説明

基板処理装置、基板処理方法及び半導体装置の製造方法

【課題】SiCエピタキシャル成長のような1500℃から1700℃といった超高温での処理を行う場合に、成膜ガスをマニホールドの耐熱温度まで低下させると共に、膜質均一性を向上させ得る基板処理装置を提供する。
【解決手段】複数の基板14の処理を行う反応室44と、複数の基板14を保持する基板保持具15と、反応室44内に設けられ、反応室44内の成膜ガスが流れる流路より狭い流路を形成する熱交換部34と、を備え、基板保持具15の最下部に保持された基板よりも下方に空間340を有する基板処理装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置、基板処理方法及び半導体装置の製造方法に関する。特に炭化ケイ素(以下、SiCとする)エピタキシャル膜を基板上に成膜する工程を有する基板処理装置、基板処理方法及び半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SiCは、特にパワーデバイス用素子材料として注目されている。一方で、SiCはシリコン(以下Siとする)に比べて結晶基板やデバイスの作製が難しいことが知られている。
【0003】
一方で、SiCを用いてデバイスを作製する場合は、SiC基板の上にSiCエピタキシャル膜を形成したウェーハを用いる。このSiC基板上にSiCエピタキシャル膜を形成するSiCエピタキシャル成長装置の一例として特許文献1がある。
【0004】
特許文献1では、所謂バッチ式縦型熱処理装置を用いて、一度に多くのSiC基板を処理できる構成が開示されている。更に、特許文献1では、サセプタからの熱が処理炉の下方側に伝わりにくくするための断熱部材としてのボート断熱部が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−3885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、SiCエピタキシャル膜を形成するためには、特許文献1に記載されるように1500℃から1700℃といった超高温での処理が必要となる。ここで、特許文献1に記載されるような装置においては、処理炉内を通った成膜ガスが処理炉下方に設けられた排気管から排気される。この排気管は、マニホールドに設けられているため、当該成膜ガスをマニホールドの耐熱温度まで低下させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
複数の基板の処理を行う反応室と、
複数の前記基板を保持する基板保持具と、
前記反応室内に成膜ガスを供給するガス供給ノズルと、
前記反応室内の成膜ガスを排気する排気口と、
前記反応室内に設けられ、前記反応室内の成膜ガスが流れる流路より狭い流路を形成する熱交換部と、を備え、
前記基板保持具の最下部に保持された前記基板よりも下方に空間を有する基板処理装置が提供される。
【0008】
本発明の他の一態様によれば、
複数の基板の処理を行う反応室と、
複数の前記基板を保持する基板保持具と、
前記反応室内に成膜ガスを供給するガス供給ノズルと、
前記反応室内の成膜ガスを排気する排気口と、
前記反応室と前記排気口との間に設けられ、前記反応室内の成膜ガスが流れる流路より
狭い流路を形成する熱交換部と、を備え、
前記基板保持具は、前記基板の処理面側の成膜ガスの流路断面積を調整する整流部材を備える基板処理装置が提供される。
【0009】
本発明の他の一態様によれば、
複数の基板を保持した基板保持具を反応室内に搬入する基板搬入工程と、
排気口から前記反応室内を排気しつつ、ガス供給ノズルから前記反応室内に成膜ガスを供給して前記基板を処理する基板処理工程と、
処理済みの複数の前記基板を保持した前記基板保持具を前記反応室から搬出する基板搬出工程と、を有し、
前記基板処理工程では、前記ガス供給ノズルから供給された成膜ガスを、前記反応室内に設けられた熱交換部により形成される、前記反応室内の成膜ガスが流れる流路より狭い流路を介して排気する際、前記基板保持具の最下部に保持された前記基板よりも下方に形成された空間内に成膜ガスを流して、ガス圧を下げる基板処理方法が提供される。
【0010】
本発明の他の一態様によれば、
複数の基板を保持した基板保持具を反応室内に搬入する基板搬入工程と、
排気口から前記反応室内を排気しつつ、ガス供給ノズルから前記反応室内に成膜ガスを供給して前記基板を処理する基板処理工程と、
処理済みの複数の前記基板を保持した前記基板保持具を前記反応室から搬出する基板搬出工程と、を有し、
前記基板処理工程では、前記ガス供給ノズルから供給された成膜ガスを、前記反応室内に設けられた熱交換部により形成される、前記反応室内の成膜ガスが流れる流路より狭い流路を介して排気する際、前記基板保持具の最下部に保持された前記基板よりも下方に形成された空間内に成膜ガスを流して、ガス圧を下げる半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、均質な膜を基板上に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明が適用される半導体製造装置の斜視図である。
【図2】第1の実施形態を説明する処理炉の側面断面図である。
【図3】本発明が適用される処理炉の平面断面図である。
【図4】本発明が適用される処理炉の他の平面断面図である。
【図5】第1の実施形態に係るガス逃げ部の概略図である。
【図6】本発明が適用される半導体製造装置のガス供給ユニットを説明する図である。
【図7】本発明が適用される半導体製造装置の制御構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の効果を説明するための処理炉の側面断面図の比較例である。
【図9】本発明が適用される半導体製造装置の処理炉及びその周辺構造の概略断面図である。
【図10】第2の実施形態を説明する処理炉の他の側面断面図である。
【図11】第2の実施形態における第1熱交換部の一例の概略図である。
【図12】第3の実施形態を説明する処理炉の概略図である。
【図13】第3の実施形態の変形例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態では、基板処理装置の一例であるSiCエピタキシャル成長装置における、高さ方向にSiCウェーハを
並べる、所謂バッチ式縦型SiCエピタキシャル成長装置で説明する。なお、バッチ式縦型SiCエピタキシャル成長装置とすることで、一度に処理できるSiCウェーハの数が多くなりスループットが向上する。
【0014】
<第1の実施形態>
<全体構成>
先ず、図1に於いて、本発明の第1の実施形態に於けるSiCエピタキシャル膜を成膜する基板処理装置、および、半導体装置の製造工程の一つであるSiCエピタキシャル膜を成膜する基板の製造方法について説明する。
【0015】
基板処理装置(成膜装置)としての半導体製造装置10は、バッチ式縦型熱処理装置であり、主要部が配置される筐体12を有する。半導体製造装置10には、例えばSiC等で構成された基板としてのウェーハ14(図2参照)を収納する基板収容器として、フープ(以下、ポッドと称す)16がウェーハキャリアとして使用される。筐体12の正面側には、ポッドステージ18が配置されており、ポッドステージ18にポッド16が搬送される。ポッド16には、例えば25枚のウェーハ14が収納され、蓋が閉じられた状態でポッドステージ18にセットされる。
【0016】
筐体12内の正面であって、ポッドステージ18に対向する位置には、ポッド搬送装置20が配置されている。又、ポッド搬送装置20の近傍には、ポッド収納棚22、ポッドオープナ24及び基板枚数検知器26が配置されている。ポッド収納棚22は、ポッドオープナ24の上方に配置され、ポッド16を複数個載置した状態で保持する様に構成されている。基板枚数検知器26は、ポッドオープナ24に隣接して配置され、ポッド搬送装置20は、ポッドステージ18とポッド収納棚22とポッドオープナ24との間でポッド16を搬送する。ポッドオープナ24は、ポッド16の蓋を開けるものであり、基板枚数検知器26は、蓋を開けられたポッド16内のウェーハ14の枚数を検知する様になっている。
【0017】
筐体12内には、基板移載機28、基板保持具としてのボート30が配置されている。基板移載機28は、アーム(ツイーザ)32を有し、図示しない駆動手段により昇降可能且つ回転可能な構造となっている。アーム32は、例えば5枚のウェーハ14を取出すことができ、アーム32を動かすことにより、ポッドオープナ24の位置に置かれたポッド16及び後述するボート30間にてウェーハ14を搬送する。
【0018】
基板保持具としてのボート30は、例えばカーボングラファイトやSiC等の耐熱性材料で構成されており、複数枚のウェーハ14を水平姿勢で、且つ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積上げ、保持する様に構成されている。尚、ボート30の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成された筒型形状の断熱部材として断熱部34A(以下では、ボート断熱部34Aという)が配置されており、後述する被誘導体48からの熱が処理炉40の下方側に伝わりにくくなる様に構成されている(図2参照)。
【0019】
筐体12内の背面側上部には、処理炉40が配置されている。処理炉40内に複数枚のウェーハ14を装填したボート30が搬入され、熱処理が行われる。
【0020】
<処理炉構成>
次に、図2から図7に於いて、第1の実施形態に係るSiCエピタキシャル膜を成膜する半導体製造装置10の処理炉40について説明する。処理炉40には、第1のガス供給口68を有する第1のガス供給ノズル60、第2のガス供給口72を有する第2のガス供給ノズル70、及び第1のガス排気口90が設けられる。又、不活性ガスを供給する第3のガス供給口360、第2のガス排気口390が図示されている。
【0021】
処理炉40は、石英又はSiC等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成された反応管42を備えている。反応管42の下方には、反応管42と同心円状にマニホールド36が配設されている。マニホールド36は、例えばステンレス等からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド36は、反応管42を支持する様に設けられている。尚、マニホールド36と反応管42との間には、シール部材としてのOリング(図示せず)が設けられている。マニホールド36が図示しない保持体に支持されることにより、反応管42は垂直に据付けられた状態になっている。反応管42とマニホールド36により、反応容器が形成されている。
【0022】
処理炉40は、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成された被加熱体としての被誘導体48及び磁場発生部としての誘導コイル50を具備している。被誘導体48の筒中空部には、反応室44が形成れており、SiC等で構成された基板としてのウェーハ14を保持したボート30を収納可能に構成されている。また、図2の下枠内に示されるように、ウェーハ14は、円環状の下部ウェーハホルダ15bに保持され、上面を円板状の上部ウェーハホルダ15aで覆われた状態でボート30に保持されるとよい。これにより、ウェーハ14上部から落下しているパーティクルからウェーハ14を守ることができると共に、成膜面(ウェーハ14の下面)に対して裏面側の成膜を抑制することができる。また、ウェーハホルダ15の分ボート柱30Aから成膜面を離すことができ、ボート柱30Aの影響を小さくすることができる。ボート30は、水平姿勢で、且つ、互いに中心を揃えた状態で縦方向に整列するようにウェーハホルダ15に保持されたウェーハ14を保持するよう構成されている。被誘導体48は、反応管42の外側に設けられた誘導コイル50により発生される磁場によって加熱される様になっており、被誘導体48が発熱することにより、反応室44内が加熱される様になっている。
【0023】
被誘導体48の近傍には、反応室44内の温度を検出する温度検出体として図示しない温度センサが設けられている。誘導コイル50及び温度センサは、温度制御部52と電気的に接続されており、温度センサにより検出された温度情報に基づき、誘導コイル50への通電具合が調節されることで、反応室44内の温度が所望の温度分布となる様所定のタイミングにて制御される様構成されている(図7参照)。
【0024】
尚、好ましくは、反応室44内に於いて第1及び第2のガス供給ノズル60,70と第1のガス排気口90との間であって、被誘導体48とウェーハ14との間には、被誘導体48とウェーハ14との間の空間を埋める様、鉛直方向に延在し断面が円弧状の構造物300を反応室44内に設けるとよい。例えば、図3に示す様に、対向する位置にそれぞれ構造物300を設けることで、第1及び第2のガス供給ノズル60,70から供給されるガスが、被誘導体48の内壁に沿ってウェーハ14を迂回するのを防止することができる。構造物300としては、好ましくはカーボングラファイト等で構成すると、耐熱及びパーティクルの発生を抑制することができる。
【0025】
反応管42と被誘導体48との間には、例えば誘電されにくいカーボンフェルト等で構成された断熱材54が設けられ、断熱材54を設けることにより、被誘導体48の熱が反応管42或は反応管42の外側へ伝達するのを抑制することができる。
【0026】
又、誘導コイル50の外側には、反応室44内の熱が外側に伝達するのを抑制する為の、例えば水冷構造である外側断熱壁55が反応室44を囲む様に設けられている。更に、外側断熱壁55の外側には、誘導コイル50により発生された磁場が外側に漏れるのを防止する磁気シール58が設けられている。
【0027】
図2に示す様に、被誘導体48とウェーハ14との間には、少なくとも1つの第1のガ
ス供給口68が設けられた第1のガス供給ノズル60が設置される。又、被誘導体48とウェーハ14との間の第1のガス供給ノズル60とは異なる箇所には、少なくとも1つの第2のガス供給口72が設けられた第2のガス供給ノズル70が設けられる。また、第1のガス排気口90も同様に被誘導体48とウェーハ14との間に配置される。又、反応管42と断熱材54との間に、第3のガス供給口360及び第2のガス排気口390が配置されている。
【0028】
また、第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル70は、夫々1本ずつでも構わないが、図3に示されるように、第2のガス供給ノズル70は3本設けられ、第2のガス供給ノズル70に挟まれるように第1のガス供給ノズル60が設けられるように構成すると良い。このように交互に配置することにより、第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル70から異なるガス種を供給したとしても、異なるガス種の混合を促進することができる。また、第1のガス供給ノズル60と第2のガス供給ノズル70を合わせて奇数本とすることにより、中央の第2のガス供給ノズル70を中心に成膜ガスの供給を左右対称とすることができ、ウェーハ14内の均一性を高めることができる。なお、第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル70から供給されるガス種については、後述する。
【0029】
第1のガス供給口68及び第1のガス供給ノズル60は、例えばカーボングラファイトで構成され、反応室44内に設けられる。又、第1のガス供給ノズル60は、マニホールド36を貫通する様に、マニホールド36に取付けられている。第1のガス供給ノズル60は、第1のガスライン222を介してガス供給ユニット200に接続されている。
【0030】
第2のガス供給口72及び第2のガス供給ノズル70は、例えばカーボングラファイトで構成され、反応室44内に設けられる。また、第2のガス供給ノズル70は、マニホールド36を貫通する様に、マニホールド36に取付けられている。第2のガス供給ノズル70は、第2のガスライン260を介してガス供給ユニット200に接続されている。
【0031】
又、第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル70に於いて、基板の配列領域に、第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72が1つ設けられていてもよく、ウェーハ14の所定枚数毎に第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72が設けられていてもよい。
【0032】
<排気系>
図2に示す様に、第1のガス排気口90が、ボート30より下部に設けられ、マニホールド36には、第1のガス排気口90に接続されたガス排気管230が貫通する様設けられている。ガス排気管230の下流側には、図示しない圧力検出器としての圧力センサ及び、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ214を介して真空ポンプ等の真空排気装置220が接続されている。圧力センサ及びAPCバルブ214には、圧力制御部98が電気的に接続されており、圧力制御部98は圧力センサにより検出された圧力に基づいてAPCバルブ214の開度を調整し、処理炉40内の圧力が所定の圧力となる様所定のタイミングにて制御する様に構成されている(図7参照)。
【0033】
また、図2、及び、図4に示すように、ボート断熱部34Aを囲むように、第1熱交換部34B、及び各ガス供給ノズル60,70に設けられた第2熱交換部34Cが設けられている。第1熱交換部34B及び第2熱交換部34Cは、ボート断熱部34Aとの間に、反応室44内の成膜ガスが流れる流路より狭い流路となる間隙を有するように設けられている。そして、反応室44に供給された成膜ガスが、間隙を通過して第1のガス排気口90に流れるようになっている。このように第1熱交換部34B及び第2熱交換部34Cを
設け、成膜ガスが流れる流路を反応室44内を成膜ガスが流れる流路より狭くすることにより、反応室44を介して流れてくる加熱された成膜ガスがボート断熱部34A、第1熱交換部34B、第2熱交換部34Cと積極的に熱交換することになり、成膜ガスの温度を下げることができる。特に、ボート断熱部34A、第1熱交換部34B、第2熱交換部34Cは、側壁を有する筒状とすることで、間隙を流れる成膜ガスとの接触面積が大きくなり、熱交換の効率が向上する。なお、ボート断熱部34A、第1熱交換部34B、及び、第2熱交換部34Cにて、熱交換部を構成しているということができる。
【0034】
なお、ボート断熱部34A、第1熱交換部34B、第2熱交換部34Cは、中実筒状としてもよいが、中空筒状としたほうが、これらの部材の熱伝導による下方への熱の伝達を抑制でき、望ましい。また、中空筒状とした場合は、ボート断熱部34Aとボート30の底板30Bとの間に、ウェーハ14表面と平行方向に板状部材を設けることにより、反応室44からの輻射熱を抑制することができ断熱効果が向上する。また、第2熱交換部34Cを、第1熱交換部34Bと別部材として設け、第1及び第2のガス供給ノズル60,70のそれぞれに設置することにより、第1及び第2のガス供給ノズル60,70の設置が容易となり、メンテナンス性が向上する。なお、構造によっては、第1熱交換部34Bを円環状に設けても、反応室44内の成膜ガスが流れる流路より狭い流路を形成する間隙を形成するという目的を達成している限りは問題ない。
【0035】
また、本実施の形態では、処理炉40は、ボート30の最下部に保持されたウェーハ14よりも下方に、ガス逃げ部340としての空間を有している。具体的には、ボート断熱部34Aとボート30の最下部に保持されたウェーハ14との間に、ガス逃げ部340が設けられている。このガス逃げ部340を設ける利点について、図8を用いて説明する。図8は、図2の構成と比較してガス逃げ部340がなく、ボート断熱部34Aの上に直接ボート30が設置されている構造である。ここで、上述したとおり、第1及び第2のガス供給口68,72を介して供給された成膜ガスは、主として、ウェーハ14に対し平行に流れ、第1及び第2のガス供給ノズル60,70が設けられた領域と反対側の領域に流れた後、下方に向かって流れる。従って、排気されるべき成膜ガスは、反応室44下方に行くに従って、その流量が多くなる。更に、下方に向かって流れた成膜ガスは、ボート断熱部34Aの周方向に設けられた間隙(図3参照)を流れる。ここで、上述したように、ボート断熱部34Aの周方向に設けられた間隙は、熱交換の効率を上げるため、反応室40内の成膜ガスが流れる流路よりも狭く形成されている。従って、第1及び第2のガス供給ノズル60,70の反対側に流れ出た成膜ガスは、周方向に流れにくく、第1熱交換部34Bの上方では局所的にその圧力が高くなってしまう。その結果、第1及び第2のガス供給ノズル60,70の下方に位置する第1及び第2のガス供給口68,72から供給された成膜ガスは、第1熱交換部34Bの上方の局所的に圧力の高い箇所に合流することになり、第1及び第2のガス供給ノズル60,70の上方に位置する第1及び第2のガス供給口68,72から供給された成膜ガスと比較して、その流速が低下してしまう(以下、このことを「合流損失」と呼ぶ。)可能性がある。この合流損失が大きくなると、複数の第1及び第2のガス供給口68,72から供給される成膜ガスの流速がほぼ同じくなるように設計されているにも関わらず、ボート30の上方に配置されたウェーハ14とボート30の下方に配置されたウェーハ14では、成膜ガスの流速が異なることになり、ウェーハ14間の均質性が劣化することになる。
【0036】
一方、本実施の形態では、ボート断熱部34Aとボート30との間にガス逃げ部340が設けられている。このガス逃げ部340には、ボート断熱部34Aとボート30との間に複数本の支柱が設けられている。従って、第1熱交換部34Bの上方に到達した成膜ガスは、ガス逃げ部340(空間)を通って、反対側(第2熱交換部34Cが設けられた側)にも流れることが可能となり、第1熱交換部34Bの上方での局所的な圧力増加を抑制することできる。これにより、第1及び第2のガス供給ノズル60,70の下方に位置す
る第1及び第2のガス供給口68,72から供給された成膜ガスの合流損失が抑制され、ウェーハ14間の均質性を向上させることができる。
【0037】
また、図5にガス逃げ部340の詳細図を示す。図5(a)は、ガス逃げ部340の上面図、図5(b)は、側面断面図を示している。図5に示すように、ガス逃げ部340内には、天板341Aと底板341Bとの間に4本の支柱343が設けられている。そして、ボート断熱部34Aとボート30との間に、ガス逃げ部340となる成膜ガスが通る空間を形成し、合流損失を抑制する。
【0038】
また、天板341Aと底板341Bとの間には、円盤状の断熱板342が設けられている。これにより、反応室44からの輻射熱が下部に伝わることを抑制し、耐熱の低い炉口144付近を保護することが可能となる。
【0039】
また、図2に示すように、ボート断熱部34Aの上端の高さ位置が、第1熱交換部34Bの上端の高さ位置と等しいか、第1熱交換部34Bの高さ位置より低くなるようにガス逃げ部340を構成すると良い。なお、反応室44内でのボート断熱部34Aの上端の高さ位置が、第1熱交換部34Bの高さ位置より低い場合には、ボート30の底板30Bと、ボート断熱部34Aの上端と、第1熱交換部とによりガス流路となる空間が形成される。これにより第1熱交換部34Bの上方に流れてきた成膜ガスが、ガス逃げ部340の方向に向かう流路が大きくなり、より局所的な圧力低下を抑制することができる。
【0040】
また、ガス逃げ部340は、反応室44の下方に流れてきたガスを逃がし、ガス圧を一時的に下げるだけでなく、ガス逃げ部340内にガスを一時的に滞留させることによって、熱交換部との熱交換効率を向上させて、高温のガスをより効率よく冷却できる。
【0041】
第1及び第2のガス供給ノズル60,70の下部に設けられた第2熱交換部34Cを有する場合は、第2熱交換部34Cの上端の高さ位置が、第1熱交換部34Bの上端の高さ位置より高くなる(または、ボート断熱部34Aの上端の高さ位置より高くなる)ように構成すると良い。これにより、第1熱交換部34Bの上方に流れてきた成膜ガスがガス逃げ部340を通り、第2熱交換部34Cの側面にぶつかり、第2熱交換部34Cの側面に沿って下方に向かって流れるようになる。従って、下方に向かって流れる成膜ガスと第2熱交換部34Cの側面との接触面積が大きくなり、超高温の成膜ガスと第2熱交換部34Cとの熱交換が大きくなる。また第2熱交換部34Cは、第1及び第2のガス供給ノズル60,70の下部に設けられているため、その内部を成膜ガスが通過する。従って、排気される成膜ガスから第2熱交換部34Cに伝わった熱を第2熱交換部34Cの内部(すなわち第1及び第2のガス供給ノズル60,70の内部)を通る成膜ガスの加熱にも利用することができる。
【0042】
また、断熱板342は、ボート30の底板30Bよりその外径を小さくするほうが良い。これにより、ボート30の底板30B(若しくは、ガス逃げ部340の天板341A)を通過した成膜ガスが横方向に向かう空間を広くすることができ、横方向への流れを形成しやすくなる。また、ボート断熱部34Aの上端の高さ位置を、第1熱交換部34Bの上端の高さ位置より低くした場合は、図5に示すように、第1熱交換部34Bの上端の高さ位置より低い位置にある断熱板342Bを、第1熱交換部34Bの上端の高さ位置より高い位置にある断熱板342Aの外径より大きくなるように構成しても良い。第1熱交換部34Bの上方に流れてきた成膜ガスは、ガス逃げ部340に向かって横方向に流れるが、第1熱交換部34Bの上端の高さ位置より低い位置については、円盤状の断熱板342と第1熱交換部34Bとの間の狭い空間を通る必要があるため流れにくい。そのため、第1熱交換部34Bの上端の高さ位置より低い位置にある断熱板342Bより下方の空間に流れる成膜ガスの流量を大きくすることよりも、むしろ断熱板342Bの外径を大きくして
断熱性能を向上させるように構成するとよい。
【0043】
以上の様に、第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72から供給されたガスは、例えばSi又はSiC等で構成されたウェーハ14に対し平行に流れ、第1のガス排気口90より排気されるので、ウェーハ14全体が効率的且つ均一にガスに晒される。
【0044】
又、図2に示す様に、第3のガス供給口360は反応管42と断熱材54との間に配置され、マニホールド36を貫通する様に取付けられている。更に、第2のガス排気口390が、反応管42と断熱材54との間であり、第3のガス供給口360に対して対向する様に配置され、第2のガス排気口390はガス排気管230に接続されている。第3のガス供給口360は、マニホールド36を貫通する第3のガスライン240に形成され、第3のガスラインは、ガス供給ユニット200に接続される。また、図6に示されるように、第3のガスラインは、バルブ212f、マスフローコントローラ(MFC)211fを介してガス供給源210fと接続されている。ガス供給源210fからは、不活性ガスとして、例えば希ガスのArガスが供給され、SiCエピタキシャル膜成長に寄与するガスが反応管42と断熱材54との間に進入するのを防ぎ、反応管42の内壁又は断熱材54の外壁に不要な生成物が付着するのを防止することができる。
【0045】
又、反応管42と断熱材54との間に供給された不活性ガスは、第2のガス排気口390よりガス排気管230の下流側にあるAPCバルブ214を介して真空排気装置220から排気される。
【0046】
<各ガス供給系に供給されるガスの詳細>
次に、図6を用いて、第1のガス供給系及び第2のガス供給系について説明する。図6(a)は、シリコン(Si)原子含有ガスと炭素(C)原子含有ガスとを異なるガス供給ノズルから供給するセパレート方式を示し、図6(b)は、Si原子含有ガスとC原子含有ガスとを同じガス供給ノズルから供給するプレミックス方式を示している。
【0047】
まず、セパレート方式について説明する。図6(a)に示されるように、セパレート方式では、第1のガスライン222には、流量制御器(流量制御手段)としてのマスフローコントローラ(以下MFCとする)211a,211b,211c、及び、バルブ212a,212b,212cを介して、例えばSiHガス供給源210a、塩素(Cl)原子含有ガスとしての例えばHClガスを供給するHClガス供給源210b、キャリアガス、パージガス等として作用する不活性ガスを供給する不活性ガス供給源210cが接続されている。
【0048】
上記構成により、SiHガス、HClガス、不活性ガスのそれぞれの供給流量、濃度、分圧、供給タイミングを反応室44内に於いて制御することができる。バルブ212a,212b,212c、MFC211a,211b,211cは、ガス流量制御部78に電気的に接続されており、それぞれ供給するガスの流量が所定流量となる様に、所定のタイミングにて制御される様になっている(図7参照)。尚、SiHガス、HClガス、不活性ガスのそれぞれのガス供給源210a,210b、210cと、バルブ212a,212b、212cと、MFC211a,211b,211cと、第1のガスライン222と、第1のガス供給ノズル60と、第1のガス供給ノズル60に少なくとも1つ設けられる第1のガス供給口68とにより、第1のガス供給系が構成される。
【0049】
また、第2のガスライン260には、流量制御手段としてのMFC211d及びバルブ212dを介してCガス供給源210dが接続されている。また、流量制御手段としてのMFC211e及びバルブ212eを介してHガス供給源210eが接続されている。
【0050】
上記構成により、Cガス、Hガスの供給流量、濃度、分圧を反応室44内に於いて制御することができる。バルブ212d,212e、MFC211d,211eは、ガス流量制御部78に電気的に接続されており、供給するガス流量が所定の流量となる様、所定のタイミングにて制御される様になっている(図7参照)。尚、Cガス、Hガスのガス供給源210d,210eと、バルブ212d,212eと、MFC211d,211eと、第2のガスライン260と、第2のガス供給ノズル70と、第2のガス供給口72とにより、第2のガス供給系が構成される。
【0051】
このように、Si原子含有ガスとC原子含有ガスとを異なるガス供給ノズルから供給することにより、ガス供給ノズル内では、SiC膜が堆積しないようにすることができる。なお、Si原子含有ガス及びC原子含有ガスの濃度や流速を調整したい場合は、夫々適切なキャリアガスを供給すればよい。
【0052】
更に、Si原子含有ガスを、より効率的に使用するため水素(H)ガスのような還元ガスを用いる場合がある。この場合、還元ガスは、C原子含有ガスを供給する第2のガス供給ノズル70を介して供給することが望ましい。このように還元ガスをC原子含有ガスと共に供給し、反応室44内でSi原子含有ガスと混合することにより、還元ガスが少ない状態となるためSi原子含有ガスの分解を成膜時と比較して抑制することができ、第1のガス供給ノズル60内におけるSi膜の堆積を抑制することが可能となる。この場合、還元ガスをC原子含有ガスのキャリアガスとして用いることが可能となる。なお、Si原子含有ガスのキャリアとしては、アルゴン(Ar)のような不活性ガス(特に希ガス)を用いることにより、Si膜の堆積を抑制することが可能となる。
【0053】
更に、第1のガス供給ノズル60には、例えばHClのような塩素(Cl)原子含有ガスを供給することが望ましい。このようにすると、Si原子含有ガスが熱により分解し、第1のガス供給ノズル60内に堆積可能な状態となったとしても、塩素によりエッチングモードとすることが可能となり、第1のガス供給ノズル60内へのSi膜の堆積をより抑制することが可能になる。また、Cl原子含有ガスには、堆積した膜をエッチングする効果もあり、第1のガス供給口68の閉塞を抑制することが可能となる。
【0054】
次に、図6(b)に示すプレミックス方式について説明する。セパレート方式と異なる点は、C原子含有ガスのガス供給源210dをMFC211d、バルブ212dを介して出し1のガスライン222に接続している点である。これにより、Si原子含有ガスとC原子含有ガスとを予め混合できるため、セパレート方式に対し原料ガスを充分混合することができる。
【0055】
この場合、還元ガスであるHガス供給源210eは、MFC211e、バルブ212eを介して第2のガスライン260に接続することが望ましい。これにより、第1のガス供給ノズル60において、エッチングガスである塩素と還元ガスである水素との比(Cl/H)を大きくすることができるため、塩素によるエッチング効果の方が大きくなり、Si原子含有ガスの反応を抑えることが可能である。従って、プレミックス方式であっても、ある程度、SiC膜の堆積を抑制することが可能である。
【0056】
なお、SiCエピタキシャル膜を形成する際に流すCl原子含有ガスとしてHClガスを例示したが、塩素(Cl)ガスを用いてもよい。
【0057】
又、上述ではSiCエピタキシャル膜を形成する際に、Si原子含有ガスとCl原子含有ガスとを供給したが、Si原子とCl原子を含むガス、例えばテトラクロロシラン(以下SiClとする)ガス、トリクロロシラン(以下SiHCl)ガス、ジクロロシラ
ン(以下SiHCl)ガスを供給してもよい。また、言うまでもないが、これらのSi原子及びCl原子を含むガスは、Si原子含有ガスでもあり、Si原子含有ガス及びCl原子含有ガスの混合ガスともいえる。特に、SiClガスは、熱分解される温度が比較的高いため、ガス供給ノズル内のSi消費抑制の観点から望ましい。
【0058】
又、上述ではC原子含有ガスとして、Cガスを例示したが、エチレン(以下Cとする)ガス、アセチレン(以下Cとする)ガスを用いてもよい。
【0059】
また、還元ガスとして、Hガスを例示したが、これに限らず他のH(水素)原子含有ガスを用いても良い。更には、キャリアガスとしては、Ar(アルゴン)ガス、He(ヘリウム)ガス、Ne(ネオン)ガス、Kr(クリプトン)ガス、Xe(キセノン)ガス等の希ガスのうち少なくとも1つを用いてもよいし、上記したガスを組合わせた混合ガスを用いてもよい。
【0060】
<処理炉の周辺構成>
次に、図9に於いて、処理炉40及びその周辺の構成について説明する。処理炉40の下方には、処理炉40の下端開口を気密に閉塞する為の炉口蓋体としてシールキャップ102が設けられている。シールキャップ102は、例えばステンレス等の金属製であり、円盤状に形成されている。シールキャップ102の上面には、処理炉40の下端と当接するシール材としてのOリング(図示せず)が設けられている。シールキャップ102には回転機構104が設けられ、回転機構104の回転軸106はシールキャップ102を貫通してボート30に接続されており、ボート30を回転させることでウェーハ14を回転させる様に構成されている。
【0061】
又、シールキャップ102は処理炉40の外側に設けられた昇降機構として、後述する昇降モータ122によって垂直方向に昇降される様に構成されており、これによりボート30を処理炉40に対して搬入搬出することが可能となっている。回転機構104及び昇降モータ122には、駆動制御部108が電気的に接続されており、所定の動作をする様所定のタイミングにて制御する様構成されている(図7参照)。
【0062】
予備室としてのロードロック室110の外面には、下基板112が設けられている。下基板112には、昇降台114と摺動自在に嵌合するガイドシャフト116及び昇降台114と螺合するボール螺子118が設けられている。又、下基板112に立設したガイドシャフト116及びボール螺子118の上端には上基板120が設けられている。ボール螺子118は、上基板120に設けられた昇降モータ122によって回転され、ボール螺子118が回転されることで昇降台114が昇降する様になっている。
【0063】
昇降台114には中空の昇降シャフト124が垂設され、昇降台114と昇降シャフト124との連結部は気密となっており、昇降シャフト124は昇降台114と共に昇降する様になっている。昇降シャフト124は、ロードロック室110の天板126を遊貫し、昇降シャフト124が貫通する天板126の貫通孔は、昇降シャフト124が天板126と接触することがない様充分な隙間が形成されている。
【0064】
又、ロードロック室110と昇降台114との間には、昇降シャフト124の周囲を覆う様に伸縮性を有する中空伸縮体としてベローズ128が設けられ、ベローズ128によりロードロック室110が気密に保たれる様になっている。尚、ベローズ128は昇降台114の昇降量に対応できる充分な伸縮量を有し、ベローズ128の内径は昇降シャフト124の外径に比べて充分に大きく、伸縮の際にベローズ128と昇降シャフト124とが接触することがない様に構成されている。
【0065】
昇降シャフト124の下端には、昇降基板130が水平に固着され、昇降基板130の下面には、Oリング等のシール部材を介して駆動部カバー132が気密に取付けられている。昇降基板130と駆動部カバー132とで駆動部収納ケース134が構成され、この構成により、駆動部収納ケース134内部はロードロック室110内の雰囲気と隔離される。
【0066】
又、駆動部収納ケース134の内部には、ボート30の回転機構104が設けられ、回転機構104の周辺は冷却機構135によって冷却される様になっている。
【0067】
電力ケーブル138は、昇降シャフト124の上端から中空部を通り、回転機構104に導かれて接続されている。又、冷却機構135及びシールキャップ102には、冷却水流路140が形成されている。更に、冷却水配管142が昇降シャフト124の上端から中空部を通り冷却水流路140に導かれて接続されている。
【0068】
昇降モータ122が駆動され、ボール螺子118が回転することで、昇降台114及び昇降シャフト124を介して駆動部収納ケース134を昇降させる。
【0069】
駆動部収納ケース134が上昇することにより、昇降基板130に気密に設けられているシールキャップ102が処理炉40の開口部である炉口144を閉塞し、ウェーハ14の処理が可能な状態となる。又、駆動部収納ケース134が下降することにより、シールキャップ102と共にボート30が降下され、ウェーハ14を外部に搬出できる状態となる。
【0070】
<制御部>
次に、図7に於いて、SiCエピタキシャル膜を成膜する半導体製造装置10を構成する各部の制御構成について説明する。
【0071】
温度制御部52、ガス流量制御部78、圧力制御部98、駆動制御部108は、操作部及び入出力部を構成し、半導体製造装置10全体を制御する主制御部150に電気的に接続されている。又、温度制御部52、ガス流量制御部78、圧力制御部98、駆動制御部108は、コントローラ152として構成されている。
【0072】
<SiC膜の形成方法>
次に、上述した半導体製造装置10を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、SiC等で構成されるウェーハ14等の基板上に、例えばSiC膜を形成する基板の製造方法について説明する。尚、以下の説明に於いて半導体製造装置10を構成する各部の動作は、コントローラ152により制御される。
【0073】
先ず、ポッドステージ18に複数枚のウェーハ14を収納したポッド16がセットされると、ポッド搬送装置20によりポッド16をポッドステージ18からポッド収納棚22へ搬送し、ストックする。次に、ポッド搬送装置20により、ポッド収納棚22にストックされたポッド16をポッドオープナ24に搬送してセットし、ポッドオープナ24によりポッド16の蓋を開き、基板枚数検知器26によりポッド16に収納されているウェーハ14の枚数を検知する。
【0074】
次に、基板移載機28により、ポッドオープナ24の位置にあるポッド16からウェーハ14を取出し、ボート30に移載する。
【0075】
複数枚のウェーハ14がボート30に装填されると、ウェーハ14を保持したボート30は、昇降モータ122による昇降台114及び昇降シャフト124の昇降動作により反
応室44内に搬入(ボートローディング)される。この状態では、シールキャップ102はOリング(図示せず)を介してマニホールド36の下端をシールした状態となる。
【0076】
ボート30搬入後、反応室44内が所定の圧力(真空度)となる様に、真空排気装置220によって真空排気される。この時、反応室44内の圧力は、圧力センサ(図示せず)によって測定され、測定された圧力に基づき第1のガス排気口90及び第2のガス排気口390に連通するAPCバルブ214がフィードバック制御される。又、ウェーハ14及び反応室44内が所定の温度となる様、被誘導体48が加熱される。この時、反応室44内が所定の温度分布となる様、温度センサ(図示せず)が検出した温度情報に基づき誘導コイル50への通電具合がフィードバック制御される。続いて、回転機構104により、ボート30が回転されることで、ウェーハ14が周方向に回転される。
【0077】
続いて、SiCエピタキシャル成長反応に寄与するSi(シリコン)原子含有ガス及びCl(塩素)原子含有ガスは、それぞれガス供給源210a,210bから供給され、第1のガス供給口68より反応室44内に噴出される。又、C(炭素)原子含有ガス及び還元ガスであるHガスが、所定の流量となる様に対応するMFC211d,211eの開度が調整された後、バルブ212d,212eが開かれ、それぞれのガスが第2のガスライン260に流通し、第2のガス供給ノズル70に流通して第2のガス供給口72より反応室44内に導入される。
【0078】
第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72より供給されたガスは、反応室44内の被誘導体48の内側を通り、主として、第1及び第2のガス供給ノズル60,70が設けられた領域と反対側の領域に到達した後、下方に向かって流れる。その後、成膜ガスの一部がガス逃げ部340により拡散することにより、ボート断熱部34Aの周方向に設けられた間隙を通ることにより熱交換され、その温度を低下させる。その後、温度が低下した成膜ガスが第1のガス排気口90からガス排気管230を通って排気される。第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72より供給されたガスは、反応室44内を通過する際に、SiC等で構成されるウェーハ14と接触し、ウェーハ14表面上にSiCエピタキシャル膜成長がなされる。
【0079】
又、ガス供給源210fより、不活性ガスとしての希ガスであるArガスが所定の流量となる様に、対応するMFC211fの開度が調整された後、バルブ212fが開かれ、第3のガスライン240に流通し、第3のガス供給口360から反応室44内に供給される。第3のガス供給口360から供給された不活性ガスとしての希ガスであるArガスは、反応室44内の断熱材54と反応管42との間を通過し、第2のガス排気口390から排気される。
【0080】
次に、予め設定された時間が経過すると、上述したガスの供給が停止され、図示しない不活性ガス供給源より不活性ガスが供給され、反応室44内の被誘導体48の内側の空間が不活性ガスで置換されると共に、反応室44内の圧力が常圧に復帰される。
【0081】
その後、昇降モータ122によりシールキャップ102が下降され、マニホールド36の下端が開口されると共に、処理済みのウェーハ14がボート30に保持された状態でマニホールド36の下端から反応管42の外部に搬出(ボートアンローディング)され、ボート30に保持されたウェーハ14が冷える迄、ボート30を所定位置にて待機させる。待機させたボート30のウェーハ14が所定温度迄冷却されると、基板移載機28により、ボート30からウェーハ14を取出し、ポッドオープナ24にセットされている空のポッド16に搬送して収納する。その後、ポッド搬送装置20によりウェーハ14が収納されたポッド16をポッド収納棚22、又はポッドステージ18に搬送する。この様にして、半導体製造装置10の一連の作動が完了する。
【0082】
以上、第1の実施形態について図面を用いて説明してきたが、本発明は、これに限らず様々な変更が可能である。例えば、ガス逃げ部340に設けられた断熱板342の枚数や支柱343の本数は、適宜変更することが可能である。また、天板341Aや底板341Bは、不要であれば設ける必要はない。更には、断熱板の形状は、円板状でなくてもよく、角型であってもよい。
【0083】
以上の第1の実施形態における発明は、以下記載する効果の少なくとも一つを有する。(1)環状の熱交換部(第1熱交換部34B)が、ボート断熱部34Aの側面の少なくとも一部を囲うように、かつ、ボート断熱部34Aの側壁との間に間隙を形成するように設けられている。すなわち、筒状のボート断熱部34Aとの間に、間隙を形成するように、筒状の第1熱交換部34Bを設ける。これにより、間隙が、反応室40内の成膜ガスが流れる流路より狭い流路となる。このように、成膜ガスの排気流路を狭くすることにより、成膜ガスの温度を下げることができ、耐熱の低い炉口144付近を保護することができる。また、ボート断熱部34Aとボート30との間に、空間を形成してガス逃げ部340を設けることにより、合流損失を抑制でき、形成される膜の均一性を向上させることできる。
(2)上記(1)において、ガス逃げ部340に、複数の支柱343を設け、ウェーハ14と平行に設けられた断熱板342A,342Bを支持することにより、反応室44からの輻射熱による炉口144付近の加熱を抑制することができる。
(3)上記(2)において、断熱板342の外径を、ボート30の底板30Bの外径より小さくすることにより、第1熱交換部34Bの上方に流れてきた成膜ガスが、ガス逃げ部340内で横方向に流れやすくなり、合流損失をより効果的に抑制できる。
(4)上記(3)において、第1及び第2のガス供給ノズル60,70が設けられた領域と反対側の領域に位置する第1熱交換部34Bの上端の高さ位置より低い位置にある断熱板342Bの外径を、第1及び第2のガス供給ノズル60,70が設けられた領域と反対側の領域に位置する第1熱交換部34Bの上端の高さ位置より高い位置にある断熱板342Aの外径より大きくすることにより、反応室44からの輻射熱に対する断熱性能をより向上させることができる。
(5)上記(1)から(4)のいずれか一つにおいて、ボート断熱部34Aの上端の高さ位置が、第1及び第2のガス供給ノズル60,70が設けられた領域の反対側の領域に位置する第1熱交換部34Bの上端の高さ位置より低くなるように構成することにより、より合流損失を抑制することができる。
(6)上記(5)において、熱交換部を、ボート断熱部34Aと、第1及び第2のガス供給ノズル60,70が設けられた領域と反対側の領域に位置する第1熱交換部34Bと、第1及び第2のガス供給ノズル60,70の下方に設けられた第2熱交換部34Cとで構成し、第2熱交換部34Cの上端の高さ位置を、ボート断熱部34Aの上端の高さ位置より高くすることにより、排気される成膜ガスの熱を第1及び第2のガス供給ノズル60,70を通る成膜ガスの加熱に用いることができる。
(7)また、本実施形態によれば、反応室44と第1の排気口90との間に、反応室44内の成膜ガス等のガスが流れる流路よりも狭い流路を形成する熱交換部が設けられている。そして、熱交換部により形成される狭い流路の上流側には、ガス圧を一時的に下げるガス逃げ空間340が形成されている。これにより、基板処理の面内均一性を向上させ、ウェーハ14上に均質な膜を形成できる。また、反応室44内よりも耐熱性の低い第1の排気口90付近の構成部材(例えばマニホールド36等)や、処理炉40の炉口144付近の構成部材(例えばOリングや、シールキャップ102等)に加わる熱ダメージを低減できる。
【0084】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について、図10及び図11を用いて説明する。なお、
ここでは、主に第1の実施形態と異なる点を説明し、同一の部分については説明を省略する。
【0085】
図10に示される第2の実施形態では、第1熱交換部34Bを貫通するように例えばCl原子含有ガスを供給する第4のガス供給ノズル80を更に有している。より具体的には、第4のガス供給ノズル80の上流側は、ウェーハ14と平行方向に延びるマニホールド36の上面部を貫通した後、L字型に曲がり、その後、図示していないが、流量制御器、バルブ、Cl原子含有ガス供給源に接続されている。また、流量制御器、及び、バルブは、ガス流量制御部78に電気的に接続されており、それぞれ供給するガスの流量が所定流量となる様に、所定のタイミングにて制御される様になっている(図7参照)。これにより、Cl原子含有ガスの供給流量、濃度、分圧、供給タイミングを反応室44内に於いて制御することができる。一方、第4のガス供給ノズル80の下流側には、ボート断熱部34Aの上端の高さ位置より高い位置、より好ましくは、ガス逃げ部340が存在する高さ位置に、Cl原子含有ガスを供給する第4のガス供給口82が設けられる。従って、第4のガス供給口82から供給されたCl原子含有ガスは、反応室44内に供給された後、成膜ガスと同様に、ボート断熱部34Aと第1及び第2熱交換部34B,34Cとの間に形成された間隙を通り、第1の排気口90から排気される。
【0086】
次に、第4のガス供給ノズル80によりCl原子含有ガスを供給する理由を説明する。第1の実施形態で説明したとおり、反応室44内を通った成膜ガスは、ボート断熱部34Aと第1及び第2熱交換部34B,34Cとの間に形成された間隙を通って第1のガス排気口90から排気される。従って、ボート断熱部34A、第1熱交換部34B、第2熱交換部34Cの側壁には、SiC膜等の副生成物が付着する。また、この部分は、成膜温度が低くなるため膜質が悪くパーティクルになりやすい。本実施形態では、第4のガス供給ノズル80からエッチングガスであるCl原子含有ガスを供給し、ボート断熱部34A、第1熱交換部34B、第2熱交換部34Cへの副生成物の付着を抑制している。
【0087】
また、第4のガス供給口82は、ガス逃げ部340が存在する高さ位置に設けられている。従って、第4のガス供給口82から供給されたCl原子含有ガスは、ガス逃げ部340を通って、第2熱交換部34Cまで容易に到達することができる。一方、図8に示されるようなガス逃げ部340が設けられない構成とすると、本実施形態のように第4のガス供給ノズル80を設けたとしても、ボート断熱部34Aにガスの流路が阻まれ、第2熱交換部34Cまで第4のガス供給ノズル80から供給されたエッチングガスを到達させることが難しい。従って、ガス逃げ部340を設け、ガス逃げ部340が位置する高さにエッチングガスを供給する第4のガス供給口82を設けることにより、排気系への副生成物の抑制を効率よくできる。
【0088】
なお、第4のガス供給口82から供給されるエッチングガスの流速は、第1のガス供給ノズル60や第2のガス供給ノズル70から供給される成膜ガスの速度より遅いほうが望ましい。第1のガス供給ノズル60や第2のガス供給ノズル70から供給される成膜ガスは、ウェーハ14に到達する前に排気方向に流れる量を少なくする必要があるが、第4のガス供給口82から供給されるエッチングガスは、速度を遅くすることで、第4のガス供給口82から噴出した直後にその一部が排気方向に流れ、第4のガス供給ノズル80が設置される側のボート断熱部34Aと第1熱交換部34Bとの間に形成される間隙にも供給することができる。
【0089】
図11に第1熱交換部34Bと第4のガス供給ノズル80との関係を示した模式図を示す。第1熱交換部34Bは、C字型の筒状部材となっており、熱伝導を抑制するため内部は中空となっている。また、第1熱交換部34Bは、エッチングガスを供給するための管状の流路80Bが設けられる。また、流路80Bの上流側には、第1熱交換部34Bとは
別部材の第2のガス供給管80Cが接続され、流路80Bの下流側には、第4のガス供給口82が設けられた第1のガス供給管80Aが接続される。この第2のガス供給管80C、流路80B、及び、第1のガス供給管80Aにより第4のガス供給ノズル80が構成される。もちろん、第4のガス供給ノズル80を一体物として形成し、第1熱交換部34Bに設けた孔に差し込む構成をとってもよい。しかしながら、第1熱交換部34Bに差し込む形とすると、第4のガス供給ノズル80と第1熱交換部34Bに設けられた孔との間に隙間ができてしまい、この隙間にエッチングガスや成膜ガスが侵入する恐れがある。従って、図11に示すように、第4のガス供給ノズル80を、第1熱交換部34Bを高さ方向に貫通するように流路80Bとしての孔を設け、流路80Bに第2のガス供給管80C及び第1のガス供給管80Aを接続する構成とすることで、これらを気密に嵌合でき、第1熱交換部34Bに設けられた孔の内部にエッチングガス等が流れ込むことを抑制できる。なお、図面には記載していないが、第1熱交換部34Bの内部にウェーハ14表面と平行方向に断熱板を設けるとより断熱性能が向上する。
【0090】
エッチングガスは、少なくともウェーハ14を処理している間(第1の実施形態においては、SiCエピタキシャル膜成長を行っている間)、第4のガス供給口82から供給される。これにより、ボート断熱部34A、第1熱交換部34B、第2熱交換部34Cへの副生成物の付着を抑制できる。また、降温工程中において、エッチングガス、若しくは、エッチングガスに変えてアルゴン(Ar)等の冷却ガスを供給しても良い。冷却ガスを供給することで降温時間を短くすることができる。
【0091】
以上、第2の実施形態を図面を用いながら説明してきたが、本発明は、これに限らず様々な変更が可能である。例えば、第4のガス供給ノズル80は複数本設けても良い。この場合、周方向に並んで配置することが望ましく、また、第4のガス供給口82は、夫々ボート断熱部34Aの中心に向かってエッチングガスを供給することで均一にエッチングガスを供給することができる。
【0092】
なお、第4のガス供給ノズル80から供給されるエッチングガスは、副生成物の堆積を抑制する効果を有するガスを示している。また、エッチングガスとしてのCl原子含有ガスの例としては、塩化水素ガス(HClガス)、塩素ガス(Clガス)が挙げられる。
【0093】
以上の第2の実施形態における発明は、上述の第1の実施形態の発明における効果のほかに、以下に記載する効果の少なくとも一つを有する。
(1)反応室44の下流側にエッチングガスを供給する第4のガス供給ノズル80を設けることにより、副生成物が反応室44の下流側に付着することを抑制できる。
(2)上記(1)において、第4のガス供給口82の高さ位置を、ボート断熱部34Aの上端の高さ位置より高い位置とすることにより、ガス逃げ部340を介してエッチングガスが第1及び第2のガス供給ノズル60,70の下部に設けられた第2熱交換部34Cにも容易に到達することができる。この場合、第4のガス供給口82の高さ位置を、ガス逃げ部340が位置する高さとすることにより、更に容易に第1及び第2のガス供給ノズル60,70の下部に設けられた第2熱交換部34Cに到達することができる。
(3)上記(1)又は(2)において、第4のガス供給口82から供給されるエッチングガスの流速を、第1ガス供給口68や第2ガス供給口72から供給される成膜ガスの速度より遅くすることにより、ボート断熱部34Aと、第1及び第2のガス供給ノズル60,70と反対側に設けられた第1熱交換部34Bとの間に形成された間隙に効率よくエッチングガスを供給することが可能となる。
(4)上記(1)乃至(3)のいずれか一つにおいて、第4のガス供給ノズル80を、第1熱交換部34Bに設けられた流路80Bと、流路80Bの上流側に接続される第1のガス供給管80Cと、流路80Bの下流側に接続される第2のガス供給管80Aとにより構成することにより、第1熱交換部34Bの内部にエッチングガスが流れ込むことを抑制す
ることができる。
(5)また、ウェーハ14を処理している間に、第4のガス供給口82からエッチングガスを供給することにより、反応室44の下流側に副生成物に生成されることを抑制でき、副生成物に起因する歩留まりの低下を抑制できる。
(6)上記(5)において、例えば降温工程中に、第4のガス供給ノズル80から、エッチングガス、又は、アルゴンガス(Ar)のような反応室44より温度の低い冷却ガスを供給することにより、降温時間を短くすることが可能となり、スループットを向上させることができる。
【0094】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について、図12、及び、図13を用いて説明する。なお、ここでは、主に第1の実施形態及び第2実施形態と異なる点を説明し、同一の部分については説明を省略する。
【0095】
図12は、第3の実施形態を説明するための要部の模式図である。なお、第1の実施形態及び第2の実施形態と同一部材については、同一番号を付してある。第3の実施形態が第1の実施形態及び第2の実施形態と異なる点は、ボート30が、ウェーハ14の処理面側の成膜ガスの流路断面積を調整する整流部材としての調整ブロック345を有している点である。この調整ブロック345は、図12(a)に示すように、ボート30の底板30Bに設置され、複数のウェーハ14の最下段とボート30の底板30Bとの間の空間を狭くしている。また、調整ブロック345は、図12(b)に示されるように、周方向に配置された複数のボート柱30Aの内側に収まる大きさとなっており、好ましくは円板状となっている。大きさをボート柱30Aの内側に収まる大きさとすることにより、調整ブロック345を取り外し可能とすることができる。また、円板状とすることにより、ボート30が回転した時に回転位置によって条件が変わらないようにすることができる。
【0096】
第1の実施形態で言及したとおり、複数の第1のガス供給口68(又は第2のガス供給口72)から噴出する成膜ガスの速度は一定となるように構成されているにも関わらず、ボート30の下部領域では合流損失が生じ、ボート30の下部領域にて成膜ガスの流速が低下してしまう。そこで、本実施形態では、調整ブロック345をボート30の底板30Bに設置し、ボート30の最下部に保持されたウェーハ14の下(ウェーハ14の成膜面)を通る成膜ガスの流動空間(流路断面積)を狭くするようにしている。従って、第1のガス供給口68(又は第2のガス供給口72)の最下段から供給された成膜ガスは、その流動空間が狭くなっているため、通りにくくなる。そのため、第1のガス供給口68(又は第2のガス供給口72)の最下段から供給された成膜ガスの一部は、その流動空間が比較的広い、上方に向かって流れることになる。その結果、最下段から上方に流れてきた成膜ガスが加わったボート30の下部領域のウェーハ14面上では、その流速が速くなり、合流損失による流速の低下を補填することができ、ボート30の上部領域と下部領域とで成膜ガスの流速を同等にすることができる。なお、最下段のウェーハ14に対するガス供給量は減少するため、製品としては使用することができない。よって、ダミーウェーハを設置する方が望ましい。
【0097】
また、図12では、調整ブロック345を1枚板として記載したが、図13(a)に示すように複数の板を積み重ねた構造としても良い。このように調整ブロック345の枚数を調整することで、任意の流路断面積に調整することができる。従って、第1のガス供給口68(又は第2のガス供給口72)から供給される成膜ガスの流量を変更した場合であっても、流路断面積の調整を容易に行うことができる。また、図13(b)に示すように、第1の実施形態に記載されるガス逃げ部340を設けた構成と共に使用するとよい。これにより、第1の実施形態のガス逃げ部340により、合流損失の大半を解消し、本実施形態の調整ブロック345で微調整を行うことで、より均質なSiCエピタキシャル成長
膜を形成することができる。
【0098】
以上、第3の実施形態を図面を用いながら説明してきたが、本発明は、これに限らず様々な変更が可能である。例えば、調整ブロック345の形状を円板状として説明したが、これに限らず、円錐台形状であってもよい。また、調整ブロック345は、ボート30の最下部に配置する場合に限らず、例えば、ボート30の上方にいくに従って、ウェーハ14の処理面側の成膜ガスの流路断面積が徐々に大きくなるように、調整ブロック345の枚数を調整して配置してもよい。
【0099】
以上の第2の実施形態における発明は、上述の第1の実施形態や第2の実施形態の発明における効果のほかに、以下に記載する効果の少なくとも一つを有する。
(1)調整ブロック345をボート30の底板30Bに設置することで、ボート30の最下部に保持されたウェーハ14の成膜ガスの流路断面積(流動空間)を狭くし、ボート30の下部領域の他のウェーハ14に対する成膜ガスの流速を増加させることができる。その結果、合流損失による流速の低下を補填でき、ボート30の上部領域の流速と均一化することが可能となる。
(2)上記(1)において、調整ブロック345を周方向に並んだボート柱30Aの内側に収まる大きさとすることにより、調整ブロック345を容易に取り外しできる。
(3)上記(2)において、調整ブロック345を複数の板状部材とし、複数枚の調整ブロック345を重ねるように構成することにより、ウェーハ14の成膜面のガスの流路断面積(流動空間の大きさ)の調整が容易となる。
(4)上記(1)乃至(3)のいずれか一つにおいて、調整ブロック345を円状部材で形成することにより、ボート30を回転させた際の回転位置による条件の違いを抑制することができる。
(5)上記(1)乃至(4)のいずれか一つにおいて、ボート30とボート断熱部34Aとの間にガス逃げ部340を設けることにより、より効果的に合流損失を抑制できる。
【0100】
以上、図面を用いて本発明を説明してきたが、本願の趣旨を逸脱しない限り、様々な変更が可能である。例えば、本発明は、SiCエピタキシャル成長装置の検討段階において、成された発明であるため、実施例もSiCエピタキシャル成長装置にて記載したが、これに限らず、合流損失が発生する基板処理装置全般に適用可能である。
【0101】
また、上述の実施形態では、反応室44と第1のガス排気口90との間に設けられた狭い流路の上流側に、第1断熱部34Aと、第2熱交換部34Bと、第3熱交換部34Cと、ボート30の底板30Bと、によりガス逃げ部340を形成したが、これに限定されるものではない。すなわち、ガス逃げ部340は、ボート30と一体に形成される場合に限らず、この他、例えば、ボート30と別体でガス逃げ部340を形成する構成部材を作成してもよい。そして、処理炉40を構成する構成部材の1つであるガス逃げ部340を、熱交換部により形成される狭い流路の上流側に設けてもよい。
【0102】
以上の本明細書に開示される発明のうち主な態様を以下に付記する。
(付記1)
本発明の一態様によれば、
複数の基板(ウェーハ)の処理を行う反応室と、
複数の前記基板を保持する基板保持具(ボート)と、
前記反応室内に成膜ガスを供給するガス供給ノズルと、
前記反応室内の成膜ガスを排気する排気口と、
前記反応室内に設けられ、前記反応室内の成膜ガスが流れる流路より狭い流路を形成する熱交換部と、を備え、
前記基板保持具の最下部に保持された前記基板よりも下方に空間(ガス逃げ部)を有す
る基板処理装置が提供される。
(付記2)
好ましくは、
前記ガス逃げ部は、ウェーハの表面と平行となるように設けられた断熱板を更に具備する。
(付記3)
また好ましくは、
前記断熱板の外径は、前記ボートの底板の外径より小さい。
(付記4)
また好ましくは、
前記熱交換部は、前記基板保持具の下方に設けられた断熱部(ボート断熱部)と、
前記断熱部の側面の少なくとも一部を囲うように設けられ、かつ、前記断熱部との間に前記狭い流路を構成する間隙を形成するように設けられた環状の熱交換部とを有し、
前記反応室内での前記環状の熱交換部の上端の高さ位置を、前記断熱部の上端の高さ位置よりも高くすることで、ガス流路となる空間が形成される。
(付記5)
また好ましくは、
前記ガス逃げ部は、前記ボート断熱部と前記ボートとの間に設けられる。
(付記6)
また好ましくは、
前記熱交換部の上端の高さ位置よりも高い位置に設けられた前記断熱板の外径が、前記熱交換部の上端の高さ位置よりも低い位置に設けられた前記断熱板の外径よりも小さい。(付記7)
また好ましくは、
前記熱交換部は、
前記ボート断熱部の少なくとも一部を囲い、前記ボート断熱部との間に前記狭い流路を形成するように設けられた環状の第1熱交換部と、
前記ガス供給ノズルの下方の外周を囲うように設けられた第2熱交換部と、を備える。(付記8)
また好ましくは、
前記反応室内での前記第2熱交換部の上端の高さ位置が、前記第1熱交換部の上端の高さ位置よりも高い。
(付記9)
また好ましくは、
前記第1熱交換部には、前記ガス逃げ部内にエッチングガスを供給するガス供給ノズルが設けられている。
(付記10)
また好ましくは、
エッチングガスを供給する前記ガス供給ノズルには、前記反応室内での前記ボート断熱部の上端の高さ位置よりも高い位置にガス供給口が設けられている。
(付記11)
また好ましくは、
エッチングガスを供給する前記ガス供給ノズルに設けられた前記ガス供給口は、前記ガス逃げ部が存在する位置に設けられている。
(付記12)
また好ましくは、
エッチングガスを供給する前記ガス供給ノズルから供給されるエッチングガスの流速は、前記反応室内に供給される成膜ガスの流速よりも遅くなるように制御される。

(付記13)
また好ましくは、
エッチングガスを供給する前記ガス供給ノズルは、前記第1熱交換部に高さ方向に貫通するように設けられた流路と、前記流路の上流側に接続される第1のガス供給管と、前記流路の下流側に設けられた第2のガス供給管と、により構成されている。
(付記14)
また好ましくは、
前記第1のガス供給管には、エッチングガスを供給するエッチングガス供給源と、複数の前記基板を処理する際の前記反応室の温度より低い冷却ガスを供給する冷却ガス供給源が接続されている。
(付記15)
本発明の他の態様によれば、
複数の基板の処理を行う反応室と、
複数の前記基板を保持する基板保持具と、
前記反応室内に成膜ガスを供給するガス供給ノズルと、
前記反応室内の成膜ガスを排気する排気口と、
前記反応室と前記排気口との間に設けられ、前記反応室内の成膜ガスが流れる流路より狭い流路を形成する熱交換部と、を備え、
前記基板保持具は、前記基板の処理面側の成膜ガスの流路断面積を調整する整流部材(調整ブロック)を備える基板処理装置が提供される。
(付記16)
好ましくは、
前記調整ブロックは、前記ボートの底板に設置される。
(付記17)
また好ましくは、
前記ボートには、前記ウェーハを保持する複数本の柱が、前記ボートの前記底板の周方向に沿って配設されており、
前記調整ブロックは、前記柱よりも内側に配置される。
(付記18)
また好ましくは、
前記調整ブロックは、複数の板状部材で構成されており、
前記板状部材を積み重ねることで、前記基板の処理面を通過する成膜ガスの流路断面積を調整する。
(付記19)
また好ましくは、
前記調整ブロックは、円板状である。
(付記20)
本発明の更に他の態様によれば、
複数の基板(ウェーハ)を保持した基板保持具(ボート)を反応室内に搬入する基板搬入工程と、
排気口から前記反応室内を排気しつつ、ガス供給ノズルから前記反応室内に成膜ガスを供給して前記基板を処理する基板処理工程と、
処理済みの複数の前記基板を保持した前記基板保持具を前記反応室から搬出する基板搬出工程と、を有し、
前記基板処理工程では、前記ガス供給ノズルから供給された成膜ガスを、前記反応室内に設けられた熱交換部により形成される、前記反応室内の成膜ガスが流れる流路より狭い流路を介して排気する際、前記基板保持具の最下部に保持された前記基板よりも下方に形成された空間(ガス逃げ部)内に成膜ガスを流して、ガス圧を下げる基板処理方法が提供される。
(付記21)
本発明の更に他の態様によれば、
複数の基板(ウェーハ)を保持した基板保持具(ボート)を反応室内に搬入する基板搬入工程と、
排気口から前記反応室内を排気しつつ、ガス供給ノズルから前記反応室内に成膜ガスを供給して前記基板を処理する基板処理工程と、
処理済みの複数の前記基板を保持した前記基板保持具を前記反応室から搬出する基板搬出工程と、を有し、
前記基板処理工程では、前記ガス供給ノズルから供給された成膜ガスを、前記反応室内に設けられた熱交換部により形成される、前記反応室内の成膜ガスが流れる流路より狭い流路を介して排気する際、前記基板保持具の最下部に保持された前記基板よりも下方に形成された空間(ガス逃げ部)内に成膜ガスを流して、ガス圧を下げる半導体デバイスの製造方法が提供される。
(付記22)
好ましくは、
前記基板処理工程では、前記熱交換部に設けられたエッチングガスを供給するガス供給ノズルから、前記ガス逃げ部内にエッチングガスを供給する。
(付記23)
また好ましくは、
前記基板搬出工程では、
前記ガス逃げ部内に、前記熱交換部に設けられたエッチングガスを供給するガス供給ノズルから、前記反応室の温度より低い温度の冷却ガスを供給する。
【符号の説明】
【0103】
10:半導体製造装置、12:筐体、14:ウェーハ、15:ウェーハホルダ、15a:上部ウェーハホルダ、15b:下部ウェーハホルダ、16:ポッド、18:ポッドステージ、20:ポッド搬送装置、22:ポッド収納棚、24:ポッドオープナ、26:基板枚数検知器、28:基板移載機、30:ボート、32:アーム、34A:ボート断熱部、34B:第1熱交換部、34C:第2熱交換部、36:マニホールド、40:処理炉、42:反応管、44:反応室、48:被誘導体、50:誘導コイル、52:温度制御部、54:断熱材、55:外側断熱壁、58:磁気シール、60:第1のガス供給ノズル、68:第1のガス供給口、70:第2のガス供給ノズル、72:第2のガス供給口、78:ガス流量制御部、80:第4のガス供給ノズル、80A:第1のガス供給管、80B:流路(第1熱交換部)、80C:第2のガス供給管、82:第4のガス供給口、90:第1のガス排気口、98:圧力制御部、102:シールキャップ、104:回転機構、106:回転軸、108:駆動制御部、110:ロードロック室、112:下基板、114:昇降台、116:ガイドシャフト、118:ボール螺子、120:上基板、122:昇降モータ、124:昇降シャフト、128:ベローズ、130:昇降基板、132:駆動部カバー、134:駆動部収納ケース、135:冷却機構、138:電力ケーブル、140:冷却水流路、142:冷却水配管、150:主制御部、152:コントローラ、200:ガス供給ユニット、210:ガス供給源、211:MFC、212:バルブ、214:APCバルブ、222:第1のガスライン、230:ガス排気管、260:第2のガスライン、300:構造物、340:ガス逃げ部、341A:天板(ガス逃げ部)、341B:底板(ガス逃げ部)、342:断熱板(ガス逃げ部)、343:支柱(ガス逃げ部)、345:調整ブロック、360:第3のガス供給口、390:第2のガス排気口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板の処理を行う反応室と、
複数の前記基板を保持する基板保持具と、
前記反応室内に成膜ガスを供給するガス供給ノズルと、
前記反応室内の成膜ガスを排気する排気口と、
前記反応室内に設けられ、前記反応室内の成膜ガスが流れる流路より狭い流路を形成する熱交換部と、を備え、
前記基板保持具の最下部に保持された前記基板よりも下方に空間を有する
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記熱交換部は、前記基板保持具の下方に設けられた断熱部と、
前記断熱部の側面の少なくとも一部を囲うように設けられ、かつ、前記断熱部との間に間隙を形成するように設けられた環状の熱交換部とを有し、
前記反応室内での前記環状の熱交換部の上端の高さ位置を、前記断熱部の上端の高さ位置よりも高くすることで、ガス流路となる空間が形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
複数の基板の処理を行う反応室と、
複数の前記基板を保持する基板保持具と、
前記反応室内に成膜ガスを供給するガス供給ノズルと、
前記反応室内の成膜ガスを排気する排気口と、
前記反応室と前記排気口との間に設けられ、前記反応室内の成膜ガスが流れる流路より狭い流路を形成する熱交換部と、を備え、
前記基板保持具は、前記基板の処理面側の成膜ガスの流路断面積を調整する整流部材を備える
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
複数の基板を保持した基板保持具を反応室内に搬入する基板搬入工程と、
排気口から前記反応室内を排気しつつ、ガス供給ノズルから前記反応室内に成膜ガスを供給して前記基板を処理する基板処理工程と、
処理済みの複数の前記基板を保持した前記基板保持具を前記反応室から搬出する基板搬出工程と、を有し、
前記基板処理工程では、前記ガス供給ノズルから供給された成膜ガスを、前記反応室内に設けられた熱交換部により形成される、前記反応室内の成膜ガスが流れる流路より狭い流路を介して排気する際、前記基板保持具の最下部に保持された前記基板よりも下方に形成された空間内に成膜ガスを流して、ガス圧を下げる
ことを特徴とする基板処理方法。
【請求項5】
複数の基板を保持した基板保持具を反応室内に搬入する基板搬入工程と、
排気口から前記反応室内を排気しつつ、ガス供給ノズルから前記反応室内に成膜ガスを供給して前記基板を処理する基板処理工程と、
処理済みの複数の前記基板を保持した前記基板保持具を前記反応室から搬出する基板搬出工程と、を有し、
前記基板処理工程では、前記ガス供給ノズルから供給された成膜ガスを、前記反応室内に設けられた熱交換部により形成される、前記反応室内の成膜ガスが流れる流路より狭い流路を介して排気する際、前記基板保持具の最下部に保持された前記基板よりも下方に形成された空間内に成膜ガスを流して、ガス圧を下げる
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−195565(P2012−195565A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23305(P2012−23305)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】