42アロイやコパール、リン青銅等から成る蓋体4から成り、前記ベース2の上面に側壁3を取着させ、その上面に蓋体4を載置し固定させることによって容器1が構成され、側壁3の内側に位置するベース2の上面に導電性接着剤13を介して第1の圧電振動素板11と第2の圧電振動素板12が実装される。前記容器1はその内部に、具体的には、ベース2の上面と側壁3の内面と蓋体4の下面とで囲まれるキャビティー部7内に第1の圧電振動素板11と第2の圧電振動素板12を収容して気密封止するためのものである。
【0022】
一方、前記容器1のキャビティー部7に収容される第1の圧電振動素板11と第2の圧電振動素板12は、所定の結晶軸でカットした圧電片の両主面に一対の振動電極を被着・形成してなり、外部からの変動電圧が一対の振動電極を介して圧電片に印加されると、所定の周波数で厚みすべり振動を起こす。
【0023】
また一方で図1、図2に図示するように、上述したベース2の下面には、枠状脚部5が被着・形成されており、枠状脚部5内部に位置するベース2の下面には、矩形状に形成されたフリップチップ型の半導体部品16が搭載されており、半導体部品16は導電性接着剤15を介してベース2に接続されている。また、半導体部品16と枠状脚部5内部は樹脂17で覆われており、樹脂17により、半導体部品16を保護した構造となっている。
【0024】
前記半導体部品16はその回路形成面に、周囲の温度状態を検知する感温素子、第1の圧電振動素板11と第2の圧電振動素板12の温度特性を補償する温度補償データを有し、温度補償データに基づいて前記第1の圧電振動素板11と第2の圧電振動素板12の振動特性を温度変化に応じて補正する温度補償回路、温度補償回路に接続されて所定の発振出力を生成する発振回路等が設けられており、発振回路で生成された発振出力は、外部に出力された後、例えばクロック信号等の基準信号として利用されることとなる。ここで第1の圧電振動素板11と第2の圧電振動素板12と半導体部品16は図1に図示するベース2の内層に設けられた引出配線14により接続されている。
【0025】
ここで、本発明の特徴部分は図1に図示するように、同一密閉容器1の中に、第1及び第2の圧電振動素板11,12の長手方向位置を同じにして高さ方向に保持方向が相反する位置関係で固着・収納したことにある。これにより、第1及び第2の圧電振動素板11,12から密閉容器1への電極引き回しが容易になり、電極の引き回しによる浮遊容量等により生ずる発振周波数の変動等の悪影響を抑える事が可能となる。
【0026】
また、更に本発明の圧電デバイスによれば、第1の圧電振動素板11と第2の圧電振動素板12の

いずれか一方が前記半導体部品16により発振器としての周波数を出力し、他方の圧電振動素板は半導体部品16を介さずに振動素板としての周波数を出力することから、半導体部品16により温度補償する温度補償型発振器として機能する第1の圧電振動素板11と振動素板単体の発振周波数を発振する圧電発振器として機能する第2の圧電振動素板12を同一密閉容器1内に収容することができ、圧電デバイスの複合化が可能となる。
【0027】
また、上述したように、本発明の圧電デバイスによれば、第1の圧電振動素板11と第2の圧電振動素板12の向きが逆向きであることにより、第1及び第2の圧電振動素板11,12の保持間隔を狭くすることができることで圧電デバイスの全体の高さ寸法を低くすることが可能となる。
【0028】
また、更に本発明の圧電デバイスによれば、第1の圧電振動素板11と第2の圧電振動素板12を上下方向に立体的に配置したことから、第1及び第2の圧電振動素板11,12を同一平面に並設した場合と比較して、実装基板への実装面積を大幅に縮小することが可能となる。
【0029】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0030】
例えば上述の実施形態においては、図1に示すように、ベース2の上に第1の圧電振動素板11と第2の圧電振動素板12をベース2の下に半導体部品16を搭載する構造(H型構造)としたが、第1の圧電振動素板11と第2の圧電振動素板12を搭載する容器と半導体部品16を搭載する容器を別とした構造(親亀子亀構造)に適用しても構わない。
【0031】
また、第1の圧電振動素板11と第2の圧電振動素板12のみを同一密閉容器1内に収容しているが、さらに第3,第4の圧電振動素板を収容しても構わない。また、上述の実施形態においては、1個の半導体部品16のみを搭載しているが、同一密閉容器1内に収容する圧電振動素板の数だけ半導体部品16を搭載して複数の発振器として使用しても構わない。この場合も本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでも無い。
【0032】
なお、第1の圧電振動素板と第2の圧電振動素板の対向する励振電極の極性が同一極性で向かい合う位置関係にあることで、2つの圧電振動素板同士の振動モードを合わすことにより安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態にかかる圧電デバイスの概略の断面図である。
【図2】本発明の圧電デバイスの概略の下面図である。
【図3】従来の圧電デバイスの概略の斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1・・・容器
2・・・ベース
3・・・側壁
4・・・蓋体
5・・・枠状脚部
6・・・外部端子電極
7・・・キャビティー部
11・・・第1の圧電振動素板
12・・・第2の圧電振動素板
13・・・導電性接着剤
14・・・引出配線
15・・・導電性接着剤
16・・・半導体部品
17・・・樹脂


【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一密閉容器の中に第1及び第2の圧電振動素板の長手方向位置を同じにして高さ方向に、保持方向が相反する位置関係で固着・収納し、前記第1及び第2の圧電振動素板から外部に導通する引出配線を持ち、前記第1及び第2の圧電振動素板が前記容器を構成するベースに対して略水平に保持され、半導体部品とで構成する圧電デバイスにおいて、
第1の圧電振動素板が第2の圧電振動素板より高い周波数で発振することを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
同一密閉容器の中に第1及び第2の圧電振動素板の長手方向位置を同じにして高さ方向に保持方向が相反する位置関係で固着・収納し、前記第1及び第2の圧電振動素板から外部に導通する引出配線を持ち、前記第1及び第2の圧電振動素板が前記容器を構成するベースに対して略水平に保持され、半導体部品とで構成する圧電デバイスにおいて、
第1の圧電振動素板と第2の圧電振動素板のいずれか一方が前記半導体部品により発振器としての周波数を出力し、他方の圧電振動素板は前記半導体部品を介さずに振動素板としての周波数を出力することを特徴とする圧電デバイス。
【請求項3】
請求項1ないし請求項2のいずれかに記載の第1の圧電振動素板と第2の圧電振動素板に形成する励振電極は、
第1の圧電振動素板と第2の圧電振動素板の対向する前記励振電極の極性が同一極性で向かい合う位置関係にあることを特徴とする圧電デバイス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−339890(P2006−339890A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160505(P2005−160505)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】