説明

基板処理方法および基板処理装置

【課題】液晶表示パネルに用いられるガラス基板などの基板を薬液や純水などの処理液を供給して処理する際の各処理液の温度の差が大きいことにより基板が撓んでしまうことが抑制される基板処理方法を提供すること。
【解決手段】一定方向に搬送される基板の処理面に薬液を供給して薬液処理するに際し、隔壁で仕切られる複数の薬液処理室の各薬液処理室にて前記基板に供給される各薬液の温度を前記基板の搬送方向の上流側から下流側に向けて段階的に下げるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルに用いられるガラス基板などの基板を搬送しながらその基板に薬液を供給する基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータやテレビなどの家電製品の表示部として、液晶表示パネルが広く用いられている。液晶表示パネルは、一般的に薄膜トランジスタ(TFT)基板とカラーフィルタ(CF)基板とからなる一対のガラス基板が所定の間隔を置いて平行に対向配置され、両基板間に液晶が充填された構成をなしている。
【0003】
例えばTFT基板を製造するにあたっては、ガラス基板表面への成膜処理、レジスト膜形成処理、露光処理、レジスト現像処理、エッチング処理、レジスト剥離処理等の複数の処理工程を順次経ることによりガラス基板表面にTFT等が形成される。
【0004】
ガラス基板表面にTFT等の回路を形成するためには、ガラス基板表面に金属膜を成膜処理により形成した後に、この金属膜を所定のパターンにエッチング処理する方法が採られている。このエッチング処理の際のマスクとして感光性樹脂であるレジストが用いられており、エッチング処理後にレジストは剥離処理により除去されることになる。
【0005】
ガラス基板表面のレジスト剥離処理には剥離液をガラス基板の表面および裏面にシャワー方式で供給する剥離処理装置が採用されている。図7はレジスト剥離処理装置を上方から見た概略構成を示した図である。この場合、レジスト剥離装置201は、ガラス基板202を所定の角度、例えば水平方向に対して垂直方向に75度に傾けて搬送ローラ209により搬送しながらレジスト剥離処理を行う装置である。
【0006】
図示されるようにレジスト剥離処理装置201は、複数の剥離室230〜280が順に並設された構成となっており、ガラス基板202はニュートラル室220から1枚ずつ順に各剥離室230〜280に搬送されて、剥離液204によるレジスト剥離処理が施される。各剥離室230〜280間は隔壁231〜291で仕切られており、隔壁231〜291にはスリット状に開口した基板挿通口231a〜291aが設けられている。
【0007】
また、各剥離室230〜280にはエア噴出手段212が設けられており、このエア噴出手段212から高圧のエアを噴出させてガラス基板202の表面および裏面に付着した剥離液204や異物を除去することが行われている。通常、エア噴出手段212は、例えば図示されるように剥離室230で用いられた剥離液204や異物が隣りの剥離室240に持ち込まれないようにするために隔壁241に形成された基板挿通口241aの前後に配置されている。
【0008】
各剥離室230〜280の内部は、図示しない排気手段により各剥離室230〜280内部の排気が強制的に行われている。剥離室内部の排気が行われることにより、剥離室内部から外部に向かって気流が生じ、ガラス基板204の上方に広がった剥離液204の蒸気やミストが排気されている。剥離液204は通常、人体に毒性がある薬液であるため、剥離室から外部に漏れ出さないようにするためにこのような排気が行われている。
【0009】
また、このような排気は、例えば図示されるように剥離室230で用いられた剥離液204の蒸気やミスト、およびそれらに含まれる異物が隣りの剥離室240に漏れ出さないようにするためでもある。特定の剥離室で異物が大量に発生した場合に、その異物が他の剥離室に進入してしまうと、レジスト剥離装置全体をメンテナンスすることになってしまうからである。
【0010】
一般的に、ガラス基板202に供給される剥離液204は、その温度が高いほどレジストを剥離するのに要する時間を短縮することができるため、図示されるように例えば各剥離室230〜280においては剥離液204の温度は80℃の高温に設定されている。各剥離室230〜280に供給される剥離液204は、貯留タンク206からポンプ214を介してノズル207よりシャワー状にガラス基板202に向けて供給される。
【0011】
貯留タンク206の内部には、剥離液204を加熱するための剥離液加熱手段208が設けられている。剥離液加熱手段208は、スチーム配管208aを備えており、このスチーム配管20aを剥離液204に浸漬させて貯留タンク206内の剥離液204の温度を80℃に昇温させている。この場合、スチーム配管208aの中には高温の水蒸気が流れている。
【0012】
そして、剥離室230〜280を経たガラス基板202は、水洗室290に搬送され、純水205によりガラス基板202の表面および裏面が水洗され、その後図示しない基板乾燥室において、エア等により乾燥が行われる。尚、本発明に関連する先行技術文献として下記特許文献が挙げられる。
【0013】
【特許文献1】特開2003−270803号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述したレジスト剥離装置201では、ガラス基板202は各剥離室230〜280において80℃の剥離液204によって処理された後、水洗室290に搬送されて、室温に近い25℃の純水205により水洗されるため、ガラス基板202の水洗室290への進入時における温度変化が大きく、搬送ローラ209の上でガラス基板202が大きく撓んでしまい、図示されるように基板挿通口291aやエア噴出手段212にガラス基板202が接触して、そのガラス基板202表面に傷が付いてしまうという問題が発生していた。
【0015】
これは、80℃の剥離液204の供給により膨張しているガラス基板202が、25℃の純水205の供給により急激に冷やされて収縮が生じることによりガラス基板202に温度勾配が発生し、ガラス基板202の膨張部分と収縮部分との間で、ガラス基板202が撓んでしまうことが原因である。
【0016】
近年、液晶表示パネルなどの平面型の表示パネルに用いられるガラス基板は大型化(第8世代:2160mm×2460mm)されてきていることに伴い、このようなガラス基板202の撓みが大きくなってしまっていた。
【0017】
また、ガラス基板202を水平状態にして処理を行う場合は、ガラス基板202の自重によりこのような撓みは抑制されるが、上述したレジスト剥離装置201などの基板処理装置が設置されるクリーンルームにおいては、装置の設置面積を縮小するために、上述したようにガラス基板202を水平方向に対して垂直方向に75度に傾けて処理することで装置の小型化がなされていることから、このようにガラス基板202をほぼ垂直状態で処理する場合は、ガラス基板202の自重によってもこのような撓みを抑制することができない。
【0018】
この問題の対策案として、ガラス基板202が撓んでも基板挿通口291aと接触しないようにその基板挿通口291aの面積を広げることが考えられるが、基板挿通口291aの面積を広げると、剥離室280内部の剥離液204の蒸気やミスト、およびそれらに含まれる異物が隣りの水洗室290に漏れ出してしまう。
【0019】
このような漏れ出しを抑えるためには、剥離室280内部からの排気量を増やすことになってしまい、排気によって剥離液204の水蒸気やミストを剥離室280外部への持ち出す量が増えてしまう結果、剥離液204の消費量が増加する問題が生じてしまうため、基板挿通口291aの面積を広げることは得策ではない。
【0020】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、液晶表示パネルに用いられるガラス基板などの基板を薬液や純水などの処理液を供給して処理する際の各処理液の温度の差が大きいことにより基板が撓んでしまうことが抑制される基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、本発明に係る基板処理方法は、一定方向に搬送される基板の処理面に薬液を供給して薬液処理するに際し、隔壁で仕切られる複数の薬液処理室の各薬液処理室にて前記基板に供給される各薬液の温度を前記基板の搬送方向の上流側から下流側に向けて段階的に下げるようにしたことを要旨とするものである。
【0022】
この場合、前記基板は処理面が斜めに傾けられて搬送される構成にすると良い。また、前記基板は薬液処理の後、水洗処理される構成にすると良い。更に、前記薬液は前記基板の処理面に形成されたレジストを剥離する剥離液である構成にすると良い。
【0023】
上記課題を解決するため、本発明に係る基板処理装置は、一定方法に搬送される基板の処理面に薬液を供給して薬液処理する基板処理装置であって、前記基板が搬送される複数の薬液処理室が順に並設され、各薬液処理室にて前記基板に供給される各薬液の温度が複数の薬液加熱供給手段により異なる温度に設定されると共に、各薬液処理室で前記基板に供給される各薬液の温度が基板の搬送方向の上流側から下流側に向けて段階的に下げられていることを要旨とするものである。
【0024】
この場合、前記基板を所定の角度で支持して搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラによって搬送される前記基板の下端を支持する下端支持ローラとが各薬液処理室内に配され、前記基板は処理面が斜めに傾けられて搬送される構成にすると良い。また、前記薬液処理の後、前記基板が水洗処理される水洗処理室が備えられている構成にすると良い。
【0025】
更に、前記複数の薬液加熱供給手段から前記薬液処理室へ配設される薬液供給管の管路途中には冷却手段が設けられて、この冷却手段により薬液供給管を通る薬液の温度が前記薬液加熱供給手段により設定される薬液の温度より下げられている構成にすると良い。また、各薬液処理室は隔壁で仕切られると共に、各隔壁にスリット状に開口形成された基板挿通口の前後には基板処理面上の薬液をエアにより除去するエア噴出手段が設けられている構成にすると良い。そして、前記薬液は前記基板の処理面に形成されたレジストを剥離する剥離液である構成にすると良い。
【発明の効果】
【0026】
上記構成を有する本発明によれば、一定方向に搬送される基板の処理面に薬液を供給して薬液処理するに際し、隔壁で仕切られる複数の薬液処理室の各薬液処理室にて前記基板に供給される各薬液の温度を前記基板の搬送方向の上流側から下流側に向けて段階的に下げるようにしたので、例えば薬液処理後に基板が水洗処理される場合には、薬液と水洗に用いられる純水の温度差を小さくすることができ、それら薬液と純水の温度差による基板の撓みを抑制することができる。これにより、薬液処理室内に設けられる基板挿通口やエア噴出手段などの基板近傍に配置される部材に接触して基板が傷ついてしまうことが防止される。
【0027】
この場合、各薬液処理室にて前記基板に供給される各薬液の温度が複数の薬液加熱供給手段により異なる温度に設定されると共に、これら複数の薬液加熱供給手段から前記薬液処理室へ配設される薬液供給管の管路途中には冷却手段が設けられて、この冷却手段により薬液供給管を通る薬液の温度が前記薬液加熱供給手段により設定される薬液の温度より下げられている構成にすれば、1つの薬液加熱供給手段から供給される薬液の温度を複数の異なる温度に設定することができ、薬液の温度設定に必要な薬液加熱供給手段の数を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明に係る基板処理方法および基板処理装置の一実施の形態ついて、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係るレジスト剥離装置を上方から見た概略構成を示した図、図2は図1のレジスト剥離装置が備える剥離室を側方から見た概略構成を示した図、図3は図2の基板搬送手段の概略構成を示した図、図4(a)は図2のシャワー式ノズルの概略構成を示した図、図4(b)は図2のエア噴出手段の概略構成を示した図である。
【0029】
図1に示されるレジスト剥離処理装置1は、ガラス基板2を所定の角度、この場合、水平方向に対して垂直方向に75度に傾けて搬送ローラ9により搬送しながらレジスト剥離処理を行う装置である。
【0030】
図示されるようにレジスト剥離処理装置1は、複数の剥離室30〜80が順に並設された構成となっており、ガラス基板2はニュートラル室20から1枚ずつ順に各剥離室30〜80に搬送されて、剥離液4によるレジスト剥離処理が施され、レジスト剥離処理が施された後、水洗室90に搬送され純水5により水洗処理が施される。この場合、ガラス基板2はレジスト剥離装置1の上流側に配置されたニュートラル室20から下流側に配置された水洗室90に向けて搬送される。
【0031】
ニュートラル室20の上流側と下流側にそれぞれ設けられた隔壁21,31にはスリット状に開口した基板挿通口21a,31aが形成されている。この基板挿通口21a,31aにはシャッタ3,3設けられており、このシャッタ3,3により基板挿通口21a,31aを塞ぐことができるようになっている。
【0032】
第1剥離室30には、貯留タンク6からノズル7を介して剥離液4がガラス基板2の表面および裏面に供給される。貯留タンク6には剥離液加熱手段8により剥離液4の温度が80℃に昇温されている。剥離液加熱手段8は、スチーム配管8aを備えており、このスチーム配管8aを剥離液4に浸漬させて貯留タンク6内の剥離液4の温度を80℃に昇温させている。この場合、スチーム配管8aの中には高温の水蒸気が流れている。
【0033】
この第1剥離室30と後述する剥離室40〜80の内部構成はほぼ同様であるので、第1剥離室30について図2〜図4を用いて説明する。
【0034】
図2および図3に示されるように、第1剥離室30においてガラス基板2は所定の角度、75度の角度で傾斜して搬送される。搬送手段としては、複数の搬送ローラ9と複数の下端支持ローラ10が設けられている。また、第1剥離室30内部の空間には搬送されるガラス基板2の表面および裏面に対して剥離液4を供給するノズル7と、ガラス基板2の表面および裏面に付着した剥離液4を除去するエア噴出手段12が設けられている。
【0035】
搬送軸9aに設けられた搬送ローラ9は、ガラス基板2の傾斜方向下側となる裏面側に配されており、その軸線が搬送されるガラス基板2と平行、つまり75度の角度で傾斜されている。また、搬送軸9aは、搬送方向に沿って所定間隔をおいて複数設けられている。この搬送軸9aの上端部は軸受9b、下端部は軸受9cにそれぞれ回転可能に支持されている。
【0036】
また、ガラス基板2の下端は、駆動軸10aに設けられた下端支持ローラ10によって支持されている。この駆動軸10aには歯車10bおよび歯車11aを介してモータ11が連結されている。そして、このモータ11によって下端支持ローラ10を回転駆動させることで、この下端支持ローラ10とガラス基板2の下端との間に生じる摩擦力でガラス基板2に駆動力を与え、ガラス基板2を搬送ローラ9に沿って搬送する。
【0037】
図2および図4(a)に示されるようにノズル7は、ガラス基板2の搬送方向と直交するように配置されており、剥離液4をガラス基板2の表面と裏面にシャワー状に供給する。また、ノズル7は搬送方向に沿って所定間隔をおいて複数設けられている。ノズル7の剥離液供給口7aは図1にも示されるような剥離液供給管13によって貯留タンク6と接続されており、ポンプ14によってノズル7に剥離液4が送液される。剥離液4はノズル7の先端の剥離液噴出口7bからシャワー状に噴出される。
【0038】
また、図示しないがポンプ14とノズル7との間の剥離液供給管13の途中には、その剥離液供給管13を通る剥離液4を濾過するためのフィルターや剥離液4の流量を調整する流量調整弁等が設けられている。
【0039】
第1剥離室30の底部32は、図1にも示されるように排水管15を介して貯留タンク6に接続されている。底部32により回収された剥離液4は、貯留タンク6に一旦貯留されたあと、ポンプ14により再度ノズル7に送液されるようになっている。
【0040】
図2および図4(b)に示されるようにエア噴出手段12は、ガラス基板2の搬送方向と直交するように配置されている。エア噴出手段12は、内部にエア供給口12aから供給されたエアを一旦滞留させるエア収容室12bを有し、このエア収容室12bに連通すると共に、ガラス基板2に対して線状にエアを噴出するためのスリット状のエア噴出口12cが形成されている。そして、エア噴出手段12のエア供給口12aには図示しない空圧ポンプが接続され、圧縮エアが供給される。
【0041】
このようなエア噴出手段12は、第1剥離室30の上流側と下流側のそれぞれの隔壁31,41に形成された基板挿通口31a,41aの近傍に配置されており、高圧のエアを噴出してガラス基板2の表面および裏面に付着した剥離液4や異物を除去する。図1に示されるようにエア噴出手段12は、第1剥離室30で用いられた剥離液4や異物が隣りの第2剥離室40に持ち込まれないようにするために基板挿通口41aの前後に配置されている。
【0042】
図2に示されるように、第1剥離室30の上方には排気口33が設けられており、この排気口33に接続された図示しない排気手段により第1剥離室30内部の排気が強制的に行われている。第1剥離室30内部の排気が行われることにより、第1剥離室30内部から外部に向かって気流が生じ、ガラス基板2の上方に広がった剥離液4の蒸気やミストが排気される。これにより第1剥離室30で用いられた剥離液4の蒸気やミスト、およびそれらに含まれる異物が隣りの第2剥離室40やニュートラル室20等に漏れ出さないようになっている。
【0043】
次に剥離室40〜80および水洗室90について説明する。図1に示されるように第2剥離室40と第3剥離室50は隔壁51で仕切られているが、貯留タンク6から供給される剥離液4は両剥離室40,80で用いられる構成になっている。従って、ガラス基板2の表面および裏面に付着した剥離液4や異物を除去するエア噴出手段12は、第2剥離室40の上流側の隔壁41に形成された基板挿通口41aの近傍と、第3剥離室50の下流側の隔壁61に形成された基板挿通口61aの近傍にそれぞれ設けられている。
【0044】
この第2剥離室40と第3剥離室50に供給される剥離液4は、貯留タンク6にて剥離液加熱手段8により70℃に昇温されている。剥離液加熱手段8により70℃に昇温された剥離液4は、それぞれ剥離液供給管13,13を介してポンプ14,14によりノズル7,7からガラス基板2の表面および裏面に供給される。
【0045】
また、第2剥離室40と第3剥離室50のそれぞれの底部42,52で回収された剥離液4は、排水管15,15を介して貯留タンク6に一旦貯留されたあと、ポンプ14,14により再度ノズル7,7に送液され、ガラス基板2の表面および裏面に供給される。
【0046】
第4剥離室60と第5剥離室70も同様に隔壁71で仕切られているが、貯留タンク6から供給される剥離液4は両剥離室60,70で用いられる構成になっている。従って、ガラス基板2の表面および裏面に付着した剥離液4や異物を除去するエア噴出手段12は、第4剥離室60の上流側の隔壁61に形成された基板挿通口61aの近傍と、第5剥離室70の下流側の隔壁81に形成された基板挿通口81aの近傍にそれぞれ設けられている。
【0047】
この第4剥離室60と第5剥離室70に供給される剥離液4は、貯留タンク6にて剥離液加熱手段8により50℃に昇温されている。剥離液加熱手段8により50℃に昇温された剥離液4は、それぞれ剥離液供給管13,13を介してポンプ14,14によりノズル7,7からガラス基板2の表面および裏面に供給される。
【0048】
また、第4剥離室60と第5剥離室70の底部62,72で回収された剥離液4は、排水管15を介して貯留タンク6に一旦貯留されたあと、ポンプ14,14により再度ノズル7,7に送液され、ガラス基板2の表面および裏面に供給される。
【0049】
第6剥離室80は、中央に設けられた隔壁83により前室80aと後室80bに仕切られている。この場合、ガラス基板2の表面および裏面に付着した剥離液4や異物を除去するエア噴出手段12は、第6剥離室80の上流側の隔壁81に形成された基板挿通口81aの近傍と、下流側の隔壁91に形成された基板挿通口91aの近傍にそれぞれ設けられている。
【0050】
この第6剥離室80に供給される剥離液4は、貯留タンク6にて剥離液加熱手段8により40℃に昇温されている。剥離液加熱手段8により40℃に昇温された剥離液4は、剥離液供給管13およびこの剥離液供給管13から分岐された剥離液供給管13を介してポンプ14によりノズル7,7からガラス基板2の表面および裏面に供給される。
【0051】
また、第6剥離室80の底部82で回収された剥離液4は、排水管15,15を介して貯留タンク6に一旦貯留されたあと、ポンプ14により再度ノズル7,7に送液され、ガラス基板2の表面および裏面に供給される。
【0052】
このようにガラス基板2は、第1剥離室30にて80℃の剥離液4で処理され、次に、第2剥離室40と第3剥離室50にて70℃の剥離液4で処理され、次に、第4剥離室60と第5剥離室70にて50℃の剥離液4で処理され、最後に、第6剥離室80にて40℃の剥離液4で処理される。
【0053】
そして、第6剥離室80にて40℃の剥離液4で処理されたガラス基板2は、水洗室90に搬送され、室温に近い25℃の純水5でその表面および裏面が水洗される。純水5は、純水供給管18を介してノズル19からガラス基板2の表面および裏面に供給される。純水供給管18は図示しない純水供給手段に接続されている。
【0054】
このとき、ガラス基板2は第6剥離室80において40℃の剥離液4によって処理された後、水洗室80に搬送されて、室温に近い25℃の純水により水洗されるため、ガラス基板2の水洗室90への進入時における温度変化が小さく、搬送ローラ9の上でガラス基板2が大きく撓んでしまうことがなくなる。これにより、隔壁91に形成された基板挿通口91aやこの基板挿通口91aの近傍に配置されたエア噴出手段12にガラス基板2が接触して、そのガラス基板2表面に傷が付いてしまうという問題がなくなる。
【0055】
このように、80℃、70℃、50℃、40℃とガラス基板2に供給される剥離液4の温度を段階的に下げていくことによりガラス基板2の膨張が小さくされることから、25℃の純水5の供給によりガラス基板2が急激に冷やされてしまうことがなくなる。これにより水洗室90に搬送された際のガラス基板2の温度勾配が緩和されるので、ガラス基板2が大きく撓んでしまうことが抑制される。
【0056】
特に、上述したレジスト剥離装置1のようにガラス基板2をほぼ垂直状態で処理するときのように、水平状態のガラス基板2の自重による撓みの抑制が期待できない場合には、効果的である。また、上述したレジスト剥離装置1のような構成は、現状使用しているレジスト剥離装置の貯留タンクに貯留された剥離液の温度設定を変更するだけで、このような作用効果を得ることができる構成であるので、コスト増が少なく実施し易い。
【0057】
次に、図5を用いて本発明の第2の実施形態に係るレジスト剥離装置について説明する。尚、上述した第1の実施形態で説明したレジスト剥離装置1と同一の構成については同符号を付して説明は省略し、異なる点を中心に説明する。
【0058】
図示されるように、レジスト剥離装置101が備える第2剥離室40と第3剥離室50にそれぞれ剥離液4を供給する2つの剥離液供給管13,13のうち、第3剥離室50に剥離液4を供給する剥離液供給管13の途中位置に冷却手段17を設けることで、第3剥離室50に供給される剥離液4の温度を、第2剥離室40に供給される剥離液4の温度70℃よりも10℃低い60℃に設定されている。
【0059】
冷却手段17は、図6に示されるように、冷却水管17aを備えており、この冷却水管17aを第3剥離室50に剥離液4を供給する剥離液供給管13に巻回することで、この剥離液供給管13を通る剥離液4の温度を下げている。この場合、冷却水管7aの中には、例えば7℃の冷水が流れている。
【0060】
また、図示されるように、レジスト剥離装置101が備える第4剥離室60と第5剥離室70にそれぞれ剥離液4を供給する2つの剥離液供給管13,13のうち、第5剥離室70に剥離液4を供給する剥離液供給管13の途中位置に冷却手段17を設けることで、第5剥離室70に供給される剥離液4の温度を、第4剥離室60に供給される剥離液4の温度50℃よりも10℃低い40℃に設定されている。
【0061】
更に、図示されるように、レジスト剥離装置101が備える第6剥離室80の前室80aと後室80bにそれぞれ剥離液4を供給する2つの剥離液供給管13,13のうち、第6剥離室80の後室80bに剥離液4を供給する剥離液供給管13の途中位置に冷却手段17を設けることで、第6剥離室80の後室80bに供給される剥離液4の温度を、第6剥離室80の前室80aに供給される剥離液4の温度40℃よりも10℃低い30℃に設定されている。
【0062】
そして、第6剥離室80の後室80bにて30℃の剥離液4で処理されたガラス基板2は、水洗室90に搬送され、室温に近い25℃の純水5でその表面および裏面が水洗される。このとき、ガラス基板2は第6剥離室80の後室80bにおいて30℃の剥離液4によって処理された後、水洗室90に搬送されて、室温に近い25℃の純水により水洗されるため、上述した第1の実施の形態の場合よりもガラス基板2の水洗室90への進入時における温度変化が小さく、搬送ローラ9の上でガラス基板2が大きく撓んでしまうことが更に抑制される。
【0063】
このように、80℃、70℃、60℃、50℃、40℃、30℃とガラス基板2に供給される剥離液4の温度を上述した第1の実施の形態の場合よりも細かく段階的に下げていくことによりガラス基板2の膨張が更に小さくされることから、25℃の純水5の供給により急激に冷やされてしまうことがなくなる。これにより水洗室90に搬送された際のガラス基板2の温度勾配が更に緩和されるので、ガラス基板2が大きく撓んでしまうことが抑制される。
【0064】
また、上述したレジスト剥離装置101のような構成は、冷却手段17を剥離液供給管13の途中位置に設けるだけで、剥離液4を所定の温度に昇温する貯留タンク6および剥離液加熱手段8の数はそのままに、剥離液4の温度を複数に設定することが可能な構成であり、現状使用しているレジスト剥離装置に冷却手段17を追加するだけで実施することができる。
【0065】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、上述した実施の形態では、レジスト剥離装置に本発明を適用した場合について説明したが、高温の薬液を基板に供給して処理する基板処理装置であれば本発明を適用することができる。また、薬液処理室としての剥離室および水洗室の構成やその数についても上述した実施の形態には限定されない。更に、薬液としての剥離液の温度設定についても上述した実施の形態には限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るレジスト剥離装置を上方から見た概略構成を示した図である。
【図2】図1のレジスト剥離装置が備える剥離室を側方から見た概略構成を示した図である。
【図3】図2の基板搬送手段の概略構成を示した図である。
【図4】(a)は図2のシャワー式ノズルの概略構成を示した図、(b)は図2のエア噴出手段の概略構成を示した図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るレジスト剥離装置を上方から見た概略構成を示した図である。
【図6】図5の冷却手段の概略構成を示した図である。
【図7】従来用いられてきたレジスト剥離装置を上方から見た概略構成を示した図である。
【符号の説明】
【0067】
1 レジスト剥離装置
4 剥離液
5 純水
6 貯留タンク
7 ノズル
8 剥離液加熱手段
9 搬送ローラ
12 エア噴出手段
13 剥離液供給管
14 ポンプ
15 排水管
17 冷却手段
17a 冷却水管
20〜80 剥離室
21〜81 隔壁
21a〜81a 基板挿通口
90 水洗室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定方向に搬送される基板の処理面に薬液を供給して薬液処理するに際し、隔壁で仕切られる複数の薬液処理室の各薬液処理室にて前記基板に供給される各薬液の温度を前記基板の搬送方向の上流側から下流側に向けて段階的に下げるようにしたことを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記基板は処理面が斜めに傾けられて搬送されることを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記基板は薬液処理の後、水洗処理されることを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記薬液は前記基板の処理面に形成されたレジストを剥離する剥離液であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項5】
一定方法に搬送される基板の処理面に薬液を供給して薬液処理する基板処理装置であって、前記基板が搬送される複数の薬液処理室が順に並設され、各薬液処理室にて前記基板に供給される各薬液の温度が複数の薬液加熱供給手段により異なる温度に設定されると共に、各薬液処理室で前記基板に供給される各薬液の温度が基板の搬送方向の上流側から下流側に向けて段階的に下げられていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
前記基板を所定の角度で支持して搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラによって搬送される前記基板の下端を支持する下端支持ローラとが各薬液処理室内に配され、前記基板は処理面が斜めに傾けられて搬送されることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記薬液処理の後、前記基板が水洗処理される水洗処理室が備えられていることを特徴とする請求項5または6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記複数の薬液加熱供給手段から前記薬液処理室へ配設される薬液供給管の管路途中には冷却手段が設けられて、この冷却手段により薬液供給管を通る薬液の温度が前記薬液加熱供給手段により設定される薬液の温度より下げられていることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項9】
各薬液処理室は隔壁で仕切られると共に、各隔壁にスリット状に開口形成された基板挿通口の前後には基板処理面上の薬液をエアにより除去するエア噴出手段が設けられていることを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記薬液は前記基板の処理面に形成されたレジストを剥離する剥離液であることを特徴とする請求項5から9のいずれかに記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−141182(P2009−141182A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316854(P2007−316854)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】