説明

基板保持装置、及び、プラズマ処理装置

【課題】 基板を目的の温度に迅速に冷却でき、均一冷却が可能な装置を提供すること。
【解決手段】 ESCステージにおいて、熱伝達ガスを導入可能な内側領域25と外側領域26を設け、これらの間に排気溝30を設ける。排気領域は、内側領域25との間を隔てる内周隔壁34、外側領域25との間を隔てる中間隔壁29とに挟まれた溝状で、内周隔壁34、中間隔壁29を介して、内側領域、外側領域を排気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置、及び、これに適用可能な基板保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子などの製造工程においては、処理室内にてプラズマを発生させて基板に対してエッチング処理や成膜処理を行っている。処理室内のホルダーに載置した基板は、プラズマからの入熱により基板温度が上昇するとエッチング性能や膜特性が変わってしまうため、冷媒等により温度制御された冷却ジャケットと静電吸着ステージ(ESCステージ)及び熱伝達ガスを用いて基板と冷却ジャケット間の熱伝達効率を上げて、基板の温度変化を抑制しエッチング性能を維持している。
【0003】
近年においては、半導体デバイスの微細化に伴い基板面内における各素子の加工寸法ばらつきは極力小さくする方向に来ている。さらに基板の大口径化に伴い基板面内でのエッチングレートの均一性もより良好な値を実現する必要がある。しかしながら大口径基板においては裏面に導入している熱伝達ガスの封止圧力が完全には一定にならないため、基板面内での冷却効率が変わり、面内の温度分布が悪くなる。具体的には、例えば中央部でガス導入を行う場合、中央部で熱伝達ガスの圧力が高くなり外側に向かうにつれて徐々に熱伝達ガスの圧力が低くなるため、内側で温度が低く外側で高い温度分布が発生する。大口径基板(例えば、直径200mm以上)の場合は、この圧力分布による温度分布が大きく、それによりエッチング性能のばらつきが発生し、良好な歩留まりが得られない。
【0004】
さらに、近年においては、特定の場合に、基板の内周と外周に所定の温度差を設けて処理を行う要求もある。
【0005】
特許文献1及び2には、基板ステージにオーバーハングの状態(基板ステージの外周から基板の外周がはみ出す状態)で基板が保持されることにより、基板の外周側が冷却されにくいという問題を解決するための方法が示されている。具体的には、基板の外周側に供給される熱伝達ガスを高圧にするために、特許文献1では外周側、内周側に夫々独立に流量を制御可能なガス導入系を設けた基板保持装置が示されている。また、特許文献2には、外側領域に熱伝達ガスを導入すると共に、シールを隔てて内側領域から排気することで、内側領域に比べて外側領域の熱伝達ガスが高圧になるようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−251854号公報
【特許文献2】特許第4176848号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2はいずれもオーバーハングによる基板の外周部の局所的な冷却むらの問題を扱ったものであり、上述の本願の課題を解決するのに十分とはいえない。具体的には、特許文献1に示すように内周及び外周領域の夫々にガス導入を行っても、ガスは両側に拡散してしまうため、やはり基板の内側から外側に向かって低くなる圧力勾配ができてしまう。また、特許文献2に示すように、内側領域で排気する構成とした場合、内側が低圧になり過ぎ、冷却効率が低下するという問題がある。
【0008】
さらに、上述のように、基板の内外周で温度差を設ける場合、特許文献1及び2に示す方法では、冷却するのに十分な圧力を保ちつつ、内外周で差圧を設けることができない。本発明は上述の問題に鑑みてなされたものであり、基板を所定の温度に保つことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の問題を解決する為に、基板保持部に保持されている基板の裏面側に導入している熱伝達ガスの圧力を基板面内で均一になるように、複数領域に分けて独立に熱伝達ガスを導入する。さらにはそれぞれの領域において熱伝達ガスを独立に圧力制御できる構造にするものである。また、熱伝達ガスを導入する各領域について規制部材を介して排気系に接続することにより、ガス導入と排気を同時に行うことができる。
【0010】
本発明の一つの側面にかかる基板保持装置は、
静電吸着力により基板を吸着可能な吸着部と、前記吸着部によって吸着された基板の裏面側に空間を形成する凹部と、を有するステージを備え、
前記凹部は、夫々区画された、第1領域、前記第1領域の周囲の第2領域、及び、前記第2領域の周囲の第3領域を有し、
前記第1領域および第3領域は、前記基板の裏面側にガスを導入するガス導入系に接続され、
前記第2領域は、前記ガス導入系により導入された前記ガスを排気する排気系に接続されると共に、前記第1領域からの前記ガスの流れ及び第3領域からの前記ガスの流れを制限する規制部材を有することを特徴とする。
【0011】
あるいは、本発明の他の側面にかかるプラズマ処理装置は、
チャンバーと、
前記チャンバーの内部に配置されている上記の基板保持装置と、
前記チャンバーの内部にプラズマを発生させるプラズマ発生装置と、
前記基板保持装置を冷却する冷却装置と、
前記チャンバーの内部を排気する排気装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板の外側領域と内側領域を独立に制御することができるため基板の各領域を所定の温度にすることができる。さらには異なるエッチング面内均一性の傾向を持つ材料に対しても基板温度を変えることによって均一にエッチングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態にかかるプラズマ処理装置の概略構成図。
【図2】本発明の実施形態にかかる基板保持装置に用いられるESCステージの上面図。
【図3】本発明の実施形態にかかる基板保持装置に用いられるESCステージの断面図。
【図4】(a)はESCステージの中間隔壁及び内周隔壁の一部を示す平面図、(b)はESCステージの内周隔壁の概略側面図。
【図5】熱伝達He圧力と基板温度の測定値を示す図。
【図6】Ta、PR面内均一性分布を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して記述する。本発明の実施形態にかかる プラズマ処理装置は、チャンバーと、チャンバーの内部に配置されている基板保持装置とを有する。また、プラズマ処理装置は、チャンバーの内部にプラズマを発生させるプラズマ発生装置と、基板保持装置を冷却する冷却装置と、チャンバーの内部を排気する排気装置と、を備える。図1はプラズマ処理装置1の概略構成を示す。図2は、このプラズマ処理装置1が備える、静電吸着ステージ(ESCステージ2)の上面図である。ESCステージ2は、静電吸着力により基板を吸着可能な吸着部と、吸着部によって吸着された基板の裏面側に、基板の温度を調整するために導入されたガスを封止することが可能な空間を形成する凹部と、を有する。凹部は、夫々区画された、第1領域、第1領域の周囲の第2領域、及び、第2領域の周囲の第3領域を有する。第1及び第3領域は、基板5の裏面側にガスを導入するガス導入系に接続されている。第2領域は、ガス導入系により導入されたガスを排気する排気系に接続されると共に、第1領域からのガスの流れ及び第3領域からのガスの流れを制限する規制部材を有する。ここで、規制部材は、第1領域および第2領域を区画する第1部材、及び、第2領域および第3領域を区画する第2部材を備えており、第1部材および第2部材の幅が、第3領域とその外側領域を区画する最外周部より小さい。図3はESCステージ2と冷却ジャケット3の断面図である。プラズマ処理装置1は、電気的に接地された金属製円筒容器(チャンバー)4を有しており、チャンバー4の内部に基板5を載置するためのホルダー6が配置されている。このホルダー6はアルミニウム等の導電性材料からなる冷却ジャケット3と冷却ジャケット3の上部に配置された、基板5を吸着する為のAl等の絶縁材料からなるESCステージ2を備えている。
【0015】
処理室7の側面には真空ポンプ(不図示)によって排気される排気ライン8が排気バルブ9をとおして接続されており、所定の真空度まで処理室7の内部を排気することが可能である。ホルダー6には、プラズマ生成及びイオン引き込み制御用の高周波電源10が接続されている。この高周波電源10は1.6MHzの高周波を印加することができる。チャンバー4の上部には、プラズマ発生部としてのベルジャー11が配置されており、その周縁部に1ターンのRFアンテナ12が13.56MHzの高周波電源13と接続されている。高周波電源13に高周波を印加することにより処理室7内に誘導結合プラズマを生成することができる。RFアンテナ12のさらに外側外周に二つの電磁コイル14、15が設置されている。
【0016】
チャンバー4の上部には、不図示のガスボンベと接続しているガス導入ライン16からガスバルブ17を通してプロセスガスが導入される。チャンバー4の外周側壁にはラインカスプ磁場を形成する永久磁石18が設置されている。
【0017】
冷却ジャケット3の内部には冷媒室が設けられておりチラーユニット(不示図)と接続されている。これにより冷却ジャケット3は所定の温度に冷却あるいは加熱保持されている。冷却ジャケット3にはさらに直流電源(不示図)を介して直流電圧が印加され、基板5とESCステージ2の間に発生するジョンソンラーベック力により基板5を吸着保持できる。
【0018】
上述のように所定の温度に保持された冷却ジャケット3とESCステージ2にて吸着された基板5の間隙にHeのような熱伝達ガスをHeガス導入ライン19及び20より導入し、He圧力コントローラー21、22及びHeガスバルブ23、24を通して所定の圧力に封止する。これによりプラズマから基板5に流入する熱を冷却ジャケット3に排出し、基板5の温度を一定に保つことができる。熱伝達用Heガスはそれぞれ独立に基板5の外側領域と内側領域に導入される。
【0019】
図2、3に示すようにESCステージ2の上面は外側に配置された外側領域25とその内側にある内側領域26の二つに分かれている。外側領域25と内側領域26の領域内部には、基板5との間で、基板5の温度を調整するためのHeガスを封止することが可能な空間を形成する凹状のくぼみが形成されており、基板5を支持するためのエンボス27が凸状に配置されている。
【0020】
外側領域25の最外周部には最外周シール28が凸状にESCステージ2の全周にわたって配置されている。最外周シール28と、後述する中間隔壁29、内周隔壁34は、絶縁材料で形成されており、エンボス27と同様に静電吸着力を発生する。外側領域25の内側境界には熱伝達ガスの流れを規制する中間隔壁29が周方向に沿って基板5に接触する高さまで突出して配置されている。中間隔壁29の更に内側にはHe排気溝30があり、He排気溝30内の複数(4ヶ)箇所にはHe排気口31が設けられておりHe排出ライン32に繋がっている。He排気溝30の巾は0.5mmである。外側領域25内にはHeガス導入ライン19に接続された外側He導入口33が4箇所(複数個)設けられている。尚、He排気口31の数および外側He導入口33の数は例示的なものであり、本発明の趣旨がこの例に限定されるものではない。図2の例では、外側He導入口33の周方向位置とHe排気口31の周方向位置とをずらしている。これにより熱伝達ガスを周方向に分散させることができる。He排出ライン32は、処理室7内部、排気ライン8による排出口の近傍に開放しており、熱伝達ガスはプロセスガスと共に排気される。なお、必ずしも処理室7と真空ポンプを共用する必要は無いが、共用化すると、低コスト化できる。
【0021】
He排気溝30の内側は、熱伝達ガスの流れを規制する規制部材としての内周隔壁34が周方向に沿って基板と接触する高さまで突出して設けられており、内側領域26内のHeガスを封止する構造になっている。内側領域26の中心には内側He導入口35があり内側He導入ライン20よりHeガスが供給される。この内側He導入口35は1つに限らず、複数、例えば周方向に等間隔で設けてもよい。
【0022】
また、図4は、図2,3に示す内周隔壁34と中間隔壁29をより詳細に示す図であり、内周隔壁34と中間隔壁29の基板との接触面(以下、単に「接触面」と記述することもある)には径方向に沿って延びる複数の溝34a、29aを形成されている。各溝34a,29aは周方向位置を互いにずらして形成されており、内側領域と外側領域が直接通じないようにされている。
【0023】
上述のような構成の装置で、冷却時には、内側領域26に導入された熱伝達ガスは内周隔壁34を介し、外側領域に導入された熱伝達ガスは中間隔壁29を介し、夫々導入と並行してHe排出ライン32に排気される。
【0024】
また、He排気溝30の両側に周状に形成された中間隔壁29,内周隔壁34は、内側領域と外側領域に圧力差を生じさせるだけでなく、内側領域又は外側領域内での周方向におけるコンダクタンスを均一にし、圧力分布を均一化する役割も果たす。例えば、内側領域内で熱伝達ガスを循環させるためには内周隔壁34を設けず、内側領域26内に排気口を設けることも考えられるが、この場合、熱伝達ガスの導入口から排気口に至る経路の流量が多くなりやすく、圧力分布が発生してしまうため、冷却ムラができる。本発明の方法によれば、この問題を解消できる。
【0025】
なお、使用法にもよるが、外側領域25と内側領域26で異なる温度にする場合には、外側領域25に対する内側領域26の容積比(面積比)は0.1〜10であることが好ましく、より好ましくは0.3〜5が良い。この時領域内にあるエンボス27の総体積は除いている。
【0026】
外側領域25と内側領域26とは熱伝達用Heガスの圧力が独立に制御でき、それぞれ10kPa以下が好ましい。あまりに圧力が高いと基板の保持力を確保できず、かつ、熱伝達効率の上昇も少ない。また、あまりに圧力が小さいと均一な冷却効果が得られない。また、熱伝達ガスは、マスフローコントローラなどを介し、流量を独立に制御して導入してもよい。圧力や流量は、目的の冷却温度等に応じ設定されるが、シーケンス制御によっても、温度センサなどを用いたフィードバック制御によってもよい。また、圧力や流量はプロセス中に変更してもよく、例えば、目的の冷却温度に至るまでは高圧、その後に低圧としてもよい。また、例えば、後述する実施例のように意識的に内側領域と外側領域に温度差を設ける場合に、目的の冷却温度に至るまでの降温過程でも温度差が保たれるように、外側領域と内側領域を異なる圧力で一定とすることもできる。
【0027】
またHe排気溝30の巾は0.25mm〜0.75mmがよい。He排気溝30の領域はHe圧力が小さいことにより基板5の積極的な熱伝導が行えない、基板5の温度を均一に制御する為にはできる限り小さいほうが好ましいが、Heガス排気コンダクタンスを確保する観点から0.5mmの巾が最適である。
【0028】
最外周シール巾は、外周から基板表面近傍への熱伝達ガスの漏れを防止可能なシール機能を確保するために中間隔壁巾や内周隔壁巾より大きいことが好ましく、0.75mm〜2mmが適当である。最適値としては1mmが良い。一方、中間隔壁29の巾や内周隔壁34の巾は0.5mm〜1mmが適当であり、最適値としては0.75mmが良い。
【0029】
また、中間隔壁29,内周隔壁34に溝を形成するのに限らず、ブラスト処理や研磨処理などの表面処理により接触面の粗さを調整したり、接触面の巾を調整したりしてもよい。
【0030】
なお、図1のプラズマ処理装置は、He圧力コントローラー21などのガス導入ライン16、19、20真空ポンプやオリフィスバルブなどを含む排気ライン8、及び、高周波電源13に指令信号を送り、所定のシーケンスを実行させるコントローラーconを備えて構成される。コントローラーconは、第1領域(内側領域26)に保持される基板部分の温度と、第3領域(外側領域25)に保持される基板部分の温度が異なる温度で平衡するように、ガスの導入量または圧力を制御する。ガス導入系は、コントローラーconで制御されたガスの導入量または圧力に従ってガスを第1領域(内側領域26)および第3領域(外側領域25)へ独立に導入可能である。コントローラーconは、制御プログラムを格納する記憶部51、プロセス制御の演算処理を行う演算処理部52を備える。演算処理部52は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)やマイクロコンピュータ等で構成できる。これにより、所定のシーケンスでプラズマ処理を実行する。なお、上述のように、熱伝達ガスは所定のシーケンスに従って、所定流量を導入することで内側領域と外側領域を所定の圧力にしてもよいし、圧力や基板温度に基づくフィードバック制御により流量を調整し、所定の基板温度に調整するものであってもよい。コントローラーconの記憶部51は、静電吸着される基板の裏面の内周側及び外周側に導入する熱伝導ガスの流量を独立に制御することで、基板の内周側と外周側とで異なる温度に調整するためのプログラムを有する。
【0031】
以上、本発明の最適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、基板を冷却する場合について説明したが、基板を昇温させる場合にも本発明は同様に適用できる。また以上説明した実施の形態では、プラズマ発生電極とバイアス電極型のプラズマ処理装置について説明したが、平行平板型一周波及び二周波印加型プラズマ処理装置及びマイクロ波を用いたプラズマ処理装置についても本発明を適用できる。
【0032】
また、外側領域と内側領域として2ゾーンについて説明したが、2ゾーン以上の領域を設けることもできる。また本発明はエッチング処理装置以外の基板処理として成膜処理装置にも適用できる。また、本発明で処理される基板は、半導体ウエハ、AlTiC基板、有機EL基板、FPD(フラットパネルディスプレイ)用の基板等のいずれのものであっても良い。
[実施例1]
上記構成のプラズマ処理装置の使用例としては、基板温度の面内分布を小さくするように、内側領域と外側領域で異なる圧力で熱伝達ガスを導入する使用例が挙げられる。ここで、従来型ESCステージと冷却ジャケットを用いて実施したエッチング性能及び基板温度の特性について説明する。従来型ESCステージは、中央の1箇所に熱伝達ガスの導入口、最外周にのみ熱伝達ガス封止用の隔壁を有するものであり、ESCの表面に排気口や内側領域、外側領域を分ける隔壁などを設置していないものである。
【0033】
図1に図示のプラズマ処理装置1に従来型ESCステージと従来型冷却ジャケットを装着し基板5を搬送設置する。ガス導入ライン16よりプロセスガスをチャンバー4に導入し、高周波電源13、内側の電磁コイル14及び外側の電磁コイル15を印加して誘導性プラズマを発生させる。これと同時にホルダー6に直流電圧(不図示)を印加して基板5を静電吸着させる。さらに基板5の裏面側に熱伝達用Heガスを導入し、He封止領域に所定の圧力のHeを封止する。実施した放電条件を以下に示す。
【0034】
CHOH=15sccm
ソース電力:1500W
バイアス電力:1300W
チャンバー4内の圧力:0.4Pa
ホルダー温度:40℃
内側コイル電流値:40A
外側コイル電流値:30A
ESC直流電圧:+500V
放電時間:3min
図5には熱伝達用He圧力を変更して基板5の温度を測定した結果を示す。なお基板5にはSiウエハ(以下、「ウエハ」という。)を用い、温度測定にはサーモラベルを使用し、面内の5点(中心及び端部(中心からの距離:65mm))を測定している。熱伝達用He圧力を増加させていくとウエハ裏面とESCステージとの間の熱伝達効率が上昇するため、ウエハ温度は低下していく(ホルダー6と基板5との温度差が小さくなる)傾向を示している。
【0035】
ウエハ面内の温度ばらつき(表1に示す)に関しては、熱伝達用He圧力が小さい時(0.5kPa,1.0kPa)は見られず、熱伝達用He圧力が大きい時(2kPa,4kPa)にはばらつきが見られる。すなわち積極的に熱伝達を行うHeガス圧力領域では基板裏面の圧力分布が影響して、ウエハの温度分布にばらつきが発生している。
【0036】
【表1】

【0037】
これらの結果よりウエハ裏面の熱伝達用Heガス圧力を夫々の領域において設定すれば、領域ごとに熱伝達効率が変わりウエハの面内にて温度分布を変えることが可能である。また大口径基板の冷却において発生する、裏面He封止圧力の不均一からなるウエハ温度のばらつきに対して、複数領域に分割して熱伝達Heガス圧力を、例えば、0.5kPa〜5kPaの範囲に制御することにより、基板温度をより均一に制御することが可能となることが分かる。
【0038】
[実施例2]
さらにはウエハ面内において意識的に温度分布を作るように、内側領域、外側領域の圧力(流量)を設定することも可能である。
【0039】
本実施例では、フォトレジストマスクを用いてTa膜をエッチング加工するときの夫々の膜に対するエッチングレートの面内均一性について実施したものである。実施例1と同様に図1のプラズマ処理装置1に従来型ESCステージと従来型冷却ジャケットを装着し基板5を搬送設置する。プロセスガスとしてCFを導入してウエハのエッチング処理を行う。実施した放電条件a及び条件bを以下に示す。なお、条件aと条件bは、ほぼ同一であるが、条件bの条件aとは異なるパラメータについては括弧内に示す。
【0040】
CF=10sccm
ソース電力:500W
バイアス電力:25W
チャンバー4内の圧力:0.6Pa (1.2Pa)
ホルダー温度:80℃
内側コイル電流値:30A (50A)
外側コイル電流値:15A (0A)
ESC直流電圧:+500V
図6はTa膜とフォトレジスト(PR)膜の上記条件a及び条件bの夫々における面内エッチング分布を例示する図である。図6はシート抵抗(ほぼ膜厚の逆数)の分布を等高線で示したものである。条件aにおいては、PR膜の面内均一性は非常に良好だが、Ta膜の面内均一性は良好ではない。一方条件bにおいてはTa膜の面内均一性は非常に良好だが、PR膜の面内均一性は良好ではない。PRマスクを使用してTa膜のエッチング加工を行う上では、両材料の面内均一性を良好にする必要がある。一般的にPRは温度に対するエッチングレートの依存性が強くTaはそれほど大きく依存しない。よって、図6に示すような場合は、PRについて径方向のエッチング分布が生じる条件bを選択し、かつ、ウエハ裏面の熱伝達He圧力を内側領域と外側領域にて変え、基板温度が内側と外側で異なるように調整する。これにより、条件により生じる分布が温度差により生じた分布で相殺され、両材料の面内均一性分布を最良の状態に調整することが可能となる。
【0041】
もちろん、Ta膜とPR膜の組合せに限定されない。積層膜のうち、エッチングレートの温度感受性の強い方の膜に径方向の分布の出る条件であって、他方の膜に良好な条件を採用する場合、相殺する分布を生じるように温度差を設けることで、処理の面内均一性を良好にできる。
【符号の説明】
【0042】
1 プラズマ処理装置
2 ESCステージ
3 冷却ジャケット
4 チャンバー
5 基板
6 ホルダー
7 処理室
8 排気ライン
9 排気バルブ
10 高周波電源
11 ベルジャー
12 RFアンテナ
13 高周波電源
14 内側コイル
15 外側コイル
16 ガス導入ライン
17 ガスバルブ
18 永久磁石
19 外側He導入ライン
20 内側He導入ライン
21 外側Heコントローラー
22 内側Heコントローラー
23 外側Heガスバルブ
24 内側Heガスバルブ
25 外側領域
26 内側領域
27 エンボス
28 最外周シール
29 中間隔壁
30 He排気溝
31 He排気口
32 He排出ライン
33 外側He導入口
34 内周隔壁
35 内側He導入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電吸着力により基板を吸着可能な吸着部と、前記吸着部によって吸着された基板の裏面側に空間を形成する凹部と、を有するステージを備え、
前記凹部は、夫々区画された、第1領域、前記第1領域の周囲の第2領域、及び、前記第2領域の周囲の第3領域を有し、
前記第1領域および第3領域は、前記基板の裏面側にガスを導入するガス導入系に接続され、
前記第2領域は、前記ガス導入系により導入された前記ガスを排気する排気系に接続されると共に、前記第1領域からの前記ガスの流れ及び第3領域からの前記ガスの流れを制限する規制部材を有することを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
前記規制部材は、前記第1領域および第2領域を区画する第1部材、及び、前記第2領域および第3領域を区画する第2部材を備え、
前記第1部材および前記第2部材の幅が、前記第3領域とその外側領域を区画する最外周部より小さいことを特徴とする請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記第1領域に保持される基板部分の温度と、第3領域に保持される基板部分の温度が異なる温度で平衡するように、前記ガスの導入量または圧力を制御する制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項4】
前記ガス導入系は、前記制御手段で制御された前記ガスの導入量または圧力に従って前記ガスを第1領域および前記第3領域へ独立に導入可能であることを特徴とする請求項3に記載の基板保持装置。
【請求項5】
前記第2領域の巾は0.5mmであることを特徴とする請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項6】
前記第1領域に対する前記第3領域の面積比が0.1〜10であることを特徴とする請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項7】
前記第1領域および前記第3領域に導入される前記ガスの圧力が0.5kPa〜5kPaの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項8】
チャンバーと、
前記チャンバーの内部に配置されている請求項1に記載の基板保持装置と、
前記チャンバーの内部にプラズマを発生させるプラズマ発生装置と、
前記基板保持装置を冷却する冷却装置と、
前記チャンバーの内部を排気する排気装置と、
を備えることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記第2領域に接続される排気系は、前記チャンバーの内部を排気する前記排気装置により排気を行うことを特徴とする請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記ガス導入系を制御する制御手段を更に備え、
前記制御手段は、静電吸着される基板の裏面の内周側及び外周側に導入する熱伝導ガスの圧力または流量を独立に制御することで、前記基板の内周側と外周側とで異なる温度に調整するプログラムを有する記憶部を含むことを特徴とする請求項8に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−119708(P2011−119708A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244221(P2010−244221)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】