説明

基板処理装置及び基板処理方法

【課題】膜厚を考慮して部分液交換を行うことにより、処理レートを一定の範囲に保持することができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】制御部25は、カウンタ37で計数された基板Wの枚数のうち、厚膜のものに相当する基板Wの枚数が通常ライフカウントに達したことに基づき、部分液交換を実施しながら基板Wを処理させる。つまり、燐酸溶液の劣化度合いが大きな厚膜のものに相当する基板Wの処理枚数を基準にして部分液交換を実施するので、燐酸溶液のエッチングレートを一定の範囲に保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや液晶表示装置用のガラス基板(以下、単に基板と称する)にエッチング、洗浄等の所定の処理を施す基板処理装置及び基板処理方法に係り、特に、液交換を行いながら処理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、例えば燐酸(HPO)を処理液として貯留し、基板を浸漬させるための処理槽と、処理槽に処理液を供給する処理液供給部と、処理槽から処理液を排出する処理液排出部とを備えたものが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、処理対象の基板に酸化膜が被着され、その上にさらに窒化膜が被着されている場合には、燐酸によって窒化膜をエッチングする処理が行われる。この場合、エッチングの目的である窒化膜だけでなく、同時に酸化膜もエッチングされる。エッチングされた被膜は処理液中に溶出するので、基板を処理するにしたがって処理液中における被膜材料の濃度が高まる。そのため、同じ処理液による処理レートは次第に低下することになる。そこで、一定数のロット(または一定枚数の基板)を処理した時点で一部の処理液を処理液排出部から排出するとともに、排出した処理液に相当する量の処理液を供給する「部分液交換」を行っている。この部分液交換により、低下した処理レートを目標とする一定の範囲に保持するようにしている。このときのロットの所定数(または基板の所定枚数)としては、予め設定されている「ライフカウント」というパラメータが利用され、ロット数(または基板を処理した枚数)を計数して、その計数値がライフカウントに達した時点で部分液交換を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2001−23952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、基板に被着された窒化膜の膜厚には、例えば、100nm程度の厚膜と、10nm程度の薄膜とがあるにも関わらず、従来の装置では基板に被着されている膜厚に関係なく共通のライフカウントというパラメータで管理を行っている。したがって、部分液交換を行う時点での処理液の劣化度合いが異なるので、部分液交換を行っても処理レートを一定の範囲に保持することができないことがあるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、膜厚を考慮して部分液交換を行うことにより、処理液の処理レートを一定の範囲に保持することができる基板処理装置及び基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、基板を処理液で処理する基板処理装置において、基板の枚数を計数する基板計数手段と、処理液を貯留し、基板に対して所定の処理を行う処理槽と、前記処理槽に処理液を供給する処理液供給手段と、前記処理槽から処理液を排出する処理液排出手段と、前記処理槽に貯留された処理液で厚膜の基板を処理することが許容される処理枚数を規定したライフカウントを予め記憶する記憶手段と、前記基板計数手段で計数された基板の枚数のうち、厚膜のものに相当する基板の枚数が前記記憶手段により記憶されているライフカウントに達したことに基づいて、前記処理槽の処理液の一部にあたる所定量を前記処理液排出手段で排出するとともに、前記処理液供給手段から前記所定量に相当する新たな処理液を供給する部分液交換を行なわせつつ基板を処理させる制御手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、制御手段は、基板計数手段で計数された基板の枚数のうち、厚膜のものに相当する基板の枚数がライフカウントに達したことに基づき、処理液排出手段と処理液供給手段による部分液交換を実施しながら基板を処理させる。つまり、処理液の劣化度合いが大きな厚膜のものに相当する基板の処理枚数を基準にして部分液交換を実施するので、処理液の処理レートを一定の範囲に保持することができる。
【0009】
厚膜のものに相当するとは、厚膜の基板だけでもよく、薄膜の基板の枚数に、膜厚に応じた1未満の計数を乗じて、薄膜の基板の枚数を厚膜相当に換算して計数するようにしてもよい。これによって、所望の処理レートの範囲に収める精度を高くすることができる。また、1ロットの枚数が所定の枚数であるか、それ以下であるかに基づいて係数を乗じるようにしてもよい。つまり、例えば、1ロットが25枚構成であって、一部のものが12枚で1ロットとなっている場合には、0.5の係数を乗じる。これにより、ロットを構成する基板の枚数がばらついている場合であっても精度を維持できる。
【0010】
また、本発明において、厚膜または薄膜の種別を含む、基板を処理するための手順を規定したレシピを指示する指示手段を備え、前記制御手段は、前記レシピに基づいて基板が厚膜であることを判断することが好ましい(請求項2)。処理対象の基板に対しては処理内容を規定したレシピを予め指示手段から指示する。そのレシピには、厚膜または薄膜の種別が含まれているので、その種別に基づき厚膜であることを判断できる。
【0011】
また、本発明において、前記ライフカウントを設定するための設定手段をさらに備えていることが好ましい(請求項3)。ライフカウントの設定によって処理レートを処理に好適な範囲に設定することができる。
【0012】
また、本発明において、前記記憶手段は、部分液交換を行う際の所定量に応じた1未満の補充量パラメータを予め記憶し、前記制御手段は、前記基板計数手段がライフカウントを計数した際には、前記基板計数手段の初期値として、部分液交換を行うまでに計数した基板の枚数に前記補充量パラメータを乗じた値を設定することが好ましい(請求項4)。部分液交換を行うまでに処理した基板の枚数により、排出されなかった残りの処理液の劣化度合いが全く異なるので、部分液交換後の処理液の劣化度合いも異なるものとなる。したがって、全液交換では問題が生じないが、部分液交換の際に基板計数手段の初期値を「0」にすると、ライフカウントに達した時点で基板処理枚数の上限を超える事態が生じ得る。そこで、部分液交換を行う際の所定量(補充量)に応じた1未満の補充量パラメータを、処理した基板の枚数に乗じて、これを基板計数手段における計数の初期値とする。これにより、ライフカウントの初期値に残りの処理液の劣化度合いを反映させることができる。その結果、基板処理枚数の上限を超える事態を防止できる。
【0013】
なお、補充量パラメータは、例えば、所定量が50%の場合は0.5であり、所定量が30%の場合は0.7である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、基板を処理液で処理する基板処理方法において、基板の枚数を計数する過程と、基板を処理液により処理する過程と、厚膜のものに相当する基板の枚数が、処理液で基板を処理することが許容される処理枚数を規定したライフカウントに達した場合には、処理液の一部にあたる所定量を排出するとともに、前記所定量に相当する新たな処理液を供給する部分液交換を行う過程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0015】
[作用・効果]請求項5に記載の発明によれば、厚膜のものに相当する基板の枚数がライフカウントに達した場合には、部分液交換を行う。つまり、処理液の劣化度合いが大きな厚膜基板に相当するものの処理枚数を基準にして部分液交換を実施するので、処理レートを一定の範囲に保持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る基板処理装置によれば、制御手段は、基板計数手段で計数された基板の枚数のうち、厚膜のものに相当する基板の枚数がライフカウントに達したことに基づき、処理液排出手段と処理液供給手段による部分液交換を実施しながら基板を処理させる。つまり、処理液の劣化度合いが大きな厚膜基板に相当する処理枚数を基準にして部分液交換を実施するので、膜厚に関係なく部分液交換を行っていた従来例に比較して処理レートを一定の範囲に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例に係る基板処理装置を備えた基板処理システムの概略構成を示す平面図である。
【図2】実施例に係る基板処理装置を備えた基板処理システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】実施例に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】液交換のタイミングを示すタイムチャートである。
【図5】ロットの流れを示す模式図である。
【図6】動作を示すフローチャートである。
【図7】通常のライフカウントによる問題の説明に供する図である。
【図8】補充量パラメータを採用した場合の説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
図1は、実施例に係る基板処理装置を備えた基板処理システムの概略構成を示す平面図である。また、図2は、実施例に係る基板処理装置を備えた基板処理システムの概略構成を示すブロック図である。
【0019】
この基板処理システムは、例えば、基板Wに対して薬液処理及び洗浄処理及び乾燥処理を施すための装置である。基板Wは、複数枚(例えば25枚)がカセット1に対して起立姿勢で収納されている。未処理の基板Wを収納したカセット1は、投入部3に載置される。投入部3は、カセット1を載置される載置台5を二つ備えている。投入部3に隣接する位置には、払出部7が備えられている。この払出部7は、処理済の基板Wをカセット1に収納してカセット1ごと払い出す。このような払出部7は、投入部3と同様に、カセット1を載置するための二つの載置台9を備えている。
【0020】
投入部3と払出部7に沿う位置には、これらの間を移動可能に構成された第1搬送機構CTCが設けられている。第1搬送機構CTCは、投入部3に載置されたカセット1に収納されている全ての基板Wを取り出した後、第2搬送機構WTRに対して搬送する。また、第1搬送機構CTCは、第2搬送機構WTRから処理済みの基板Wを受け取った後に、基板Wをカセット1に収納する。第2搬送機構WTRは、基板処理装置の長手方向に沿って移動可能である。なお、第1搬送機構CTCは、カセット1に収納されている基板Wの枚数を計数する。換言すると、ロットを認識するとともに、それを構成している基板Wの枚数を認識する。
【0021】
なお、第1搬送機構CTCが本発明における「基板計数手段」に相当する。
【0022】
上述した第2搬送機構WTRの移動方向における最も手前側には、複数枚の基板Wを低圧のチャンバ内に収納して乾燥させるための乾燥処理部LPDが設けられている。
【0023】
第2搬送機構WTRの移動方向であって乾燥処理部LPDに隣接する位置には、第1処理部19が配設されている。この第1処理部19は、複数枚の基板Wに対して純水洗浄処理を施すための純水洗浄処理部ONB1を備えているとともに、複数枚の基板Wに対して薬液を含む処理液によって薬液処理を施すための薬液処理部CHB1を備えている。また、第1処理部19は、第2搬送機構WTRとの間で基板Wを受け渡すとともに、純水洗浄処理部ONB1と薬液処理部CHB1でのみ昇降可能な副搬送機構LFS1を備えている。
【0024】
第1処理部19に隣接した位置には、第2処理部21が設けられている。第2処理部21は、第1処理部19と同様の構成である。つまり、純水洗浄処理部ONB2と薬液処理部CHB2と副搬送機構LFS2とを備えている。
【0025】
載置台5側には、予め記憶されている、基板を処理するための手順を規定したレシピをカセット1ごとに指示するための指示部23が付設されている。オペレータは、この指示部23を操作してカセット1(ロット)ごとにレシピを対応付けたり、調整ライフカウント(詳細後述)や通常ライフカウント(詳細後述)を設定したりする。ここでいうレシピには、厚膜または薄膜の膜の種別も含まれている。また、ここでいう厚膜とは、例えば、100nm以上であり、薄膜とは、例えば、10nm以下をいう。
【0026】
なお、この指示部23が本発明における「指示手段」及び「設定手段」に相当する。
【0027】
上記のように構成された基板処理システムは、図2のブロック図に示すように制御部25によって統括的に制御される。
【0028】
本発明の「制御手段」に相当する制御部25は、CPUやタイマ等を備え、図示しないスケジューリング部などを備えている。また、制御部25には、図示しない記憶部に、レシピと、スケジュール作成プログラムと、作成されたスケジュールを実行する処理プログラムなどが予め格納されている。制御部25には、後述する基板処理装置ごとに備えられた個別機能部27が接続されている。
【0029】
個別機能部27は、第1メモリ33と、第2メモリ35と、第3メモリ36と、カウンタ37とを備えている。カウンタ37は、同じ処理液による基板Wの処理枚数を計数するため、基板Wの処理枚数やロット数を処理ごとに計数する。さらに、膜厚の種別のうち、厚膜の被膜が被着された基板Wに相当するものの枚数を計数する。なお、薄膜の基板Wについては、制御部25において、計数値に1未満の0.5や0.3などの係数を乗じて、数ロットで厚膜の基板Wに相当するものとして扱うことが好ましい。また、1ロットの基板Wの枚数が所定の構成枚数(例えば25枚)よりも少ない場合にも、同様に1未満の係数を乗じることが好ましい。なお、第1メモリ33〜第3メモリ36については後述する。
【0030】
ここで、図3を参照して、本発明における「基板処理装置」に相当する薬液処理部CHB1(CHB2)について説明する。なお、図3は、実施例に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。また、以下の説明においては、処理液として燐酸(HPO)及び純水を含む燐酸溶液を例に採って説明する。
【0031】
この基板処理装置は処理槽41を備え、処理槽41は、内槽43と、内槽43から溢れた燐酸溶液を回収する外槽45とを備えている。内槽43には、基板Wを内槽43内の処理位置と、内槽43の上方にあたる待機位置とにわたって昇降可能な保持アーム47が付設されている。この保持アーム47は、複数枚の基板Wを起立姿勢で当接支持する。なお、この保持アーム47は、上述した副搬送機構LFS1,LFS2である。
【0032】
内槽43は、燐酸溶液を供給するための一対の噴出管49を底部に備えている。また、外槽45は、回収した燐酸溶液を排出するための排出口51を底部に備えている。噴出管49と排出口51とは、循環配管53で連通接続されている。この循環配管53には、排出口51側から順に、ポンプ55と、インラインヒータ57と、フィルタ59とが配設されている。インラインヒータ57は、流通する燐酸溶液を加熱する機能(例えば、120〜180℃)を備え、フィルタ59は、燐酸溶液中のパーティクル等を除去する機能を備えている。なお、循環配管53のうち、排出口51とポンプ55との間には開閉弁61が配設され、ポンプ55とインラインヒータ57との間には開閉弁63が配設されている。
【0033】
処理液供給源65には、供給配管67の一端側が連通接続されている。この処理液供給源67は、燐酸(HPO)を常温(例えば、25℃)で貯留しているものである。供給配管67には、流量制御が可能な制御弁69が配設されている。供給配管67の他端側は、外槽45の上部にあたる供給部71と連通接続されている。処理液供給源65から供給された燐酸は、供給配管67を通って、制御弁69により設定された流量で供給部71から外槽45に供給される。
【0034】
なお、供給部71が本発明における「処理液供給手段」に相当する。
【0035】
上述した循環配管53のうち、ポンプ55と開閉弁63との間には、分岐部73が配設されている。また、内槽43の底部には、内槽43内の処理液を急速に排出する際に使用する底部排出口75が形成されている。この底部排出口75と、ポンプ55の上流側にあたる循環配管53には、底部排出管77が連通接続されている。この底部排出管77には、開閉弁79が配設されている。分岐部73には、底部排出口75及び底部排出管77を介して排出された燐酸溶液を排液系に導くための排液管81が配設されている。この排液管81には、開閉弁83が配設されている。
【0036】
なお、上述した底部排出口75及び底部排出管77が本発明における「処理液排出手段」に相当する。
【0037】
内槽43には、その内壁に沿うように濃度計85が付設されている。この濃度計85は、燐酸溶液中に溶出した基板Wの特定物質を検出する。例えば、基板Wがシリコン製である場合には、燐酸溶液中におけるシリコンの溶存濃度を測定するとともに、測定した濃度信号を出力する。
【0038】
また、外槽45の上方には、純水供給部87が配設されている。この純水供給部87は、純水供給源に接続された供給管88に連通接続されている。供給管88には、流量を調整可能な制御弁89が取り付けられている。
【0039】
上述した各構成は、制御部25によって統括的に制御される。この制御部25には、個別機能部27内の第1メモリ33と、第2メモリ35と、第3メモリ36とが接続されている。制御部25は、カウンタ37と、第1メモリ33及び第2メモリ35との設定値に応じて、開閉弁83及び制御弁69などを操作して、後述する全液交換や部分液交換を行う。さらに、制御部25は、濃度計85からの濃度信号に基づいて制御弁89などを操作し、燐酸溶液中のシリコン濃度がほぼ一定となるように適宜に制御を行う。
【0040】
第1メモリ33は、処理槽41に供給部71から新たな燐酸溶液を供給する全液交換を行ってから、その処理液で基板Wを処理し、所望の処理レートの範囲になる処理回数を規定した調整ライフカウントILCを予め記憶する。この調整ライフカウントILCは、予め実験などにより、どの程度の膜厚の基板Wをどの程度の枚数処理すれば所望の処理レートの範囲になるかが分かっており、それに応じて第1メモリ33に予め記憶されている。
【0041】
第2メモリ35は、調整ライフカウントILCに達した後、処理槽41の燐酸溶液の一部にあたる所定量を排液管81から排出するとともに、供給部71から所定量に相当する新たな燐酸溶液を供給する部分液交換を行ってから、その燐酸溶液で厚膜のものに相当する基板Wを処理することが許容される処理枚数(または処理回数)を規定した通常ライフカウントNLCを予め記憶する。但し、上述したように、厚膜以外の基板W、例えば、薄膜の基板Wの処理枚数に係数を乗じて、例えば、2ロット分の基板Wを処理したことで厚膜の基板Wを1ロット分処理したとして制御部25が判断したり、ロットを構成する基板の枚数を考慮したりすることが好ましい。このように厚膜に相当するロットの計数を行うことにより、所望の処理レートの範囲に収める精度を高くすることができる。なお、第3メモリ36については詳細後述する。
【0042】
なお、上述した通常ライフカウントNLCが本発明における「ライフカウント」に相当し、第2メモリ35が本発明における「記憶手段」に相当する。
【0043】
次に、図4を参照して、上述した調整ライフカウントILC及び通常ライフカウントNLCについて説明する。なお、図4は、液交換のタイミングを示すタイムチャートである。
【0044】
処理の最初、または、液の劣化に伴って全液を交換する場合には、制御部25は燐酸を供給部71から処理槽41に供給する。このタイミングは、図4におけるt1時点である。そして、制御部25は、カウンタ37からの処理枚数が調整ライフカウントILCに一致したと判断した場合には部分液交換を行う。概略的には、開閉弁83を開放して、処理槽41から所定量の燐酸溶液を排出するとともに、開閉弁83を閉止してその排出量とほぼ同じ量の燐酸を供給部71から処理槽41に供給する。このタイミングは、図4におけるt2時点である。これ以降、制御部25は、カウンタ37からの処理数が通常ライフカウントNLCに一致するごとに部分液交換を実施する(t3,t4時点)。
【0045】
上述した調整ライフカウントILC及び通常ライフカウントNLCは、予め次のようにして決定されている。
【0046】
まず、本装置で処理する基板Wと同じ種類及び同じ処理を経た基板Wを用意する。そして、同じ処理条件、例えば、同時に処理する基板Wの枚数、燐酸溶液の濃度・温度、基板Wを燐酸溶液に浸漬させる時間などを実際の製品である基板Wに合わせる。そして、処理条件を合わせた基板Wを同条件で処理した後、処理レートを測定する。この処理レートとは、例えば、酸化膜や窒化膜のエッチングレートである。ここで、目標エッチングレートは、図4におけるエッチングレートER2〜ER5の間にあるものとする。そして、複数の基板Wを処理した結果、目標エッチングレートER2〜ER5から余裕をみて、目標エッチングレートの下限よりややレートが高いエッチングレートER4まで低下する処理枚数や処理回数を求める。そのときの処理枚数や処理回数が調整ライフカウントILCとして第1メモリ33に設定される。
【0047】
また、その後の部分液交換によってエッチングレートが高くなるが、そのレートが目標エッチングレートの上限であるエッチングレートER2よりややレートが低いエッチングレートER3となるように、部分液交換の排出量及び供給量を設定しておく。さらに、部分液交換後、上述したように条件を合わせるとともに、厚膜の基板Wを同条件で処理した後、エッチングレートを測定し、エッチングレートER4まで低下する処理枚数や処理回数を求める。これが通常ライフカウントNLCとして第2メモリ35に設定される。
【0048】
なお、具体的には、調整ライフカウントILCが、例えば、15〜40ロットであり、通常ライフカウントNLCが、例えば、5〜6ロット程度である。指示部23を備えているので、上述したような実験結果に応じて調整ライフカウントILCと通常ライフカウントNLCを適切な値に設定することができる。したがって、処理条件が異なる処理であっても、エッチングレートを目標範囲に収めて処理を継続的に行わせることができる。
【0049】
次に図5を参照して、調整ライフカウントILCと通常ライフカウントNLCとについて説明する。なお、図5は、ロットの流れを示す模式図である。この図5中においては、厚膜以外の膜厚を問わないものについては符号を付さず、厚膜のものについては符号TCを付してある。
【0050】
図5においては、t1時点で全液交換を行い、例えば、これに続いて16ロット分の基板Wを処理したt2時点で燐酸溶液の調整処理が終わる。つまり所望のエッチングレート範囲に収まるものとする。そして、t2時点で部分液交換を行い、続いて各種の基板Wを含む複数のロットを処理し、厚膜の基板Wであるロットが5ロット分処理されたt3時点で通常ライフカウントNLCに達したとする。すると、t3時点で部分液交換を行い、続いて各種の基板Wのロットを処理し、厚膜の基板Wであるロットが6ロット分処理され、t4時点で通常ライフカウントNLCに達したとする。すると、t4時点で部分液交換を行って、次のロットの処理を順次に行う。なお、図示しないカウンタでは、全液交換を行った時点t1からの経過時間が計測されており、所定時間(ライフタイム)が経過した時点で全液交換を行う。
【0051】
上述した図5の模式図において、厚膜の基板Wが6ロット分で部分液交換になっている処理と、厚膜の基板Wが5ロット分で部分液交換になっている処理とがあるが、これは厚膜以外の基板Wのロットについて係数を乗じて数ロットで厚膜として扱う取り扱いを行ったり、ロットを構成する基板Wの枚数を考慮したりしているからである。但し、所望のエッチングレートの範囲が比較的広い場合には、そのような扱いをすることなく、単に厚膜の基板Wの枚数やロット数だけでカウントして部分液交換を行ってもよい。
【0052】
次に、図6を参照して、上述した装置の動作について説明する。図6は、動作を示すフローチャートである。なお、説明の理解を容易にするため、上述した基板処理システムの詳細な動作については省略し、薬液処理部CHB1(CHB2)における動作についてのみ説明する。なお、指示部23によるロットごとのレシピの指示は適宜に実施されているものとする。
【0053】
ステップS1
制御部25は、各部を操作して全液交換を行わせる。但し、処理槽41は空であるので、開閉弁61,63を開放させるとともに開閉弁79,83を閉止させ、制御弁69を開放させて供給部71から内槽43に燐酸を供給させる。そして、ポンプ55を作動させるとともに、インラインヒータ57を作動させて燐酸溶液を循環させつつ所要の処理条件(例えば、180℃の温度)の燐酸溶液を生成させる。また、制御弁89を開放させて、純水供給部87から純水を希釈液として適宜に供給させて、燐酸濃度を調整して初期の処理条件を整える。さらに、カウンタ37をリセットして、処理枚数及び処理回数の積算値をゼロにする。この状態は、図4、図5の時点t1にあたる。
【0054】
ステップS2,S3
基板Wのうち厚膜相当の基板Wについて計数し、カウンタ37の処理枚数及び処理回数をインクリメントさせる(ステップS2)。そして、処理枚数(または処理回数)が調整ライフカウントILCに到達しているか否かにより処理を分岐する(ステップS3)。具体的には、処理枚数が調整ライフカウントILCに到達している場合には、ステップS6に移行して部分液交換を行う。なお、到達している状態は、図4、図5の時点t2にあたる。一方、到達していない場合には、ステップS4に移行する。ここでは、まず到達していない場合として説明する。なお、不一致の状態は、図4、図5の時点t1から時点t2の間にあたる。
【0055】
ステップS4,S5
保持アーム47に基板Wを保持させ、保持アーム47を処理位置にまで下降させ、所定時間の処理を行わせる(ステップS4)。処理を終えたら、保持アーム47を上昇させて基板Wを搬出させる(ステップS5)。そして、上述したステップS2に戻って処理を繰り返し行わせる。
【0056】
ステップS6
処理枚数(または処理回数)が初期ライフカウントILCに到達した場合、制御部25は、各部を操作して部分液交換を行わせる。まず、インラインヒータ57を停止させる。そして、開閉弁79,63を閉止させるとともに、開閉弁83を開放させる。そして、ポンプ55を所定時間だけ動作させて、所定量の燐酸溶液を処理槽41から排出させる。次に、開放弁83を閉止させるとともに、開閉弁63を開放させる。そして、制御弁69を開放させて、排出させた量に相当する量の燐酸を供給部71から内槽43に供給させるとともに、ポンプ55及びインラインヒータ57を作動させて、部分液交換後の燐酸溶液を処理条件に調整させる。さらに、カウンタ37をリセットして、処理枚数及び処理回数の積算値をゼロにする。なお、この状態は、図4、図5の時点t2にあたる。
【0057】
ステップS7,S8
厚膜に相当する基板Wについて計数し、カウンタ37の処理枚数及び処理回数をインクリメントさせる(ステップS7)。そして、処理回数(または処理回数)が通常ライフカウントNLCに到達しているか否かにより処理を分岐する(ステップS8)。具体的には、処理枚数が調整ライフカウントICLに到達している場合には、ステップS6に戻って部分液交換を行う。なお、到達している状態は、図4、図5の時点t3にあたる。一方、到達していない場合には、ステップS9に移行する。ここでは、まず到達していないとして説明する。なお、到達していない状態は、図4、図5の時点t2から時点t3の間にあたる。
【0058】
ステップS9,S10
保持アーム47に基板Wを保持させ、保持アーム47を処理位置にまで下降させ、所定時間の処理を行わせる(ステップS9)。処理を終えたら、保持アーム47を上昇させて基板Wを搬出させる(ステップS10)。
【0059】
ステップS11
全処理対象のロットについて処理を終えたか、あるいは、生成された処理液がライフタイム(最大使用可能な処理時間)を越えたか否かに応じて処理を分岐する。全処理対象のロットについて処理を終えていない場合あるいはライフタイム未満である場合には、ステップS7に戻って次の処理を行わせ、全処理対象のロットについて処理を終えた場合あるいはライフタイム以上の場合には、上述した一連の処理を終える。
【0060】
上述したように、本実施例によると、制御部25は、カウンタ37で計数された基板Wの枚数のうち、厚膜のものに相当する基板Wの枚数が通常ライフカウントNLCに達したことに基づき、部分液交換を実施しながら基板Wを処理させる。つまり、燐酸溶液の劣化度合いが大きな厚膜のものに相当する基板Wの処理枚数を基準にして部分液交換を実施するので、燐酸溶液のエッチングレートを一定の範囲に保持することができる。
【0061】
なお、次のような不都合が生じ得るので、以下のような対応を図ることが好ましい。ここで、図7を参照する。なお、図7は、通常のライフカウントによる問題の説明に供する図である。図7中のグラフにおいて、実線は実際のライフカウントに相当し、点線はカウンタ37によるライフカウントを表している。
【0062】
ここでは、ライフカウントを1000枚とし、基板Wの処理枚数が1000枚を超えた場合に、50%の処理液を交換する部分液交換を行う。また、ライフカウントの上限として2000枚が設定されている。この例では、ロットの種類として、2枚分の膜厚に相当する基板Wが50枚で構成された100枚相当の「第一種のロット」と、5枚分の膜厚に相当する基板Wが60枚で構成された300枚相当の「第二種のロット」とがあるとする。したがって、第一種のロットが処理されるとカウンタ37は100枚を計数し、第二種のロットが処理されるとカウンタ37は300枚を計数する。また、カウンタ37は、ライフカウントに一致するとリセットが行われ、計数値が「0」に戻される。
【0063】
この場合、図7に示すように、第一種のロットが9ロット続けて処理された後、第二種のロットが1ロット処理されたt10時点で1200枚の基板Wを処理したことになるので、カウンタ37の計数値がライフカウントを超え、ライフカウントに達したことになる。したがって、このt10時点で半分の処理液が交換される部分液交換が実施される。このt10時点では、カウンタ37の初期値が「0」にされる。
【0064】
そして、次のロット群を処理してゆく。具体的には、第二種のロットを4ロット続けて処理するので、カウンタ37はt14時点でライフカウントを超える。したがって、t14時点で部分液交換及びカウンタ37のリセットが行われる。これらの処理により、カウンタ37の計数値の履歴は、点線CVに示すようになる。しかしながら、劣化度合いを考慮した計数値RCは、T18時点で実際のライフカウントの上限である2000枚を超えることになる。劣化度合いを考慮した計数値とは、部分液交換で考慮されていない、交換されなかった残りの処理液における劣化度合いを考慮したものである。具体的には、t10時点でカウンタ37の初期値が「0」とされるが、実際には、残り半分の処理液には600枚分の基板Wを処理して劣化したものが含まれている。これを累積してゆくと、劣化度合いを考慮した計数値RCは、上述したようにライフカウントの上限を超えるという不都合が生じる。
【0065】
そこで、上述した第3メモリ36に部分液交換における液交換量(補充量)に応じた補充量パラメータを予め設定しておくことが好ましい。補充量パラメータは1未満の数値であり、例えば、部分液交換により補充する所定量が50%である場合には0.5であり、所定量が40%である場合には0.6であり、所定量が60%である場合には0.4である。そして、制御部25は、最初のライフカウントをカウンタ37が計数した時点で、その計数値(それまでに計数した基板Wの枚数)に補充量パラメータを乗じて、これをカウンタ37の初期値として設定することが好ましい。
【0066】
なお、上述した第3メモリ36が本発明における「記憶手段」に相当する。
【0067】
上述したように補充量パラメータを使用した場合について図8を参照する。図8は、補充量パラメータを採用した場合の説明に供する図である。なお、図8では、図7と同じ二種類のロットを処理しているが、図7と同じようにロット群を処理すると図示の関係上理解しづらくなるので、図8では図7と異なるロット群の処理を行っている。
【0068】
カウンタ37の初期値を「0」として、第一種のロットを9ロット続けて処理した後、第二種のロットを1ロット処理する。すると、t10時点でライフカウントが1200枚となるので、50%の処理液だけを交換する部分液交換を実施する。さらに、制御部25は、第3メモリ36の補充量パラメータ=0.5を参照し、カウンタ37の初期値を、1200枚×0.5=600枚に設定する。したがって、カウンタ37は、t10時点以降、600枚から計数を開始する。その結果、第一種のロットを4ロット処理したt14時点においてカウンタ37の計数値がライフカウントに達するので、t14時点において部分液交換を実施する。さらに、カウンタ37の初期値を600枚とし、第一種のロットを5ロット処理したt19時点においてカウンタ37の計数値がライフカウントを超えるので、t19時点において部分液交換を行うことになる。このように部分液交換時にカウンタ37の初期値を設定すると、図8に示すように、劣化度合いを考慮した計数値RCと、カウンタ37による計数値CVとが一致し、ライフカウントの上限を超えることを防止できる。
【0069】
上述したように部分液交換を行う際の所定量(補充量)に応じた1未満の補充量パラメータを、処理した基板Wの枚数に乗じてこれをライフカウントの初期値とする。これにより、ライフカウントの初期値に残りの処理液の劣化度合いを反映させることができる。その結果、ライフカウントの上限を超える事態を防止できる。
【0070】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0071】
(1)上述した実施例では、燐酸溶液を例に採って説明したが、これ以外の処理液、例えば、フッ化水素酸溶液などによる処理であっても本発明を適用することができる。
【0072】
(2)上述した実施例では、指示部23を備えて適宜に通常ライフカウントを設定できるように構成しているが、これを省略してもよい。その場合には、処理対象の基板Wや処理溶液などの処理条件に応じて予め条件出しを行っておき、基板処理装置の設置の際に第1メモリ33及び第2メモリ35に通常ライフカウントILCを書き込むようにすればよい。これにより不用意な書き換えによるトラブルを防止できるとともに、装置コストを抑制することができる。
【0073】
(3)上述した実施例では、循環配管53を備えて処理液を循環させつつ処理を行っているが、処理液を処理槽41に貯留した状態で処理を行う装置であっても同様の効果を奏する。
【0074】
(4)上述した実施例では、基板処理システムの基板処理装置を例に採って説明したが、上述した基板処理装置が単体で構成され、これに指示部23や基板Wの枚数を計数する基板係数手段を備えたものであっても同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0075】
W … 基板
CTC … 第1搬送機構
WTR … 第2搬送機構
LPD … 乾燥処理部
CHB1,CHB2 … 薬液処理部
23 … 指示部
25 … 制御部
27 … 個別機能部
33 … 第1メモリ
35 … 第2メモリ
37 … カウンタ
41 … 処理槽
43 … 内槽
45 … 外槽
47 … 保持アーム
53 … 循環配管
55 … ポンプ
NLC … 通常ライフカウント
TC … 厚膜のロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理液で処理する基板処理装置において、
基板の枚数を計数する基板計数手段と、
処理液を貯留し、基板に対して所定の処理を行う処理槽と、
前記処理槽に処理液を供給する処理液供給手段と、
前記処理槽から処理液を排出する処理液排出手段と、
前記処理槽に貯留された処理液で厚膜の基板を処理することが許容される処理枚数を規定したライフカウントを予め記憶する記憶手段と、
前記基板計数手段で計数された基板の枚数のうち、厚膜のものに相当する基板の枚数が前記記憶手段により記憶されているライフカウントに達したことに基づいて、前記処理槽の処理液の一部にあたる所定量を前記処理液排出手段で排出するとともに、前記処理液供給手段から前記所定量に相当する新たな処理液を供給する部分液交換を行なわせつつ基板を処理させる制御手段と、
を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
厚膜または薄膜の種別を含む、基板を処理するための手順を規定したレシピを指示する指示手段を備え、
前記制御手段は、前記レシピに基づいて基板が厚膜であることを判断することを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理装置において、
前記ライフカウントを設定するための設定手段をさらに備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記記憶手段は、部分液交換を行う際の所定量に応じた1未満の補充量パラメータを予め記憶し、
前記制御手段は、前記基板計数手段がライフカウントを計数した際には、前記基板計数手段の初期値として、部分液交換を行うまでに計数した基板の枚数に前記補充量パラメータを乗じた値を設定することを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
基板を処理液で処理する基板処理方法において、
基板の枚数を計数する過程と、
基板を処理液により処理する過程と、
厚膜のものに相当する基板の枚数が、処理液で基板を処理することが許容される処理枚数を規定したライフカウントに達した場合には、処理液の一部にあたる所定量を排出するとともに、前記所定量に相当する新たな処理液を供給する部分液交換を行う過程と、
を備えていることを特徴とする基板処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理方法において、
前記厚膜であることの判断は、予め指示された、厚膜または薄膜の種別を含む、基板を処理するための手順を規定したレシピに基づき行われることを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−260257(P2009−260257A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3378(P2009−3378)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】