説明

基板の洗浄方法

【課題】基板の表面と溝内部のクリーニングを同時に行うとともに、一旦除去された微粒子の再付着を防止して、高い洗浄度の洗浄を行なうことができる基板の洗浄方法を提供する。
【解決手段】基板保持部10により基板Wを保持して回転させ、揺動アーム14を下降させて回転する基板Wの表面に洗浄体42の下端を接触させ、揺動アーム14を揺動させて洗浄体42で基板Wのスクラブ洗浄を行うとともに、高圧ノズル36から高圧洗浄液を噴出して洗浄体42の内壁と基板Wで囲まれる空間を洗浄液で満たし、空間内に満たされた洗浄液と該洗浄液中を通過する高圧ノズル36から噴出する高圧洗浄液との界面付近にキャビテーションによる気泡を発生させ、該キャビテーションによる気泡が潰れることで基板の高圧液洗浄を並行して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の洗浄方法に関し、特に、半導体基板、ガラス基板、液晶パネル等の高度の清浄度が要求される基板を洗浄するのに好適な基板の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化が進むにつれて半導体基板上の回路の配線が微細化し、配線間距離もより狭くなりつつある。しかしながら、半導体基板の処理においては、半導体片の微粒子、塵埃、結晶状の突起等のパーティクルが付着する場合がある。半導体基板上に配線間距離よりも大きなパーティクルが存在すると、配線がショートするなどの不具合が生じるため、基板上には配線間距離に比べて十分小さいパーティクルしか許容されない。このような事情はマスク等に用いるガラス基板、或いは液晶パネル等の基板のプロセス処理においても同様である。このような要求に伴い、より微細なサブミクロンレベルのパーティクルをも半導体基板等から落とす洗浄技術が必要とされている。
【0003】
例えば、ポリッシングを終了した半導体基板を高い洗浄度に洗浄する方法としては、基板にブラシやスポンジからなる洗浄体を擦り付けて行うスクラブ洗浄や、基板に向けて高圧水(高速ジェット流)を噴射し、キャビテーションによる気泡を発生させて行うキャビジェット洗浄等が提案されている。キャビジェット洗浄においては、キャビテーションによる気泡を発生させるため、高圧水の外周に低圧水を供給する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スクラブ洗浄は基板の表面に付着した汚れに対しては有効であるものの、基板表面の微細な溝の内部に付着した残留微粒子の除去に対しては必ずしも有効ではない。また、洗浄体に付着した微粒子量が増えると、これが他の箇所に再付着しやすいという不具合もある。
【0005】
一方、キャビジェット洗浄は基板表面の微細な溝の内部に付着した残留微粒子の除去に対しては有効であるが、内外2層に洗浄水を流すなど構成が複雑で、洗浄水量も大きくなる。また、基板の表面に固着した汚れ等が取りにくいという不具合もある。
【0006】
このことは、他の洗浄においても同様で、基板表面と溝内部のクリーニングの一方を満足させることができるものの、双方を同時に満足させるようにしたものはなく、このため複数段の洗浄を行っていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、基板の表面と溝内部のクリーニングを同時に行うとともに、一旦除去された微粒子の再付着を防止して、高い洗浄度の洗浄を行なうことができる基板の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基板の洗浄方法は、基板を保持して回転させる基板保持部と、高圧洗浄液を基板に向けて噴射する高圧ノズルと、この高圧ノズルの周囲を取り囲む中空の洗浄体と、前記高圧ノズルおよび洗浄体を保持する揺動アームとを備えた洗浄装置による基板の洗浄方法であって、前記基板保持部により基板を保持して回転させ、前記揺動アームを下降させて回転する基板の表面に前記洗浄体の下端を接触させ、前記揺動アームを揺動させて前記洗浄体で基板のスクラブ洗浄を行うとともに、前記高圧ノズルから高圧洗浄液を噴出して前記洗浄体の内壁と基板で囲まれる空間を洗浄液で満たし、前記空間内に満たされた洗浄液と該洗浄液中を通過する前記高圧ノズルから噴出する高圧洗浄液との界面付近にキャビテーションによる気泡を発生させ、該キャビテーションによる気泡が潰れることで基板の高圧液洗浄を並行して行い、その後、前記揺動アームの揺動と前記高圧洗浄液の供給を停止させ、前記揺動アームを上昇させて基板上から待避させることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の一態様においては、前記揺動アームを上昇させた状態で該揺動アームを基板のほぼ中心位置まで揺動させ、その後、該揺動アームを下降させて回転する基板の表面に前記洗浄体の下端を接触させることを特徴とする。
本発明の一態様においては、前記高圧ノズルから基板に向けて噴射される高圧洗浄液の圧力が1〜15MPaであることを特徴とする。これにより、洗浄体に水が含まれる結果、内側の高速流れと、これに接する外側の低速流れが存在する状態となって、界面付近の大きな速度差によって気泡が発生するいわゆるキャビテーションが生じ、それによって洗浄水の微粒子除去及び洗浄能力を増大させることができる。
また、本発明の一態様においては、前記洗浄体を回転させることを特徴とする。
また、本発明の一態様においては、前記洗浄体はPVAスポンジからなることを特徴とする。
【0010】
本発明の洗浄装置は、基板を保持する基板保持部と、前記基板の面に摺動可能に設けられた洗浄具とを備え、前記洗浄具は、高圧洗浄液を基板に向けて噴射する高圧ノズルと、この高圧ノズルの周囲を取り囲む筒状の洗浄体とを有する。
【0011】
これにより、洗浄体の下端面を回転中の基板の表面に当接させつつ洗浄体を摺動させ、同時に高圧ノズルから高圧洗浄液を基板面に向けて噴射することで、基板のスクラブ洗浄と高圧液洗浄を同時に行い、基板表面に付着する微粒子と溝内の微粒子をそれぞれ効率的に除去する。高圧洗浄液が洗浄体によって被覆されているので、静電気やガスを吸収することが防止され、洗浄体の内部から給液する自己洗浄タイプであるので、洗浄体の汚れが濃化せず、これによる再汚染のおそれも少ない。
【0012】
好ましくは、基板保持部を回転させ、洗浄具は揺動アームの先端に取り付けて揺動させ、相対移動量を大きくする。洗浄液としては、好ましくは、超純水を用い、洗浄体はスポンジのような柔軟性とある程度の通液性を有するものを用いる。
【0013】
本発明の洗浄装置は、高圧洗浄液を基板に向けて噴射する高圧ノズルと、この高圧ノズルの周囲を取り囲む中空体とを備え、この中空体と基板とは高圧ノズルから噴出された洗浄液を保持する空間を形成し、高圧ノズルから噴出された洗浄液は前記空間に保持された洗浄液内を通過して基材の表面に衝突する。
【0014】
上述の構成により、高圧洗浄液は高圧ノズルから基板に噴出され、中空体および基板によって形成された空間は洗浄液で満たされる。高圧ノズルから噴出された高圧洗浄液は、空間内に保持された静圧下の洗浄液中を通過する。これゆえ、空間内に満たされた静圧下の洗浄液と該静圧下の洗浄液中を通過する高圧ノズルから噴出する高圧洗浄液との界面付近に、大きな速度差が生じ、キャビテーションによる気泡が発生する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板のスクラブ洗浄と高圧液体洗浄を並行して行って基板の表面と溝内部のクリーニングを同時に行うとともに、洗浄体の内部から給液することにより、洗浄体の汚れの濃化による微粒子の再付着を防止して、高い洗浄度の洗浄を行なうことができる基板の洗浄方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図4を参照しながら説明する。図1は本発明の洗浄装置の全体構成を示す斜視図である。この洗浄装置は、図1に示すように、被洗浄物としての半導体基板Wを水平に保持し、所要の回転数で回転させるスピンチャック10を備えている。基板Wは、このスピンチャック10に洗浄面を上向きにして保持される。一方、スピンチャック10の側方には、上端に水平方向に延びる揺動アーム14を取り付けた支持軸12が上下動及び回転自在に配置されている。
【0017】
揺動アーム14の先端には、略円筒状のハウジング16が保持されている。図2は図1の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。図2に示すように、ハウジング16の内部には、軸受保持部材17によって保持された軸受17a,17bによって鉛直方向に延びる回転軸18が回転自在に保持され、回転軸18の上端には従動傘歯車20aが取り付けられている。一方、軸受保持部材17の上部には、水平方向に延びる駆動軸22を軸受23a,23bにより回転自在に支持する軸受ケーシング23が設けられており、駆動軸22の先端部には従動傘歯車20aと噛合う駆動傘歯車20bが取り付けられている。駆動軸22は、揺動アーム14の基端部等に設けられたモータ等の駆動源に接続されている。
【0018】
回転軸18の下部には、内部に高圧水供給用の流路24aが形成されたリング状部材24が設けられ、この流路24aの入口24bには、継手26を介して高圧ホース28の端部が接続されている。この高圧ホース28は、ハウジング16の内部を挿通して外部に延出している。高圧ホース28の途中には、図示しないプランジャポンプ等の加圧ポンプが設けられ、この加圧ポンプで、この内部を流れる水が、1〜15MPa(10〜150kgf/cm)、好ましくは5〜10MPa(50〜100kgf/cm)程度に加圧されるようになっている。
【0019】
回転軸18とリング状部材24の間には、周方向に延びるリング状の液溜り部30が形成されている。図3は図2のA−A線に沿った断面図である。図3に示すように、回転軸18には、環状の液溜り部30から軸心に向かう径方向流路32aが形成され、これによってロータリージョイント33が形成されている。径方向流路32aは、さらに軸心に沿って下方に延びる軸方向流路32bに連通し、これにより回転軸18の下端の高圧ノズル装着部34に開口する高圧液体流路32が形成されている。
【0020】
高圧ノズル装着部34には、先端に細径のノズル穴36aを有する高圧ノズル36が螺合して取り付けられている。図4はノズル穴36aを有する高圧ノズル36の先端部を示す図である。ノズル穴36aは、図4(a)に示すように先端が外向きに広がるジェットノズルタイプでも、図4(b)に示すように先端がストレートなタイプでもよい。ノズル穴36aの径は、例えば0.2〜0.4mm程度であり、このノズル径が0.2mmの時に、高圧液体の流量が210ml/min程度となるように設定されている。
【0021】
一方、回転軸18の下部には固定スリーブ38によって防液板39が固定され、ハウジング16の開口部へ基板Wから跳ね返った洗浄液が進入するのを防いでいる。固定スリーブ38の先端には、PVAスポンジ等で構成された円筒状のスクラブ洗浄用の洗浄体42が、高圧ノズル36を取り囲むように取り付けられている。洗浄体42の先端は高圧ノズル36の先端より下に延び出すように取り付けられている。PVAスポンジは、極微細な連続気孔による優れた吸液性を持ち、柔軟で、繊維製品に比べて脱落しにくい。
【0022】
次に、上記のように構成された洗浄装置の使用方法を説明する。先ず、ロボットのアーム等で基板Wをスピンチャック10上に搬送し、スピンチャック10で基板Wを保持して所定の回転数で回転させる。次に、揺動アーム14を上昇させた状態で揺動アーム14を基板Wのほぼ中心位置まで揺動させる。
【0023】
この状態で、回転軸18を回転させて洗浄体42を回転させながら揺動アーム14を下降させ、回転する基板Wの被洗浄面に洗浄体42の下端を所定の圧力で押し付け、同時に、高圧ノズル36から超純水等の洗浄液を1〜15MPa程度の高圧で基板Wに向けて噴射する。そして、揺動アーム14を揺動させて、洗浄体42が基板Wの中心部分を所定速度で通過するように両外縁部の間を揺動させ、基板Wのスクラブ洗浄と高圧液洗浄を並行して行う。揺動アーム14の揺動は所定回数繰り返される。
【0024】
この時、洗浄体42で囲まれた空間では高圧ノズル36からの高圧水が基板Wの表面を直撃し、表面の溝中に存在する微粒子を洗い出す。高圧ノズル36が洗浄体42で囲まれているので、高圧ノズル36からの高圧水が大気中のガスを吸収することが防止され、従って、ガス成分による分子汚染等を防止することができる。また、高圧水洗浄により発生するミストは洗浄体42の内部空間から外部に出ないので、ミストの拡散を抑えることができる。
【0025】
高圧ノズル36から高圧液体を基板Wへ供給し、基板Wに対し洗浄体42の下端を接触させて高圧ノズル36の下端と洗浄体42の内壁と基板Wで囲まれる空間42bを超純水等の洗浄液で満たす。空間42b内に満たされた静圧下の洗浄液と該静圧下の洗浄液中を通過する高圧ノズル36から噴出する高圧液体との界面付近に、大きな速度差が存在して摩擦が起こり、気泡が発生するいわゆるキャビテーションが生じる。洗浄体42の下端を基板Wに接触させないで、基板Wに近接させても、キャビテーションによる気泡が発生する。基板Wに対し洗浄体42の下端を近接させるときは、両者の隙間から流出する量が高圧ノズル36から供給される高圧液体の流量より少なくなるように基板Wと洗浄体42の下端間の距離を設定する。洗浄体42を基板Wに接触させないで近接させる場合には、洗浄体42をスポンジ等の吸液性の材料とする必要はなく、空間42bに洗浄液を満たすための中空体であればよい。キャビテーションによる気泡は所定時間存続してから基板W面近傍で潰れ、それによって洗浄液の微粒子除去及び洗浄能力を増大させる。
【0026】
また、この洗浄装置では、洗浄体42の内部から給液することによって洗浄体42に付着する微粒子等が順次除去される、すなわち、自己洗浄タイプであるので、洗浄体42の汚れの濃化による再汚染のおそれが少ない。
【0027】
所定時間の洗浄を終えた後、揺動アーム14の揺動と高圧液体の供給を停止させ、揺動アーム14を上昇させて基板W上から待避させた後、スピンチャック10を高速回転させてスピン乾燥させる。次の洗浄工程を行う場合は、基板Wの回転を停止させ、基板Wの被洗浄面が乾燥しないように次工程へ搬送する。
【0028】
なお、本実施例では洗浄液として超純水を用いたが、アンモニア水、希フッ酸等の薬液やオゾン純水を供給して化学的な洗浄作用とキャビテーションによる機械的な洗浄作用により、基板上の汚染を除去するようにしてもよい。また、高圧の超純水に電離する物質を添加して比抵抗を下げた炭酸ガス溶解純水等の液体を使用して、高圧液体が基板に衝突する際に発生する静電気を低減して、基板上に形成される回路の静電破壊やパーティクル付着を防止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態の概要を示す斜視図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図である。
【図4】図2の要部をさらに拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0030】
10 スピンチャック
14 揺動アーム
18 回転軸
24 リング状部材
28 高圧ホース
32 高圧液体流路
33 ロータリージョイント
34 高圧ノズル装着部
36 高圧ノズル
38 固定スリーブ
39 防液板
42 洗浄体
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持して回転させる基板保持部と、高圧洗浄液を基板に向けて噴射する高圧ノズルと、この高圧ノズルの周囲を取り囲む中空の洗浄体と、前記高圧ノズルおよび洗浄体を保持する揺動アームとを備えた洗浄装置による基板の洗浄方法であって、
前記基板保持部により基板を保持して回転させ、前記揺動アームを下降させて回転する基板の表面に前記洗浄体の下端を接触させ、前記揺動アームを揺動させて前記洗浄体で基板のスクラブ洗浄を行うとともに、前記高圧ノズルから高圧洗浄液を噴出して前記洗浄体の内壁と基板で囲まれる空間を洗浄液で満たし、前記空間内に満たされた洗浄液と該洗浄液中を通過する前記高圧ノズルから噴出する高圧洗浄液との界面付近にキャビテーションによる気泡を発生させ、該キャビテーションによる気泡が潰れることで基板の高圧液洗浄を並行して行い、その後、前記揺動アームの揺動と前記高圧洗浄液の供給を停止させ、前記揺動アームを上昇させて基板上から待避させることを特徴とする基板の洗浄方法。
【請求項2】
前記揺動アームを上昇させた状態で該揺動アームを基板のほぼ中心位置まで揺動させ、その後、該揺動アームを下降させて回転する基板の表面に前記洗浄体の下端を接触させることを特徴とする請求項1に記載の基板の洗浄方法。
【請求項3】
前記高圧ノズルから基板に向けて噴射される高圧洗浄液の圧力が1〜15MPaであることを特徴とする請求項1に記載の基板の洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄体を回転させることを特徴とする請求項1に記載の基板の洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄体はPVAスポンジからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−214590(P2007−214590A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111370(P2007−111370)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【分割の表示】特願平11−212437の分割
【原出願日】平成11年7月27日(1999.7.27)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】