説明

基板処理システムおよび基板処理方法

【課題】清浄な表面処理を実行可能な基板処理システムおよび基板処理方法を提供する。
【解決手段】搬送ロボット室11、第1ロードロック室21、予熱チャンバ31、処理チャンバ41、冷却チャンバ51および第2ロードロック室61のいずれにおいても、その内部圧力が大気圧以上に調整される。また、予熱チャンバ31内の圧力が搬送ロボット室11内の圧力よりも低くなるように圧力調整が実行される。したがって、プリベーク処理時に発生した酸素や水分などが予熱チャンバ31から搬送ロボット室11に流入するのを効果的に防止することができ、プリベーク処理後の基板Wに対する酸素や水分の再付着が抑制される。その結果、酸素や水分が処理チャンバ41に入り込むのを抑制することができ、各電子ビームキュアユニット4A、4Bにおいて清浄なキュア処理を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板の表面に形成された膜に電子ビームを照射して膜硬化などの表面処理を行う基板処理システムおよび基板処理方法に関するものである。なお、基板には、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(電界放出ディスプレイ:Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の各種基板(以下、単に「基板」という)が含まれる。
【背景技術】
【0002】
基板の表面に電子ビームを照射する技術は多方面で利用されているが、そのひとつとして半導体装置の製造工程における層間絶縁膜の改質技術がある。半導体装置の層間絶縁膜として熱CVDやプラズマCVDにより形成されたシリコン酸化膜が従来多用されていたが、配線間容量を低減するために、有機シリコン酸化膜あるいはシリコンを含まない有機膜などの低誘電率膜、いわゆるLow−k膜の採用が進んでいる。この低誘電率膜を製造する際に加熱処理のみでは十分な強度が得られないため、電子ビーム照射と加熱処理を組み合わせて層間絶縁膜を硬化させる基板処理技術が提案されている(例えば特許文献1)。また、層間絶縁膜中のポロジェン等の有機物を導入し、これを電子ビームで分解・ガス化して空孔を得ると同時に、末端基をガス化する誘電率を下げる処理も提案されている。
【0003】
この特許文献1に記載の表面処理装置では、真空チャンバの内部に半導体ウエハを支持する載置台が設けられる一方、真空チャンバの天井部に電子ビームを発生させるための電子ビーム照射機構が設けられている。そして、未処理の半導体ウエハが載置台上に載置されると、次のようにして半導体ウエハ上の層間絶縁膜に対して硬化処理が施される。つまり、排気管を通じて真空チャンバ内を排気するとともに、ガス導入管から窒素ガス等の所定の雰囲気ガスを導入し、真空チャンバ内を所定の圧力、例えば1.33〜66.5KPa(10〜500Torr)程度に減圧する。そして、載置台に組み込まれたヒータによって半導体ウエハを所定温度に加熱しつつ、電子ビームを半導体ウエハに照射する。これによって、半導体ウエハ上の層間絶縁膜が硬化する。
【0004】
また、上記表面処理装置によって層間絶縁膜を硬化させる際に、層間絶縁膜から水分や酸素などの各種物質が発生することがあり、これらが真空チャンバの内壁面、特に電子ビームを基板表面上の膜に照射するための窓に吸着して曇りを発生させることがあった。この問題を解消するため、特許文献1に記載の基板処理システムでは、表面処理装置の他に加熱装置が設けられ、表面処理装置による表面処理を行う前に、加熱装置によりプリベークが実行される。
【0005】
【特許文献1】特許第4056855号公報(段落0083、0084、図14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した従来の基板処理システムでは、基板表面上の膜に対する硬化処理(表面処理)を実行する前に加熱処理装置によるプリベーク処理により基板から水分や酸素などの各種物質を除去している。しかしながら、プリベーク処理により発生した各種物質が基板搬送を行う搬送室に拡散すると、その物質が半導体ウエハなどの基板の表面に再吸着されてしまう。そして、再吸着された物質が基板とともに表面処理装置に搬送されてしまうと、上記した問題(窓の曇り)以外に、表面処理時(電子ビームキュア処理時)に酸化などが発生して絶縁膜の品質劣化(k値や強度の低下)などの問題が発生してしまう。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、清浄な表面処理を実行可能な基板処理システムおよび基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる基板処理システムは、上記目的を達成するため、表面に膜が形成された基板を予熱チャンバ内で加熱して膜に対してプリベーク処理を施す加熱装置と、処理チャンバ内で基板の膜に電子ビームを照射して表面処理を施す表面処理装置と、予熱チャンバおよび処理チャンバに連結された搬送室と、搬送室内に設けられてプリベーク処理を受けた基板を予熱チャンバから搬送室を介して処理チャンバに搬送する搬送機構とを有する搬送装置と、搬送室内および予熱チャンバ内の圧力を調整する制御装置とを備え、制御装置は、搬送室内の圧力を大気圧以上に調整し、予熱チャンバ内の圧力を搬送室内の圧力よりも低い圧力に調整することを特徴としている。
【0009】
また、この発明にかかる基板処理方法は、上記目的を達成するため、表面に膜が形成された基板を予熱チャンバ内で加熱して膜に対してプリベーク処理を施す加熱工程と、 プリベーク処理を受けた基板を予熱チャンバから搬送室を介して処理チャンバに搬送する搬送工程と、処理チャンバ内に搬送された基板の膜に電子ビームを照射して表面処理を施す表面処理工程とを備え、搬送室内の圧力を大気圧以上に調整するとともに、予熱チャンバ内の圧力を搬送室内の圧力よりも低い圧力に調整することを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明(基板処理システムおよび基板処理方法)では、搬送室内の圧力が大気圧以上に調整されているため、大気中の酸素や水分の搬送室への流入が防止される。また、予熱チャンバ内で基板へのプリベーク処理により酸素や水分が発生するが、予熱チャンバ内の圧力が搬送室内の圧力よりも低いため、プリベーク処理時に発生した酸素や水分などの予熱チャンバから搬送室への流入が防止される。したがって、プリベーク処理後の基板に対する酸素や水分などの再付着が抑制され、酸素や水分が搬送室を介して処理チャンバに入り込むのを抑制し、清浄な表面処理が可能となる。
【0011】
ここで、予熱チャンバ内の圧力を大気圧よりも高い圧力に調整しながら、予熱チャンバ内を排気するのが望ましく、このような構成を採用することでプリベーク処理中に発生する水分や酸素を予熱チャンバから排出することができる。その結果、水分や酸素の基板への再付着をさらに効果的に抑制することができる。
【0012】
また、基板を表面処理温度まで加熱しながら基板の膜に電子ビームを照射する場合、加熱装置により基板を表面処理温度以上に加熱するのが望ましい。というのも、基板を予熱チャンバから搬送室を介して処理チャンバに搬送している間に基板の温度低下が避けられないからである。つまり、基板を表面処理温度以上に加熱しておくことで、搬送中に温度低下が発生したとしても、処理チャンバに搬送した時点での基板温度を表面処理温度と同じあるいは近い温度に維持することができ、表面処理を迅速に行うことができる。
【0013】
また、処理チャンバ内の圧力について搬送室内の圧力よりも高い圧力に調整するのが望ましく、これによって搬送室内の水分や酸素が処理チャンバに流入するのを防止して表面処理をさらに良好に行うことができる。
【0014】
また、表面処理装置による表面処理が行われた処理済基板を冷却チャンバ内で冷却するために冷却装置を設けてもよく、この場合、冷却チャンバ内の圧力を搬送室内の圧力と同じに調整してもよい。
【0015】
また、システム外部から基板を基板処理システムに搬入するために、基板を一時的に収納する第1ロードロック室を有するローダを設け、第1ロードロック室に収納された基板を搬送室を経由して予熱チャンバに搬送してもよい。この場合、第1ロードロック室内の圧力を大気圧よりも高く設定することでシステム外部から第1ロードロック室への酸素や水分などの流入が防止される。また、第1ロードロック室内の圧力が搬送室内の圧力よりも低い圧力に調整されることで第1ロードロック室内の酸素や水分が搬送室に流入するのが防止される。また、システム外部から第1ロードロック室への酸素や水分などの流入をより効果的に防止するために、ローダを次のように構成してもよい。すなわち、基板を搬入するための搬入開口部を搬送室との連結位置と異なる位置で第1ロードロック室に設けるとともに、第1ロードロック室への基板の搬入方向に延びる鍔部を搬入開口部に対して設ける。そして、第1ロードロック室に不活性ガスを供給して第1ロードロック室への基板の搬入時に搬入開口部から第1鍔部に沿って搬入方向と反対方向に不活性ガスの気流を形成する。この気流の流速は、大気成分の逆拡散を防ぐに十分な値とする。
【0016】
さらに、表面処理装置による表面処理が行われた処理済基板を基板処理システムから搬出するために、基板を一時的に収納する第2ロードロック室を有するアンローダを設け、処理済基板を搬送室を経由して第2ロードロック室に搬送してもよい。この場合も、ローダを設けた場合と同様に構成するのが望ましい。つまり、第2ロードロック室内の圧力を大気圧よりも高くすることでシステム外部から第2ロードロック室への酸素や水分などの流入を防止し、搬送室内の圧力よりも低い圧力に調整することで第2ロードロック室内の酸素や水分が搬送室に流入するのを防止してもよい。また、第1ロードロック室と同様に第2ロードロック室を構成するとともに、第2ロードロック室に不活性ガスを供給して第2ロードロック室からの搬出(アンロード)時に搬出開口部から第2鍔部に沿って搬出方向と反対方向に不活性ガスの気流を形成してもよい。この気流の流速は、大気成分の逆拡散を防ぐに十分な値とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、搬送室内の圧力を大気圧以上に調整して大気中の酸素や水分がロードロック室を介して搬送室に流入するのを防止するとともに、予熱チャンバ内の圧力を搬送室内の圧力よりも低くなるように調整してプリベーク処理時に発生した酸素や水分などが予熱チャンバから搬送室に流入するのを防止しているので、酸素や水分が処理チャンバに入り込むのを抑制して清浄な表面処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1はこの発明にかかる基板処理システムの一実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板処理システムの電気的構成を示すブロック図である。さらに、図3はこの基板処理システムの動作を示す図であり、上段に各ユニット内の圧力を示す一方、下段に基板温度を示している。以下、上記図面を参照しつつ基板処理システムの構成および動作について説明する。
【0019】
この基板処理システムは、複数の基板Wを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)から取り出した未処理基板Wに対して加熱処理および硬化処理を施した後に基板Wを常温に冷却してFOUPに戻すという一連の処理を実行する。このために、基板処理システムでは、搬送ユニット1を中心として当該搬送ユニット1の周囲に、ローダ2と、ホットプレート(加熱装置)3と、2つの電子ビームキュアユニット(表面処理装置)4A、4Bと、コールドプレート(冷却装置)5と、アンローダ6が配置されている。
【0020】
搬送ユニット1では、搬送ロボット室(搬送室)11内に搬送ロボット12が配置されており、本発明の「搬送機構」として機能する。そして、システム全体を制御する制御ユニット(制御装置)9からの制御指令に応じてユニット制御部14が搬送ロボット12の各部を制御し、搬送ロボット12によって基板Wを上記システム構成要素2、3、4A、4B、5、6の間で搬送ロボット室11を経由して搬送する。また、この搬送ロボット室11には給排気部13が接続されており、ユニット制御部14により給排気部13から搬送ロボット室11に供給する窒素ガスの流入および搬送ロボット室11からの排気がそれぞれ制御可能となっている。そして、ユニット制御部14は搬送ロボット室11内の圧力を検出する圧力センサ15からの信号を受け、当該信号に基づき給排気部13を例えばフィードバック制御して搬送ロボット室11内をシステム周辺の圧力、つまり大気圧P0よりも高い所定圧力(図3中の圧力P2)に調整する。
【0021】
ローダ2はシステム外部から搬入される未処理基板Wを一時的に収納する第1ロードロック室21を有している。この第1ロードロック室21はFOUPに対して基板Wの搬入出を行う搬送ロボット8に対向する側面にローダ用開口(図示省略)を有するとともに、第1ロードロック室21に対してローダ用開口を開閉するシャッター72Bが設けられている。また、第1ロードロック室21は搬送ロボット室11と接続されるとともに、搬送ロボット室11と第1ロードロック室21の間にシャッター72Aが配置されている。さらに、当該第1ロードロック室21には、給排気部22が接続されており、ローダ2を制御するユニット制御部23により給排気部22から第1ロードロック室21に供給する窒素ガスの流入および第1ロードロック室21からの排気がそれぞれ制御可能となっている。そして、ユニット制御部23は第1ロードロック室21内の圧力を検出する圧力センサ24からの信号を受け、当該信号に基づき給排気部22を例えばフィードバック制御して第1ロードロック室21内を大気圧P0よりも高く、しかも搬送ロボット室11内の圧力P2よりも低い圧力P1に調整する。
【0022】
基板処理システムにより未処理基板に対して一連の処理を施す際には、圧力調整された第1ロードロック室21に対し、シャッター72Bを開いた状態で搬送ロボット8がFOUPから未処理基板W、つまり表面に未硬化状態の層間絶縁膜が塗布された基板W、あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition)により成膜された基板Wを第1ロードロック室21に搬入する(図3中のLD工程)。また、第1ロードロック室21で一時的に待機させた後、制御ユニット9からの搬送指令に応じてシャッター72Aが開く。これに続いて、搬送ロボット室11に配置された搬送ロボット12がハンド(図示省略)を第1ロードロック室21に移動させて未処理基板Wを受け取り、搬送ロボット室11に搬送する(搬送工程aの前半)。なお、基板Wのロードロック室2の載置部から搬送ロボット11への受け渡しの際、基板Wに搬送ロボット11がアクセスできるように基板Wを載置部から上昇させる突き上げピンを備えるが、図示説明を省略する。この突き上げピンはロードロック室6、ホットプレート3、コールドプレート5にも同様な構造を備えるが、以下の説明において説明を省略する。
【0023】
搬送ロボット室11に対してホットプレート3が接続されている。ホットプレート3は予熱チャンバ31を有しており、当該予熱チャンバ31内で基板Wを加熱してプリベーク処理を実行する。また、基板Wを加熱するための構成については従来周知の構成を採用することができ、例えば次のように構成してもよい。予熱チャンバ31には、基板Wを保持可能なステージが設けられている。このステージの上面には、球状のプロキシミティボールが複数個設けられており、各ボールの球面頂部で基板Wの裏面を支持可能となっている。これにより基板表面を上方に向けた水平状態で基板Wはステージの上面から僅かに浮いた状態で支持される。こうして支持された基板Wの周縁部を取り囲むようにピンが複数本だけステージの上面から突設されて基板Wの水平方向における位置ずれを防止している。また、ステージにはヒータが内蔵されており、ユニット制御部32からの動作指令に応じてヒータが作動することで基板Wを裏面側から加熱して次の電子ビームキュアユニット4A、4Bで実行される硬化処理に適した表面処理温度(図3中のT2)よりも高い温度T1まで昇温可能となっている。この温度T1としては、予熱チャンバ31から搬送ロボット室11を経由して電子ビームキュアユニットの処理チャンバ41に搬送する間での基板Wの温度降下を考慮して設定するのが望ましく、この実施形態では約50゜Cに設定している。なお、基板Wの温度の均一性が厳しく要求されない場合には、プロキシミティボールを無くしてステージ上に基板Wを接触載置するようにしてもよい。
【0024】
このように構成されたホットプレート3にも、給排気部33および圧力センサ34が設けられ、予熱チャンバ31内の圧力を調整可能となっている。すなわち、予熱チャンバ31には、給排気部33が接続されており、ユニット制御部32により給排気部33から予熱チャンバ31に供給する窒素ガスの流入および予熱チャンバ31からの排気がそれぞれ制御可能となっている。そして、ユニット制御部32は予熱チャンバ31内の圧力を検出する圧力センサ34からの信号を受け、当該信号に基づき給排気部33を例えばフィードバック制御して予熱チャンバ31内を大気圧P0よりも高く搬送ロボット室11内の圧力P2よりも低い圧力P1に調整する。このため、予熱チャンバ31内に発生した水分や酸素は搬送ロボット室11に流入することなく、しかも給排気部33の排気部(図示省略)を介して予熱チャンバ31から確実に排出される。なお、この実施形態では、第1ロードロック室21および予熱チャンバ31を同一圧力P1に調整しているが、両者を一致させることは必須事項ではない。
【0025】
そして、第1ロードロック室21から搬送されてきた未処理基板Wは搬送ロボット12によりシャッター73を介して予熱チャンバ31に搬送され(搬送工程aの後半)、予熱チャンバ31内でプリベーク処理を受ける。つまり、制御ユニット9からの搬送指令に応じてシャッター73が開いた後、搬送ロボット12が未処理基板Wを保持しているハンドを予熱チャンバ31に移動させて未処理基板Wをステージのプロキシミティボール上に載置する。これによって未処理基板Wが温度T1まで加熱されて層間絶縁膜から水分や酸素などの各種物質が除去される(HP工程)。例えば層間絶縁膜が連続気孔を有する低誘電率膜である場合には、電子ビームキュアユニットでの表面処理温度T2は200゜C程度であるため、ホットプレート3での加熱温度T1は250゜C程度に設定するのが望ましい。また、層間絶縁膜が独立気孔を有する低誘電率膜である場合には、電子ビームキュアユニットでの表面処理温度T2は300゜C程度であるため、ホットプレート3での加熱温度T1は350゜C程度に設定するのが望ましい。
【0026】
このようにプリベーク処理された基板Wに対して電子ビームキュア処理を施すために、当該システムでは搬送ロボット室11に電子ビームキュアユニット4A、4Bが接続されている。これらの電子ビームキュアユニット4A、4Bは任意であるが、本実施形態では両者ともに以下に説明する構成を有している。電子ビームキュアユニット4A(4B)では、処理チャンバ41の中央底部にステージが設けられており、搬送ロボット12により搬送されてきたプリベーク処理済の基板Wがその表面(層間絶縁膜形成面)を天井側に向けた状態でステージに保持可能となっている。このステージには、ヒータが内蔵されており、層間絶縁膜のキュア処理に適した温度T1に基板Wを加熱する。また、処理チャンバ41の天井側には電子ビーム発生部が配置されており、基板W上の層間絶縁膜に向けて電子ビームを照射可能となっている。このように電子ビームキュアユニット4A(4B)は基板Wを表面処理温度T2に加熱しながら基板Wの層間絶縁膜に電子ビームを照射して層間絶縁膜を硬化する。
【0027】
電子ビームキュアユニット4A、4Bとしては、例えば次のような装置を採用してもよい。この実施形態では、電子ビームキュアユニットは基板Wを保持するステージを有しており、当該ステージに保持された基板Wに出射窓を対向させた状態で電子放出部から放出される電子ビームを所定方向に走査しながら出射窓を介して出射させて基板Wの表面に電子ビームをライン状に照射する。また、ステージは電子ビーム走査方向と異なる移動方向にステージを相対移動される。こうして、基板表面全体に電子ビームが照射される。また、ステージにはヒータが設けられており、基板Wを表面処理温度に加熱する。
【0028】
また、このように構成された電子ビームキュアユニット4A、4Bにも、給排気部43および圧力センサ44が設けられ、処理チャンバ41内の圧力が調整される。すなわち、処理チャンバ41には、給排気部43が接続されており、ユニット制御部42により給排気部43から処理チャンバ41に供給する窒素ガスの流入および処理チャンバ41からの排気がそれぞれ制御可能となっている。そして、ユニット制御部42は処理チャンバ41内の圧力を検出する圧力センサ44からの信号を受け、当該信号に基づき給排気部43を例えばフィードバック制御して処理チャンバ41内を搬送ロボット室11内の圧力P2よりも高い圧力P4に調整する。このため、仮に搬送ロボット室11内に水分や酸素が存在していたとしても、処理チャンバ41が搬送ロボット室11に比べて相対的に高圧環境であるため、搬送ロボット室11から処理チャンバ41への水分等の流入が確実に防止される。
【0029】
そして、予熱チャンバ31からシャッター73、搬送ロボット室11およびシャッター74A(または74B)を介してプリベーク処理済基板Wが搬送ロボット12によって処理チャンバ41に搬送され(搬送工程b)、上記のようにしてキュア処理を受ける(EB工程)。なお、キュア処理を行う際の表面処理温度T2については、上記したように層間絶縁膜の構成に応じて設定するのが望ましく、表面処理温度T2を適正化することで良好なキュア処理を行うことができる。
【0030】
電子ビームキュア処理を受けた基板Wを室温Trtまで冷却するために、当該基板処理システムでは搬送ロボット室11にコールドプレート(冷却装置)5が接続されている。このコールドプレート5は冷却チャンバ51を有しており、各電子ビームキュアユニット4A、4Bからシャッター74A(または74B)、搬送ロボット室11およびシャッター75を介してキュア処理済の基板Wが搬送ロボット12によって冷却チャンバ51に搬送され(搬送工程c)、ユニット制御部52がユニット各部を制御してキュア処理済基板Wを冷却して基板温度を室温Trt程度まで低下させる(CP工程)。
【0031】
また、コールドプレート5では、ユニット制御部52、給排気部53および圧力センサ54が設けられており、上記ユニットと同様にして内部圧力が調整される。すなわち、冷却チャンバ51には、給排気部53が接続されており、ユニット制御部52により給排気部53から冷却チャンバ51に供給する窒素ガスの流入および冷却チャンバ51からの排気がそれぞれ制御可能となっている。そして、ユニット制御部52は冷却チャンバ51内の圧力を検出する圧力センサ54からの信号を受け、当該信号に基づき給排気部53を例えばフィードバック制御して冷却チャンバ51内を搬送ロボット室11内の圧力P2よりも高い圧力P3に調整する。このため、仮に搬送ロボット室11内に水分や酸素が存在していたとしても、冷却チャンバ51が搬送ロボット室11に比べて相対的に高圧環境であるため、搬送ロボット室11から冷却チャンバ51への水分等の流入が確実に防止される。なお、冷却チャンバ51内の圧力については上記したように設定するのみならず、例えば搬送ロボット室11内の圧力P2と同じに設定してもよい。この場合、水分や酸素が存在すると冷却チャンバに拡散する可能性があるが、基板に対するキュア処理が終了しており、デバイスによっては問題にならないこともある。この場合、圧力検出や圧力制御手段が不要となり、コストを下げることができる。
【0032】
さらに、搬送ロボット室11に対して上記ユニット2、3、4A、4B、5以外にアンローダ6が接続されている。この上記一連の処理を受けた処理済基板Wを一時的に収納する第2ロードロック室61を有している。この第2ロードロック室61はFOUPに対して基板Wの搬入出を行う搬送ロボット8に対向する側面にアンローダ用開口(図示省略)を有するとともに、第2ロードロック室61に対してアンローダ用開口を開閉するシャッター76Bが設けられている。また、第2ロードロック室61は搬送ロボット室11と接続されるとともに、搬送ロボット室11と第2ロードロック室61の間にシャッター76Aが配置されている。さらに、当該第2ロードロック室61には、給排気部63が接続されており、アンローダ6を制御するユニット制御部62により給排気部63から第2ロードロック室61に供給する窒素ガスの流入および第2ロードロック室61からの排気がそれぞれ制御可能となっている。そして、ユニット制御部62は第2ロードロック室61内の圧力を検出する圧力センサ64からの信号を受け、当該信号に基づき給排気部63を例えばフィードバック制御して第2ロードロック室61内を大気圧P0よりも高く搬送ロボット室11内の圧力P2よりも低い圧力P1に調整する。
【0033】
そして、処理済基板Wが冷却チャンバ51からシャッター75、搬送ロボット室11およびシャッター76Aを介して第2ロードロック室61に搬送されてくると、アンローダ6は当該基板Wを一時的に受け取る(搬送工程d)。また、制御ユニット9からの搬送指令に応じてシャッター76Bが開くとともに、搬送ロボット8が第2ロードロック室61から処理済基板をFOUPに搬送する(ULD工程)。こうして、1枚の基板Wに対して一連の処理が施される。
【0034】
以上のように、この実施形態によれば、搬送ロボット室11、第1ロードロック室21、予熱チャンバ31、処理チャンバ41、冷却チャンバ51および第2ロードロック室61のいずれにおいても、その内部圧力を大気圧以上に調整しているため、大気中の酸素や水分がシステム内に流入するのを防止することができる。また、予熱チャンバ31内で基板Wへのプリベーク処理により酸素や水分が発生するが、予熱チャンバ31内の圧力P1が搬送ロボット室11内の圧力P2よりも低くなるように圧力調整している。したがって、プリベーク処理時に発生した酸素や水分などが予熱チャンバ31から搬送ロボット室11に流入するのを効果的に防止することができ、プリベーク処理後の基板Wに対して酸素や水分が再付着するのを抑制する。その結果、酸素や水分が処理チャンバ41に入り込むのを抑制することができ、各電子ビームキュアユニット4A、4Bにおいて清浄なキュア処理を行うことができる。
【0035】
また、予熱チャンバ31内を給排気部33により排気しているため、プリベーク処理中に発生する水分や酸素を予熱チャンバ31から効率的に排出することができ、水分や酸素の基板Wへの再付着をさらに効果的に抑制することができる。
【0036】
また、プリベーク処理により基板Wが表面処理温度T2よりも高い温度T1になった状態で予熱チャンバ31から処理チャンバ41に搬送しているため、例え基板搬送中に基板温度が低下したとしても、処理チャンバ41に搬送した時点での基板温度を表面処理温度と同じあるいは近い温度に維持することができ、キュア処理を迅速に行うことができる。したがって、基板搬送中の温度低下量ΔTを考慮して温度T1を設定するのが望ましく、例えば温度T1を温度(T2+ΔT)に設定してもよい。
【0037】
さらに、処理チャンバ41内の圧力P4が搬送ロボット室11内の圧力P2よりも高い圧力に調整しているため、搬送ロボット室11内の水分や酸素が処理チャンバ41に流入するのを効果的に防止してキュア処理をさらに良好に行うことができる。
【0038】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、ローダ2および/またはアンローダ6を図4に示すように構成してもよい。図4はこの発明にかかる基板処理システムの他の実施形態を示す図である。ここでは、ローダ2の変形例について説明するが、アンローダ6についても同様である。
【0039】
ここでは、図4に示すように、システム外部から基板Wを搬入するための搬入開口部(シャッター72Bの配設位置)に対して鍔部25が第1ロードロック室21への基板Wの搬入方向(同図の左手方向)に延設されている。また、シャッター72Bが開いた状態で給排気部22を構成する給気部22aおよび排気部22bをユニット制御部23が制御して搬入開口部から鍔部25に沿って搬入方向と反対方向(同図の左手方向)に窒素ガスの気流を形成する(同図の白抜矢印)。すなわち、基板Wを搬入する際には、シャッター72A、72Bをそれぞれ「閉成」、「開成」した状態で、給気部22aによる第1ロードロック室21への窒素ガスの供給流量を、排気部22bによる第1ロードロック室21から排気流量よりも高く設定して白抜矢印で示す窒素ガス流を形成する。これによって、システム外部から第1ロードロック室21への酸素や水分などの流入をより効果的に防止することができる。
【0040】
また、上記実施形態では、各ユニット2、3、4A、4B、5、6にユニット制御部を設けているが、一部または全部のユニットを制御ユニット9により制御してもよい。また、複数のユニットを1つのユニット制御部で制御してもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、ホットプレート3およびコールドプレート5をそれぞれ1台ずつ設置しているが、これらの設置台数は「1」に限定されるものではなく、複数台設けてもよい。例えばM台(M≧2)のホットプレート3を上下方向に積層設置するとともに、N台(N≧2)のコールドプレート5を上下方向に積層設置してもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、搬送ロボット室11、第1ロードロック室21、予熱チャンバ31、処理チャンバ41、冷却チャンバ51および第2ロードロック室61に対して窒素ガスを供給して内圧を調整しているが、窒素ガスの代わりに他の不活性ガスを用いてもよい。
【0043】
さらに、上記実施形態では、基板表面に向けて電子ビームを照射して未硬化状態の層間絶縁膜を硬化する電子ビームキュアユニット(表面処理装置)を装備する基板処理システムに対して本発明を適用している。しかしながら、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、表面に膜が形成された基板を予熱チャンバ内で加熱して膜に対してプリベーク処理を施す加熱装置と、プリベーク処理を受けた基板の膜に電子ビームを照射して表面処理を施す表面処理装置とを装備する基板処理システム全般に本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般の表面に形成された膜に電子ビームを照射して膜硬化などの表面処理を行う基板処理システムおよび基板処理方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明にかかる基板処理システムの一実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板処理システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1の基板処理システムの動作を示す図である。
【図4】この発明にかかる基板処理システムの他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1…搬送ユニット(搬送装置)
2…ローダ
3…ホットプレート(加熱装置)
4A…電子ビームキュアユニット(表面処理装置)
5…コールドプレート(冷却装置)
6…アンローダ
9…制御ユニット(制御装置)
11…搬送ロボット室(搬送室)
12…搬送ロボット(搬送機構)
22、63…給排気部(気流形成部)
22a…給気部(気流形成部)
22b…排気部(気流形成部)
25…鍔部
31…予熱チャンバ
41…処理チャンバ
51…冷却チャンバ
P0…大気圧
P1、P2、P3、P4…圧力
T2…表面処理温度
W…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に膜が形成された基板を予熱チャンバ内で加熱して前記膜に対してプリベーク処理を施す加熱装置と、
処理チャンバ内で前記基板の膜に電子ビームを照射して表面処理を施す表面処理装置と、
前記予熱チャンバおよび前記処理チャンバに連結された搬送室と、前記搬送室内に設けられてプリベーク処理を受けた前記基板を前記予熱チャンバから前記搬送室を介して前記処理チャンバに搬送する搬送機構とを有する搬送装置と、
前記搬送室内および前記予熱チャンバ内の圧力を調整する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記搬送室内の圧力を大気圧以上に調整し、前記予熱チャンバ内の圧力を前記搬送室内の圧力よりも低い圧力に調整することを特徴とする基板処理システム。
【請求項2】
前記制御装置は前記予熱チャンバ内の圧力を大気圧よりも高い圧力に調整し、
前記加熱装置は前記予熱チャンバ内を排気する排気手段を有する請求項1記載の基板処理システム。
【請求項3】
前記表面処理装置は前記基板を表面処理温度まで加熱しながら前記基板の膜に電子ビームを照射し、
前記加熱装置は前記基板を前記表面処理温度以上に加熱する請求項1または2記載の基板処理システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記処理チャンバ内の圧力を前記搬送室内の圧力よりも高い圧力に調整する請求項1ないし3のいずれか一項に記載の基板処理システム。
【請求項5】
前記搬送室に連結された冷却チャンバを有し、前記表面処理装置による表面処理が行われた処理済基板を前記冷却チャンバ内で冷却する冷却装置をさらに備え、
前記制御手段は前記冷却チャンバ内の圧力を前記搬送室内の圧力と同じに調整する請求項1ないし4のいずれか一項に記載の基板処理システム。
【請求項6】
システム外部から搬入される基板を一時的に収納する第1ロードロック室を有するローダをさらに備え、
前記第1ロードロック室は前記搬送装置の前記搬送室に連結され、
前記搬送機構は前記第1ロードロック室に収納された前記基板を前記搬送室を経由して前記予熱チャンバに搬送し、
前記制御手段は前記第1ロードロック室内の圧力を大気圧よりも高く、しかも前記搬送室内の圧力よりも低い圧力に調整する請求項1ないし5のいずれか一項に記載の基板処理システム。
【請求項7】
前記第1ロードロック室は前記基板を搬入するための搬入開口部を前記搬送室との連結位置と異なる位置に有するとともに、前記第1ロードロック室への前記基板の搬入方向に延びる第1鍔部が前記搬入開口部に対して設けられ、
前記ローダは前記第1ロードロック室に不活性ガスを供給して前記第1ロードロック室への前記基板の搬入時に前記搬入開口部から前記第1鍔部に沿って前記搬入方向と反対方向に不活性ガスの気流を形成する第1気流形成部を有する請求項6記載の基板処理システム。
【請求項8】
前記表面処理装置による表面処理が行われた処理済基板を一時的に収納する第2ロードロック室を有するアンローダをさらに備え、
前記第2ロードロック室は前記搬送装置の前記搬送室に連結され、
前記搬送機構は、前記表面処理装置による表面処理が行われた、処理済基板を前記搬送室を経由して前記第2ロードロック室に搬送し、
前記制御手段は前記第2ロードロック室内の圧力を大気圧よりも高く、しかも前記搬送室内の圧力よりも低い圧力に調整する請求項1ないし7のいずれか一項に記載の基板処理システム。
【請求項9】
前記第2ロードロック室は前記基板を搬出するための搬出開口部を前記搬送室との連結位置と異なる位置に有するとともに、前記第2ロードロック室からの前記基板の搬出方向に延びる第2鍔部が前記搬出開口部に対して設けられ、
前記アンローダは前記第2ロードロック室に不活性ガスを供給して前記第2ロードロック室からの前記基板の搬出時に前記搬出開口部から前記第2鍔部に沿って前記搬出方向に不活性ガスの気流を形成する第2気流形成部を有する請求項8記載の基板処理システム。
【請求項10】
表面に膜が形成された基板を予熱チャンバ内で加熱して前記膜に対してプリベーク処理を施す加熱工程と、
プリベーク処理を受けた前記基板を前記予熱チャンバから搬送室を介して処理チャンバに搬送する搬送工程と、
前記処理チャンバ内に搬送された前記基板の膜に電子ビームを照射して表面処理を施す表面処理工程とを備え、
前記搬送室内の圧力を大気圧以上に調整するとともに、前記予熱チャンバ内の圧力を前記搬送室内の圧力よりも低い圧力に調整することを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−129808(P2010−129808A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303553(P2008−303553)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】