説明

基板保持装置、半導体製造装置及び半導体装置の製造方法

【課題】 基板裏面への薬液の回り込みを確実に防ぐことが可能な基板保持装置及び半導体製造装置を提供する。
【解決手段】 回転軸10B上に設けられた基板保持部11Aの上に基板3が吸着保持される。基板保持部11Aの側壁に、ガス供給通路12Aと連通するガス噴出口12Bを設けられる。ガス噴出口12Bは、基板3の裏面を臨むように、水平方向に対して角度αで延びるように形成される。ノズル5からレジスト4を供給する前に、不活性ガス供給部6から供給された不活性ガスが、ガス供給通路12Aを介してガス噴出口12Bから基板裏面に対して噴出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト塗布やウェットエッチングのような基板の回転を伴う処理を実行する半導体製造装置に係り、特に基板を吸着保持する基板保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板やガラス基板上にフォトレジスト(以下「レジスト」と略する。)、現像液、エッチング液等の薬液を均一に且つ薄く塗布する方法として回転塗布法が知られている。この回転塗布法を実行する半導体製造装置の一例としてレジスト塗布装置が知られている。レジスト塗布装置内には、基板を吸着保持する基板保持装置としての真空吸着台が配置されている。
レジスト塗布装置において、真空吸着台に保持された基板上にレジストを滴下した後、該基板を回転させる。この回転により生じた遠心力により、余分なレジストが基板外周から飛散する。このようにして、基板上にレジスト膜を所望の厚さで均一に塗布することができる。
【0003】
ところで、レジストを滴下した直後は、真空吸着台が回転していない。また、真空吸着台が回転を開始した直後は、回転速度が低い。このため、基板の表面処理状態や、レジストの粘度や種類によっては、図6に示すように、レジスト4の表面張力により、真空吸着台30上に吸着保持された基板3の裏面にレジストが回り込んでしまう場合があった。基板裏面に回り込んだレジストは、上記遠心力によっては吹き飛ばされず、レジスト塗布処理終了後も残存する。この基板裏面のレジストはパーティクル発生の要因となる可能性がある。さらに、レジスト塗布後に搬送される露光装置において、フォトマスクに対して基板が平行にならず、露光精度の低下を招来する。
また、基板裏面に回り込んだレジストが、真空吸着台の吸着面にまで達する場合もある。この場合、該吸着面と基板とがレジストにより相互に接着されてしまい、レジスト塗布後に基板を取り外すことができなくなってしまう。さらに、吸着面に形成された真空吸着用の溝にレジストが吸い込まれると、該溝が詰まってしまい、基板の吸着力が低下してしまう。
【0004】
これらの問題を解消するため、基板裏面に対してガスを噴出する装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−78743号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に係る装置31では、図7に示すように、基板3の裏面に対して平行に噴出口31Aからガスを噴出させている。このため、ガスの流れDによるベルヌーイ効果により、真空領域(負圧領域)Eが形成されてしまう。その結果、かえって基板3の裏面にレジスト4を吸引することとなり、基板裏面へのレジストの回り込みを確実に防ぐことができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、基板裏面への薬液の回り込みを確実に防ぐことが可能な基板保持装置及び半導体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る基板保持装置は、基板を吸着保持する基板保持装置であって、
回転軸と、
前記回転軸上に設けられ、上面に基板を保持する基板保持部と、
前記回転軸及び前記基板保持部の内部に連通して設けられたガス供給通路と、
前記ガス供給通路と連通するガス噴出口であって、前記基板保持部の側壁に、前記基板の裏面に臨むような角度で形成されたガス噴出口とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る半導体製造装置は、上記基板保持装置を有する半導体製造装置であって、
前記ガス供給通路に不活性ガスを供給するガス供給部と、
前記基板保持部の上面に保持された前記基板の表面に薬液を供給する薬液供給部を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上説明したように、基板保持部側壁に設けられたガス噴出口から基板裏面に不活性ガスを噴出することにより、基板裏面への薬液の回り込みを確実に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図中、同一または相当する部分には同一の符号を付してその説明を簡略化ないし省略することがある。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による基板保持装置を説明するための外観図である。図2は、図1に示す基板保持装置のA−A’断面図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、基板保持装置1としての基板吸着台は、回転軸10Bと、回転軸10B上に設けられた基板保持部10Aとを備えている。基板保持部10Aと回転軸10Bとは一体的に構成されている。回転軸10Bは、モータ2に接続されている。よって、回転軸10Bは、モータ2の駆動により回転可能に構成されている。
【0014】
基板保持部10Aの表面、すなわち、基板を真空吸着させる吸着面には、溝11Bが形成されている。また、基板保持部10A及び回転軸10Bの内部には、排気通路11Aが形成されている。排気通路11Aの一端は溝11Bと連通し、排気通路11Aの他端は図示しない真空源に接続されている。真空源は、例えば、真空ポンプや、工場の排気ラインである。
【0015】
また、基板保持部10A及び回転軸10Bの内部に、ガス供給通路12Aが形成されている。ガス供給通路12Aは、排気通路11Aの周囲に複数形成されている。図2に示すように、基板保持部10Aの内部において、上下方向に延びるガス供給通路12Aは、外周方向に向かって屈曲している。この屈曲したガス供給通路12Aの先端は、ガス噴出口12Bと連通している。すなわち、基板保持部10Aの側壁には、ガス供給通路12Aと連通するガス噴出口12Bが形成されている。ガス供給通路12Aの他端は、不活性ガス供給部(後述)に接続されている。該不活性ガス供給部は、例えば、不活性ガスが充填されたガスボンベや、工場の不活性ガスラインに接続されている。これにより、ガス噴出口12Bから、所望の時期に、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスが噴出可能となる。
【0016】
図2に示すように、ガス噴出口12Bは、水平方向に対して角度αだけ上方を臨むように形成されている。これにより、図中に矢印Bで示す方向に、不活性ガスが噴出される。すなわち、基板保持部10Aにより保持された基板裏面の外周に向けて、ガス噴出口12Bから不活性ガスが噴出される(後述)。本発明者等の実験によれば、ガス噴出口12Bの角度αを30度〜60度にした場合に、効果的に基板裏面への薬液の回り込みを防止することができる。
【0017】
図3は、ガス噴出口12Bの形成位置を示す図である。
図3に示すように、複数のガス噴出口12Bが放射状に設けられている。すなわち、複数のガス噴出口12Bが、基板保持部10Aの側壁全体にわたって形成されている。図3に示す例では、16個のガス噴出口12Bが等間隔で形成されている。これにより、図中に矢印Bで示すように、基板3裏面の外周に対して均一に不活性ガスを噴出することができる。
【0018】
上記基板保持装置の動作については、後述する実施の形態2において説明する。
【0019】
以上説明したように、本実施の形態1では、基板保持部10Aの側壁に、水平方向に対して角度αだけ上方に向かって延びるガス噴出口12Bを設けた。これにより、基板保持部10A上に保持された基板3の裏面に不活性ガスを供給することができる。さらに、ガス供給時に、既述の先行技術で発生したようなベルヌーイ効果による真空領域の発生を防止することができる。従って、基板裏面への薬液の回り込みを確実に防止することが可能な基板保持装置1が得られる。
【0020】
なお、本実施の形態1では、図3に示すように、ガス噴出口12Bの形状は、中心側の開口面積に比して外周側の開口面積が小さい形状となっているが、開口面積が常に一定である開口であってもよい。つまり、ガス噴出口12Bは、円筒状の開口であってもよい。
さらに、図4に示すように、ガス噴出口12Bの形状を、中心側の開口面積に比して外周側の開口面積を大きい形状とすることもできる。例えば、ガス噴出口12Bの形状を、外周側が大きく開いた扇形の開口にすることができる。この場合、図4に示すように、1つのガス噴出口12Bから広範囲に不活性ガスを噴出することができる。よって、ガス噴出口12Bの数を減らすことができ、基板保持装置の構造を簡略化することができる。
【0021】
また、本実施の形態1では、基板保持部10Aと回転軸10Bとは一体的に構成されているが、別個に構成されていてもよい。
【0022】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2は、上記実施の形態1の基板保持装置を有する半導体製造装置について説明する。具体的には、レジスト塗布装置について説明する。
【0023】
図5は、本発明の実施の形態2による半導体製造装置を説明するための概略図である。
図5に示すように、半導体製造装置20としてのレジスト塗布装置は、基板保持装置1を備えている。基板保持装置1の上方には、ノズル5が配置されている。ノズル5は、基板3の表面上に薬液としてのレジスト4を供給するように構成されている。
【0024】
上記実施の形態1で説明したように、基板保持装置1を構成する基板保持部10A及び回転軸10B内には、ガス供給通路12Aが形成されている。保持部10Aの側壁には、ガス供給通路12Aと連通するガス噴出口12Bが形成されている。ガス噴出口12Bは、基板3の裏面に臨むように形成され、より具体的には、水平方向に対して角度α(例えば、30度〜60度)だけ上方に向かって延びるように形成されている。ガス供給通路12Aは、不活性ガス供給部6に接続されている。不活性ガス供給部6は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを供給可能に構成されている。不活性ガス供給部6は、例えば、ガスボンベや、当該半導体製造装置が設置される工場の不活性ガスラインである。
【0025】
また、図5に示す半導体製造装置は、溶剤蒸気供給部7を備えている。溶剤蒸気供給部7は、レジストに含まれる溶剤の蒸気(以下「溶剤蒸気」という。)を生成するように構成されている。溶剤蒸気供給部7は、例えば、溶剤を入れる容器と、該容器を加熱するヒータ等の加熱機構とを備えている。溶剤蒸気供給部7によって生成された溶剤蒸気は、必要に応じて(例えば、図示しないバルブの切り替え制御によって)、不活性ガス供給部6から供給された不活性ガス中に含有される。すなわち、ガス噴出口12Bから溶剤蒸気を含有する不活性ガスを噴出することができる。
【0026】
次に、図5を参照して、上記半導体製造装置の動作について説明する。すなわち、半導体装置の製造方法、より具体的には、レジスト膜の形成方法について説明する。
【0027】
先ず、図示しない搬送ロボットにより、基板3を基板保持部10Aの上面に載置する。次に、排気通路11A及び溝11B内の空気を真空ポンプ等により排気することで、基板3裏面と基板保持部10A上面との間に真空状態を形成する。これにより、基板3が基板保持部10A上に真空吸着される。
【0028】
次に、不活性ガス供給部6からガス供給通路12A内に窒素ガスを供給し、ガス噴出口12Bから所望の流量で窒素ガスを噴出させる。例えば、不活性ガスの供給圧力は、3×10Paであり、流量は、2000sccmである。
【0029】
続いて、ノズル5から基板3上にレジスト4を滴下する。この時点では、基板保持部10A及び回転軸10Bはまだ回転していないが、ガス噴出口12Bから基板3裏面に噴出された窒素ガスによって、基板3裏面へのレジスト4の回り込みを確実に防ぐことができる。
【0030】
次に、モータ2を駆動して回転軸10Bを回転させることで、基板保持部10A及び真空吸着された基板3を回転させる。例えば、基板3の回転速度は、3000rpmである。これにより、不要なレジスト4aが遠心力Cにより基板外周方向に飛散する。その結果、基板3上に薄くかつ均一にレジスト膜が形成される。回転開始直後は回転速度が低いが、ガス噴出口12Bから基板3裏面に噴出された窒素ガスによって、基板3裏面へのレジスト4の回り込みを確実に防止することができる。
【0031】
その後、モータ2を停止して基板3の回転を停止した後、不活性ガス供給部6による窒素ガスの供給を停止する。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態2では、基板保持部10Aの側壁に、基板3の裏面に向かって延びるガス噴射口12Bを設けた。そして、基板表面への薬液供給の前から、ガス噴射口12Bにより不活性ガスを基板3裏面に噴出した。不活性ガスは基板裏面に対して所定の角度で噴射されるため、先行技術で発生したようなベルヌーイ効果による真空領域の形成は起こらない。よって、基板3の回転前(すなわち、回転停止状態)及び低回転時においても、基板裏面へのレジストの回り込みを確実に防止することができる。基板3の裏面洗浄を行う必要がなくなり、製造コストを抑えることができる。
また、基板裏面にレジスト膜が形成されないため、後工程の露光時にフォトマスクと基板との平行だしを精度良く行うことができ、露光を精度良く行うことができる。さらに、基板保持部10Aの溝11Bへのレジスト流入を防止することができる。よって、半導体製造装置を安定して稼働させることができる。
【0033】
ところで、レジスト4の種類によっては、飛散したレジスト4aがミストとなり、基板3裏面の外周付近に付着する場合が考えられる。その他、該外周付近を積極的に洗浄したい場合が考えられる。洗浄液を使用することが考えられるが、製造コストが増大してしまうため好ましくない。かかる場合に、不活性ガス供給部6から供給される不活性ガスに、溶剤蒸気供給部7から供給される溶剤蒸気を含有させることができる。すなわち、ガス噴出口12Bから溶剤蒸気を含有する不活性ガスを噴出させることができる。これにより、基板3裏面の洗浄効果を同時に得ることができる。
【0034】
なお、上記実施の形態2では、レジスト塗布装置について説明したが、レジスト現像装置やウェットエッチング装置のように、基板の回転を伴う処理を実行する半導体製造装置に対しても本発明を適用することができる。この場合も、基板裏面への薬液の回り込みを確実に防止することができる。
【0035】
また、ガス噴出口12Bの数、形状および角度、並びに、不活性ガスの圧力および流量等は、使用する薬液(レジスト等)の粘度や基板回転速度に応じて、適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態1による基板保持装置を説明するための外観図である。
【図2】図1に示す基板保持装置のA−A’断面図である。
【図3】ガス噴出口の形成位置を示す図である。
【図4】ガス噴出口の形状の変形例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2による半導体製造装置を説明するための概略図である。
【図6】基板裏面へのレジストの回り込みを示す図である。
【図7】従来の装置において、ベルヌーイ効果により形成された真空領域を説明するための図である。
【符号の説明】
【0037】
1 基板保持装置、 2 モータ、 3 基板、 4 レジスト、 5 ノズル、 6 不活性ガス供給部、 7 溶剤蒸気供給部、 10A 基板保持部、 10B 回転軸 、 11A 排気通路、 11B 溝、 12A ガス供給通路、 12B ガス噴出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を吸着保持する基板保持装置であって、
回転軸と、
前記回転軸上に設けられ、上面に基板を保持する基板保持部と、
前記回転軸及び前記基板保持部の内部に連通して設けられたガス供給通路と、
前記ガス供給通路と連通するガス噴出口であって、前記基板保持部の側壁に、前記基板の裏面に臨むような角度で形成されたガス噴出口とを備えたことを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板保持装置において、
前記ガス噴出口は、前記基板保持部の中心側の開口面積に比して外周側の開口面積が大きくなるように形成されたことを特徴とする基板保持装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板保持装置において、
前記ガス噴出口は、扇型の形状を有することを特徴とする基板保持装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の基板保持装置において、
前記ガス噴出口が等間隔で複数形成されたことを特徴とする基板保持装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の基板保持装置を有する半導体製造装置であって、
前記ガス供給通路に不活性ガスを供給するガス供給部と、
前記基板保持部の上面に保持された前記基板の表面に薬液を供給する薬液供給部を備えたことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体製造装置において、
薬液に含まれる溶剤の蒸気を生成し、生成した蒸気を前記ガス供給部から供給された不活性ガスに含有させる溶剤蒸気供給部を更に備えたことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の半導体製造装置を用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−48814(P2007−48814A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229372(P2005−229372)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】