説明

壁パネル、壁パネルの固定構造、及び壁パネルの固定方法

【課題】 作業性を向上させて工期を短縮することができ、機械的強度を確保できる壁パネル、壁パネルの固定構造、及び壁パネルの固定方法を提供する。
【解決手段】 木製の壁枠1と、壁枠1の開口した外面を被覆する構造用合板10と、壁枠1の内面を被覆する石膏ボード13と、壁枠1に内蔵される配線パーツ16と、壁枠1と石膏ボード13との間に介在される防湿気密フィルム20とを備え、壁枠1の下部下面よりも構造用合板10の最下部12を下方向に伸ばすとともに、壁枠1の下部と石膏ボード13の下部下面との間にシール用の隙間15を形成し、壁枠1と石膏ボード13の少なくともいずれか一方から配線パーツ16を露出させ、壁枠1と石膏ボード13の間から防湿気密フィルム20の少なくとも下部を伸ばして壁枠1の下部下面に接触可能とする。工場で壁パネルを製造するので、時間をかけて現場で壁パネルを製作する必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠組壁工法(2×4工法ともいう)に使用される壁パネル、壁パネルの固定構造、及び壁パネルの固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造住宅の建築には、従来、レイアウトの自由度に優れる木造軸組工法が用いられているが、最近は優れた耐震性、耐火性、生産性等を得ることのできる枠組壁工法が多用されてきている(特許文献1、2、3、4、5参照)。この枠組壁工法により木造住宅を建築する場合には、図14や図15に示すように、建築物の構造体30を構築し、この構造体30の床面で複数の壁パネルを建て起こして接合固定するようにしている。
【0003】
各壁パネルの製作に際しては、図14に示すように、組み立てた壁枠1の上部横桟3と下部横桟4間に複数の桟木5を間隔をおいて並べて架設し、構造体30の床面に壁枠1を建ててその下部横桟4を複数の釘41Aにより固定し、壁枠1の開口した外面に複数の構造用合板10を複数の釘を介して貼り付けるとともに、構造体30を構成する床根太33の外面に各構造用合板10の下方に伸びた最下部12を複数の釘41を介して貼り付け、壁枠1に複数の発泡体を内蔵して複数の桟木5間に位置させ、その後、壁枠1の内面に複数の石膏ボード13を複数の釘を介して貼り付ける。
【0004】
各石膏ボード13は、図14に示すように、縦長の長方形に形成され、下部と側部とに、略半楕円形の大きな窓孔55がそれぞれ並べて穿孔されており、各窓孔55に釘打ち用でL型の釘打機(図示せず)が挿入される。
【特許文献1】特許第2845784号公報
【特許文献2】特開2001‐173127号公報
【特許文献3】特開平4‐52343号公報
【特許文献4】特開平8‐82030号公報
【特許文献5】特開平11‐256717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の枠組壁工法は、以上のように時間をかけて現場で壁パネルを製作しなければならないので、作業性が非常に悪く、工期の遅延を招くという問題がある。また、石膏ボード13の下部と側部とに、大きな窓孔55を予め穿孔しておかなければならないし、釘を打ち込んだ後には開口した窓孔55を石膏等により閉じなければならないので、作業性の悪化に拍車がかかり、しかも、壁パネル自体の機械的強度が低下してしまうおそれが少なくない。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、作業性を向上させて工期を短縮することができ、機械的強度を確保することのできる壁パネル、壁パネルの固定構造、及び壁パネルの固定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、壁枠と、この壁枠の外面を被覆する外層と、壁枠の内面を被覆する内層と、壁枠に内蔵される配線パーツと、壁枠と内層との間に介在される防湿層とを含んで枠組壁工法に使用されるものであって、
壁枠の下部下面よりも外層の最下部を下方向に伸ばすとともに、壁枠の下部と内層の下部下面との間にシール用の隙間を形成し、壁枠と内層の少なくともいずれか一方から配線パーツを露出させ、壁枠と内層の間から防湿層の少なくとも下部を伸ばして壁枠の下部下面に接触可能としたことを特徴としている。
【0008】
なお、壁枠の高さが2.33mを超える場合には、壁枠の上下部間に第一の仕切り材を架設するとともに、壁枠の両側部間に第二の仕切り材を架設することが好ましい。
また、第一、第二の仕切り材により複数の空間を形成し、各空間には少なくとも断熱性の充填材を充填することが好ましい。
【0009】
また、本発明においては上記課題を解決するため、建築物の構造体に請求項1ないし3いずれかに記載の壁パネルを立ててこれらの間には防湿層の下部を介在させ、構造体と壁パネルとを締結具を介して固定したものであって、
締結具は、構造体の立面と壁パネルの外層最下部とを固定する止め具と、壁パネルの外層を斜めに貫通して構造体と壁パネルの下部とを固定する第一の木螺子部材と、壁パネルの内層を斜めに貫通して構造体と壁パネルの下部とを固定する第二の木螺子部材とを含み、
第一、第二の木螺子部材を、胴と、この胴の前部と後部とにそれぞれ形成される螺子山とから構成したことを特徴としている。
【0010】
なお、壁パネルの外層に通気層を設け、この通気層に外壁材を設けることができる。
また、構造体と壁パネルの内層の下部下面との隙間にシーリング材を充填することが好ましい。
【0011】
また、本発明においては上記課題を解決するため、建築物の構造体に、請求項1ないし3いずれかに記載の壁パネルを固定する方法であって、
建築物の構造体に壁パネルを立ててこれらの間には防湿層の下部を介在させる工程と、構造体の立面と壁パネルの外層最下部とを重ねて止め具により固定する工程と、壁パネルの外層に第一の木螺子部材を斜めに挿し通して構造体と壁パネルの下部とを固定する工程と、壁パネルの内層に第二の木螺子部材を斜めに挿し通して構造体と壁パネルの下部とを固定する工程とを含み、
第一、第二の木螺子部材を、胴と、この胴の前部と後部とにそれぞれ形成される螺子山とから構成したことを特徴としている。
【0012】
なお、壁パネルの外層に通気層を設け、この通気層に外壁材を設ける工程を含むと良い。
さらに、構造体と壁パネルの内層の下部下面との隙間にシーリング材を充填する工程を含むと良い。
【0013】
さらにまた、壁枠と、この壁枠の外面を被覆する外層と、壁枠の内面を被覆する内層と、壁枠に内蔵される配線パーツと、壁枠と内層との間に介在される防湿層とを含み、枠組壁工法に締結具を介して使用されるものであって、
壁枠の下部下面よりも外層の最下部を下方向に伸ばすとともに、壁枠の下部と内層の下部下面との間にシール用の隙間を形成し、壁枠と内層の少なくともいずれか一方から配線パーツを露出させ、壁枠と内層の間から防湿層の少なくとも下部を伸ばして壁枠の下部下面に接触可能とし、
締結具を、壁パネルの外層を斜め下方に挿し通されて壁枠の下部を貫通する第一の木螺子部材と、壁パネルの内層を斜め下方に挿し通されて壁枠の下部を貫通する第二の木螺子部材とするとともに、これら第一、第二の木螺子部材を、胴と、この胴の前部と後部とにそれぞれ形成される螺子山とから構成したことを特徴としても良い。
【0014】
ここで、特許請求の範囲における外層と内層は、単数複数いずれでも良い。内層としては、少なくとも石膏ボード、シージング石膏ボード、化粧石膏ボード等があげられる。配線パーツとしては、少なくとも単数複数の配線コード、ケーブル、チューブ、コンセント、配線スイッチ、コネクタ、中継ボックス、クランプ、配線金具、部品取付具、光ファイバ等があげられる。また、防湿層は、単数複数のシートでも良いし、フィルムでも良い。さらに、充填材には、少なくとも単数複数のグラスウール、ロックウール、セルロースファイバー、インシュレーションボード、ポリエチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム等が含まれる。
【0015】
本発明によれば、現場で壁パネルを、壁枠、構造用合板、発泡体、及び石膏ボードを使用して製作するのではなく、予め壁パネルを、少なくとも壁枠、外層、内層、配線パーツ、及び防湿層により構成してユニット化しておき、現場に運んで固定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、壁パネルを現場で製作するのではなく、予め工場等で製造した後に現場に運ぶので、作業性を向上させて工期を短縮することができ、機械的強度を確保することができるという効果がある。また、壁パネルの固定時や固定後に配線パーツを取り付けるのではなく、予め工場等で壁パネルを製造する際、壁枠に配線パーツを内蔵して検査しておくことができるので、作業に従事する者の技能に左右されることなく、配線作業の円滑化、効率化、容易化等を図ることができるという効果がある。
【0017】
また、予め工場等で壁パネルを製造する際、壁枠と内層との間に防湿層を介在させて気密性を十分に確保し、品質を安定化させておくことができるので、作業に従事する者の技量に左右されることなく、気密性の維持・安定化を図ることができる。また、防湿層の少なくとも下部を露出させて壁枠の外面に重ねることができるので、気密性の向上を図ることができる。
また、第一、第二の木螺子部材の胴の全てに螺子山を形成するのではなく、胴の前部と後部のみに螺子山をそれぞれ形成し、その他の部分に螺子山を形成しないので、通常の釘やビスよりもせん断耐力等に優れる木螺子部材を得ることができる。
【0018】
また、壁枠の上下部間に第一の仕切り材を架設するとともに、壁枠の両側部間に第二の仕切り材を架設すれば、壁枠を2.33mを超える大型に構成しても、優れた強度と剛性を得ることができる。
また、第一、第二の仕切り材により複数の空間を形成し、区画された各空間に少なくとも断熱性の充填材を充填するようにすれば、充填材が位置ずれしたり、片寄るのを防ぐことが可能になる。
【0019】
また、壁パネルの外層に通気層を設ければ、充填材中に高温多湿な空気や水蒸気等が侵入して結露を発生させるのを防ぐことができる。また、通気層に外壁材を設ければ、優れた外観美や質感等を得ることが可能になる。
さらに、構造体と壁パネルの内層の下部下面との隙間にシーリング材を充填すれば、気密性を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における壁パネルは、図1ないし図13に示すように、木製の壁枠1と、この壁枠1の外面を下地材として被覆する複数の構造用合板10と、加工性や寸法安定性等に優れ、壁枠1の内面を被覆する複数の安価な石膏ボード13と、壁枠1に内蔵される配線パーツ16と、壁枠1に複数内蔵される高性能のグラスウール19と、壁枠1と石膏ボード13との間に介在される防湿気密フィルム20とを備え、予め工場で製造された後に現場に複数枚輸送され、建築物の構造体30に締結具40を介し枠組壁工法により接合固定される。
【0021】
壁枠1は、図1等に示すように、間隔をおいて相対向する左右一対の縦桟2と、この一対の縦桟2の上部間に釘を介し水平に架設される上下一対の上部横桟3と、一対の縦桟2の下部間に釘を介し水平に架設される下部横桟4とから中空の矩形に形成され、一般的な2.33mの高さよりも高い2.7m程度の高さに構成される。この壁枠1の縦桟2、上部横桟3、及び下部横桟4は、それぞれ乾燥性等に優れる安価な輸入木材、例えばランバー材等により形成される。
【0022】
一対の上部横桟3と下部横桟4との間には、上下方向に指向する複数の桟木5が間隔をおいて並設され、一対の縦桟2の中央部間には横桟6が釘を介し水平に架設される。一対の上部横桟3は、配線パーツ露出用の貫通孔7が連通して穿孔され、複数の壁パネルの接合時に別の長い上部横桟が上方から積層固定される。複数の桟木5と横桟6とは、例えばランバー材により形成され、相互に組み合わされて縦長の空間8を複数区画形成するとともに、壁パネルの剛性を高め、壁パネルを補強するよう機能する。
【0023】
複数の構造用合板10は、壁枠1の開口した外面に釘を介し横一列に並べて貼着され、必要に応じて窓用の開口11等が大きく形成される(図9、図10参照)。各構造用合板10は、例えば針葉樹合板やラワン等を使用して強度に優れる縦長の長方形に形成され、表面に防虫処理や防腐処理等が施されており、最下部12が壁枠1の下部横桟4の下面よりも下方向に長く(例えば6cm程度)伸ばされて突出する。構造用合板10の上部は、図1や図2に示すように、必要に応じて壁枠1の上部横桟3に揃えられたり、上部横桟3よりも低い位置に位置する。
【0024】
複数の石膏ボード13は、図1等に示すように、壁枠1の内面に釘を介し横一列に並べて貼着され、開口11に対向する開口、配線パーツ露出用の露出口14や孔が必要数穿孔されており、耐熱機能、防火機能、遮音機能等を発揮する。各石膏ボード13は、必要に応じ、工場で壁枠1の内面に完全に貼着されたり、簡単に着脱できるよう仮止めされる。
【0025】
石膏ボード13は、12.5mm以上の厚さを有する縦長の長方形に形成され、下部が壁枠1の下部横桟4よりも短縮されており、この下部の下面と下部横桟4の下面との間にシール用の隙間15を断面矩形に形成する(図3、図4参照)。石膏ボード13の下部には、必要に応じて締結具40用の先孔や目印等が横一列に並べて形成される。また、石膏ボード13の上部は、必要に応じて壁枠1の上部横桟3に揃えられたり、上部横桟3よりも低く位置する。
【0026】
配線パーツ16は、桟木5の下部に設置されて石膏ボード13の露出口14から露出するコンセントボックス17と、このコンセントボックス17に接続されて上部横桟3の貫通孔7から貫通露出する配線コード18とから構成される。コンセントボックス17は、露出口14に螺着されるコンセントカバー(図示せず)により被覆される。また、配線コード18は、桟木5の長手方向に配線金具を介して係止される。
【0027】
各グラスウール19は、例えば耐久性や耐水性等に優れる無機質の繊維材料からなる。このグラスウール19は、壁枠1の複数の空間8にそれぞれ充填されて配線パーツ16を被覆し、断熱材としての断熱機能と高い気密機能を発揮する。
【0028】
防湿気密フィルム20は、例えば0.2mm以上の厚さを有するアルミ、OPP、PET製等のフィルムを使用して矩形に形成され、その上部、下部、及び左右両側部からなる周囲が壁枠1と石膏ボード13との間からはみ出て外部に露出し、この露出した部分が壁枠1と構造体30との間、壁枠1と隣接する他の壁枠1との間に挟持される(図1、図3等参照)。
【0029】
建築物の構造体30は、図3や図4に示すように、転圧された砕石上に防湿シートを介して打設・養生される基礎31を備え、この基礎31上に土台32と大引きとがアンカーボルト等により固定され、これら土台32と大引き上に一階用の床根太33が組まれており、この床根太33に、発泡ウレタン等からなる断熱材34、構造用合板35、及び床面であるフローリング36が順次積層して敷設される。
【0030】
床根太33の立面である外面には、構造用合板10の最下部12が締結具40を介して水平外方向から固定され、フローリング36と石膏ボード13の下部下面との隙間15には、変性シリコーン等からなる気密・防水用のシーリング材37がコーキングガンにより施される。
【0031】
締結具40は、図4ないし図6に示すように、構造用合板10の最下部12と床根太33の外面とを固定する複数の釘41と、構造用合板10の下部を外方向から斜め下方に貫通して壁パネルの下部横桟4と床根太33とを固定する専用の第一のビス42と、石膏ボード13の下部を内方向から斜め下方に貫通して壁パネルの下部横桟4と床根太33とを固定する専用の第二のビス42Aとから形成される。
複数の釘41は、構造用合板10の最下部左右方向に並べて打ち込まれ、かつ上下方向に間隔をおいて配列される。
【0032】
第一、第二のビス42・42Aは、図5に示すように、例えば、鋳鋼、鍛鋼、鋳鉄、浸炭焼入れされた鋼線等を使用してφ4.2mmの径に形成される胴43を備え、この胴43の尖った先端部を含む前部と後部とには、鋭利な螺子山44がそれぞれ突出形成され、末端部には、略円錐台形で穴付きの頭部45が一体形成されており、全体として長さ12cm、φ6mmの大きさに形成される。これら第一、第二のビス42・42Aは、壁枠1の左右方向に並べて螺挿され、相互に干渉しないよう千鳥形にずらして配列される(図6参照)。
【0033】
第一、第二のビス42・42Aの螺挿される際の傾斜角度は、特に限定されるものではないが、作業性向上の観点から水平面に対して45°〜85°、好ましくは60°〜80°の範囲とされる。このような第一、第二のビス42・42Aとしては、(有)ダンドリ製作所製のビス(商品名SP‐120:胴径4.2mm、螺子部山径6.0mm、全長120mm、螺子長45mm)が好適に使用される。
【0034】
上記において、壁パネルを製造する場合には、先ず、壁枠1を一対の縦桟2、一対の上部横桟3、下部横桟4、複数の桟木5、横桟6を使用して組み立て(図7参照)、この壁枠1の開口した外面に複数の構造用合板10を釘を介し横一列に並べて貼着(図8参照)し、開口11付きの壁枠1を表裏逆にして寝かせる。
【0035】
こうして壁枠1に複数の構造用合板10を貼着したら、壁枠1内に配線パーツ16のコンセントボックス17や配線コード18を配線(図9参照)して配線コード18を一対の上部横桟3の貫通孔7から外部に引き出し、壁枠1の複数の空間8にグラスウール19をそれぞれ充填して配線パーツ16を被覆する(図10参照)。
【0036】
そして、壁枠1の内面に防湿気密フィルム20を積層して複数のグラスウール19を被覆(図11参照)し、防湿気密フィルム20の周囲を壁枠1の周囲から食み出させ、壁枠1の内面に複数の石膏ボード13を釘を介し横一列に並べて貼着(図12参照)した後、石膏ボード13の露出口14から配線パーツ16のコンセントボックス17を露出させれば、ユニット化した壁パネルを製造することができる。
【0037】
次に、建築物の構造体30に壁パネルを接合固定する場合には、先ず、既に構築された構造体30のフローリング36上に、輸送した壁パネルを立ててこれらフローリング36と壁パネルの間には防湿気密フィルム20の露出した下部を折り曲げて介在させ(図3、図4参照)、構造体30を構成する床根太33の外面に各構造用合板10の最下部12を重ねて位置決めし、釘41により固定する。
【0038】
次いで、各構造用合板10の下部に、複数の第一のビス42を斜め下方に挿通して壁パネルの下部横桟4、構造体30の床根太33、構造用合板35を固定するとともに、各石膏ボード13の下部に、複数の第二のビス42Aを斜め下方に挿通して壁パネルの下部横桟4、構造体30の床根太33、構造用合板35を固定し、複数の石膏ボード13の下部下面とフローリング36との間の隙間15に、気密・防水用のシーリング材37をコーキングガンにより施し、壁枠1、石膏ボード13、フローリング36の気密性を確保する(図3参照)。
【0039】
この際、複数の第一、第二のビス42・42Aは、前部の螺子山44が構造体30の床根太33に螺嵌して強い摩擦力・保持力を発揮するとともに、後部の螺子山44が壁パネルの下部横桟4に螺嵌して強い摩擦力・保持力を発揮し、螺子山44の刻まれていない中央部46が壁パネルの下部横桟4を貫通する(図4参照)。
【0040】
そして、下地材である複数の構造用合板10の外面に、シート形の防風材50、通気層51、化粧された耐火性の外壁材52を順次積層して設ければ、建築物の構造体30に壁パネルを接合固定することができる(図13参照)。外壁材52としては、例えば軽量の木質系外壁材、金属系外壁材、石綿系外壁材、軽量気泡コンクリート等が使用される。
【0041】
上記構成によれば、工場で主要部品である壁パネルを製造してストックしておくので、時間をかけて現場で壁パネルを製作する必要が全くない。したがって、作業性を著しく向上させて工期を短縮することができる。また、石膏ボード13の下部と側部とに窓孔55をそれぞれ穿孔したり、開口した各窓孔55を石膏等により閉じる必要が全くないので、壁パネル自体の機械的強度が低下するのを抑制防止することができる。
【0042】
また、壁枠1内に複数の桟木5と横桟6を配設して組み合わせ、壁パネルの撓みを防止するので、壁パネルを2.34m以上の全高にして天井を高くしようとしても、優れた強度と剛性を有効に確保することができる。また、防湿気密フィルム20に配線パーツ16の配線コード18を挿通させて外部に引き出すのではなく、配線パーツ16の配線コード18を上部横桟3の貫通孔7から外部に引き出すので、防湿気密フィルム20の挿通部分を補修する必要がなく、優れた気密構造を得ることができる。
【0043】
また、壁枠1にグラスウール19を単に充填するのではなく、区画された複数の空間8にグラスウール19をそれぞれ充填するので、グラスウール19の位置ずれ等を抑制して作業性を向上させることが可能になる。また、複数のグラスウール19を防湿気密フィルム20により単に被覆するのではなく、壁枠1の内面全体に防湿気密フィルム20を積層してその周囲を壁枠1の周囲から食み出させるので、気密性の向上を通じて断熱性の向上、使用するエネルギの効率化、結露・カビの防止、建築物の腐食防止を図ることが可能になる。
【0044】
また、床根太33の外面に構造用合板10の伸びた最下部12を重ねて固定するので、構造用合板10を容易に仮止めすることが可能になる。また、壁パネルの下部横桟4に防湿気密フィルム20の下部を単に揃えるのではなく、フローリング36と壁パネルの下部横桟4間に防湿気密フィルム20の下部を潜り込ませ、挟持させるので、除湿、防水、気密性を大幅に向上させることが可能になる。
【0045】
また、壁パネルをユニット化しておく関係上、構造体30の床面に壁枠1を建ててその下部横桟4を釘41Aにより固定することはできないが、構造用合板10の下部に第一のビス42を斜め下方に挿通して壁パネルと床根太33を固定するとともに、石膏ボード13の下部に、第二のビス42Aを斜め下方に挿通して壁パネルと床根太33を固定するので、現場で壁パネルを製造するのではなく、予め工場で壁パネルを製造してユニット化しても、壁パネルを構造体30に強固かつ容易に固定することが可能になる。
【0046】
また、保持力の弱い釘を使用したり、第一、第二のビス42・42Aの胴43の全てに螺子山44を突出形成するのではなく、胴43の前部と後部のみに螺子山44をそれぞれ突出形成し、胴43の中央部46に螺子山44を突出形成せずに強度を高めるので、横方向からの風等に強く、強度、剛性に優れるビスを得ることができ、しかも、この第一、第二のビス42・42Aの使用により、壁パネルの接合固定強度の大幅な向上が期待できる。特に、第一、第二のビス42・42Aとして、SP‐120を使用すれば、通常のビスに比べ、3〜4倍の保持力と高い信頼性を得ることができる。
【0047】
さらに、石膏ボード13の下部下面とフローリング36とを単に接触させるのではなく、石膏ボード13の下部下面とフローリング36との隙間15にシーリング材37を充填するので、防湿気密フィルム20とシーリング材37の多層構造を通じて気密性の十分な確保が期待できる。
【0048】
なお、上記実施形態の壁枠1は長方形や正方形に形成することができるし、桟木5と横桟6の数は適宜増減することができる。また、壁枠1と構造用合板10の間、及び又は壁枠1と石膏ボード13の間には、他の層を適宜介在させても良い。また、上記実施形態では、石膏ボード13の下部下面とフローリング36との隙間15に液状のシーリング材37を充填したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、定形のシーリング材を使用しても良い。
【0049】
また、複数の壁パネルを横一列に並べて接合する際、隣接する壁パネルの間に防湿気密フィルム20の側部を挟持させ、除湿、防水、気密性を向上させるようにしても良い(図13参照)。さらに、壁パネルを一階の各部のみならず、二階各部の建築に使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る壁パネル、壁パネルの固定構造、及び壁パネルの固定方法の実施形態を示す斜視説明図である。
【図2】本発明に係る壁パネル、壁パネルの固定構造、及び壁パネルの固定方法の実施形態における壁パネルを石膏ボード側から見た状態を示す正面説明図である。
【図3】本発明に係る壁パネル、壁パネルの固定構造、及び壁パネルの固定方法の実施形態を示す部分断面説明図である。
【図4】本発明に係る壁パネル、壁パネルの固定構造、及び壁パネルの固定方法の実施形態を示す断面説明図である。
【図5】本発明に係る壁パネル、壁パネルの固定構造、及び壁パネルの固定方法の実施形態における第一、第二のビスを示す説明図である。
【図6】本発明に係る壁パネル、壁パネルの固定構造、及び壁パネルの固定方法の実施形態における第一、第二のビスの配列状態を示す説明図である。
【図7】本発明に係る壁パネル、壁パネルの固定構造、及び壁パネルの固定方法の実施形態における壁枠の製造状態を示す説明図である。
【図8】本発明に係る壁パネル、壁パネルの固定構造、及び壁パネルの固定方法の実施形態における壁枠に構造用合板を貼着する状態を示す説明図である。
【図9】本発明に係る壁パネル、壁パネルの固定構造、及び壁パネルの固定方法の実施形態における壁枠に配線パーツを取り付ける状態を示す説明図である。
【図10】本発明に係る壁パネル、壁パネルの固定構造、及び壁パネルの固定方法の実施形態における壁枠にグラスウールを充填する状態を示す説明図である。
【図11】本発明に係る壁パネル、壁パネルの固定構造、及び壁パネルの固定方法の実施形態における壁枠に防湿気密フィルムを張る状態を示す説明図である。
【図12】本発明に係る壁パネル、壁パネルの固定構造、及び壁パネルの固定方法の実施形態における壁枠に石膏ボードを貼着する状態を示す説明図である。
【図13】本発明に係る壁パネル、壁パネルの固定構造、及び壁パネルの固定方法の実施形態における壁パネルの直列接合状態を示す断面説明図である。
【図14】従来の壁パネルを示す斜視説明図である。
【図15】従来の壁パネルの固定構造を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 壁枠
2 縦桟(側部)
3 上部横桟(上部)
4 下部横桟(下部)
5 桟木(第一の仕切り材)
6 横桟(第二の仕切り材)
7 貫通孔
8 空間
10 構造用合板(外層)
12 最下部
13 石膏ボード(内層)
14 露出口
15 隙間
16 配線パーツ
17 コンセントボックス
18 配線コード
19 グラスウール(充填材)
20 防湿気密フィルム(防湿層)
30 構造体
31 基礎
32 土台
33 床根太
36 フローリング
37 シーリング材
40 締結具
41 釘(止め具)
42 第一のビス(第一の木螺子部材)
42A 第二のビス(第二の木螺子部材)
43 胴
44 螺子山
45 頭部
46 中央部
50 防風材
51 通気層
52 外壁材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁枠と、この壁枠の外面を被覆する外層と、壁枠の内面を被覆する内層と、壁枠に内蔵される配線パーツと、壁枠と内層との間に介在される防湿層とを含んで枠組壁工法に使用される壁パネルであって、
壁枠の下部下面よりも外層の最下部を下方向に伸ばすとともに、壁枠の下部と内層の下部下面との間にシール用の隙間を形成し、壁枠と内層の少なくともいずれか一方から配線パーツを露出させ、壁枠と内層の間から防湿層の少なくとも下部を伸ばして壁枠の下部下面に接触可能としたことを特徴とする壁パネル。
【請求項2】
壁枠の高さが2.33mを超える場合には、壁枠の上下部間に第一の仕切り材を架設するとともに、壁枠の両側部間に第二の仕切り材を架設した請求項1記載の壁パネル。
【請求項3】
第一、第二の仕切り材により複数の空間を形成し、各空間には少なくとも断熱性の充填材を充填した請求項2記載の壁パネル。
【請求項4】
建築物の構造体に請求項1ないし3いずれかに記載の壁パネルを立ててこれらの間には防湿層の下部を介在させ、構造体と壁パネルとを締結具を介して固定した壁パネルの固定構造であって、
締結具は、構造体の立面と壁パネルの外層最下部とを固定する止め具と、壁パネルの外層を斜めに貫通して構造体と壁パネルの下部とを固定する第一の木螺子部材と、壁パネルの内層を斜めに貫通して構造体と壁パネルの下部とを固定する第二の木螺子部材とを含み、
第一、第二の木螺子部材を、胴と、この胴の前部と後部とにそれぞれ形成される螺子山とから構成したことを特徴とする壁パネルの固定構造。
【請求項5】
壁パネルの外層に通気層を設け、この通気層に外壁材を設けた請求項4記載の壁パネルの固定構造。
【請求項6】
構造体と壁パネルの内層の下部下面との隙間にシーリング材を充填した請求項4又は5記載の壁パネルの固定構造。
【請求項7】
建築物の構造体に、請求項1ないし3いずれかに記載の壁パネルを固定する壁パネルの固定方法であって、
建築物の構造体に壁パネルを立ててこれらの間には防湿層の下部を介在させる工程と、構造体の立面と壁パネルの外層最下部とを重ねて止め具により固定する工程と、壁パネルの外層に第一の木螺子部材を斜めに挿し通して構造体と壁パネルの下部とを固定する工程と、壁パネルの内層に第二の木螺子部材を斜めに挿し通して構造体と壁パネルの下部とを固定する工程とを含み、
第一、第二の木螺子部材を、胴と、この胴の前部と後部とにそれぞれ形成される螺子山とから構成したことを特徴とする壁パネルの固定方法。
【請求項8】
壁パネルの外層に通気層を設け、この通気層に外壁材を設ける工程を含んでなる請求項7記載の壁パネルの固定方法。
【請求項9】
構造体と壁パネルの内層の下部下面との隙間にシーリング材を充填する工程を含んでなる請求項7又は8記載の壁パネルの固定方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁枠と、この壁枠の外面を被覆する外層と、壁枠の内面を被覆する内層と、壁枠に内蔵される配線パーツと、壁枠と内層との間に介在される防湿層とを用いて建築物の建築現場への輸送前にユニット化され、枠組壁工法に使用される壁パネルであって、
壁枠の高さを2.33mを超える高さとしてその上下部間に第一の仕切り材を架設するとともに、壁枠の両側部間に第二の仕切り材を架設し、これら第一、第二の仕切り材を組み合わせて複数の空間を形成し、各空間には、少なくとも耐熱性の充填材を充填し、壁枠の上部には、配線パーツの配線コードを外部に露出させる貫通孔を穿孔し、壁枠の下部下面よりも外層の最下部を下方向に伸ばすとともに、壁枠の下部と内層の下部下面との間には、シール用の隙間を形成し、壁枠と内層の間から防湿層の少なくとも下部を伸ばして壁枠の下部下面に接触可能としたことを特徴とする壁パネル。
【請求項2】
建築物の構造体に請求項1記載の壁パネルを立ててこれらの間には防湿層の下部を介在させ、構造体と壁パネルとを締結具を介して固定し、構造体と壁パネルの内層の下部下面との隙間にシーリング材を充填し、壁パネルの外層には通気層を設けるとともに、この通気層には外壁材を設けた壁パネルの固定構造であって、
締結具は、構造体の立面と壁パネルの外層最下部とを固定する止め具と、壁パネルの外層を斜めに貫通して構造体と壁パネルの下部とを固定する第一の木螺子部材と、壁パネルの内層を斜めに貫通して構造体と壁パネルの下部とを固定する第二の木螺子部材とを含み、
第一、第二の木螺子部材を、胴の前部と後部とに螺子山をそれぞれ形成することにより構成し、胴の前部の螺子山を構造体に螺嵌し、螺子山を有しない胴の中央部を壁パネルの下部に貫通させ、かつ胴の後部の螺子山を壁パネルの下部に螺嵌するようにしたことを特徴とする壁パネルの固定構造。
【請求項3】
建築物の構造体に請求項1記載の壁パネルを立ててこれらの間には防湿層の下部を介在させ、構造体と壁パネルとを締結具を介して固定し、構造体と壁パネルの内層の下部下面との隙間にシーリング材を充填し、壁パネルの外層には通気層を設けるとともに、この通気層には外壁材を設ける壁パネルの固定方法であって、
締結具は、構造体の立面と壁パネルの外層最下部とを固定する止め具と、壁パネルの外層を斜めに貫通して構造体と壁パネルの下部とを固定する第一の木螺子部材と、壁パネルの内層を斜めに貫通して構造体と壁パネルの下部とを固定する第二の木螺子部材とを含み、
第一、第二の木螺子部材を、胴の前部と後部とに螺子山をそれぞれ形成することにより構成し、胴の前部の螺子山を構造体に螺嵌し、螺子山を有しない胴の中央部を壁パネルの下部に貫通させ、かつ胴の後部の螺子山を壁パネルの下部に螺嵌することを特徴とする壁パネルの固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−225871(P2006−225871A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37842(P2005−37842)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【特許番号】特許第3733370号(P3733370)
【特許公報発行日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(595074657)蹴揚建設株式会社 (11)
【Fターム(参考)】