圧電振動片、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計並びに圧電振動片の製造方法
【課題】 低電力化を図ることができると共に、R1特性が低く振動特性が向上して高性能化を図ること。
【解決手段】 圧電材料からなる圧電板10と、圧電板の外表面上に形成され、所定の電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極11、12と、該一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続された一対のマウント電極13、14と、を備え、一対のマウント電極のうち一方のマウント電極14が、圧電板の一方の面(下面)上に形成され、他方のマウント電極14が圧電板を間にして一方のマウント電極に対して非対向状態となるように圧電板の他方の面(上面)上に形成されている圧電振動片2を提供する。
【解決手段】 圧電材料からなる圧電板10と、圧電板の外表面上に形成され、所定の電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極11、12と、該一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続された一対のマウント電極13、14と、を備え、一対のマウント電極のうち一方のマウント電極14が、圧電板の一方の面(下面)上に形成され、他方のマウント電極14が圧電板を間にして一方のマウント電極に対して非対向状態となるように圧電板の他方の面(上面)上に形成されている圧電振動片2を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶やタンタル酸リチウム等の圧電材料からなる圧電振動片、該圧電振動片を有する圧電振動子、該圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計並びに圧電振動片の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが提供されているが、その1つとして、圧電振動片が円筒状のケース内に封止されたシリンダパッケージタイプの圧電振動子が知られている(特許文献1から3参照)。
【0003】
この圧電振動子200は、図29に示すように、音叉型の圧電振動片201と、該圧電振動片201を内部に収納する有底円筒状のケース202と、圧電振動片201をケース202内に密閉させる気密端子203とを備えている。
圧電振動片201は、図30及び図31に示すように、各種の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、平行に配置され、基端側が基部210に一体的に固定された一対の振動腕部211と、該一対の振動腕部211の外表面上に形成されて一対の振動腕部211を振動させる一対の励振電極212、213と、引き出し電極214を介して一対の励振電極212、213に電気的に接続された一対のマウント電極215、216とを有している。
なお、図30は圧電振動片210を上面から見た図であり、図31は圧電振動片210を下面から見た図である。
【0004】
励振電極212、213は、マウント電極215、216を介して電圧が印加されるようになっており、電圧が印加されたときに一対の振動腕部211を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させている、なお、一対のマウント電極215、216は、圧電振動片201の両面にそれぞれ形成されている。
【0005】
気密端子203は、図29に示すように、金属材料で形成された環状のステム220と、該ステム220を貫くように配された2本のリード端子221と、該リード端子221とステム220とを絶縁状態で一体的に固定すると共にケース202内を密封させる充填材223とで構成されている。
2本のリード端子221は、ケース202内に突出して一対のマウント電極215、216に接続される部分がインナーリード221aとなり、ケース202外に突出している部分がアウターリード221bとなっている。そして、このアウターリード221bが、外部接続端子として機能するようになっている。
また、ケース202は、ステム220の外周に対して圧入されて嵌合固定されている。このケース202の圧入は、真空雰囲気下で行われているため、ケース202内の圧電振動片201を囲む空間は、真空に保たれた状態で密閉されている。
【0006】
このように構成された圧電振動子200は、2本のリード端子221のアウターリード221bにそれぞれ所定の電圧を駆動電圧として印加すると、電流がインナーリード221aからマウント電極215、216を介して圧電振動片201に流れる。これにより、圧電振動片201が所定の周波数で発振するようになっている。
【特許文献1】特開平8−298425号公報
【特許文献2】特開2001−144581号公報
【特許文献1】特開2001−217677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の圧電振動子200には、以下の課題が残されている。
始めに、近年、携帯電話機等に代表されるように、圧電振動子を内蔵する各種の電子機器の小型化が進んでいる。そのため、圧電振動子に関しても、さらなる小型化が求められている。現状、ケースの直径Dが1.2mmのものが存在するが、上述した小型化のニーズを受けて、1.0mmのもの、さらには1.0mmよりも小さい超小型化のものが検討され始めている。そこで、この小型化に対応するためリード端子の数が2本ではなく、1本のものが考えられている。
【0008】
これは、リード端子が2本のままでは、リード端子の径を小さくしたとしても、剛性が極端に低下して容易に変形し、互いの電気的な独立性を確保することができない可能性があるためである。そこで、リード端子を1本にしたものが考えられている。
リード端子を1本にした場合には、該リード端子上に圧電振動片の基部を載置すると共に、一対のマウント電極のうち一方のマウント電極とリード端子とを電気的に接続させる。また、ワイヤ等の線材を利用して、他方のマウント電極と気密端子のステムとを直接接続する。これにより、他方のマウント電極とステムとを電気的に接続することが可能となる。つまり、リード端子を1本にした場合には、リード端子及びステムに所定の駆動電圧を印加することで、圧電振動片を振動させることができるようになっている。
【0009】
ところで、従来の圧電振動片では、上述したような1本リードに対応させようとする場合に、R1特性(直列共振抵抗値)が高くなってしまう不都合があった。
詳細に説明すると、図30及び図31に示すように、圧電振動片201の両面には、それぞれ励振電極212、213、引き出し電極214、マウント電極215、216が形成されている。特に、基部210の両面には、極性の異なるマウント電極215、216がそれぞれ形成されている。つまり、基部210は、マウント電極215、216によって上下面側から挟まれたサンドイッチ構造となっている。これにより、マウント電極215、216は、基部210を間にして対向配置された状態となってしまうので、コンデンサの如く機能してマウント電極215、216間に静電容量が溜まってしまう問題があった。その結果、圧電振動片201自体のR1特性が高くなってしまう不都合が生じていた。従って、圧電振動片201の振動性能が劣ってしまい高性能な圧電振動子200にすることが困難であった。また、R1特性が高くなることで圧電振動片201の実効抵抗値Reが高くなってしまうので、低電力で作動させることが難しかった。
なお、実効抵抗値Reは、下記式で表されるものである。
Re=[R1(1+(C0/CL)2]
(式中におけるC0は圧電振動片201が元々持っている静電容量値であり、CLは定数である)
【0010】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、低電力化を図ることができると共に、R1特性が低く振動特性が向上して高性能化を図ることができる圧電振動片、該圧電振動片を製造する圧電振動片の製造方法を提供することである。
更に上記圧電振動片を有する圧電振動子、該圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る圧電振動片は、圧電材料からなる圧電板と、前記圧電板の外表面上に形成され、所定の電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極と、該一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続された一対のマウント電極と、を備え、前記一対のマウント電極のうち一方のマウント電極が、前記圧電板の一方の面上に形成され、他方のマウント電極が圧電板を間にして一方のマウント電極に対して非対向状態となるように圧電板の他方の面上に形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明に係る圧電振動片の製造方法は、圧電材料からなるウエハを利用して圧電振動片を一度に複数製造する方法であって、前記ウエハをフォトリソ技術によってエッチングして、該ウエハに複数の前記圧電板の外形形状をパターニングする外形形成工程と、複数の圧電板の外表面上に電極膜をパターニングして、所定の電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極と、該一対の励振電極に電気的に接続される一対のマウント電極とを形成する電極形成工程と、複数の前記圧電板を前記ウエハから切り離して小片化する切断工程と、を備え、前記電極形成工程の際、前記一対のマウント電極のうち一方のマウント電極を前記圧電板の一方の面上に形成すると共に、他方のマウント電極を、圧電板を間にして一方のマウント電極に対して非対向状態となるように圧電板の他方の面上に形成することを特徴とするものである。
【0013】
この発明に係る圧電振動片及び圧電振動片の製造方法においては、まず、水晶等の圧電材料からなるウエハをフォトリソ技術によりエッチングして、ウエハに複数の圧電板の外形形状をパターニングする外形形成工程を行う。次いで、これら複数の圧電板の外表面上に電極膜をパターニングして、一対の励振電極及び一対のマウント電極を形成する電極形成工程を行う。そして、複数の圧電板をウエハから切り離して小片化する切断工程を行う。これにより、1枚のウエハから、圧電板の外表面上に一対の励振電極及び一対のマウント電極が形成された圧電振動片を一度に複数製造することができる。
【0014】
特に、電極形成工程を行う際に、圧電板の一方の面上に一方のマウント電極が形成され、他方の面上に他方のマウント電極が形成されるように電極膜をパターニングする。つまり、片面に極性の異なるマウント電極を両方同時に形成するのではなく、片面に一方のマウント電極だけを形成し、もう一方の片面に極性の異なる他方のマウント電極だけを形成する。しかも、他方のマウント電極が、圧電板を間にして一方のマウント電極に対して非対向状態となるように形成する。つまり、圧電振動片を平面視したときに、一方のマウント電極と他方のマウント電極とが重なり合わないように形成する。
【0015】
これにより、圧電振動片は、従来のように基部が一対のマウント電極によって両面側から挟まれたサンドイッチ構造になることがない。従って、一対のマウント電極に所定の電圧を印加したときに、従来のように一対のマウント電極がコンデンサの如く機能することがなく、一対のマウント電極間に静電容量が溜まってしまう恐れがない。よって、圧電振動片自体のR1特性が高くなってしまうことを防止することができ、設計通りの低い値に維持することができる。従って、R1特性をできるだけ低い状態に保つことができ、振動特性が向上して高性能化された圧電振動片を製造することができる。また、R1特性を低く抑えることができるので、圧電振動片の実効抵抗値Reに関しても低く抑えることができ、低電力化を図ることができる。
【0016】
また、本発明に係る圧電振動片は、上記本発明の圧電振動片において、前記圧電板が、平行に配置された一対の振動腕部と、該一対の振動腕部の基端側を一体的に固定する基部と、を備え、前記一対の励振電極が、前記一対の振動腕部の外表面上に形成され、前記一方のマウント電極が前記基部の一方の面上に形成され、前記他方のマウント電極が基部の他方の面上に形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明に係る圧電振動片の製造方法は、上記本発明の製造方法において、前記外形形成工程の際、平行に配置された一対の振動腕部と、該一対の振動腕部の基端側を一体的に固定する基部とを有するように前記圧電板の外形形状をパターニングし、前記電極形成工程の際、前記一対の振動腕部の外表面上に前記一対の励振電極が形成されるようにパターニングすると共に、前記一方のマウント電極が前記基部の一方の面上に形成され、前記他方のマウント電極が基部の他方の面上に形成されるようにパターニングすることを特徴とするものである。
【0018】
この発明に係る圧電振動片及び圧電振動片の製造方法においては、外形形成工程の際、基部に基端側が一体的に固定された一対の振動腕部を有するように圧電板の外形形状をパターニングする。そして、電極形成工程の際に、一対の振動腕部の外表面上に一対の励振電極が形成されるように電極膜をパターニングすると共に、一方のマウント電極が基部の一方の面上に形成され、他方のマウント電極が基部の他方の面上に形成されるように電極膜をパターニングする。その結果、一般的に用いられる音叉型の圧電振動片とすることができる。しかも、一対のマウント電極が基部を間にして対向しないように形成されているので、R1特性が低く、振動特性が向上した高性能な音叉型の圧電振動片を得ることができる。
【0019】
また、本発明に係る圧電振動片は、上記本発明の圧電振動片において、前記一対の振動腕部には、両面にそれぞれ溝部が形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明に係る圧電振動片の製造方法は、上記本発明の圧電振動片の製造方法において、前記外形形成工程の際、前記一対の振動腕部の両面にそれぞれ溝部を形成することを特徴とするものである。
【0021】
この発明に係る圧電振動片及び圧電振動片の製造方法においては、一対の振動腕部の両面にそれぞれ溝部が形成されているので、一対の励振電極に所定の電圧を印加させたときに、一対の励振電極間における電界効率を上げることができる。よって、振動損失をより抑えることができ、振動特性をさらに向上することができる。
つまり、CI値(Crystal Impedance)をさらに低くすることができ、圧電振動片のさらなる高性能化を図ることができる。
【0022】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の圧電振動片を有することを特徴とするものである。
【0023】
この発明に係る圧電振動子においては、上述した圧電振動片を備えているので、圧電振動子自体の低電力化及び高性能化を図ることができる。
【0024】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の圧電振動子において、前記圧電振動片を内部に収納する導電性のケースと、環状に形成されて前記ケース内に圧入固定される導電性のステムと、該ステムを貫通した状態で配置され、ステムを間に挟んで一端側が前記一方のマウント電極に電気的に接続されるインナーリードとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリードとされた1本のリード端子と、該リード端子と前記ステムとを固定させる充填材とを有し、前記ケース内を密閉させる気密端子と、前記ケース内にて前記ステムと前記他方のマウント電極とを電気的に接続させる線材と、を備えていることを特徴とするものである。
【0025】
この発明に係る圧電振動子においては、気密端子によって密閉されたケース内に圧電振動片が収納されている。この際、圧電振動片は、一方のマウント電極がインナーリードに電気的に接続された状態でリード端子によって支持されている。また、他方のマウント電極は、線材を介して導電性のステムに電気的に接続されている。このステムは、導電性のケースに圧入固定されているので、ステム及び線材を介してケースと他方のマウント電極とが電気的に接続された状態となっている。これにより、リード端子のアウターリード及びケースに所定の電圧を印加することで、一対のマウント電極に電圧を印加することができるので、圧電振動片を振動させることができる。
特に、圧電振動片をケース内に密閉したシリンダパッケージタイプの圧電振動子とすることができるので、塵埃等の影響を受けることなく圧電振動片を振動させることができ、圧電振動片をさらに高精度に振動させることができる。しかも、リード端子が1本であるので、超小型な圧電振動子とすることも可能である。
【0026】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の圧電振動子において、前記圧電振動片を内部に収納するケースと、環状に形成されて前記ケース内に圧入固定されるステムと、該ステムを貫通した状態で配置され、ステムを間に挟んで一端側が前記一対のマウント電極にそれぞれ電気的に接続されるインナーリードとされ、他端側が外部にそれぞれ電気的に接続されるアウターリードとされた2本のリード端子と、該リード端子と前記ステムとを固定させる充填材とを有し、前記ケース内を密閉させる気密端子と、を備えていることを特徴とするものである。
【0027】
この発明に係る圧電振動子においては、気密端子によって密閉されたケース内に圧電振動片が収納されている。この際、圧電振動片は、一対のマウント電極が2本のリード端子のインナーリードにそれぞれ電気的に接続された状態で、該リード端子によって支持されている。これにより、2本のリード端子のアウターリードに所定の電圧を印加することで、一対のマウント電極に電圧を印加することができるので、圧電振動片を振動させることができる。
特に、圧電振動片をケース内に密閉したシリンダパッケージタイプの圧電振動子とすることができるので、塵埃等の影響を受けることなく圧電振動片を振動させることができ、圧電振動片をさらに高精度に振動させることができる。
【0028】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
【0029】
この発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に低電力化及び高性能化を図ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る圧電振動片及び圧電振動片の製造方法によれば、低電力化を図ることができると共に、R1特性が低く振動特性が向上した高性能な圧電振動片を得ることができる。しかも、一対のマウント電極の電極パターンを変更するだけであるので、コストをかけることなく容易に製造することができるうえ、圧電振動片の小型化に容易に対応することが可能である。
また、本発明に係る圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計によれば、上述した圧電振動片を備えているので、同様に低電力化及び高性能化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1実施形態を、図1から図12を参照して説明する。なお、本実施形態では、シリンダパッケージタイプであって、リード端子が1本の圧電振動子を例に挙げて説明する。
本実施形態の圧電振動子1は、図1から図12に示すように、圧電振動片2と、該圧電振動片2を内部に収納するケース3と、圧電振動子1をケース3内に密閉させる気密端子4と、ケース3内にて後述するステム20と他方のマウント電極14とを電気的に接続させるワイヤ(線材)5と、を備えている。
【0032】
圧電振動片2は、図4及び図5に示すように、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された圧電板10と、該圧電板10の外表面上に形成され、所定の電圧が印加されたときに圧電板10を振動させる一対の励振電極11、12と、該一対の励振電極11、12にそれぞれ電気的に接続された一対のマウント電極13、14と、を備えている。なお、図4は圧電振動片2を上面から見た図であり、図5は圧電振動片2を下面から見た図である。
一対のマウント電極13、14のうち一方のマウント電極13は、圧電板10の下面(一方の面)上に形成され、他方のマウント電極14が圧電板10を間にして一方のマウント電極13に対して非対向状態となるように圧電板10の上面(他方の面)上に形成されている。
【0033】
この圧電振動片2についてより詳細に説明すると、本実施形態の圧電振動片2は、平行に配置された一対の振動腕部10aと、該一対の振動腕部10aの基端側を一体的に固定する基部10bとで圧電板10が構成された音叉型の振動片である。
そして、一対の励振電極11、12は、一対の振動腕部10aの外表面上に形成されており、所定の電圧が印加されたときに、一対の振動腕部10aを互いに接近又は離間する方向に振動させる電極である。また、一対のマウント電極13、14は、引き出し電極15を介して一対の励振電極11、12に電気的に接続されている。
この際、一方のマウント電極13が、基部10bの下面上に形成され、他方のマウント電極14が、一方のマウント電極13に対して非対向状態となるように基部10bの上面上に形成されている。
これにより、図6に示すように、圧電振動片2を上面側から平面視したときに、一方のマウント電極13と他方のマウント電極14とが重なり合わないようになっている。
【0034】
なお、一対の振動腕部10aの先端には、図4及び図5に示すように、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜16が被膜されている。この重り金属膜16を利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部10aの周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができるようになっている。
【0035】
このように構成された圧電振動片2は、図1から3に示すように、ケース3内に収納された状態で気密端子4を構成するリード端子21のインナーリード21aにマウントされている。
ケース3は、導電性材料により有底円筒状に形成されており、気密端子4の後述するステム20の外周に対して圧入されて、嵌合固定されている。この際、ケース3とステム20とは、電気的に接続された状態になっている。なお、このケース3の圧入は、真空中で行われており、ケース3内の圧電振動片2を囲む空間が真空に保たれた状態となっている。また、本実施形態のケース3は、絞り成形されており、端面から外方に向けて突出した突起部3aを有している。この突起部3aは、例えば、断面円形状に形成されている。
【0036】
気密端子4は、ケース3内を密閉するものであって、ケース3内に圧入固定されるステム20と、該ステム20を貫通した状態で配置され、ステム20を間に挟んで一端側が圧電振動片2の一方のマウント電極13に電気的に接続されるインナーリード21aとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリード21bとされた1本のリード端子21と、該リード端子21とステム20とを固定させる充填材22とを有している。
上記ステム20は、金属材料(例えば、低炭素鋼(Fe)、鉄ニッケル合金(Fe−Ni)、鉄ニッケルコバルト合金(Fe−Ni−Co))によって環状に形成されたものである。また、充填材22の材料としては、例えば、ホウ珪酸ガラスである。なお、このステム20の外周には、リード端子21と同じ材料のメッキ(金属膜)が被膜されている。
【0037】
リード端子21は、例えば、ステム20と同じ材料である導電性材料から形成された板状(厚さが、例えば0.1mm程度)のものであって、ケース3内に突出している部分がインナーリード21aとなり、ケース3外に突出している部分がアウターリード21bとなっている。また、インナーリード21aは、先端が段状に形成されている。圧電振動片2は、この段状に形成された部分に基部10bが載置された状態で、金等のバンプBによって機械的にマウントされている。これにより、基部10bの下面上に形成された一方のマウント電極13とインナーリード21aとが電気的に接続された状態となっている。なお、本実施形態では、4つのバンプBによってマウントされている場合を例にしている。
一方、基部10bの上面上に形成された他方のマウント電極14とステム20との間には、上述したワイヤ5が接続されている。これにより、他方のマウント電極14と、ステム20と、ケース3とが、それぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0038】
なお、本実施形態の圧電振動子1を構成するステム20及びリード端子21のメッキの材質としては、耐熱ハンダメッキや、錫銅合金や金錫合金等が用いられる。また、ステム20の外周のメッキを介在させて、ケース3を真空中で冷間圧接させることにより、ケース3の内部を真空状態で気密封止できるようになっている。また、励振電極11、12、引き出し電極15及びマウント電極13、14は、クロム(Cr)と金(Au)との積層膜であり、水晶と密着性の良いクロム膜を下地として成膜した後に、表面に金の薄膜を施したものである。但し、この場合に限られず、例えば、クロムとニクロム(NiCr)の積層膜の表面にさらに金の薄膜を積層しても構わない。
【0039】
次に、上述した圧電振動片2並びに圧電振動子1の製造方法について、図7及び図8に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
始めに、圧電材料からなるウエハSを利用して、圧電振動片2を一度に複数製造する工程を行う。この工程を行うにあたって、まず所定のポリッシングが終了し、所定の厚みに高精度に仕上げられたウエハSを準備する(S10)。次いで、ウエハSをフォトリソ技術によってエッチングして、該ウエハSに複数の圧電板10の外形形状をパターニングする外形形成工程を行う(S20)。この工程について、具体的に説明する。
【0040】
まず、図9に示すように、ウエハSの両面にエッチング保護膜30をそれぞれ成膜する(S21)。このエッチング保護膜30としては、例えば、クロム(Cr)を数μm成膜する。次いで、エッチング保護膜30上に図示しないフォトレジスト膜を、フォトリソグラフィ技術によってパターニングする。この際、一対の振動腕部10aと基部10bとで構成される圧電板10の周囲を囲むようにパターニングする。そして、このフォトレジスト膜をマスクとしてエッチング加工を行い、マスクされていないエッチング保護膜30を選択的に除去する。そして、エッチング加工後にフォトレジスト膜を除去する。これにより、図10及び図11に示すように、エッチング保護膜30を上述した形状にパターニングすることができる(S22)。つまり、圧電板10の外形形状、即ち、一対の振動腕部10a及び基部10bの外形形状に沿ってパターニングすることができる。この際、複数の圧電板10の数だけパターニングを行う。なお、図11及び図12は、図10に示す切断線C−C線に沿った断面を示す図である。
【0041】
次いで、パターニングされたエッチング保護膜30をマスクとして、ウエハSの両面をそれぞれエッチング加工する(S23)。これにより、図12に示すように、エッチング保護膜30でマスクされていない領域を選択的に除去して、圧電板10の外形形状を形作ることができる。そして、マスクとしていたエッチング保護膜30を除去することで、外形形成工程が終了する。なお、複数の圧電板10は、後に行う切断工程を行うまで、図示しない連結部を介してウエハSに連結された状態となっている。
【0042】
次いで、複数の圧電板10の外表面上に図示しない電極膜を成膜すると共にパターニングを行って、励振電極11、12、引き出し電極15、マウント電極13、14をそれぞれ形成する電極形成工程を行う(S30)。また、これと同時に、同様の方法により、重り金属膜16を形成する(S40)。
特に電極形成工程を行う際に、一対の振動腕部10aの外表面上に一対の励振電極11、12が形成されるようにパターニングすると共に、一方のマウント電極13が基部10bの下面上に形成され、他方のマウント電極14が基部10bの上面に形成されるようにパターニングする。つまり、基部10bの片面に極性の異なる一対のマウント電極13、14を両方同時に形成するのではなく、片面(下面)に一方のマウント電極13だけを形成し、もう一方の片面(上面)に極性の異なる他方のマウント電極14だけを形成する。しかも、他方のマウント電極14が、基部10bを間にして一方のマウント電極13に対して非対向状態となるように形成する。つまり、平面視したときに、一方のマウント電極13と他方のマウント電極14とが、重なり合わないように形成する。
【0043】
次いで、ウエハSと圧電板10とを連結していた連結部を切断して、複数の圧電板10をウエハSから切り離して小片化する切断工程を行う(S50)。これにより、1枚のウエハSから、圧電板10の外表面に励振電極11、12、引き出し電極15及びマウント電極13、14の各電極が形成された圧電振動片2を一度に複数製造することができる。この時点で、圧電振動片2の製造工程が終了する。
【0044】
次に、圧電振動子1の製造工程を行う。なお、圧電振動片2をリード端子21にマウントする前に、共振周波数の粗調を行っておく(S60)。これは、重り金属膜16の粗調膜にレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては後に行う。これについては、後に説明する。
【0045】
圧電振動子1を製造するにあたって、まず、気密端子4を作製する気密端子作製工程を行う(S70)。具体的には、まず、ステム作製工程によりステム20を作製する(S71)。即ち、鉄ニッケルコバルト合金や鉄ニッケル合金等の導電性を有する板部材をランス加工した後、複数回の深絞り加工を行って有底の筒部材を形成する。そして、筒部材の底面に開口を形成すると共に、外形抜きを行って筒部材を板部材から切り離すことで、ステム20を作製する。
次いで、ステム20内に、リード端子21及び充填材22をそれぞれセットするセット工程を行う(S72)。まず、作製したステム20を、図示しない専用の治具にセットした後、予めリング状に焼結された充填材22をステム20の内部にセットすると共に、充填材22を貫通するようにリード端子21をセットする。
【0046】
上記セット工程により、ステム20とリード端子21と充填材22とを組み合わせた後、治具を加熱炉内に入れて1000℃前後の温度雰囲気で充填材22の焼成を行う(S73)。これにより、充填材22とリード端子21との間、充填材22とステム20との間が完全に封着されて、気密に耐えられる構造となる。そして、治具から取り出すことで、気密端子4を得ることができる。この時点で、気密端子作製工程が終了する。
【0047】
次に、リード端子21の外表面及びステム20の外周に同一材料の金属膜を湿式メッキ法で被膜させるメッキ工程を行う(S80)。そのための前処理として、リード端子21の外表面及びステム20の外周を洗浄すると共に、アルカリ溶液で脱脂した後、塩酸及び硫酸の溶液にて酸洗浄を行う。この前処理が終了した後、リード端子21の外表面及びステム20の外周面に下地金属膜を形成する。例えば、Cuメッキ或いはNiメッキを略2μm〜5μmの膜厚で被膜させる。続いて、下地金属膜上に仕上金属膜を形成する。例えば錫や銀等の単一材料の他、耐熱メッキや、錫銅合金、錫ビス膜合金、錫アンチモン合金等を、略8μm〜15μmの膜厚で被膜させる。
このように、下地金属膜及び仕上金属膜からなる金属膜を被膜させることで、インナーリード21aと圧電振動片2との接続を可能にすることができる。また、圧電振動片2の接続だけでなく、ステム20の外周に被膜された金属膜が柔らかく弾性変形する特性を有しているので、ステム20とケース3との冷間圧接を可能にすることができ、気密接合を行うことができる。
【0048】
続いて、金属膜の安定化を図るため、真空雰囲気の炉中でアニーリングを行う(S90)。例えば、170℃の温度で1時間の加熱を行う。これにより、下地金属膜の材料と仕上金属膜の材料との界面に形成される金属間化合物の組成を調整して、ウイスカの発生を抑制することができる。このアニーリングが終了した時点で、圧電振動片2をマウントするマウント工程を行うことができる。なお、金属膜を被膜する際に、湿式メッキ法で行った場合を例にしたが、この場合に限られず、例えば、蒸着法や化学気相法等で行っても構わない。
【0049】
なお、本実施形態では、アニーリングが終了した後、次に行うマウント工程のためにインナーリード21aの先端に形成された段部の部分に、金等の導電性のバンプBを4箇所形成する(S100)。そして、バンプBが形成された部分に、基部10bの下面上に形成された一方のマウント電極13を重ね合わせる。そして、バンプBを加熱しながら、該バンプBを介してインナーリード21aと圧電振動片2とを所定の圧力で重ね合わせる。これにより、圧電振動片2をインナーリード21aにマウントすることができる(S110)。即ち、一方のマウント電極13とインナーリード21aとが電気的に接続された状態で、圧電振動片2がリード端子21に機械的に支持される。
なお、バンプ接続する際に、加熱・加圧を行ってマウントしたが、超音波を利用してバンプ接続を行っても構わない。
【0050】
次いで、基部10bの上面に形成された他方のマウント電極14とステム20との間にワイヤ5をボンディングする(S120)。これにより、他方のマウント電極14とステム20との間が、ワイヤ5を介して電気的に接続された状態となる。次いで、マウントによる歪みをなくすために、所定の温度でベーキングを行う(S130)。続いて、ケース3を固定する前に、圧電振動片2の周波数調整(微調)を行う(S140)。この周波数調整について、具体的に説明すると、全体を真空チャンバーに入れた状態で、アウターリード21bとステム20との間に電圧を印加して圧電振動片2を振動させる。そして、周波数を計測しながら、レーザにより重り金属膜16の微調膜を蒸発させることで、周波数の調整を行う。この周波数調整を行うことで、予め決められた周波数の範囲内に圧電振動片2の周波数を調整することができる。
【0051】
なお、上記微調及び先に行った粗調の際に、レーザの照射により重り金属膜16を蒸発させることで、周波数調整を行ったが、レーザではなくアルゴンイオンを利用しても構わない。この場合には、アルゴンイオンの照射によりスパッタリングを行い、重り金属膜16を除去することで周波数調整を行う。
【0052】
次に、マウントされた圧電振動片2を内部に収納するようにケース3をステム20に圧入し、圧電振動片2を気密封止する封止工程を行う(S150)。具体的に説明すると、真空中で所定の荷重を加えながらケース3を気密端子4のステム20の外周に圧入する。すると、ステム20の外周に形成された金属膜が弾性変形するので、冷間圧接により気密封止することができる。これにより、ケース3内に圧電振動片2を密閉して真空封止することができる。また、ケース3を固定することで、他方のマウント電極14とケース3とを電気的に接続した状態にすることができる。
なお、この工程を行う前に、圧電振動片2、ケース3及び気密端子4を十分に加熱して、表面吸着水分等を脱離させておくことが好ましい。
【0053】
そして、ケース3の固定が終了した後、スクリーニングを行う(S160)。このスクリーニングは、周波数や共振抵抗値の安定化を図ると共に、ケース3を圧入した嵌合部に圧縮応力に起因する金属ウイスカが発生してしまうことを抑制するために行うものである。スクリーニング終了後、内部の電気特性検査を行う(S170)。即ち、圧電振動片2の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。この結果、図1に示す圧電振動子1を一度に複数製造することができる。
【0054】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、アウターリード21bとケース3との間に、所定の駆動電圧を印加する。これにより、マウント電極13、14及び引き出し電極15を介して、励振電極11、12に電流を流すことができ、一対の振動腕部10aを所定の周波数で振動させることができる。そして、一対の振動腕部10aの振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0055】
特に、本実施形態の圧電振動片2は、従来のように基部10bが一対のマウント電極13、14によって両面側から挟まれたサンドイッチ構造とはなっていない。従って、一対のマウント電極13、14に所定の電圧を印加したときに、従来のように一対のマウント電極13、14がコンデンサの如く機能することがなく、一対のマウント電極13、14間に静電容量が溜まってしまう恐れがない。よって、圧電振動片2自体のR1特性が高くなってしまうことを防止することができ、設計通りの低い値に維持することができる。従って、R1特性をできるだけ低い状態に保つことができ、振動特性が向上して高性能化された音叉型の圧電振動片2とすることができる。その結果、圧電振動子1自体の高性能化を図ることができる。
また、R1特性を低く抑えることができるので、圧電振動片2の実効抵抗値Reに関しても低く抑えることができる。従って、効率良く圧電振動子1を作動させることができ、低電力化を図ることができる。
【0056】
更に、本実施形態の圧電振動子1は、圧電振動片2をケース3内に密閉したシリンダパッケージタイプであるので、塵埃等の影響を受けることなく圧電振動片2を振動させることができ、この点においても高精度に圧電振動片2を振動させることができる。しかも、リード端子21が1本であるので、2本の場合と違い、リード端子同士の電気的な独立性を確保しながらケース3のサイズを小さくする等といった設計を行う必要がない。よって、気密端子4やケース3のサイズをより小さく設計することができ、例えばケース3の径が1.0mm以下といった超小型化を図ることも可能である。
【0057】
なお、上記第1実施形態では、圧電振動片2を円筒状のケース3内に単に収納した圧電振動子1としたが、図13から図16に示すように、さらにケース3の周囲を樹脂モールド部35でパッケージングした表面実装型の圧電振動子1にしても構わない。
即ち、この場合の圧電振動子1は、さらに樹脂モールド部35及び外部接続端子36を備えている。また、この場合のアウターリード21bは、略直角に2回折り曲げられており、一部が樹脂モールド部35の底面に露出すると共に、外方に突出した状態となっている。
外部接続端子36は、平板状の導電性部材が略直角に折り曲げられて断面L型に形成されたものであり、ケース3を間に挟んでアウターリード21bの反対側に位置している。この際、外部接続端子36は、アウターリード21bと同様に一部が樹脂モールド部35の底面に露出すると共に、外方に突出した状態となっている。また、外部接続端子36の残りの一部は、ケース3の端面に対して対向するように配置されている。そして、この対向した部分には、ケース3の突起部3aが押し込み可能とされ、押し込まれたときに弾性力により突起部3aを保持する嵌合溝36aが形成されている。これにより、突起部3aと外部接続端子36とは、機械的に強固に接続されたうえ、電気的にも接続された状態となっている。
【0058】
樹脂モールド部35は、絶縁性の樹脂(例えば、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂や液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂)で略直方体状にモールド成形されたものであり、アウターリード21b及び外部接続端子36の一部を上述したように露出させた状態で、ケース3を内部に埋入させている。なお、本実施形態の樹脂モールド部35は、アウターリード21b側の一部が斜めにカットされており、向きを目視で確認できるようになっている。
【0059】
このように構成された圧電振動子1によれば、樹脂モールド部35を有しているので、回路基板等に直接載置することができ、容易に表面実装することが可能である。特に、アウターリード21b及び外部接続端子36の一部が、樹脂モールド部35の底面に露出しているので、表面実装したときに座りが良くなり姿勢が安定する。よって、実装作業を行い易い。しかも樹脂モールド部35は、アウターリード21b側が斜めにカットされているので、向きを間違えることなく確実に実装作業を行うことができる。
【0060】
また、上記第1実施形態において、図17及び図18に示すように、一対の振動腕部10aの両面にそれぞれ溝部37が形成された溝付きの圧電振動片2としても構わない。
この場合の圧電振動片2は、一対の振動腕部10aの両面に該振動腕部10aの長手方向に沿ってそれぞれ形成された溝部37を備えている。この際、溝部37は、振動腕部10aの基端側から略中間付近まで形成されている。また、一方の励振電極11が、一方の振動腕部10aの溝部37上と他方の振動腕部10aの両側面上とに主に形成され、他方の励振電極12が、一方の振動腕部10aの両側面上と他方の振動腕部10aの溝部37上とに主に形成されている。
【0061】
このように構成された圧電振動片2によれば、溝部37が形成されているため、一対の励振電極11、12を極力対向させた状態にすることができる。よって、一対の励振電極11、12間に所定の駆動電圧を印加したときに、一対の励振電極11、12間における電界効率を上げることができる。そのため、振動損失をより抑えることができ、振動特性をさらに向上することができる。つまり、CI値をさらに低くすることができ、圧電振動片2のさらなる高性能化を図ることができる。
なお、溝部37を形成するには、外形形成工程において圧電板10の外形形状をパターニングした後に、引き続きフォトリソ技術によって一対の振動腕部10aの両面に溝部37を形成すれば良い。
【0062】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態を、図19から図23を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、リード端子21が1本であったが、第2実施形態の圧電振動子40はリード端子21を2本備えている点である。また、第2実施形態では、圧電振動片41がハンマーヘッドタイプとなっている点が異なっている。
【0063】
即ち、本実施形態の圧電振動片41は、図19に示すように、一対の振動腕部10aが略中間付近から先端に亘って横幅が大きくなるように設計されており、この部分が錘部となっている。即ち、この錘部の横幅W1は、中間付近の横幅W2の倍近い大きさとなっている。これにより、一対の振動腕部10aは、錘部が形成されている分だけ、慣性モーメントが増大するようになっている。よって、一対の振動腕部10aの長さL1を短くすることができ、その結果、圧電振動片41の全長L2に関しても短く設計することが可能とされている。
【0064】
なお、本実施形態の圧電振動片41の場合であっても、図21及び図22に示すように、基部10bの下面上に一方のマウント電極13が形成され、基部10bの上面上に他方のマウント電極14が形成されている。そして、これら一対のマウント電極13、14は、基部10bを間にして非対向状態に形成されており、平面視したときに重なり合わないようになっている。なお、図21は圧電振動片41を上面から見た図であり、図22は圧電振動片41を下面から見た図である。
【0065】
また、本実施形態の気密端子4は、図23に示すように、板状に形成された2本のリード端子21を備えている。これら2本のリード端子21は、ステム20から突出している長さが異なっており、インナーリード21aの長さが異なっている。これにより、図20に示すように、一方のインナーリード21a上に圧電振動片41の一方のマウント電極13が面接触した状態で電気的及び機械的に接続されている。なお、一方のインナーリード21aと一方のマウント電極13とは、図示しない金等のバンプを利用してバンプ接続されている。
また、他方のインナーリード21aは、基部10bの側面に当接している。そして、他方のインナーリード21aと他方のマウント電極14とは、例えば、導電性接着材42によって電気的及び機械的に接続されている。なお、導電性接着材42としては、例えば、合成樹脂等を利用したバインダー成分に、銀粒子等の荷電粒子を混入したもので、機械的接合と電気的接合とを同時に達成することができるものである。
【0066】
このように構成された圧電振動子40を作動させる場合には、2本のリード端子21のアウターリード21bに対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、一対の励振電極11、12に電流を流すことができ、一対の振動腕部10aを所定の周波数で振動させることができる。本実施形態の場合であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0067】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態を、図24を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第3実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、リード端子21が1本であったが、第3実施形態ではリード端子21が2本とされている点である。
【0068】
即ち、本実施形態の圧電振動子50は、図24に示すように、2本のリード端子21を有する気密端子4を備えている。本実施形態の2本のリード端子21は、円柱状に形成されており、圧電振動片51を両面側から挟み込むように配置されている。即ち、一方のリード端子21のインナーリード21aは、圧電振動片51の下面側に配置され、他方のリード端子21のインナーリード21aは圧電振動片51の上面側に配置されている。これにより、圧電振動片51は、一方のインナーリード21aが一方のマウント電極13に電気的に接続されると共に、他方のインナーリード21aが他方のマウント電極14に電気的に接続された状態で、2本のリード端子21によって機械的に固定されている。
【0069】
なお、本実施形態の圧電振動片51の場合であっても、2本のリード端子21の位置に応じて、基部10bの下面上に一方のマウント電極13が形成され、基部10bの上面上に他方のマウント電極14が形成されている。そして、これら一対のマウント電極13、14は、基部10bを間にして非対向状態に形成されており、平面視したときに重なり合わないようになっている。
【0070】
このように構成された圧電振動子50を作動させる場合には、2本のリード端子21のアウターリード21bに対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、一対の励振電極11、12に電流を流すことができ、一対の振動腕部10aを所定の周波数で振動させることができる。本実施形態の場合であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0071】
なお、本実施形態の圧電振動片51の基部10bの両側には、基部10bの幅寸法を部分的に短縮するように切り欠き部(以下、ノッチと称する)10cが形成されている。このノッチ10cは、一対の振動腕部10aから適切な範囲離れた位置に形成されている。このノッチ10cは、一対の振動腕部10aが振動した際に、振動の垂直成分(厚み方向の成分)に起因する基部10bの撓みを抑えて、共振抵抗値のばらつきを低減するものである。このノッチ10cは、必須なものではないが、高性能化を図ることができる点で形成することが好ましい。
【0072】
また、上述した第3実施形態では、音叉型の圧電振動片51を例に挙げて説明したが、音叉型に限られず、例えば、図25に示すように、厚み滑り振動モードで振動する圧電振動片60であっても構わない。なお、第1実施形態及び第2実施形態についても、同様である。
【0073】
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図26を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図26に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片2が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0074】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、該圧電振動子1内の圧電振動片2が振動する。この振動は、圧電振動片2が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0075】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、発振器100自体の低電力化及び高性能化を図ることができ、製品の信頼性を向上することができる。また、これに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0076】
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図27を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0077】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。
この携帯情報機器110は、図27に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0078】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0079】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片2が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0080】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0081】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0082】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0083】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0084】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器110自体も同様に低電力化及び高性能化を図ることができ、製品の信頼性を向上することができる。また、これに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0085】
次に、本発明に係る電波時計130の一実施形態について、図28を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図28に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0086】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0087】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0088】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0089】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、電波時計130自体も同様に低電力化及び高品質化を図ることができ、製品の信頼性を向上することができる。またこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0090】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明に係る第1実施形態の圧電振動子のケースの中身を見た図であって、圧電振動片を平面視した状態の図である。
【図2】図1に示す圧電振動子を側方から見た図である。
【図3】図1に示す圧電振動片を矢印A方向から見た図である。
【図4】図1に示す圧電振動片を上面から見た図である。
【図5】図1に示す圧電振動片を下面から見た図である。
【図6】図1に示す圧電振動片を上面から見た図であって、一対のマウント電極の位置関係を説明するための図である。
【図7】図1に示す圧電振動子を製造する際のフローチャートである。
【図8】図7に示すフローチャートの続きである。
【図9】図1に示す圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、ウエハの両面にエッチング保護膜を形成した状態を示す図である。
【図10】図9に示す状態から、エッチング保護膜を圧電振動片の圧電板の外形形状にパターニングした状態を示す図である。
【図11】図10に示す断面矢視C−C図である。
【図12】図11に示す状態から、エッチング保護膜をマスクとしてウエハをエッチング加工した状態を示す図である。
【図13】本発明に係る圧電振動子の変形例を示す図であって、ケースの周囲をモールド樹脂部でモールドした表面実装型の圧電振動子の斜視図である。
【図14】図13に示す圧電振動子を矢印D方向から見た図である。
【図15】図13に示す圧電振動子を矢印E方向から見た図である。
【図16】図13に示す圧電振動子を矢印F方向から見た図である。
【図17】第1実施形態の圧電振動片の変形例を示す図であって、一対の振動腕部の両面に溝部が形成された圧電振動片の上面図である。
【図18】図17に示す断面矢視G−G図である。
【図19】本発明に係る第2実施形態の圧電振動子を示す斜視図である。
【図20】図19に示す断面矢視H−H図である。
【図21】図19に示す圧電振動片を上面から見た図である。
【図22】図19に示す圧電振動片を下面から見た図である。
【図23】図19に示す気密端子の斜視図である。
【図24】本発明に係る第3実施形態の圧電振動子を示す断面図である。
【図25】第3実施形態の圧電振動子の変形例を示す図であって、厚み滑り振動する圧電振動片を有する圧電振動子の断面図である。
【図26】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図27】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図28】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図29】従来の圧電振動子の一例を示す斜視図である。
【図30】図29に示す圧電振動片を上面から見た図である。
【図31】図29に示す圧電振動片を下面から見た図である。
【符号の説明】
【0092】
S…ウエハ
1、40、50…圧電振動子
2、41、51、60…圧電振動片
3…ケース
4…気密端子
5…ワイヤ(線材)
10…圧電板
10a…振動腕部
10b…基部
11、12…励振電極
13…一方のマウント電極
14…他方のマウント電極
20…ステム
21…リード端子
21a…インナーリード
21b…アウターリード
37…溝部
22…充填材
100…発振器
101…発振器の集積回路
110…携帯情報機器(電子機器)
113…携帯情報機器の計時部
130…電波時計
131…電波時計のフィルタ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶やタンタル酸リチウム等の圧電材料からなる圧電振動片、該圧電振動片を有する圧電振動子、該圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計並びに圧電振動片の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが提供されているが、その1つとして、圧電振動片が円筒状のケース内に封止されたシリンダパッケージタイプの圧電振動子が知られている(特許文献1から3参照)。
【0003】
この圧電振動子200は、図29に示すように、音叉型の圧電振動片201と、該圧電振動片201を内部に収納する有底円筒状のケース202と、圧電振動片201をケース202内に密閉させる気密端子203とを備えている。
圧電振動片201は、図30及び図31に示すように、各種の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、平行に配置され、基端側が基部210に一体的に固定された一対の振動腕部211と、該一対の振動腕部211の外表面上に形成されて一対の振動腕部211を振動させる一対の励振電極212、213と、引き出し電極214を介して一対の励振電極212、213に電気的に接続された一対のマウント電極215、216とを有している。
なお、図30は圧電振動片210を上面から見た図であり、図31は圧電振動片210を下面から見た図である。
【0004】
励振電極212、213は、マウント電極215、216を介して電圧が印加されるようになっており、電圧が印加されたときに一対の振動腕部211を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させている、なお、一対のマウント電極215、216は、圧電振動片201の両面にそれぞれ形成されている。
【0005】
気密端子203は、図29に示すように、金属材料で形成された環状のステム220と、該ステム220を貫くように配された2本のリード端子221と、該リード端子221とステム220とを絶縁状態で一体的に固定すると共にケース202内を密封させる充填材223とで構成されている。
2本のリード端子221は、ケース202内に突出して一対のマウント電極215、216に接続される部分がインナーリード221aとなり、ケース202外に突出している部分がアウターリード221bとなっている。そして、このアウターリード221bが、外部接続端子として機能するようになっている。
また、ケース202は、ステム220の外周に対して圧入されて嵌合固定されている。このケース202の圧入は、真空雰囲気下で行われているため、ケース202内の圧電振動片201を囲む空間は、真空に保たれた状態で密閉されている。
【0006】
このように構成された圧電振動子200は、2本のリード端子221のアウターリード221bにそれぞれ所定の電圧を駆動電圧として印加すると、電流がインナーリード221aからマウント電極215、216を介して圧電振動片201に流れる。これにより、圧電振動片201が所定の周波数で発振するようになっている。
【特許文献1】特開平8−298425号公報
【特許文献2】特開2001−144581号公報
【特許文献1】特開2001−217677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の圧電振動子200には、以下の課題が残されている。
始めに、近年、携帯電話機等に代表されるように、圧電振動子を内蔵する各種の電子機器の小型化が進んでいる。そのため、圧電振動子に関しても、さらなる小型化が求められている。現状、ケースの直径Dが1.2mmのものが存在するが、上述した小型化のニーズを受けて、1.0mmのもの、さらには1.0mmよりも小さい超小型化のものが検討され始めている。そこで、この小型化に対応するためリード端子の数が2本ではなく、1本のものが考えられている。
【0008】
これは、リード端子が2本のままでは、リード端子の径を小さくしたとしても、剛性が極端に低下して容易に変形し、互いの電気的な独立性を確保することができない可能性があるためである。そこで、リード端子を1本にしたものが考えられている。
リード端子を1本にした場合には、該リード端子上に圧電振動片の基部を載置すると共に、一対のマウント電極のうち一方のマウント電極とリード端子とを電気的に接続させる。また、ワイヤ等の線材を利用して、他方のマウント電極と気密端子のステムとを直接接続する。これにより、他方のマウント電極とステムとを電気的に接続することが可能となる。つまり、リード端子を1本にした場合には、リード端子及びステムに所定の駆動電圧を印加することで、圧電振動片を振動させることができるようになっている。
【0009】
ところで、従来の圧電振動片では、上述したような1本リードに対応させようとする場合に、R1特性(直列共振抵抗値)が高くなってしまう不都合があった。
詳細に説明すると、図30及び図31に示すように、圧電振動片201の両面には、それぞれ励振電極212、213、引き出し電極214、マウント電極215、216が形成されている。特に、基部210の両面には、極性の異なるマウント電極215、216がそれぞれ形成されている。つまり、基部210は、マウント電極215、216によって上下面側から挟まれたサンドイッチ構造となっている。これにより、マウント電極215、216は、基部210を間にして対向配置された状態となってしまうので、コンデンサの如く機能してマウント電極215、216間に静電容量が溜まってしまう問題があった。その結果、圧電振動片201自体のR1特性が高くなってしまう不都合が生じていた。従って、圧電振動片201の振動性能が劣ってしまい高性能な圧電振動子200にすることが困難であった。また、R1特性が高くなることで圧電振動片201の実効抵抗値Reが高くなってしまうので、低電力で作動させることが難しかった。
なお、実効抵抗値Reは、下記式で表されるものである。
Re=[R1(1+(C0/CL)2]
(式中におけるC0は圧電振動片201が元々持っている静電容量値であり、CLは定数である)
【0010】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、低電力化を図ることができると共に、R1特性が低く振動特性が向上して高性能化を図ることができる圧電振動片、該圧電振動片を製造する圧電振動片の製造方法を提供することである。
更に上記圧電振動片を有する圧電振動子、該圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る圧電振動片は、圧電材料からなる圧電板と、前記圧電板の外表面上に形成され、所定の電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極と、該一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続された一対のマウント電極と、を備え、前記一対のマウント電極のうち一方のマウント電極が、前記圧電板の一方の面上に形成され、他方のマウント電極が圧電板を間にして一方のマウント電極に対して非対向状態となるように圧電板の他方の面上に形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明に係る圧電振動片の製造方法は、圧電材料からなるウエハを利用して圧電振動片を一度に複数製造する方法であって、前記ウエハをフォトリソ技術によってエッチングして、該ウエハに複数の前記圧電板の外形形状をパターニングする外形形成工程と、複数の圧電板の外表面上に電極膜をパターニングして、所定の電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極と、該一対の励振電極に電気的に接続される一対のマウント電極とを形成する電極形成工程と、複数の前記圧電板を前記ウエハから切り離して小片化する切断工程と、を備え、前記電極形成工程の際、前記一対のマウント電極のうち一方のマウント電極を前記圧電板の一方の面上に形成すると共に、他方のマウント電極を、圧電板を間にして一方のマウント電極に対して非対向状態となるように圧電板の他方の面上に形成することを特徴とするものである。
【0013】
この発明に係る圧電振動片及び圧電振動片の製造方法においては、まず、水晶等の圧電材料からなるウエハをフォトリソ技術によりエッチングして、ウエハに複数の圧電板の外形形状をパターニングする外形形成工程を行う。次いで、これら複数の圧電板の外表面上に電極膜をパターニングして、一対の励振電極及び一対のマウント電極を形成する電極形成工程を行う。そして、複数の圧電板をウエハから切り離して小片化する切断工程を行う。これにより、1枚のウエハから、圧電板の外表面上に一対の励振電極及び一対のマウント電極が形成された圧電振動片を一度に複数製造することができる。
【0014】
特に、電極形成工程を行う際に、圧電板の一方の面上に一方のマウント電極が形成され、他方の面上に他方のマウント電極が形成されるように電極膜をパターニングする。つまり、片面に極性の異なるマウント電極を両方同時に形成するのではなく、片面に一方のマウント電極だけを形成し、もう一方の片面に極性の異なる他方のマウント電極だけを形成する。しかも、他方のマウント電極が、圧電板を間にして一方のマウント電極に対して非対向状態となるように形成する。つまり、圧電振動片を平面視したときに、一方のマウント電極と他方のマウント電極とが重なり合わないように形成する。
【0015】
これにより、圧電振動片は、従来のように基部が一対のマウント電極によって両面側から挟まれたサンドイッチ構造になることがない。従って、一対のマウント電極に所定の電圧を印加したときに、従来のように一対のマウント電極がコンデンサの如く機能することがなく、一対のマウント電極間に静電容量が溜まってしまう恐れがない。よって、圧電振動片自体のR1特性が高くなってしまうことを防止することができ、設計通りの低い値に維持することができる。従って、R1特性をできるだけ低い状態に保つことができ、振動特性が向上して高性能化された圧電振動片を製造することができる。また、R1特性を低く抑えることができるので、圧電振動片の実効抵抗値Reに関しても低く抑えることができ、低電力化を図ることができる。
【0016】
また、本発明に係る圧電振動片は、上記本発明の圧電振動片において、前記圧電板が、平行に配置された一対の振動腕部と、該一対の振動腕部の基端側を一体的に固定する基部と、を備え、前記一対の励振電極が、前記一対の振動腕部の外表面上に形成され、前記一方のマウント電極が前記基部の一方の面上に形成され、前記他方のマウント電極が基部の他方の面上に形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明に係る圧電振動片の製造方法は、上記本発明の製造方法において、前記外形形成工程の際、平行に配置された一対の振動腕部と、該一対の振動腕部の基端側を一体的に固定する基部とを有するように前記圧電板の外形形状をパターニングし、前記電極形成工程の際、前記一対の振動腕部の外表面上に前記一対の励振電極が形成されるようにパターニングすると共に、前記一方のマウント電極が前記基部の一方の面上に形成され、前記他方のマウント電極が基部の他方の面上に形成されるようにパターニングすることを特徴とするものである。
【0018】
この発明に係る圧電振動片及び圧電振動片の製造方法においては、外形形成工程の際、基部に基端側が一体的に固定された一対の振動腕部を有するように圧電板の外形形状をパターニングする。そして、電極形成工程の際に、一対の振動腕部の外表面上に一対の励振電極が形成されるように電極膜をパターニングすると共に、一方のマウント電極が基部の一方の面上に形成され、他方のマウント電極が基部の他方の面上に形成されるように電極膜をパターニングする。その結果、一般的に用いられる音叉型の圧電振動片とすることができる。しかも、一対のマウント電極が基部を間にして対向しないように形成されているので、R1特性が低く、振動特性が向上した高性能な音叉型の圧電振動片を得ることができる。
【0019】
また、本発明に係る圧電振動片は、上記本発明の圧電振動片において、前記一対の振動腕部には、両面にそれぞれ溝部が形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明に係る圧電振動片の製造方法は、上記本発明の圧電振動片の製造方法において、前記外形形成工程の際、前記一対の振動腕部の両面にそれぞれ溝部を形成することを特徴とするものである。
【0021】
この発明に係る圧電振動片及び圧電振動片の製造方法においては、一対の振動腕部の両面にそれぞれ溝部が形成されているので、一対の励振電極に所定の電圧を印加させたときに、一対の励振電極間における電界効率を上げることができる。よって、振動損失をより抑えることができ、振動特性をさらに向上することができる。
つまり、CI値(Crystal Impedance)をさらに低くすることができ、圧電振動片のさらなる高性能化を図ることができる。
【0022】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の圧電振動片を有することを特徴とするものである。
【0023】
この発明に係る圧電振動子においては、上述した圧電振動片を備えているので、圧電振動子自体の低電力化及び高性能化を図ることができる。
【0024】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の圧電振動子において、前記圧電振動片を内部に収納する導電性のケースと、環状に形成されて前記ケース内に圧入固定される導電性のステムと、該ステムを貫通した状態で配置され、ステムを間に挟んで一端側が前記一方のマウント電極に電気的に接続されるインナーリードとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリードとされた1本のリード端子と、該リード端子と前記ステムとを固定させる充填材とを有し、前記ケース内を密閉させる気密端子と、前記ケース内にて前記ステムと前記他方のマウント電極とを電気的に接続させる線材と、を備えていることを特徴とするものである。
【0025】
この発明に係る圧電振動子においては、気密端子によって密閉されたケース内に圧電振動片が収納されている。この際、圧電振動片は、一方のマウント電極がインナーリードに電気的に接続された状態でリード端子によって支持されている。また、他方のマウント電極は、線材を介して導電性のステムに電気的に接続されている。このステムは、導電性のケースに圧入固定されているので、ステム及び線材を介してケースと他方のマウント電極とが電気的に接続された状態となっている。これにより、リード端子のアウターリード及びケースに所定の電圧を印加することで、一対のマウント電極に電圧を印加することができるので、圧電振動片を振動させることができる。
特に、圧電振動片をケース内に密閉したシリンダパッケージタイプの圧電振動子とすることができるので、塵埃等の影響を受けることなく圧電振動片を振動させることができ、圧電振動片をさらに高精度に振動させることができる。しかも、リード端子が1本であるので、超小型な圧電振動子とすることも可能である。
【0026】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の圧電振動子において、前記圧電振動片を内部に収納するケースと、環状に形成されて前記ケース内に圧入固定されるステムと、該ステムを貫通した状態で配置され、ステムを間に挟んで一端側が前記一対のマウント電極にそれぞれ電気的に接続されるインナーリードとされ、他端側が外部にそれぞれ電気的に接続されるアウターリードとされた2本のリード端子と、該リード端子と前記ステムとを固定させる充填材とを有し、前記ケース内を密閉させる気密端子と、を備えていることを特徴とするものである。
【0027】
この発明に係る圧電振動子においては、気密端子によって密閉されたケース内に圧電振動片が収納されている。この際、圧電振動片は、一対のマウント電極が2本のリード端子のインナーリードにそれぞれ電気的に接続された状態で、該リード端子によって支持されている。これにより、2本のリード端子のアウターリードに所定の電圧を印加することで、一対のマウント電極に電圧を印加することができるので、圧電振動片を振動させることができる。
特に、圧電振動片をケース内に密閉したシリンダパッケージタイプの圧電振動子とすることができるので、塵埃等の影響を受けることなく圧電振動片を振動させることができ、圧電振動片をさらに高精度に振動させることができる。
【0028】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
【0029】
この発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に低電力化及び高性能化を図ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る圧電振動片及び圧電振動片の製造方法によれば、低電力化を図ることができると共に、R1特性が低く振動特性が向上した高性能な圧電振動片を得ることができる。しかも、一対のマウント電極の電極パターンを変更するだけであるので、コストをかけることなく容易に製造することができるうえ、圧電振動片の小型化に容易に対応することが可能である。
また、本発明に係る圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計によれば、上述した圧電振動片を備えているので、同様に低電力化及び高性能化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1実施形態を、図1から図12を参照して説明する。なお、本実施形態では、シリンダパッケージタイプであって、リード端子が1本の圧電振動子を例に挙げて説明する。
本実施形態の圧電振動子1は、図1から図12に示すように、圧電振動片2と、該圧電振動片2を内部に収納するケース3と、圧電振動子1をケース3内に密閉させる気密端子4と、ケース3内にて後述するステム20と他方のマウント電極14とを電気的に接続させるワイヤ(線材)5と、を備えている。
【0032】
圧電振動片2は、図4及び図5に示すように、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された圧電板10と、該圧電板10の外表面上に形成され、所定の電圧が印加されたときに圧電板10を振動させる一対の励振電極11、12と、該一対の励振電極11、12にそれぞれ電気的に接続された一対のマウント電極13、14と、を備えている。なお、図4は圧電振動片2を上面から見た図であり、図5は圧電振動片2を下面から見た図である。
一対のマウント電極13、14のうち一方のマウント電極13は、圧電板10の下面(一方の面)上に形成され、他方のマウント電極14が圧電板10を間にして一方のマウント電極13に対して非対向状態となるように圧電板10の上面(他方の面)上に形成されている。
【0033】
この圧電振動片2についてより詳細に説明すると、本実施形態の圧電振動片2は、平行に配置された一対の振動腕部10aと、該一対の振動腕部10aの基端側を一体的に固定する基部10bとで圧電板10が構成された音叉型の振動片である。
そして、一対の励振電極11、12は、一対の振動腕部10aの外表面上に形成されており、所定の電圧が印加されたときに、一対の振動腕部10aを互いに接近又は離間する方向に振動させる電極である。また、一対のマウント電極13、14は、引き出し電極15を介して一対の励振電極11、12に電気的に接続されている。
この際、一方のマウント電極13が、基部10bの下面上に形成され、他方のマウント電極14が、一方のマウント電極13に対して非対向状態となるように基部10bの上面上に形成されている。
これにより、図6に示すように、圧電振動片2を上面側から平面視したときに、一方のマウント電極13と他方のマウント電極14とが重なり合わないようになっている。
【0034】
なお、一対の振動腕部10aの先端には、図4及び図5に示すように、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜16が被膜されている。この重り金属膜16を利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部10aの周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができるようになっている。
【0035】
このように構成された圧電振動片2は、図1から3に示すように、ケース3内に収納された状態で気密端子4を構成するリード端子21のインナーリード21aにマウントされている。
ケース3は、導電性材料により有底円筒状に形成されており、気密端子4の後述するステム20の外周に対して圧入されて、嵌合固定されている。この際、ケース3とステム20とは、電気的に接続された状態になっている。なお、このケース3の圧入は、真空中で行われており、ケース3内の圧電振動片2を囲む空間が真空に保たれた状態となっている。また、本実施形態のケース3は、絞り成形されており、端面から外方に向けて突出した突起部3aを有している。この突起部3aは、例えば、断面円形状に形成されている。
【0036】
気密端子4は、ケース3内を密閉するものであって、ケース3内に圧入固定されるステム20と、該ステム20を貫通した状態で配置され、ステム20を間に挟んで一端側が圧電振動片2の一方のマウント電極13に電気的に接続されるインナーリード21aとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリード21bとされた1本のリード端子21と、該リード端子21とステム20とを固定させる充填材22とを有している。
上記ステム20は、金属材料(例えば、低炭素鋼(Fe)、鉄ニッケル合金(Fe−Ni)、鉄ニッケルコバルト合金(Fe−Ni−Co))によって環状に形成されたものである。また、充填材22の材料としては、例えば、ホウ珪酸ガラスである。なお、このステム20の外周には、リード端子21と同じ材料のメッキ(金属膜)が被膜されている。
【0037】
リード端子21は、例えば、ステム20と同じ材料である導電性材料から形成された板状(厚さが、例えば0.1mm程度)のものであって、ケース3内に突出している部分がインナーリード21aとなり、ケース3外に突出している部分がアウターリード21bとなっている。また、インナーリード21aは、先端が段状に形成されている。圧電振動片2は、この段状に形成された部分に基部10bが載置された状態で、金等のバンプBによって機械的にマウントされている。これにより、基部10bの下面上に形成された一方のマウント電極13とインナーリード21aとが電気的に接続された状態となっている。なお、本実施形態では、4つのバンプBによってマウントされている場合を例にしている。
一方、基部10bの上面上に形成された他方のマウント電極14とステム20との間には、上述したワイヤ5が接続されている。これにより、他方のマウント電極14と、ステム20と、ケース3とが、それぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0038】
なお、本実施形態の圧電振動子1を構成するステム20及びリード端子21のメッキの材質としては、耐熱ハンダメッキや、錫銅合金や金錫合金等が用いられる。また、ステム20の外周のメッキを介在させて、ケース3を真空中で冷間圧接させることにより、ケース3の内部を真空状態で気密封止できるようになっている。また、励振電極11、12、引き出し電極15及びマウント電極13、14は、クロム(Cr)と金(Au)との積層膜であり、水晶と密着性の良いクロム膜を下地として成膜した後に、表面に金の薄膜を施したものである。但し、この場合に限られず、例えば、クロムとニクロム(NiCr)の積層膜の表面にさらに金の薄膜を積層しても構わない。
【0039】
次に、上述した圧電振動片2並びに圧電振動子1の製造方法について、図7及び図8に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
始めに、圧電材料からなるウエハSを利用して、圧電振動片2を一度に複数製造する工程を行う。この工程を行うにあたって、まず所定のポリッシングが終了し、所定の厚みに高精度に仕上げられたウエハSを準備する(S10)。次いで、ウエハSをフォトリソ技術によってエッチングして、該ウエハSに複数の圧電板10の外形形状をパターニングする外形形成工程を行う(S20)。この工程について、具体的に説明する。
【0040】
まず、図9に示すように、ウエハSの両面にエッチング保護膜30をそれぞれ成膜する(S21)。このエッチング保護膜30としては、例えば、クロム(Cr)を数μm成膜する。次いで、エッチング保護膜30上に図示しないフォトレジスト膜を、フォトリソグラフィ技術によってパターニングする。この際、一対の振動腕部10aと基部10bとで構成される圧電板10の周囲を囲むようにパターニングする。そして、このフォトレジスト膜をマスクとしてエッチング加工を行い、マスクされていないエッチング保護膜30を選択的に除去する。そして、エッチング加工後にフォトレジスト膜を除去する。これにより、図10及び図11に示すように、エッチング保護膜30を上述した形状にパターニングすることができる(S22)。つまり、圧電板10の外形形状、即ち、一対の振動腕部10a及び基部10bの外形形状に沿ってパターニングすることができる。この際、複数の圧電板10の数だけパターニングを行う。なお、図11及び図12は、図10に示す切断線C−C線に沿った断面を示す図である。
【0041】
次いで、パターニングされたエッチング保護膜30をマスクとして、ウエハSの両面をそれぞれエッチング加工する(S23)。これにより、図12に示すように、エッチング保護膜30でマスクされていない領域を選択的に除去して、圧電板10の外形形状を形作ることができる。そして、マスクとしていたエッチング保護膜30を除去することで、外形形成工程が終了する。なお、複数の圧電板10は、後に行う切断工程を行うまで、図示しない連結部を介してウエハSに連結された状態となっている。
【0042】
次いで、複数の圧電板10の外表面上に図示しない電極膜を成膜すると共にパターニングを行って、励振電極11、12、引き出し電極15、マウント電極13、14をそれぞれ形成する電極形成工程を行う(S30)。また、これと同時に、同様の方法により、重り金属膜16を形成する(S40)。
特に電極形成工程を行う際に、一対の振動腕部10aの外表面上に一対の励振電極11、12が形成されるようにパターニングすると共に、一方のマウント電極13が基部10bの下面上に形成され、他方のマウント電極14が基部10bの上面に形成されるようにパターニングする。つまり、基部10bの片面に極性の異なる一対のマウント電極13、14を両方同時に形成するのではなく、片面(下面)に一方のマウント電極13だけを形成し、もう一方の片面(上面)に極性の異なる他方のマウント電極14だけを形成する。しかも、他方のマウント電極14が、基部10bを間にして一方のマウント電極13に対して非対向状態となるように形成する。つまり、平面視したときに、一方のマウント電極13と他方のマウント電極14とが、重なり合わないように形成する。
【0043】
次いで、ウエハSと圧電板10とを連結していた連結部を切断して、複数の圧電板10をウエハSから切り離して小片化する切断工程を行う(S50)。これにより、1枚のウエハSから、圧電板10の外表面に励振電極11、12、引き出し電極15及びマウント電極13、14の各電極が形成された圧電振動片2を一度に複数製造することができる。この時点で、圧電振動片2の製造工程が終了する。
【0044】
次に、圧電振動子1の製造工程を行う。なお、圧電振動片2をリード端子21にマウントする前に、共振周波数の粗調を行っておく(S60)。これは、重り金属膜16の粗調膜にレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては後に行う。これについては、後に説明する。
【0045】
圧電振動子1を製造するにあたって、まず、気密端子4を作製する気密端子作製工程を行う(S70)。具体的には、まず、ステム作製工程によりステム20を作製する(S71)。即ち、鉄ニッケルコバルト合金や鉄ニッケル合金等の導電性を有する板部材をランス加工した後、複数回の深絞り加工を行って有底の筒部材を形成する。そして、筒部材の底面に開口を形成すると共に、外形抜きを行って筒部材を板部材から切り離すことで、ステム20を作製する。
次いで、ステム20内に、リード端子21及び充填材22をそれぞれセットするセット工程を行う(S72)。まず、作製したステム20を、図示しない専用の治具にセットした後、予めリング状に焼結された充填材22をステム20の内部にセットすると共に、充填材22を貫通するようにリード端子21をセットする。
【0046】
上記セット工程により、ステム20とリード端子21と充填材22とを組み合わせた後、治具を加熱炉内に入れて1000℃前後の温度雰囲気で充填材22の焼成を行う(S73)。これにより、充填材22とリード端子21との間、充填材22とステム20との間が完全に封着されて、気密に耐えられる構造となる。そして、治具から取り出すことで、気密端子4を得ることができる。この時点で、気密端子作製工程が終了する。
【0047】
次に、リード端子21の外表面及びステム20の外周に同一材料の金属膜を湿式メッキ法で被膜させるメッキ工程を行う(S80)。そのための前処理として、リード端子21の外表面及びステム20の外周を洗浄すると共に、アルカリ溶液で脱脂した後、塩酸及び硫酸の溶液にて酸洗浄を行う。この前処理が終了した後、リード端子21の外表面及びステム20の外周面に下地金属膜を形成する。例えば、Cuメッキ或いはNiメッキを略2μm〜5μmの膜厚で被膜させる。続いて、下地金属膜上に仕上金属膜を形成する。例えば錫や銀等の単一材料の他、耐熱メッキや、錫銅合金、錫ビス膜合金、錫アンチモン合金等を、略8μm〜15μmの膜厚で被膜させる。
このように、下地金属膜及び仕上金属膜からなる金属膜を被膜させることで、インナーリード21aと圧電振動片2との接続を可能にすることができる。また、圧電振動片2の接続だけでなく、ステム20の外周に被膜された金属膜が柔らかく弾性変形する特性を有しているので、ステム20とケース3との冷間圧接を可能にすることができ、気密接合を行うことができる。
【0048】
続いて、金属膜の安定化を図るため、真空雰囲気の炉中でアニーリングを行う(S90)。例えば、170℃の温度で1時間の加熱を行う。これにより、下地金属膜の材料と仕上金属膜の材料との界面に形成される金属間化合物の組成を調整して、ウイスカの発生を抑制することができる。このアニーリングが終了した時点で、圧電振動片2をマウントするマウント工程を行うことができる。なお、金属膜を被膜する際に、湿式メッキ法で行った場合を例にしたが、この場合に限られず、例えば、蒸着法や化学気相法等で行っても構わない。
【0049】
なお、本実施形態では、アニーリングが終了した後、次に行うマウント工程のためにインナーリード21aの先端に形成された段部の部分に、金等の導電性のバンプBを4箇所形成する(S100)。そして、バンプBが形成された部分に、基部10bの下面上に形成された一方のマウント電極13を重ね合わせる。そして、バンプBを加熱しながら、該バンプBを介してインナーリード21aと圧電振動片2とを所定の圧力で重ね合わせる。これにより、圧電振動片2をインナーリード21aにマウントすることができる(S110)。即ち、一方のマウント電極13とインナーリード21aとが電気的に接続された状態で、圧電振動片2がリード端子21に機械的に支持される。
なお、バンプ接続する際に、加熱・加圧を行ってマウントしたが、超音波を利用してバンプ接続を行っても構わない。
【0050】
次いで、基部10bの上面に形成された他方のマウント電極14とステム20との間にワイヤ5をボンディングする(S120)。これにより、他方のマウント電極14とステム20との間が、ワイヤ5を介して電気的に接続された状態となる。次いで、マウントによる歪みをなくすために、所定の温度でベーキングを行う(S130)。続いて、ケース3を固定する前に、圧電振動片2の周波数調整(微調)を行う(S140)。この周波数調整について、具体的に説明すると、全体を真空チャンバーに入れた状態で、アウターリード21bとステム20との間に電圧を印加して圧電振動片2を振動させる。そして、周波数を計測しながら、レーザにより重り金属膜16の微調膜を蒸発させることで、周波数の調整を行う。この周波数調整を行うことで、予め決められた周波数の範囲内に圧電振動片2の周波数を調整することができる。
【0051】
なお、上記微調及び先に行った粗調の際に、レーザの照射により重り金属膜16を蒸発させることで、周波数調整を行ったが、レーザではなくアルゴンイオンを利用しても構わない。この場合には、アルゴンイオンの照射によりスパッタリングを行い、重り金属膜16を除去することで周波数調整を行う。
【0052】
次に、マウントされた圧電振動片2を内部に収納するようにケース3をステム20に圧入し、圧電振動片2を気密封止する封止工程を行う(S150)。具体的に説明すると、真空中で所定の荷重を加えながらケース3を気密端子4のステム20の外周に圧入する。すると、ステム20の外周に形成された金属膜が弾性変形するので、冷間圧接により気密封止することができる。これにより、ケース3内に圧電振動片2を密閉して真空封止することができる。また、ケース3を固定することで、他方のマウント電極14とケース3とを電気的に接続した状態にすることができる。
なお、この工程を行う前に、圧電振動片2、ケース3及び気密端子4を十分に加熱して、表面吸着水分等を脱離させておくことが好ましい。
【0053】
そして、ケース3の固定が終了した後、スクリーニングを行う(S160)。このスクリーニングは、周波数や共振抵抗値の安定化を図ると共に、ケース3を圧入した嵌合部に圧縮応力に起因する金属ウイスカが発生してしまうことを抑制するために行うものである。スクリーニング終了後、内部の電気特性検査を行う(S170)。即ち、圧電振動片2の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。この結果、図1に示す圧電振動子1を一度に複数製造することができる。
【0054】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、アウターリード21bとケース3との間に、所定の駆動電圧を印加する。これにより、マウント電極13、14及び引き出し電極15を介して、励振電極11、12に電流を流すことができ、一対の振動腕部10aを所定の周波数で振動させることができる。そして、一対の振動腕部10aの振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0055】
特に、本実施形態の圧電振動片2は、従来のように基部10bが一対のマウント電極13、14によって両面側から挟まれたサンドイッチ構造とはなっていない。従って、一対のマウント電極13、14に所定の電圧を印加したときに、従来のように一対のマウント電極13、14がコンデンサの如く機能することがなく、一対のマウント電極13、14間に静電容量が溜まってしまう恐れがない。よって、圧電振動片2自体のR1特性が高くなってしまうことを防止することができ、設計通りの低い値に維持することができる。従って、R1特性をできるだけ低い状態に保つことができ、振動特性が向上して高性能化された音叉型の圧電振動片2とすることができる。その結果、圧電振動子1自体の高性能化を図ることができる。
また、R1特性を低く抑えることができるので、圧電振動片2の実効抵抗値Reに関しても低く抑えることができる。従って、効率良く圧電振動子1を作動させることができ、低電力化を図ることができる。
【0056】
更に、本実施形態の圧電振動子1は、圧電振動片2をケース3内に密閉したシリンダパッケージタイプであるので、塵埃等の影響を受けることなく圧電振動片2を振動させることができ、この点においても高精度に圧電振動片2を振動させることができる。しかも、リード端子21が1本であるので、2本の場合と違い、リード端子同士の電気的な独立性を確保しながらケース3のサイズを小さくする等といった設計を行う必要がない。よって、気密端子4やケース3のサイズをより小さく設計することができ、例えばケース3の径が1.0mm以下といった超小型化を図ることも可能である。
【0057】
なお、上記第1実施形態では、圧電振動片2を円筒状のケース3内に単に収納した圧電振動子1としたが、図13から図16に示すように、さらにケース3の周囲を樹脂モールド部35でパッケージングした表面実装型の圧電振動子1にしても構わない。
即ち、この場合の圧電振動子1は、さらに樹脂モールド部35及び外部接続端子36を備えている。また、この場合のアウターリード21bは、略直角に2回折り曲げられており、一部が樹脂モールド部35の底面に露出すると共に、外方に突出した状態となっている。
外部接続端子36は、平板状の導電性部材が略直角に折り曲げられて断面L型に形成されたものであり、ケース3を間に挟んでアウターリード21bの反対側に位置している。この際、外部接続端子36は、アウターリード21bと同様に一部が樹脂モールド部35の底面に露出すると共に、外方に突出した状態となっている。また、外部接続端子36の残りの一部は、ケース3の端面に対して対向するように配置されている。そして、この対向した部分には、ケース3の突起部3aが押し込み可能とされ、押し込まれたときに弾性力により突起部3aを保持する嵌合溝36aが形成されている。これにより、突起部3aと外部接続端子36とは、機械的に強固に接続されたうえ、電気的にも接続された状態となっている。
【0058】
樹脂モールド部35は、絶縁性の樹脂(例えば、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂や液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂)で略直方体状にモールド成形されたものであり、アウターリード21b及び外部接続端子36の一部を上述したように露出させた状態で、ケース3を内部に埋入させている。なお、本実施形態の樹脂モールド部35は、アウターリード21b側の一部が斜めにカットされており、向きを目視で確認できるようになっている。
【0059】
このように構成された圧電振動子1によれば、樹脂モールド部35を有しているので、回路基板等に直接載置することができ、容易に表面実装することが可能である。特に、アウターリード21b及び外部接続端子36の一部が、樹脂モールド部35の底面に露出しているので、表面実装したときに座りが良くなり姿勢が安定する。よって、実装作業を行い易い。しかも樹脂モールド部35は、アウターリード21b側が斜めにカットされているので、向きを間違えることなく確実に実装作業を行うことができる。
【0060】
また、上記第1実施形態において、図17及び図18に示すように、一対の振動腕部10aの両面にそれぞれ溝部37が形成された溝付きの圧電振動片2としても構わない。
この場合の圧電振動片2は、一対の振動腕部10aの両面に該振動腕部10aの長手方向に沿ってそれぞれ形成された溝部37を備えている。この際、溝部37は、振動腕部10aの基端側から略中間付近まで形成されている。また、一方の励振電極11が、一方の振動腕部10aの溝部37上と他方の振動腕部10aの両側面上とに主に形成され、他方の励振電極12が、一方の振動腕部10aの両側面上と他方の振動腕部10aの溝部37上とに主に形成されている。
【0061】
このように構成された圧電振動片2によれば、溝部37が形成されているため、一対の励振電極11、12を極力対向させた状態にすることができる。よって、一対の励振電極11、12間に所定の駆動電圧を印加したときに、一対の励振電極11、12間における電界効率を上げることができる。そのため、振動損失をより抑えることができ、振動特性をさらに向上することができる。つまり、CI値をさらに低くすることができ、圧電振動片2のさらなる高性能化を図ることができる。
なお、溝部37を形成するには、外形形成工程において圧電板10の外形形状をパターニングした後に、引き続きフォトリソ技術によって一対の振動腕部10aの両面に溝部37を形成すれば良い。
【0062】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態を、図19から図23を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、リード端子21が1本であったが、第2実施形態の圧電振動子40はリード端子21を2本備えている点である。また、第2実施形態では、圧電振動片41がハンマーヘッドタイプとなっている点が異なっている。
【0063】
即ち、本実施形態の圧電振動片41は、図19に示すように、一対の振動腕部10aが略中間付近から先端に亘って横幅が大きくなるように設計されており、この部分が錘部となっている。即ち、この錘部の横幅W1は、中間付近の横幅W2の倍近い大きさとなっている。これにより、一対の振動腕部10aは、錘部が形成されている分だけ、慣性モーメントが増大するようになっている。よって、一対の振動腕部10aの長さL1を短くすることができ、その結果、圧電振動片41の全長L2に関しても短く設計することが可能とされている。
【0064】
なお、本実施形態の圧電振動片41の場合であっても、図21及び図22に示すように、基部10bの下面上に一方のマウント電極13が形成され、基部10bの上面上に他方のマウント電極14が形成されている。そして、これら一対のマウント電極13、14は、基部10bを間にして非対向状態に形成されており、平面視したときに重なり合わないようになっている。なお、図21は圧電振動片41を上面から見た図であり、図22は圧電振動片41を下面から見た図である。
【0065】
また、本実施形態の気密端子4は、図23に示すように、板状に形成された2本のリード端子21を備えている。これら2本のリード端子21は、ステム20から突出している長さが異なっており、インナーリード21aの長さが異なっている。これにより、図20に示すように、一方のインナーリード21a上に圧電振動片41の一方のマウント電極13が面接触した状態で電気的及び機械的に接続されている。なお、一方のインナーリード21aと一方のマウント電極13とは、図示しない金等のバンプを利用してバンプ接続されている。
また、他方のインナーリード21aは、基部10bの側面に当接している。そして、他方のインナーリード21aと他方のマウント電極14とは、例えば、導電性接着材42によって電気的及び機械的に接続されている。なお、導電性接着材42としては、例えば、合成樹脂等を利用したバインダー成分に、銀粒子等の荷電粒子を混入したもので、機械的接合と電気的接合とを同時に達成することができるものである。
【0066】
このように構成された圧電振動子40を作動させる場合には、2本のリード端子21のアウターリード21bに対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、一対の励振電極11、12に電流を流すことができ、一対の振動腕部10aを所定の周波数で振動させることができる。本実施形態の場合であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0067】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態を、図24を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第3実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、リード端子21が1本であったが、第3実施形態ではリード端子21が2本とされている点である。
【0068】
即ち、本実施形態の圧電振動子50は、図24に示すように、2本のリード端子21を有する気密端子4を備えている。本実施形態の2本のリード端子21は、円柱状に形成されており、圧電振動片51を両面側から挟み込むように配置されている。即ち、一方のリード端子21のインナーリード21aは、圧電振動片51の下面側に配置され、他方のリード端子21のインナーリード21aは圧電振動片51の上面側に配置されている。これにより、圧電振動片51は、一方のインナーリード21aが一方のマウント電極13に電気的に接続されると共に、他方のインナーリード21aが他方のマウント電極14に電気的に接続された状態で、2本のリード端子21によって機械的に固定されている。
【0069】
なお、本実施形態の圧電振動片51の場合であっても、2本のリード端子21の位置に応じて、基部10bの下面上に一方のマウント電極13が形成され、基部10bの上面上に他方のマウント電極14が形成されている。そして、これら一対のマウント電極13、14は、基部10bを間にして非対向状態に形成されており、平面視したときに重なり合わないようになっている。
【0070】
このように構成された圧電振動子50を作動させる場合には、2本のリード端子21のアウターリード21bに対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、一対の励振電極11、12に電流を流すことができ、一対の振動腕部10aを所定の周波数で振動させることができる。本実施形態の場合であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0071】
なお、本実施形態の圧電振動片51の基部10bの両側には、基部10bの幅寸法を部分的に短縮するように切り欠き部(以下、ノッチと称する)10cが形成されている。このノッチ10cは、一対の振動腕部10aから適切な範囲離れた位置に形成されている。このノッチ10cは、一対の振動腕部10aが振動した際に、振動の垂直成分(厚み方向の成分)に起因する基部10bの撓みを抑えて、共振抵抗値のばらつきを低減するものである。このノッチ10cは、必須なものではないが、高性能化を図ることができる点で形成することが好ましい。
【0072】
また、上述した第3実施形態では、音叉型の圧電振動片51を例に挙げて説明したが、音叉型に限られず、例えば、図25に示すように、厚み滑り振動モードで振動する圧電振動片60であっても構わない。なお、第1実施形態及び第2実施形態についても、同様である。
【0073】
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図26を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図26に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片2が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0074】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、該圧電振動子1内の圧電振動片2が振動する。この振動は、圧電振動片2が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0075】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、発振器100自体の低電力化及び高性能化を図ることができ、製品の信頼性を向上することができる。また、これに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0076】
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図27を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0077】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。
この携帯情報機器110は、図27に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0078】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0079】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片2が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0080】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0081】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0082】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0083】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0084】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器110自体も同様に低電力化及び高性能化を図ることができ、製品の信頼性を向上することができる。また、これに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0085】
次に、本発明に係る電波時計130の一実施形態について、図28を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図28に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0086】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0087】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0088】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0089】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、電波時計130自体も同様に低電力化及び高品質化を図ることができ、製品の信頼性を向上することができる。またこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0090】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明に係る第1実施形態の圧電振動子のケースの中身を見た図であって、圧電振動片を平面視した状態の図である。
【図2】図1に示す圧電振動子を側方から見た図である。
【図3】図1に示す圧電振動片を矢印A方向から見た図である。
【図4】図1に示す圧電振動片を上面から見た図である。
【図5】図1に示す圧電振動片を下面から見た図である。
【図6】図1に示す圧電振動片を上面から見た図であって、一対のマウント電極の位置関係を説明するための図である。
【図7】図1に示す圧電振動子を製造する際のフローチャートである。
【図8】図7に示すフローチャートの続きである。
【図9】図1に示す圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、ウエハの両面にエッチング保護膜を形成した状態を示す図である。
【図10】図9に示す状態から、エッチング保護膜を圧電振動片の圧電板の外形形状にパターニングした状態を示す図である。
【図11】図10に示す断面矢視C−C図である。
【図12】図11に示す状態から、エッチング保護膜をマスクとしてウエハをエッチング加工した状態を示す図である。
【図13】本発明に係る圧電振動子の変形例を示す図であって、ケースの周囲をモールド樹脂部でモールドした表面実装型の圧電振動子の斜視図である。
【図14】図13に示す圧電振動子を矢印D方向から見た図である。
【図15】図13に示す圧電振動子を矢印E方向から見た図である。
【図16】図13に示す圧電振動子を矢印F方向から見た図である。
【図17】第1実施形態の圧電振動片の変形例を示す図であって、一対の振動腕部の両面に溝部が形成された圧電振動片の上面図である。
【図18】図17に示す断面矢視G−G図である。
【図19】本発明に係る第2実施形態の圧電振動子を示す斜視図である。
【図20】図19に示す断面矢視H−H図である。
【図21】図19に示す圧電振動片を上面から見た図である。
【図22】図19に示す圧電振動片を下面から見た図である。
【図23】図19に示す気密端子の斜視図である。
【図24】本発明に係る第3実施形態の圧電振動子を示す断面図である。
【図25】第3実施形態の圧電振動子の変形例を示す図であって、厚み滑り振動する圧電振動片を有する圧電振動子の断面図である。
【図26】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図27】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図28】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図29】従来の圧電振動子の一例を示す斜視図である。
【図30】図29に示す圧電振動片を上面から見た図である。
【図31】図29に示す圧電振動片を下面から見た図である。
【符号の説明】
【0092】
S…ウエハ
1、40、50…圧電振動子
2、41、51、60…圧電振動片
3…ケース
4…気密端子
5…ワイヤ(線材)
10…圧電板
10a…振動腕部
10b…基部
11、12…励振電極
13…一方のマウント電極
14…他方のマウント電極
20…ステム
21…リード端子
21a…インナーリード
21b…アウターリード
37…溝部
22…充填材
100…発振器
101…発振器の集積回路
110…携帯情報機器(電子機器)
113…携帯情報機器の計時部
130…電波時計
131…電波時計のフィルタ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料からなる圧電板と、
前記圧電板の外表面上に形成され、所定の電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極と、
該一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続された一対のマウント電極と、を備え、
前記一対のマウント電極のうち一方のマウント電極が、前記圧電板の一方の面上に形成され、他方のマウント電極が圧電板を間にして一方のマウント電極に対して非対向状態となるように圧電板の他方の面上に形成されていることを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動片において、
前記圧電板は、平行に配置された一対の振動腕部と、該一対の振動腕部の基端側を一体的に固定する基部と、を備え、
前記一対の励振電極が、前記一対の振動腕部の外表面上に形成され、
前記一方のマウント電極が前記基部の一方の面上に形成され、前記他方のマウント電極が基部の他方の面上に形成されていることを特徴とする圧電振動片。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電振動片において、
前記一対の振動腕部には、両面にそれぞれ溝部が形成されていることを特徴とする圧電振動片。
【請求項4】
圧電材料からなるウエハを利用して圧電振動片を一度に複数製造する方法であって、
前記ウエハをフォトリソ技術によってエッチングして、該ウエハに複数の前記圧電板の外形形状をパターニングする外形形成工程と、
複数の圧電板の外表面上に電極膜をパターニングして、所定の電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極と、該一対の励振電極に電気的に接続される一対のマウント電極とを形成する電極形成工程と、
複数の前記圧電板を前記ウエハから切り離して小片化する切断工程と、を備え、
前記電極形成工程の際、前記一対のマウント電極のうち一方のマウント電極を前記圧電板の一方の面上に形成すると共に、他方のマウント電極を、圧電板を間にして一方のマウント電極に対して非対向状態となるように圧電板の他方の面上に形成することを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電振動片の製造方法において、
前記外形形成工程の際、平行に配置された一対の振動腕部と、該一対の振動腕部の基端側を一体的に固定する基部とを有するように前記圧電板の外形形状をパターニングし、
前記電極形成工程の際、前記一対の振動腕部の外表面上に前記一対の励振電極が形成されるようにパターニングすると共に、前記一方のマウント電極が前記基部の一方の面上に形成され、前記他方のマウント電極が基部の他方の面上に形成されるようにパターニングすることを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電振動片の製造方法において、
前記外形形成工程の際、前記一対の振動腕部の両面にそれぞれ溝部を形成することを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載の圧電振動片を有することを特徴とする圧電振動子。
【請求項8】
請求項7に記載の圧電振動子において、
前記圧電振動片を内部に収納する導電性のケースと、
環状に形成されて前記ケース内に圧入固定される導電性のステムと、該ステムを貫通した状態で配置され、ステムを間に挟んで一端側が前記一方のマウント電極に電気的に接続されるインナーリードとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリードとされた1本のリード端子と、該リード端子と前記ステムとを固定させる充填材とを有し、前記ケース内を密閉させる気密端子と、
前記ケース内にて前記ステムと前記他方のマウント電極とを電気的に接続させる線材と、を備えていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項9】
請求項7に記載の圧電振動子において、
前記圧電振動片を内部に収納するケースと、
環状に形成されて前記ケース内に圧入固定されるステムと、該ステムを貫通した状態で配置され、ステムを間に挟んで一端側が前記一対のマウント電極にそれぞれ電気的に接続されるインナーリードとされ、他端側が外部にそれぞれ電気的に接続されるアウターリードとされた2本のリード端子と、該リード端子と前記ステムとを固定させる充填材とを有し、前記ケース内を密閉させる気密端子と、を備えていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項11】
請求項7から9のいずれか1項に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項12】
請求項7から9のいずれか1項に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【請求項1】
圧電材料からなる圧電板と、
前記圧電板の外表面上に形成され、所定の電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極と、
該一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続された一対のマウント電極と、を備え、
前記一対のマウント電極のうち一方のマウント電極が、前記圧電板の一方の面上に形成され、他方のマウント電極が圧電板を間にして一方のマウント電極に対して非対向状態となるように圧電板の他方の面上に形成されていることを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動片において、
前記圧電板は、平行に配置された一対の振動腕部と、該一対の振動腕部の基端側を一体的に固定する基部と、を備え、
前記一対の励振電極が、前記一対の振動腕部の外表面上に形成され、
前記一方のマウント電極が前記基部の一方の面上に形成され、前記他方のマウント電極が基部の他方の面上に形成されていることを特徴とする圧電振動片。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電振動片において、
前記一対の振動腕部には、両面にそれぞれ溝部が形成されていることを特徴とする圧電振動片。
【請求項4】
圧電材料からなるウエハを利用して圧電振動片を一度に複数製造する方法であって、
前記ウエハをフォトリソ技術によってエッチングして、該ウエハに複数の前記圧電板の外形形状をパターニングする外形形成工程と、
複数の圧電板の外表面上に電極膜をパターニングして、所定の電圧が印加されたときに圧電板を振動させる一対の励振電極と、該一対の励振電極に電気的に接続される一対のマウント電極とを形成する電極形成工程と、
複数の前記圧電板を前記ウエハから切り離して小片化する切断工程と、を備え、
前記電極形成工程の際、前記一対のマウント電極のうち一方のマウント電極を前記圧電板の一方の面上に形成すると共に、他方のマウント電極を、圧電板を間にして一方のマウント電極に対して非対向状態となるように圧電板の他方の面上に形成することを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電振動片の製造方法において、
前記外形形成工程の際、平行に配置された一対の振動腕部と、該一対の振動腕部の基端側を一体的に固定する基部とを有するように前記圧電板の外形形状をパターニングし、
前記電極形成工程の際、前記一対の振動腕部の外表面上に前記一対の励振電極が形成されるようにパターニングすると共に、前記一方のマウント電極が前記基部の一方の面上に形成され、前記他方のマウント電極が基部の他方の面上に形成されるようにパターニングすることを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電振動片の製造方法において、
前記外形形成工程の際、前記一対の振動腕部の両面にそれぞれ溝部を形成することを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載の圧電振動片を有することを特徴とする圧電振動子。
【請求項8】
請求項7に記載の圧電振動子において、
前記圧電振動片を内部に収納する導電性のケースと、
環状に形成されて前記ケース内に圧入固定される導電性のステムと、該ステムを貫通した状態で配置され、ステムを間に挟んで一端側が前記一方のマウント電極に電気的に接続されるインナーリードとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリードとされた1本のリード端子と、該リード端子と前記ステムとを固定させる充填材とを有し、前記ケース内を密閉させる気密端子と、
前記ケース内にて前記ステムと前記他方のマウント電極とを電気的に接続させる線材と、を備えていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項9】
請求項7に記載の圧電振動子において、
前記圧電振動片を内部に収納するケースと、
環状に形成されて前記ケース内に圧入固定されるステムと、該ステムを貫通した状態で配置され、ステムを間に挟んで一端側が前記一対のマウント電極にそれぞれ電気的に接続されるインナーリードとされ、他端側が外部にそれぞれ電気的に接続されるアウターリードとされた2本のリード端子と、該リード端子と前記ステムとを固定させる充填材とを有し、前記ケース内を密閉させる気密端子と、を備えていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項11】
請求項7から9のいずれか1項に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項12】
請求項7から9のいずれか1項に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
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【図25】
【図26】
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【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2009−147765(P2009−147765A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324155(P2007−324155)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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