説明

圧電デバイス

【課題】 電極端子を介して不要な電気信号が入力されることで圧電デバイスの特性劣化を引き起こすことのない信頼性の高い圧電デバイスを提供する。
【解決手段】 パッケージ13の外表面には回路素子14および圧電振動片12、または回路素子14と圧電振動片12のいずれかと電気的に接続され、回路素子14への制御データの書込みまたは圧電デバイス10の特性を出力する複数の電極端子15が形成され、
少なくとも一つの電極端子15の表面が絶縁部材17により被覆されている圧電デバイスとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイスに係るものであり、特にICと接続され、このICとデータの入出力を行う圧電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器などの高機能化にともない、それに使われる圧電デバイスに対する高安定化、高精度化への要求も強くなってきており、圧電デバイスの高安定化、高精度化を実現するために、圧電振動子と回路素子を組み合わせた圧電デバイスが用いられるようになってきている。
【0003】
このような高安定、高精度の圧電デバイスを得るため、例えば特許文献1に示すような圧電デバイスが開示されている。図3は従来例における圧電デバイスの構造を示す斜視図であり、(a)は従来における圧電デバイスの構成を説明するための斜視図、(b)は従来における圧電デバイスを上面から見た斜視図、(c)は従来における圧電デバイスを底面から見た斜視図である。以下、従来の圧電デバイスについて図を用いて説明する。
【0004】
図3に示すように、この圧電デバイス30は、パッケージ33の中に、回路素子34と圧電振動片32とを接着剤(図示せず)などで順次、固定、収納した後、蓋体31をパッケージ33の開口面に接合して、これら回路素子34と圧電振動片32を気密に封止することで得られる。
【0005】
このようにして得られた圧電デバイス30のパッケージ33の側面や裏面には、データ入出力用の端子として電極端子35や外部接続端子36が設けられており、これらの電極端子35や外部接続端子36を利用して、圧電デバイス30の特性を高安定化、高精度化するための制御データを回路素子34に電気信号で入力している。また、回路素子34に入力された制御データをもとに得られる圧電デバイス30の特性データを出力し、特性検査に利用することも可能となっている。外部接続端子36は圧電デバイスの回路素子への制御データの入力や圧電デバイスの特性検査等を実施した後も、電源電圧供給端子や発振出力端子等の外部機器との接続に利用される端子である。
【0006】
【特許文献1】特開2004−214799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記構成の圧電デバイスの場合、パッケージに設けられている各端子には、圧電デバイスの特性を高安定、高精度にするための制御データを回路素子に入力し、さらに製品として完成した後には、実用上この圧電デバイスにとっては不要となる電極端子も圧電デバイスのパッケージの表面に露出した状態のまま、製品の一部分として存在している。
【0008】
このため、これら不要な電極端子を通して、不要な電気信号が回路素子に入力されてしまい、その結果、不要なデータが回路素子に入力されるなどして、圧電デバイスの特性劣化を引き起こすという課題を有していた。
【0009】
そこで本発明は、圧電デバイスの回路素子に所定のデータを入力した後、不要な電気信号の誤入力による圧電デバイスの特性劣化を引き起こすことのない信頼性の高い圧電デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の圧電デバイスは、圧電振動片と回路素子とがパッケージの内部に収納された圧電デバイスにおいて、前記パッケージの外表面には前記回路素子および圧電振動片、または前記回路素子と前記圧電振動片のいずれかと電気的に接続され、前記回路素子への制御データの書込みまたは前記圧電デバイスの特性を出力する複数の電極端子が形成され、少なくとも一つの前記電極端子の表面が絶縁部材により被覆された構造とする。
【0011】
さらには、前記パッケージは底面部と側壁部により形成される凹部に前記圧電振動片と前記回路素子を収納するベースと、前記ベースの凹部を封止する蓋体とにより構成され、前記電極端子が前記ベースの底面部および側壁部、または底面部および側壁部のいずれか一方に形成されている圧電デバイスとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、圧電デバイスの回路素子に所定の制御データを入力し、さらに製品として完成した後には、実用上この圧電デバイスにとっては不要となる電極端子のうち、不要な電気信号が入力される恐れのある端子表面を絶縁部材で覆うことにより、これらの電極端子からの電気信号の誤入力を防ぐことが可能となり、圧電デバイスの特性劣化を引き起こすことのない信頼性の高い圧電デバイスを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の最良の実施形態について図1および図2を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の一実施例における圧電デバイスの構造を示す斜視図であり、(a)は本発明における圧電デバイスの構成を説明するための斜視図、(b)は本発明における圧電デバイスを上面から見た斜視図、(c)は本発明における圧電デバイスを底面から見た斜視図である。なお、(a)は本発明の圧電デバイスの構成をわかりやすく説明するため、構造の一部を切り取った状態の斜視図としている。
【0015】
図1に示すように、圧電デバイス10は、底面部13aと側壁部13bに制御データを入出力するための電極端子15ならびに外部接続端子16を有するベース13と、このベース13の開口部13cの内部に配置され、金や半田から成るバンプあるいは導電性接着剤などの接着部材(図示せず)を用いて、ベース13と機械的、電気的に接続固定される回路素子14および圧電振動片12と、これら回路素子14と圧電振動片12をベース13の開口部13c内部に気密に封止するための蓋体11と、電極端子15を覆うための樹脂、セラミックあるいはガラスなどの絶縁物から成る絶縁部材17で構成する。
【0016】
なお、回路素子14の電極パッド(図示せず)と、電極端子15や外部接続端子16とは配線(図示せず)でそれぞれつながっているので、電極端子15や外部接続端子16を通して、回路素子14はベース13の外部と、電気信号によるデータの入出力が可能となっている。
【0017】
圧電デバイス10を作製する過程で、電極端子15や外部接続端子16は、圧電デバイス10のデバイス特性を高安定化、高精度化するための制御データを回路素子14に入力したり、回路素子14に入力された制御データをもとに得られる圧電デバイス10のデバイス特性を出力するために用いられる。
【0018】
外部接続端子16は圧電デバイス10が製品として完成した後も外部機器の接続等に利用される端子であるが、電極端子15は回路素子14への制御データの入力や圧電デバイス10の特性検査の後には実用上不要となる端子である。
【0019】
この電極端子15が、ベース13の表面に露出した状態のまま存在していると、その電極端子15から回路素子14に不要な電気信号の進入が発生するなどして圧電デバイスの特性劣化を引き起こすが、本発明では、圧電デバイス10の回路素子14への制御データの入力や圧電デバイス10の特性検査の後不要となる電極端子15を絶縁部材17で覆うことにより、不要な電気信号の進入を防げるので、電気信号の誤入力による圧電デバイスの特性劣化が発生しなくなる。
【0020】
なお、絶縁部材17は、絶縁物の塗布、印刷、スパッタリングや蒸着などの成膜、あるいは、絶縁物の微粒子を吹き付けるエアロゾルデポジションなどの手法により形成する。
【実施例2】
【0021】
図2は本発明の他の実施例における圧電デバイスの構造を示す斜視図であり、(a)は本発明における圧電デバイスの底面の構造を説明するための斜視図、(b)は本発明における圧電デバイスを底面から見た斜視図である。
【0022】
図1に示す実施例では、電極端子がベースの側壁部にある場合を示したが、図2に示すように、電極端子25はベース22の底面部にあっても良い。
【0023】
なお、図1に示した実施例と同様に、電極端子25や外部接続端子26は配線(図示せず)で回路素子(図示せず)と接続されており、圧電デバイス20が製品として完成した後も外部接続端子26は利用されるが、電極端子25は実用上不要となるため、絶縁部材27で覆う構造となっている。
【0024】
本発明の実施例では、電極端子がベースと蓋体で構成されたパッケージの側面あるいは底面のどちらかに設けた場合で示したが、電極端子はパッケージの側面および底面の両方にあっても何ら問題ない。
【0025】
また、本発明の実施例では、電極端子の露出部分の周囲も含めて、絶縁部材で覆う構造としたが、少なくとも電極端子の露出部分が絶縁部材で覆われていれば、本発明と同様な効果が得られることは言うまでもない。
【0026】
さらに、本発明の実施例では、圧電デバイスの構造として、圧電振動片と回路素子を一つのパッケージの同じ空間に収納する場合を示したが、圧電デバイスとしては、一つのパッケージで別空間に圧電振動片および回路素子を各々収納する構造、あるいは、別々のパッケージに圧電振動片および回路素子を各々収納した後、両者を組み合わせる構造などであっても良く、すなわち、回路素子へデータを入出力するための端子を有するあらゆる圧電デバイスに対して適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、高精度の圧電デバイスに活用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明における圧電デバイスの一実施例を説明する斜視図。
【図2】本発明における圧電デバイスの他の実施例を説明する斜視図。
【図3】従来例における圧電デバイスを説明する斜視図。
【符号の説明】
【0029】
10 圧電デバイス
11 蓋体
12 圧電振動片
13 ベース
13a 底面部
13b 側壁部
13c 凹部
14 回路素子
15 電極端子
16 外部接続端子
17 絶縁部材
20 圧電デバイス
22 ベース
27 絶縁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動片と回路素子とがパッケージの内部に収納された圧電デバイスにおいて、
前記パッケージの外表面には前記回路素子および圧電振動片、または前記回路素子と前記圧電振動片のいずれかと電気的に接続され、前記回路素子への制御データの書込みまたは前記圧電デバイスの特性を出力する複数の電極端子が形成され、
少なくとも一つの前記電極端子の表面が絶縁部材により被覆されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記パッケージは底面部と側壁部により形成される凹部に前記圧電振動片と前記回路素子を収納するベースと、前記ベースの凹部を封止する蓋体とにより構成され、前記電極端子が前記ベースの底面部および側壁部、または底面部および側壁部のいずれか一方に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−258948(P2007−258948A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79276(P2006−79276)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000166948)シチズンミヨタ株式会社 (438)
【Fターム(参考)】