説明

基板処理装置及び基板の製造方法

【課題】基板表面のダメージを取り除くためのエッチング工程における表面の荒れを抑制する。
【解決手段】反応室を昇温すると共に、反応室が第1温度となった後に複数の基板に第1エッチングガスを供給する第1エッチング工程と、反応室が第1温度より高い第2温度となった後に、第1エッチングガスと共にシリコン原子含有ガスを複数の基板に向けて供給する第2エッチング工程と、反応室が第2温度より高い第3温度となった後に、シリコン原子含有ガス、及び、炭素原子含有ガスを複数の基板に向けて供給し、複数の基板に炭化珪素膜を形成する第1成膜工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置、半導体デバイスの製造方法及び基板の製造方法、特に炭化ケイ素(以下、SiCとする)エピタキシャル膜を基板上に成膜する工程を有する基板処理装置、半導体デバイスの製造方法及び基板製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SiCは、特にパワーデバイス用素子材料として注目されている。一方で、SiCはシリコン(以下Siとする)に比べて結晶基板やデバイスの作製が難しいことが知られている。
【0003】
一方で、SiCを用いてデバイスを作製する場合は、SiC基板の上にSiCエピタキシャル膜を形成したウェーハを用いる。このSiC基板上にSiCエピタキシャル膜を形成するSiCエピタキシャル成長装置の一例として特許文献1がある。
【0004】
特許文献1には、複数の基板を高さ方向に配置し、一括してSiCエピタキシャル成長を行う所謂縦型バッチ式熱処理装置が記載されている。
【0005】
また、一方、特許文献2には、SiC基板の表面の研磨傷等によるダメージを取り除くために、SiCエピタキシャル成長前に水素エッチングを行うことが記載されている。また、当該水素エッチング時に微量のシランを添加することにより表面粗さの少ないSiC平滑化基板を作成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−3885号公報
【特許文献2】特開2005−277229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで特許文献2では、基板を1600℃まで加熱した後、エピタキシャル成長用原料であるシランを微量添加して、エッチングを行っている。しかしながら、特許文献1に記載されるような所謂縦型バッチ式熱処理装置では、その容積が大きく、特にホットウォール式とすると加熱するのに時間がかかる。そのため、処理時間が長くなってしまい、スループットの向上が困難になるという課題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、複数の基板を高さ方向に並べて保持するボートを反応室内に搬入するボートローディング工程と、前記反応室を昇温すると共に、前記反応室が第1温度となった後に前記複数の基板に第1エッチングガスを供給する第1エッチング工程と、前記第1エッチング工程の後に、前記反応室が前記第1温度より高い第2温度となった後に、前記第1エッチングガスと共にシリコン原子含有ガスを前記複数の基板に向けて供給する第2エッチング工程と、前記第2エッチング工程の後に、前記反応室が前記第2温度より高い第3温度となった後に、前記シリコン原子含有ガス、及び、炭素原子含有ガスを前記複数の基板に向けて供給し、前記複数の基板に炭化珪素膜を形成する第1成膜工程と、前記成膜工程の後に、前記炭化珪素膜が形成された前記複数の基板を保持するボートを前記反応室から搬出するボートアンローディング工程と、を具備する基板の製造方法、又は、半導体デバイスの製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明の他の一態様によれば、複数の基板の処理を行う反応室と、前記複数の基板を保持するボートと、前記複数の基板に成膜ガスを供給するガス供給口を有するガス供給ノズルと、前記反応室を昇温しつつ第1エッチングガスを前記反応室に供給し、その後、前記反応室が前記第1温度になった際に前記第1エッチングガスに加えてシリコン原子含有ガスの前記反応室への供給を開始し、その後、前記反応室が前記第1温度になった際に前記シリコン原子含有ガスと炭素原子含有ガスの前記反応室への供給を開始するように制御するコントローラを具備する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
表面荒れの少ない基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明が適用される半導体製造装置の斜視図である。
【図2】本発明が適用される処理炉の側面断面図である。
【図3】本発明が適用される処理炉の平面断面図である。
【図4】本発明が適用される半導体製造装置のガス供給ユニットを説明する図である。
【図5】本発明が適用される半導体製造装置の制御構成を示すブロック図である。
【図6】本発明が適用される半導体製造装置の処理炉及びその周辺構造の概略断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態を示すプロセスシーケンス図である。
【図8】本発明の第2の実施形態を示すプロセスシーケンス図である。
【図9】本発明の第3の実施形態を示すプロセスシーケンス図である。
【図10】本発明の第4の実施形態を示すプロセスシーケンス図である。
【図11】本発明の第5の実施形態を示すプロセスシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態では、基板処理装置の一例であるSiCエピタキシャル成長装置における、高さ方向にSiCウェーハを並べる、所謂バッチ式縦型SiCエピタキシャル成長装置で説明する。なお、バッチ式縦型SiCエピタキシャル成長装置とすることで、一度に処理できるSiCウェーハの数が多くなりスループットが向上する。
【0013】
<全体構成>
先ず、図1に於いて、本発明の第1の実施形態に於けるSiCエピタキシャル膜を成膜する基板処理装置、および、半導体デバイスの製造工程の一つであるSiCエピタキシャル膜を成膜する基板の製造方法について説明する。
【0014】
基板処理装置(成膜装置)としての半導体製造装置10は、バッチ式縦型熱処理装置であり、主要部が配置される筐体12を有する。前記半導体製造装置10には、例えばSiC等で構成された基板としてのウェーハ14(図2参照)を収納する基板収容器として、フープ(以下、ポッドと称す)16がウェーハキャリアとして使用される。前記筐体12の正面側には、ポッドステージ18が配置されており、該ポッドステージ18にポッド16が搬送される。ポッド16には、例えば25枚のウェーハ14が収納され、蓋が閉じられた状態で前記ポッドステージ18にセットされる。
【0015】
前記筐体12内の正面であって、前記ポッドステージ18に対向する位置には、ポッド搬送装置20が配置されている。又、該ポッド搬送装置20の近傍にはポッド収納棚22、ポッドオープナ24及び基板枚数検知器26が配置されている。前記ポッド収納棚22は前記ポッドオープナ24の上方に配置され、ポッド16を複数個載置した状態で保持する様に構成されている。前記基板枚数検知器26は、前記ポッドオープナ24に隣接して配置され、前記ポッド搬送装置20は前記ポッドステージ18と前記ポッド収納棚22と前記ポッドオープナ24との間でポッド16を搬送する。前記ポッドオープナ24はポッド16の蓋を開けるものであり、前記基板枚数検知器26は蓋を開けられたポッド16内のウェーハ14の枚数を検知する様になっている。
【0016】
前記筐体12内には、基板移載機28、基板保持具としてのボート30が配置されている。前記基板移載機28は、アーム(ツイーザ)32を有し、図示しない駆動手段により昇降可能且つ回転可能な構造となっている。前記アーム32は、例えば5枚のウェーハ14を取出すことができ、前記アーム32を動かすことにより、前記ポッドオープナ24の位置に置かれたポッド16及びボート30間にてウェーハ14を搬送する。
【0017】
前記ボート30は、例えばカーボングラファイトやSiC等の耐熱性材料で構成されており、複数枚のウェーハ14を水平姿勢で、且つ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積上げ、保持する様に構成されている。尚、前記ボート30の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成された円盤形状の断熱部材としてボート断熱部34が配置されており、後述する被加熱体48からの熱が処理炉40の下方側に伝わりにくくなる様に構成されている(図2参照)。
【0018】
前記筐体12内の背面側上部には前記処理炉40が配置されている。該処理炉40内に複数枚のウェーハ14を装填した前記ボート30が搬入され、熱処理が行われる。
【0019】
<処理炉構成>
次に、図2、図3、図4に於いて、SiCエピタキシャル膜を成膜する前記半導体製造装置10の前記処理炉40について説明する。処理炉40には、第1のガス供給口68を有する第1のガス供給ノズル60、第2のガス供給口72を有する第2のガス供給ノズル70、及び第1のガス排気口90が設けられる。又、不活性ガスを供給する第3のガス供給口360、第2のガス排気口390が図示されている。
【0020】
処理炉40は、石英又はSiC等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成された反応管42を備えている。反応管42の下方には、反応管42と同心円状にマニホールド36が配設されている。該マニホールド36は、例えばステンレス等からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。該マニホールド36は、反応管42を支持する様に設けられている。尚、マニホールド36と反応管42との間には、シール部材としてのOリング(図示せず)が設けられている。マニホールド36が図示しない保持体に支持されることにより、反応管42は垂直に据付けられた状態になっている。該反応管42とマニホールド36により、反応容器が形成されている。
【0021】
処理炉40は、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成された被誘導体48及び磁場発生部としての誘導コイル50を具備している。被誘導体48の筒中空部には、反応室44が形成れており、SiC等で構成された基板としてのウェーハ14を保持したボート30を収納可能に構成されている。また、図2の下枠内に示されるように、ウェーハ14は、円環状の下部ウェーハホルダ15に保持され、上面を円板状の上部ウェーハホルダ15aで覆われた状態でボート30に保持されるとよい。これにより、ウェーハ上部から落下しているパーティクルからウェーハ14を守ることができると共に、成膜面(ウェーハ14の下面)に対して裏面側の成膜を抑制することができる。また、ウェーハホルダ15の分ボート柱から成膜面を離すことができ、ボート柱の影響を小さくすることができる。ボート30は、水平姿勢で、且つ、互いに中心を揃えた状態で縦方向に整列するようにウェーハホルダ15に保持されたウェーハ14を保持するよう構成されている。被誘導体48は、該反応管42の外側に設けられた誘導コイル50により発生される磁場によって加熱される様になっており、被誘導体48が発熱することにより、反応室44内が加熱される様になっている。
【0022】
被誘導体48の近傍には、反応室44内の温度を検出する温度検出体として図示しない温度センサが設けられている。誘導コイル50及び温度センサは、温度制御部52と電気的に接続されており、温度センサにより検出された温度情報に基づき、誘導コイル50への通電具合が調節されることで、反応室44内の温度が所望の温度分布となる様所定のタイミングにて制御される様構成されている(図5参照)。
【0023】
尚、好ましくは、反応室44内に於いて前記第1及び第2のガス供給ノズル60,70と第1のガス排気口90との間であって、前記被加熱体48とウェーハ14との間には、被加熱体48とウェーハ14との間の空間を埋める様、鉛直方向に延在し断面が円弧状の構造物300を反応室44内に設けるのがよい。例えば、図3に示す様に、対向する位置にそれぞれ構造物300を設けることで、第1及び第2のガス供給ノズル60,70から供給されるガスが、被誘導体48の内壁に沿ってウェーハ14を迂回するのを防止することができる。構造物300としては、好ましくは断熱材若しくはカーボンフェルト等で構成すると、耐熱及びパーティクルの発生を抑制することができる。
【0024】
反応管42と被誘導体48との間には、例えば誘電されにくいカーボンフェルト等で構成された断熱材54が設けられ、該断熱材54を設けることにより、被誘導体48の熱が反応管42或は該反応管42の外側へ伝達するのを抑制することができる。
【0025】
又、誘導コイル50の外側には、反応室44内の熱が外側に伝達するのを抑制する為の、例えば水冷構造である外側断熱壁55が反応室44を囲む様に設けられている。更に、外側断熱壁55の外側には、誘導コイル50により発生された磁場が外側に漏れるのを防止する磁気シール58が設けられている。
【0026】
図2に示す様に、被誘導体48とウェーハ14との間には、少なくとも1つの第1のガス供給口68が設けられた第1のガス供給ノズル60が設置される。又、被誘導体48とウェーハ14との間の第1のガス供給ノズル60とは異なる箇所には、少なくとも1つの第2のガス供給口72が設けられた第2のガス供給ノズル70が設けられる。また、第1のガス排気口90も同様に被加熱体48とウェーハ14との間に配置される。又、反応管42と断熱材54との間に、第3のガス供給口360及び第2のガス排気口390が配置されている。なお、第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル70から供給されるガス種については、後述する。
【0027】
第1のガス供給口68及び第1のガス供給ノズル60は、例えばカーボングラファイトで構成され、反応室44内に設けられる。又、第1のガス供給ノズル60は、マニホールド36を貫通する様に該マニホールド36に取付けられている。該第1のガス供給ノズル60は、第1のガスライン222を介してガス供給ユニット200に接続される。
【0028】
前記第2のガス供給口72は、例えばカーボングラファイトで構成され、反応室44内に設けられる。また、第2のガス供給ノズル70は、マニホールド36を貫通する様に、該マニホールド36に取付けられている。また、第2のガス供給ノズル70は、第2のガスライン260を介してガス供給ユニット200に接続されている。
【0029】
又、第1のガス供給ノズル60及び第2のガス供給ノズル70に於いて、基板の配列領域に第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72が1つ設けられていてもよく、ウェーハ14の所定枚数毎に設けられていてもよい。
【0030】
<排気系>
図3に示す様に、第1のガス排気口90が、ボート30より下部に設けられ、マニホールド36には、第1のガス排気口90に接続されたガス排気管230が貫通する様設けられている。該ガス排気管230の下流側には、図示しない圧力検出器としての圧力センサ及び、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ214を介して真空ポンプ等の真空排気装置220が接続されている。圧力センサ及びAPCバルブ214には、圧力制御部98が電気的に接続されており、該圧力制御部98は圧力センサにより検出された圧力に基づいてAPCバルブ214の開度を調整し、処理炉40内の圧力が所定の圧力となる様所定のタイミングにて制御する様に構成されている(図5参照)。
【0031】
上記した様に、第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72から供給されたガスはSi又はSiCで構成されたウェーハ14に対し平行に流れ、第1のガス排気口90より排気されるので、ウェーハ14全体が効率的且つ均一にガスに晒される。
【0032】
また、ボート30の下には、反応室からの輻射熱によりマニホールド36等が加熱されないようにボート断熱部34Aが設けられる。また、本実施形態では、反応室にて加熱された成膜ガスが高温のままマニホールド36等に到達しないように、成膜ガスと熱交換を行い、成膜ガスの温度を下げるための熱交換部が設けられている。具体的には、ボート断熱部34Aを中空筒状とし、その側面に沿って成膜ガスが排気されるようにしている。このようにボート断熱部34Aを筒状とすることで排気される成膜ガスとの接触面積が大きくなり熱交換の効率が向上する。また、当該ボート断熱部34Aを囲むように、第1熱交換部34B、及び、ガス供給ノズル60(70)の下部に設けられた第2熱交換部が設けられる。これらの第1熱交換部34B及び第2熱交換部34Cは、ボート断熱部34Aと間隙を有するように配置され、また、排気される成膜ガスの流路を反応質内における成膜ガスの流路より狭くしている。これにより、成膜ガスは、狭い流路を介して排気されるので、より熱交換の効率が良くなる。
【0033】
又、図3に示す様に、第3のガス供給口360は反応管42と断熱材54との間に配置され、マニホールド36を貫通する様に取付けられている。更に、第2のガス排気口390が、反応管42と断熱材54との間であり、第3のガス供給口360に対して対向する様に配置され、第2のガス排気口390はガス排気管230に接続されている。第3のガス供給口360は、マニホールド36を貫通する第3のガスライン240に形成され、第3のガスラインは、ガス供給ユニット200に接続される。また、図4に示されるように、第3のガスラインは、バルブ212f、MFC211fを介してガス供給源210fと接続されている。該ガス供給源210fからは不活性ガスとして、例えば希ガスのArガスが供給され、SiCエピタキシャル膜成長に寄与するガスが反応管42と断熱材54との間に進入するのを防ぎ、反応管42の内壁又は断熱材54の外壁に不要な生成物が付着するのを防止することができる。
【0034】
又、反応管42と断熱材54との間に供給された不活性ガスは、第2のガス排気口390よりガス排気管230の下流側にあるAPCバルブ214を介して真空排気装置220から排気される。
【0035】
<各ガス供給系に供給されるガスの詳細>
次に、図4を用いて、第1のガス供給系及び第2のガス供給系について説明する。図4に示されるように、該第1のガスライン222は、SiHガス、HClガス、不活性ガスに対して流量制御器(流量制御手段)としてのマスフローコントローラ(以下MFCとする)211a,211b,211c、及び、バルブ212a,212b,212cを介して、例えばSiHガス供給源210a、HClガス供給源210b、不活性ガス供給源210cに接続されている。
【0036】
上記構成により、SiHガス、HClガス、不活性ガスのそれぞれの供給流量、濃度、分圧、供給タイミングを反応室44内に於いて制御することができる。バルブ212a,212b,212c、MFC211a,211b,211cは、ガス流量制御部78に電気的に接続されており、それぞれ供給するガスの流量が所定流量となる様に、所定のタイミングにて制御される様になっている(図5参照)。尚、SiHガス、HClガス、不活性ガスのそれぞれのガス供給源210a,210b、210c、バルブ212a,212b、212c、MFC211a,211b,211c、第1のガスライン222、第1のガス供給ノズル60及び該第1のガス供給ノズル60に少なくとも1つ設けられる第1のガス供給口68により、ガス供給系として第1のガス供給系が構成される。
【0037】
また、第2のガスライン260は、C(炭素)原子含有ガスとして、例えばCガスに対して流量制御手段としてのMFC211d及びバルブ212dを介してCガス供給源210dに接続され、還元ガスとして、例えばHガスに対して流量制御手段としてのMFC211e及びバルブ212eを介してHガス供給源210eに接続されている。
【0038】
上記構成により、Cガス、Hガスの供給流量、濃度、分圧を反応室44内に於いて制御することができる。バルブ212d,212e、MFC211d,211eは、ガス流量制御部78に電気的に接続されており、供給するガス流量が所定の流量となる様、所定のタイミングにて制御される様になっている(図5参照)。尚、Cガス、Hガスのガス供給源210d,210e、バルブ212d,212e、MFC211d,211e、第2のガスライン260、第2のガス供給ノズル70、第2のガス供給口72により、ガス供給系として第2のガス供給系が構成される。
【0039】
このように、Si原子含有ガスとC原子含有ガスを異なるガス供給ノズルから供給することにより、ガス供給ノズル内では、SiC膜が堆積しないようにすることができる。なお、Si原子含有ガス及びC原子含有ガスの濃度や流速を調整したい場合は、夫々適切なキャリアガスを供給すればよい。
【0040】
更に、Si原子含有ガスを、より効率的に使用するため水素ガスのような還元ガスを用いる場合がある。この場合、還元ガスは、C原子含有ガスを供給する第2のガス供給ノズル70を介して供給することが望ましい。このように還元ガスをC原子含有ガスと共に供給し、反応室44内でSi原子含有ガスと混合することにより、還元ガスが少ない状態となるためSi原子含有ガスの分解を成膜時と比較して抑制することができ、第1のガス供給ノズル内におけるSi膜の堆積を抑制することが可能となる。この場合、還元ガスをC原子含有ガスのキャリアガスとして用いることが可能となる。なお、Si原子含有ガスのキャリアとしては、アルゴン(Ar)のような不活性ガス(特に希ガス)を用いることにより、Si膜の堆積を抑制することが可能となる。
【0041】
更に、第1のガス供給ノズル60には、HClのような塩素原子含有ガスを供給することが望ましい。このようにすると、Si原子含有ガスが熱により分解し、第1のガス供給ノズル内に堆積可能な状態となったとしても、塩素によりエッチングモードとすることが可能となり、第1のガス供給ノズル内へのSi膜の堆積をより抑制することが可能になる。また、塩素原子含有ガスには、堆積した膜をエッチングする効果もあり、第1のガス供給口68の閉塞を抑制することが可能となる。
【0042】
なお、SiCエピタキシャル膜を形成する際に流すCl(塩素)原子含有ガスとしてHClガスを例示したが、塩素ガスを用いてもよい。
【0043】
又、上述ではSiCエピタキシャル膜を形成する際に、Si(シリコン)原子含有ガスとCl(塩素)原子含有ガスとを供給したが、Si原子とCl原子を含むガス、例えばテトラクロロシラン(以下SiClとする)ガス、トリクロロシラン(以下SiHCl)ガス、ジクロロシラン(以下SiHCl)ガスを供給してもよい。また、言うまでもないが、これらのSi原子及びCl原子を含むガスは、Si原子含有ガスでも有り、又は、Si原子含有ガス及びCl原子含有ガスの混合ガスともいえる。特に、SiClは、熱分解される温度が比較的高いため、ノズル内のSi消費抑制の観点から望ましい。
【0044】
又、上述ではC(炭素)原子含有ガスとしてCガスを例示したが、エチレン(以下C2H4とする)ガス、アセチレン(以下Cとする)ガスを用いてもよい。
【0045】
また、還元ガスとしてHガスを例示したが、これに限らず他のH(水素)原子含有ガスを用いても良い。更には、キャリアガスとしては、Ar(アルゴン)ガス、He(ヘリウム)ガス、Ne(ネオン)ガス、Kr(クリプトン)ガス、Xe(キセノン)ガス等の希ガスのうち少なくとも1つを用いてもよいし、上記したガスを組合わせた混合ガスを用いてもよい。
【0046】
なお、以下の説明では、第1のガス供給口68からは、シリコン原子含有ガスとしてのSiClガス及び塩素原子含有ガスとしてのHClガスを供給し、第2のガス供給口72からは、炭素原子含有ガスとしてのCガス、及び、還元ガスとしてのHガスを供給することとして説明する。
【0047】
<処理炉の周辺構成>
次に、図6に於いて、処理炉40及びその周辺の構成について説明する。該処理炉40の下方には、該処理炉40の下端開口を気密に閉塞する為の炉口蓋体としてシールキャップ102が設けられている。該シールキャップ102は、例えばステンレス等の金属製であり、円盤状に形成されている。該シールキャップ102の上面には、処理炉40の下端と当接するシール材としてのOリング(図示せず)が設けられている。シールキャップ102には回転機構104が設けられ、該回転機構104の回転軸106はシールキャップ102を貫通してボート30に接続されており、該ボート30を回転させることでウェーハ14を回転させる様に構成されている。
【0048】
又、シールキャップ102は処理炉40の外側に設けられた昇降機構として、後述する昇降モータ122によって垂直方向に昇降される様に構成されており、これにより前記ボート30を処理炉40に対して搬入搬出することが可能となっている。回転機構104及び昇降モータ122には、駆動制御部108が電気的に接続されており、所定の動作をする様所定のタイミングにて制御する様構成されている(図5参照)。
【0049】
予備室としてのロードロック室110の外面に下基板112が設けられている。該下基板112には、昇降台114と摺動自在に嵌合するガイドシャフト116及び昇降台114と螺合するボール螺子118が設けられている。又、下基板112に立設した前記ガイドシャフト116及びボール螺子118の上端には上基板120が設けられている。ボール螺子118は、上基板120に設けられた昇降モータ122によって回転され、ボール螺子118が回転されることで昇降台114が昇降する様になっている。
【0050】
該昇降台114には中空の昇降シャフト124が垂設され、昇降台114と昇降シャフト124の連結部は気密となっており、該昇降シャフト124は昇降台114と共に昇降する様になっている。昇降シャフト124はロードロック室110の天板126を遊貫し、昇降シャフト124が貫通する天板126の貫通孔は、昇降シャフト124が天板126と接触することがない様充分な隙間が形成されている。
【0051】
又、ロードロック室110と昇降台114との間には、昇降シャフト124の周囲を覆う様に伸縮性を有する中空伸縮体としてベローズ128が設けられ、該ベローズ128によりロードロック室110が気密に保たれる様になっている。尚、ベローズ128は昇降台114の昇降量に対応できる充分な伸縮量を有し、ベローズ128の内径は昇降シャフト124の外径に比べて充分に大きく、伸縮の際に前記ベローズ128と昇降シャフト124が接触することがない様に構成されている。
【0052】
該昇降シャフト124の下端には、昇降基板130が水平に固着され、該昇降基板130の下面にはOリング等のシール部材を介して駆動部カバー132が気密に取付けられる。昇降基板130と駆動部カバー132とで駆動部収納ケース134が構成され、この構成により該駆動部収納ケース134内部はロードロック室110内の雰囲気と隔離される。
【0053】
又、駆動部収納ケース134の内部には前記ボート30の回転機構104が設けられ、該回転機構104の周辺は冷却機構135によって冷却される様になっている。
【0054】
電力ケーブル138は、昇降シャフト124の上端から中空部を通り、回転機構104に導かれて接続されている。又、冷却機構135及びシールキャップ102には冷却水流路140が形成されている。更に、冷却水配管142が昇降シャフト124の上端から中空部を通り冷却水流路140に導かれて接続されている。
【0055】
昇降モータ122が駆動され、ボール螺子118が回転することで、昇降台114及び昇降シャフト124を介して駆動部収納ケース134を昇降させる。
【0056】
該駆動部収納ケース134が上昇することにより、昇降基板130に気密に設けられているシールキャップ102が処理炉40の開口部である炉口144を閉塞し、ウェーハ処理が可能な状態となる。又、駆動部収納ケース134が下降することにより、シールキャップ102と共にボート30が降下され、ウェーハ14を外部に搬出できる状態となる。
【0057】
<制御部>
次に、図5に於いて、SiCエピタキシャル膜を成膜する半導体製造装置10を構成する各部の制御構成について説明する。
【0058】
温度制御部52、ガス流量制御部78、圧力制御部98、駆動制御部108は、操作部及び入出力部を構成し、半導体製造装置10全体を制御する主制御部150に電気的に接続されている。又、温度制御部52、ガス流量制御部78、圧力制御部98、駆動制御部108は、コントローラ152として構成されている。
【0059】
<SiC膜の形成方法の概略>
次に、上述した半導体製造装置10を用い、半導体デバイスの製造工程の一工程として、SiC等で構成されるウェーハ14等の基板上に、例えばSiC膜を形成する基板の製造方法について説明する。尚、以下の説明に於いて半導体製造装置10を構成する各部の動作は、コントローラ152により制御される。
【0060】
先ず、ポッドステージ18に複数枚のウェーハ14を収納したポッド16がセットされると、ポッド搬送装置20によりポッド16をポッドステージ18からポッド収納棚22へ搬送し、ストックする。次に、ポッド搬送装置20により、ポッド収納棚22にストックされたポッド16をポッドオープナ24に搬送してセットし、該ポッドオープナ24によりポッド16の蓋を開き、基板枚数検知器26によりポッド16に収納されているウェーハ14の枚数を検知する。
【0061】
次に、基板移載機28により、ポッドオープナ24の位置にあるポッド16からウェーハ14を取出し、ボート30に移載する。
【0062】
複数枚のウェーハ14がボート30に装填されると、ウェーハ14を保持したボート30は、昇降モータ122による昇降台114及び昇降シャフト124の昇降動作により反応室44内に搬入(ボートローディング)される。この状態では、シールキャップ102はOリング(図示せず)を介してマニホールド36の下端をシールした状態となる。
【0063】
ボート30搬入後、反応室44内が所定の圧力(真空度)となる様に、真空排気装置220によって真空排気される。この時、反応室44内の圧力は、圧力センサ(図示せず)によって測定され、測定された圧力に基づき第1のガス排気口90及び第2のガス排気口390に連通するAPCバルブ214がフィードバック制御される。又、ウェーハ14及び反応室44内が所定の温度となる様前記被誘導体48が加熱される。この時、反応室44内が所定の温度分布となる様、温度センサ(図示せず)が検出した温度情報に基づき誘導コイル50への通電具合がフィードバック制御される。続いて、回転機構104により、ボート30が回転されることで、ウェーハ14が周方向に回転される。
【0064】
また、基板表面に残留するダメージを取り除くため、基板表面のエッチング処理を行う。その後、SiCエピタキシャル成長反応に寄与するSi(シリコン)原子含有ガス及びCl(塩素)原子含有ガスは、それぞれガス供給源210a,210bから供給され、前記第1のガス供給口68より前記反応室44内に噴出される。又、C(炭素)原子含有ガス及び還元ガスであるHガスが、所定の流量となる様に対応する前記MFC211d,211eの開度が調整された後、バルブ212d,212eが開かれ、それぞれのガスが第2のガスライン260に流通し、第2のガス供給ノズル70に流通して第2のガス供給口72より反応室44内に導入される。
【0065】
第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72より供給されたガスは、反応室44内の被誘導体48の内側を通り、第1のガス排気口90からガス排気管230を通って排気される。第1のガス供給口68及び第2のガス供給口72より供給されたガスは、反応室44内を通過する際に、SiC等で構成されるウェーハ14と接触し、ウェーハ14表面上にSiCエピタキシャル膜成長がなされる。なお、これらについては後に詳述する。
【0066】
又、ガス供給源210fより、不活性ガスとしての希ガスであるArガスが所定の流量となる様に対応するMFC211fの開度が調整された後、バルブ212fが開かれ、第3のガスライン240に流通し、第3のガス供給口360から反応室44内に供給される。第3のガス供給口360から供給された不活性ガスとしての希ガスであるArガスは、反応室44内の断熱材54と反応管42との間を通過し、第2のガス排気口390から排気される。
【0067】
次に、予め設定された時間が経過すると、上述したガスの供給が停止され、図示しない不活性ガス供給源より不活性ガスが供給され、反応室44内の被加熱体48の内側の空間が不活性ガスで置換されると共に、反応室44内の圧力が常圧に復帰される。
【0068】
その後、昇降モータ122によりシールキャップ102が下降され、マニホールド36の下端が開口されると共に、処理済みのウェーハ14がボート30に保持された状態でマニホールド36の下端から反応管42の外部に搬出(ボートアンローディング)され、ボート30に保持されたウェーハ14が冷える迄、ボート30を所定位置にて待機させる。待機させた該ボート30のウェーハ14が所定温度迄冷却されると、基板移載機28により、ボート30からウェーハ14を取出し、ポッドオープナ24にセットされている空のポッド16に搬送して収納する。その後、ポッド搬送装置20によりウェーハ14が収納されたポッド16をポッド収納棚22、又は前記ポッドステージ18に搬送する。この様にして、半導体製造装置10の一連の作動が完了する。
【0069】
<第1の実施形態>
次に本発明の第1の実施形態として、エッチング処理工程、及び、成膜工程について、図7を用いて詳細に説明する。図7(a)は、反応室44内の温度の変化を示し、図7(b)は、第1のガス供給口68から供給されるシリコン原子含有ガスとしてのSiCl、及び、塩化水素ガス(HCl)の供給タイミングを示し、図7(c)は、第2のガス供給口72から供給される炭素原子含有ガスとしてのC、及び、還元ガスとしてのHガスの供給タイミングを示している。なお、(b)(c)の縦軸は、絶対量を示しているのではなく、概念的に供給量の大きさを示している。
【0070】
まず、ボート30が反応室44内に搬入された後、誘導コイル50に交流電流を流し、被誘導体48が発熱することにより、反応室44内を昇温する。その後、反応室44内の温度が800℃程度になった時点で、還元ガスとして用いる水素ガスをエッチングガスとして第2のガス供給口72から開始し、ウェーハ14の表面に残留しているダメージを取り除くためのエッチングを開始する(第1のエッチング工程)。エッチングガスとしての水素ガスを供給し基板表面をエッチングしている間も、昇温は続け、1400℃程度になった時点でシリコン原子含有ガスとしてのSiClの供給を開始する(第2のエッチング工程)。これにより、水素ガスによるエッチングによるSiの減少分を補填し、基板表面の荒れを抑制することができる。
【0071】
その後、反応室44内がエピタキシャル成長を行う温度(ここでは、1600℃)に達した後、第1のガス供給口68から塩素原子含有ガスとしての塩化水素ガスの供給を開始すると共に、シリコン含有ガスとしてのSiClの供給量を大きくする。また、第2のガス供給口72から炭素原子含有ガスとしてのCガスの供給を開始すると共に、還元ガスとしての水素ガスとの供給量を大きくし、SiC膜のエピタキシャル成長を開始する(成膜工程)。なお、成膜工程は、必要な膜厚となるまで続けられる。
【0072】
なお、本実施形態におけるエッチング工程、及び、SiC膜のエピタキシャル成長工程の夫々のガスの供給量の例は以下の通りである。
★第1及び第2のエッチング工程
第1のガス供給口68…SiCl:10〜20sccm
第2のガス供給口72…H:1〜15slm
★成膜工程
第1のガス供給口68…SiCl:50〜250sccm、
HCl:50〜250sccm
第2のガス供給口72…C:5〜125sccm
:200〜300slm
【0073】
このように、本実施形態においては、反応室44内の温度を上げながらエッチングガスを供給することにより、昇温工程とエッチング工程とを平行して行うことができ、処理時間の短縮を可能としている。なお、エッチングガスを成膜工程で還元ガスとして用いる水素ガスを用いることにより、ガス種を増やすことなく本発明を実現できる。
【0074】
また、シリコン原子含有ガスは、水素ガスの供給と同時に行うのではなく、反応室44内の温度が所定の温度(ここでは、1400℃)を超えた後、供給するようにしている。即ち、本実施形態では、昇温工程とエッチング工程とを平行して行っているため、時間を短縮することを可能としている。よって、基板表面のダメージを確実に取り除くためには水素ガスをある程度早めに供給することが望ましい。その一方で、エッチングによる基板表面のSi抜けを補填するためのシリコン原子含有ガスを反応室44内が十分昇温される前に供給するとシリコンが凝集してしまい、パーティクルとなってしまう恐れがある。そこで、本実施形態では、水素ガスによるエッチングの効果が大きくなる温度がシリコンの凝集が発生する温度より低いことに着目し、昇温工程中にまずエッチングガスとしての水素ガスを供給し、反応室44内が所定の温度となった後にシリコン原子含有ガスとしてのSiClを供給している。
【0075】
また、本実施形態では、エッチング工程中に流す水素ガスの量をエピタキシャル成長工程と比較して、少なくしている。これにより、SiC膜を形成するための成膜ガスを供給していないエッチング工程でのエッチング量の増大を防ぎ、表面粗さを小さくすることが可能となる。更には、シリコン原子含有ガスの量をエピタキシャル成長工程と比較して少なくしている。これにより、反応せずに残留したシリコン原子含有ガスの凝集を少なくすることが可能となる。
【0076】
<第2の実施形態>
次に本発明の第2の実施形態を図8を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様な部分は、説明を省略し、主に第1の実施形態と異なる点について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と異なり、成膜工程で用いる塩化水素ガスをエッチングガスとしても用い、エピタキシャル成長工程の前に供給している。
【0077】
より具体的には、昇温工程において、反応室44内が800℃程度となった段階で、エッチングガスとしての水素ガスを供給を開始する(第1エッチング工程)。その後、反応室44内が所定の温度(ここでは、1400℃程度)となった際に、シリコン原子含有ガスとしてのSiClの供給、及び、エッチングガスとしてのHClの供給を開始する(第2エッチング工程)。このようにHClガスをエッチングガスとして昇温工程中(エッチング工程中)に供給することにより、エッチング量を大きくすることができ、基板表面に残留したダメージをより確実に取り除くことができる。また、HCl添加によりSiC基板の表面に基板から抜き出たSiを凝集前に取り除くことができる。
【0078】
なお、本実施形態における第1及び第2エッチング工程、及び、SiC膜の成膜工程の夫々のガスの供給量の例は以下の通りである。
★第1及び第2エッチング工程
第1のガス供給口68…SiCl:10〜20sccm
HCl:50〜250sccm
第2のガス供給口72…H:1〜15slm
★成膜工程
第1のガス供給口68…SiCl:50〜250sccm、
HCl:50〜250sccm
第2のガス供給口72…C:5〜125sccm
:200〜300slm
【0079】
また、本実施形態において、塩化水素ガスは、シリコン原子含有ガスの供給と同時に行っているが、これに限らず水素ガスの供給と同時に供給を開始しても良い。しかしながら、塩化水素ガスの供給を開始するとそのエッチング量が大きくなるため、基板表面の荒れも大きくなると考えられる。従って、シリコン原子含有ガスの供給と平行してHClガスの供給を行うほうが、エッチングに伴い発生する基板表面のSi原子の抜けを補填しながらエッチングができるため、表面の荒れを抑制することができる。
【0080】
<第3の実施形態>
次に本発明の第3の実施形態を図9を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様な部分は、説明を省略し、主に第1の実施形態と異なる点について説明する。第3の実施形態は、第1の実施形態と異なり、高温(1600℃程度)の成膜工程の前に、エピタキシャル成長工程より低温(1400℃程度)の状態で、シリコン原子含有ガスとしてのSiCl、炭素原子含有ガスとしてのC、還元ガスとしての水素ガス、及び、塩化水素ガスを供給するバッファ工程を有する。
【0081】
より具体的には、昇温工程において、反応室44内が800℃程度となった段階で、エッチングガスとしての水素ガスを供給を開始する(第1エッチング工程)。その後、反応室44内が所定の温度(ここでは、1400℃程度)となった際に、シリコン原子含有ガスとしてのSiClの供給を開始する(第2エッチング工程)。また、1400℃程度となった段階で、反応室44内を昇温することを停止する。シリコン原子含有ガスの供給を所定期間行った後、SiCl、C、水素、塩化水素等のSiC膜の成膜に必要な成膜ガスの供給を開始する(バッファ工程)。そして、所定期間経過後、反応室44内を1600℃まで再度昇温し、エピタキシャル成長膜を形成する(成膜工程)。ここで、バッファ工程における基板表面をエッチングする水素以外のSiCl、C、塩化水素については、成膜工程における流量より少なくしている。
【0082】
即ち、本実施形態では、エピタキシャル成長膜を形成する成膜工程前に、バッファ工程を追加し、比較的温度の低い状態でSiC膜を形成するための成膜ガスを供給している。この理由は、次の通りである。まず、成膜工程において、シリコン原子含有ガスを効率よく使用するため還元ガスとしての水素ガスを用いている。水素ガスは、前述のように基板表面をエッチングする作用も有する。従って、成膜工程においても基板表面のエッチングは行われていることになる。しかし、SiC膜を形成するシリコン原子含有ガス及び炭素原子含有ガスもあわせて供給されており、SiC膜の形成が基板表面のエッチングスピードより大きいためエピタキシャル成長膜が形成される。
【0083】
一方、バッファ工程では、SiC膜を形成するシリコン原子含有ガス及び炭素原子含有ガスの供給量が成膜工程と比較して少ないためSiC膜の形成速度も小さく、成膜工程と比較して基板表面のエッチングのほうが優位となる。従って、バッファ工程では、基板表面をSiCで補填しながら(若しくは、極めて薄いSiC膜を形成しながら)基板表面をエッチングすることになる。よって、基板表面の荒れを小さくすることができる。その後、バッファ工程により表面の荒れを小さくした基板にエピタキシャル成長膜を形成することができるため、エピタキシャル基板の歩留まりを向上させることができる。
【0084】
また、本実施形態では、成膜工程と比較して低い温度にてバッファ工程を行う。これにより、水素ガスによるエッチング効果を抑制することができ、エッチングによる表面の荒れを小さくすることができる。
【0085】
なお、本実施形態におけるエッチング工程、バッファ工程、成膜工程の夫々のガスの供給量の例は以下の通りである。
★第1及び第2エッチング工程
第1のガス供給口68…SiCl:10〜20sccm
第2のガス供給口72…H:1〜15slm
★バッファ工程
第1のガス供給口68…SiCl:10〜20sccm、
:10〜20sccm
第2のガス供給口72…C:2〜10sccm
:200〜300slm
★成膜工程
第1のガス供給口68…SiCl:50〜250sccm、
HCl:50〜250sccm
第2のガス供給口72…C:5〜125sccm
:200〜300slm
【0086】
<第4の実施形態>
次に本発明の第4の実施形態を図10を用いて説明する。なお、第3の実施形態と同様な部分は、説明を省略し、主に第3の実施形態と異なる点について説明する。第4の実施形態は、第3の実施形態と異なり、バッファ工程において、水素ガスの流量を成膜工程より少なくしている。このように温度を低くすることによるエッチング効果の抑制とともに流量を少なくすることでエッチング効果を抑制することができ、エッチングによる基板表面の荒れを小さくすることが可能となる。
【0087】
なお、本実施形態におけるエッチング工程、バッファ工程、成膜工程の夫々のガスの供給量の例は以下の通りである。
★第1及び第2エッチング工程
第1のガス供給口68…SiCl:10〜20sccm
第2のガス供給口72…H:1〜15slm
★バッファ工程
第1のガス供給口68…SiCl:10〜20sccm、
HCl:10〜20sccm
第2のガス供給口72…C:2〜10sccm
:50〜150slm
★成膜工程
第1のガス供給口68…SiCl:50〜250sccm、
HCl:50〜250sccm
第2のガス供給口72…C:5〜125sccm
:200〜300slm
【0088】
<第5の実施形態>
次に本発明の第5の実施形態を図11を用いて説明する。なお、第4の実施形態と同様な部分は、説明を省略し、主に第4の実施形態と異なる点について説明する。第5の実施形態は、第4の実施形態と異なり、第2エッチング工程において、温度を一定にするのではなく、徐々に昇温している。この際、昇温レートは、第1エッチング工程より遅くすることが望ましい。また、第2エッチング工程における水素ガスおよびシリコン原子含有ガスの流量も徐々に大きくするようにしている。また、バッファ工程におけるシリコン原子含有ガス、炭素原子含有ガス、水素ガス、及び、塩化水素ガスは、徐々に大きくなるようにしている。このように徐々に温度及びガスの流量を増加させることにより、徐々に基板表面のエッチングが優位な状態から基板表面へのSiC膜の堆積が優位な状態に移行することができる。これにより、急激な条件の変化を抑制でき、均質なSiC膜が形成できる。
【0089】
なお、本実施形態におけるエッチング工程、成長工程の夫々のガスの供給量の例は以下の通りである。
★第1エッチング工程
第2のガス供給口72…H:1〜15slm
★第2エピタキシャル成長工程
第1のガス供給口68…SiCl:50〜250sccm、
HCl:50〜250sccm
第2のガス供給口72…C:5〜125sccm
:200〜300slm
【0090】
以上、本発明の実施形態を図面を用いて説明してきたが、本発明の趣旨を逸脱しない限り様々な変更が可能である。例えば、本実施形態では、第1のガス供給口68と第2のガス供給口72と2種類のガス供給口に分けているが、これに限らず1種類のガス供給口から成膜ガスを供給しても良い。また、エッチングガスとして、成膜工程で使用する水素ガスや塩化水素ガスを用いて説明したが、これに限らず異なるエッチング効果を有する異なるガスを用いても良い。更に、温度や流量、昇温レートは、一例であってこれに限られるものではない。
【0091】
本発明を実施形態に沿って説明してきたが、最後に本発明の主たる態様を付記する。
(付記1)
複数の基板を高さ方向に並べて保持するボートを反応室内に搬入するボートローディング工程と、
前記反応室を昇温すると共に、前記反応室が第1温度となった後に前記複数の基板に第1エッチングガスを供給する第1エッチング工程と、
前記反応室が前記第1温度より高い第2温度となった後に、前記第1エッチングガスと共にシリコン原子含有ガスを前記複数の基板に向けて供給する第2エッチング工程と、
前記反応室が前記第2温度より高い第3温度となった後に、前記シリコン原子含有ガス、及び、炭素原子含有ガスを前記複数の基板に向けて供給し、前記複数の基板に炭化珪素膜を形成する第1成膜工程と、
前記成膜工程の後に、前記炭化珪素膜が形成された前記複数の基板を保持するボートを前記反応室から搬出するボートアンローディング工程と、を具備する基板の製造方法、又は、半導体デバイスの製造方法。
(付記2)付記1において、
前記第2エッチング工程において、前記第1エッチングガス、及び、前記シリコン原子含有ガスと共に、第2エッチングガスを前記複数の基板に向けて供給する基板の製造方法、又は、半導体デバイスの製造方法。
(付記3)付記2において、
前記第1エッチング工程において、前記第2エッチングガスは供給されない基板の製造方法、又は、半導体デバイスの製造方法。
(付記4)付記1乃至付記3のいずれか一つにおいて、
前記第2エッチング工程は、前記反応室内を昇温しながら行われる基板の製造方法、又は、半導体デバイスの製造方法。
(付記5)付記1乃至付記3のいずれか一つにおいて、
前記第2エッチング工程と前記第1成膜工程の間に、前記反応室を前記第2温度に維持した状態で、前記シリコン原子含有ガス、及び、前記炭素原子含有ガスを前記複数の基板に向けて供給する第2成膜工程を更に具備する基板の製造方法、又は、半導体デバイスの製造方法。
(付記6)付記5において、
前記第1成膜工程における前記シリコン原子含有ガス、及び、前記炭素原子含有ガスの流量は、前記第2成膜工程における前記シリコン原子含有ガス、及び、前記炭素原子含有ガスの流量より少なくなるように制御される基板の製造方法、又は、半導体デバイスの製造方法。
(付記7)付記6において、
前記第1エッチングガスは、水素ガスであり、
前記第2成膜工程において、前記水素ガスを更に供給し、
前記第1成膜工程における前記水素ガスの流量と前記第2成膜工程における前記水素ガスの流量が同じになるように制御される基板の製造方法、又は、半導体デバイスの製造方法。
(付記8)付記6において、
前記第1エッチングガスは、水素ガスであり、
前記第2成膜工程において、前記水素ガスを更に供給し、
前記第1成膜工程における前記水素ガスの流量は、前記第2成膜工程における前記水素ガスの流量より少なくなるよう制御される基板の製造方法、又は、半導体デバイスの製造方法。
(付記9)付記1乃至付記3のいずれか一つにおいて、
前記第2エッチング工程と前記第1成膜工程の間に、前記シリコン原子含有ガス、及び、前記炭素原子含有ガスを前記複数の基板に向けて供給する第2成膜工程を更に具備し、
前記第2エッチング工程と前記第1成膜工程において、前記第2温度から前記第3温度まで徐々に昇温する基板の製造方法、又は、半導体デバイスの製造方法。
(付記10)付記9において、
前記第2温度から前記第3温度への昇温レートは、前記第1温度から前記第2温度まで昇温レートより小さい基板の製造方法、又は、半導体デバイスの製造方法。
(付記11)
複数の基板の処理を行う反応室と、
前記複数の基板を保持するボートと、
前記複数の基板に成膜ガスを供給するガス供給口を有するガス供給ノズルと、
前記反応室を昇温しつつ第1エッチングガスを前記反応室に供給し、その後、前記反応室が前記第1温度になった際に前記第1エッチングガスに加えてシリコン原子含有ガスの前記反応室への供給を開始し、その後、前記反応室が前記第1温度になった際に前記シリコン原子含有ガスと炭素原子含有ガスの前記反応室への供給を開始するように制御するコントローラを具備する基板処理装置。
【符号の説明】
【0092】
10:半導体製造装置、12:筐体、14:ウェーハ、15:ウェーハホルダ、15a:上部ウェーハホルダ、15b:下部ウェーハホルダ、16:ポッド、18:ポッドステージ、20:ポッド搬送装置、22:ポッド収納棚、24:ポッドオープナ、26:基板枚数検知器、28:基板移載機、30:ボート、32:アーム、34A:ボート断熱部、34B:第1熱交換部、34C:第2熱交換部、36:マニホールド、40:処理炉、42:反応管、44:反応室、48:被誘導体、50:誘導コイル、52:温度制御部、54:断熱材、55:外側断熱壁、58:磁気シール、60:第1のガス供給ノズル、68:第1のガス供給口、70:第2のガス供給ノズル、72:第2のガス供給口72、78:ガス流量制御部、90:第1のガス排気口、98:圧力制御部、102:シールキャップ、104:回転機構、106:回転軸、108:駆動制御部、110:ロードロック室、112:下基板、114:昇降台、116:ガイドシャフト、118:ボール螺子、120:上基板、122:昇降モータ、124:昇降シャフト、128:ベローズ、130:昇降基板、132:駆動部カバー、134:駆動部収納ケース、135:冷却機構、138:電力ケーブル、140:冷却水流路、142:冷却水配管、150:主制御部、152:コントローラ、200:ガス供給ユニット、210:ガス供給源、211:MFC、212:バルブ、214:APCバルブ、222:第1のガスライン、230:ガス排気管、260:第2のガスライン、300:構造物、360:第3のガス供給口、390:第2のガス排気口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を高さ方向に並べて保持するボートを反応室内に搬入するボートローディング工程と、
前記反応室を昇温すると共に、前記反応室が第1温度となった後に前記複数の基板に第1エッチングガスを供給する第1エッチング工程と、
前記反応室が前記第1温度より高い第2温度となった後に、前記第1エッチングガスと共にシリコン原子含有ガスを前記複数の基板に向けて供給する第2エッチング工程と、
前記反応室が前記第2温度より高い第3温度となった後に、前記シリコン原子含有ガス、及び、炭素原子含有ガスを前記複数の基板に向けて供給し、前記複数の基板に炭化珪素膜を形成する第1成膜工程と、
前記成膜工程の後に、前記炭化珪素膜が形成された前記複数の基板を保持するボートを前記反応室から搬出するボートアンローディング工程と、を具備する基板の製造方法、又は、半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2エッチング工程において、前記第1エッチングガス、及び、前記シリコン原子含有ガスと共に、第2エッチングガスを前記複数の基板に向けて供給する基板の製造方法、又は、半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記第2エッチング工程と前記第1成膜工程の間に、前記反応室を前記第2温度に維持した状態で、前記シリコン原子含有ガス、及び、前記炭素原子含有ガスを前記複数の基板に向けて供給する第2成膜工程を更に具備する基板の製造方法、又は、半導体デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記第2エッチング工程と前記第1成膜工程の間に、前記シリコン原子含有ガス、及び、前記炭素原子含有ガスを前記複数の基板に向けて供給する第2成膜工程を更に具備し、
前記第2エッチング工程と前記第1成膜工程において、前記第2温度から前記第3温度まで徐々に昇温する基板の製造方法、又は、半導体デバイスの製造方法。
【請求項5】
複数の基板の処理を行う反応室と、
前記複数の基板を保持するボートと、
前記複数の基板に成膜ガスを供給するガス供給口を有するガス供給ノズルと、
前記反応室を昇温しつつ第1エッチングガスを前記反応室に供給し、その後、前記反応室が前記第1温度になった際に前記第1エッチングガスに加えてシリコン原子含有ガスの前記反応室への供給を開始し、その後、前記反応室が前記第1温度になった際に前記シリコン原子含有ガスと炭素原子含有ガスの前記反応室への供給を開始するように制御するコントローラを具備する基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−195355(P2012−195355A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56594(P2011−56594)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】