圧電振動素子、圧電振動子、圧電発振器、振動ジャイロ素子、振動ジャイロセンサー及び電子機器
【課題】小型化を図ると共に、周波数温度特性を改善した圧電振動素子を得る。
【解決手段】圧電振動素子1は、圧電振動素子1の圧電基板8が、複数の振動腕15a、15b、その振動腕の一方の端部間を連接する基部10、各振動腕15a、15bの他方の端部に夫々形成され幅広で錘部20a、20b、及び、各振動腕15a、15bの振動中心に沿って形成された溝部17a〜18b、を備えている。各錘部20a、20bは、振動中心に沿っての両側に対称に配置され且つ大きな質量を備えた質量部21を備えており、圧電振動素子1に励振される屈曲−捩じり結合振動のうちの屈曲振動を主振動とし、その周波数温度特性が温度に関し三次特性となるように、圧電基板8の厚さ及び切断角度と、各質量部21及び溝部17a〜18bの形状と、を夫々適切に設定する。
【解決手段】圧電振動素子1は、圧電振動素子1の圧電基板8が、複数の振動腕15a、15b、その振動腕の一方の端部間を連接する基部10、各振動腕15a、15bの他方の端部に夫々形成され幅広で錘部20a、20b、及び、各振動腕15a、15bの振動中心に沿って形成された溝部17a〜18b、を備えている。各錘部20a、20bは、振動中心に沿っての両側に対称に配置され且つ大きな質量を備えた質量部21を備えており、圧電振動素子1に励振される屈曲−捩じり結合振動のうちの屈曲振動を主振動とし、その周波数温度特性が温度に関し三次特性となるように、圧電基板8の厚さ及び切断角度と、各質量部21及び溝部17a〜18bの形状と、を夫々適切に設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動素子、振動ジャイロ素子等に関し、特に小型化を図ると共に周波数温度特性を改善した圧電振動素子、振動ジャイロ素子、圧電振動子、振動ジャイロセンサー及びこれらを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モバイルコンピューター、ハードディスク・ドライブ等の小型情報機器や、携帯電話等の移動体通信機には、基準周波数源として圧電デバイスが広く用いられている。圧電デバイスを搭載した電子機器の小型化が進むに伴い、圧電デバイスには更なる小型化が求められている。
特許文献1には、水晶の電気軸(直交する結晶軸の1つ)の回りに0°から−15°の範囲で切り出された音叉型水晶振動子が開示されている。音叉型水晶振動子に励振される屈曲振動モード及び捩れ振動モードの夫々の共振周波数fF、fTを互いに近接させ、結合させることにより、主振動とする屈曲振動モードの周波数温度特性を改善した水晶振動子である。
【0003】
一般的に、水晶振動子の周波数温度特性Δf/f(Δf=(f−f0)、f0は常温にける共振周波数)は、温度Tに関する多項式で表わされる。実用的には三次式で近似され、その一次温度係数〜三次温度係数をα、β、γで表わす。
屈曲振動モードの周波数温度特性TfFは、捩れ振動モードの影響を受け、圧電基板hに依存する。種々の切断角θに対し、一次温度係数αが零となるように厚みhを設定し、更に二次温度係数βが零になる切断角度θと厚さhとを、予め計算で求めた表から設定する。これにより、周波数温度特性TfFは三次温度係数γのみに依存し、温度特性の良好な水晶振動子が得られると開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、互いに平行な複数の振動腕の各先端部に、振動腕より幅広の拡大部を設けた音叉型圧電振動子が開示されている。この拡大部は有底の孔を有し、この有底の孔に圧電材料より比重の大きい材料を充填して錘とすることにより、音叉型圧電振動子の小型化が図られると開示されている。
また、特許文献3には、互いに平行な複数の振動腕の各先端部に、振動腕より幅広の錘部を設け、且つ錘部の幅方向中央部に、表面から裏面に貫通する略四角形の孔部を設けた音叉型圧電振動子が開示されている。この孔部は、音叉型圧電振動子の表裏面に形成した電極同志を接続するためのスルーホールとして用いられている。
【0005】
また、特許文献4には、振動ジャイロ素子が開示されている。振動ジャイロ素子は、基部と、基部から直線状に両側へ延出された1対の検出用振動腕と、基部から両側へ検出用振動腕に直交する方向に延出された1対の連結腕と、各連結腕の先端部からそれと直交して両側へ延出された各1対の駆動用振動腕を備えている。更に、基部から各検出用腕に沿って延出される2対の梁と、同方向に延出された各梁が連結された1対の支持部と、を同一平面に備え、支持部を検出用振動腕の延出する方向であって検出用振動腕の外側で、且つ前記駆動用振動腕の間に配置するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭55−75326号公報
【特許文献2】特開2004−282230公報
【特許文献3】特開2005−5896公報
【特許文献4】特開2010−2430公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された、屈曲振動モード及び捩じり振動モードの周波数を夫々近接させ互いに結合させることにより、周波数温度特性を改善した音叉型圧電振動子は、小型化が難しいという問題があった。
また、特許文献2に記載の音叉型圧電振動子は、振動腕の先端部に拡大部を形成することにより小型化は可能であるが、周波数温度特性は二次特性であり、周波数安定度に問題があった。
また、特許文献3に記載の音叉型圧電振動子は、振動腕の先端部に錘部を形成することにより小型化は可能であり、励振電極同志の接続は容易になるものの、周波数温度特性は二次特性であり、周波数安定度に問題があった。
また、特許文献4の記載の振動ジャイロ素子は、温度変化により角速度の感度が変わるという問題があった。
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、小型化と周波数温度特性の改善とを図った圧電振動素子、圧電振動子、圧電発振器、振動ジャイロセンサー、及びこれらを用いた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]本発明に係る圧電振動素子は、複数の振動腕、該各振動腕の一方の端部間を連接する基部、前記各振動腕の他方の端部に夫々形成され該各振動腕よりも幅広の錘部、及び、前記各振動腕の振動中心に沿った表面及び裏面に夫々形成された溝部、を備えた圧電基板と、前記錘部の両面と前記各溝部内を含めた前記各振動腕の表裏面及び両側面とに夫々形成され、且つ前記基部に設けた複数の電極パッドとの間を夫々電気的に接続される励振電極と、を備えた圧電振動素子であって、前記各錘部は振動中心に沿った両側に大きな質量を備えるように質量部を備え、前記質量部は前記振動中心に対する対称として構成され、前記圧電振動素子に励振される屈曲−捩じり結合振動における屈曲振動を主振動とし、前記圧電基板の厚さ及び切断角度と、前記各質量部及び溝部の幅と深さとを、周波数温度特性が温度に関して三次特性となるように夫々設定することを特徴とする圧電振動素子である。
【0010】
前記圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)は、各振動腕の先端部に夫々錘部が形成され、この錘部には振動中心に沿っての両側に対称に、大きな質量を備えた質量部が配置されている。更に、各振動腕には振動中心に沿って表裏面に夫々溝部が形成されている。このように構成すると、音叉型圧電振動素子に励起される屈曲振動及び捩れ振動が互いに近接し、結合する。圧電基板の厚さ及び切断角度と、各質量部及び各溝部の形状と、を夫々適切に設定すると、屈曲・捩じり結合振動の主振動である屈曲振動の周波数温度特性が、温度に関し三次特性となり、優れた温度特性を有すると共に、小型化された圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0011】
[適用例2]また圧電振動素子は、前記圧電基板の切断角が、電気軸の回りに0度から−15度の範囲に設定されることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動素子である。
【0012】
前記圧電基板の切断角度が、電気軸(X軸)に回りに0度から−15度に範囲で回転された圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)を構成する。このような切断角度を設定し、圧電基板の厚さ等を適切に設定すると、屈曲・捩れ結合振動の主振動の周波数温度特性を表わす多項式の一次係数及び二次係数を、ほぼ零とすることが可能となり、優れた温度特性の圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0013】
[適用例3]また圧電振動素子は、前記各錘部が、その先端縁中央部に前記振動中心に対して対称な切欠き部を有することにより凹形状を成していることを特徴とする適用例1又は2に記載の圧電振動素子である。
【0014】
各錘部の先端縁中央部に振動中心に対して対称な切欠き部を設けることにより、圧電振動素子1に励振される屈曲振動(音叉振動)及び捩れ振動を互いに近接させ、結合させることが可能となる。各パラメータを適切に設定することにより、屈曲・捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性を三次特性とすることができるという効果がある。
【0015】
[適用例4]また圧電振動素子は、前記切欠き部よりも前記振動腕寄りの前記錘部の面内には、前記振動中心に対して対称な貫通孔が形成されていることを特徴とする適用例3に記載の圧電振動素子である。
【0016】
前記切欠き部を小さくし、貫通孔と合わせて質量部を振動中心に沿っての両側に対称に配置し、且つ両質量部間に橋絡部を設けることにより、錘部が強化される。同時に屈曲振動(音叉振動)及び捩れ振動を互いに近接させ、結合させることが可能となる。各パラメータを適切に設定することにより、屈曲・捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性を、三次特性とすることができるという効果がある。
【0017】
[適用例5]また圧電振動素子は、前記各錘部がその面積の中央部に振動中心に対して対称な貫通孔を備えていることを特徴とする適用例1又は2に記載の圧電振動素子である。
【0018】
前記貫通孔を中央部に配置することにより、錘部の強度が増すが、屈折振動の周波数変化が若干減ずる。しかし、貫通孔の面積を少し大きくすれば、周波数の減少を補うことができる。この場合も屈曲振動(音叉振動)及び捩れ振動を互いに近接させ、結合させることが可能となる。各パラメータを適切に設定することにより、屈曲・捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性を、三次特性とすることができるという効果がある。
【0019】
[適用例6]また圧電振動素子は、前記各錘部は基部側端に振動中心に対して対称な貫通孔を備え、且つ該貫通孔は前記各振動腕の溝部に連接していることを特徴とする適用例1又は2に記載の圧電振動素子である。
【0020】
前記錘部の基部側端に貫通孔を設けると、屈曲振動の周波数変化が若干減ずるが、振動腕の溝部を延在することにより捩じり振動の周波数が減じて、二つの振動が近接し、結合させることができる。各パラメータを適切に設定することにより、屈曲・捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性を、三次特性とすることができるという効果がある
【0021】
[適用例7]また圧電振動素子は、前記基部は、基部本体と、該基部本体の前記振動腕とは反対側の他端縁中間部に設けた連結部と、該連結部を介して連接され且つ前記基部本体とは離間して延びる左右一対の支持腕と、を備えていることを特徴とする適用例1乃至6に記載の圧電振動素子である。
【0022】
前記圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)の基部は、基部本体と、連結部と、L字状及び逆L字状の各支持腕と、を有している。基部は、L字状及び逆L字状の各端部同志を連接し、この連接部を、連結部を介して基部本体の一方の端部中央に連接して構成されている。このため、振動腕より各支持腕に漏洩する振動エネルギーを低減することができ、CI値が小さくなると共に、基部の構造により衝撃が緩和されるので、耐衝撃性が改善される。この結果、衝撃による欠損、破損等による周波数変動の虞のない圧電振動素子が、得られるという効果がある。
【0023】
[適用例8]本発明に係る圧電振動子は、適用例1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電振動子である。
【0024】
前記圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)に励起される屈曲振動及び捩れ振動を互いに近接させ、屈曲・捩じり結合振動が励起される音叉型圧電振動素子を、絶縁基板に収容して、圧電振動子を構成する。この結果、小型でQ値が高く、耐衝撃性と周波数温度特性の優れた圧電振動子が得られるという効果がある。
【0025】
[適用例9]本発明に係る圧電発振器は、適用例1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を励振する発振回路を搭載したIC部品と、前記圧電振動素子を気密封止すると共に前記IC部品を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電発振器である。
【0026】
屈曲振動と捩れ振動とを互いに近接させ、屈曲・捩じり結合振動が励起される圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)と、この圧電振動素子を発振させるIC部品と、これらを収容するパッケージと、を備えた圧電発振器を構成することにより、小型で周波数温度特性の優れた圧電発振器が得られるという効果がある。
【0027】
[適用例10]本発明に係る振動ジャイロ素子は、基部と、該基部の対向する2つの端縁から夫々同一直線上に突設された1対の検出用振動腕と、前記基部の対向する他の2つの端縁から夫々前記検出用振動腕と直交する方向に同一直線上に突設された1対の連結腕と、前記各連結腕の先部からそれと直交する両方向へ夫々突設された各1対の駆動用振動腕と、少なくとも前記1対の検出用振動腕と、前記各1対の駆動用振動腕とに夫々形成され、且つ前記基部に設けた複数の電極パッドとの間を夫々電気的に接続される励振電極と、を備えた振動ジャイロ素子であって、前記各駆動用振動腕は、その表裏面に各振動腕の長手方向に沿って直線状に延びる溝部を備えると共に、先端部に夫々各振動腕よりも幅広の錘部を有し、前記各錘部は振動中心に沿って両側に対称な質量部を備え、前記駆動用振動腕に励振される屈曲−捩じり結合振動のうちの屈曲振動を主振動とし、前記振動ジャイロ素子の基板の切断角度と前記各質量部及び溝部の幅と深さとを、周波数温度特性が温度に関して三次特性となるように夫々設定することを特徴とする振動ジャイロ素子である。
【0028】
各駆動腕用振動腕の先端部に夫々錘部を形成し、該錘部に振動腕の長手方向に沿い振動中心に対称に切欠き部を形成すると共に、各駆動腕用振動腕の振動中心に沿った表面裏面に夫々溝部を形成した振動ジャイロ素子を構成する。このように構成すると、各駆動腕用振動腕に励振される屈曲・捩じり結合振動の主振動である屈曲振動の周波数温度特性が、温度に関し三次特性となり、優れた温度特性を有すると共に、小型の振動ジャイロ素子が得られるという効果がある。
【0029】
[適用例11]本発明に係る振動ジャイロセンサーは、適用例10に記載の振動ジャイロ素子と、該振動ジャイロ素子を収容するパッケージとを備えたことを特徴とする振動ジャイロセンサーである。
【0030】
振動ジャイロ素子をパッケージに収容して振動ジャイロセンサーを構成すると、各駆動腕用振動腕に励振される屈曲・捩じり結合振動の主振動の周波数温度特性が、改善されると共に、錘部を設けることにより、小型化された振動ジャイロセンサーが得られるという効果とがある。
【0031】
[適用例12]本発明に係る電子機器は、適用例8に記載の圧電振動子、又は適用例11に記載の振動ジャイロセンサーを備えることを特徴とする電子機器である。
【0032】
上記の圧電振動子を備えた電子機器を構成することにより、電子機器の周波数源の安定が改善されるという効果がある。また、前記の振動ジャイロセンサーを備えた電子機器を構成することにより、温度による角速度の感度変化を低減できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は本発明に係る圧電振動素子の構造を示した概略平面図であり、(b)は振動腕の断面図。
【図2】振動腕の先端部に連接される錘部の変形例1を示す平面図。
【図3】錘部の変形例2を示す平面図。
【図4】錘部の変形例3を示す平面図。
【図5】(a)は梁の先端部に切欠き部を形成する前後の屈曲振動、捩れ振動夫々の周波数変化を示す説明図であり、(b)は梁の中央部に溝部を形成する前後の屈曲振動、捩れ振動夫々の周波数変化を示す説明図、(c)は梁の板厚を変えた前後の屈曲振動、捩れ振動夫々の周波数変化を示す説明図。
【図6】(a)は音叉振動(屈曲振動)の周波数温度特性であり、(b)は捩れ振動の周波数温度特性、(c)は屈曲−捩れ結合振動の周波数温度特性を示す図。
【図7】振動腕の板厚hを変えた場合の屈曲振動と捩れ振動との結合示す図。
【図8】屈曲−捩れ結合振動の板厚hと屈曲振動及び捩れ振動夫々の一次温度係数、二次温度係数との関係を示す図。
【図9】(a)〜(e)は錘部に形成する切欠き部、貫通孔の平面図であり、(f)は切欠き部と同面積を有する溝部の平面図。
【図10】図9(b)の形状の切欠き部を有する音叉型圧電振動素子と、切欠き部と同面積の溝部を有する音叉型圧電振動素子と、に夫々励起される屈曲振動及び捩れ振動の周波数と、周波数差とを示す図。
【図11】図9(c)の形状の貫通孔を有する音叉型圧電振動素子と、貫通孔と同面積の溝部を有する音叉型圧電振動素子と、に夫々励起される屈曲振動及び捩れ振動の周波数と、周波数差とを示す図。
【図12】図9(d)の形状の切欠き部及び貫通孔を有する音叉型圧電振動素子と、切欠き部及び貫通孔と同面積の溝部を有する音叉型圧電振動素子と、夫々に励起される屈曲振動及び捩れ振動の周波数と、周波数差とを示す図。
【図13】図9(e)の形状の細貫通孔と連接する溝部とを有する音叉型圧電振動素子と、細貫通孔と連接する溝部と同面積の溝部を有する音叉型圧電振動素子と、に夫々励起される屈曲振動及び捩れ振動の周波数と、周波数差とを示す図。
【図14】図9(b)〜(e)の形状の錘部を有する音叉型圧電振動素子に励起される屈曲振動及び捩れ振動の周波数と、周波数差とを示す図。
【図15】基部本体のみを有する音叉型圧電振動素子と、支持腕を備えた基部を有する音叉型圧電振動素子と、の振動漏れをシミュレーションにより求めた図。
【図16】屈曲−捩れ結合振動を用いた圧電振動子の断面図。
【図17】圧電発振器の断面図。
【図18】(a)は振動ジャイロセンサーの平面図、(b)は断面図、(c)は動作を説明する模式図。
【図19】本発明の圧電振動子、又は振動ジャイロセンサーを用いた電子機器の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態に係る圧電振動素子1の構成を示す概略平面図であり、同図(b)は、(a)のP−P断面図である。
圧電振動素子1は、外形が所定の形状に加工された平板状の圧電基板8と、圧電基板8の表裏面及び側面に形成した薄膜の電極25と、を備えている。
圧電基板8は、図1(a)の実施の形態例に示すように、互いに並行(平行)して直線状に延びる細幅帯状の複数(本例では二本)の振動腕15a、15bと、各振動腕15a、15bの一方の端部(基端部)間を連接する基部10と、各振動腕15a、15bの他方の端部(先端部)に夫々連接して一体形成され、且つ各振動腕15a、15bの幅よりも幅広な錘部20a、20bと、各振動腕15a、15bの振動中心Cに沿った表面及び裏面に夫々形成された溝部17a(17b)、18a(18b)と、を備えている。
各錘部20a、20bは、各振動中心Cに対して対称であり、振動中心Cに沿った面の両側(振動中心Cの両側)に大きな質量を備えた質量部21が対称に配置されている。
【0035】
図1(a)に示す実施形態例では、各錘部20a、20bは、その先端縁中央部に各振動中心Cに対して対称な切欠き部(貫通部)22a、22bを形成することにより凹形状を成し、且つ各切欠き部の両側に質量部21を形成している。つまり、質量部21が、振動中心Cに沿いそれと離間して両側に配置されている実施例である。
先端縁中央部に各振動中心Cに対して対称な切欠き部を形成する例では、質量部21は振動中心Cに沿いそれと離間して両側に対称に配置される。しかし、エッチングによって各錘部20a、20bに各振動中心Cに対して対称な溝部(有底=非貫通)を形成する方法では、錘部20a、20bの表裏面で対称な溝部を形成することが難しい。これは圧電基板固有の異方性により結晶軸方向によりエッチング速度が異なるためである。対称性を欠く圧電振動素子1を励振させると、主振動の屈曲振動に不要モードが重畳する虞がある。切欠き部22a、22bのように表裏面を貫通させることにより表裏面の対称性は改善される。
【0036】
図1(b)に示した薄膜の電極25は、錘部20a、20bの夫々の表裏面と、各溝部17a(17b)、18a(18b)内を含めた各振動腕15a、15bの表裏面及び側面と、に夫々形成され、且つ基部10に設けた複数の電極パッド(図示せず)との間を、夫々リード電極(図示せず)にて電気的に接続される励振電極30、32、34、36と、を備えている。薄膜の電極25は、蒸着法、又はスパッタ法等を用いて真空装置の中で形成される。
【0037】
図1(a)に示す基部10は、振動漏れ低減と耐衝撃性改善のために、基部本体12aと、基部本体12aの振動腕15a、15bとは反対側の他端縁中間部に設けた細幅の連結部12dと、連結部12dを介して連接され且つ基部本体12aとは離間して延びる左右一対の支持腕12b、12cと、を備えている。つまり、L字状支持腕12bの基端部と、逆L字状の支持腕12cの基端部とが連接され、この連接部分が連結部12dを介して基部本体12aの一方の端縁中央に連結されてコ字状をなし、基部本体12aの他方の端縁には各振動腕15a、15bの基端部が連結されている基部の例である。
図1の実施の形態において、基部10は、基部本体12aと、連結部12dと、左右一対の支持腕12b、12cと、を備えていると説明したが、基部本体12aのみでもよい。
また、各振動腕15a、15bは、基部本体12aの端縁より間隔を隔して互いに平行に延出し、各振動腕15a、15bの先端部には夫々振動腕15a、15bの幅よりも幅広の錘部20a、20bが連設一体化されている。
【0038】
圧電基板8として、例えば水晶基板を用いる場合には、Z板(光軸(Z軸)に直交して切り出された基板)を電気軸(X軸)の回りに0°から−15°回転して切り出した基板を用いる。なお、圧電基板8の外形形状、錘部20a、20bの質量部21、各振動腕15a、15bの溝部17a(17b)、18a(18b)は、圧電基板にフォトリソグラフィ技術とエッチング手法を適用して形成する。
【0039】
図1(b)に示す断面図は、各振動腕15a、15bに夫々形成された励振電極30、32、34、36の配置を示す図である。励振電極30、34は、各溝部17a(17b)、18a(18b)の表面、及び側面に形成され、励振電極32、36は各振動腕15a、15bの夫々両側面に形成されている。
励振電極30、36と、励振電極32、34とは、互いに異符号の電圧が前記電極パッドを介して印加される。つまり、励振電極30、36に+電圧が印加されるとき、励振電極32、34には−電圧が印加され、図1(b)の矢印で示すような電界が生じ、圧電振動素子1の重心を通る中心線Cg(以下、重心中心線と言う)に対し対称な音叉振動(屈曲振動)が励振される。
なお、溝部17a(17b)、18a(18b)を形成することにより、電界強度が強まり、音叉振動をより効率的に励振することができる。即ち、圧電振動素子のCI(クリスタルインピーダンスー)を小さくすることができる。
【0040】
図2は、錘部20a(20b)の他の実施の形態例(一方の錘部20aのみ図示)を示す平面図である。図1(a)に示す切欠き部22a(22b)よりも振動腕15a(15b)寄りの錘部20a(20b)の面内に、振動中心Cに対して対称な貫通孔23a(23b)が形成されている。質量部21は、振動中心Cに沿いそれと離間して両側に配置されている。切欠き部22a(22b)と貫通孔23a(23b)とを互いに離間させることにより、振動中心Cを挟む質量部21間を互いに連接する橋絡部24a(24b)が形成される。
なお、貫通孔23a(23b)の幅は、切欠き部22a(22b)の幅と同等であっても良いし、異なっていても良い。
図1(a)の錘部20a(20b)では、圧電振動素子1が励振され、振動腕15a、15bが屈曲モードで振動する際に、振動中心Cの左右の質量部21が不要な振動を行う虞がある。これに対し、図2の実施の形態のように橋絡部24a(24b)を設けることにより、質量部21の不要振動は抑制され、且つ衝撃等にも強い圧電振動素子1が得られる。
【0041】
図3は、錘部20a(20b)の他の実施の形態例(一方の錘部20aのみ図示)を示す平面図である。図3の平面図に示すように、各錘部20a(20b)は、その面積の中央部に振動中心Cに対して対称な貫通孔23a(23b)を備えている。このように、錘部20a(20b)の面積の中央部に、貫通孔23a(23b)を設けることにより、質量部21は、振動中心Cに沿いそれと離間して両側に配置されている。
また、図4は、錘部20a(20b)の他の実施の形態例(一方の錘部20aのみ図示)を示す平面図である。各錘部20a(20b)は、基部側端に振動中心Cに対して対称な貫通孔23a(23b)を備え、且つ貫通孔23a(23b)は、各振動腕15a(15b)の溝部17a、17b(18a、18b)に連接(連通)している。質量部21は、振動中心Cに沿いそれと離間して両側に配置されている。
【0042】
音叉型水晶振動素子1には、その重心を通り、振動腕15a、15b方向の重心中心線Cgに対し、互いに対称に振動する屈曲振動と、重心中心線Cgに対し、互いに対称な捩れ振動とが励振される。励振電極を適切に形成することにより、何れの振動モードを主振動とするかが選択できるが、図1の実施の形態例は、音叉振動(屈曲振動)を主振動モードする例である。
本発明の圧電振動素子の一例として、水晶Z板を電気軸(X軸)回りにθ(0度から−15度の範囲)回転して切り出した基板を用いて、音叉型水晶振動素子1を形成する。各振動腕15a、15bには、溝部17a(17b)、18a(18b)を形成すると共に、錘部20a、20bには振動中心Cに沿いそれと離間して両側に質量部を形成する。
つまり、切断角度θと、圧電基板8の厚さと、錘部20a、20bの切欠き部22a、22b、又は貫通孔23a、23bと、溝部17a、17b、18a、18bと、を適切に設定することにより、音叉型水晶振動素子1に励起される屈曲振動(音叉振動)及び捩れ振動の共振周波数fF、fTを、互いに近接させることによって二つ振動モードを結合させ、主振動とする屈曲振動の周波数温度特性を改善すると共に、小型化を図った音叉型水晶振動素子が構成される。
【0043】
屈曲振動及び捩れ振動夫々の共振周波数fF、fTを互いに近接させる手段を図5(a)〜(c)を用いて説明する。
図5(a)〜(c)は、図1(a)に示す圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)1に励起される屈曲振動の共振周波数fFと、捩じり振動の共振周波数fTとが、錘部20a、20bの切欠き部22a、22b、振動腕15a、15bの溝部17a、17b、18a、18b及び振動腕15a、15bの厚さhにより、どのように変化するかを定性的に説明する図である。なお、図5(a)、(b)の横軸のA、Bは、梁(振動腕)15の平面形状を示し、Aは梁15に切欠き部を形成する前、Bは切欠き部を形成した後を示している。図5(c)は、梁15の板厚hをAに比べ厚くした場合をBで示している。
【0044】
図5に示すように、切欠き部を形成する前の梁15に励振される屈曲振動及び捩じり振動の共振周波数をfF、fTとし、梁15の先端部に切欠き部を形成した場合の夫々の共振周波数をf’F、f’Tとする。図5(a)に示すように、梁(振動腕)15の先端部に切欠き部22aを形成すると、屈曲振動、捩じり振動夫々の共振周波数f’T、f’Fは、共に上昇するが、捩じり振動の周波数増加幅dfT=(f’T−fT)に対し、屈曲振動の周波数増加幅dfF=(f’F−fF)の方が大きい。切欠き部を設けることにより、屈曲振動、捩じり振動の夫々の共振周波数を近接させることが可能となる。
【0045】
一方、図5(b)に示すように、梁(振動腕)15の中央部に溝部17a(17b)を形成すると、捩じり振動、屈曲振動の共振周波数f’T、f’Fは共に低下する。捩じり振動の周波数減少幅dfT=(fT−f’T)は、屈曲振動の周波数減少幅dfF=(fF−f’F)に比べて、大きくなる。つまり、溝部17a(17b)を設けることにより、屈曲振動、捩じり振動の夫々の共振周波数を近接させることが可能となる。
また、図5(c)に示すように、梁15の板厚hを厚くすると、屈曲振動の周波数f’Fは、元の周波数fFより僅かに減少するが、捩じり振動の共振周波数f’Tは、元の周波数fTより増加する。梁15の板厚hを変えることにより、屈曲振動、捩じり振動の夫々の共振周波数を近接させることが可能となる。
以上、説明したように、梁(振動腕)15に形成する切欠き部22aの幅及び長さ、溝部17a(17b)の幅及び深さ、梁(振動腕)15の厚さ、を適切に設定することにより、屈曲振動、捩じり振動の夫々の共振周波数を近接させることが可能である。
【0046】
図5(a)〜(c)では、各要素に対し屈曲振動及び捩れ振動の夫々の共振周波数の変化を定性的に説明した。そこで、図1に示した形状の錘部20a、20を有する音叉型水晶振動素子1に、有限要素法を適用して励振される屈曲振動及び捩れ振動の夫々の共振周波数fF、fTと、周波数差Δf=(fT−fF)と、のシミュレーションを行ったところ、図5と同様な結果が得られた。屈曲振動及び捩れ振動の夫々の共振周波数を互いに近接させ得ることが、シミュレーションでも確認できた。
つまり、錘部20a、20bの先端部に切欠き部22a(22b)を、振動腕15a、15bに溝部17a、17b、18a、18bを形成して、周波数差Δf=(fT−fF)を小さくすることにより、例えばΔf/((fT+fF)/2)の値を10%以下にすると、屈曲振動と捩じり振動の結合が密になり、主振動とする屈曲振動の周波数温度特性が改善される。
【0047】
図6は、音叉型水晶振動素子1で励振される屈曲振動と捩じり振動とを互いに結合させることにより、主振動の屈曲振動の周波数温度特性が改善される様子を、図を用いて定性的に表わしたものである。一般的に水晶振動子の周波数温度特性Δf/f(=(f−f0)/f、f0は所定の温度における周波数)は、式(1)のように温度Tの多項式で表わすことができる。
Δf/f=α(T−T0)+β(T−T0)2+γ(T−T0)3+・・ (1)
図6(a)は主振動である屈曲振動の周波数温度特性で、温度Tに関し、二次曲線を呈している。図6(b)は捩れ振動の周波数温度特性で、周波数Δf/fは温度Tに関し、一次式で近似される。図6(c)は、屈曲振動と捩れ振動を結合させた場合の主振動である屈曲振動の周波数温度特性を示す図である。主振動の屈曲振動に捩れ振動を結合させることにより、屈曲振動の周波数温度特性を表わす多項式Δf/fの一次温度係数αと、二次温度係数βをほぼ零とすることが可能となり、主振動の屈曲振動の周波数温度特性は三次温度係数γで近似でき、図6(c)に示すよう三次曲線を呈する。
【0048】
図7は、音叉型水晶振動子1の振動腕15a、15bの板厚hを変化させた場合、屈曲振動と捩れ振動との結合の度合いをシミュレーションで求め、図示したものである。屈曲振動の共振周波数fFは、厚さhに関しほぼ平坦で、hの増加につれて僅かに減少する。一方、捩れ振動の共振周波数fTは、厚さhの増加に応じ、ほぼ比例するように増加する。図7の例では、86μmより少し薄い板厚hで結合が大きくなることが分かる。
【0049】
図8は、錘部20a(20b)の振動中心C沿って、溝部(有底)を形成した音叉型水晶振動子1に励振される屈曲振動の一次温度係数α、二次温度系数βと、捩れ振動の一次温度係数α’、二次温度係数β’と、をシミュレーションにより求め、それを図示したものである。屈曲振動の一次温度係数α、二次温度係数βを夫々菱形◆、四角■で示し、捩れ振動の二次温度係数β’を白抜き四角□で示している。捩れ振動の一次温度係数α’は、数値が大きすぎグラフの枠外となるため、図示していない。つまり、捩れ振動では一次温度係数α’が支配的である。
錘部20a(20b)の振動中心C沿って、切欠き部22a(22b)を形成した音叉型水晶振動子1についても、図8と同様な曲線が得られる。
【0050】
図8は、振動腕15a、15bの板厚hを82μmから86μmの範囲で変化させた場合の屈曲振動、捩れ振動の夫々の一次温度係数、二次温度係数α、β、α’、β’を板厚hに対し示した図である。図8の例では、屈曲振動の一次温度係数α、二次温度係数βとも板厚h=84.5μm近辺でほぼ零になることが判明した。また捩れ振動の二次温度係数β’も板厚h=84.5μm近傍でほぼ零になることが分かる。
つまり、図8の音叉型水晶振動素子1の例では、板厚hを84.5μmに設定することにより、主振動である屈曲振動の周波数温度特性の一次温度係数α、二次温度係数βを共に零とすることができる。そのため屈曲振動の周波数温度特性は3次曲線を呈し、周波数温度特性が大幅に改善されると共に、錘部20a、20bの設けることにより振動腕が短縮され、小型の音叉型水晶振動素子1が得られる。
また、錘部20a、20bの表裏面に形成した電極、溝部17a、17b、18a、18bの電極、振動腕15a、15bに形成した電極等にレーザー光線を照射し、音叉型圧電振動子に励振される屈曲振動と捩れ振動との結合度を微調整することが可能である。
【0051】
図9は、既に説明した音叉型水晶振動素子1の錘部20aの各種の形状を示した図である。図9(a)は何も加工を施さない四角形状の錘部20a、(b)は先端縁に切欠き部22aを形成した錘部20a、(c)は(a)の錘部に貫通孔23aを形成した錘部20a、(d)は先端縁の切欠き部22aと貫通孔23aを形成した錘部20a、(e)は細貫通孔23aとこれと連接する溝部17aとを形成した錘部20a、の平面図である。図9(b)〜(e)では、図9(b)の切欠き部22aの面積と、図(c)以下の貫通孔23a、又は切欠き22aと貫通孔23aとを加算した面積は、全て同一としてある。また、図9(f)は、振動中心Cに沿って溝部19(有底)を形成した錘部20aの平面図であり、この溝部19の面積も、図9(b)の切欠き部22aの面積と同一とする。図9(c)〜(e)の貫通孔23a、又は切欠き部22a及び貫通孔23aに対応して形成した同面積の溝部19を有する錘部20aについては、その図面を省略する。
【0052】
溝部19を有する錘部20aについては、図9(f)のみ示したが、これは音叉型水晶振動素子1に励振される屈曲振動及び捩れ振動の周波数の近接する度合いをシミュレーションにより求める際に、切欠き部22aを有する錘部20aと比較するために必要な図である。
図9(a)の錘部20aを有する音叉型水晶振動素子1に励振される屈曲振動及び捩れ振動の夫々の周波数を基準とし、図9(b)〜(e)の錘部20aを有する音叉型水晶振動素子1と、図9(b)〜(e)に夫々対応する溝部19を有する音叉型水晶振動素子1とについて、屈曲振動及び捩れ振動の周波数fF、fT、及び周波数差Δf(=(fT−fF))について夫々シミュレーションを行った。
図9(b)〜(e)に示す切欠き部22a、切欠き部22a及び貫通孔23aを有する音叉型水晶振動素子1と、図9(b)〜(e)に対応して同面積の溝部19を有する音叉型水晶振動素子1と、について屈曲振動及び捩れ振動の周波数fF、fTと、周波数差Δfがどのように変化するかをシミュレーションで求めた。
【0053】
図10は、図9(b)の形状の切欠き部22aを有する音叉型水晶振動素子1と、図9(b)の切欠き部22aの面積と同面積の溝部19を有する図9(f)の音叉型水晶振動素子1と、に夫々励振される屈曲振動及び捩れ振動の周波数fF、fTと、周波数差Δfを夫々示した図である。切欠き部22aを形成した音叉型水晶振動素子1の方が、屈曲振動と捩れ振動との周波数差Δfが小さく、屈曲振動と捩れ振動とが近接することを示している。
図11は、図9(c)の形状の貫通孔23aを有する音叉型水晶振動素子1と、この貫通孔23aの面積と同面積の溝部19を有する音叉型水晶振動素子1と、に夫々励振される屈曲振動及び捩れ振動の周波数fF、fTと、周波数差Δfとを夫々示した図である。貫通孔23aを形成した音叉型水晶振動素子1の方が、屈曲振動と捩れ振動との周波数差Δfが小さく、屈曲振動と捩れ振動とが近接することを示している。
【0054】
図12は、図9(d)の形状の切欠き部22a及び貫通孔23aを有する音叉型水晶振動素子1と、この切欠き部22a及び貫通孔23aの面積と同面積の溝部19を有する音叉型水晶振動素子1と、に夫々励振される屈曲振動及び捩れ振動の周波数fF、fTと、周波数差Δfとを夫々示した図である。切欠き部22a及び貫通孔23aを形成した音叉型水晶振動素子1の方が、屈曲振動と捩れ振動との周波数差Δfが小さく、屈曲振動と捩れ振動とが近接することを示している。
図13は、図9(e)の形状の細貫通孔23aとこれに連接する溝部17aを有する音叉型水晶振動素子1と、この細貫通孔23aの面積と溝部17aの面積とを加算した面積と同面積の溝部19を有する音叉型水晶振動素子1と、に夫々励振される屈曲振動及び捩れ振動の周波数fF、fTと、周波数差Δfとを夫々示した図である。切欠き部22a及び貫通孔23aを形成した音叉型水晶振動素子1の方が屈曲振動と捩れ振動との周波数差Δfが小さく、屈曲振動と捩れ振動とが近接することを示している。
【0055】
図14は、以上の結果を纏めたもので、図9(b)〜(e)の形状を有する音叉型水晶振動素子1に励振される屈曲振動及び捩れ振動の周波数fF、fTと、周波数差Δfとを夫々左右の縦軸にとり、横軸の符号(b)〜(e)に対応して示した図である。周波数差Δfが小さくなるのは、図9(b)の形状、即ち錘部20aに振動中心Cに対して対称な切欠き部22aを形成した場合である。
図15は、基部本体12aのみを有する音叉型圧電振動素子1の振動漏れと、基部本体12a、連結部12d、支持腕12b、12cを備えた基部10を有する音叉型圧電振動素子の振動漏れと、をシミュレーションにより求めて比較した図である。支持腕12b、12cを備えた基部10を有する音叉型圧電振動素子1の方が、振動漏れが少ないことが明らかとなった。
【0056】
図1の実施の形態に示すように、本発明の圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)1は、各振動腕の先端部に夫々錘部が形成され、この錘部には振動中心に沿っての両側に対称に大きな質量を備えた質量部が配置されている。その上に、各振動腕には振動中心に沿って表裏面に夫々溝部が形成されている。このように構成すると、音叉型圧電振動素子1に励起される屈曲振動及び捩れ振動が互いに近接し、結合する。圧電基板の厚さ及び切断角度と各質量部及び各溝部の形状とを夫々適切に設定すると、屈曲−捩じり結合振動の主振動である屈曲振動の周波数温度特性が温度に関し三次特性となり、優れた温度特性を有すると共に小型化された圧電振動素子が得られるという効果がある。
また、図1(a)の実施の形態に示す圧電基板8の切断角度が、電気軸(X軸)に回りに0度から−15度に範囲で回転された圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)1を構成する。このように切断角度を設定し、圧電基板の厚さ等を適切に設定すると、屈曲-捩れ結合振動の周波数温度特性を表わす多項式の一次係数及び二次係数をほぼ零とすることが可能となり、優れた温度特性の圧電振動素子が得られるという効果がある。
図1の実施の形態に示すように、各錘部20a、20bの先端縁中央部に振動中心Cに対して対称な切欠き部22a、22bを設けることにより、圧電振動素子1に励振される屈曲振動(音叉振動)と捩れ振動とを近接させ、結合させることが可能となる。各パラメータを適切に設定することにより、屈曲−捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性を三次特性とすることができるという効果がある。
【0057】
また、図2の実施の形態に示すように、切欠き部22aを小さくし、貫通孔23aと合わせて、質量部21を振動中心Cに沿っての両側に対称に配置し、且つ両質量部21間に橋絡部24aを設けることにより、錘部20a、20bが強化される。同時に屈曲振動(音叉振動)と捩れ振動とを近接させ、結合させることが可能となる。各パラメータを適切に設定することにより、屈曲−捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性を三次特性とすることができるという効果がある。
【0058】
図3の実施の形態に示すように、貫通孔23a(23b)を中央部に配置することにより錘部20a、20bの強度が増すが、屈折振動の周波数変化が若干減ずる。しかし、貫通孔23a(23b)の面積を少し大きくすれば周波数の減少を補うことができる。この場合も屈曲振動(音叉振動)と捩れ振動とを近接させ、結合させることが可能となる。各パラメータを適切に設定することにより、屈曲−捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性を三次特性とすることができるという効果がある。
また、図4の実施の形態に示すように、錘部20a、20bの基部側端に貫通孔23a(23b)を設けると、屈曲振動の周波数変化が若干減ずるが、振動腕の溝部を延在することにより捩じり振動の周波数が減じて、二つの振動が互いに近接し、結合させることができる。各パラメータを適切に設定することにより、屈曲−捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性を三次特性とすることができるという効果がある。
【0059】
また、図1(a)に示すように、圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)1の基部10が、基部本体12aと、連結部12dと、L字状及び逆L字状の各支持腕12b、12cと、を有し、L字状及び逆L字状の各端部同志を連接し、この連接部を、連結部12dを介して基部本体12aの一方の端部中央に連接して構成されている。このため、振動腕15a、15bより各支持腕12b、12cに漏洩する振動エネルギーを低減することができ、CI値が小さくなると共に、基部の構造により衝撃が緩和されるので耐衝撃性が改善される。この結果、衝撃による欠損、破損等による周波数変動の虞のない圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0060】
図16は、本発明に係る第2の実施の形態の圧電振動子2の構成を示す断面図である。圧電振動子2は、上記の圧電振動素子1と、圧電振動素子1を収容するパッケージとを備えている。パッケージは、矩形の箱状に形成されているパッケージ本体40と、ガラス等からなる窓部材54を有する蓋部材52とから成る。
パッケージ本体40は、図16に示すように、絶縁基板として第1の基板41と、第2の基板42と、第3の基板43とを積層して形成されており、絶縁材料として、酸化アルミニウム質のセラミック・グリーンシートを成形し箱状とした後で、焼結して形成されている。実装端子45は、第1の基板41の外部底面に複数形成されている。
第3の基板43は中央部が除去されており、第3の基板43の上部周縁に例えばコバール等の金属シールリング44が形成されている。
第3の基板43と第2の基板42とにより、圧電振動素子1を収容する凹部が形成されている。第2の基板42の上面の所定の位置には、導体46により実装端子45と電気的に導通する複数の素子搭載パッド47が設けられている。
素子搭載パッド47の位置は、圧電振動素子1を載置した際に支持腕12b、12cに形成したパッド電極(図示せず)に対応するように配置されている。
【0061】
圧電振動子2の構成は、パッケージ本体40の素子搭載パッド47に導電性接着剤50、例えばシリコン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリイミド系接着剤、ビスマレイミド系接着剤等の何れかを適量塗布し、その上に圧電振動素子1を載置して荷重をかける。
パッケージ本体40に搭載された圧電振動子1の導電性接着剤50を硬化させるために所定の温度の高温炉に所定の時間入れる。アニール処理を施した後、上方からレーザー光を照射して各錘部20a、20b、各振動腕15a、15bに形成された周波数調整用金属膜の一部を蒸散させて周波数粗調を行う。ガラス窓部54を備えて蓋部材52を、パッケージ本体40の上面に形成したシールリング44に、シーム溶接する。
【0062】
パッケージの貫通孔48を封止する前に、加熱処理を施す。パッケージの上下を逆にして、貫通孔48内の段差部上に金属球の充填材48aを載置する。充填材48aとしては金−ゲルマニウム合金等がよい。充填材48aにレーザー光を照射して溶融させ、貫通孔48を封止すると共にパッケージ内部を真空とする。パッケージの外部から窓部材54を介してレーザー光をパッケージ内に照射し、振動腕15a、15bに形成した周波数調整用金属膜を蒸散させて周波数微調整を行い、圧電振動子2を完成する。
以上の圧電振動子2の実施の形態例では、パッケージ本体40に積層板を用いた例を説明したが、パッケージ本体40に単層セラミック板を用い、蓋体に絞り加工を施したキャップを用いた圧電振動子も開発されている。
【0063】
図16の構成の圧電振動子2に、落下などの衝撃が加えられたときの圧電振動素子1の変形について説明する。圧電振動子2のパッケージの主面に直交方向に衝撃力が加えられると、圧電振動素子1は、素子搭載パッド47を支点として、変形し易い支持腕支持部12b、12cがパッケージ本体40の底面に向かって変形する。次に、この変形が基部10の外側端縁12eで反射し、変形が基部本体12aの中央部に伝搬し、基部本体12aを含めた全体がパッケージ本体40の底面側に沈み込む。その結果、振動腕15a、15bは、その先端側がパッケージ底面に向かって変形する。つまり、基部10の構造が、基部本体12aに連結部12dを介して支持腕12b、12cに連接されていることにより、加えられた衝撃を基部10の構造で緩和するように構成されている。
図16の実施形態の断面図に示すように、音叉型圧電振動素子1に励起される屈曲振動と捩れ振動を互いに近接させ、屈曲−捩じり結合振動が励起される音叉型圧電振動素子1を絶縁基板40に収容して圧電振動子2を構成することにより、小型でQ値が高く、周波数温度特性の優れた圧電振動子が得られるという効果がある。
【0064】
図17は、本発明に係る第3の実施の形態の圧電発振器3の構成を示す断面図である。圧電発振器3は、上記の圧電振動素子1と、圧電振動素子1を励振する発振回路を搭載したIC部品78と、圧電振動素子1を真空封止すると共にIC部品78を収容するパッケージ本体60、及び窓部材75a有する蓋部材75と、を備えている。圧電振動素子1にレーザー光を照射しての粗調製、微調整する手法、また、パッケージの内部を真空にして貫通孔68の封止する手法等は、圧電振動子2の場合と同様であるので省略する。IC部品78はパッケージ本体60のIC部品搭載パッド69に、金属バンプ76等を用いて電気的に導通接続する。
なお、図17に示した圧電発振器3では、IC部品78が気密封止されていない例を示したが、IC部品78をパッケージ内部に配置し、気密封止してもよい。
図17の実施形態の断面図に示すように、屈曲振動と捩れ振動を互いに近接させ、屈曲−捩じり結合振動が励起される音叉型圧電振動素子1と、この音叉型圧電振動素子1を発振させるIC部品78と、これらを収容するパッケージ60と、を備えた圧電発振器を構成することにより、小型で周波数温度特性の優れた圧電発振器が得られるという効果がある。
【0065】
図18は、本発明に係る第4の実施の形態の振動ジャイロセンサー4の構成を示す図であり、蓋体を取り除いて示している。図18(a)は、振動ジャイロセンサー4の平面図であり、同図(b)は(a)のP−P断面図である。
振動ジャイロセンサー4は、振動ジャイロ素子80と、振動ジャイロ素子80を収容するパッケージと、を概略備えている。パッケージは、絶縁基板(パッケージ本体)79と、絶縁基板79を気密封止する蓋体と、を備えている。
振動ジャイロ素子80は、中央に位置する概略四角形の基部81と、基部81の対向する2つの端縁中央部から夫々同一直線上に突設された1対の検出用振動腕85a、85bと、を備えている。更に、振動ジャイロ素子80は、基部41の対向する他の2つの端縁から夫々検出用振動腕85a、85bと直交する方向に同一直線上に突設された1対の第1の連結腕82a、82bと、各第1の連結腕82a、82bの先端部からそれと直交する両方向へ夫々突設された各1対の駆動用振動腕83a、83b及び84a、84bと、を備えている。
【0066】
更に、振動ジャイロ素子80は、基部81の四つの角隅部からは、夫々L字状に各1対の支持腕86a、86b及び87a、87bが延びている。即ち、支持腕86a、86bは、第1の連結腕82aを間に挟んだ対称位置に設けられ、支持腕87a、87bは、第1の連結腕82bを間に挟んだ対称位置に設けられている。
励振電極は、少なくとも1対の検出用振動腕85a、85bと、各1対の駆動用振動腕83a、83b及び84a、84bと、に夫々形成されている。支持腕86a、86b及び87a、87bには、複数の電極パッド(図示せず)が形成され、この電極パッドと励振電極との間は、夫々電気的に接続されている。
【0067】
図18(c)は振動ジャイロ素子の動作を説明する模式平面図である。振動ジャイロセンサー4は角速度が加わらない状態では、駆動用振動腕83a、83b、84a、84bが矢印Eで示す方向に屈曲振動を行う。このとき、駆動用振動腕83a、83bと、駆動用振動腕84a、84bとが、重心Gを通るY’軸方向の直線に関して線対称の振動を行っているため、基部81、連結腕82a、82b、検出用振動腕85a、85bはほとんど振動しない。
振動ジャイロセンサー4にZ’軸回りの角速度ωが加わると、駆動用振動腕83a、83b、84a、84b及び第1の連結腕82a、82bにコリオリ力が働き、新たな振動が励起される。この振動は重心Gに対して周方向の振動である。同時に、検出用振動腕85a、85bは、この振動に応じて検出振動が励起される。この振動により発生した歪を検出用振動腕85a、85bに形成した検出電極が検出して角速度が求められる。
【0068】
本発明の振動ジャイロセンサー4の特徴は、駆動用振動腕83a、83b、84a、84bの先端部に錘部26が設けられ、各錘部26の振動腕の長さ方向に沿って振動中心に線対称に切欠き部27が形成されている。さらに、駆動用振動腕83a、83b、84a、84bには、振動腕の長さ方向に沿って振動中心に線対称に溝部28が形成されている。振動ジャイロ素子80の圧電振動基板の切断角度θと、錘部26の切欠き部27と、駆動腕83a、83b、84a、84bの溝部28と、駆動腕83a、83b、84a、84bの板厚を適切に選定することにより、振動ジャイロ素子80に励起される屈曲振動及び捩れ振動の夫々の共振周波数fF、fTを互いに近接させることができる。二つ振動モードを結合させ、主振動の屈曲振動の周波数温度特性を改善すると共に、錘部26を設けることにより駆動用振動腕、検出用親王腕を短縮することにより、小型の振動ジャイロセンサー4を構成することができる。
【0069】
図18(a)の実施形態に示すように、各駆動腕用振動腕83a〜84bの先端部に夫々錘部26を形成し、該錘部26に振動腕の長手方向に沿い振動中心に線対称に切欠き部27を形成すると共に、各駆動腕用振動腕の振動中心に沿った表面裏面に夫々溝部28を形成した振動ジャイロ素子80を構成する。このような振動ジャイロ素子80を構成すると、各駆動腕用振動腕に励振される屈曲−捩じり結合振動のうちの主振動である屈曲振動の周波数温度特性が温度に関し三次特性となり、優れた温度特性を有すると共に小型の振動ジャイロ素子が得られるという効果がある。
また、図18(a)に示すように、振動ジャイロ素子をパッケージに収容して振動ジャイロセンサーを構成すると、各駆動腕用振動腕に励振される屈曲−捩じり結合振動の主振動の周波数温度特性が改善されると共に、錘部を設けることにより小型化された振動ジャイロセンサーが得られるという効果とがある。
【0070】
図19は本発明に係る電子機器の構成を示す概略構成図である。電子機器5には上記の第2の実施形態で説明した圧電振動子2、又は第4の実施形態で説明した振動ジャイロセンサーを備えている。圧電振動子2を用いた電子機器5として、携帯電話やデジタルカメラ、ビデオカメラなどの携帯用電子機器が挙げられる。これらの電子機器5において圧電振動子5は、基準信号源として用いられ、小型で精度の良い圧電振動子2を備えることにより、小型で携帯性に優れ、特性の良好な電子機器を提供できる。
図19の実施の形態に示すように、図16の圧電振動子2を備えた電子機器を構成することにより、電子機器の周波数源の安定が改善されるという効果がある。また、図18(a)の振動ジャイロセンサー4を備えた電子機器を構成することにより、温度による角速度の感度変化を低減できるという効果がある。
【符号の説明】
【0071】
1…圧電振動素子、2…圧電振動子、3…圧電発振器、4…振動ジャイロセンサー、5…電子機器、8…圧電基板、10…基部、12a…基部本体、12b、12c…支持腕、12d…連結部、12e…外側端縁、15…梁、15a、15b…振動腕、17a、17b、18a、18b、19、28…溝部、20a、20b、26…錘部、21…質量部、22a、22b…切欠き部、23a、23b…貫通孔、24a、24b…橋絡部、25…電極、30、32、34、36…励振電極、40、60、79…パッケージ本体、41…第1の基板、42…第2の基板、43…第3の基板、44…金属シールリング、45…実装端子、46…導体、47…素子搭載パッド、48、68…貫通孔、48a…充填材、50…導電性接着剤、52、75…蓋部材、54、75a…窓部材、部品搭載パッド…69、78…IC部品、80…振動ジャイロ素子、81…基部、82a、82b…第1の連結腕、83a、83b、84a、84b…駆動用振動腕、85a、85b…検出用振動腕、86a、86b、87a、87b…支持腕、C…振動中心、Cg…重心中心線、G…重心
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動素子、振動ジャイロ素子等に関し、特に小型化を図ると共に周波数温度特性を改善した圧電振動素子、振動ジャイロ素子、圧電振動子、振動ジャイロセンサー及びこれらを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モバイルコンピューター、ハードディスク・ドライブ等の小型情報機器や、携帯電話等の移動体通信機には、基準周波数源として圧電デバイスが広く用いられている。圧電デバイスを搭載した電子機器の小型化が進むに伴い、圧電デバイスには更なる小型化が求められている。
特許文献1には、水晶の電気軸(直交する結晶軸の1つ)の回りに0°から−15°の範囲で切り出された音叉型水晶振動子が開示されている。音叉型水晶振動子に励振される屈曲振動モード及び捩れ振動モードの夫々の共振周波数fF、fTを互いに近接させ、結合させることにより、主振動とする屈曲振動モードの周波数温度特性を改善した水晶振動子である。
【0003】
一般的に、水晶振動子の周波数温度特性Δf/f(Δf=(f−f0)、f0は常温にける共振周波数)は、温度Tに関する多項式で表わされる。実用的には三次式で近似され、その一次温度係数〜三次温度係数をα、β、γで表わす。
屈曲振動モードの周波数温度特性TfFは、捩れ振動モードの影響を受け、圧電基板hに依存する。種々の切断角θに対し、一次温度係数αが零となるように厚みhを設定し、更に二次温度係数βが零になる切断角度θと厚さhとを、予め計算で求めた表から設定する。これにより、周波数温度特性TfFは三次温度係数γのみに依存し、温度特性の良好な水晶振動子が得られると開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、互いに平行な複数の振動腕の各先端部に、振動腕より幅広の拡大部を設けた音叉型圧電振動子が開示されている。この拡大部は有底の孔を有し、この有底の孔に圧電材料より比重の大きい材料を充填して錘とすることにより、音叉型圧電振動子の小型化が図られると開示されている。
また、特許文献3には、互いに平行な複数の振動腕の各先端部に、振動腕より幅広の錘部を設け、且つ錘部の幅方向中央部に、表面から裏面に貫通する略四角形の孔部を設けた音叉型圧電振動子が開示されている。この孔部は、音叉型圧電振動子の表裏面に形成した電極同志を接続するためのスルーホールとして用いられている。
【0005】
また、特許文献4には、振動ジャイロ素子が開示されている。振動ジャイロ素子は、基部と、基部から直線状に両側へ延出された1対の検出用振動腕と、基部から両側へ検出用振動腕に直交する方向に延出された1対の連結腕と、各連結腕の先端部からそれと直交して両側へ延出された各1対の駆動用振動腕を備えている。更に、基部から各検出用腕に沿って延出される2対の梁と、同方向に延出された各梁が連結された1対の支持部と、を同一平面に備え、支持部を検出用振動腕の延出する方向であって検出用振動腕の外側で、且つ前記駆動用振動腕の間に配置するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭55−75326号公報
【特許文献2】特開2004−282230公報
【特許文献3】特開2005−5896公報
【特許文献4】特開2010−2430公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された、屈曲振動モード及び捩じり振動モードの周波数を夫々近接させ互いに結合させることにより、周波数温度特性を改善した音叉型圧電振動子は、小型化が難しいという問題があった。
また、特許文献2に記載の音叉型圧電振動子は、振動腕の先端部に拡大部を形成することにより小型化は可能であるが、周波数温度特性は二次特性であり、周波数安定度に問題があった。
また、特許文献3に記載の音叉型圧電振動子は、振動腕の先端部に錘部を形成することにより小型化は可能であり、励振電極同志の接続は容易になるものの、周波数温度特性は二次特性であり、周波数安定度に問題があった。
また、特許文献4の記載の振動ジャイロ素子は、温度変化により角速度の感度が変わるという問題があった。
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、小型化と周波数温度特性の改善とを図った圧電振動素子、圧電振動子、圧電発振器、振動ジャイロセンサー、及びこれらを用いた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]本発明に係る圧電振動素子は、複数の振動腕、該各振動腕の一方の端部間を連接する基部、前記各振動腕の他方の端部に夫々形成され該各振動腕よりも幅広の錘部、及び、前記各振動腕の振動中心に沿った表面及び裏面に夫々形成された溝部、を備えた圧電基板と、前記錘部の両面と前記各溝部内を含めた前記各振動腕の表裏面及び両側面とに夫々形成され、且つ前記基部に設けた複数の電極パッドとの間を夫々電気的に接続される励振電極と、を備えた圧電振動素子であって、前記各錘部は振動中心に沿った両側に大きな質量を備えるように質量部を備え、前記質量部は前記振動中心に対する対称として構成され、前記圧電振動素子に励振される屈曲−捩じり結合振動における屈曲振動を主振動とし、前記圧電基板の厚さ及び切断角度と、前記各質量部及び溝部の幅と深さとを、周波数温度特性が温度に関して三次特性となるように夫々設定することを特徴とする圧電振動素子である。
【0010】
前記圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)は、各振動腕の先端部に夫々錘部が形成され、この錘部には振動中心に沿っての両側に対称に、大きな質量を備えた質量部が配置されている。更に、各振動腕には振動中心に沿って表裏面に夫々溝部が形成されている。このように構成すると、音叉型圧電振動素子に励起される屈曲振動及び捩れ振動が互いに近接し、結合する。圧電基板の厚さ及び切断角度と、各質量部及び各溝部の形状と、を夫々適切に設定すると、屈曲・捩じり結合振動の主振動である屈曲振動の周波数温度特性が、温度に関し三次特性となり、優れた温度特性を有すると共に、小型化された圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0011】
[適用例2]また圧電振動素子は、前記圧電基板の切断角が、電気軸の回りに0度から−15度の範囲に設定されることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動素子である。
【0012】
前記圧電基板の切断角度が、電気軸(X軸)に回りに0度から−15度に範囲で回転された圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)を構成する。このような切断角度を設定し、圧電基板の厚さ等を適切に設定すると、屈曲・捩れ結合振動の主振動の周波数温度特性を表わす多項式の一次係数及び二次係数を、ほぼ零とすることが可能となり、優れた温度特性の圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0013】
[適用例3]また圧電振動素子は、前記各錘部が、その先端縁中央部に前記振動中心に対して対称な切欠き部を有することにより凹形状を成していることを特徴とする適用例1又は2に記載の圧電振動素子である。
【0014】
各錘部の先端縁中央部に振動中心に対して対称な切欠き部を設けることにより、圧電振動素子1に励振される屈曲振動(音叉振動)及び捩れ振動を互いに近接させ、結合させることが可能となる。各パラメータを適切に設定することにより、屈曲・捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性を三次特性とすることができるという効果がある。
【0015】
[適用例4]また圧電振動素子は、前記切欠き部よりも前記振動腕寄りの前記錘部の面内には、前記振動中心に対して対称な貫通孔が形成されていることを特徴とする適用例3に記載の圧電振動素子である。
【0016】
前記切欠き部を小さくし、貫通孔と合わせて質量部を振動中心に沿っての両側に対称に配置し、且つ両質量部間に橋絡部を設けることにより、錘部が強化される。同時に屈曲振動(音叉振動)及び捩れ振動を互いに近接させ、結合させることが可能となる。各パラメータを適切に設定することにより、屈曲・捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性を、三次特性とすることができるという効果がある。
【0017】
[適用例5]また圧電振動素子は、前記各錘部がその面積の中央部に振動中心に対して対称な貫通孔を備えていることを特徴とする適用例1又は2に記載の圧電振動素子である。
【0018】
前記貫通孔を中央部に配置することにより、錘部の強度が増すが、屈折振動の周波数変化が若干減ずる。しかし、貫通孔の面積を少し大きくすれば、周波数の減少を補うことができる。この場合も屈曲振動(音叉振動)及び捩れ振動を互いに近接させ、結合させることが可能となる。各パラメータを適切に設定することにより、屈曲・捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性を、三次特性とすることができるという効果がある。
【0019】
[適用例6]また圧電振動素子は、前記各錘部は基部側端に振動中心に対して対称な貫通孔を備え、且つ該貫通孔は前記各振動腕の溝部に連接していることを特徴とする適用例1又は2に記載の圧電振動素子である。
【0020】
前記錘部の基部側端に貫通孔を設けると、屈曲振動の周波数変化が若干減ずるが、振動腕の溝部を延在することにより捩じり振動の周波数が減じて、二つの振動が近接し、結合させることができる。各パラメータを適切に設定することにより、屈曲・捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性を、三次特性とすることができるという効果がある
【0021】
[適用例7]また圧電振動素子は、前記基部は、基部本体と、該基部本体の前記振動腕とは反対側の他端縁中間部に設けた連結部と、該連結部を介して連接され且つ前記基部本体とは離間して延びる左右一対の支持腕と、を備えていることを特徴とする適用例1乃至6に記載の圧電振動素子である。
【0022】
前記圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)の基部は、基部本体と、連結部と、L字状及び逆L字状の各支持腕と、を有している。基部は、L字状及び逆L字状の各端部同志を連接し、この連接部を、連結部を介して基部本体の一方の端部中央に連接して構成されている。このため、振動腕より各支持腕に漏洩する振動エネルギーを低減することができ、CI値が小さくなると共に、基部の構造により衝撃が緩和されるので、耐衝撃性が改善される。この結果、衝撃による欠損、破損等による周波数変動の虞のない圧電振動素子が、得られるという効果がある。
【0023】
[適用例8]本発明に係る圧電振動子は、適用例1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電振動子である。
【0024】
前記圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)に励起される屈曲振動及び捩れ振動を互いに近接させ、屈曲・捩じり結合振動が励起される音叉型圧電振動素子を、絶縁基板に収容して、圧電振動子を構成する。この結果、小型でQ値が高く、耐衝撃性と周波数温度特性の優れた圧電振動子が得られるという効果がある。
【0025】
[適用例9]本発明に係る圧電発振器は、適用例1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を励振する発振回路を搭載したIC部品と、前記圧電振動素子を気密封止すると共に前記IC部品を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電発振器である。
【0026】
屈曲振動と捩れ振動とを互いに近接させ、屈曲・捩じり結合振動が励起される圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)と、この圧電振動素子を発振させるIC部品と、これらを収容するパッケージと、を備えた圧電発振器を構成することにより、小型で周波数温度特性の優れた圧電発振器が得られるという効果がある。
【0027】
[適用例10]本発明に係る振動ジャイロ素子は、基部と、該基部の対向する2つの端縁から夫々同一直線上に突設された1対の検出用振動腕と、前記基部の対向する他の2つの端縁から夫々前記検出用振動腕と直交する方向に同一直線上に突設された1対の連結腕と、前記各連結腕の先部からそれと直交する両方向へ夫々突設された各1対の駆動用振動腕と、少なくとも前記1対の検出用振動腕と、前記各1対の駆動用振動腕とに夫々形成され、且つ前記基部に設けた複数の電極パッドとの間を夫々電気的に接続される励振電極と、を備えた振動ジャイロ素子であって、前記各駆動用振動腕は、その表裏面に各振動腕の長手方向に沿って直線状に延びる溝部を備えると共に、先端部に夫々各振動腕よりも幅広の錘部を有し、前記各錘部は振動中心に沿って両側に対称な質量部を備え、前記駆動用振動腕に励振される屈曲−捩じり結合振動のうちの屈曲振動を主振動とし、前記振動ジャイロ素子の基板の切断角度と前記各質量部及び溝部の幅と深さとを、周波数温度特性が温度に関して三次特性となるように夫々設定することを特徴とする振動ジャイロ素子である。
【0028】
各駆動腕用振動腕の先端部に夫々錘部を形成し、該錘部に振動腕の長手方向に沿い振動中心に対称に切欠き部を形成すると共に、各駆動腕用振動腕の振動中心に沿った表面裏面に夫々溝部を形成した振動ジャイロ素子を構成する。このように構成すると、各駆動腕用振動腕に励振される屈曲・捩じり結合振動の主振動である屈曲振動の周波数温度特性が、温度に関し三次特性となり、優れた温度特性を有すると共に、小型の振動ジャイロ素子が得られるという効果がある。
【0029】
[適用例11]本発明に係る振動ジャイロセンサーは、適用例10に記載の振動ジャイロ素子と、該振動ジャイロ素子を収容するパッケージとを備えたことを特徴とする振動ジャイロセンサーである。
【0030】
振動ジャイロ素子をパッケージに収容して振動ジャイロセンサーを構成すると、各駆動腕用振動腕に励振される屈曲・捩じり結合振動の主振動の周波数温度特性が、改善されると共に、錘部を設けることにより、小型化された振動ジャイロセンサーが得られるという効果とがある。
【0031】
[適用例12]本発明に係る電子機器は、適用例8に記載の圧電振動子、又は適用例11に記載の振動ジャイロセンサーを備えることを特徴とする電子機器である。
【0032】
上記の圧電振動子を備えた電子機器を構成することにより、電子機器の周波数源の安定が改善されるという効果がある。また、前記の振動ジャイロセンサーを備えた電子機器を構成することにより、温度による角速度の感度変化を低減できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は本発明に係る圧電振動素子の構造を示した概略平面図であり、(b)は振動腕の断面図。
【図2】振動腕の先端部に連接される錘部の変形例1を示す平面図。
【図3】錘部の変形例2を示す平面図。
【図4】錘部の変形例3を示す平面図。
【図5】(a)は梁の先端部に切欠き部を形成する前後の屈曲振動、捩れ振動夫々の周波数変化を示す説明図であり、(b)は梁の中央部に溝部を形成する前後の屈曲振動、捩れ振動夫々の周波数変化を示す説明図、(c)は梁の板厚を変えた前後の屈曲振動、捩れ振動夫々の周波数変化を示す説明図。
【図6】(a)は音叉振動(屈曲振動)の周波数温度特性であり、(b)は捩れ振動の周波数温度特性、(c)は屈曲−捩れ結合振動の周波数温度特性を示す図。
【図7】振動腕の板厚hを変えた場合の屈曲振動と捩れ振動との結合示す図。
【図8】屈曲−捩れ結合振動の板厚hと屈曲振動及び捩れ振動夫々の一次温度係数、二次温度係数との関係を示す図。
【図9】(a)〜(e)は錘部に形成する切欠き部、貫通孔の平面図であり、(f)は切欠き部と同面積を有する溝部の平面図。
【図10】図9(b)の形状の切欠き部を有する音叉型圧電振動素子と、切欠き部と同面積の溝部を有する音叉型圧電振動素子と、に夫々励起される屈曲振動及び捩れ振動の周波数と、周波数差とを示す図。
【図11】図9(c)の形状の貫通孔を有する音叉型圧電振動素子と、貫通孔と同面積の溝部を有する音叉型圧電振動素子と、に夫々励起される屈曲振動及び捩れ振動の周波数と、周波数差とを示す図。
【図12】図9(d)の形状の切欠き部及び貫通孔を有する音叉型圧電振動素子と、切欠き部及び貫通孔と同面積の溝部を有する音叉型圧電振動素子と、夫々に励起される屈曲振動及び捩れ振動の周波数と、周波数差とを示す図。
【図13】図9(e)の形状の細貫通孔と連接する溝部とを有する音叉型圧電振動素子と、細貫通孔と連接する溝部と同面積の溝部を有する音叉型圧電振動素子と、に夫々励起される屈曲振動及び捩れ振動の周波数と、周波数差とを示す図。
【図14】図9(b)〜(e)の形状の錘部を有する音叉型圧電振動素子に励起される屈曲振動及び捩れ振動の周波数と、周波数差とを示す図。
【図15】基部本体のみを有する音叉型圧電振動素子と、支持腕を備えた基部を有する音叉型圧電振動素子と、の振動漏れをシミュレーションにより求めた図。
【図16】屈曲−捩れ結合振動を用いた圧電振動子の断面図。
【図17】圧電発振器の断面図。
【図18】(a)は振動ジャイロセンサーの平面図、(b)は断面図、(c)は動作を説明する模式図。
【図19】本発明の圧電振動子、又は振動ジャイロセンサーを用いた電子機器の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態に係る圧電振動素子1の構成を示す概略平面図であり、同図(b)は、(a)のP−P断面図である。
圧電振動素子1は、外形が所定の形状に加工された平板状の圧電基板8と、圧電基板8の表裏面及び側面に形成した薄膜の電極25と、を備えている。
圧電基板8は、図1(a)の実施の形態例に示すように、互いに並行(平行)して直線状に延びる細幅帯状の複数(本例では二本)の振動腕15a、15bと、各振動腕15a、15bの一方の端部(基端部)間を連接する基部10と、各振動腕15a、15bの他方の端部(先端部)に夫々連接して一体形成され、且つ各振動腕15a、15bの幅よりも幅広な錘部20a、20bと、各振動腕15a、15bの振動中心Cに沿った表面及び裏面に夫々形成された溝部17a(17b)、18a(18b)と、を備えている。
各錘部20a、20bは、各振動中心Cに対して対称であり、振動中心Cに沿った面の両側(振動中心Cの両側)に大きな質量を備えた質量部21が対称に配置されている。
【0035】
図1(a)に示す実施形態例では、各錘部20a、20bは、その先端縁中央部に各振動中心Cに対して対称な切欠き部(貫通部)22a、22bを形成することにより凹形状を成し、且つ各切欠き部の両側に質量部21を形成している。つまり、質量部21が、振動中心Cに沿いそれと離間して両側に配置されている実施例である。
先端縁中央部に各振動中心Cに対して対称な切欠き部を形成する例では、質量部21は振動中心Cに沿いそれと離間して両側に対称に配置される。しかし、エッチングによって各錘部20a、20bに各振動中心Cに対して対称な溝部(有底=非貫通)を形成する方法では、錘部20a、20bの表裏面で対称な溝部を形成することが難しい。これは圧電基板固有の異方性により結晶軸方向によりエッチング速度が異なるためである。対称性を欠く圧電振動素子1を励振させると、主振動の屈曲振動に不要モードが重畳する虞がある。切欠き部22a、22bのように表裏面を貫通させることにより表裏面の対称性は改善される。
【0036】
図1(b)に示した薄膜の電極25は、錘部20a、20bの夫々の表裏面と、各溝部17a(17b)、18a(18b)内を含めた各振動腕15a、15bの表裏面及び側面と、に夫々形成され、且つ基部10に設けた複数の電極パッド(図示せず)との間を、夫々リード電極(図示せず)にて電気的に接続される励振電極30、32、34、36と、を備えている。薄膜の電極25は、蒸着法、又はスパッタ法等を用いて真空装置の中で形成される。
【0037】
図1(a)に示す基部10は、振動漏れ低減と耐衝撃性改善のために、基部本体12aと、基部本体12aの振動腕15a、15bとは反対側の他端縁中間部に設けた細幅の連結部12dと、連結部12dを介して連接され且つ基部本体12aとは離間して延びる左右一対の支持腕12b、12cと、を備えている。つまり、L字状支持腕12bの基端部と、逆L字状の支持腕12cの基端部とが連接され、この連接部分が連結部12dを介して基部本体12aの一方の端縁中央に連結されてコ字状をなし、基部本体12aの他方の端縁には各振動腕15a、15bの基端部が連結されている基部の例である。
図1の実施の形態において、基部10は、基部本体12aと、連結部12dと、左右一対の支持腕12b、12cと、を備えていると説明したが、基部本体12aのみでもよい。
また、各振動腕15a、15bは、基部本体12aの端縁より間隔を隔して互いに平行に延出し、各振動腕15a、15bの先端部には夫々振動腕15a、15bの幅よりも幅広の錘部20a、20bが連設一体化されている。
【0038】
圧電基板8として、例えば水晶基板を用いる場合には、Z板(光軸(Z軸)に直交して切り出された基板)を電気軸(X軸)の回りに0°から−15°回転して切り出した基板を用いる。なお、圧電基板8の外形形状、錘部20a、20bの質量部21、各振動腕15a、15bの溝部17a(17b)、18a(18b)は、圧電基板にフォトリソグラフィ技術とエッチング手法を適用して形成する。
【0039】
図1(b)に示す断面図は、各振動腕15a、15bに夫々形成された励振電極30、32、34、36の配置を示す図である。励振電極30、34は、各溝部17a(17b)、18a(18b)の表面、及び側面に形成され、励振電極32、36は各振動腕15a、15bの夫々両側面に形成されている。
励振電極30、36と、励振電極32、34とは、互いに異符号の電圧が前記電極パッドを介して印加される。つまり、励振電極30、36に+電圧が印加されるとき、励振電極32、34には−電圧が印加され、図1(b)の矢印で示すような電界が生じ、圧電振動素子1の重心を通る中心線Cg(以下、重心中心線と言う)に対し対称な音叉振動(屈曲振動)が励振される。
なお、溝部17a(17b)、18a(18b)を形成することにより、電界強度が強まり、音叉振動をより効率的に励振することができる。即ち、圧電振動素子のCI(クリスタルインピーダンスー)を小さくすることができる。
【0040】
図2は、錘部20a(20b)の他の実施の形態例(一方の錘部20aのみ図示)を示す平面図である。図1(a)に示す切欠き部22a(22b)よりも振動腕15a(15b)寄りの錘部20a(20b)の面内に、振動中心Cに対して対称な貫通孔23a(23b)が形成されている。質量部21は、振動中心Cに沿いそれと離間して両側に配置されている。切欠き部22a(22b)と貫通孔23a(23b)とを互いに離間させることにより、振動中心Cを挟む質量部21間を互いに連接する橋絡部24a(24b)が形成される。
なお、貫通孔23a(23b)の幅は、切欠き部22a(22b)の幅と同等であっても良いし、異なっていても良い。
図1(a)の錘部20a(20b)では、圧電振動素子1が励振され、振動腕15a、15bが屈曲モードで振動する際に、振動中心Cの左右の質量部21が不要な振動を行う虞がある。これに対し、図2の実施の形態のように橋絡部24a(24b)を設けることにより、質量部21の不要振動は抑制され、且つ衝撃等にも強い圧電振動素子1が得られる。
【0041】
図3は、錘部20a(20b)の他の実施の形態例(一方の錘部20aのみ図示)を示す平面図である。図3の平面図に示すように、各錘部20a(20b)は、その面積の中央部に振動中心Cに対して対称な貫通孔23a(23b)を備えている。このように、錘部20a(20b)の面積の中央部に、貫通孔23a(23b)を設けることにより、質量部21は、振動中心Cに沿いそれと離間して両側に配置されている。
また、図4は、錘部20a(20b)の他の実施の形態例(一方の錘部20aのみ図示)を示す平面図である。各錘部20a(20b)は、基部側端に振動中心Cに対して対称な貫通孔23a(23b)を備え、且つ貫通孔23a(23b)は、各振動腕15a(15b)の溝部17a、17b(18a、18b)に連接(連通)している。質量部21は、振動中心Cに沿いそれと離間して両側に配置されている。
【0042】
音叉型水晶振動素子1には、その重心を通り、振動腕15a、15b方向の重心中心線Cgに対し、互いに対称に振動する屈曲振動と、重心中心線Cgに対し、互いに対称な捩れ振動とが励振される。励振電極を適切に形成することにより、何れの振動モードを主振動とするかが選択できるが、図1の実施の形態例は、音叉振動(屈曲振動)を主振動モードする例である。
本発明の圧電振動素子の一例として、水晶Z板を電気軸(X軸)回りにθ(0度から−15度の範囲)回転して切り出した基板を用いて、音叉型水晶振動素子1を形成する。各振動腕15a、15bには、溝部17a(17b)、18a(18b)を形成すると共に、錘部20a、20bには振動中心Cに沿いそれと離間して両側に質量部を形成する。
つまり、切断角度θと、圧電基板8の厚さと、錘部20a、20bの切欠き部22a、22b、又は貫通孔23a、23bと、溝部17a、17b、18a、18bと、を適切に設定することにより、音叉型水晶振動素子1に励起される屈曲振動(音叉振動)及び捩れ振動の共振周波数fF、fTを、互いに近接させることによって二つ振動モードを結合させ、主振動とする屈曲振動の周波数温度特性を改善すると共に、小型化を図った音叉型水晶振動素子が構成される。
【0043】
屈曲振動及び捩れ振動夫々の共振周波数fF、fTを互いに近接させる手段を図5(a)〜(c)を用いて説明する。
図5(a)〜(c)は、図1(a)に示す圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)1に励起される屈曲振動の共振周波数fFと、捩じり振動の共振周波数fTとが、錘部20a、20bの切欠き部22a、22b、振動腕15a、15bの溝部17a、17b、18a、18b及び振動腕15a、15bの厚さhにより、どのように変化するかを定性的に説明する図である。なお、図5(a)、(b)の横軸のA、Bは、梁(振動腕)15の平面形状を示し、Aは梁15に切欠き部を形成する前、Bは切欠き部を形成した後を示している。図5(c)は、梁15の板厚hをAに比べ厚くした場合をBで示している。
【0044】
図5に示すように、切欠き部を形成する前の梁15に励振される屈曲振動及び捩じり振動の共振周波数をfF、fTとし、梁15の先端部に切欠き部を形成した場合の夫々の共振周波数をf’F、f’Tとする。図5(a)に示すように、梁(振動腕)15の先端部に切欠き部22aを形成すると、屈曲振動、捩じり振動夫々の共振周波数f’T、f’Fは、共に上昇するが、捩じり振動の周波数増加幅dfT=(f’T−fT)に対し、屈曲振動の周波数増加幅dfF=(f’F−fF)の方が大きい。切欠き部を設けることにより、屈曲振動、捩じり振動の夫々の共振周波数を近接させることが可能となる。
【0045】
一方、図5(b)に示すように、梁(振動腕)15の中央部に溝部17a(17b)を形成すると、捩じり振動、屈曲振動の共振周波数f’T、f’Fは共に低下する。捩じり振動の周波数減少幅dfT=(fT−f’T)は、屈曲振動の周波数減少幅dfF=(fF−f’F)に比べて、大きくなる。つまり、溝部17a(17b)を設けることにより、屈曲振動、捩じり振動の夫々の共振周波数を近接させることが可能となる。
また、図5(c)に示すように、梁15の板厚hを厚くすると、屈曲振動の周波数f’Fは、元の周波数fFより僅かに減少するが、捩じり振動の共振周波数f’Tは、元の周波数fTより増加する。梁15の板厚hを変えることにより、屈曲振動、捩じり振動の夫々の共振周波数を近接させることが可能となる。
以上、説明したように、梁(振動腕)15に形成する切欠き部22aの幅及び長さ、溝部17a(17b)の幅及び深さ、梁(振動腕)15の厚さ、を適切に設定することにより、屈曲振動、捩じり振動の夫々の共振周波数を近接させることが可能である。
【0046】
図5(a)〜(c)では、各要素に対し屈曲振動及び捩れ振動の夫々の共振周波数の変化を定性的に説明した。そこで、図1に示した形状の錘部20a、20を有する音叉型水晶振動素子1に、有限要素法を適用して励振される屈曲振動及び捩れ振動の夫々の共振周波数fF、fTと、周波数差Δf=(fT−fF)と、のシミュレーションを行ったところ、図5と同様な結果が得られた。屈曲振動及び捩れ振動の夫々の共振周波数を互いに近接させ得ることが、シミュレーションでも確認できた。
つまり、錘部20a、20bの先端部に切欠き部22a(22b)を、振動腕15a、15bに溝部17a、17b、18a、18bを形成して、周波数差Δf=(fT−fF)を小さくすることにより、例えばΔf/((fT+fF)/2)の値を10%以下にすると、屈曲振動と捩じり振動の結合が密になり、主振動とする屈曲振動の周波数温度特性が改善される。
【0047】
図6は、音叉型水晶振動素子1で励振される屈曲振動と捩じり振動とを互いに結合させることにより、主振動の屈曲振動の周波数温度特性が改善される様子を、図を用いて定性的に表わしたものである。一般的に水晶振動子の周波数温度特性Δf/f(=(f−f0)/f、f0は所定の温度における周波数)は、式(1)のように温度Tの多項式で表わすことができる。
Δf/f=α(T−T0)+β(T−T0)2+γ(T−T0)3+・・ (1)
図6(a)は主振動である屈曲振動の周波数温度特性で、温度Tに関し、二次曲線を呈している。図6(b)は捩れ振動の周波数温度特性で、周波数Δf/fは温度Tに関し、一次式で近似される。図6(c)は、屈曲振動と捩れ振動を結合させた場合の主振動である屈曲振動の周波数温度特性を示す図である。主振動の屈曲振動に捩れ振動を結合させることにより、屈曲振動の周波数温度特性を表わす多項式Δf/fの一次温度係数αと、二次温度係数βをほぼ零とすることが可能となり、主振動の屈曲振動の周波数温度特性は三次温度係数γで近似でき、図6(c)に示すよう三次曲線を呈する。
【0048】
図7は、音叉型水晶振動子1の振動腕15a、15bの板厚hを変化させた場合、屈曲振動と捩れ振動との結合の度合いをシミュレーションで求め、図示したものである。屈曲振動の共振周波数fFは、厚さhに関しほぼ平坦で、hの増加につれて僅かに減少する。一方、捩れ振動の共振周波数fTは、厚さhの増加に応じ、ほぼ比例するように増加する。図7の例では、86μmより少し薄い板厚hで結合が大きくなることが分かる。
【0049】
図8は、錘部20a(20b)の振動中心C沿って、溝部(有底)を形成した音叉型水晶振動子1に励振される屈曲振動の一次温度係数α、二次温度系数βと、捩れ振動の一次温度係数α’、二次温度係数β’と、をシミュレーションにより求め、それを図示したものである。屈曲振動の一次温度係数α、二次温度係数βを夫々菱形◆、四角■で示し、捩れ振動の二次温度係数β’を白抜き四角□で示している。捩れ振動の一次温度係数α’は、数値が大きすぎグラフの枠外となるため、図示していない。つまり、捩れ振動では一次温度係数α’が支配的である。
錘部20a(20b)の振動中心C沿って、切欠き部22a(22b)を形成した音叉型水晶振動子1についても、図8と同様な曲線が得られる。
【0050】
図8は、振動腕15a、15bの板厚hを82μmから86μmの範囲で変化させた場合の屈曲振動、捩れ振動の夫々の一次温度係数、二次温度係数α、β、α’、β’を板厚hに対し示した図である。図8の例では、屈曲振動の一次温度係数α、二次温度係数βとも板厚h=84.5μm近辺でほぼ零になることが判明した。また捩れ振動の二次温度係数β’も板厚h=84.5μm近傍でほぼ零になることが分かる。
つまり、図8の音叉型水晶振動素子1の例では、板厚hを84.5μmに設定することにより、主振動である屈曲振動の周波数温度特性の一次温度係数α、二次温度係数βを共に零とすることができる。そのため屈曲振動の周波数温度特性は3次曲線を呈し、周波数温度特性が大幅に改善されると共に、錘部20a、20bの設けることにより振動腕が短縮され、小型の音叉型水晶振動素子1が得られる。
また、錘部20a、20bの表裏面に形成した電極、溝部17a、17b、18a、18bの電極、振動腕15a、15bに形成した電極等にレーザー光線を照射し、音叉型圧電振動子に励振される屈曲振動と捩れ振動との結合度を微調整することが可能である。
【0051】
図9は、既に説明した音叉型水晶振動素子1の錘部20aの各種の形状を示した図である。図9(a)は何も加工を施さない四角形状の錘部20a、(b)は先端縁に切欠き部22aを形成した錘部20a、(c)は(a)の錘部に貫通孔23aを形成した錘部20a、(d)は先端縁の切欠き部22aと貫通孔23aを形成した錘部20a、(e)は細貫通孔23aとこれと連接する溝部17aとを形成した錘部20a、の平面図である。図9(b)〜(e)では、図9(b)の切欠き部22aの面積と、図(c)以下の貫通孔23a、又は切欠き22aと貫通孔23aとを加算した面積は、全て同一としてある。また、図9(f)は、振動中心Cに沿って溝部19(有底)を形成した錘部20aの平面図であり、この溝部19の面積も、図9(b)の切欠き部22aの面積と同一とする。図9(c)〜(e)の貫通孔23a、又は切欠き部22a及び貫通孔23aに対応して形成した同面積の溝部19を有する錘部20aについては、その図面を省略する。
【0052】
溝部19を有する錘部20aについては、図9(f)のみ示したが、これは音叉型水晶振動素子1に励振される屈曲振動及び捩れ振動の周波数の近接する度合いをシミュレーションにより求める際に、切欠き部22aを有する錘部20aと比較するために必要な図である。
図9(a)の錘部20aを有する音叉型水晶振動素子1に励振される屈曲振動及び捩れ振動の夫々の周波数を基準とし、図9(b)〜(e)の錘部20aを有する音叉型水晶振動素子1と、図9(b)〜(e)に夫々対応する溝部19を有する音叉型水晶振動素子1とについて、屈曲振動及び捩れ振動の周波数fF、fT、及び周波数差Δf(=(fT−fF))について夫々シミュレーションを行った。
図9(b)〜(e)に示す切欠き部22a、切欠き部22a及び貫通孔23aを有する音叉型水晶振動素子1と、図9(b)〜(e)に対応して同面積の溝部19を有する音叉型水晶振動素子1と、について屈曲振動及び捩れ振動の周波数fF、fTと、周波数差Δfがどのように変化するかをシミュレーションで求めた。
【0053】
図10は、図9(b)の形状の切欠き部22aを有する音叉型水晶振動素子1と、図9(b)の切欠き部22aの面積と同面積の溝部19を有する図9(f)の音叉型水晶振動素子1と、に夫々励振される屈曲振動及び捩れ振動の周波数fF、fTと、周波数差Δfを夫々示した図である。切欠き部22aを形成した音叉型水晶振動素子1の方が、屈曲振動と捩れ振動との周波数差Δfが小さく、屈曲振動と捩れ振動とが近接することを示している。
図11は、図9(c)の形状の貫通孔23aを有する音叉型水晶振動素子1と、この貫通孔23aの面積と同面積の溝部19を有する音叉型水晶振動素子1と、に夫々励振される屈曲振動及び捩れ振動の周波数fF、fTと、周波数差Δfとを夫々示した図である。貫通孔23aを形成した音叉型水晶振動素子1の方が、屈曲振動と捩れ振動との周波数差Δfが小さく、屈曲振動と捩れ振動とが近接することを示している。
【0054】
図12は、図9(d)の形状の切欠き部22a及び貫通孔23aを有する音叉型水晶振動素子1と、この切欠き部22a及び貫通孔23aの面積と同面積の溝部19を有する音叉型水晶振動素子1と、に夫々励振される屈曲振動及び捩れ振動の周波数fF、fTと、周波数差Δfとを夫々示した図である。切欠き部22a及び貫通孔23aを形成した音叉型水晶振動素子1の方が、屈曲振動と捩れ振動との周波数差Δfが小さく、屈曲振動と捩れ振動とが近接することを示している。
図13は、図9(e)の形状の細貫通孔23aとこれに連接する溝部17aを有する音叉型水晶振動素子1と、この細貫通孔23aの面積と溝部17aの面積とを加算した面積と同面積の溝部19を有する音叉型水晶振動素子1と、に夫々励振される屈曲振動及び捩れ振動の周波数fF、fTと、周波数差Δfとを夫々示した図である。切欠き部22a及び貫通孔23aを形成した音叉型水晶振動素子1の方が屈曲振動と捩れ振動との周波数差Δfが小さく、屈曲振動と捩れ振動とが近接することを示している。
【0055】
図14は、以上の結果を纏めたもので、図9(b)〜(e)の形状を有する音叉型水晶振動素子1に励振される屈曲振動及び捩れ振動の周波数fF、fTと、周波数差Δfとを夫々左右の縦軸にとり、横軸の符号(b)〜(e)に対応して示した図である。周波数差Δfが小さくなるのは、図9(b)の形状、即ち錘部20aに振動中心Cに対して対称な切欠き部22aを形成した場合である。
図15は、基部本体12aのみを有する音叉型圧電振動素子1の振動漏れと、基部本体12a、連結部12d、支持腕12b、12cを備えた基部10を有する音叉型圧電振動素子の振動漏れと、をシミュレーションにより求めて比較した図である。支持腕12b、12cを備えた基部10を有する音叉型圧電振動素子1の方が、振動漏れが少ないことが明らかとなった。
【0056】
図1の実施の形態に示すように、本発明の圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)1は、各振動腕の先端部に夫々錘部が形成され、この錘部には振動中心に沿っての両側に対称に大きな質量を備えた質量部が配置されている。その上に、各振動腕には振動中心に沿って表裏面に夫々溝部が形成されている。このように構成すると、音叉型圧電振動素子1に励起される屈曲振動及び捩れ振動が互いに近接し、結合する。圧電基板の厚さ及び切断角度と各質量部及び各溝部の形状とを夫々適切に設定すると、屈曲−捩じり結合振動の主振動である屈曲振動の周波数温度特性が温度に関し三次特性となり、優れた温度特性を有すると共に小型化された圧電振動素子が得られるという効果がある。
また、図1(a)の実施の形態に示す圧電基板8の切断角度が、電気軸(X軸)に回りに0度から−15度に範囲で回転された圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)1を構成する。このように切断角度を設定し、圧電基板の厚さ等を適切に設定すると、屈曲-捩れ結合振動の周波数温度特性を表わす多項式の一次係数及び二次係数をほぼ零とすることが可能となり、優れた温度特性の圧電振動素子が得られるという効果がある。
図1の実施の形態に示すように、各錘部20a、20bの先端縁中央部に振動中心Cに対して対称な切欠き部22a、22bを設けることにより、圧電振動素子1に励振される屈曲振動(音叉振動)と捩れ振動とを近接させ、結合させることが可能となる。各パラメータを適切に設定することにより、屈曲−捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性を三次特性とすることができるという効果がある。
【0057】
また、図2の実施の形態に示すように、切欠き部22aを小さくし、貫通孔23aと合わせて、質量部21を振動中心Cに沿っての両側に対称に配置し、且つ両質量部21間に橋絡部24aを設けることにより、錘部20a、20bが強化される。同時に屈曲振動(音叉振動)と捩れ振動とを近接させ、結合させることが可能となる。各パラメータを適切に設定することにより、屈曲−捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性を三次特性とすることができるという効果がある。
【0058】
図3の実施の形態に示すように、貫通孔23a(23b)を中央部に配置することにより錘部20a、20bの強度が増すが、屈折振動の周波数変化が若干減ずる。しかし、貫通孔23a(23b)の面積を少し大きくすれば周波数の減少を補うことができる。この場合も屈曲振動(音叉振動)と捩れ振動とを近接させ、結合させることが可能となる。各パラメータを適切に設定することにより、屈曲−捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性を三次特性とすることができるという効果がある。
また、図4の実施の形態に示すように、錘部20a、20bの基部側端に貫通孔23a(23b)を設けると、屈曲振動の周波数変化が若干減ずるが、振動腕の溝部を延在することにより捩じり振動の周波数が減じて、二つの振動が互いに近接し、結合させることができる。各パラメータを適切に設定することにより、屈曲−捩じり結合振動の屈曲振動の周波数温度特性を三次特性とすることができるという効果がある。
【0059】
また、図1(a)に示すように、圧電振動素子(音叉型圧電振動素子)1の基部10が、基部本体12aと、連結部12dと、L字状及び逆L字状の各支持腕12b、12cと、を有し、L字状及び逆L字状の各端部同志を連接し、この連接部を、連結部12dを介して基部本体12aの一方の端部中央に連接して構成されている。このため、振動腕15a、15bより各支持腕12b、12cに漏洩する振動エネルギーを低減することができ、CI値が小さくなると共に、基部の構造により衝撃が緩和されるので耐衝撃性が改善される。この結果、衝撃による欠損、破損等による周波数変動の虞のない圧電振動素子が得られるという効果がある。
【0060】
図16は、本発明に係る第2の実施の形態の圧電振動子2の構成を示す断面図である。圧電振動子2は、上記の圧電振動素子1と、圧電振動素子1を収容するパッケージとを備えている。パッケージは、矩形の箱状に形成されているパッケージ本体40と、ガラス等からなる窓部材54を有する蓋部材52とから成る。
パッケージ本体40は、図16に示すように、絶縁基板として第1の基板41と、第2の基板42と、第3の基板43とを積層して形成されており、絶縁材料として、酸化アルミニウム質のセラミック・グリーンシートを成形し箱状とした後で、焼結して形成されている。実装端子45は、第1の基板41の外部底面に複数形成されている。
第3の基板43は中央部が除去されており、第3の基板43の上部周縁に例えばコバール等の金属シールリング44が形成されている。
第3の基板43と第2の基板42とにより、圧電振動素子1を収容する凹部が形成されている。第2の基板42の上面の所定の位置には、導体46により実装端子45と電気的に導通する複数の素子搭載パッド47が設けられている。
素子搭載パッド47の位置は、圧電振動素子1を載置した際に支持腕12b、12cに形成したパッド電極(図示せず)に対応するように配置されている。
【0061】
圧電振動子2の構成は、パッケージ本体40の素子搭載パッド47に導電性接着剤50、例えばシリコン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリイミド系接着剤、ビスマレイミド系接着剤等の何れかを適量塗布し、その上に圧電振動素子1を載置して荷重をかける。
パッケージ本体40に搭載された圧電振動子1の導電性接着剤50を硬化させるために所定の温度の高温炉に所定の時間入れる。アニール処理を施した後、上方からレーザー光を照射して各錘部20a、20b、各振動腕15a、15bに形成された周波数調整用金属膜の一部を蒸散させて周波数粗調を行う。ガラス窓部54を備えて蓋部材52を、パッケージ本体40の上面に形成したシールリング44に、シーム溶接する。
【0062】
パッケージの貫通孔48を封止する前に、加熱処理を施す。パッケージの上下を逆にして、貫通孔48内の段差部上に金属球の充填材48aを載置する。充填材48aとしては金−ゲルマニウム合金等がよい。充填材48aにレーザー光を照射して溶融させ、貫通孔48を封止すると共にパッケージ内部を真空とする。パッケージの外部から窓部材54を介してレーザー光をパッケージ内に照射し、振動腕15a、15bに形成した周波数調整用金属膜を蒸散させて周波数微調整を行い、圧電振動子2を完成する。
以上の圧電振動子2の実施の形態例では、パッケージ本体40に積層板を用いた例を説明したが、パッケージ本体40に単層セラミック板を用い、蓋体に絞り加工を施したキャップを用いた圧電振動子も開発されている。
【0063】
図16の構成の圧電振動子2に、落下などの衝撃が加えられたときの圧電振動素子1の変形について説明する。圧電振動子2のパッケージの主面に直交方向に衝撃力が加えられると、圧電振動素子1は、素子搭載パッド47を支点として、変形し易い支持腕支持部12b、12cがパッケージ本体40の底面に向かって変形する。次に、この変形が基部10の外側端縁12eで反射し、変形が基部本体12aの中央部に伝搬し、基部本体12aを含めた全体がパッケージ本体40の底面側に沈み込む。その結果、振動腕15a、15bは、その先端側がパッケージ底面に向かって変形する。つまり、基部10の構造が、基部本体12aに連結部12dを介して支持腕12b、12cに連接されていることにより、加えられた衝撃を基部10の構造で緩和するように構成されている。
図16の実施形態の断面図に示すように、音叉型圧電振動素子1に励起される屈曲振動と捩れ振動を互いに近接させ、屈曲−捩じり結合振動が励起される音叉型圧電振動素子1を絶縁基板40に収容して圧電振動子2を構成することにより、小型でQ値が高く、周波数温度特性の優れた圧電振動子が得られるという効果がある。
【0064】
図17は、本発明に係る第3の実施の形態の圧電発振器3の構成を示す断面図である。圧電発振器3は、上記の圧電振動素子1と、圧電振動素子1を励振する発振回路を搭載したIC部品78と、圧電振動素子1を真空封止すると共にIC部品78を収容するパッケージ本体60、及び窓部材75a有する蓋部材75と、を備えている。圧電振動素子1にレーザー光を照射しての粗調製、微調整する手法、また、パッケージの内部を真空にして貫通孔68の封止する手法等は、圧電振動子2の場合と同様であるので省略する。IC部品78はパッケージ本体60のIC部品搭載パッド69に、金属バンプ76等を用いて電気的に導通接続する。
なお、図17に示した圧電発振器3では、IC部品78が気密封止されていない例を示したが、IC部品78をパッケージ内部に配置し、気密封止してもよい。
図17の実施形態の断面図に示すように、屈曲振動と捩れ振動を互いに近接させ、屈曲−捩じり結合振動が励起される音叉型圧電振動素子1と、この音叉型圧電振動素子1を発振させるIC部品78と、これらを収容するパッケージ60と、を備えた圧電発振器を構成することにより、小型で周波数温度特性の優れた圧電発振器が得られるという効果がある。
【0065】
図18は、本発明に係る第4の実施の形態の振動ジャイロセンサー4の構成を示す図であり、蓋体を取り除いて示している。図18(a)は、振動ジャイロセンサー4の平面図であり、同図(b)は(a)のP−P断面図である。
振動ジャイロセンサー4は、振動ジャイロ素子80と、振動ジャイロ素子80を収容するパッケージと、を概略備えている。パッケージは、絶縁基板(パッケージ本体)79と、絶縁基板79を気密封止する蓋体と、を備えている。
振動ジャイロ素子80は、中央に位置する概略四角形の基部81と、基部81の対向する2つの端縁中央部から夫々同一直線上に突設された1対の検出用振動腕85a、85bと、を備えている。更に、振動ジャイロ素子80は、基部41の対向する他の2つの端縁から夫々検出用振動腕85a、85bと直交する方向に同一直線上に突設された1対の第1の連結腕82a、82bと、各第1の連結腕82a、82bの先端部からそれと直交する両方向へ夫々突設された各1対の駆動用振動腕83a、83b及び84a、84bと、を備えている。
【0066】
更に、振動ジャイロ素子80は、基部81の四つの角隅部からは、夫々L字状に各1対の支持腕86a、86b及び87a、87bが延びている。即ち、支持腕86a、86bは、第1の連結腕82aを間に挟んだ対称位置に設けられ、支持腕87a、87bは、第1の連結腕82bを間に挟んだ対称位置に設けられている。
励振電極は、少なくとも1対の検出用振動腕85a、85bと、各1対の駆動用振動腕83a、83b及び84a、84bと、に夫々形成されている。支持腕86a、86b及び87a、87bには、複数の電極パッド(図示せず)が形成され、この電極パッドと励振電極との間は、夫々電気的に接続されている。
【0067】
図18(c)は振動ジャイロ素子の動作を説明する模式平面図である。振動ジャイロセンサー4は角速度が加わらない状態では、駆動用振動腕83a、83b、84a、84bが矢印Eで示す方向に屈曲振動を行う。このとき、駆動用振動腕83a、83bと、駆動用振動腕84a、84bとが、重心Gを通るY’軸方向の直線に関して線対称の振動を行っているため、基部81、連結腕82a、82b、検出用振動腕85a、85bはほとんど振動しない。
振動ジャイロセンサー4にZ’軸回りの角速度ωが加わると、駆動用振動腕83a、83b、84a、84b及び第1の連結腕82a、82bにコリオリ力が働き、新たな振動が励起される。この振動は重心Gに対して周方向の振動である。同時に、検出用振動腕85a、85bは、この振動に応じて検出振動が励起される。この振動により発生した歪を検出用振動腕85a、85bに形成した検出電極が検出して角速度が求められる。
【0068】
本発明の振動ジャイロセンサー4の特徴は、駆動用振動腕83a、83b、84a、84bの先端部に錘部26が設けられ、各錘部26の振動腕の長さ方向に沿って振動中心に線対称に切欠き部27が形成されている。さらに、駆動用振動腕83a、83b、84a、84bには、振動腕の長さ方向に沿って振動中心に線対称に溝部28が形成されている。振動ジャイロ素子80の圧電振動基板の切断角度θと、錘部26の切欠き部27と、駆動腕83a、83b、84a、84bの溝部28と、駆動腕83a、83b、84a、84bの板厚を適切に選定することにより、振動ジャイロ素子80に励起される屈曲振動及び捩れ振動の夫々の共振周波数fF、fTを互いに近接させることができる。二つ振動モードを結合させ、主振動の屈曲振動の周波数温度特性を改善すると共に、錘部26を設けることにより駆動用振動腕、検出用親王腕を短縮することにより、小型の振動ジャイロセンサー4を構成することができる。
【0069】
図18(a)の実施形態に示すように、各駆動腕用振動腕83a〜84bの先端部に夫々錘部26を形成し、該錘部26に振動腕の長手方向に沿い振動中心に線対称に切欠き部27を形成すると共に、各駆動腕用振動腕の振動中心に沿った表面裏面に夫々溝部28を形成した振動ジャイロ素子80を構成する。このような振動ジャイロ素子80を構成すると、各駆動腕用振動腕に励振される屈曲−捩じり結合振動のうちの主振動である屈曲振動の周波数温度特性が温度に関し三次特性となり、優れた温度特性を有すると共に小型の振動ジャイロ素子が得られるという効果がある。
また、図18(a)に示すように、振動ジャイロ素子をパッケージに収容して振動ジャイロセンサーを構成すると、各駆動腕用振動腕に励振される屈曲−捩じり結合振動の主振動の周波数温度特性が改善されると共に、錘部を設けることにより小型化された振動ジャイロセンサーが得られるという効果とがある。
【0070】
図19は本発明に係る電子機器の構成を示す概略構成図である。電子機器5には上記の第2の実施形態で説明した圧電振動子2、又は第4の実施形態で説明した振動ジャイロセンサーを備えている。圧電振動子2を用いた電子機器5として、携帯電話やデジタルカメラ、ビデオカメラなどの携帯用電子機器が挙げられる。これらの電子機器5において圧電振動子5は、基準信号源として用いられ、小型で精度の良い圧電振動子2を備えることにより、小型で携帯性に優れ、特性の良好な電子機器を提供できる。
図19の実施の形態に示すように、図16の圧電振動子2を備えた電子機器を構成することにより、電子機器の周波数源の安定が改善されるという効果がある。また、図18(a)の振動ジャイロセンサー4を備えた電子機器を構成することにより、温度による角速度の感度変化を低減できるという効果がある。
【符号の説明】
【0071】
1…圧電振動素子、2…圧電振動子、3…圧電発振器、4…振動ジャイロセンサー、5…電子機器、8…圧電基板、10…基部、12a…基部本体、12b、12c…支持腕、12d…連結部、12e…外側端縁、15…梁、15a、15b…振動腕、17a、17b、18a、18b、19、28…溝部、20a、20b、26…錘部、21…質量部、22a、22b…切欠き部、23a、23b…貫通孔、24a、24b…橋絡部、25…電極、30、32、34、36…励振電極、40、60、79…パッケージ本体、41…第1の基板、42…第2の基板、43…第3の基板、44…金属シールリング、45…実装端子、46…導体、47…素子搭載パッド、48、68…貫通孔、48a…充填材、50…導電性接着剤、52、75…蓋部材、54、75a…窓部材、部品搭載パッド…69、78…IC部品、80…振動ジャイロ素子、81…基部、82a、82b…第1の連結腕、83a、83b、84a、84b…駆動用振動腕、85a、85b…検出用振動腕、86a、86b、87a、87b…支持腕、C…振動中心、Cg…重心中心線、G…重心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の振動腕、該各振動腕の一方の端部間を連接する基部、前記各振動腕の他方の端部に夫々形成され該各振動腕よりも幅広の錘部、及び、前記各振動腕の振動中心に沿った表面及び裏面に夫々形成された溝部、を備えた圧電基板と、
前記錘部の両面と前記各溝部内を含めた前記各振動腕の表裏面及び両側面とに夫々形成され、且つ前記基部に設けた複数の電極パッドとの間を夫々電気的に接続される励振電極と、
を備えた圧電振動素子であって、
前記各錘部は振動中心に沿った両側に大きな質量を備えるように質量部を備え、
前記質量部は前記振動中心に対する対称として構成され、
前記圧電振動素子に励振される屈曲−捩じり結合振動における屈曲振動を主振動とし、 前記圧電基板の厚さ及び切断角度と、前記各質量部及び溝部の幅と深さとを、周波数温度特性が温度に関して三次特性となるように夫々設定することを特徴とする圧電振動素子。
【請求項2】
前記圧電基板の切断角は、電気軸の回りに0度から−15度の範囲に設定されることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項3】
前記各錘部は、その先端縁中央部に前記振動中心に対して対称な切欠き部を有することにより凹形状を成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電振動素子。
【請求項4】
前記切欠き部よりも前記振動腕寄りの前記錘部の面内には、前記振動中心に対して対称な貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の圧電振動素子。
【請求項5】
前記各錘部はその面積の中央部に振動中心に対して対称な貫通孔を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電振動素子。
【請求項6】
前記各錘部は基部側端に振動中心に対して対称な貫通孔を備え、且つ該貫通孔は前記各振動腕の溝部に連接していることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電振動素子。
【請求項7】
前記基部は、基部本体と、該基部本体の前記振動腕とは反対側の他端縁中間部に設けた連結部と、該連結部を介して連接され且つ前記基部本体とは離間して延びる左右一対の支持腕と、を備えていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の圧電振動素子。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を励振する発振回路を搭載したIC部品と、前記圧電振動素子を気密封止すると共に前記IC部品を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項10】
基部と、該基部の対向する2つの端縁から夫々同一直線上に突設された1対の検出用振動腕と、前記基部の対向する他の2つの端縁から夫々前記検出用振動腕と直交する方向に同一直線上に突設された1対の連結腕と、前記各連結腕の先部からそれと直交する両方向へ夫々突設された各1対の駆動用振動腕と、少なくとも前記1対の検出用振動腕と、前記各1対の駆動用振動腕とに夫々形成され、且つ前記基部に設けた複数の電極パッドとの間を夫々電気的に接続される励振電極と、を備えた振動ジャイロ素子であって、
前記各駆動用振動腕は、その表裏面に各振動腕の長手方向に沿って直線状に延びる溝部を備えると共に、先端部に夫々各振動腕よりも幅広の錘部を有し、
前記各錘部は振動中心に沿って両側に対称な質量部を備え、
前記駆動用振動腕に励振される屈曲−捩じり結合振動のうちの屈曲振動を主振動とし、 前記振動ジャイロ素子の基板の切断角度と前記各質量部及び溝部の幅と深さとを、周波数温度特性が温度に関して三次特性となるように夫々設定することを特徴とする振動ジャイロ素子。
【請求項11】
請求項10に記載の振動ジャイロ素子と、該振動ジャイロ素子を収容するパッケージとを備えたことを特徴とする振動ジャイロセンサー。
【請求項12】
請求項8に記載の圧電振動子、又は請求項11に記載の振動ジャイロセンサーを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
複数の振動腕、該各振動腕の一方の端部間を連接する基部、前記各振動腕の他方の端部に夫々形成され該各振動腕よりも幅広の錘部、及び、前記各振動腕の振動中心に沿った表面及び裏面に夫々形成された溝部、を備えた圧電基板と、
前記錘部の両面と前記各溝部内を含めた前記各振動腕の表裏面及び両側面とに夫々形成され、且つ前記基部に設けた複数の電極パッドとの間を夫々電気的に接続される励振電極と、
を備えた圧電振動素子であって、
前記各錘部は振動中心に沿った両側に大きな質量を備えるように質量部を備え、
前記質量部は前記振動中心に対する対称として構成され、
前記圧電振動素子に励振される屈曲−捩じり結合振動における屈曲振動を主振動とし、 前記圧電基板の厚さ及び切断角度と、前記各質量部及び溝部の幅と深さとを、周波数温度特性が温度に関して三次特性となるように夫々設定することを特徴とする圧電振動素子。
【請求項2】
前記圧電基板の切断角は、電気軸の回りに0度から−15度の範囲に設定されることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項3】
前記各錘部は、その先端縁中央部に前記振動中心に対して対称な切欠き部を有することにより凹形状を成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電振動素子。
【請求項4】
前記切欠き部よりも前記振動腕寄りの前記錘部の面内には、前記振動中心に対して対称な貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の圧電振動素子。
【請求項5】
前記各錘部はその面積の中央部に振動中心に対して対称な貫通孔を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電振動素子。
【請求項6】
前記各錘部は基部側端に振動中心に対して対称な貫通孔を備え、且つ該貫通孔は前記各振動腕の溝部に連接していることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電振動素子。
【請求項7】
前記基部は、基部本体と、該基部本体の前記振動腕とは反対側の他端縁中間部に設けた連結部と、該連結部を介して連接され且つ前記基部本体とは離間して延びる左右一対の支持腕と、を備えていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の圧電振動素子。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を励振する発振回路を搭載したIC部品と、前記圧電振動素子を気密封止すると共に前記IC部品を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項10】
基部と、該基部の対向する2つの端縁から夫々同一直線上に突設された1対の検出用振動腕と、前記基部の対向する他の2つの端縁から夫々前記検出用振動腕と直交する方向に同一直線上に突設された1対の連結腕と、前記各連結腕の先部からそれと直交する両方向へ夫々突設された各1対の駆動用振動腕と、少なくとも前記1対の検出用振動腕と、前記各1対の駆動用振動腕とに夫々形成され、且つ前記基部に設けた複数の電極パッドとの間を夫々電気的に接続される励振電極と、を備えた振動ジャイロ素子であって、
前記各駆動用振動腕は、その表裏面に各振動腕の長手方向に沿って直線状に延びる溝部を備えると共に、先端部に夫々各振動腕よりも幅広の錘部を有し、
前記各錘部は振動中心に沿って両側に対称な質量部を備え、
前記駆動用振動腕に励振される屈曲−捩じり結合振動のうちの屈曲振動を主振動とし、 前記振動ジャイロ素子の基板の切断角度と前記各質量部及び溝部の幅と深さとを、周波数温度特性が温度に関して三次特性となるように夫々設定することを特徴とする振動ジャイロ素子。
【請求項11】
請求項10に記載の振動ジャイロ素子と、該振動ジャイロ素子を収容するパッケージとを備えたことを特徴とする振動ジャイロセンサー。
【請求項12】
請求項8に記載の圧電振動子、又は請求項11に記載の振動ジャイロセンサーを備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−186586(P2012−186586A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47268(P2011−47268)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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