説明

基板処理装置、半導体装置の製造方法及び半導体装置

【課題】反応生成物や分解物がノズル内壁に堆積するのを抑えるとともに、異物が処理室内に飛散するのを抑える。
【解決手段】
処理室と、加熱ユニットと、原料ガス供給ユニットと、原料ガスノズルと、排気ユニットと、少なくとも加熱ユニット、原料ガス供給ユニット、排気ユニットを制御する制御部と、を有し、原料ガスノズルは、処理室内の温度が原料ガスの熱分解温度よりも高い場合であっても内部で原料ガスが分解しないような処理室内の所定位置に配設され、制御部は、異なる流速で互いに混合させないよう処理室内に原料ガスを供給する処理を含むサイクルを所定回数実施させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ALD(Atomic Layer Deposition)法では、例えば膜の原料となる原料ガスと、原料ガスと反応する反応ガスと、が処理室内に交互に供給され、1原子層分の薄膜が順次積層されることにより基板上に所定の膜が形成される。ALD法により形成される膜としては、例えば、原料ガスとしてのTMA(Trimethylaluminium)ガスと、反応ガスとしてのオゾン(O)ガスと、により形成される酸化アルミニウム膜(AlO膜)等が挙げられる。この酸化アルミニウム膜は、高誘電率膜(High−k膜)として機能する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
TMAガスとオゾンガスとを用いたALD法は、処理室内の温度を200℃〜400℃程度に設定して実施される場合がある。ただし、このような処理温度では、原料ガスや反応ガスを構成する炭素(C)原子、水素(H)原子が不純物として膜中に残留することがあり、膜の誘電率が低下したり、リーク電流が増加したりするなど、高誘電率膜としての機能が低下してしまう場合があった。そこで、膜中の不純物を低減させるために、例えば550℃程度まで処理温度を上昇させて、基板処理が実施されることがあった。
【0004】
しかしながら、処理温度を高温にすると、ノズル内が高温高圧状態となり、原料ガスがノズル内で熱分解されることがあった。例えば、原料ガスとしてTMAガスを用いた場合、ノズル内では、アルミニウム(Al)原子同士のCVD(Chemical Vapor Deposition)反応による反応生成物が形成されることがあった。あるいは、反応生成物やTMAガスの分解物がノズル内壁に堆積し、ノズルが目詰まりすることがあった。また、このような反応生成物や分解物がノズル内壁から剥がれるなどして生成された異物が処理室内に飛散し、基板に付着することにより基板処理品質の低下を招いてしまうことがあった。
【0005】
本発明は、反応生成物や分解物がノズル内壁に堆積するのを抑えるとともに、異物が処理室内に飛散するのを抑えることが可能な基板処理装置、半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。また、このような基板処理装置、半導体装置の製造方法により、異物の混入が少なく高品質な薄膜を備えた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、複数枚の基板を水平姿勢に積層した状態で収容する処理室と、前記処理室の外側に設けられ、前記処理室内を加熱する加熱ユニットと、原料ガスを供給する原料ガス供給ユニットと、前記原料ガス供給ユニットと接続され、前記原料ガス供給ユニットから供給される前記原料ガスを前記処理室内に供給する原料ガスノズルと、前記処理室内を実質的に水平方向に排気する排気ユニットと、少なくとも前記加熱ユニット、前記原料ガス供給ユニット、前記排気ユニットを制御する制御部と、を有し、前記原料ガスノズルは、前記処理室内の温度が前記原料ガスの熱分解温度よりも高い場合であっても内部で前記原料ガスが分解しないような前記処理室内の所定位置に配設され、前記制御部は、異なる流速で互いに混合させないよう前記処理室内に前記原料ガスを供給する処理を含むサイクルを所定回数実施させるように構成されている基板処理装置が提供される。
【0007】
また、本発明の他の態様によれば、水平姿勢で積層された複数枚の基板を処理室内に収容する基板搬入工程と、前記処理室内の温度が原料ガスの熱分解温度よりも高い場合であっても内部で前記原料ガスが分解しないような前記処理室内の所定位置に配設された原料ガスノズルから、第1の流速で前記処理室内に前記原料ガスを供給する第1の原料ガス供給工程と、前記原料ガスノズルから、前記第1の流速とは異なる第2の流速で前記処理室内に前記原料ガスを供給する第2の原料ガス供給工程と、前記基板の積層方向に沿って前記処理室内に配設された反応ガスノズルから、前記原料ガスと反応する反応ガスを前記処理室内に供給する反応ガス供給工程と、前記処理室内を実質的に水平方向に排気する排気工程と、処理が完了した前記基板を前記処理室から搬出する基板搬出工程と、を有し、前記第1の原料ガス供給工程と、前記第2の原料ガス供給工程と、前記反応ガス供給工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施して前記基板上に所定の膜を形成する半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
また、本発明の他の態様によれば、積層された基板を収容する処理室内の温度が原料ガスの熱分解温度よりも高い場合であっても内部で前記原料ガスが分解しないような前記処理室内の所定位置に配設された原料ガスノズルから、第1の流速で前記処理室内に前記原料ガスを供給する第1の原料ガス供給工程と、前記原料ガスノズルから前記第1の流速とは異なる第2の流速で前記処理室内に前記原料ガスを供給する第2の原料ガス供給工程と、前記基板の積層方向に沿って前記処理室内に配設された反応ガスノズルから前記原料ガスと反応する反応ガスを前記処理室内に供給する反応ガス供給工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施することにより形成される半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、反応生成物や分解物がノズル内壁に堆積するのを抑えるとともに、異物が処理室内に飛散するのを抑えることできる。また、基板への異物の付着を抑え基板処理品質の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置が備える処理炉の縦断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置が備えるインナチューブの斜視図であり、ガス排気口が穴形状である場合を示している。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置が備えるプロセスチューブの横断面図であり、インナチューブにノズル収容部が設けられている場合を示している。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置が備えるプロセスチューブ内に生成されるガス流を例示する模式図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る基板処理工程のフローチャート図である。
【図7】ウエハ上に酸化アルミニウム膜が形成される様子を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るガス供給の様子を模式的に示す図である。
【図9】本発明の第1の実施形態のガス供給に係るタイミングチャート図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る基板処理工程のフローチャート図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る原料ガス供給の様子を模式的に示す図であり、(a)原料ガスの流速を第1の流速とした場合、(b)原料ガスの流速を第1の流速より大きな第2の流速とした場合をそれぞれ示す。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る基板処理工程のフローチャート図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係るTMAガス供給シーケンス、及び処理条件を従来と比較して示す図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る基板処理工程のフローチャート図である。
【図15】本発明の第3の実施形態のガス供給に係るタイミングチャート図である。
【図16】本発明のその他の実施形態に係る基板処理装置が備えるプロセスチューブの横断面図であり、処理室内にノズル収容部が設けられていない場合を示している。
【図17】従来の基板処理装置の概略、及び内部に反応生成物や分解物が堆積した原料ガスノズルを模式的に示す断面図である。
【図18】本発明の第2の実施形態の実施例と従来例とを対比させながら、ノズル内における分解物の堆積の有無と、酸化アルミニウム膜の膜特性とを示す図である。
【図19】内部に分解物が堆積した原料ガスノズルの例を示す説明図である。
【図20】内部に分解物が堆積した原料ガスノズルの例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本発明の第1の実施形態>
(1)基板処理装置の構成
まず、本実施形態に係る基板処理装置101の構成例について、図1及び図5を用いて説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る基板処理装置101の概略構成図である。図5は、本実施形態に係る基板処理装置が備えるプロセスチューブ内に生成されるガス流を例示する模式図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る基板処理装置101は筐体111を備えている。シリコン等からなる基板としてのウエハ200を筐体111内外へ搬送するには、複数のウエハ200を収納するウエハキャリア(基板収納容器)としてのカセット110が使用される。筐体111内側の前方(図中の右側)には、カセットステージ(基板収納容器受渡し台)114が設けられている。カセット110は、図示しない工程内搬送装置によってカセットステージ114上に載置され、また、カセットステージ114上から筐体111外へ搬出されるように構成されている。
【0014】
カセット110は、工程内搬送装置によって、カセット110内のウエハ200が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。カセットステージ114は、カセット110を筐体111の後方に向けて縦方向に90°回転させ、カセット110内のウエハ200を水平姿勢とさせ、カセット110のウエハ出し入れ口を筐体111内の後方に向かせることが可能なように構成されている。
【0015】
筐体111内の前後方向の略中央部には、カセット棚(基板収納容器載置棚)105が設置されている。カセット棚105には、複数段、複数列にて複数個のカセット110が保管されるように構成されている。カセット棚105には、後述するウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。また、カセットステージ114の上方には、予備カセット棚107が設けられ、予備的にカセット110を保管するように構成されている。
【0016】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置(基板収納容器搬送装置)118が設けられている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ(基板収納容器昇降機構)118aと、カセット110を保持したまま水平移動可能な搬送機構としてのカセット搬送機構(基板収納容器搬送機構)118bと、を備えている。これらカセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連携動作により、カセットステージ114、カセット棚105、予備カセット棚107、移載棚123の間で、カセット110を搬送するように構成されている。
【0017】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構(基板移載機構)125が設けられている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bと、を備えている。なお、ウエハ移載装置125aは、ウエハ200を水平姿勢で保持するツイーザ(基板移載用治具)125cを備えている。これらウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連携動作により、ウエハ200を移載棚123上のカセット110内からピックアップして後述するボート(基板保持具)217へ装填(チャージング)したり、ウエハ200をボート217から脱装(ディスチャージング)して移載棚123上のカセット110内へ収納したりするように構成されている。
【0018】
筐体111の後部上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端には開口(炉口)が設けられ、かかる開口は炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。なお、処理炉202の構成については後述する。
【0019】
処理炉202の下方には、ボート217を昇降させて処理炉202内外へ搬送する昇降機構としてのボートエレベータ(基板保持具昇降機構)115が設けられている。ボートエレベータ115の昇降台には、連結具としてのアーム128が設けられている。アーム128上には、ボート217を垂直に支持するとともに、ボートエレベータ115によりボート217が上昇したときに処理炉202の下端を気密に閉塞する蓋体としての円盤状のシールキャップ219が水平姿勢で設けられている。
【0020】
ボート217は複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚〜150枚程度)のウエハ200を、水平姿勢で、かつその中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に保持するように構成されている。ボート217の詳細な構成については後述する。
【0021】
カセット棚105の上方には、供給ファンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット134aが設けられている。クリーンユニット134aは、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0022】
また、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびボートエレベータ115側と反対側である筐体111の左側端部には、クリーンエアを供給するよう供給ファンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット(図示せず)が設置されている。図示しない前記クリーンユニットから吹き出されたクリーンエアは、ウエハ移載装置125a及びボート217の周囲を流通した後に、図示しない排気装置に吸い込まれて、筐体111の外部に排気されるように構成されている。
【0023】
(2)基板処理装置の動作
次に、本実施形態に係る基板処理装置101の動作について説明する。
【0024】
まず、カセット110が、図示しない工程内搬送装置によって、ウエハ200が垂直姿勢となりカセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、筐体111の後方に向けて縦方向に90°回転させられる。その結果、カセット110内のウエハ200は水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口は筐体111内の後方を向く。
【0025】
カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセット棚105ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へ自動的に搬送されて受け渡されて一時的に保管され
た後、カセット棚105又は予備カセット棚107から移載棚123に移載されるか、もしくは直接移載棚123に搬送される。
【0026】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ200は、ウエハ移載装置125aのツイーザ125cによって、ウエハ出し入れ口を通じてカセット110からピックアップされ、ウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連続動作によって移載棚123の後方にあるボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載機構125は、カセット110に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する。
【0027】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端が、炉口シャッタ147によって開放される。続いて、シールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されることにより、ウエハ200群を保持したボート217が処理炉202内へ搬入(ローディング)される。ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に任意の処理が実施される。かかる処理については後述する。処理後は、ウエハ200およびカセット110は、上述の手順とは逆の手順で筐体111の外部へ払出される。
【0028】
(3)処理炉の構成
続いて、本実施形態に係る処理炉202の構成について、図2〜図4を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係る基板処理装置が備える処理炉202の縦断面図である。図3は、本実施形態に係る基板処理装置が備えるインナチューブ204の斜視図であり、ガス排気口204aが穴形状である場合を示している。図4は、本実施形態に係る基板処理装置が備えるプロセスチューブ205の横断面図であり、インナチューブ204にノズル収容部201aが設けられている場合を示している。
【0029】
(処理室)
本実施形態に係る処理炉202は、反応管としてのプロセスチューブ205と、マニホールド209とを備えている。プロセスチューブ205は、複数枚のウエハ200を水平姿勢に積層した状態で収容する処理室201を内部空間に構成するインナチューブ204と、インナチューブ204を取り囲むアウタチューブ203と、から構成される。インナチューブ204及びアウタチューブ203は、それぞれ例えば石英(SiO)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性を有する非金属材料から構成され、上端が閉塞され、下端が開放された構成となっている。インナチューブ204の側壁の一部は、ウエハ200が積載される方向(鉛直方向)に沿って、インナチューブ204の側壁よりもインナチューブ204の径方向外側(アウタチューブ203の側壁側)に突出している。処理室201のうち、インナチューブ204の径方向外側(アウタチューブ203の側壁側)に突出した空間は、後述の原料ガスノズル233a、反応ガスノズル233bを収容するノズル収容部201aとして構成されている。マニホールド209は、例えばSUS等の金属材料から構成され、上端及び下端が開放された円筒形状となっている。インナチューブ204及びアウタチューブ203は、マニホールド209により下端側から縦向きに支持されている。インナチューブ204、アウタチューブ203、及びマニホールド209は、互いに同心円状に配置されている。マニホールド209の下端(炉口)は、上述したボートエレベータ115が上昇した際に、シールキャップ219により気密に封止されるように構成されている。マニホールド209の下端とシールキャップ219との間には、インナチューブ204内を気密に封止するOリングなどの封止部材(図示しない)が設けられている。
【0030】
インナチューブ204内(処理室201内)には基板保持具としてのボート217が下方から挿入されるように構成されている。インナチューブ204及びマニホールド209の内径は、ウエハ200を装填したボート217の最大外径よりも大きくなるように構成
されている。
【0031】
ボート217は、上下で一対の端板217cと、一対の端板217cの間に垂直に架設された複数本(例えば3本)の支柱217aと、を備えている。端板217c及び支柱217aは、石英や炭化珪素等の耐熱性を有する非金属材料から構成されている。各支柱217aには、複数の保持溝217bが、支柱217aの長手方向に沿って等間隔に配列するようにそれぞれ形成されている。各支柱217aは、各支柱217aに形成された保持溝217bが互いに対向するようにそれぞれ配置されている。各保持溝217bにウエハ200の外周部を挿入することにより、複数枚のウエハ200が、略水平姿勢で所定の隙間(基板ピッチ間隔)をもって多段に保持されるように構成されている。ボート217は、熱伝導を遮断する断熱キャップ218上に搭載されている。断熱キャップ218は、回転軸255により下方から支持されている。回転軸255は、処理室201内の気密を保持しつつ、シールキャップ219の中心部を貫通するように設けられている。シールキャップ219の下方には、回転軸255を回転させる回転機構267が設けられている。回転機構267により回転軸255を回転させることにより、処理室201内の気密を保持したまま、複数枚のウエハ200を搭載したボート217を回転させることが出来るように構成されている。
【0032】
プロセスチューブ205(アウタチューブ203)の外周には、プロセスチューブ205と同心円状に加熱ユニットとしてのヒータ207が設けられている。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207の外周部及び上端には、断熱材207aが設けられている。ヒータ207は、温度センサ(図示せず)により検出された温度情報に基づき、通電量が調整されるように構成されている。
【0033】
(ガスノズル)
ノズル収容部201a内には、原料ガスノズル233aと、反応ガスノズル233bとが、処理室201の周方向に沿ってそれぞれ配設されている。原料ガスノズル233a及び反応ガスノズル233bは、垂直部と水平部とを有するL字形状にそれぞれ構成されている。原料ガスノズル233aは、その垂直部が処理室201内のウエハ200の収容予定領域よりも下方の所定位置に配設されるショートノズルとして構成されている。また、反応ガスノズル233bは、その垂直部がウエハ200の積層方向に沿ってノズル収容部201a内に配設(延在)されるロングノズルとして構成されている。原料ガスノズル233a及び反応ガスノズル233bの水平部は、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。
【0034】
上述したように、原料ガスノズル233aの垂直部は、処理室201内のウエハ200の収容予定領域よりも下方の所定位置に配設されるように構成されている。すなわち、原料ガスノズル233aの垂直部は、処理室201内のウエハ200の収容予定領域の温度が原料ガスの熱分解温度よりも高い場合であっても、内部で原料ガスが分解しないよう、ウエハ200の収容予定領域よりも下方のノズル収容部201a内の所定位置に配設されている。例えば、原料ガスノズル233aの垂直部は、処理室201内の下部であって、ヒータ207が取り囲む空間の下方に配設されている。原料ガスノズル233aの下流端(上端)には、処理室201内の上部に向けて原料ガスを供給するように原料ガス噴出口248aが開設されている。このように、原料ガスノズル233aをショートノズルとして構成することで、基板処理時における原料ガスノズル233a内部の温度上昇を抑えることができ、原料ガスノズル233a内部での原料ガスの熱分解を起こり難くすることができる。
【0035】
上述したように、反応ガスノズル233bの垂直部は、下流端がボート217の上端付
近まで到達するようノズル収容部201aの上部まで延びた構成となっている。反応ガスノズル233bの垂直部側面には、複数の反応ガス噴出口248bが、ウエハ200の積層方向(鉛直方向)に沿って、それぞれのウエハ200に対応する位置(高さ位置)に開設されている。また、反応ガス噴出口248bの開口径は、処理室201内の反応ガスの流量分布や速度分布を適正化するように適宜調整することができ、下部から上部にわたって同一としてもよく、下部から上部にわたって徐々に大きくしてもよい。このように、反応ガスノズル233bを多孔式のロングノズルとして構成することで、ウエハ200への反応ガスの供給量をウエハ200間で均一化させることが可能となる。なお、反応ガスが熱分解し易い性質を有する場合には、反応ガスノズル233bを、原料ガスノズル233aと同様にショートノズルとして構成してもよい。
【0036】
(原料ガス供給ユニット)
マニホールド209の側壁から突出した原料ガスノズル233aの水平部の上流端には、原料ガス供給管240aの下流端が接続されている。原料ガス供給管240aの上流端には、液体原料としての液体TMAを気化して原料ガスとしてのTMAガスを生成するTMAタンク260が接続されている。具体的には、原料ガス供給管240aの上流端は、TMAタンク260内であって液体TMAの液面の上方に配置されている。原料ガス供給管240aには開閉バルブ241aが設けられている。開閉バルブ241aを開けることにより、TMAタンク260内にて生成されたTMAガスが、原料ガスノズル233aを介して処理室201内へ供給されるように構成されている。なお、気化されたTMAガスが配管内で再液化されないよう、原料ガス供給管240aは例えば40℃以上130℃以下に加熱され、マニホールド209は例えば40℃以上150℃以下に加熱されるように構成されている。
【0037】
TMAタンク260の上流側には、TMAタンク260内に不活性ガス等のキャリアガスを供給するキャリアガス供給管240fの下流端が接続されている。具体的には、キャリアガス供給管240fの下流端は、TMAタンク260内の液体TMA内に浸されている。キャリアガス供給管240fの上流端は、アルゴンガス(Arガス)等の不活性ガス(キャリアガス)を供給する図示しないキャリアガス供給源に接続されている。キャリアガス供給管240fには、上流から順に、流量コントローラ(MFC)242f、開閉バルブ241fが設けられている。開閉バルブ241fを開けることによりTMAタンク260内の液体TMA内にキャリアガスが供給され、液体TMAがバブリングされる。液体TMAがバブリングされることにより、TMAタンク260内にTMAガスが生成される。開閉バルブ241aを開けることにより、TMAタンク260内で生成されたTMAガスとキャリアガスとを含む混合ガスが原料ガス供給管240a及び原料ガスノズル233aを介して処理室201内に供給されるように構成されている。キャリアガスをTMAタンク260内に供給することにより、液体TMAを気化させるとともに、TMAタンク260内からのTMAガスの排出及び処理室201内への原料ガスの供給を促すことが可能となる。TMAタンク260内へのキャリアガスの供給流量(すなわち、処理室201内へのキャリアガスの供給流量)は、流量コントローラ242fによって制御可能なように構成されている。
【0038】
主に、原料ガス供給管240a、TMAタンク260、開閉バルブ241a、キャリアガス供給管240f、図示しないキャリアガス供給源、流量コントローラ242f、開閉バルブ241fにより、原料ガスノズル233aを介して処理室201内に原料ガスを供給する原料ガス供給ユニットが構成される。
【0039】
(反応ガス供給ユニット)
マニホールド209の側壁から突出した反応ガスノズル233bの水平部の上流端には、反応ガス供給管240bの下流端が接続されている。反応ガス供給管240bの上流端
には、反応ガス(酸化剤)としてのオゾン(O)ガスを生成するオゾナイザ270が接続されている。反応ガス供給管240bには、上流側から順に、流量コントローラ(MFC)242b、開閉バルブ241bが設けられている。オゾナイザ270には、酸素ガス供給管240eの下流端が接続されている。酸素ガス供給管240eの上流端は、酸素(O)ガスを供給する図示しない酸素ガス供給源に接続されている。酸素ガス供給管240eには開閉バルブ241eが設けられている。開閉バルブ241eを開けることによりオゾナイザ270に酸素ガスが供給され、開閉バルブ241bを開けることによりオゾナイザ270にて生成されたオゾンガスが反応ガス供給管240bを介して処理室201内へ供給されるように構成されている。なお、処理室201内へのオゾンガスの供給流量は、流量コントローラ242bによって制御することが可能なように構成されている。
【0040】
主に、反応ガス供給管240b、オゾナイザ270、流量コントローラ(MFC)242b、開閉バルブ241b、酸素ガス供給管240e、図示しない酸素ガス供給源、開閉バルブ241eにより、反応ガスノズル233bを介して処理室201内にオゾンガスを供給する反応ガス供給ユニットが構成される。
【0041】
(ベント管)
原料ガス供給管240aにおけるTMAタンク260と開閉バルブ241aとの間には、原料ガスベント管240iの上流端が接続されている。原料ガスベント管240iの下流端は、後述する排気管231の下流側(後述するAPCバルブ231aと真空ポンプ231bとの間)に接続されている。原料ガスベント管240iには開閉バルブ241iが設けられている。開閉バルブ241aを閉め、開閉バルブ241iを開けることにより、TMAタンク260における原料ガスの生成を継続したまま、処理室201内への原料ガスの供給を停止することが可能なように構成されている。原料ガスを安定して生成するには所定の時間を要するが、開閉バルブ241a、開閉バルブ241iの切り替え動作によって、処理室201内への原料ガスの供給・停止をごく短時間で切り替えることが可能なように構成されている。
【0042】
同様に、反応ガス供給管240bにおけるオゾナイザ270と流量コントローラ242bとの間には、反応ガスベント管240jの上流端が接続されている。反応ガスベント管240jの下流端は、排気管231の下流側(APCバルブ231aと真空ポンプ231bとの間)に接続されている。反応ガスベント管240jには、上流から順に、開閉バルブ241j、オゾン除害装置242jが設けられている。開閉バルブ241bを閉め、開閉バルブ241jを開けることにより、オゾナイザ270によるオゾンガスの生成を継続したまま、処理室201内へのオゾンガスの供給を停止することが可能なように構成されている。オゾンガスを安定して生成するには所定の時間を要するが、開閉バルブ241b、開閉バルブ241jの切り替え動作によって、処理室201内へのオゾンガスの供給・停止をごく短時間で切り替えることが可能なように構成されている。
【0043】
(不活性ガス供給管)
原料ガス供給管240aにおける開閉バルブ241aの下流側には、第1不活性ガス供給管240gの下流端が接続されている。第1不活性ガス供給管240gには、上流側から順に、Nガス等の不活性ガスを供給する図示しない不活性ガス供給源、流量コントローラ(MFC)242g、開閉バルブ241gが設けられている。同様に、反応ガス供給管240bにおける開閉バルブ241bの下流側には、第2不活性ガス供給管240hの下流端が接続されている。第2不活性ガス供給管240hには、上流側から順に、Nガス等の不活性ガスを供給する図示しない不活性ガス供給源、流量コントローラ(MFC)242h、開閉バルブ241hが設けられている。
【0044】
第1不活性ガス供給管240g及び第2不活性ガス供給管240hから供給される不活
性ガスは、原料ガスや反応ガスを希釈する希釈ガス、及び処理室201内をパージするパージガスとしての機能を有する。
【0045】
例えば、開閉バルブ241iを閉め、開閉バルブ241a及び開閉バルブ241gを開けることにより、第1不活性ガス供給管240gからの不活性ガス(希釈ガス)により希釈しながら、TMAタンク260からの混合ガスを処理室201内に供給することが可能なように構成されている。また、開閉バルブ241b及び開閉バルブ241hを開けることにより、第2不活性ガス供給管240hからの不活性ガス(希釈ガス)により希釈しながら、オゾナイザ270からのオゾンガスを処理室201内に供給することが可能なように構成されている。このように、希釈ガスにより希釈することで、処理室201内へ供給する原料ガスやオゾンガスの濃度を自在に調整することができる。
【0046】
また、開閉バルブ241aを閉めて開閉バルブ241iを開けることにより、TMAタンク260による原料ガスの生成を継続したまま処理室201内への原料ガスの供給を停止すると共に、開閉バルブ241g及び開閉バルブ241hを開けることにより、第1不活性ガス供給管240g及び第2不活性ガス供給管240hからの不活性ガス(パージガス)を処理室201内へ供給することが可能なように構成されている。同様に、開閉バルブ241bを閉めて開閉バルブ241jを開けることにより、オゾナイザ270によるオゾンガスの生成を継続したまま処理室201内へのオゾンガスの供給を停止すると共に、開閉バルブ241g及び開閉バルブ241hを開けることにより、第1不活性ガス供給管240g及び第2不活性ガス供給管240hからの不活性ガス(パージガス)を処理室201内へ供給することが可能なように構成されている。このように、処理室201内へ不活性ガス(パージガス)を供給することにより、処理室201内からの原料ガス、オゾンガス等の排出を促すことができる。
【0047】
(ガス排気部及びガス排気口)
インナチューブ204の側壁には、ウエハ200が積載される方向に沿って、インナチューブ204の側壁の一部を構成するガス排気部204bが設けられている。ガス排気部204bは、処理室201内に収容されたウエハ200を挟み、ノズル収容部201aと対向する位置に設けられている。
【0048】
ガス排気部204bにはガス排気口204aが開設されている。ガス排気口204aは、ウエハ200を挟んで反応ガス噴出口248bと対向する位置(例えば、反応ガス噴出口248bと約180度反対側の位置)に開設されている。本実施形態に係るガス排気口204aは、穴形状であって、複数枚のウエハ200のそれぞれに対応する位置(高さ位置)に開設されている。従って、アウタチューブ203とインナチューブ204とに挟まれる空間203aは、ガス排気口204aを介して処理室201に連通することとなる。なお、ガス排気口204aの穴径は、処理室201内のガスの流量分布や速度分布を適正化するように適宜調整することができ、例えば、下部から上部にわたって同一としてもよく、下部から上部にわたって徐々に大きくしてもよい。
【0049】
また、ガス排気部204bの下端の高さ位置は、処理室201内に搬入されるウエハ200のうち最下端のウエハ200の高さ位置に対応させることが好ましい。同様に、ガス排気部204bの上端の高さ位置は、処理室201内に搬入されるウエハ200のうち最上端のウエハ200の高さ位置に対応させることが好ましい。ウエハ200の存在しない領域にまでガス排気部204bが設けられていると、ウエハ200間を流れるべきガスがウエハ200の存在しない領域に流れてしまう場合があるからである。
【0050】
(排気ユニット)
マニホールド209の側壁には排気管231の上流端が接続されている。排気管231
には、上流側から順に、圧力検出器としての圧力センサ245、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ231a、真空排気装置としての真空ポンプ231b、排気ガス中から有害成分を除去する除害設備231cが設けられている。真空ポンプ231bを作動させつつ、圧力センサ245からの圧力情報に基づいてAPCバルブ231aの開閉弁の開度を調整することにより、処理室201内の圧力を所望の圧力とすることが可能なように構成されている。
【0051】
主に、排気管231、圧力センサ245、APCバルブ231a、真空ポンプ231b、除害設備231cにより、排気ユニットが構成される。
【0052】
上述したように、アウタチューブ203とインナチューブ204とに挟まれる空間203aは、ガス排気口204aを介して処理室201内に連通している。そのため、原料ガスノズル233aあるいは反応ガスノズル233bから処理室201内に原料ガス、反応ガスを供給しつつ、排気ユニットによりアウタチューブ203とインナチューブ204とに挟まれる空間203aを排気することにより、原料ガス噴出口248a、反応ガス噴出口248bからガス排気口204aへと向かう実質的に水平方向のガス流10が処理室201内に生成される。かかる様子を、原料ガスを例にして図5に示す。
【0053】
(コントローラ)
制御部としてのコントローラ280は、ヒータ207、圧力センサ245、APCバルブ231a、真空ポンプ231b、除害設備231c、回転機構267、ボートエレベータ115、開閉バルブ241a,241b,241e,241f,241g,241h,241i,241j、流量コントローラ242b,242f,242g,242h、TMAタンク260、オゾナイザ270、オゾン除害装置242j、温度センサ(図示は省略)等にそれぞれ接続されている。コントローラ280により、ヒータ207の温度調整動作、APCバルブ231aの開閉及び圧力調整動作、真空ポンプ231bの起動・停止、回転機構267の回転速度調節、ボートエレベータ115の昇降動作、開閉バルブ241a,241b,241e,241f,241g,241h,241i,241jの開閉動作、流量コントローラ242b,242f,242g,242hの流量調整等の制御が行われる。
【0054】
(4)基板処理工程
続いて、本実施形態に係る基板処理工程について、図面を参照しながら説明する。図6は、本実施形態に係る基板処理工程のフローチャート図である。図7は、ウエハ200上に酸化アルミニウム膜(AlO膜)500が形成される様子を模式的に示す断面図である。図8は、本実施形態に係るガス供給の様子を模式的に示す図である。図9は、本実施形態の基板処理工程に係るガス供給に係るタイミングチャート図である。なお、本実施形態では、原料ガスとしてTMAガスを、反応ガスとしてオゾンガスを用い、ALD法によりウエハ200上に所定の膜、すなわち高誘電率膜としての酸化アルミニウム膜500を成膜する方法を例示して説明する。ここで実施されるALD法は、半導体装置の製造工程の一工程として実施される。なお、以下の説明において、基板処理装置101を構成する各部の動作はコントローラ280により制御される。
【0055】
本実施形態に係る基板処理工程では、図6に示すように、基板搬入工程S10、減圧・昇温工程S20、酸化アルミニウム膜形成工程S30、大気圧復帰工程S40、基板搬出工程S50を実施する。
【0056】
[基板搬入工程S10]
まず、複数枚のウエハ200をボート217に装填(ウエハチャージ)する。そして、複数枚のウエハ200を保持したボート217を、ボートエレベータ115によって持ち
上げて処理室201内に収容(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ219はOリング(図示は省略)を介してマニホールド209の下端を気密に封止した状態となる。なお、ウエハチャージ、ボートロード時においては、開閉バルブ241g、開閉バルブ241hを開けて、処理室201内にパージガスを供給し続けることが好ましい。
【0057】
[減圧・昇温工程S20]
続いて、開閉バルブ241g、開閉バルブ241hを閉め、処理室201内が所望の処理圧力(真空度)となるように、真空ポンプ231bにより排気する。この際、圧力センサ245で測定した圧力情報に基づき、APCバルブ231aの開度をフィードバック制御する。また、ウエハ200表面が所望の処理温度となるようにヒータ207への通電量を調整する。この際、温度センサ(図示は省略)が検出した温度情報に基づき、ヒータ207への通電具合をフィードバック制御する。そして、回転機構267により、ボート217及びウエハ200の回転を開始させる。なお、温度調整、圧力調整、ウエハ200の回転は、後述する酸化アルミニウム膜形成工程S30の完了時まで継続する。
【0058】
なお、圧力・温度安定時の処理室201内の条件としては、例えば、
処理圧力:1〜100Pa、好ましくは40Pa、
処理温度:450〜650℃、好ましくは550℃
が例示される。
【0059】
[酸化アルミニウム膜形成工程S30]
続いて、ウエハ200上に、所望の厚さの高誘電率膜としての酸化アルミニウム膜500を形成する(図7を参照)。
【0060】
(原料ガス供給工程S31)
まず、開閉バルブ241fを開けてTMAタンク260内にキャリアガスとしてのArガスを供給し、TMAタンク260内の液体TMAをバブリングする。これにより、TMAタンク260内にて液体TMAを気化させて原料ガスとしてのTMAガスを生成する。TMAガスが安定して生成されるまでは、開閉バルブ241aが閉じた状態で、開閉バルブ241iを開けて、TMAガスとArガスとの混合ガスを原料ガスベント管240iから排出しておく。なお、TMAガスの生成は、上述の減圧・昇温工程S20と並行して実施することとし(予備気化)、減圧・昇温工程S20の完了時にはTMAガスの生成量を安定させておくことが好ましい。
【0061】
TMAガスが安定して生成されるようになったら、開閉バルブ241iを閉め、開閉バルブ241aを開けて、TMAガスとArガスとの混合ガスの、原料ガスノズル233aを介した処理室201内への供給を開始する。その際、開閉バルブ241gを開け、第1不活性ガス供給管240gからNガス(希釈ガス)を供給し、処理室201内でTMAガスを希釈するようにしてもよい。また、第1不活性ガス供給管240gから供給されるNガスにより混合ガスを押し出し、処理室201内への混合ガスの供給を促すようにしてもよい(Nプッシュ)。
【0062】
原料ガスノズル233aから処理室201内に供給された混合ガスは、図8に示すように、ボート217の下端側のウエハ200から上端側のウエハ200にそれぞれ供給される。そして、処理室201内に供給された混合ガスは、図5に示すように、各ウエハ200上をそれぞれ通過してガス排気口204aへと向かう実質的に水平方向のガス流10となり、ガス排気口204aを介して排気管231から排気される。その際、積層された各ウエハ200に供給されたTMAガスは、各ウエハ200の表面、あるいはウエハ200上にすでに吸着しているTMA分子の吸着層等の表面と化学吸着(表面反応)を起こして、ウエハ200上にTMA分子の吸着層またはAl層を形成する。さらに、各ウエハ20
0に供給されたTMAガスは、その一部が熱分解することでALD反応のみならずCVD反応を生じさせ、ウエハ200上にアルミニウム原子同士の結合(Al−Al結合)を含むAl層を形成する。ここで、TMA分子の吸着層とは、TMA分子の連続的な吸着層の他、不連続な吸着層、及び不連続な層が重なって出来る連続的な層をも含む。また、Al層とは、Alにより構成される連続的な層の他、不連続な層、及び不連続な層が重なって出来る連続的な層をも含む。なお、Alはそれ単独で固体となる元素である。以下、ウエハ200上に形成されるTMA分子の吸着層及びAl層を、Al含有層500aとも呼ぶ。図7(b)に、各ウエハ200上にAl含有層500aがそれぞれ形成された様子を示す。
【0063】
混合ガスの供給を所定時間継続した後、開閉バルブ241aを閉め、開閉バルブ241iを開けて、TMAガスの生成を継続したまま処理室201内へのTMAガスの供給を停止する。なお、開閉バルブ241fは開けたままとし、TMAタンク260内へのArガスの供給は継続する。
【0064】
(排気工程S32)
続いて、開閉バルブ241a,241bを閉めた状態で、開閉バルブ241g及び開閉バルブ241hを開けてNガス(パージガス)を供給して処理室201内をパージしつつ、処理室201内を排気することにより、処理室201内に残留するTMAガス(残留ガス)等を除去する。所定時間が経過して処理室201内の雰囲気がNガスに置換(パージ)されたら、開閉バルブ241g及び開閉バルブ241hを閉めて処理室201内へのNガスの供給を停止する。排気工程S32を実施することにより、図9に示すように、原料ガス供給工程S31で供給したTMAガスと、後述の反応ガス供給工程S33で供給するオゾンガスとを、互いに混合させないようにできる。なお、パージは所定回数繰り返すようにしてもよい(サイクルパージ)。この場合、処理室201内に残留するTMAガス等をより確実に除去することができる。
【0065】
(反応ガス供給工程S33)
続いて、処理室201内に反応ガスとしてのオゾンガスを供給し、ウエハ200上のAl含有層500aを酸化させる。まず、開閉バルブ241eを開けてオゾナイザ270に酸素ガスを供給し、反応ガスとしてのオゾンガス(酸化剤)を生成する。オゾンガスが安定して生成されるまでは、開閉バルブ241bを閉めた状態で、開閉バルブ241jを開けて、オゾンガスを反応ガスベント管240jから排出しておく。なお、オゾンガスの生成は、上述の減圧・昇温工程S20と並行して実施することとし、減圧・昇温工程S20の完了時にはオゾンガスの生成量を安定させておくことが好ましい。
【0066】
オゾンガスが安定して生成されるようになったら、開閉バルブ241jを閉め、開閉バルブ241bを開けて、反応ガスノズル233bを介した処理室201内へのオゾンガスの供給を開始する。この際、開閉バルブ241gを開け、第2不活性ガス供給管240hからNガス(希釈ガス)を供給し、反応ガスノズル233b内でオゾンガスを希釈するようにしてもよい。また、第2不活性ガス供給管240hから供給されるNガスによりオゾンガスを押し出し、処理室201内へのオゾンガスの供給を促すようにしてもよい(Nプッシュ)。
【0067】
反応ガスノズル233bから処理室201内に供給されたオゾンガスは、図5に示す原料ガスと同様に、反応ガス噴出口248bからガス排気口204aへと向かう水平方向のガス流10となり、排気管231から排気される。その際、積層された各ウエハ200に供給されたオゾンガスは、各ウエハ200上のAl含有層500aに接触してこれらをそれぞれ酸化させる。図7(c)に、各ウエハ200上に酸化アルミニウム層500bがそれぞれ形成された様子を示す。
【0068】
オゾンガスの供給を所定時間継続した後、開閉バルブ241bを閉め、開閉バルブ241jを開けて、オゾンガスの生成を継続したまま処理室201内へのオゾンガスの供給を停止する。
【0069】
(排気工程S34)
続いて、排気工程S32と同様の手順及び処理条件により、処理室201内に残留するオゾンガス(残留ガス)等を除去する。排気工程S34を実施することにより、図9に示すように、反応ガス供給工程S33で供給したオゾンガスと、次のサイクルの原料ガス供給工程S31で供給するTMAガスとを、互いに混合させないようにできる。
【0070】
以後、原料ガス供給工程S31〜排気工程S34を1サイクルとして、このサイクルを所定回数実施して酸化アルミニウム層500bを積層させることにより、ウエハ200上に所望の厚さの酸化アルミニウム膜500を形成する(図7(d))。サイクルの実施回数を調整することで、酸化アルミニウム膜500の膜厚を制御できる。なお、各工程の処理条件としては、例えば以下に示すような条件とすることができる。
【0071】
<原料ガス供給工程S31の処理条件>
処理圧力:50〜150Pa、好ましくは100Pa、
キャリアガス(Arガス)の流量:0.1〜2slm、好ましくは0.5slm、
処理温度:450〜650℃、好ましくは550℃、
実施時間:5〜20秒、好ましくは10秒
希釈ガス(Nガス)の流量:10〜20slm、好ましくは17slm
【0072】
<反応ガス供給工程S33の処理条件>
処理圧力:50〜200Pa、好ましくは70Pa、
反応ガス(オゾンガス)の流量:3〜20slm、好ましくは6slm、
希釈ガス(Nガス)の流量:0〜2slm、好ましくは0.5slm、
処理温度:450〜650℃、好ましくは550℃、
実施時間:10〜60秒、好ましくは20秒
【0073】
<排気工程S32,S34の処理条件>
処理圧力:50〜200Pa、好ましくは100Pa、
パージガス(Nガス)の流量(第1不活性ガス供給管):1〜10slm、好ましくは5slm、
パージガス(Nガス)の流量(第2不活性ガス供給管):1〜10slm、好ましくは5slm、
処理温度:450〜650℃、好ましくは550℃、
実施時間:5〜60秒、好ましくは10秒
【0074】
[大気圧復帰工程S40]
ウエハ200上に所望の厚さの酸化アルミニウム膜500を形成した後、APCバルブ231aの弁の開度を小さくし、開閉バルブ241g、開閉バルブ241hを開けて、プロセスチューブ205内(処理室201内及びアウタチューブ203内)の圧力が大気圧になるまで処理室201内にNガス(パージガス)を供給する。
【0075】
[基板搬出工程S50]
そして、基板搬入工程S10と逆の手順で、処理室201内からボート217を搬出し(ボートアンロード)、成膜済のウエハ200をボート217から脱装する(ウエハディスチャージ)。なお、ボートアンロード、ウエハディスチャージ時においては、開閉バル
ブ241g、開閉バルブ241hを開けて、処理室201内にパージガスを供給し続けることが好ましい。
【0076】
その後、酸化アルミニウム膜500が形成されたウエハ200に対して、例えば、配線や電極等の導電膜を形成する工程、その他の絶縁膜を形成する工程、熱処理工程等を順次実施し、酸化アルミニウム膜500を有する半導体装置をする。
【0077】
(5)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0078】
(a)本実施形態に係る原料ガスノズル233aの垂直部は、処理室201内のウエハ200の収容予定領域よりも下方の所定位置に配設されるように構成されている。この構成によれば、処理温度を上昇させても原料ガスノズル233a内部の温度上昇が抑えられるので、原料ガスノズル233a内部でのTMAガスの熱分解が抑えられる。これにより、原料ガスノズル233a内でのアルミニウム原子同士のCVD反応が抑えられる。また、原料ガスノズル233aの内壁への反応生成物やTMAガスの分解物の堆積を抑え、原料ガスノズル233aの目詰まりを抑えることができる。
【0079】
(b)また、本実施形態によれば、原料ガスノズル233aに反応生成物や分解物が堆積し難く、TMAガスの流路が狭められ難くなるので、安定した流量及び流速で処理室201内にTMAガスを供給することができる。
【0080】
(c)また、本実施形態によれば、処理温度を高くして基板処理を行うことが可能であるので、TMAガスを構成する炭素原子や水素原子等が酸化アルミニウム膜500中に残留してしまうことを抑制でき、酸化アルミニウム膜500中の不純物量を低減させることができる。これにより、不純物に起因する誘電率の低下が抑えられ、リーク電流が低減される等、高誘電率膜としての機能を向上させることができる。
【0081】
(d)また、本実施形態のように原料ガスノズル233aに分解物が堆積しにくい場合には、原料ガスノズル233aのクリーニング周期を長くすることができる。これにより、メンテナンスにより基板処理装置101を停止させる期間が短縮されるので、基板処理装置101を効率的に稼働させることができ、生産性を向上させることができる。また、分解物が堆積すると、原料ガスノズル233aと分解物との熱応力の差により原料ガスノズル233aが破損する場合があるが、本実施形態によれば、このような原料ガスノズル233aの破損が起こりにくくなる。
【0082】
ここで、本実施形態の基板処理装置101と比較するために、従来の基板処理装置の原料ガスノズルの構成について簡単に説明する。図17は、従来の基板処理装置の概略、及び内部に分解物950が堆積した原料ガスノズル933aを模式的に示す断面図である。図19、図20は、内部に分解物950が堆積した原料ガスノズル933aの例を示す説明図である。図17に示すように、従来の基板処理装置では、複数の原料ガス噴出口948aを備えた原料ガスノズル933aがボート917の上端付近まで延びる構成となっていた。また、原料ガスノズル933aの垂直部は、処理室901内のヒータ(図示せず)が取り囲む空間内に設置されていた。そのため、基板処理時には、原料ガスノズル933a内部の温度がTMAガスの熱分解温度以上に上昇してしまい、処理室901内に供給される前にTMAガスが熱分解されてしまう場合があった。そして、図17に示すように、原料ガスノズル933aの内壁にTMAガスから生成された分解物950が堆積してしまうことがあった。内部に分解物950が堆積した原料ガスノズル933aの具体例を、図19(a)、図19(b)、図20(a)、図20(b)にそれぞれ示す。また、原料ガスノズル933a内で原料ガスが熱分解しないように基板処理を低下させると、形成され
る薄膜中に原料ガス分子に含まれる炭素原子や水素原子等が残留してしまい、薄膜中の不純物量が増加してしまう場合があった。本実施形態よれば、原料ガスノズル233aをショートノズルとして構成し、処理温度を比較的高くしているので、これらの課題を解決できる。
【0083】
<本発明の第2の実施形態>
第1の実施形態では、原料ガスノズル233aを、反応ガスノズル233bのような多孔式のロングノズルとして構成せず、その垂直部がウエハ200の収容予定領域よりも下方に配置されるショートノズルとして構成していた。しかしながら、原料ガスノズル233aをショートノズルとして構成すると、原料ガスノズル233a内部での原料ガスの熱分解を抑えることはできるものの、TMAガスの供給量が処理室201内で(ウエハ200間で)局所的にばらついてしまう場合があった。例えば、ウエハ200に対するサイクル毎のTMAガスの供給量が、処理室201内の上部側のウエハ200では多くなり、下部側のウエハ200では少なくなってしまう等の場合があった。その結果、ウエハ200上に形成される酸化アルミニウム膜500の膜厚が、ウエハ200間でばらついてしまうことがあった。
【0084】
ウエハ200間での膜厚のばらつきは、特に、酸化アルミニウム膜500中の不純物量を低減させようとして処理温度を上昇させると増大する傾向があった。これは、処理温度を上昇させると、処理室201内ではALD反応のみならずCVD反応も生じることに一要因があるものと考えられる。上述したように、処理温度を上昇させると、各ウエハ200に供給されたTMAガスは、その一部が熱分解することでALD反応のみならずCVD反応を生じさせ、ウエハ200上にはアルミニウム原子同士の結合を含むAl層が形成される。このCVD反応により形成されるAl層の厚さは、ガス分子の吸着が飽和することによってセルフリミットがかかるALD反応の場合と異なり、TMAガスの供給量に大きく依存する。このため、TMAガスの供給量が処理室201内で局所的にばらついてしまうと、Al含有層500aの厚さ、すなわち酸化アルミニウム膜500の膜厚も伴ってばらついてしまうのである。
【0085】
そこで、本実施形態では、異なる流速でTMAガスを供給する工程を同一サイクル内で複数設けることにより、原料ガスノズル233aをショートノズルとして構成した場合であっても、処理室201内(ウエハ200間)におけるTMAガスの供給量の局所的なばらつきを低減させるようにしている。具体的には、第1の流速での処理室201内へのTMAの供給処理と、第1の流速とは異なる第2の流速での処理室201内へのTMAガスの供給処理と、を順次行うことで、ウエハ200間におけるTMAガスの供給量の局所的なばらつきを低減させることとしている。例えば、第1の流速で主に処理室201内の下部側のウエハ200にTMAガスを局所的に供給する工程と、第1の流速より大きな第2の流速で主に処理室201内の上部側のウエハ200にTMAガスを局所的に供給する工程とを、サイクル内で順次実施するようにすれば、1サイクル全体で見たときのTMAガス供給量をウエハ200間でより均一化することができる。すなわち、本実施形態では、1回の原料ガス供給工程で全てのウエハ200に対しTMAガスを均等に供給しようとするのではなく、1回の原料ガス供給工程では意図的に一部のウエハ200にのみTMAガスが局所的に供給されるようにしつつ、その後、流速を異ならせることでTMAガスが主に供給される場所を切り替えるようにしながら、サイクル毎に複数の原料ガス供給工程を順次実施することで、TMAガスの供給量の局所的なばらつきを低減させるようにしている。
【0086】
以下に、本実施形態について説明する。なお、以下では、第1の実施形態と重複する内容を適宜省略しながら説明する。
【0087】
(1)処理炉の構成
本実施形態に係るコントローラ280は、異なる流速で互いに混合させないよう処理室201内に原料ガスを供給する処理を含むサイクルを所定回数実施させるように構成されている。例えば、コントローラ280は、第1の流速で主に処理室201内の下部側のウエハ200にTMAガスを供給する処理と、第1の流速よりも大きい第2の流速で主に処理室201内の上部側のウエハ200にTMAガスを供給する処理と、を含むサイクルを所定回数実施させるように構成されている。
【0088】
TMAガスの流速を第1の流速と第2の流速とで切り替えるには、例えば、原料ガスとしてのTMAガス、キャリアガスとしてのArガスの流量をそれぞれ一定にしつつ、第1不活性ガス供給管240gから供給されるNガスの流量を変更すればよい。具体的には、第1不活性ガス供給管240gから供給されるNガスの流量を多くすることで、TMAガスの流量を変更することなく、流速を増大させることができる。また、第1不活性ガス供給管240gから供給されるNガスの流量を少なくすることで、TMAガスの流量を変更することなく、流速を減少させることができる。このように、本実施形態では、第1不活性ガス供給管240gから供給される不活性ガスは、上述の希釈ガス及びパージガスとしての機能に加え、処理室201内に供給されるTMAガスの流速を異ならせる流速調整ガスとしての機能も有する。
【0089】
(2)基板処理工程
図10は、本実施形態に係る基板処理工程のフローチャート図である。図11は、本実施形態に係る原料ガス供給の様子を模式的に示す図であり、(a)原料ガスの流速を第1の流速とした場合、(b)原料ガスの流速を第1の流速より大きな第2の流速とした場合をそれぞれ示す。図12は、本実施形態のガス供給に係るタイミングチャート図である。これらの図面を参照しつつ、本実施形態に係る基板処理工程について説明する。図13は、本実施形態に係るTMAガス供給シーケンス、及び処理条件を従来と比較して示す図である。
【0090】
本実施形態の基板処理工程では、図10に示すように、基板搬入工程S10、減圧・昇温工程S20、酸化アルミニウム膜形成工程S130、大気圧復帰工程S40、基板搬出工程S50を実施する。なお、酸化アルミニウム膜形成工程S130以外の工程は、第1の実施形態と同様の処理手順及び処理条件で行うので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0091】
[酸化アルミニウム膜形成工程S130]
本実施形態では、以下に示す第1の原料ガス供給工程S131〜排気工程S136を1サイクルとして、このサイクルを所定回数実施することにより、ウエハ200上に所望の厚さの酸化アルミニウム膜500を形成する。なお、ここでは、減圧・昇温工程S20の完了時にはTMAタンク260からTMAガスが安定して生成され、オゾナイザ270からオゾンガスが安定して生成されているものとする。
【0092】
(第1の原料ガス供給工程S131)
第1の原料ガス供給工程S131では、第1の実施形態に係る原料ガス供給工程S31とほぼ同様の処理手順により処理室201内にTMAガスを供給する。このとき、例えば、図11(a)に示すように、主に処理室201内の下部側のウエハ200にTMAガスが供給されるよう、TMAガスの流速を比較的小さな第1の流速に調整する。具体的には、第1不活性ガス供給管240gから供給されるNガス(流量調整ガス)の流量を少なくして、TMAガスの流速を第1の流速に調整する。
【0093】
原料ガスノズル233aから供給されたTMAガスは、原料ガス噴出口248aからガス排気口204aへと向かいつつ、主に処理室201内の下部側のウエハ200上で実質
的に水平方向のガス流となる。ウエハ200を通過したTMAガスは、その後、排気管231から排気される。各ウエハ200に供給されたTMAガスは、各ウエハ200の表面、あるいはウエハ200上にすでに吸着しているTMA分子の吸着層等の表面と化学吸着(表面反応)を起こす。その結果、主に処理室201内の下部側のウエハ200上に、図7(b)に示すAl含有層500aが形成される。
【0094】
(排気工程S132)
続いて、排気工程S132では、第1の実施形態に係る排気工程S32とほぼ同様の処理手順及び処理条件により処理室201内をパージする。排気工程S132を行うことにより、図12(a)に示すように、第1の原料ガス供給工程S131で供給したTMAガスと、後述の第2の原料ガス供給工程S133で供給するTMAガスとが、互いに混合しないようにしている。
【0095】
(第2の原料ガス供給工程S133)
続いて、第1の実施形態に係る原料ガス供給工程S31とほぼ同様の処理手順により処理室201内にTMAガスを供給する。このとき、例えば、図11(b)に示すように、主に処理室201内の下部側のウエハ200にTMAガスが供給されるよう、TMAガスの流速を第1の流速よりも大きな第2の流速に調整する。具体的には、第1不活性ガス供給管240gから供給されるNガスの流量(流量調整ガス)を多くして、TMAガスの流量を工程S131から変更することなく、TMAガスの流速を第2の流量に切り替える。
【0096】
原料ガスノズル233aから供給されたTMAガスは、原料ガス噴出口248aからガス排気口204aへと向かいつつ、主に処理室201内の上部のウエハ200上で実質的に水平方向のガス流となる。ウエハ200を通過したTMAガスは、その後、排気管231から排気される。各ウエハ200に供給されたTMAガスは、各ウエハ200の表面、あるいはウエハ200上にすでに吸着しているTMA分子の吸着層等の表面と化学吸着(表面反応)を起こす。その結果、主に処理室201内の上部側のウエハ200上に、図7(b)に示すAl含有層500aが形成される。この際、TMAガスの流量は工程S131と工程S133とで変更されていないため、ウエハ200へのTMAガスの供給量は、工程S131と工程S133とで均等となる。そのため、工程S131及び工程S133の処理時間を揃えることで、ウエハ200上に形成されるAl含有層500aの厚さを、ウエハ200間で容易に均一化することができる。
【0097】
(排気工程S134)
続いて、排気工程S134では、第1の実施形態に係る排気工程S32とほぼ同様の処理手順及び処理条件により処理室201内をパージする。排気工程S134を行うことにより、図11(a)に示すように、第2の原料ガス供給工程S133で供給したTMAガスと、後述の反応ガス供給工程S135で供給するオゾンガスとが、互いに混合しないようにしている。
【0098】
(反応ガス供給工程S135)
続いて、反応ガス供給工程S135では、第1の実施形態に係る反応ガス供給工程S33とほぼ同様の処理手順及び処理条件により処理室201内にオゾンガスを供給する。反応ガスノズル233bから処理室201内に供給されたオゾンガスは、図5に示す原料ガスと同様に反応ガス噴出口248bからガス排気口204aへと向かう水平方向のガス流10となり、排気管231から排気される。その際、積層された各ウエハ200にオゾンガスが供給され、オゾンガスは、各ウエハ200上のAl含有層500aを酸化させ、酸化アルミニウム層500bが形成される(図7(c))。なお、反応ガスノズル233bは、上述のように多孔式のロングノズルとして構成されているため、ウエハ200へのオ
ゾンガスの供給量はウエハ200間で均等となる。
【0099】
(排気工程S136)
続いて、排気工程S136では、第1の実施形態に係る排気工程S34と同様の処理手順及び処理条件により処理室201内をパージする。排気工程S136を行うことにより、図11(a)に示すように反応ガス供給工程S135で供給されたオゾンガスと、次のサイクルの第1の原料ガス供給工程S131で供給されるTMAガスとが、互いに混合しないようにしている。
【0100】
以後、第1の原料ガス供給工程S131〜排気工程S136を1サイクルとして、このサイクルを所定回数実施することによりウエハ200上に所望の厚さの酸化アルミニウム膜500(図7(d))を形成する。なお、各工程の処理条件としては、例えば以下に示すような条件とすることができる。
【0101】
<第1の原料ガス供給工程S131の処理条件>
処理圧力:20〜100Pa、好ましくは50Pa、
キャリアガス(Arガス)の流量:0.1〜2slm、好ましくは0.5slm、
流量調整ガス(Nガス)の流量:1〜5slm、好ましくは3slm、
処理温度:450〜650℃、好ましくは550℃、
実施時間:2〜10秒、好ましくは5秒
【0102】
<第2の原料ガス供給工程S133の処理条件>
処理圧力:50〜200Pa、好ましくは120Pa、
キャリアガス(Arガス)の流量:0.1〜2slm、好ましくは0.5slm、
流量調整ガス(Nガス)の流量:10〜30slm、好ましくは20slm、
処理温度:450〜650℃、好ましくは550℃、
実施時間:2〜10秒、好ましくは5秒
【0103】
<反応ガス供給工程S135の処理条件>
処理圧力:50〜200Pa、好ましくは70Pa、
反応ガス(オゾンガス)の流量:3〜20slm、好ましくは6slm、
希釈ガス(Nガス)の流量:0〜2slm、好ましくは0.5slm、
処理温度:450〜650℃、好ましくは550℃、
実施時間:10〜60秒、好ましくは20秒
【0104】
<排気工程S132,S134,S136の処理条件>
処理圧力:50〜200Pa、好ましくは100Pa、
流量調整ガス(Nガス)の流量(第1不活性ガス供給管):1〜10slm、好ましくは5slm、
流量調整ガス(Nガス)の流量(第2不活性ガス供給管):1〜10slm、好ましくは5slm、
処理温度:450〜650℃、好ましくは550℃、
実施時間:5〜60秒、好ましくは10秒
【0105】
なお、上述の実施形態では、第1の流速でTMAガスを供給した後、第1の流速よりも大きい第2の流速でTMAガスを供給しているが、本実施形態はこのような場合に限定されない。例えば、図12(b)に示すように、第2の流速で主に処理室201内の上部側のウエハ200にTMAガスを供給した後、第2の流速よりも小さな第1の流速で主に処理室201内の下部側のウエハ200にTMAガスを供給するようにしてもよい。
【0106】
また、上述の実施形態では、TMAガスの流速を第1の流速、第2の流速の2段階で切り替えながら処理室201内の2つの領域にTMAガスを順次供給しているが、本実施形態はこのような場合に限定されない。例えば、TMAガスの流速を3段階以上で切り替えながら、処理室201内の3つ以上の領域にTMAガスを順次供給するようにしてもよい。流速の段階を増やすことで、1サイクル全体で見たときのTMAガス供給量をウエハ200間でさらに均一化することができる。
【0107】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、第1の実施形態に係る効果に加え、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0108】
(a)本実施形態によれば、第1の流速で主に処理室201内の下部側のウエハ200にTMAガスを局所的に供給する第1の原料ガス供給工程S131と、第1の流速より大きな第2の流速で主に処理室201内の上部側のウエハ200にTMAガスを局所的に供給する第2の原料ガス供給工程S133とを、サイクル毎に順次実施するようにしている。すなわち、1回の原料ガス供給工程で全てのウエハ200に対しTMAガスを均等に供給しようとするのではなく、1回の原料ガス供給工程では意図的に一部のウエハ200にのみTMAガスが局所的に供給されるようにしつつ、その後、流速を異ならせることでTMAガスが主に供給される場所を切り替えるようにしながら、サイクル毎に複数の原料ガス供給工程を順次実施するようにしている。これにより、原料ガスノズル233aをショートノズルとして構成したとしても、1サイクル全体で見たときのTMAガスの供給量をウエハ200間で均一化させることができる。そして、ウエハ200間での酸化アルミニウム膜500の膜厚均一性を向上させることができる。
【0109】
(b)本実施形態によれば、第1の原料ガス供給工程S131と第2の原料ガス供給工程S133とでTMAガス及びArガスの流量をそれぞれ一定としつつ、流量調整ガスとしてのNガスの流量のみを異ならせることで、TMAガスの流速を変化させている。これにより、TMAガスの流速の切り替えに係る制御が簡略化される。
【0110】
(c)また、本実施形態によれば、TMAガス及びArガスの流量をそれぞれ一定としつつ、TMAガス流量調整ガスとしてのNガスの流量を異ならせることのみで、TMAガスの流速を変化させている。すなわち、各ウエハ200へのTMAガスの供給量は、第1の原料ガス供給工程S131と第2の原料ガス供給工程S133とで均等となる。そのため、第1の原料ガス供給工程S131及び第2の原料ガス供給工程S133の処理時間や実施回数をそれぞれ揃えることで、ウエハ200上に形成されるAl含有層500aの厚さ、すなわち、酸化アルミニウム膜500の厚さを、ウエハ200間で容易に均一化することができる。
【0111】
<本発明の第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、第1の流速での処理室201内へのTMAガスの供給処理を実施した後、第2の流量での処理室201内へのTMAガスの供給処理を実施する前に、処理室201内へのオゾンガスの供給処理を行うようにした点が第2の実施形態とは異なる。すなわち、本実施形態では、異なる流速で処理室201内にTMAガスを供給する毎に、処理室201内にオゾンガスを供給してウエハ200上のAl含有層500aを酸化する。本実施形態は、反応ガスが熱分解し易い性質を有する場合には、特に有効である。すなわち、反応ガスノズル233bを、原料ガスノズル233aと同様にショートノズルとして構成した場合に特に有効である。なお、以下では、第1,第2の実施形態と重複する内容を適宜省略しながら説明する。
【0112】
(1)処理炉の構成
本実施形態においては、制御部としてのコントローラ280は、第1の流速で主に処理室201内の下部側のウエハ200へのTMAガスの供給処理と、処理室201内へのオゾンガスの供給処理と、第1の流速よりも大きい第2の流速で主に処理室201内の上部側のウエハ200へのTMAガスの供給処理と、処理室201内へのオゾンガスの供給処理と、を1サイクルとして、このサイクルを所定回数実施させるように構成されている。なお、TMAガスの流速の切り替えは、第2の実施形態とほぼ同様の手法で行うことができる。
【0113】
(2)基板処理工程
次に、本実施形態に係る基板処理工程について説明する。図14は、本実施形態に係る基板処理工程のフローチャート図である。図15は、本実施形態のガス供給に係るタイミングチャート図である。これらの図面を参照しつつ、本実施形態に係る基板処理工程について説明する。
【0114】
本実施形態の基板処理工程では、図14に示すように、基板搬入工程S10、減圧・昇温工程S20、酸化アルミニウム膜形成工程S230、大気圧復帰工程S40、基板搬出工程S50を実施する。なお、酸化アルミニウム膜形成工程S230以外の工程は、第1,第2の実施形態と同様の処理手順及び処理条件で行うので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0115】
[酸化アルミニウム膜形成工程S230]
本実施形態では、以下に示す第1の原料ガス供給工程S231〜排気工程S238を1サイクルとして、このサイクルを所定回数実施することにより、ウエハ200上に所望の厚さの酸化アルミニウム膜500を形成する。
【0116】
(第1の原料ガス供給工程S231)
第1の原料ガス供給工程S231では、第2の実施形態の第1の原料ガス供給工程S131とほぼ同様の手順及び処理条件により、第1の流速で主に処理室201内の下部側のウエハ200にTMAガスを供給し(図11(a)を参照)、ウエハ200上に図7(b)に示すAl含有層500aを形成する。
【0117】
(排気工程S232)
続いて、排気工程S232では、第1の実施形態に係る排気工程S32とほぼ同様の処理手順及び処理条件により処理室201内をパージする。排気工程S232を行うことにより、図15(a)に示すように、第1の原料ガス供給工程S231で供給したTMAガスと、後述の反応ガス供給工程S233で供給するオゾンガスとが、互いに混合しないようにしている。
【0118】
(反応ガス供給工程S233)
続いて、反応ガス供給工程S233では、第1の実施形態に係る反応ガス供給工程S33とほぼ同様の手順及び処理条件に基づき処理室201内にオゾンガスを供給し、ウエハ200上のAl含有層500aを酸化させ、ウエハ200上に図7(c)に示す酸化アルミニウム層500bを形成する。なお、反応ガスノズル233bを、原料ガスノズル233aと同様にショートノズルとして構成した場合には、第2不活性ガス供給管240hからのNガス(流量調整ガス)の流量やオゾンガスの流量を調整すること等によってオゾンガスの流速を調整し、主に処理室201内の下部側のウエハ200(第1の原料ガス供給工程S231でTMAガスが供給されたウエハ200)にオゾンガスが供給されるようにするとよい。
【0119】
(排気工程S234)
続いて、排気工程S234では、第1の実施形態に係る排気工程S34とほぼ同様の処理手順及び処理条件により処理室201内をパージする。排気工程S234を行うことにより、図15(a)に示すように、反応ガス供給工程S233で供給したオゾンガスと、後述の第1の原料ガス供給工程S231で供給するTMAガスとが、互いに混合しないようにしている。
【0120】
(第2の原料ガス供給工程S235)
続いて、第2の原料ガス供給工程S235では、第2の実施形態の第2の原料ガス供給工程S133とほぼ同様の手順及び処理条件により、第2の流速で主に処理室201内の上部側のウエハ200にTMAガスを供給し(図11(b)を参照)、ウエハ200上に図7(b)に示すAl含有層500aを形成する。この際、TMAガスの流量は工程S231と工程S235とで変更されていないため、ウエハ200へのTMAガスの供給量は、工程S231と工程S235とで均等となる。そのため、工程S231及び工程S235の処理時間を揃えることで、ウエハ200上に形成されるAl含有層500aの厚さを、ウエハ200間で均一化することができる。
【0121】
(排気工程S236)
続いて、排気工程S236では、第1の実施形態に係る排気工程S34とほぼ同様の処理手順及び処理条件により処理室201内をパージする。排気工程S236を行うことにより、図15(a)に示すように、第2の原料ガス供給工程S235で供給したTMAガスと、後述の反応ガス供給工程S237で供給するオゾンガスとが、互いに混合しないようにしている。
【0122】
(反応ガス供給工程S237)
続いて、反応ガス供給工程S237では、第1の実施形態に係る反応ガス供給工程S33とほぼ同様の手順及び処理条件により処理室201内にオゾンガスを供給し、ウエハ200上のAl含有層500aを酸化させ、ウエハ200上に図7(c)に示す酸化アルミニウム層500bを形成する。なお、反応ガスノズル233bを、原料ガスノズル233aと同様にショートノズルとして構成した場合には、反応ガス供給工程S233と同様にオゾンガスの流速を調整し、主に処理室201内の上部側のウエハ200(第2の原料ガス供給工程S235でTMAガスが供給されたウエハ200)にオゾンガスが供給されるようにするとよい。
【0123】
(排気工程S238)
続いて、排気工程S238では、第1の実施形態に係る排気工程S34とほぼ同様の処理手順及び処理条件により処理室201内をパージする。排気工程S238を行うことにより、図15(a)に示すように、反応ガス供給工程S237で供給したオゾンガスと、次のサイクルの第1の原料ガス供給工程S231で供給するTMAガスとが、互いに混合しないようにしている。
【0124】
なお、上述の実施形態においても、第2の流速で主に処理室201内の上部側のウエハ200にTMAガスを供給した後、第2の流速よりも小さな第1の流速で主に処理室201内の下部側のウエハ200にTMAガスを供給するようにしてもよい。また、TMAガスの流速を3段階以上で切り替えながら、処理室201内の3つ以上の領域にTMAガスを順次供給するようにしてもよい。
【0125】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、第1,第2の実施形態に係る効果に加え、以下に示す効果を奏する。
【0126】
本実施形態では、第1の原料ガス供給工程S231で主にボート217の下部側のウエハ200にTMAガスを供給した後、反応ガス供給工程S233で処理室201内にオゾンガスを供給し、その後、第2の原料ガス供給工程S235で主にボート217の上部側のウエハ200にTMAガスを供給するようにしている。これにより、特に第1の原料ガス供給工程S231においてTMAガスが供給される領域と、第2の原料ガス供給工程S235においてTMAガスが供給される領域との境界付近のウエハ200では、膜厚が厚くなる前にAl含有層500aは酸化されるので、酸化むらを抑え、酸化アルミニウム層500bにおける膜質のばらつきを抑えることができる。
【0127】
また、本実施形態は、反応ガスが熱分解し易い性質を有する場合には、特に有効である。すなわち、反応ガスの熱分解を避けるため、反応ガスノズル233bを原料ガスノズル233aと同様にショートノズルとして構成した場合でも、反応ガス供給工程S233及び反応ガス供給工程S237で反応ガスの流速を互いに異ならせることで、原料ガスと同様に、1サイクル全体で見たときの反応ガス供給量をウエハ200間で均一化させることができる。
【0128】
<本発明の第4の実施形態>
上述の実施形態では、TMAガスの流量、Arガス(キャリアガス)をそれぞれ一定にしつつ、第1不活性ガス供給管240gから供給されるNガス(流速調整ガス)の流量を異ならせることにより、TMAガスの流速を第1の流速と第2の流速とで切り替えていた。しかしながら、本発明はこのような実施形態に限定されない。例えば、本実施形態のように、第1不活性ガス供給管240gから供給されるNガス(流速調整ガス)の流量を一定にしつつ(或いは供給することなく)、TMAガス自体の流量を変えることで、TMAガスの流速を第1の流速と第2の流速とで切り替えるようにしてもよい。例えば、処理室201内の下部側のウエハ200へTMAガスを供給する場合にはTMAガスの流量を少なくしてTMAガスの流速を小さく(第1の流速)し、処理室201内の上部側のウエハ200へTMAガスを供給する場合には、TMAガスの流量を多くしてTMAガスの流速を大きく(第2の流速)するとよい。
【0129】
なお、TMAガス自体の流量を変えると、処理室201内へのTMAガスの供給量、すなわちウエハ200へのTMAガスの供給量も変化してしまう。そのため、TMAガス自体の流量を変えることでTMAガスの流速を変える場合には、1サイクル当りのTMAガスの供給時間や供給回数を調整するとよい。例えば、TMAガス自体の流量を増やすことでTMAガスの流速を大きくした場合には、TMAガスの供給時間や供給回数を減らすとよい。同様に、TMAガス自体の流量を減らすことでTMAガスの流速を小さくした場合には、TMAガスの供給時間や供給回数を増やすとよい。
【0130】
<本発明の第5の実施形態>
TMAガスの流速は、ガス噴射口の口径によっても調整できる。例えば、ガス噴射口の口径が広いと処理室201内に供給されるTMAガスの流速は遅くなり、ガス噴射口の口径が狭いと処理室201内に供給されるTMAガスの流速は速くなる。そこで、本実施形態では、ノズル収容部201a内におけるガス噴射口の高さ位置を揃えつつ、ウエハ200の収容予定領域よりも下方のノズル収容部201a内の所定位置に、ガス噴射口の口径が異なる複数の原料ガスノズルを備えるようにしている。ガス噴射口の口径が大きい原料ガスノズルは、第1の流速で主に処理室201内の下部側のウエハ200にTMAガスを供給するように構成されている。これに対して、ガス噴射口の口径が小さい原料ガスノズルは、第2の流速で主に処理室201内の上部側のウエハ200にTMAガスを供給するように構成されている。
【0131】
本実施形態では、Nガス(流量調整ガス)やTMAガスの流量を変化させることなく
、TMAガスの流速を調整することができる。なお、本実施形態に係る原料ガスノズルの上流端は、例えば、複数に分岐された原料ガス供給管240aの下流端にそれぞれ接続されるようにすればよい。その場合、原料ガスノズルに接続される原料ガス供給管240aの各分岐部分に、開閉バルブをそれぞれ設けるようにすればよい。また、原料ガスノズルの開閉バルブは、コントローラ280により開閉動作が制御されるようにすればよい。このような構成とすれば、原料ガス供給管240aから供給されるTMAガスの流速を、原料ガスノズルの開閉バルブの開閉動作のみで切り替えることが可能となる。これにより、TMAガスの流速に係る制御が簡略化される。
【0132】
<本発明の第6の実施形態>
TMAガスの流速は、原料ガスノズルの長さ(或いはノズル内壁の表面粗さ)によっても調整できる。TMAガスは原料ガスノズルの内壁と摩擦を起こしながらノズル内を流通するため、例えば、原料ガスノズルが長いと(或いはノズル内壁の表面粗さが大きいと)摩擦が大きく、処理室201内に供給されるTMAガスの流速は遅くなり、原料ガスノズルが短いと(或いはノズル内壁の表面粗さが小さいと)摩擦が小さく、処理室201内に供給されるTMAガスの流速は速くなる。そこで、本実施形態では、ノズル収容部201a内におけるガス噴射口の高さ位置を揃えつつ、ウエハ200の収容予定領域よりも下方のノズル収容部201a内の所定位置に、長さが異なる(或いはノズル内壁の表面粗さが異なる)複数の原料ガスノズルを備えるようにしている。長い原料ガスノズル(或いは内壁の表面粗さが大きいノズル)は、第1の流速で主に処理室201内の下部側のウエハ200にTMAガスを供給するように構成されている。これに対して、短い原料ガスノズル(或いは内壁の表面粗さが小さいノズル)は、第2の流速で主に処理室201内の上部側のウエハ200にTMAガスを供給するように構成されている。
【0133】
本実施形態においても、Nガス(流量調整ガス)やTMAガスの流量を変化させることなく、TMAガスの流速を調整することができる。なお、本実施形態に係る複数の原料ガスノズルの上流端は、例えば、複数に分岐された原料ガス供給管240aの下流端にそれぞれ接続されるようにすればよい。その場合、原料ガスノズルに接続される原料ガス供給管240aの各分岐部分に、開閉バルブをそれぞれ設けるようにすればよい。また、原料ガスノズルの開閉バルブは、コントローラ280により開閉動作が制御されるようにすればよい。このような構成とすれば、原料ガス供給管240aから供給されるTMAガスの流速を、原料ガスノズルの開閉バルブの開閉動作のみで切り替えることが可能となる。これにより、TMAガスの流速に係る制御が簡略化される。
【0134】
<本発明のその他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0135】
上述の実施形態では、処理室201がノズル収容部201aを備え、原料ガスノズル233a及び反応ガスノズル233bの垂直部の下流側がノズル収容部201a内に収容された構成となっていたが(図4を参照)、本発明はこのような実施形態に限定されない。図16は、本発明のその他の実施形態に係る基板処理装置が備えるプロセスチューブの横断面図であり、処理室201内にノズル収容部201aが設けられていない場合を示している。このように、原料ガスノズル233a及び反応ガスノズル233bはボート217(ウエハ200)の直近に配設された構成であってもよい。
【0136】
上述の実施形態では液体原料として例えばアルミニウム原子を含有するTMAを用いたが、本発明はこのような形態に限定されない。すなわち、液体原料としてSi原子、Hf原子、Zr原子、Al原子、Ta原子、Ti原子、Ru原子、Ir原子、Ge原子、Sb原子、Te原子のいずれかを含む他の有機化合物あるいは塩化物を用いてもよい。また、
第1の原料ガスとしてTMAを気化させたTMAガスを用いる場合に限定されず、Si原子、Hf原子、Zr原子、Al原子、Ta原子、Ti原子、Ru原子、Ir原子、Ge原子、Sb原子、Te原子のいずれかを含む有機化合物あるいは塩化物を気化或いは分解させた他のガスを用いてもよい。
【0137】
上述の実施形態では、反応ガスとしてオゾンガスを用いて酸化膜を形成したが、これ以外にも、例えば、OガスやHOガス等の酸化剤を用いて酸化膜を形成するようにしてもよい。また、反応ガスとして、例えば、アンモニアガス、Nガス、NO、NOなどの窒化剤を用いて窒化膜を形成するようにしてもよい。
【0138】
上述の実施形態では、ウエハ200上に酸化アルミニウム膜を形成する場合について説明したが、その他、Hf酸化膜、Si酸化膜、AI酸化膜、Ta酸化膜、Ti酸化膜、Ru酸化膜、Ir酸化膜、Si窒化膜、AI窒化膜、Ti窒化膜、GeSbTe膜のいずれかを形成する場合にも本発明は好適に適用可能である。
【実施例】
【0139】
以下に本発明の実施例について説明する。本実施例では、上述の第2の実施形態と同様の手法でウエハ上に酸化アルミニウム膜を形成した。図18は、本実施例と従来例とを対比させながら、ノズル内における分解物の堆積の有無と、酸化アルミニウム膜の膜特性とを示す図である。なお、これらの酸化アルミニウムの成膜に係るガス供給の条件は、図13にそれぞれ示されている。
【0140】
本実施例の第1の原料ガス供給工程では、図13に示すように、キャリアガスとしてのArガスの流量を0.5slmとし、流量調整ガスとしてのNガスの流量を3slmとした。第2の原料ガス供給工程では、図13に示すように、キャリアガスとしてのArガスの流量を0.5slmとし、流量調整ガスとしてのNガスの流量を20slmとした。
【0141】
これに対して従来例では、図13に示すように、キャリアガスとしてのArガスの流量を0.5slmとし、Nガスの流量を15slmとした。
【0142】
図18では、酸化アルミニウム膜の膜厚、膜厚の面内均一性、膜厚のウエハ間均一性、及び膜中の不純物の量の膜特性、並びに原料ガスノズル内における分解物の堆積の有無のが、実施例と従来例とを対比して示されている。
【0143】
処理温度を380℃から550℃に上げて成膜を行った場合、実施例では、原料ガスノズル内にTMAガスの分解物は堆積しなかった。これに対して、従来例では、原料ガスノズル内にTMAガスの分解物が堆積していた。
【0144】
また、実施例では、550℃で成膜を行った場合でも、ウエハ間の膜厚均一性は±1.1%となった。これに対して従来例では、処理温度を380℃から550℃に上げて成膜を行った場合、ウエハ面間の膜厚均一性は、±1%であったのが±4.1%に低下し、ウエハ間における膜厚のばらつきが大きくなった。したがって、実施例では、処理温度を550℃に上昇させたにも関わらず、ウエハ面間の膜厚均一性は380℃で行った従来例とほぼ同等であった。
【0145】
また、実施例ではウエハ面に付着する異物の数が59個であった。これに対して従来例では、処理温度を380℃から550℃に上げて成膜を行った場合、ウエハ面に付着する異物の数が30個であったのが最大で500個まで増大した。したがって、処理温度を上昇させたにも関わらず、ウエハ面に付着する異物の数の増加が抑えられた。
【0146】
<本発明の好ましい態様>
以下に本発明の望ましい態様について付記する。
【0147】
[付記1]
本発明の第1の態様は、
複数枚の基板を水平姿勢に積層した状態で収容する処理室と、
前記処理室の外側に設けられ、前記処理室内を加熱する加熱ユニットと、
原料ガスを供給する原料ガス供給ユニットと、
前記原料ガス供給ユニットと接続され、前記原料ガス供給ユニットから供給される前記原料ガスを前記処理室内に供給する原料ガスノズルと、
前記処理室内を実質的に水平方向に排気する排気ユニットと、
少なくとも前記加熱ユニット、前記原料ガス供給ユニット、前記排気ユニットを制御する制御部と、
を有し、
前記原料ガスノズルは、前記処理室内の温度が前記原料ガスの熱分解温度よりも高い場合であっても内部で前記原料ガスが分解しないような前記処理室内の所定位置に配設されている基板処理装置である。
【0148】
[付記2]
本発明の第2の態様は、
複数枚の基板を水平姿勢に積層した状態で収容する処理室と、
前記処理室の外側に設けられ、前記処理室内を加熱する加熱ユニットと、
原料ガスを供給する原料ガス供給ユニットと、
前記原料ガス供給ユニットと接続され、前記原料ガス供給ユニットから供給される前記原料ガスを前記処理室内に供給する原料ガスノズルと、
前記処理室内を実質的に水平方向に排気する排気ユニットと、
少なくとも前記加熱ユニット、前記原料ガス供給ユニット、前記排気ユニットを制御する制御部と、
を有し、
前記原料ガスノズルは、前記処理室内の温度が前記原料ガスの熱分解温度よりも高い場合であっても内部で前記原料ガスが分解しないような前記処理室内の所定位置に配設され、
前記制御部は、異なる流速で互いに混合させないよう前記処理室内に前記原料ガスを供給する処理を含むサイクルを所定回数実施させるように構成されている基板処理装置である。
【0149】
[付記3]
好ましくは、
前記原料ガスと反応する反応ガスを供給する反応ガス供給ユニットと、
前記反応ガス供給ユニットと接続され、前記基板の積層方向に沿って前記処理室内に配設され、前記反応ガス供給ユニットから供給される前記反応ガスを前記処理室内に供給する反応ガスノズルと、
を有し、
前記制御部は、第1の流速での前記処理室内への前記原料ガスの供給処理と、前記第1の流速とは異なる第2の流速での前記処理室内への前記原料ガスの供給処理と、前記処理室内への前記反応ガスの供給処理と、を1サイクルとして、このサイクルを所定回数実施させるように構成されている。
【0150】
[付記4]
本発明の第3の態様は、
複数枚の基板を水平姿勢に積層した状態で収容する処理室と、
前記処理室の外側に設けられ、前記処理室内を加熱する加熱ユニットと、
原料ガスを供給する原料ガス供給ユニットと、
前記原料ガス供給ユニットと接続され、前記原料ガス供給ユニットから供給される前記原料ガスを前記処理室内に供給する原料ガスノズルと、
前記処理室内を実質的に水平方向に排気する排気ユニットと、
少なくとも前記加熱ユニット、前記原料ガス供給ユニット、前記排気ユニットを制御する制御部と、
を有し、
前記原料ガスノズルは、前記処理室内の温度が前記原料ガスの熱分解温度よりも高い場合であっても内部で前記原料ガスが分解しないような前記処理室の下部の所定位置に配設されるとともに、前記処理室の上部に向けて前記原料ガスを供給するように原料ガス噴出口が開設され、
前記制御部は、第1の流速での前記処理室の下部側に収容される前記基板への前記原料ガスの供給処理と、前記第1の流速よりも大きい第2の流速での前記処理室の上部側に収容されるそれ以外の前記基板への前記原料ガスの供給処理と、を含むサイクルを所定回数実施させるように構成されている基板処理装置である。
【0151】
[付記5]
本発明の第4の態様は、
複数枚の基板を水平姿勢に積層した状態で収容する処理室を内部空間に構成するインナチューブと、
前記インナチューブを取り囲むアウタチューブと、
前記アウタチューブの外側に設けられ、前記処理室内を加熱する加熱ユニットと、
原料ガスを供給する原料ガス供給ユニットと、
前記原料ガス供給ユニットと接続され、前記原料ガス供給ユニットから供給される前記原料ガスを原料ガス供給口を介して前記処理室内に供給する原料ガスノズルと、
前記インナチューブの側壁に開設されたガス排気口と、
前記アウタチューブと前記インナチューブとに挟まれる空間を排気して、前記原料ガス噴出口から前記ガス排気口へと向かう実質的に水平方向のガス流を生成させながら前記処理室内を排気する排気ユニットと、
少なくとも前記加熱ユニット、前記原料ガス供給ユニット、前記排気ユニットを制御する制御部と、
を有し、
前記原料ガスノズルは、前記処理室内の温度が前記原料ガスの熱分解温度よりも高い場合であっても内部で前記原料ガスが分解しないような前記処理室の下部の所定位置に配設されるとともに、前記処理室の上部に向けて前記原料ガスを供給するように前記原料ガス噴出口が開設され、
前記制御部は、第1の流速での前記処理室の下部側に収容される前記基板への前記原料ガスの供給処理と、前記第1の流速よりも大きい第2の流速での前記処理室の上部側に収容されるそれ以外の前記基板への前記原料ガスの供給処理と、を含むサイクルを所定回数実施させるように構成されている基板処理装置である。
【0152】
[付記6]
好ましくは、
前記原料ガスと反応する反応ガスを供給する反応ガス供給ユニットと、
前記反応ガス供給ユニットと接続され、前記基板の積層方向に沿って前記処理室内に配設され、前記反応ガス供給ユニットから供給される前記反応ガスを前記処理室内に供給する反応ガスノズルと、
を有し、
前記制御部は、前記第1の流速での前記原料ガスの供給処理と、前記第2の流速での前記原料ガスの供給処理と、前記反応ガスの供給処理と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施させるように構成されている。
【0153】
[付記7]
また、好ましくは、
前記原料ガスノズルに不活性ガスを供給する不活性ガス供給管が接続され、
前記制御部は、前記不活性ガスの流量を変化させることで前記原料ガスの流速を前記第1の流速と前記第2の流速とで異ならせるように構成されている。
【0154】
[付記8]
また、好ましくは、
前記制御部は、
前記原料ガスの流量を変化させることにより前記原料ガスの流速を前記第1の流速と第2の流速とで異ならせるとともに、
前記第1の流速による前記原料ガスの供給処理を前記第2の流速による前記原料ガスの供給処理よりも長時間実施させるように構成されている。
【0155】
[付記9]
また、好ましくは、
前記制御部は、
前記原料ガスの流量を変化させることにより前記原料ガスの流速を異ならせるとともに、
前記第1の流速での前記原料ガスの供給処理を所定回数実施させる処理と、
前記第1の流速の場合よりも少ない回数で前記第2の流量での前記原料ガスの供給処理を所定回数実施させる処理と、を少なくとも含むサイクルを所定回数実施させるように構成されている。
【0156】
[付記10]
また、好ましくは、
前記処理室内の前記所定位置に、前記ガス噴射口の口径が異なる複数の前記原料ガスノズルを備える。
【0157】
[付記11]
また、好ましくは、
前記処理室の前記所定位置に、長さが異なる複数の前記原料ガスノズルを備える。
【0158】
[付記12]
本発明の第5の態様は、
水平姿勢で積層された複数枚の基板を処理室内に収容する基板搬入工程と、
前記処理室内の温度が原料ガスの熱分解温度よりも高い場合であっても内部で前記原料ガスが分解しないような前記処理室内の所定位置に配設された原料ガスノズルから、第1の流速で前記処理室内に前記原料ガスを供給する第1の原料ガス供給工程と、
前記原料ガスノズルから、前記第1の流速とは異なる第2の流速で前記処理室内に前記原料ガスを供給する第2の原料ガス供給工程と、
前記基板の積層方向に沿って前記処理室内に配設された反応ガスノズルから、前記原料ガスと反応する反応ガスを前記処理室内に供給する反応ガス供給工程と、
前記処理室内を実質的に水平方向に排気する排気工程と、
処理が完了した前記基板を前記処理室から搬出する基板搬出工程と、を有し、
前記第1の原料ガス供給工程と、前記第2の原料ガス供給工程と、前記反応ガス供給工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施して前記基板上に所定の膜を形成する半導体装置の製造方法である。
【0159】
[付記13]
本発明の第6の態様は、
水平姿勢で積層された複数枚の基板を処理室内に収容する基板搬入工程と、
前記処理室内の温度が原料ガスの熱分解温度よりも高い場合であっても内部で前記原料ガスが分解しないような前記処理室の下部の所定位置に配設されるとともに、前記処理室の上部に向けて原料ガス噴出口が開設された原料ガスノズルから、第1の流速で前記処理室の下部側に収容される前記基板へ前記原料ガスを供給する第1の原料ガス供給工程と、
前記原料ガスノズルから、前記第1の流速よりも大きい第2の流速で前記処理室の上部側に収容されるそれ以外の前記基板へ前記原料ガスを供給する第2の原料ガス供給工程と、
前記基板の積層方向に沿って前記処理室内に配設された反応ガスノズルから、前記原料ガスと反応する反応ガスを前記処理室内に供給する反応ガス供給工程と、
前記処理室内を実質的に水平方向に排気する排気工程と、
処理が完了した前記基板を前記処理室から搬出する基板搬出工程と、を有し、
前記第1の原料ガス供給工程と、前記第2の原料ガス供給工程と、前記反応ガス供給工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施して前記基板上に所定の膜を形成する半導体装置の製造方法である。
【0160】
[付記14]
本発明の第7の態様は、
水平姿勢で積層された複数枚の基板をインナチューブの内部に構成される処理室内に収容する基板搬入工程と、
前記処理室内の温度が原料ガスの熱分解温度よりも高い場合であっても内部で前記原料ガスが分解しないような前記処理室の下部の所定位置に配設されるとともに、前記処理室の上部に向けて原料ガス噴出口が開設された原料ガスノズルから、第1の流速で前記処理室の下部側に収容される前記基板へ前記原料ガスを供給する第1の原料ガス供給工程と、
前記原料ガスノズルから、前記第1の流速よりも大きい第2の流速で前記処理室の上部側に収容されるそれ以外の前記基板へ前記原料ガスを供給する第2の原料ガス供給工程と、
前記基板の積層方向に沿って前記処理室内に配設された反応ガスノズルから、前記原料ガスと反応する反応ガスを前記処理室内に供給する反応ガス供給工程と、
前記インナチューブの側壁にガス排気口が開設され、前記インナチューブを取り囲むアウタチューブと前記インナチューブとに挟まれる空間を排気して前記原料ガス噴出口から前記ガス排気口へと向かう実質的に水平方向のガス流を生成させながら前記処理室内を排気する排気工程と、
処理が完了した前記基板を前記処理室から搬出する基板搬出工程と、を有し、
前記第1の原料ガス供給工程と、前記第2の原料ガス供給工程と、前記反応ガス供給工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施して前記基板上に所定の膜を形成する半導体装置の製造方法である。
【0161】
[付記15]
好ましくは、
前記第1の原料ガス供給工程では、前記原料ガスノズルに接続された不活性ガス供給管からの不活性ガスとともに前記第1の流速で前記処理室内に前記原料ガスを供給し、
前記第2の原料ガス供給工程では、前記第1の原料ガス供給工程よりも流量を増やした前記不活性ガスとともに前記第2の流速で前記処理室内に前記原料ガスを供給する。
【0162】
[付記16]
また、好ましくは、
前記原料ガスの流量を変化させることにより前記第1の原料ガス供給工程と前記第2の原料ガス供給工程とで前記原料ガスの流速を異ならせるとともに、
前記第1の原料ガス供給工程を前記第2の原料ガス供給工程よりも長時間実施する。
【0163】
[付記17]
また、好ましくは、
前記原料ガスの流量を変化させることにより前記第1の原料ガス供給工程と前記第2の原料ガス供給工程とで前記原料ガスの流速を異ならせるとともに、
前記第1の原料ガス供給工程を所定回数実施し、
前記第1の原料ガス供給工程よりも少ない回数で前記第2の原料ガス供給工程を所定回数実施するサイクルを所定回数実施する。
【0164】
[付記18]
本発明の第8の態様は、
積層された基板を収容する処理室内の温度が原料ガスの熱分解温度よりも高い場合であっても内部で前記原料ガスが分解しないような前記処理室内の所定位置に配設された原料ガスノズルから、第1の流速で前記処理室内に前記原料ガスを供給する第1の原料ガス供給工程と、前記原料ガスノズルから前記第1の流速とは異なる第2の流速で前記処理室内に前記原料ガスを供給する第2の原料ガス供給工程と、前記基板の積層方向に沿って前記処理室内に配設された反応ガスノズルから前記原料ガスと反応する反応ガスを前記処理室内に供給する反応ガス供給工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施することにより形成される所定の膜を有する半導体装置である。
【符号の説明】
【0165】
200 ウエハ(基板)
201 処理室
207 ヒータ(加熱ユニット)
233a 原料ガスノズル
280 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の基板を水平姿勢に積層した状態で収容する処理室と、
前記処理室の外側に設けられ、前記処理室内を加熱する加熱ユニットと、
原料ガスを供給する原料ガス供給ユニットと、
前記原料ガス供給ユニットと接続され、前記原料ガス供給ユニットから供給される前記原料ガスを前記処理室内に供給する原料ガスノズルと、
前記処理室内を実質的に水平方向に排気する排気ユニットと、
少なくとも前記加熱ユニット、前記原料ガス供給ユニット、前記排気ユニットを制御する制御部と、
を有し、
前記原料ガスノズルは、前記処理室内の温度が前記原料ガスの熱分解温度よりも高い場合であっても内部で前記原料ガスが分解しないような前記処理室内の所定位置に配設され、
前記制御部は、異なる流速で互いに混合させないよう前記処理室内に前記原料ガスを供給する処理を含むサイクルを所定回数実施させるように構成されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
水平姿勢で積層された複数枚の基板を処理室内に収容する基板搬入工程と、
前記処理室内の温度が原料ガスの熱分解温度よりも高い場合であっても内部で前記原料ガスが分解しないような前記処理室内の所定位置に配設された原料ガスノズルから、第1の流速で前記処理室内に前記原料ガスを供給する第1の原料ガス供給工程と、
前記原料ガスノズルから、前記第1の流速とは異なる第2の流速で前記処理室内に前記原料ガスを供給する第2の原料ガス供給工程と、
前記基板の積層方向に沿って前記処理室内に配設された反応ガスノズルから、前記原料ガスと反応する反応ガスを前記処理室内に供給する反応ガス供給工程と、
前記処理室内を実質的に水平方向に排気する排気工程と、
処理が完了した前記基板を前記処理室から搬出する基板搬出工程と、を有し、
前記第1の原料ガス供給工程と、前記第2の原料ガス供給工程と、前記反応ガス供給工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施して前記基板上に所定の膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
積層された複数枚の基板を収容する処理室内の温度が原料ガスの熱分解温度よりも高い場合であっても内部で前記原料ガスが分解しないような前記処理室内の所定位置に配設された原料ガスノズルから、第1の流速で前記処理室内に前記原料ガスを供給する第1の原料ガス供給工程と、前記原料ガスノズルから前記第1の流速とは異なる第2の流速で前記処理室内に前記原料ガスを供給する第2の原料ガス供給工程と、前記基板の積層方向に沿って前記処理室内に配設された反応ガスノズルから前記原料ガスと反応する反応ガスを前記処理室内に供給する反応ガス供給工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施することにより形成されることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−104720(P2012−104720A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253231(P2010−253231)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】