説明

地図データ更新システム

【課題】大容量の地図データの受信場所を選ぶことなく、また、地図データの更新時にユーザに対してストレスを極力与えないようにすることができる地図データ更新システムを提供する。
【解決手段】携帯電話101において、カーナビ201が起動する前に、地図更新データをデジタル放送プロバイダ301から受信して、その受信した地図更新データを記憶部106に記憶し、カーナビ201の起動時に、記憶部106の記憶する地図更新データをカーナビ201へ送信する。そして、カーナビ201では、起動時に、携帯電話101から送信された地図更新データを受信して地図データを更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データ更新システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地図データを更新する手段として、カーナビと携帯電話機能を接続することでディーラなど特定の場所にユーザがわざわざ出向かなくても、いつでもどこでもユーザが必要とする地図更新データを配信センターから携帯電話網を利用してダウンロードすることが可能なシステムが存在する。また、例えば、特許文献1に記載された技術では、携帯電話等のセルラ型の移動体通信インフラにおいて、セル毎にその地域の地図情報を常時データ放送し、移動機は常時そのデータを受信して所定地の地図情報に更新し続けることで、移動機に広い地域の地図情報を記憶保持しないようにする。
【特許文献1】特開2001−34889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
カーナビ用の地図データは、ギガバイトから十数ギガバイトと大容量化しているのに対して、携帯電話機能では通信速度が384kbps程度、またデータ課金も重量制課金となっていることから、上記特許文献1に記載された技術のように、ごく限られた小容量のデータのみを携帯電話機能でダウンロードしなければならず、ユーザの利便性を落とした仕組みとなっている。
【0004】
大容量の地図更新データを配信する方法については、携帯電話より安価で高速な通信手段として無線LAN通信(IEEE802.11g:54Mbps)や放送によるオンデマンド通信(例えばMediaFLOの場合、6MHz帯/300bps/ch×N:最大6Mbpsなど)が挙げられるが、前者の無線LANは、データ通信可能なエリアが無線LANスポットの配置エリアに限定される。この配置エリアは非常に少ないため、ユーザがわざわざその無線LANスポットを探してその場所まで行く必要があり、ユーザの利便性に劣る。
【0005】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたもので、大容量の地図データの受信場所を選ぶことなく、また、地図データの更新時にユーザに対してストレスを極力与えないようにすることができる地図データ更新システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の地図データ更新システムは、
地図更新データをデータ放送波により放送する放送装置を備える地図更新データ放送設備と、
地図更新データ放送設備から放送された地図更新データを受信するデータ放送受信機と、データ放送受信機が受信した地図更新データを記憶する記憶装置と、記憶装置の記憶する地図更新データを近距離通信によりカーナビゲーション装置へ送信する近距離送信機と、を備える移動通信装置と、
移動通信装置の送信した地図更新データを受信する近距離受信機を備えるカーナビゲーション装置と、を有し、
移動通信装置は、
カーナビゲーション装置が起動する前に、地図更新データを受信して、その受信した地図更新データを前記記憶装置に記憶し、
カーナビゲーション装置の起動時に、記憶装置の記憶する地図更新データをカーナビゲーション装置へ送信し、
カーナビゲーション装置は、当該カーナビゲーション装置の起動時に、移動通信装置から送信された地図更新データを受信して地図データを更新することを特徴とする。
【0007】
本発明は、通信エリア的にも、また、時間帯にも常時データ受信が可能な携帯電話やPDA(Personal Digital Assistants)に代表される移動通信装置をデータ放送波の受信が可能な大容量データ保存装置として位置づけ、ユーザの車両使用状況に関わらず、データ放送波として配信される地図更新データをカーナビゲーション装置が起動する前に、移動通信装置により受信する。
【0008】
これにより、ユーザが車両に乗り込む際には、ユーザが携帯する移動通信装置には地図更新データが記憶されているため、カーナビゲーション装置の起動時に、Bluetooth(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)などの近距離通信により、移動通信装置から地図更新データをカーナビゲーション装置に高速転送することができる。その結果、大容量の地図データの受信場所を選ぶことなく、また、地図データの更新時にユーザに対してストレスを極力与えないようにすることができる。
【0009】
請求項2に記載の地図データ更新システムでは、
移動通信装置は、地図更新データ放送設備との通信を行う外部通信機により地図データ放送設備へ地図更新リクエスト情報を送信し、
地図更新データ放送設備は、移動通信装置からの地図更新リクエスト情報を受信することで、その地図更新リクエスト情報の内容に応じた地図更新データを放送することを特徴とする。
【0010】
これにより、カーナビゲーション装置のユーザは、必要に応じた地図更新データの配信を移動通信装置によるオンデマンド放送受信により実現することができる。
【0011】
請求項3に記載の地図データ更新システムによれば、
地図データ放送設備は、地図更新リクエスト情報を受けて、地図更新データの放送時刻を含む地図更新データ放送情報を移動通信装置へ送信し、
移動通信装置は、地図更新データ放送情報に含まれる地図更新データの放送時刻に、データ放送受信機が地図更新データを受信するための受信予約を行う受信予約手段を備えることを特徴とする。
【0012】
これにより、移動通信装置では、受信予約した放送時刻に地図更新データの受信を開始することができる。
【0013】
請求項4に記載の地図データ更新システムでは、
地図データ放送設備は、地図更新データ放送情報として、地図更新データのバージョン情報を含むものであり、
移動通信装置は、地図更新データの放送時刻になる前に、記憶装置の空き記憶容量、バッテリー残量、地図更新データのバージョンの少なくとも1つから、地図更新データの受信を許可するかどうかを判定する受信許可判定手段を備えることを特徴とする。
【0014】
これにより、移動通信装置において、地図更新データを記憶することができる空き記憶容量を確保しているか、バッテリー残量が地図更新データを受信するのに十分であるか、受信しようとしている地図更新データのバージョンは正しいかなど、地図更新データを受信する準備が出来ているかどうかを判定することができる。
【0015】
請求項5に記載の地図データ更新システムによれば、移動通信装置は、地図更新データの受信中に中断要因が有るか無いかを判定する受信中断判定手段を備え、
データ放送受信機は、受信中断判定手段が中断要因が有ると判定した場合、地図更新データの受信を中断することを特徴とする。
【0016】
このように、中断要因が有る(中断要因が発生した)場合に地図更新データの受信を中断することで、移動通信装置の他の機能の実行を妨げないようにすることができる。
【0017】
請求項6に記載の地図データ更新システムでは、移動通信装置は、地図更新データの受信の中断終了後に、その中断した地図更新データの受信を再開するかどうかの指示をユーザに入力させるための指示入力手段を備えることを特徴とする。
【0018】
これにより、ユーザは、地図更新データの受信を再開させたい場合には指示入力手段から入力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の地図データ更新システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1に、地図データ更新システムの全体構成を示す。地図データ更新システムは、データ放送波により放送された地図更新データを受信する携帯電話(又は車載通信装置)101、車両に搭載されるカーナビゲーション装置(以下、カーナビ)201、及び地図更新データを放送する放送装置305を備えるデジタル放送プロバイダ(地図更新データ放送設備)301から構成される。
【0020】
デジタル放送プロバイダ301は、携帯電話101との通信を行う通信手段302、顧客管理サーバ303、課金サーバ304、放送装置305を備え、また、地図情報プロバイダの備える地図データベースやコンテンツプロバイダ(CP)の備えるPOI(Point Of Interest)データベースからなるデータベース群306と接続されている。
【0021】
通信手段302は、ETC(Electronic Toll Collection System、エレクトロニック・トール・コレクション・システム)、DSRC(Dedicated Short Range Communication、専用狭域通信)、無線LAN(Local Area Network)などに対応した通信機のほか、携帯電話網によって携帯電話101と無線通信接続可能な外部通信機を備える。顧客管理サーバ303は、データベース群306のデータを受信する顧客の各種情報を管理するためのサーバであり、課金サーバ304は、顧客ごとの課金情報を記憶するサーバである。放送装置305は、データ放送波により、地図更新データなどの各種データを放送する。
【0022】
携帯電話101は、制御部102、デジタル放送受信機103、外部無線通信制御部104、車内無線通信制御部105、記憶部106、及び電源制御部107から構成され、図示しないバッテリーからの電力供給を受けて動作する。制御部102は、主としてマイクロコンピュータとして構成されており、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/O、及びこれらを接続するバスによって構成される。CPUは、ROMに書き込まれたプログラムにしたがって所定の演算処理を実行する。
【0023】
デジタル放送受信機103は、デジタル放送プロバイダ301から放送された地図更新データなどの各種データを受信する受信機である。外部無線通信制御部104は、携帯電話網を介して、デジタル放送プロバイダ301の通信手段302との間で通信を行う。車内無線通信制御部105は、Bluetooth(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)などの近距離無線通信により、カーナビ201の車内無線通信制御部203と接続される。
【0024】
記憶部106は、デジタル放送受信機103の受信した地図更新データなどの各種データを記憶させておくための記憶装置であり、その記憶媒体には不揮発性のものが使用される。電源制御部107は、携帯電話101の電源のオンオフ制御を実行するほか、バッテリー残量を監視する。
【0025】
カーナビ201は、ナビ全体制御部202、車内無線通信制御部203、地図データベース204、表示部及び音声出力部205、操作部206、及びGPS受信機207から構成される。ナビ全体制御部202は、主としてマイクロコンピュータとして構成されており、CPU、ROM、RAM、I/O、及びこれらを接続するバスによって構成される。CPUは、ROMに書き込まれたプログラムにしたがって所定の演算処理を実行する。
【0026】
車内無線通信制御部203は、BluetoothやUSBなどの近距離無線通信により、携帯電話101の車内無線通信制御部105との間で通信を行う。このように、携帯電話101とカーナビ201とは、近距離無線通信によってデータの高速転送が可能となっている。
【0027】
地図データベース204は、道路データ、背景データ及び文字データなどからなる地図データを記憶するデータベースである。地図データを記憶する記憶媒体としては、そのデータ量からDVD(Digital Versatile Disk)やハードディスクなどが採用される。この地図データは、デジタル放送プロバイダ301から放送される地図更新データ(更新された差分データのみ)を取得して、更新することができるようになっている。
【0028】
表示部及び音声出力部205は、液晶ディスプレイ、アンプ、スピーカーによって構成され、表示部の画面には現在位置に対応しつつ、その進行方位を表示するマーク、及び、地図データベース204より入力された地図データによって生成される現在位置周辺の道路地図を表示することができる。さらに、目的地が設定された場合、この道路地図上には、現在位置から目的地までの案内経路を重ねて表示することが出来る。表示部は、ナビ全体制御部202によって、画面に表示する表示内容等がコントロールされる。
【0029】
操作部206は、表示部と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチ等によって構成され、各種入力に使用される。カーナビ201は、現在位置からその目的地までの最適な経路を自動的に選択して案内経路を形成し表示する、いわゆる経路案内機能を備えており、操作部206を用いて、目的地の位置を入力することが可能である。
【0030】
このような自動的に最適な案内経路を設定する手法として、例えば周知のダイクストラ法等の手法が知られている。また、カーナビ201、地図データを用いて施設の位置等を検索する検索機能も備えており、操作部206は、所望の施設を検索するための、住所、施設名称、電話番号等を入力するためにも用いられる。
【0031】
GPS受信機207は、衛星からの電波に基づいて車両の位置を測定するGPS(Global Positioning System)のための受信機を用いて、現在位置と進行方位を測定する。
【0032】
このように構成される地図データ更新システムは、一般に、ユーザが車両に乗車している時間内でしか行うことができなかったカーナビの地図データの更新に鑑みてなされたものである。すなわち、通常、車両に固定設置されたカーナビ201を動作させるためには、車両のキーポジションをアクセサリにしたり、エンジンを駆動状態にしたりすることが必須であり、これは、基本的にユーザが移動のために車両を使用する場合に限られる。従って、カーナビ201の地図データの更新は、一般的に、ユーザが車両に乗車している時間内でしか行うことができない。
【0033】
そこで、地図データ更新システムでは、通信エリア的にも、また、時間帯にも常時データ受信が可能な携帯電話101をデータ放送波の受信が可能な大容量データ保存装置として位置づけ、ユーザの車両使用状況に関わらず、データ放送波として配信される地図更新データをカーナビ201が起動する前に携帯電話101で受信する。
【0034】
これにより、ユーザが車両に乗り込む際には、ユーザが携帯する携帯電話101には地図更新データが記憶されているため、カーナビ201の起動時に、車内無線通信制御部105、203との間の近距離無線通信により、携帯電話101から地図更新データをカーナビ201に高速転送することができる。その結果、大容量の地図データの受信場所を選ぶことなく、また、地図データの更新時にユーザに対してストレスを極力与えないようにすることができる。
【0035】
以下、地図データ更新システムによるカーナビ201のための地図更新データ配信処理について説明する。図2は、地図データ更新システム全体の動作順序を示したフローチャートである。図2のステップS1では、携帯電話101とカーナビ201との間で、地図更新リクエスト情報の取得処理を行う。ステップS2では、携帯電話101とデジタル放送プロバイダ301との間で、地図更新リクエスト情報の登録処理を行う。
【0036】
続くステップS3では、携帯電話101とデジタル放送プロバイダ301との間で、地図更新データの放送プログラム(EPG)通知処理を行う。ステップS4では、携帯電話101において地図更新データの放送プログラムの受信予約処理を行う。ステップS5では、携帯電話101において予約時刻数分前の処理を行う。
【0037】
ステップS6では、携帯電話101において地図更新データ放送プログラムの受信処理を実行する。ステップS7では、携帯電話101においてデータ受信の中断補足処理を実行する。ステップS8では、携帯電話101において受信データの妥当性チェック処理を実行する。最後に、ステップS9では、携帯電話101とカーナビ201との間で、地図更新処理を実行する。
【0038】
次に、図2に示したステップS1〜ステップS7、及びステップS9の各処理について、図3乃至図9を参照しながら説明する。図3に、ステップS1における地図更新リクエスト情報の取得処理を示す。先ず、携帯電話101において地図更新のためのアプリケーション(地図更新アプリ)を起動させると、ステップS11では、カーナビ201において携帯電話101の認証を行う。
【0039】
この認証では、ユーザIDとそれに対応したパスワードを携帯電話101から入力し、その情報をカーナビ201へ送信する。カーナビ201では、予め登録しておいたユーザIDとそれに対応したパスワードと、携帯電話101から受信したユーザIDとパスワードとが各々一致する場合に、登録済みの携帯電話101であるとして、携帯電話101とカーナビ201の通信接続を継続する。
【0040】
ユーザが地図更新の対象とする位置を予め指定していない場合、ステップS12では、携帯電話101からカーナビ201に対し、自宅位置エリア情報(位置情報、エリアID、バージョン)の送信要求を送信する。ステップS13において、カーナビ201は、自宅位置エリア情報の送信要求を受けて自宅位置エリア情報を携帯電話101へ送信する。ここで、位置情報とは自宅位置の座標(緯経度)であり、エリアIDは自宅位置の該当エリア(例えば、都道府県、市区町村など)の識別番号であり、また、バージョンとは該当エリアの地図データのバージョン情報である。
【0041】
一方、ユーザが地図更新の対象とする位置を予め指定している場合には、ステップS14にて、携帯電話101からカーナビ201に対し、指定エリア情報の送信要求を送信する。ステップS15において、カーナビ201は、指定エリア情報の送信要求を受けて指定エリア情報を携帯電話101へ送信する。この指定エリア情報における位置情報とはユーザの指定した位置(例えば、目的地など)の座標であり、エリアIDは指定した位置の該当エリアの識別番号であり、また、バージョンとは該当エリアの地図データのバージョン情報である。
【0042】
ステップS16では、自宅位置エリア情報又は指定エリア情報を参照して、携帯電話101の記憶部106に、該当エリア(更新リクエスト範囲)の地図更新データが記憶されているかどうかを判定する。このステップS16にて肯定判定した場合にはステップS9の地図更新処理に移行し、ステップS16にて否定判定した場合にはステップS17に処理を進める。ステップS17では、自宅位置エリア情報又は指定エリア情報に基づいて地図更新リクエスト情報を作成し、格納(記憶)する。
【0043】
続く、ステップS2の地図更新リクエスト情報の登録処理(ステップS21〜ステップS23)、及びステップS3における地図更新データの放送プログラム(EPG)通知処理(ステップS31〜ステップS34)について、図4を参照しながら説明する。先ず、ステップS21において、携帯電話101では、地図更新アプリにより、地図更新リクエスト情報の送信メールを作成する。ステップS22では、携帯電話101からデジタル放送プロバイダ301へ地図更新リクエスト情報の送信メールを送信する。ステップS23において、デジタル放送プロバイダ301では、受信した地図更新リクエスト情報を登録する。
【0044】
図4のステップ31では、デジタル放送プロバイダ301において、データベース群306に更新リクエスト範囲の地図データの更新があるかどうかを判定する。このステップS31にて肯定判定した場合にはステップS32へ処理を進め、否定判定した場合には、携帯電話101に対して、更新リクエスト範囲の地図データの更新がないため、更新され次第、EPGデータを送信する旨の返信メールを送信し、更新リクエスト範囲の地図データが更新されるまで待機状態を保持する。
【0045】
ステップS32では、更新リクエスト範囲の地図データが更新された場合、その更新リクエスト範囲の地図データを放送する地図更新データの放送プログラム(地図更新データを放送する放送チャンネル、その放送時刻(EPGによる予約設定データ、EPGデータ)、データサイズ、及びバージョン)を編成する。ステップS33では、ステップS32で編成した放送プログラムの通知メールを作成する。この通知メールには、EPGデータを添付する。ステップS34では、デジタル放送プロバイダ301から携帯電話101に対して、ステップS33で作成した通知メールを送信する。そして、後述するように、デジタル放送プロバイダ301では、地図更新リクエスト情報の内容に応じた地図更新データを放送する。これにより、カーナビ201のユーザは、必要に応じた地図更新データの配信を携帯電話101によるオンデマンド放送受信により実現することができる。
【0046】
図5に、携帯電話101において実行される、地図更新データの放送プログラムの受信予約処理を示す。ステップS41では地図更新アプリを起動し、ステップS42では地図更新データの放送プログラム内容を確認する。ステップS43では、ユーザに対して、放送プログラムの内容で地図更新データを受信するかどうかの判断を促す。そして、ユーザから受信する旨の指示が携帯電話101から入力された場合には、ステップS44にて、放送プログラムの内容で地図更新データを受信するための受信予約を行う。これにより、携帯電話101では、受信予約した放送時刻に地図更新データの受信を開始することができる。また、ユーザから受信しない旨の指示が携帯電話101から入力された場合には、本処理を終了する。
【0047】
図6は、携帯電話101における予約時刻数分前の処理を示す。図6のステップS51では、地図更新データの放送プログラムの通知メールから放送(予定)時刻を参照し、予約時刻のX分前(例えば5分前)になったかどうか判定する。このステップS51にて肯定判定した場合にはステップS52へ処理を進め、否定判定した場合には、X分前になるまで待機状態を維持する。
【0048】
ステップS52では、携帯電話101のアラーム機能などよって、「まもなく地図更新データを受信します」などのメッセージを画面に表示したり音声出力したりすることで、地図更新データの自動受信が開始されることをユーザに通知する。
【0049】
ステップS53では、地図更新データの放送プログラムの通知メールからデータサイズを参照し、地図更新データを記憶するだけの空き記憶容量が携帯電話101の記憶部106にあるかどうかを判定する。このステップS53にて肯定判定した場合にはステップS54へ処理を進め、一方、否定判定した場合にはステップS59へ処理を進める。
【0050】
ステップS54では、携帯電話101のバッテリー残量を参照し、現在のバッテリー残量で地図更新データの放送受信が可能かどうかを判定する。このステップS54にて肯定判定した場合にはステップS55へ処理を進め、否定判定した場合にはステップS58にて、「バッテリーが不足しています」などのメッセージを画面に表示したり音声出力したりすることで、バッテリー残量が不足していることをユーザに通知する。
【0051】
ステップS55では、地図更新データの放送プログラムの通知メールから地図更新データのバージョンを取得し、ステップS56では、取得済みのバージョンであるかどうかを判定する。このステップS56にて肯定判定した場合には本処理を終了し、否定判定した場合にはステップS57に処理を進める。ステップS57では、地図更新データの受信を許可する。
【0052】
ステップS59では、「不要なデータを削除しますか」などのメッセージを画面に表示したり音声出力したりすることで、地図更新データを記憶するために、記憶部106の記憶するデータを削除するかどうかをユーザに通知する。この通知後、ユーザから削除する旨の指示が携帯電話101から入力された場合には、ステップS60にて不要なデータを削除し、ユーザから削除しない旨の指示が携帯電話101から入力された場合には、本処理を終了する。
【0053】
このように、図6の予約時刻数分前の処理では、地図更新データの放送(予定)時刻になるX分前に、携帯電話101の記憶部106の空き記憶容量、バッテリー残量、及び地図更新データのバージョンを参照して、地図更新データの受信を許可するかどうかを判定する。これにより、携帯電話101において、地図更新データを記憶することができる空き記憶容量を確保しているか、バッテリー残量が地図更新データを受信するのに十分であるか、受信しようとしている地図更新データのバージョンは正しいかなど、地図更新データを受信する準備が出来ているかどうかを判定することができる。
【0054】
図7は、地図更新データ放送プログラムの受信処理を示している。図7のステップS61では、地図更新データの受信を開始する。ステップS62では、地図更新データの受信中における中断要因(例えば、メール作成のためのユーザによる受信中断操作、携帯電話101の着信など)の有無を判定する。
【0055】
このステップS62にて肯定判定した(中断要因が有ると判定した)場合には、ステップS63へ処理を進め、否定判定した(中断要因が無いと判定した)場合には、ステップS65へ処理を進める。ステップS63では、地図更新データの受信を中断する中断処理を行い、ステップS64では、上記中断要因が終了したか(解消されたか)どうかを判定する。
【0056】
このステップS64にて肯定判定した場合にはステップS7へ処理を進め、否定判定した場合にはステップS63を繰り返す。このように、中断要因が有る(中断要因が発生した)場合に地図更新データの受信を中断することで、携帯電話101の他の機能の実行を妨げないようにすることができる。
【0057】
ステップS65では地図更新データの受信を継続し、ステップS66では地図更新データの最終データブロックを受信し終えたかどうかを判定する。このステップS66にて肯定判定した場合にはステップS7へ処理を進め、否定判定した場合にはステップS62へ処理を移行し、上述した処理を繰り返す。
【0058】
図8は、携帯電話101におけるデータ受信の中断補足処理を示している。図8のステップS71では、地図更新データのデータ受信において中断が有ったかどうかを判定する。このステップS71にて肯定判定した場合にはステップS72へ処理を進め、否定判定した場合にはステップS8へ処理を進める。
【0059】
ステップS72では、中断によって欠落したデータブロックを今から取得するかどうかをユーザに通知する。そして、ユーザによって、欠落したデータブロックを取得する旨の指示が入力された場合にはステップS73へ処理を進め、ユーザによって、欠落したデータブロックを取得しない旨の指示が入力された場合にはステップS2へ処理を移行する。
【0060】
このように、地図更新データの受信の中断終了後に、その中断した地図更新データの受信を再開するかどうかの指示をユーザに入力させることで、ユーザは、地図更新データの受信を再開させたい場合にはその旨の指示を入力することができる。
【0061】
ステップS73では地図更新データのオンデマンドサイトへ接続し、ステップS74では欠落したデータブロックを取得する。このように、何らかの要因で地図更新データの受信が中断された場合、中断要因が消失したタイミングから引き続き地図更新データ放送の受信を再開する。但し、放送データのため中断直後に遡ってデータを受信することはできないので、予定した受信データの最終データブロックまで受信した後、ユーザに対して欠落している受信データの補足処理方法の選択を促すようにしている。
【0062】
ここで、ユーザによる判断とするのは、ユーザごとの契約条件によってデータ通信の課金法が異なる、及びデータ受信の緊急性がその都度異なり、一意にデータ補足処理を決定できないためである。
【0063】
図2のステップS8では、予定した受信データを全て取得した後、受信データの妥当性をチェックする。この受信データの妥当性を評価するためには、例えば、CRCエラーチェックなどのデータ誤り検出及び誤り訂正処理を実施すればよい。
【0064】
図9は、携帯電話101とカーナビ201との間で実行される地図更新処理を示している。携帯電話101を所持しているユーザが車両に乗り込み、その後、カーナビ201が起動すると、図9のステップS91では、携帯電話101において、更新リクエスト範囲の地図更新データが記憶部106に記憶されているかどうかを判定する。このステップS91にて肯定判定した場合にはステップS92へ処理を進め、否定判定した場合には本処理を終了する。
【0065】
ステップS92では、近距離無線通信により、地図更新データを携帯電話101からカーナビ201へ転送する。ステップS93では、カーナビ201において地図更新データの受信が完了すると、その旨の情報を携帯電話101へ送信する。カーナビ201では、ステップS94において、受信した地図更新データにより地図データを更新する。これにより、カーナビ201の地図データは最新のバージョンとなり、以後、カーナビ201の実行する経路案内などに反映される。
【0066】
このように、本実施形態の地図データ更新システムでは、携帯電話101において、カーナビ201が起動する前に、地図更新データをデジタル放送プロバイダ301から受信して、その受信した地図更新データを記憶部106に記憶し、カーナビ201の起動時に、記憶部106の記憶する地図更新データをカーナビ201へ送信する。そして、カーナビ201では、起動時に、携帯電話101から送信された地図更新データを受信して地図データを更新する。
【0067】
これにより、ユーザが車両に乗り込む際には、ユーザが携帯する携帯電話101には地図更新データが記憶されているため、カーナビ201の起動時に、BluetoothやUSBなどの近距離通信により、携帯電話101から地図更新データをカーナビ201へ高速転送することができる。その結果、大容量の地図データの受信場所を選ぶことなく、また、地図データの更新時にユーザに対してストレスを極力与えないようにすることができる。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】地図データ更新システムの全体構成を示したブロック図である。
【図2】地図データ更新システム全体の動作順序を示したフローチャートである。
【図3】地図更新リクエスト情報の取得処理のフローチャートである。
【図4】地図更新リクエスト情報の登録処理(ステップS21〜ステップS23)、及び地図更新データの放送プログラム(EPG)通知処理のフローチャートである。
【図5】地図更新データの放送プログラムの受信予約処理のフローチャートである。
【図6】携帯電話101における予約時刻数分前の処理のフローチャートである。
【図7】地図更新データ放送プログラムの受信処理のフローチャートである。
【図8】携帯電話101におけるデータ受信の中断補足処理のフローチャートである。
【図9】携帯電話101とカーナビ201における、地図更新処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
101 携帯電話(又は車載通信装置)
102 制御部
103 デジタル放送受信機
104 外部無線通信制御部
105 車内無線通信制御部
106 記憶部
107 電源制御部
201 カーナビ
202 ナビ全体制御部
203 車内無線通信制御部
204 地図データベース
205 表示部及び音声出力部
206 操作部
207 GPS受信機
301 デジタル放送プロバイダ
302 通信手段
303 顧客管理サーバ
304 課金サーバ
305 放送装置
306 データベース群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図更新データをデータ放送波により放送する放送装置を備える地図更新データ放送設備と、
前記地図更新データ放送設備から放送された地図更新データを受信するデータ放送受信機と、該データ放送受信機が受信した地図更新データを記憶する記憶装置と、該記憶装置の記憶する地図更新データを近距離通信によりカーナビゲーション装置へ送信する近距離送信機と、を備える移動通信装置と、
前記移動通信装置の送信した地図更新データを受信する近距離受信機を備えるカーナビゲーション装置と、を有し、
前記移動通信装置は、
前記カーナビゲーション装置が起動する前に、前記地図更新データを受信して、その受信した地図更新データを前記記憶装置に記憶し、
前記カーナビゲーション装置の起動時に、前記記憶装置の記憶する地図更新データを前記カーナビゲーション装置へ送信し、
前記カーナビゲーション装置は、当該カーナビゲーション装置の起動時に、前記移動通信装置から送信された地図更新データを受信して地図データを更新することを特徴とする地図データ更新システム。
【請求項2】
前記移動通信装置は、前記地図更新データ放送設備との通信を行う外部通信機により前記地図データ放送設備へ地図更新リクエスト情報を送信し、
前記地図更新データ放送設備は、前記移動通信装置からの地図更新リクエスト情報を受信することで、その地図更新リクエスト情報の内容に応じた地図更新データを放送することを特徴とする請求項1記載の地図データ更新システム。
【請求項3】
前記地図データ放送設備は、前記地図更新リクエスト情報を受けて、地図更新データの放送時刻を含む地図更新データ放送情報を前記移動通信装置へ送信し、
前記移動通信装置は、前記地図更新データ放送情報に含まれる地図更新データの放送時刻に、前記データ放送受信機が地図更新データを受信するための受信予約を行う受信予約手段を備えることを特徴とする請求項2記載の地図データ更新システム。
【請求項4】
前記地図データ放送設備は、前記地図更新データ放送情報として、地図更新データのバージョン情報を含むものであり、
前記移動通信装置は、前記地図更新データの放送時刻になる前に、前記記憶装置の空き記憶容量、バッテリー残量、前記地図更新データのバージョンの少なくとも1つから、前記地図更新データの受信を許可するかどうかを判定する受信許可判定手段を備えることを特徴とする請求項3記載の地図データ更新システム。
【請求項5】
前記移動通信装置は、前記地図更新データの受信中における中断要因の有無を判定する受信中断判定手段を備え、
前記データ放送受信機は、前記受信中断判定手段が中断要因が有ると判定した場合に地図更新データの受信を中断することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の地図データ更新システム。
【請求項6】
前記移動通信装置は、前記地図更新データの受信の中断終了後に、その中断した地図更新データの受信を再開するかどうかの指示をユーザに入力させるための指示入力手段を備えることを特徴とする請求項5記載の地図データ更新システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−93080(P2009−93080A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265765(P2007−265765)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】