説明

変性樹脂組成物、その製造方法、及びそれを含む硬化性樹脂組成物

【課題】
良好な透明性を有すると共に、優れた耐熱黄変性、並びに、加熱条件下での耐光性と、サーマルサイクルにおける耐冷熱衝撃性とを併せ持った硬化物を形成することができ、且つ、良好な保存安定性を有する変性樹脂組成物等を提供すること。
【解決手段】
エポキシ樹脂(A)存在下、(B)少なくとも1つの環状エーテル基を有する基を含む1種のアルコキシシラン化合物、及び(C)少なくとも1個以上のフッ素原子を置換基として有するフェニル基を含むアルコキシシラン化合物等を反応させて得られる変性樹脂組成物であって、(B)成分及び(C)成分の含有量の比が所定の範囲内にある変性樹脂組成物。
(R−Si−(OR4−n ・・・(1)
(ここで、nは0以上3以下の整数を示す。また、R及びR各々独立に、特定の1価の有機基等を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂とアルコキシシラン化合物とを反応させて得られる変性樹脂組成物及びその製造方法、並びに、それを含む硬化性樹脂組成物とその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、酸無水物系硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物は、透明な硬化物を与え、且つ、高い耐熱性と接着性を有するため、発光ダイオード(以下、発光ダイオードと略記する)やフォトダイオード等の光半導体用の封止用樹脂として好適に用いられてきた。しかしながら、近年、光半導体の高性能化が進み、発光ダイオード封止用樹脂として、従来求められてきた良好な透明性と高い耐熱性と接着性以外に、耐熱黄変性、サーマルサイクル時の耐冷熱衝撃性に優れ、更に、表面タック性の無い硬化物が所望されるようになっており、従来用いられてきたビスフェノールA系エポキシ樹脂やビスフェノールF系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、等のエポキシ樹脂からなる組成物では、十分な特性が得られなくなっているのが実情である。
【0003】
発光素子封止材用樹脂としては、熱又は光に対し安定なシロキサン骨格を繰り返し単位として有する、シリコーン樹脂の検討がいくつかなされている。しかしながら、前記シリコーン樹脂は、耐光性や耐熱性には優れるものの、接着性が低く、基材との剥離が生じ、更に、場合によっては硬化物の硬度が低い、表面タック性を有する等、未だ満足できる性能ではなく、多くの改善が求められているのが実情である。
【0004】
一方、シロキサン骨格を繰り返し単位とし、有機基にエポキシ基を有する変性樹脂組成物化合物についてもいくつかの検討がなされている。変性樹脂組成物は、エポキシ樹脂が有する優れた透明性、耐熱性を有し、且つ、表面タック性の無い硬化物を与えるばかりでなく、該硬化物がシリコーンの有する、耐酸化性、更には、柔軟性を併せもつことが期待されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、T構造を必須繰り返し単位として含有し、1分子中の珪素原子に結合する全有機基に対してエポキシ基含有有機基を0.1〜40モル%の範囲で含有する変性樹脂組成物が提案されている。
特許文献2には、特定範囲の分子量を有し、かつ1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するシリコーン化合物を含む組成物とその光半導体封止材への利用についての記載がある。
特許文献3〜5には、エポキシ樹脂と、予め縮合されたシリコーン樹脂とを混合した樹脂組成物について開示されている。
特許文献6〜11には、エポキシ樹脂とアルコキシシシラン類、或いはその部分縮合物とを混合し、次いで脱アルコール反応することにより得られる樹脂組成物について開示されている。
特許文献12には、分子中にアルコキシ基をSi原子数の2倍含む変性フェノキシ樹脂とエポキシ樹脂とかならなる樹脂組成物について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3263177号公報
【特許文献2】特開2005−171021号公報
【特許文献3】特開2006−225515号公報
【特許文献4】特開2006−241230号公報
【特許文献5】特開2008−120843号公報
【特許文献6】特開2001−059011号公報
【特許文献7】特開2001−059013号公報
【特許文献8】特開2002−179762号公報
【特許文献9】特開2002−249539号公報
【特許文献10】特開2003−246838号公報
【特許文献11】特開2005−179401号公報
【特許文献12】特開2007−321130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された樹脂組成物は、耐冷熱衝撃性、接着性に関しても未だ満足できるレベルのものでは無い。更に、上記の変性樹脂組成物は、場合によっては保存安定性が低く、保存中に樹脂の粘度が著しく増加する傾向にあり、十分に実用性を有すると言えるものではない。
【0008】
また、特許文献3〜5に記載された、エポキシ樹脂非存在下において予め縮合されたシリコーン樹脂を、エポキシ樹脂と混合することにより得られる組成物は、保存安定性が低く、保存中に樹脂の粘度が著しく増加する傾向にある。更に、場合によってはエポキシ樹脂とシリコーン樹脂が均一混合できない等、十分に実用性を有すると言えるものではない。
【0009】
さらに、脱アルコール反応によりシリコーンを製造する場合には、シリコーン中にアルコキシ基が残留する傾向にあり、特許文献6〜12に記載されたようなアルコキシシラン残基を含有する樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は、経時的な加水分解によりアルコールが発生すると共に気化することで、サーマルサイクル時の耐冷熱衝撃性や、接着性が低下する傾向にあった。
上述したように、特許文献1〜12に開示されている材料は、未だ十分な性能を有するものではなく、更に、前記特許文献には、フッ素原子を置換基として有するフェニル基に関する記述や示唆は一切見られていない。
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は、良好な透明性を有すると共に、優れた耐熱黄変性、及び、加熱条件下での耐光性と、サーマルサイクルにおける耐冷熱衝撃性とを併せ持った硬化物を形成することができ、且つ、良好な保存安定性を有する変性樹脂組成物、並びにこれを用いた硬化性樹脂組成物、発光部品及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、エポキシ樹脂と、特定構造のアルコキシシラン化合物とを、特定の比率で反応させて得られる変性樹脂組成物であって、樹脂組成物中の残留アルコキシ基量を特定範囲に調整することによって、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]エポキシ樹脂(A)存在下、下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物を反応させて得られる変性樹脂組成物であって、
(R−Si−(OR4−n ・・・(1)
(ここで、nは0以上3以下の整数を示す。また、Rは各々独立に、水素原子、又はa)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が4以上24以下であり、かつ酸素数が1以上5以下である環状エーテル基を含有する有機基、b)無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の脂肪族有機基、及びc)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が6以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。一方、Rは各々独立に、水素原子、又はd)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上8以下である1価の有機基を示す。)
前記アルコキシシラン化合物が、
(B) n=1又は2であり、Rとして少なくとも1つの環状エーテル基を有する基を含む、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
(C) n=1又は2であり、Rとして少なくとも1個以上のフッ素原子を置換基として有するフェニル基を含むアルコキシシラン化合物、
とを含み、
下記一般式(2)で表される、前記アルコキシシラン化合物の混合指標αが0.001以上19以下であることを特徴とする変性樹脂組成物。
混合指標α=(αc)/(αb) ・・・(2)
(ここで、式(2)中、αbは一般式(1)で表される、アルコキシシラン化合物中の前記(B)成分の含有量(mol%)、αcは一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の前記(C)成分の含有量(mol%)を示す。)
【0013】
[2]変性樹脂組成物中の残留アルコキシ基量が5%以下であることを特徴とする[1]記載の変性樹脂組成物。
[3]前記アルコキシシラン化合物の縮合率が80%以上である、上記の[1]又は[2]に記載の変性樹脂組成物。
[4]前記エポキシ樹脂(A)が、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物からなる多官能エポキシ樹脂、及び芳香族エポキシ樹脂の核水素化物よりなる群から選ばれる1種以上の多官能エポキシ樹脂であることを特徴とする上記の[1]〜[3]のいずれか1項に記載の変性樹脂組成物。
[5]下記一般式(3)で表される前記アルコキシシラン化合物の混合指標βが、0.01以上1.4以下である、上記の[1]〜[4]のいずれか1項に記載の変性樹脂組成物;
混合指標β={(βn2)/(βn0+βn1)} ・・・(3)
(ここで、式(3)中、βn2は一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の、n=2であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、βn0は一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の、n=0であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、βn1は一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の、n=1であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)をそれぞれ示し、0≦{(βn0)/(βn0+βn1+βn2)}≦0.1を満足する値である。)
【0014】
[6]下記一般式(4)で表される前記エポキシ樹脂(A)と前記アルコキシシラン化合物の混合指標γが、0.02〜15である、上記の[1]〜[5]のいずれか1項に記載の変性樹脂組成物;
混合指標γ=(γa)/(γs) ・・・(4)
(ここで、式(4)中、γaはエポキシ樹脂(A)の質量(g)、γsは一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の、n=0〜2であるアルコキシシラン化合物の質量(g)をそれぞれ示す。)
[7]エポキシ樹脂(A)存在下において、下記(B)成分及び(C)成分を少なくとも含む下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物を、水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流工程によって共加水分解して中間体を製造する工程(a)、及び
工程(a)によって製造された中間体を脱水縮合反応する工程(b)、
を含み、且つ、下記一般式(2)で表される、前記アルコキシシラン化合物の混合指標αが0.001以上19以下である変性樹脂組成物の製造方法。
(R−Si−(OR4−n ・・・(1)
(ここで、nは0以上3以下の整数を示す。また、Rは各々独立に、水素原子、又はa)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が4以上24以下であり、かつ酸素数が1以上5以下である環状エーテル基を含有する有機基、b)無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の脂肪族有機基、及びc)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が6以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。一方、Rは各々独立に、水素原子、又はd)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上8以下である1価の有機基を示す。)
(B) n=1又は2であり、Rとして少なくとも1つの環状エーテル基を有する基を含む、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物。
(C) n=1又は2であり、Rとして少なくとも1個以上のフッ素原子を置換基として有するフェニル基を含むアルコキシシラン化合物。
混合指標α=(αc)/(αb) ・・・(2)
(ここで、式(2)中、αbは前記(B)成分の含有量(mol%)、αcは前記(C)成分の含有量(mol%)を示す。)
【0015】
[8]下記(B)成分及び(C)成分を少なくとも含む下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物を、水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流工程によって共加水分解して中間体を製造する工程(c)、及び
工程(c)によって製造された中間体にエポキシ樹脂(A)を共存させて脱水縮合反応する工程(d)、
を含み、且つ、下記一般式(2)で表される、前記アルコキシシラン化合物の混合指標αが0.001以上19以下である変性樹脂組成物の製造方法。
(R−Si−(OR4−n ・・・(1)
(ここで、nは0以上3以下の整数を示す。また、Rは各々独立に、水素原子、又はa)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が4以上24以下であり、かつ酸素数が1以上5以下である環状エーテル基を含有する有機基、b)無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の脂肪族有機基、及びc)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が6以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。一方、Rは各々独立に、水素原子、又はd)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上8以下である1価の有機基を示す。)
(B) n=1又は2であり、Rとして少なくとも1つの環状エーテル基を有する基を含む、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物。
(C) n=1又は2であり、Rとして少なくとも1個以上のフッ素原子を置換基として有するフェニル基を含むアルコキシシラン化合物。
混合指標α=(αc)/(αb) ・・・(2)
(ここで、式(2)中、αbは前記(B)成分の含有量(mol%)、αcは前記(C)成分の含有量(mol%)を示す。)
【0016】
[9]下記一般式(3)で表される前記アルコキシシラン化合物の混合指標βが、0.01〜1.4である、上記の[7]又は[8]に記載の変性樹脂組成物の製造方法;
混合指標β={(βn2)/(βn0+βn1)} ・・・(3)
(ここで、式(3)中、βn2は一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の、n=2であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、βn0は一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の、n=0であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、βn1は一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の、n=1であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)をそれぞれ示し、0≦{(βn0)/(βn0+βn1+βn2)}≦0.1を満足する値である。)
[10]下記一般式(4)で表されるエポキシ樹脂(A)と前記アルコキシシラン化合物の混合指標γが、0.02〜15である、上記の[7]〜[9]のいずれか1項に記載の変性樹脂組成物の製造方法;
混合指標γ=(γa)/(γs) ・・・(4)
(ここで、式(4)中、γaはエポキシ樹脂(A)の質量(g)、γsは一般式(1)で表されるアルコキシシラン中の、n=0〜2であるアルコキシシラン化合物の質量(g)をそれぞれ示す。)
【0017】
[11]水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流工程における温度が50〜100℃である、上記の[7]〜[10]のいずれか1項に記載の変性樹脂組成物の製造方法。
[12]水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流工程によって共加水分解して得られる中間体の縮合率が70%以上である、上記の[7]〜[11]のいずれか1項に記載の変性樹脂組成物の製造方法。
[13]前記共加水分解の際に、アルコキシド系有機錫を触媒として用いる、上記の[7]〜[12]のいずれか1項に記載の変性樹脂組成物の製造方法。
[14]上記の[1]に記載の変性樹脂組成物に、更に硬化剤を加えてなる硬化性樹脂組成物。
[15]上記の[14]に記載の硬化性樹脂組成物に、更に硬化促進剤を加えてなる硬化性樹脂組成物。
[16]上記の[15]に記載の硬化性樹脂組成物を用いて製造された発光部品。
[17]上記の[16]に記載の発光部品を含む半導体装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、優れた耐熱黄変性、耐光性、耐冷熱衝撃性(サーマルサイクルにおける耐冷熱衝撃性)を有する硬化物を形成することができ、且つ、良好な保存安定性を有する変性樹脂組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本発明」と言う。)について詳細に説明する。本発明は以下に示す形態に限定されるものではない。
【0020】
本発明における変性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)存在下、下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物を反応させて得られる変性樹脂組成物であって、
(R−Si−(OR4−n ・・・(1)
(ここで、nは0以上3以下の整数を示す。また、Rは各々独立に、水素原子、又はa)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が4以上24以下であり、かつ酸素数が1以上5以下である環状エーテル基を含有する有機基、b)無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の脂肪族有機基、及びc)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が6以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。一方、Rは各々独立に、水素原子、又はd)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上8以下である1価の有機基を示す。)
前記アルコキシシラン化合物が、
(B) n=1又は2であり、Rとして少なくとも1つの環状エーテル基を有する基を含む、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
(C) n=1又は2であり、Rとして少なくとも1個以上のフッ素原子を置換基として有するフェニル基を含むアルコキシシラン化合物、
とを含み、
下記一般式(2)で表される前記アルコキシシラン化合物の混合指標αが0.001以上19以下である。
混合指標α=(αc)/(αb) ・・・(2)
(ここで、式(2)中、αbは一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の前記(B)成分の含有量(mol%)、αcは一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の前記(C)成分の含有量(mol%)を示す。)
【0021】
本発明で用いられるエポキシ樹脂(A)は、特に制限は無く、例えば、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物からなる多官能エポキシ樹脂、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂の核水素化物、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂等、従来公知のエポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で使用しても、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明において用いることができる脂環式エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではなく、例えば、シクロヘキセンオキサイド基、トリシクロデセンオキサイド基、シクロペンテンオキサイド基等を有するエポキシ樹脂が挙げられる。脂環式エポキシ樹脂の具体例としては、単官能脂環式エポキシ化合物として、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシルが挙げられる。2官能脂環式エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオクチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、1,2,8,9−ジエポキシリモネンが挙げられる。多官能脂環式エポキシ化合物としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキセン付加物等が挙げられる。さらに、多官能脂環式エポキシ化合物として市販されているものとしては、エポリードGT401、EHPE3150(ダイセル化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0023】
下記に脂環式エポキシ樹脂の代表的な例を示す。
【化1】


【化2】

【0024】
本発明において用いることができる脂肪族系エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、具体的には、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、キシリレングリコール誘導体等の多価アルコールのグリシジルエーテル類が挙げられる。
【0025】
下記に脂肪族系エポキシ樹脂の代表的な例を示す。
【化3】

【0026】
本発明において用いることができるポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物からなる多官能エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ジメチル−4,4’−ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、2,6−ジ(t−ブチル)ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエンのポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0027】
下記にビスフェノール骨格を有するフェノール類のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂の代表的な例を示す。
【化4】

【0028】
ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂を使用する場合、これらの繰り返し単位(上記代表的な例を示す化学式中のn)は、特に限定されるものではないが、好ましくは0以上50未満の範囲である。繰り返し単位が50以上であると流動性が低下して、実用上問題となる場合がある。アルコキシシラン化合物類との反応性を高める観点、更に、得られる変性樹脂組成物の流動性を高める観点から、繰り返し単位の範囲は、好ましくは0以上10以下の範囲、より好ましくは0.001以上2以下の範囲である。
【0029】
ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物等が挙げられる。
【0030】
下記に、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂の代表的な例を示す。
【化5】

【0031】
本発明において用いることができる芳香族エポキシ樹脂の核水素化物としては、特に限定はなく、例えば、フェノール化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェノール等)のグリシジルエーテル化物又は各種フェノール(フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等)の芳香環の核水素化物、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物の核水素化物等が挙げられる。
【0032】
複素環式エポキシ樹脂としては、特に限定はなく、例えば、イソシアヌル環、ヒダントイン環等の複素環を有する複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0033】
グリシジルエステル系エポキシ樹脂としては、特に限定はなく、例えば、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のカルボン酸類からなるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0034】
グリシジルアミン系エポキシ樹脂としては、特に限定はなく、例えば、アニリン、トルイジン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン誘導体、ジアミノメチルベンゼン誘導体等のアミン類をグリシジル化したエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0035】
ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂としては、特に限定はなく、例えば、ブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA等のハロゲン化フェノール類をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0036】
上記の中でも、容易に入手可能であり、目的とする本発明の変性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物が、優れた透明性、耐熱黄変性、耐光性、サーマルサイクル時の耐冷熱衝撃性を有する傾向にあるため、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物からなる多官能エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂の核水素化物なる群から選ばれる1種以上の多官能エポキシ樹脂であることが好ましく、脂環式エポキシ樹脂、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物からなる多官能エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂の核水素化物、なる群から選ばれる1種以上の多官能エポキシ樹脂であることがより好ましい。
【0037】
本発明で用いられるエポキシ樹脂(A)の25℃における粘度については特に制限は無いが、液体としての流動性を確保し、アルコキシシラン化合物との相溶性を高められる傾向にあることから、1000Pa・s以下の液体であることが好ましく、500Pa・s以下であることがより好ましく、300Pa・s以下であることが更に好ましく、100Pa・s以下であることが特に好ましい。
【0038】
本発明で用いられるエポキシ樹脂(A)のエポキシ当量(WPE)は特に制限は無いが、本発明の変性樹脂組成物の保存安定性を高める観点から、100g/eq以上であることが好ましく、本発明の変性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐冷熱衝撃性を高める観点から、700g/eq以下であることが好ましく、100g/eq以上500g/eq以下の範囲がより好ましく、100g/eq以上300g/eq以下の範囲が更に好ましい。
【0039】
本発明において用いることができるアルコキシシラン化合物とは、1〜4個のアルコキシル基を有するケイ素化合物のことを示し、下記一般式(1)で表される。
(R−Si−(OR4−n ・・・(1)
(ここで、nは0以上3以下の整数を示す。また、Rは各々独立に、水素原子、又はa)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が4以上24以下であり、かつ酸素数が1以上5以下である環状エーテル基を含有する有機基、b)無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の脂肪族有機基、及びc)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が6以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。一方、Rは各々独立に、水素原子、又はd)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上8以下である1価の有機基を示す。)
【0040】
ここで、本発明における環状エーテル基について説明する。本発明における環状エーテル基とは、環状の炭化水素の炭素を酸素で置換したエーテルを有する有機基を指し、通常は3〜6員環の構造を持つ環状エーテル基を意味する。中でも、環歪みエネルギーが大きく、反応性の高い3員環又は4員環の環状エーテル基が好ましく、特に好ましくは3員環の環状エーテル基である。
【0041】
次に、本発明におけるRについて説明する。本発明のRは、各々独立に、水素原子、又は[a]無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が4以上24以下であり、かつ酸素数が1以上5以下である環状エーテル基を含有する有機基、[b]無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の脂肪族有機基、及び[c]無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が6以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。
【0042】
上記の[a]無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が4以上24以下であり、かつ酸素数が1以上5以下である環状エーテル基を含有する有機基としては、例えば、β−グリシドキシエチル、γ−グリシドキシプロピル、γ−グリシドキシブチル等の炭素数4以下のアルキル基にグリシジルオキシ基が結合したグリシドキシアルキル基、グリシジル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘプチル)エチル基、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ペンチル基等のエポキシ基を持った炭素数5〜8のシクロアルキル基で置換されたアルキル基等が挙げられる。
【0043】
上記の[b]無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の脂肪族有機基としては、例えば、[b−1]メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の脂肪族炭化水素からなる鎖状の有機基、[b−2]シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ノルボルニル基等の環状単位を含む炭化水素からなる有機基、[b−3]メトキシエチル、エトキシエチル、プロポキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、プロポキシプロピル基等のエーテル結合を含む有機基、[b−4]ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、等が挙げられる。
【0044】
上記の[c]無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が6以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の芳香族有機基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、α−メチルスチリル基、3−メチルスチリル基、4−メチルスチリル基等の炭化水素基や、少なくとも1個以上のフッ素原子を置換基として有するフェニル基、例えば、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、2,3,4−トリフルオロフェニル基、2,3,5−トリフルオロフェニル基、2,4,5−トリフルオロフェニル基、2,3,6−トリフルオロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基、2,3,4,6−テトラフルオロフェニル基、2,3,4,5−テトラフルオロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、等が挙げられる。
【0045】
本発明の変性樹脂組成物において、Rは上記の[a]〜[c]の1種又は2種以上の混合物であってよい。
【0046】
また、上記の炭素数及び酸素数の範囲内であれば、有機基としてヒドロキシル単位、アルコキシ単位、アシル単位、カルボキシル単位、アルケニルオキシ単位、アシルオキシ単位、或いは、エステル結合、更には、酸素原子や珪素原子及びハロゲン原子を除く窒素、リン、硫黄等のヘテロ原子を含んでいてもよい。また、上記の[a]〜[c]は、1種又は2種以上が混在した有機基であってよい。
【0047】
本発明の変性樹脂組成物の耐光性が良好となると共に、耐熱黄変性が向上する傾向にあるため、本発明における一般式(1)の有機基Rとしては、上記の[a]、[b−1]、[b−2]、[c]からなる群から選択されることが好ましく、[a]として、β−グリシドキシエチル、γ−グリシドキシプロピル、γ−グリシドキシブチル等の炭素数4以下のオキシグリシジル基が結合したグリシドキアルキル基、グリシジル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘプチル)エチル基、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ペンチル基と、[b−1]及び[b−2]中の炭素数が1以上8以下であり、かつ酸素数が0であるものから選択される有機基、並びに、[c]中のフェニル基、少なくとも1個以上のフッ素原子を置換基として有するフェニル基、ベンジル基なる群から選択されることが更に好ましく、[a]として、β−グリシドキシエチル、γ−グリシドキシプロピル、γ−グリシドキシブチル等の炭素数4以下のオキシグリシジル基が結合したグリシドキアルキル基、グリシジル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基と、[b−1]及び[b−2]中の炭素数が1以上3以下であり、酸素数が0であるものから選択される有機基、並びに、[c]少なくとも1個以上のフッ素原子を置換基として有するフェニル基からなる群から選択されることが特に好ましい。
【0048】
次に、本発明におけるRについて説明する。本発明のRは、各々独立に、水素原子、又は[d]無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上8以下である1価の有機基を示す。無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上8以下である1価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の脂肪族炭化水素からなる鎖状の有機基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ノルボルニル基等の環状単位を含む炭化水素からなる有機基等が挙げられる。
アルコキシシラン化合物は、上記の[d]の有機基が異なる2種以上の混合物であってもよい。また、これらは、1種又は2種以上が混在した有機基であってよい。
これらの有機基の中でも、アルコキシシラン化合物の反応性が高まる傾向にあることから、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0049】
本発明では、アルコキシシラン化合物として、少なくとも、前記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物において、(B)n=1又は2であり、Rとして少なくとも1つの環状エーテル基を有する基を含む、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、(C)n=1又は2であり、Rとして少なくとも1個以上のフッ素原子を置換基として有するフェニル基を含むアルコキシシラン化合物とを含有することが必要である。
前記の(B)n=1又は2であり、Rとして少なくとも1つの環状エーテル基を有する基を含む、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物を含有しない場合には、本発明の変性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐冷熱衝撃性、接着性が不十分となる。一方、(C)n=1又は2であり、Rとして少なくとも1個以上のフッ素原子を置換基として有するフェニル基を含むアルコキシシラン化合物を含有しない場合には、変性樹脂組成物が相分離し、再現性のある耐冷熱衝撃性、接着性が得られなくなる上に、本発明の変性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱黄変性、或いは加熱条件下での耐光性が低下する傾向にある。
【0050】
本発明において用いられる(B)成分の具体例としては、例えば、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(フェニル)ジエトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(フェニル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリメトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物として用いることが可能である。
【0051】
本発明において用いられる(C)成分は、少なくとも1個以上のフッ素原子を置換基として有するフェニル基を含むアルコキシシラン化合物である。
【0052】
エポキシ樹脂(A)存在下、下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物を反応させて得られる変性樹脂組成物において、フッ素原子を置換基として有するフェニル機を含有するアルコキシシランを用いることにより、硬化して得られる硬化物の耐熱黄変性、或いは加熱条件下での耐光性が発現する理由は定かではないが、以下のように推定している。すなわち、主としてエポキシ樹脂(A)との相溶性を発現させるために用いられたフェニル基を置換基として有する変性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物において、加熱時に黄変する、或いは、加熱条件下で光の照射を受けた際に黄変する原因の少なくとも一つが、前記のフェニル基であり、当該フェニル基にフッ素原子を置換基として導入することにより、フェニル基自体の化学的安定性が向上することに基づいているものと推定される。
【0053】
本発明におけるRとして少なくとも1個以上のフッ素原子を置換基として有するフェニル基を含むアルコキシシラン化合物の具体例としては、例えば、ジメトキシメチル−2−フルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−3−フルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−4−フルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,3−ジフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,4−ジフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,5−ジフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,6−ジフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−3,4−ジフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−3,5−ジフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,4,6−トリフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,3,4−トリフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,3,5−トリフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,4,5−トリフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,3,6−トリフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−3,4,5−トリフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,3,4,6−テトラフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,3,4,5−テトラフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルシラン、ジエトキシメチル−2−フルオロフェニルシラン、ジエトキシメチル−3−フルオロフェニルシラン、ジエトキシメチル−4−フルオロフェニルシラン、ジエトキシメチル−2,3−ジフルオロフェニルシラン、ジエキシメチル−2,4−ジフルオロフェニルシラン、ジエトキシメチル−2,5−ジフルオロフェニルシラン、ジエトキシメチル−2,6−ジフルオロフェニルシラン、ジエトキシメチル−3,4−ジフルオロフェニルシラン、ジエトキシメチル−3,5−ジフルオロフェニルシラン、ジエトキシメチル−2,4,6−トリフルオロフェニルシラン、ジエトキシメチル−2,3,4−トリフルオロフェニルシラン、ジエトキシメチル−2,3,5−トリフルオロフェニルシラン、ジエトキシメチル−2,4,5−トリフルオロフェニルシラン、ジエトキシメチル−2,3,6−トリフルオロフェニルシラン、ジエトキシメチル−3,4,5−トリフルオロフェニルシラン、ジエトキシメチル−2,3,4,6−テトラフルオロフェニルシラン、ジエトキシメチル−2,3,4,5−テトラフルオロフェニルシラン、ジエトキシメチル−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルシラン、等のジアルコキシシラン類、トリメトキシ−2−フルオロフェニルシラン、トリメトキシ−3−フルオロフェニルシラン、トリメトキシ−4−フルオロフェニルシラン、トリメトキシ−2,3−ジフルオロフェニルシラン、トリトキシ−2,4−ジフルオロフェニルシラン、トリメトキシ−2,5−ジフルオロフェニルシラン、トリメトキシ−2,6−ジフルオロフェニルシラン、トリメトキシ−3,4−ジフルオロフェニルシラン、トリメトキシ−3,5−ジフルオロフェニルシラン、トリメトキシ−2,4,6−トリフルオロフェニルシラン、トリメトキシ−2,3,4−トリフルオロフェニルシラン、トリメトキシ−2,3,5−トリフルオロフェニルシラン、トリメトキシ−2,4,5−トリフルオロフェニルシラン、トリメトキシ−2,3,6−トリフルオロフェニルシラン、トリメトキシ−3,4,5−トリフルオロフェニルシラン、トリメトキシ−2,3,4,6−テトラフルオロフェニルシラン、トリメトキシ−2,3,4,5−テトラフルオロフェニルシラン、トリメトキシ−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルシラン、トリエトキシ−2−フルオロフェニルシラン、トリエトキシ−3−フルオロフェニルシラン、トリエトキシ−4−フルオロフェニルシラン、トリエトキシ−2,3−ジフルオロフェニルシラン、トリエキシ−2,4−ジフルオロフェニルシラン、トリエトキシ−2,5−ジフルオロフェニルシラン、トリエトキシ−2,6−ジフルオロフェニルシラン、トリエトキシ−3,4−ジフルオロフェニルシラン、トリエトキシ−3,5−ジフルオロフェニルシラン、トリエトキシ−2,4,6−トリフルオロフェニルシラン、トリエトキシ−2,3,4−トリフルオロフェニルシラン、トリエトキシ−2,3,5−トリフルオロフェニルシラン、トリエトキシ−2,4,5−トリフルオロフェニルシラン、トリエトキシ−2,3,6−トリフルオロフェニルシラン、トリエトキシ−3,4,5−トリフルオロフェニルシラン、トリエトキシ−2,3,4,6−テトラフルオロフェニルシラン、トリエトキシ−2,3,4,5−テトラフルオロフェニルシラン、トリエトキシ−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルシラン、等のモノアルコキシシラン類、等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物として用いることが可能である。
【0054】
これらの内、本発明の変性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱黄変性、或いは、加熱条件下での耐光性が一層向上することから、本発明において用いられる(C)成分としては、ジメトキシメチル−2−フルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−4−フルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,4−ジフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,6−ジフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,4,6−トリフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルシラン、なる群から選ばれることが好ましく、ジメトキシメチル−2−フルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−4−フルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,4−ジフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,6−ジフルオロフェニルシラン、ジメトキシメチル−2,4,6−トリフルオロフェニルシラン、なる群から選ばれることがより好ましい。
【0055】
また、本発明における変性樹脂組成物は、上述した(A)〜(C)成分に加え、その他の成分として、上記一般式(1)におけるRの個数を示すn=0、具体的には、(OR)が4個結合したアルコキシシラン化合物と用いることも可能である。このようなアルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物として用いることが可能である。
【0056】
更に、本発明における変性樹脂組成物は、上述した(A)〜(C)成分に加え、その他の成分として、上記一般式(1)におけるRの個数を示すn=0、具体的には、(OR)が1個結合したアルコキシシラン化合物と用いることも可能である。このようなアルコキシシラン化合物としては、メトキシトリメチルシラン、メトキシトリエチルシラン、エトキシトリメチルシラン、エトキシトリエチルシラン、等が挙げられる。
【0057】
ここで、本発明で用いる混合指標αについて説明する。
本発明において用いられるアルコキシシラン中の、「(B)一般式(1)において、n=1又は2であり、Rとして、少なくとも1つの環状エーテル基を有する基を含む、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物」と、「(C)一般式(1)において、n=1又は2であり、Rとして少なくとも1個以上のフッ素原子を置換基として有するフェニル基を含むアルコキシシラン類」の混合比率を、以下の式(2)で算出される混合指標αと定義する。
混合指標α=(αc)/(αb) ・・・(2)
(ここで、式(2)中、αbは一般式(1)で表されるアルコキシシラン中の(B)成分の含有量(mol%)、αcは一般式(1)で表されるアルコキシシラン中の(C)成分の含有量(mol%)を示す。)
【0058】
本発明において、上記の混合指標αは、本発明の変性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物が高い耐熱黄変性と、加熱条件下での耐光性を維持しつつ、変性樹脂組成物の流動性と保存安定性とを確保する上で、0.001以上の範囲とすることが、一方、本発明の変性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物が高い耐熱黄変性と、加熱条件下での耐光性を維持しつつ、変性樹脂組成物の流動性や、硬化物の耐冷熱衝撃性を確保する上で19以下の範囲とすることが必要である。前記αの値は、0.2以上5以下の範囲とすることがより好ましく、0.3以上2以下とすることが更に好ましい。
【0059】
本発明の変性樹脂組成物において、本発明の組成物を硬化して得られる硬化物のサーマルサイクル時の耐冷熱衝撃性や、接着性が向上することから、該組成物中の残留アルコキシ基量を5%以下とすることが好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下が更に好ましく、0.5%以下が更により好ましく、全く含まれないことが特に好ましい。残留アルコキシ基量は、内部標準物質として1,1,2,2−テトラブロモエタンを用いるH−NMR測定により得られる内部標準ピークと残留アルコキシ基由来のピークの面積比を算出することにより、定量することができる。
【0060】
具体的には、下記記載の方法、並びに、解析方法により求めることができる。
<H−NMR測定>
(1)変性樹脂組成物10mgと内部標準物質(1,1,2,2−テトラブロモエタン;東京化成工業)20mg、重水素化クロロホルム970mgとを均一に混合し、H−NMR測定溶液とする。
(2)上記(1)の溶液を、下記条件にてH−NMRスペクトルを測定する。
装置:日本電子株式会社製「α−400型」
核種:H
積算回数:600回
<測定結果の解析>
(3)H−NMRスペクトルにおける、残留アルコキシ基由来ピークの面積値を算出する。
(4)H−NMRスペクトルにおける、内部標準物質由来ピークの面積値を算出する。
(5)上記(3)、(4)で得られた各々の面積値を、下式に代入し、得られた結果を残留アルコキシ基量(%)と定義する。
残留アルコキシ基量(%)=(残留アルコキシ基由来ピークの面積値)/(内部標準物質由来ピークの面積値)×100
【0061】
本発明の変性樹脂組成物の25℃における粘度については特に制限は無いが、液体としての流動性を確保でき、取り扱い性が高まる傾向にあり、また、必要に応じて添加される添加物との混合が容易になる傾向にあることから、1,000Pa・s以下の液体であることが好ましく、500Pa・s以下であることがより好ましく、300Pa・s以下であることが更に好ましく、100Pa・s以下であることが特に好ましい。
【0062】
本発明の変性樹脂組成物のエポキシ当量(WPE)については特に制限は無いが、変性樹脂組成物の保存安定性を高める観点から、100g/eq以上となるように官能基を選択することが好ましく、また、変性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐冷熱衝撃性を高める観点から、700g/eq以下となるように官能基を選択することが好ましい。より好ましい範囲は100g/eq以上500g/eq以下の範囲であり、更に好ましい範囲は100g/eq以上400g/eq以下の範囲である。
【0063】
次に、本発明で用いる混合指標βについて説明する。
本発明において用いられるアルコキシシラン化合物中の、「n=2であるアルコキシシラン化合物」、「n=1であるアルコキシシラン化合物」及び「n=0であるアルコキシシラン化合物」の混合比率を、以下の式(3)で算出される混合指標βと定義する。
混合指標β={(βn2)/(βn0+βn1)} ・・・(3)
(ここで、式(3)中、βn2は一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の、n=2であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、βn0は一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の、n=0であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、βn1は一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の、n=1であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)をそれぞれ示し、0≦{(βn0)/(βn0+βn1+βn2)}≦0.1を満足する値である。)
【0064】
本発明において、上記の混合指標βは、変性樹脂組成物の流動性が高められ、取り扱い性が向上する傾向にあることから0.01以上、一方、変性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐冷熱衝撃性が高められる傾向にあることから1.4以下であることが好ましく、0.03以上1.2以下の範囲であることがより好ましく、0.05以上1.0以下の範囲であることが更に好ましい。
【0065】
次に、本発明で用いる混合指標γについて説明する。
本発明において用いられる、エポキシ樹脂(A)と、アルコキシシラン化合物中の、「n=0〜2であるアルコキシシラン化合物」との混合比率を、以下の式(4)で算出される混合指標γと定義する。
混合指標γ=(γa)/(γs) ・・・(4)
(ここで、式(4)中、γaはエポキシ樹脂(A)の質量(g)、γsは一般式(1)で表されるアルコキシシラン中の、n=0〜2であるアルコキシシラン化合物の質量(g)をそれぞれ示す。)
【0066】
本発明において、混合指標γは、変性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物のサーマルサイクル時の耐冷熱衝撃性が高められる傾向にあることから0.02以上、一方、変性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐光性が高められる傾向にあることから15以下の範囲が好ましく、0.04以上7以下の範囲がより好ましく、0.08以上5以下の範囲が更に好ましい。
【0067】
本発明の変性樹脂組成物において、アルコキシシラン化合物の縮合率は、変性樹脂組成物の保存安定性、すなわち、保存中の樹脂の粘度を抑制し、取り扱い性を高める観点から、80%以上であることが好ましく、82%以上であることがより好ましく、85%以上であることが更に好ましく、88%以上であることが特に好ましい。
【0068】
なお、本発明のアルコキシシラン化合物の縮合率は、一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中に含まれる(OR)基のモル数(U)に対する、変性樹脂組成物中に存在するシリコーン成分中の(OR)基のモル数(V)を用いて、下記式(5)で表されるモル分率として示される。
アルコキシシラン化合物の縮合率(%)=[(U−V)/U]×100 ・・・(5)
【0069】
次に、本発明の変性樹脂組成物の具体的な製造方法の例について説明する。
本発明の変性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)存在下、下記一般式(1)で表される(B)及び(C)を少なくとも含み、且つ、下記一般式(2)で表される前記アルコキシシラン化合物の混合指標αが0.001以上19以下であるアルコキシシラン化合物を、下記の[製造法1]又は[製造法2]の方法で反応させて製造することができる。
(R−Si−(OR4−n ・・・(1)
(ここで、nは0以上3以下の整数を示す。また、Rは各々独立に、水素原子、又はa)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が4以上24以下であり、かつ酸素数が1以上5以下である環状エーテル基を含有する有機基、b)無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の脂肪族有機基、及びc)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が6以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。一方、Rは各々独立に、水素原子、又はd)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上8以下である1価の有機基を示す。)
(B) n=1又は2であり、Rとして少なくとも1つの環状エーテル基を有する基を含む、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物、
(C) n=1又は2であり、Rとして少なくとも1個以上のフッ素原子を置換基として有するフェニル基を含むアルコキシシラン化合物、
混合指標α=(αc)/(αb) ・・・(2)
(ここで、式(2)中、αbは前記(B)成分の含有量(mol%)、αcは前記(C)成分の含有量(mol%)を示す。)
【0070】
[製造法1]は、以下の2つの工程、工程(a)及び工程(b)を含む、変性樹脂組成物の製造方法である。
工程(a):エポキシ樹脂(A)存在下において、一般式(1)で表される上記(B)及び(C)を少なくとも含むアルコキシシラン化合物を、水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流工程によって共加水分解して中間体を製造する工程。
工程(b):工程(a)によって製造された中間体を脱水縮合反応する工程。
【0071】
[製造法2]は、以下の2つの工程、工程(c)及び工程(d)を含む、変性樹脂組成物の製造方法である。
工程(c):一般式(1)で表される上記(B)及び(C)を少なくとも含むアルコキシシラン化合物を、水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流工程によって共加水分解して中間体を製造する工程。
工程(d):工程(c)によって製造された中間体にエポキシ樹脂(A)を共存させて脱水縮合反応する工程。
【0072】
ここで、「水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流工程によって共加水分解して中間体を製造する工程」と「脱水縮合反応する工程」について説明する。
【0073】
「水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流工程によって共加水分解して中間体を製造する工程」とは、共加水分解のために配合した水や溶媒、及び、反応中に生じる、アルコキシシラン化合物由来の水や溶媒を、反応溶液に戻しながら反応を行う工程である。反応様式は特に限定されず、回分式、半回分式、或いは連続式等の各種反応様式の1種又は2種以上の組み合わせにより実施することが可能である。具体例としては、例えば、反応容器上部に冷却管を取り付け、生じた水や溶媒をリフラックスさせながら反応を行う、或いは、密閉した容器内で反応溶液を攪拌及び/又は循環させながら反応を行う、等の方法が挙げられる。
【0074】
一方、「脱水縮合反応する工程」とは、添加した水や溶媒、及び、上記「水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流工程」で生じた水や溶媒を、除去しながら縮合反応を行う工程である。例えば、ロータリーエバポレータ、留出管が備えられた竪型撹拌槽、表面更新型撹拌槽、薄膜蒸発装置、表面更新型二軸混練器、二軸横型撹拌器、濡れ壁式反応器、自由落下型の多孔板型反応器、支持体に沿わせて化合物を落下させながら揮発成分を留去させる反応器、等の装置の1種又は2種以上を組み合わせて行うことができる。
【0075】
本発明の変性樹脂組成物は上記[製造法1]及び[製造法2]のいずれの方法によっても製造することができる。本発明の変性樹脂組成物を製造する際のアルコキシシラン化合物の反応方法については特に限定されず、初期に一括転化して反応させることも可能であり、また、逐次、或いは、連続的に反応系に添加して反応させることも可能である。
【0076】
また、エポキシ樹脂(A)は、[製造法1]及び[製造法2]のいずれの場合において、一度に添加しても、分割して逐次に添加することも可能である。
【0077】
また、[製造法1]に従う場合においては、工程(a)、工程(b)を連続して行うことも、工程(a)で得られた反応混合物を分離又は回収した後、工程(b)を行うこともできる。
【0078】
一方、[製造法2]に従う場合においては、工程(c)、工程(d)を連続して行うことも、工程(c)で得られた反応混合物を回収した後、工程(d)を行うこともできる。
【0079】
ここで、[製造法1]及び[製造法2]において用いられるエポキシ樹脂(A)及びアルコキシシラン化合物としては、上記で列挙されたエポキシ樹脂(A)及びアルコキシシラン化合物と同様なものが挙げられる。
【0080】
また、[製造法1]及び[製造法2]におけるアルコキシシラン化合物の混合指標α〜γの好適な範囲については上記と同様である。
【0081】
本発明の[製造法1]又は[製造法2]において、水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流工程によって共加水分解して中間体を製造する工程終了時点における中間体の縮合率は特に限定はないが、その後の脱水縮合工程を経ても、製造した樹脂組成物中にはシリコーン由来のOH基が多く残留することになり、残留OH基が保存中に縮合することによって樹脂組成物の顕著な増粘やゲル化を引き起こし、保存安定性が悪化する場合があることから70%以上であることが好ましく、78%以上であることがより好ましく、80%以上が更に好ましく、83%以上が特に好ましい。
【0082】
なお、本発明における共加水分解して中間体を製造する工程終了時点における中間体の縮合率は、一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中に含まれる(OR)基のモル数(R)に対する、変性樹脂組成物中に存在するシリコーン成分中の(OR)基のモル数(S)を用いて、下記式(6)で表されるモル分率として示される。
中間体の縮合率(%)=[(R−S)/R]×100 ・・・(6)
【0083】
本発明の変性樹脂組成物の製造方法において、アルコキシシラン化合物の縮合率は、変性樹脂組成物の保存安定性、すなわち、保存中の樹脂の粘度を抑制し、取り扱い性を高める観点から、80%以上であることが好ましく、82%以上であることがより好ましく、85%以上であることが更に好ましく、88%以上であることが特に好ましい。
【0084】
なお、本発明のアルコキシシラン化合物の縮合率は、一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中に含まれる(OR)基のモル数(U)に対する、変性樹脂組成物中に存在するシリコーン成分中の(OR)基のモル数(V)を用いて、下記式(5)で表されるモル分率として示される。
アルコキシシラン化合物の縮合率(%)=[(U−V)/U]×100 ・・・(5)
【0085】
本発明の変性樹脂組成物の製造方法においては、得られる変性樹脂組成物中の残留アルコキシ基量を5%以下とする。残留アルコキシ基量が5%を超える場合には、組成物を硬化して得られる硬化物のサーマルサイクル時の耐冷熱衝撃性や、接着性が不十分となる場合がある。得られる変性樹脂組成物中の残留アルコキシ基量としては、3%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.5%以下が更に好ましく、全く含まれないことが特に好ましい。
【0086】
本発明の工程(a)又は工程(c)においては、アルコキシシラン化合物を加水分解させるために、反応系中に水を共存させる。水の添加は、アルコキシシラン化合物の加水分解が主たる目的である。水を添加するタイミングは、特に限定されず、共加水分解して中間体を製造する工程終了時点までの間に添加すればよく、反応開始初期に一括添加する方法、反応中に逐次点する方法、或いは、反応中に連続的に添加する方法のいずれの方法を用いてもよい。これらの中でも、反応初期に一括添加する方法が好ましく用いられる。
【0087】
ここで、添加する水の量について説明する。添加する水の量(モル数)と、上記式(1)における(OR)の量(モル数)の比率は、下記式(7)で表される混合指標εと定義する。
混合指標ε=(εw)/(εs) ・・・(7)
(ここで、式(7)中、εwは水の添加量(mol数)、一方、εsは一般式(1)における(OR)の量(mol数)をそれぞれ示す。)
【0088】
本発明において混合指標εは、0.1以上5以下の範囲が好ましく、0.2以上3以下の範囲がより好ましく、0.3以上1.5以下の範囲が更に好ましい。混合指標εが0.1未満であると、加水分解反応が進行しない場合があり、5を超えると、変性樹脂組成物の保存安定性が低下する場合がある。
【0089】
上述した工程(a)又は工程(c)は、無溶媒で行うことも、或いは、溶媒中で行うことも可能である。溶媒を用いる場合、エポキシ樹脂とアルコキシシラン化合物とを溶解可能であり、これらに対して非活性である有機溶媒であれば、公知のものを使用できる。
【0090】
用いられる溶媒としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アニソール等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン等の芳香族水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上の混合物として用いることが可能である。これらの中でも、反応中のエポキシ基の開環を抑制する観点から、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒が好ましく、エーテル系溶媒を50質量%以上含む溶媒がより好ましく、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の混合溶媒が更に好ましく、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランが特に好ましい。
【0091】
溶媒の添加量は、工程(a)の場合には、水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流工程によって共加水分解して中間体を製造する工程の終了時点までに添加されるエポキシ樹脂(A)とアルコキシシラン化合物の合計質量、一方、工程(c)の場合には、水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流工程によって共加水分解して中間体を製造する工程の終了時点までに添加されるアルコキシシラン化合物の合計質量に対して、0.01〜20倍量が好ましく、0.02〜15倍量がより好ましく、0.03〜10倍量が更に好ましい。溶媒の添加量により、本発明の樹脂組成物の分子量を制御できるため、溶媒の添加量を上記範囲とすることにより、適正な分子量、ひいては適性粘度の樹脂組成物が得られる傾向にある。
【0092】
工程(a)又は工程(c)における反応温度は、通常0℃以上200℃以下の範囲である。0℃未満であると、水が凝固する場合がある。一方、200℃を超えると、樹脂組成物が着色する場合がある。反応速度を高め、エポキシ基の開環等、樹脂の変性を抑制する観点から、反応温度は、20℃以上150℃以下の範囲が好ましく、40℃以上120℃以下の範囲がより好ましく、50℃以上100℃以下の範囲が更に好ましい。反応温度は、上記の範囲内であれば一定である必要は無く、反応途中において変化させてもよい。
【0093】
工程(a)又は工程(c)の反応時間については特に限定は無いが、上記式(1)における(OR)の反応率を向上させると共に、樹脂の変性を抑制する観点から、0.1時間以上100時間未満の範囲が好ましく、1時間以上80時間未満の範囲がより好ましく、3時間以上60時間未満の範囲が更に好ましく、5時間以上50時間未満の範囲が特に好ましい。
【0094】
一方、工程(b)又は工程(d)の反応温度は、通常0℃以上200℃以下の範囲である。0℃未満であると、反応速度が低下して反応時間が長大となる場合があり、200℃を超えると、樹脂組成物が着色する場合がある。反応速度を高め、エポキシ基の開環等、樹脂の変性を抑制する観点から、反応温度は、20℃以上150℃以下の範囲が好ましく、40℃以上120℃以下の範囲がより好ましく、50℃以上100℃以下の範囲が更に好ましい。反応温度は、上記の範囲内であれば一定である必要は無く、反応初期や反応途中において変化させてもよい。
【0095】
工程(b)又は工程(d)の反応時間については特に限定は無いが、反応率を向上させると共に、樹脂の変性を抑制する観点から、0.1時間以上100時間未満の範囲が好ましく、0.5時間以上80時間未満の範囲がより好ましく、1時間以上50時間未満の範囲が更に好ましく、3時間以上50時間未満の範囲が特に好ましい。
【0096】
本発明の変性樹脂組成物は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、炭酸ガス又は低級飽和炭化水素等の不活性ガスや空気中で製造することができる。これらのガスの中でも、樹脂の変性を抑制する観点から、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、炭酸ガス又は低級飽和炭化水素等の不活性ガスが好ましく、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、炭酸ガスがより好ましく、窒素、ヘリウムが更に好ましく、窒素が特に好ましい。
【0097】
本発明の変性樹脂組成物を製造する工程(a)〜工程(d)は、上記ガスの雰囲気下、上記ガスの流通下、減圧下、加圧下又はこれらの組み合わせで行うことができる。なお、圧力は、一定である必要は無く、反応途中において変化させてもよい。
【0098】
これらの中でも、工程(a)及び工程(c)は、共加水分解のために配合した水や溶媒、及び、反応中に生じるアルコキシシラン化合物由来の水や溶媒を、工業的に容易に反応溶液に戻しながら反応を行う必要があるため、上記ガスの大気圧雰囲気下及び/又は加圧下で行われることが好ましい。
【0099】
一方、工程(b)及び工程(d)は、工程(a)又は工程(c)で添加した水や溶媒、及び、上記「水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流工程」で生じた水や溶媒を、除去しながら縮合反応を行う必要があるため、不活性ガス流通下及び/又は減圧下で行うことが好ましい。
【0100】
本発明においては、上述した(A)エポキシ樹脂とアルコキシシラン化合物との共加水分解の際に、加水分解縮合触媒を加えて行ってもよい。
【0101】
加水分解縮合触媒とは、従来公知の加水分解縮合反応を促進させるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、ヒ素、セリウム、ホウ素、カドミウム、マンガン、ビスマス等)、有機金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、ヒ素、セリウム、ホウ素、カドミウム、マンガン、ビスマス等の有機酸化物、有機酸塩、有機ハロゲン化物、アルコキシド等)、無機塩基(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、有機塩基(アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム等)等が挙げられる。
【0102】
上記有機金属の中でも、有機錫が好ましい。有機錫とは、錫原子に少なくとも一つの有機基が結合しているものを指し、構造としては、モノ有機錫、ジ有機錫、トリ有機錫、テトラ有機錫等が挙げられる。有機錫としては、例えば、四塩化錫、モノブチル錫トリクロライド、モノブチル錫オキサイド、モノオクチル錫トリクロライド、テトラn−オクチルチン、テトラn−ブチルチン、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジバーサテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキシラウレート、ジブチル錫ステアレート、ジブチル錫ジオレート、ジブチル錫・ケイ素エチル反応物、ジブチル錫塩とシリケートの化合物、ジオクチル錫塩とシリケートの化合物、ジブチル錫ビス(アセチルアセトネート)、ジブチル錫ビス(エチルマレート)、ジブチル錫ビス(ブチルマレート)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレート)、ジブチル錫ビス(ベンジルマレート)、ジブチル錫ビス(ステアリルマレート)、ジブチル錫ビス(オレイルマレート)、ジブチル錫マレート、ジブチル錫ビス(O−フェニルフェノキサイド)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルメルカプトアセテート)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルメルカプトプロピオネート)、ジブチル錫ビス(イソノニル3−メルカプトプロピオネート)、ジブチル錫ビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチル錫ビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジオクチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジドデシルメルカプト、ジオクチル錫バーサテート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ビス(エチルマレート)、ジオクチル錫ビス(オクチルマレート)、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫ビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジオクチル錫ビス(2−エチルヘキシルメルカプトアセテート)、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ジエトキサイド、ジブチル錫ジブトキサイド、ジオクチル錫ジメトキサイド、ジオクチル錫ジエトキサイド、ジオクチル錫ジブトキサイド、オクチル酸錫、ステアリン酸錫等が挙げられる。
【0103】
また、上記有機金属の中でも、配位子が遊離した場合にアルカリ性を示す、アルカリ系有機金属が好適である。加水分解縮合触媒としてアルカリ系有機金属を用いることにより、本発明の変性樹脂組成物の保存安定性が良好となる傾向にある。また、アルカリ系有機金属を用いることにより、縮合反応の進行が速やかになる傾向にあるため、中間体の縮合率が60%以上の樹脂組成物を得る場合には、非常に有用である。
【0104】
アルカリ系有機金属の中でも、アルカリ系有機錫が好ましく、特に、アルコキシド系有機錫が好ましい。アルコキシド系有機錫としては、例えば、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ジエトキサイド、ジブチル錫ジブトキサイド、ジオクチル錫ジメトキサイド、ジオクチル錫ジエトキサイド、ジオクチル錫ジブトキサイド等が挙げられる。
【0105】
これに対し、配位子が遊離した場合に酸性を示す酸系有機金属を加水分解縮合触媒として用いると、加水分解反応は速やかに行われるが、縮合反応が進みにくくなる傾向にあるため、実用的には好ましくない。
【0106】
上述した加水分解縮合触媒は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、有機酸錫とアルカリ系有機錫を組み合わせて使用したり、錫等の有機酸塩で反応させた後に、無機塩基で処理したりしてもよい。この場合の無機塩基としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等の多価カチオンの水酸化物が好ましい。
【0107】
上述した加水分解縮合触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、好ましい添加量は、本発明の変性樹脂組成物を製造するために用いるエポキシ樹脂及びアルコキシシラン化合物の合計重量の0.0001質量%以上10質量%以下の範囲が好ましく、0.01質量%以上5質量%以下の範囲がより好ましい。用いる触媒の添加量が0.0001質量%未満の場合には、変性樹脂組成物の組成によっては加水分解縮合の促進効果が得られ難くなる場合がある。一方、10質量%を超えると、環状エーテル基の開環が促進されたり、保存安定性の悪化を招来したりする場合がある。
【0108】
本発明の変性樹脂組成物は、良好な保存安定性を有すると共に、優れた透明性、耐熱黄変性、耐光性、サーマルサイクルにおける耐冷熱衝撃性を有する硬化物を形成することが可能な変性樹脂組成物であり、熱又はエネルギー線により硬化物を形成することから、発光素子封止材、光学用レンズ、感光性樹脂、蛍光樹脂、導電性樹脂、絶縁性樹脂等の原料樹脂組成物として好適に用いることができる。
【0109】
また、本発明の変性樹脂組成物には、オキセタン化合物、蛍光体、導電性金属粉、絶縁性粉末、硬化剤、硬化促進剤、光酸発生剤、更には、必要に応じてカチオン重合触媒、変性剤、ビニルエーテル化合物、エポキシ樹脂(A)以外の有機樹脂、シランカップリング剤を配合することも可能である。
【0110】
本発明の変性樹脂組成物に、更にオキセタン化合物を加えてなる樹脂組成物について説明する。
【0111】
オキセタン化合物は、オキセタン環を含む化合物であれば、特に限定されず、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2,3−エポキシプロポキシメチル)オキセタン等が挙げられる。これらのオキセタン化合物を配合することにより、重合速度が大きくなる傾向にあり、また、組成物の粘度が低下する傾向にある。
【0112】
オキセタン化合物の代表的な例を以下に示す。
【化6】

【0113】
上記オキセタン化合物の配合量は、特に限定されるものではなく、好ましくは変性樹脂組成物:オキセタン化合物=20:80〜95:5(合計で100)の質量比で配合される。より好ましくは40:60〜80:20である。樹脂組成物の配合比率が20未満であると、硬化反応が正常に進まない場合があり、95を超えると、硬化物の接着性に劣る場合がある。
【0114】
また、樹脂組成物とオキセタン化合物との相溶性を向上させるために、例えば、ビスフェノール骨格を持つエポキシ樹脂を原料とする樹脂組成物に対しては、芳香環を持つオキセタン化合物を組み合わせる等、適切な組み合わせを選択することは、通常行われることである。
【0115】
本発明の変性樹脂組成物に、更に蛍光体を加えてなる蛍光性樹脂組成物について説明する。
【0116】
本発明における蛍光体とは、蛍光を発する物質、つまり、電子線、X線、紫外線、電界等のエネルギーを吸収して、吸収したエネルギーの一部を比較的効率よく可視光線として放出(発光)する物質であれば特に限定されず、無機系、有機系を問わず採用することができる。中でも、一般的に優れた発光性を示す、無機系蛍光体が好ましい。
【0117】
本発明において用いることができる無機系蛍光体の大きさは、特に限定されるものではないが、通常、粒径1〜数十μmの粉末が用いられる。また、無機系蛍光体の性能を発現させるため、母体と呼ばれる化合物Aの中に、付活剤(発光中心)と呼ばれる元素Bを導入したものが、一般的に用いられ、通常は「母体A:付活剤B」と表記される。
【0118】
特に、蛍光性樹脂組成物を発光ダイオードの封止材として用いる場合には、後述の理由から、セリウムで付活されたアルミン酸イットリウム蛍光体(YAG:Ce蛍光体)の使用が好ましく、蓄光材料として用いる場合には、蓄光性蛍光体の使用が好ましい。これらは、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0119】
蛍光体の配合量は、質量比として、好ましくは、樹脂組成物:蛍光体=30:70〜95:5、より好ましくは、50:50〜80:20(合計で100)である。蛍光体の配合量が、樹脂組成物:蛍光体=30:70よりも多いと、蛍光性樹脂組成物としての流動性が悪化する場合があり、95:5よりも少ないと、蛍光体としての機能が不十分となる場合がある。
【0120】
上記母体Aと付活剤Bは、特に限定されるものではないが、例えば、母体Aとしては、酸化物蛍光体や窒化物蛍光体が挙げられる。また付活剤Bとしては、例えば、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)等の希土類元素が挙げられる。
【0121】
上述の酸化物蛍光体としては、例えば、母体Aがアルミン酸イットリウム(Y3Al5O12:以下、YAGという)で、付活剤Bがセリウム(Ce)の「YAG:Ce蛍光体」が良く知られている。これに青色光照射(460nm付近)を行うと、効率的に黄色発光が起こる。この蛍光体は、「Y3Al5O12」のYの一部を他のGdやTb等で置換したり、Alの一部をGa等で置換して、母体Aの構造を変化させることにより、発光ピーク位置を長波長側、又は短波長側にシフトさせることができるため、非常に有用である。
【0122】
つまり「YAG:Ce蛍光体」とは、前記母体AがYAG、又は、Yの一部を他のGdやTb等で置換したり、Alの一部をGa等で置換したりして、母体Aの構造を変化させたもので、付活剤BがCeの蛍光体であれば、特に限定されない。その具体例としては、例えば、「Y3Al5O12:Ce3+」や「(Y3,Gd0.9)Al5O12:Ce3+」等が挙げられる。
【0123】
その他、酸化物蛍光体の例としては、母体Aが、珪酸ストロンチウム・バリウム(Sr,Ba)2SiO4で、付活剤Bとしてユーロピウム(Eu)を導入した、「(Sr,Ba)2SiO4:Eu蛍光体」が知られている。この系は、SrとBaの組成比を変えることで、緑色〜橙色まで発光色を調整することができる。
【0124】
上述した窒化物蛍光体としては、例えば、以下のようなものが例示される。
【0125】
α−サイアロン蛍光体:母体Aは、α型窒化ケイ素結晶に、Ca等の金属イオンと、アルミニウムと酸素とが固溶した結晶で、「(Mp(Si,Al)12(O,N)16」で表される。ここで、Mは金属イオン、pは固溶量を示す。具体的には「Cap(Si,Al)12(O,N)16:Eu」等が挙げられる。
【0126】
β−サイアロン蛍光体:母体Aは、β型窒化ケイ素結晶に、アルミニウムと酸素とが固溶した「Si6−qALqOqN8−q」の組成で表される。ここで、qは固溶量を示す。具体的には「Si6−qALqOqN8−q:Eu」等が挙げられる。
【0127】
CaAlSiN3蛍光体:母体Aは、窒化カルシウムと窒化アルミニウムと窒化ケイ素を1800℃の高温で反応させて得られる窒化物結晶であり、具体的には「CaAlSiN3:Eu」等が挙げられる。
【0128】
無機系蛍光体の具体例としては、例えば、赤色系の発光色を有するものとしては、「6MgO・As2O5:Mn4+、Y(PV)O4:Eu」、「CaLa0.1Eu0.9Ga3O7」、「BaY0.9Sm0.1Ga3O7」、「Ca(Y0.5Eu0.5)(Ga0.5In0.5)3O7」、「Y3O3:Eu、YVO4:Eu」、「Y2O2:Eu」、「3.5MgO・0.5MgF2GeO2:Mn4+」、「(Y・Cd)BO2:Eu」等が挙げられる。
【0129】
青色系の発光色を有するものとしては、例えば、「(Ba,Ca,Mg)5(PO4)3Cl:Eu2+」、「(Ba,Mg)2Al16O27:Eu2+」、「Ba3MgSi2O8:Eu2+」、「BaMg2Al16O27:Eu2+」、「(Sr,Ca)10(PO4)6Cl2:Eu2+」、「(Sr,Ca)10(PO4)6Cl2・nB2O3:Eu2+」、「Sr10(PO4)6Cl2:Eu2+」、「(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Eu2+」、「Sr2P2O7:Eu」、「Sr5(PO4)3Cl:Eu」、「(Sr,Ca,Ba)3(PO4)6Cl:Eu」、「SrO・P2O5・B2O5:Eu」、「(BaCa)5(PO4)3Cl:Eu」、「SrLa0.95Tm0.05Ga3O7」、「ZnS:Ag」、「GaWO4」、「Y2SiO6:Ce」、「ZnS:Ag,Ga,Cl」、「Ca2B4OCl:Eu2+」、「BaMgAl4O3:Eu2+」、「(M1,Eu)10(PO4)6Cl2(M1は、Mg,Ca,Sr,及びBaからなる群から選択される少なくとも1種の元素)」等が挙げられる。
【0130】
緑色系の発光色を有するものとしては、例えば、「Y3Al5O12:Ce3+(YAG)」、「Y2SiO5:Ce3+,Tb3+」、「Sr2Si3O8・2SrCl2:Eu」、「BaMg2Al16O27:Eu2+,Mn2+」、「ZnSiO4:Mn」、「Zn2SiO4:Mn」、「LaPO4:Tb」、「SrAl2O4:Eu」、「SrLa0.2Tb0.8Ga3O7」、「CaY0.9Pr0.1Ga3O7」、「ZnGd0.8Ho0.2Ga3O7」、「SrLa0.6Tb0.4Al3O7、ZnS:Cu,Al」、「(Zn,Cd)S:Cu,Al」、「ZnS:Cu,Au,Al」、「Zn2SiO4:Mn」、「ZnSiO4:Mn」、「ZnS:Ag,Cu」、「(Zn・Cd)S:Cu」、「ZnS:Cu」、「GdOS:Tb」、「LaOS:Tb」、「YSiO4:Ce・Tb」、「ZnGeO4:Mn」、「GeMgAlO:Tb」、「SrGaS:Eu2+」、「ZnS:Cu・Co」、「MgO・nB2O3:Ge,Tb」、「LaOBr:Tb,Tm」、「La2O2S:Tb」等が挙げられる。
【0131】
また、白色系の発光色を有する「YVO4:Dy」や、黄色系の発光色を有する「CaLu0.5Dy0.5Ga3O7」等も挙げられる。
【0132】
上記有機系蛍光体の具体例としては、例えば、青色系の発光色を有する、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン(Bis−MSB)、トランス−4,4’−ジフェニルスチルベン(DPS)等のスチルベン系色素、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン(クマリン4)等のクマリン系色素等が挙げられる。
【0133】
黄色系〜緑色系の蛍光色を有するものとしては、市販品として、例えば、Brilliantsulfoflavine FF、Basic yellow HG、SINLOIHI COLOR FZ−5005(SINLOIHI社製)等が挙げられる。
【0134】
黄色系〜赤色系の蛍光色を有するものとしては、市販品として、例えば、Eosine、Rhodamine6G、RhodamineB等が挙げられる。
【0135】
一般的な蛍光体は、照射励起源である光や電子線等を遮断すると、発光は直ちに減衰して消滅する。ところが例外として、励起源遮断後、数秒〜数十時間もの残光性を示す蛍光体があり、これを蓄光性蛍光体という。この性質を示すものであれば、その種類は特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、「CaS:Eu,Tm」、「CaS:Bi」、「CaAl2O4:Eu,Nd」、「CaSrS:Bi」、「Sr2MgSi2O7:Eu,Dy」、「Sr4Al14O25:Eu,Dy」、「SrAl2O4:Eu,Dy」、「SrAl2O4:Eu」、「ZnS:Cu」、「ZnS:Cu,Co」、「Y2O2S:Eu,Mg,Ti」、「CaS:Eu,Tm」等が挙げられ、中でも、長残光性を示す「Sr2MgSi2O7:Eu,Dy」、「Sr4Al14O25:Eu,Dy」、「SrAl2O4:Eu,Dy」、「SrAl2O4:Eu」が好ましい。
【0136】
本発明の蛍光性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、変性樹脂組成物と蛍光体を、同時あるいは別々に、必要に応じて加熱しながら、後述の混合装置で、攪拌、混合、分散させる方法や、前記方法に引き続き、更に必要に応じ、減圧下で脱泡処理を行う方法等が例示できる。また後述の硬化剤、硬化促進剤、重合開始剤、添加剤等は、上記のいずれかの工程で、適宜、添加してもよい。
【0137】
上記混合装置は、特に限定されるものではないが、例えば、ライカイ機、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ラインミキサー、ホモジナイザー、ホモディスパー等が挙げられる。
【0138】
本発明の変性樹脂組成物に、更に導電性金属粉を加えてなる導電性樹脂組成物について説明する。
【0139】
本発明において用いることができる導電性金属粉は、銀を含む金属粉であれば、特に限定されず、銀粉のみならず、銀を表面に付着あるいは被覆させた金属粉でもよい。ここでいう金属粉とは、例えば、アルミニウム、ケイ素、ホウ素、炭素、マグネシウム、ニッケル、銅、グラファイト、金、パラジウムの金属元素、及び、その金属酸化物や金属窒化物の粉等が挙げられる。上記の中でも、導電性の観点から、アルミニウム、ニッケル、金、パラジウムが好ましい。
【0140】
上記金属酸化物、及び金属窒化物の具体例としては、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、溶融シリカ、結晶シリカ、マグネシウムシリケート、アルミニウムとケイ素の複合金属の酸化物、アルミニウムとマグネシウムの複合金属の酸化物等が挙げられる。
【0141】
導電性金属粉は、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン部分とポリエチレンオキサイド部分とを有する共重合体等の高分子で、表面コーティングしたものでもよい。これらの高分子でコーティングすることにより、樹脂組成物への分散性が良好となる傾向にある。
【0142】
銀は低い体積抵抗率を持つ元素であることや、金属粉の導電性は、その核となる担体よりもその表面状態に大きく依存すること等から、導電性金属粉の粒子全体が銀でなくとも、その表面に銀を付着あるいは被覆させた金属粉でも使用することができる。
【0143】
上記銀粉の形状は、特に限定されず、例えば、鱗片状、球状、樹状等が挙げられる。
【0144】
鱗片状の銀粉は、銀粉の接点が多く導電性に優れ、その配向性から導電性樹脂組成物にした時に、チキソ性を示すことから作業性に優れる傾向にある。その反面、精密な部材に使用する際には、その配向性に起因する電気的接合不良が問題になる場合がある。また、その大きさは、特に限定されないが、レーザー回折式粒度分布測定装置で求めた平均粒径として、好ましくは50μm以下、より好ましくは1〜20μmである。かかる平均粒径とすることで、精密な電子部品類等に用いた場合であっても、電気的接合不良が起きるおそれが低減されるため好ましい。
【0145】
球状の銀粉は、配向性が殆ど無いことから、電気的接合には問題が生じにくいものの、粒子同士が点接触であるために、導電性が劣る傾向にある。また、その大きさは、特に限定されないが、上記平均粒径として、好ましくは20μm以下、より好ましくは5μm以下である。平均粒径が20μmを超えると、導電性が低くなる傾向にある。更に、鱗片状の銀粉と併用し、その隙間を埋めることで導電性を図る目的にも使用する場合は、5μm以下のものを選択するのが好ましい。
【0146】
樹状の銀粉は、比表面積が大きく、導電性に優れるものの、その特異的な形状から、品質が不安定になる場合がある。その大きさは、特に限定されないが、上記平均粒径として、好ましくは30μm以下、より好ましくは5μm以下である。かかる平均粒径とすることで、ハンドリングに優れる傾向にあるため好ましい。
【0147】
本発明では、目的や用途に応じて、これらの性質を鑑み、異なる形状の銀粉を併用することが好ましい。
【0148】
また、導電性金属粉の、樹脂組成物に対する好ましい配合量は、60〜85質量%、より好ましくは70〜80質量%である。配合量を60質量%以上とすることで、導電性が更に優れる傾向にあり、85質量%以下とすることで、ブリード現象を防止できる傾向にある。
【0149】
本発明の変性樹脂組成物に、更に絶縁性粉末を加えてなる絶縁性樹脂組成物について説明する。
【0150】
本発明において用いることができる絶縁性粉末の具体例としては、カーボン、炭化硼素、窒化硼素、窒化アルミニウム、窒化チタン等の非酸化物セラミック粉末;ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン等の酸化物の粉末;酸化ケイ素、窒化ケイ素、溶融シリカ、結晶シリカ、その他珪素を含有するフィラー;マグネシウムシリケート、アルミニウムとケイ素の複合金属の酸化物、アルミニウムとマグネシウムの複合金属の酸化物;白雲母、金雲母、マイカナイト、ステアタイト、アルミナ、ソーダガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラス、木材等の粉末;シリコンゴム、テフロン(登録商標)等の樹脂粉末等が挙げられ、これらは単独又は複数を混合して使用することができる。上記の中でも、絶縁性と入手のし易さの観点から、酸化ケイ素、窒化ケイ素、溶融シリカ、結晶シリカ、その他珪素を含有するフィラーが好ましい。
【0151】
絶縁性粉末は、シラン化合物や、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン部分とポリエチレンオキサイド部分とを有する共重合体等の高分子で表面コーティングしたものでもよい。これらの高分子でコーティングすることにより、樹脂組成物への分散性が良好となる傾向にある。
【0152】
また絶縁性粉末の、樹脂組成物に対する好ましい配合量は、5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。配合量を5質量%以上とすることで、絶縁性が更に優れる傾向にあり、50質量%以下とすることで、応力緩和効果により、半導体装置の信頼性が向上する傾向にある。
【0153】
本発明の変性樹脂組成物には、エポキシ樹脂(A)以外に、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレア樹脂、イミド樹脂等の有機樹脂を配合することも可能である。
【0154】
本発明の変性樹脂組成物には、更に硬化剤及び/又は硬化促進剤を加えて硬化性樹脂組成物とすることができる。
【0155】
硬化剤とは、樹脂組成物を硬化させるために用いられる物質であり、特に限定されるものではない。硬化剤としては、例えば、酸無水物系化合物、アミン系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物等が使用でき、特に、芳香族酸無水物、環状脂肪族酸無水物、脂肪族酸無水物等の酸無水物系化合物が好ましく、カルボン酸無水物がより好ましい。
【0156】
また、酸無水物系化合物には脂環式酸無水物が含まれ、カルボン酸無水物の中でも脂環式カルボン酸無水物が好ましい。これらの硬化物は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0157】
硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、テトラエチレンペンタミン、ジメチルベンジルアミン、ケチミン化合物、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、ビスフェノール類、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒドとの重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物との重合物、フェノール類と芳香族ジメチロールとの重縮合物、又はビスメトキシメチルビフェニルとナフトール類若しくはフェノール類との縮合物等、ビフェノール類及びこれらの変性物、イミダゾール、3フッ化硼素−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられる。
【0158】
脂環式カルボン酸無水物の具体例としては、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、「4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30」、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、「メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物/ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物」等が挙げられる。
【0159】
これらの硬化剤の中でも、本発明の変性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐光性が高まる傾向にあるため、脂環式酸無水物類、1分子中に2個以上の酸無水物含有官能基を置換基として有するシリコーン類がより好ましく、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物が更に好ましい。これらの硬化剤は1種又は2種以上の混合物として用いることが可能である。
【0160】
硬化剤の使用量は、本発明によって得られる変性樹脂組成物100質量部に対して1質量部以上200質量部以下用いることが好ましく、2質量部以上100質量部以下用いることがより好ましい。硬化剤の使用量が変性樹脂組成物100質量部に対して1質量部未満であると硬化速度が低下する場合があり、一方、200質量部を超えると硬化物としての耐湿性が悪化する場合がある。
【0161】
用いられる硬化促進剤としては、イミダゾール化合物、4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アミン化合物、アルミニウムキレート化合物、有機ホスフィン化合物、金属カルボン酸塩やアセチルアセトンキレート化合物等が挙げられる。これらの硬化促進剤は1種又は2種以上の混合物として用いることが可能である。
【0162】
これらの化合物の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノールなどのアミン化合物及びその塩、テトラメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミドなどの4級アンモニウム塩、アルミニウムキレート、テトラ−n−ブチルホスホニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−0,0−ジエチルホスホロジチオエートなどの有機ホスフィン化合物、クロム(III)トリカルボキシレート、オクチル酸スズ、クロムアセチルアセトナート等の金属カルボン酸塩やアセチルアセトンキレート化合物が例示できる。また、市販品としてはサンアプロ社よりU−CAT SA1、U−CAT 2026、U−CAT 18X等が例示できる。これらの中で着色の少ない硬化物を与えることから、イミダゾール化合物、4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、有機ホスフィン化合物等が好ましく用いられる。
【0163】
これら硬化促進剤の配合量は、変性樹脂組成物100質量部に対して硬化速度を高める上で0.001質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることが特に好ましい。一方、対湿性の観点から10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることが更に好ましく、1質量部以下であることが特に好ましい。
【0164】
また、本発明によって得られる変性樹脂組成物は、従来公知のカチオン重合触媒を配合することにより硬化性組成物とすることも可能である。
【0165】
用いることができるカチオン重合触媒としては、BF・アミン錯体、PF、BF、AsF、SbFなどに代表されるルイス酸系触媒、ホスホニウム塩や4級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ベンジルピリジニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミドに代表される熱硬化性カチオン重合触媒、ジアリールヨードニウムヘキサフロオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモン酸ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム等に代表される紫外硬化性カチオン重合触媒等が挙げられる。
【0166】
これらの内、ガラス転移温度が高く半田耐熱性や密着性に優れた着色の少ない透明な硬化物が得られることから熱硬化性カチオン重合触媒が好ましく用いられる。このような熱硬化性カチオン重合触媒としては、例えば、スルホニウム塩系のカチオン重合開始剤であるSI−100L、SI−60L(以上、三新化学工業製)、CP−66、CP−77(以上、旭電化工業製)等を挙げることができる。
【0167】
これらカチオン重合触媒の配合量は、通常、変性樹脂組成物100質量部に対して硬化速度を高める上で0.001質量部以上であることが好ましく、0.005質量部以上であることがより好ましく、0.01質量部以上であることが更に好ましい。一方、対湿性の観点から10質量部以下の範囲であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることが更に好ましく、0.2質量部以下であることが特に好ましい。
【0168】
本発明の変性樹脂組成物には、更に光酸発生剤を加えて、感光性樹脂組成物トすることもできる。本発明において用いることができる光酸発生剤としては、光を照射すると酸を放出し、重合を開始させる化合物であれば、特に限定されるものではないが、中でもオニウム塩が好ましい。具体例としては、例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩等が挙げられ、これらはカチオン部分がそれぞれ芳香族ジアゾニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族スルホニウムであり、アニオン部分がBF4、PF6、SbF6、[BX4](ここで、Xは少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基)等により構成されたオニウム塩である。光酸発生剤の代表的な例を以下に示す。
【化7】

【0169】
より具体的な例としては、四フッ化ホウ素のアリールジアゾニウム塩、六フッ化リンのトリアリールスルホニウム塩、六フッ化リンのジアリールヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのトリアリールホスホニウム塩、六フッ化アンチモンのジアリールヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリアリールスルホニウム塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジアリールヨードニウム塩、アセチルアセトンアルミニウム塩とオルトニトロベンジルシリルエーテル混合体、フェニルチオピリジウム塩、六フッ化リンアレン−鉄錯体等を挙げることができる。市販品としては、CD−1012(SARTOMER社製)、PCI−019、PCI−021(日本化薬株式会社社製)、オプトマーSP−150、オプトマーSP−170(株式会社ADEKA製)、UVI−6990、UVI−6974(ダウケミカル社製)、CPI−100P、CPI−100A、CPI−100L(サンアプロ株式会社製)、TEPBI−S(株式会社日本触媒製)、Rhodorsil2074(ローディア社製)等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて使用することもできる。上記の中でも、硬化物の着色が少ないという点では、スルホニウム塩とヨードニウム塩が好ましく、更に硬化性も考慮すると、スルホニウム塩が特に好ましい。
【0170】
更に、上記感光性樹脂組成物には、必要に応じてビニルエーテル化合物類を配合することも可能である。これらの化合物としては、例えば、水酸基を含有しないビニルエーテル化合物が挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル等を挙げることができる。
【0171】
また、本発明の変性樹脂組成物には、従来公知のカチオン重合触媒を配合することも可能である。用いることができるカチオン重合触媒としては、BF・アミン錯体、PF、BF、AsF、SbF等に代表されるルイス酸系触媒、ホスホニウム塩や4級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ベンジルピリジニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミドに代表される熱硬化性カチオン重合触媒、ジアリールヨードニウムヘキサフロオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモン酸ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム等に代表される紫外硬化性カチオン重合触媒等が挙げられる。上記の中でも、ガラス転移温度が高く、半田耐熱性や密着性に優れた着色の少ない透明な硬化物が得られる傾向にあるため、熱硬化性カチオン重合触媒が好ましく用いられる。このような熱硬化性カチオン重合触媒の市販品としては、例えば、スルホニウム塩系のカチオン重合開始剤であるSI−100L、SI−60L(以上、三新化学工業製)、CP−66、CP−77(以上、旭電化工業製)等を挙げることができる。
【0172】
本発明により得られる変性樹脂組成物には、硬化物に可撓性を付与し、剥離接着力を向上させる観点から、必要に応じて、変性剤が含有されていてもよい。用いられる変性剤としては、1分子中に2個以上の水酸基を含有するポリオール類が例示でき、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、エリスリトール、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール等の脂肪族系ポリオール類や、ポリカーボネートジオール、末端にシラノール基を有するシリコーン類が好ましく用いられる。これらの変性剤は、1種又は2種以上の混合物として用いることが可能である。
【0173】
本発明の変性樹脂組成物には、密着性等の物性を改善する目的で、各種シランカップリング剤を用いることができる。この場合、変性樹脂組成物中の残留アルコキシ基が5%以下であることが必要である。残留アルコキシ基が5%を超える場合には、組成物を硬化して得られる硬化物のサーマルサイクル時の耐冷熱衝撃性や、接着性が不十分となる。
【0174】
本発明の変性樹脂組成物に適したシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)(3−アミノプロピル)メチルジメトキシシラン、N−[N’−(2−アミノエチル)(2−アミノエチル)](3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、2−(2−アミノエチル)チオエチルトリエトキシシラン、2−(2−アミノエチル)チオエチルメチルジエトキシシラン、3−(N−フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−シクロヘキシルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(N−フェニルアミノメチル)トリメトキシシラン、(N−フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、(N−シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、(N−シクロヘキシルアミノメチル)メチルジエトキシシラン、ピペラジノメチルトリメトキシシラン、ピペラジノメチルトリエトキシシラン、3−ピペラジノプロピルトリメトキシシラン、3−ピペラジノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、メルカプトメチルメチルジメトキシシラン、メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、メチルシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロペンチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。またこれらのシランカップリング剤の部分縮合物を用いることもできる。
【0175】
更に、本発明の変性樹脂組成物には、それらの機能を損なわない範囲で、目的に応じて、上記以外の無機充填剤、着色剤、レベリング剤、滑剤、界面活性剤、酸化防止剤、光安定剤等を適宜添加できる。また、その他、一般に樹脂用の添加剤として使用される可塑剤、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、耐衝撃強化剤、発泡剤、抗菌・防カビ剤、導電性フィラー、防曇剤、架橋剤等を配合することができる。
【0176】
無機充填材としては、例えば、シリカ類(溶融破砕シリカ、結晶破砕シリカ、球状シリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、沈降性シリカ等)、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン等が挙げられる。特に、シリカ類、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム等が好ましく、更に硬化物の物性を考慮すると、シリカ類がより好ましい。これらの無機充填材は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0177】
着色剤としては、着色を目的に使用される物質であれば特に限定されるものではなく、例えば、フタロシアニン、アゾ、ジスアゾ、キナクリドン、アントラキノン、フラバントロン、ペリノン、ペリレン、ジオキサジン、縮合アゾ、アゾメチン系の各種有機系色素、酸化チタン、硫酸鉛、クロムエロー、ジンクエロー、クロムバーミリオン、弁殻、コバルト紫、紺青、群青、カーボンブラック、クロムグリーン、酸化クロム、コバルトグリーン等の無機顔料等が挙げられる。これらの着色剤は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0178】
レベリング剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリレート類からなる分子量4000〜12000のオリゴマー類、エポキシ化大豆脂肪酸、エポキシ化アビエチルアルコール、水添ひまし油、チタン系カップリング剤等が挙げられる。これらのレベリング剤は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0179】
滑剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系滑剤;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸系滑剤;ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビス
ステアロアミド等の高級脂肪酸アミド系滑剤;硬化ひまし油、ブチルステアレート、エチレングリコールモノステアレート、ペンタエリスリトール(モノ−,ジ−,トリ−,又はテトラ−)ステアレート等の高級脂肪酸エステル系滑剤;セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロール等のアルコール系滑剤;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リシノール酸、ナフテン酸等のマグネシウム、カルシウム、カドミウム、バリウム、亜鉛、鉛等の金属塩である金属石鹸類;カルナウバロウ、カンデリラロウ、ミツロウ、モンタンロウ等の天然ワックス類等が挙げられる。これらの滑剤は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0180】
界面活性剤とは、その分子中に溶媒に対して親和性を持たない疎水基と、溶媒に対して親和性を持つ親媒基(通常は親水基)を持つ、両親媒性物質である。界面活性剤の種類については特に限定されるものではなく、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0181】
酸化防止剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、トリフェニルホスフェート、フェニルイソデシルホスファイト等の有機リン系酸化防止剤;ジステアリル−3,3’−チオジプロピネート等の有機イオウ系酸化防止剤;2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0182】
光安定剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリルレート系、ニッケル系、トリアジン系等の紫外線吸収剤や、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0183】
本発明の変性樹脂組成物、又は本発明の変性樹脂組成物に対し、オキセタン化合物、蛍光体、導電性金属粉、絶縁性粉末、硬化剤と硬化促進剤(I)、或いは、光酸発生剤、更には、必要に応じてカチオン重合触媒、変性剤、ビニルエーテル化合物、エポキシ樹脂(A)以外の有機樹脂、シランカップリング剤を配合した硬化性樹脂組成物は、公知の方法により硬化物とすることができる。中でも、加熱によって硬化させる方法、或いは、光を照射することによって硬化させる方法は、エポキシ樹脂の硬化方法として一般的に用いられる方法であり、本発明において好ましい方法として例示できる。加熱により硬化させる際の温度は、用いられるエポキシ樹脂や硬化剤等に依るため特に限定されないが、通常、20〜200℃の範囲である。
【0184】
一方、光を照射することによって硬化させる際に用いられる光としては、紫外線又は可視光が好ましく、紫外線がより好ましい。光の発生源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、UVランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、アルゴンイオンレーザ、ヘリウムカドミウムレーザ、ヘリウムネオンレーザ、クリプトンイオンレーザ、各種半導体レーザ、YAGレーザ、エキシマーレーザー、発光ダイオード、CRT光源、プラズマ光源等の各種光源等が挙げられる。
【0185】
上記の硬化反応は空気中で行う他、必要に応じて、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことも可能である。
【0186】
本発明の変性樹脂組成物は、例えば、a)本発明の変性樹脂組成物、b)本発明の変性樹脂組成物に、更にオキセタン化合物を加えてなる樹脂組成物、c)本発明の変性樹脂組成物に、更に蛍光体を加えてなる蛍光樹脂組成物、或いは、上記のa)〜c)に、更に硬化剤を加えてなる樹脂組成物は、素子やパッケージ材料との密着性に優れ、クラックの発生がなく、長期にわたって輝度の低下が少ない、優れた発光素子封止材、或いは、射出成形が可能で、硬化後において硬質で寸歩安定性に優れ、且つ、耐光性を有する光学用レンズ用を製造するための硬化性樹脂組成物用原料として有用に用いられる。また、上記のa)〜c)に更に硬化剤を加えてなる樹脂組成物に対し、更に硬化促進剤を加えた硬化性樹脂組成物、或いは、上記のa)〜c)に、更に光酸発生剤を加えた感光性樹脂組成物は、上記の発光素子封止材、或いは、光学用レンズを製造するための硬化性樹脂組成物、或いは感光性樹脂組成物として、有用に用いることができる。
【0187】
本発明の変性樹脂組成物を含む硬化性樹脂組成物を用いて発光素子を封止することにより、発光ダイオード等の発光部品を製造することができる。更に、本発明により得られる変性樹脂組成物は、優れた透明性を有する上に、耐熱黄変性、加熱条件下での耐光性、更には耐冷熱衝撃性を有することから、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、CDやDVDのピックアップ用レンズ、自動車ヘッドランプ用レンズ、プロジェクター用レンズなどのレンズ材料、光ファイバー、光導波路、光フィルター、光学用接着剤、光ディスク基板、ディスプレイ基板、反射防止膜などのコーティング材料等、各種光学部材として用いることが可能である。
【0188】
更に、上記の発光ダイオード及び/又は上記の光学用レンズ等は、例えば、液晶ディスプレイ等のバックライト、照明、各種センサー、プリンター、コピー機等の光源、車両用計器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト等の半導体装置として好適に用いることができる。
【0189】
本発明の変性樹脂組成物を含む硬化性樹脂組成物からなる発光素子用封止材を用いて封止された発光素子の発光波長は、赤外から赤色、緑色、青色、紫色、紫外まで幅広く用いることができ、従来の封止材では耐光性が不足して劣化してしまう250nm〜550nmの波長の光まで実用的に用いることができる。これにより、長寿命で、エネルギー効率が高く、色再現性の高い白色発光ダイオードを得ることができる。ここで、発光波長とは、主発光ピーク波長のことをいう。
【0190】
使用される発光素子の具体例としては、例えば、基板上に半導体材料を積層して形成した発光素子を例示することができる。この場合、半導体材料としては、例えば、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaAlN、SiC等が挙げられる。
【0191】
基板としては、例えば、サファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、GaN単結晶等が挙げられる。必要に応じ、基板と半導体材料の間にバッファー層を形成してもよい。これらバッファー層としては、GaN、AlN等が挙げられる。
【0192】
基板上へ半導体材料を積層する方法としては、特に制限はないが、例えば、MOCVD法、HDVPE法、液相成長法等が用いられる。
【0193】
発光素子の構造は、例えば、MIS接合、PN接合、PIN接合を有するホモ接合、ヘテロ接合、ダブルヘテロ構造等が挙げられる。また、単一或いは多重量子井戸構造とすることも可能である。
【0194】
本発明の変性樹脂組成物を含む硬化性樹脂組成物からなる発光素子封止材を用いて発光素子を封止することにより、発光ダイオードを製造することができる。この場合の封止は、発光素子を発光素子封止材のみで封止することもできるが、他の封止材を併用して封止することも可能である。他の封止材を併用する場合、本発明により得られる変性樹脂組成物を用いて得られる発光素子封止材で封止した後、その周囲を他の封止材で封止する、或いは、他の封止材で封止した後、その周囲を本発明により得られる変性樹脂組成物を用いて得られる発光素子封止材で封止することも可能である。他の封止材としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレア樹脂、イミド樹脂、ガラス等が挙げられる。
【0195】
本発明の変性樹脂組成物を用いて得られる発光素子封止材で発光素子を封止する方法としては、例えば、モールド型枠中に発光素子封止材を予め注入し、そこに発光素子が固定されたリードフレーム等を浸漬した後に硬化させる方法、発光素子を挿入した型枠中に発光素子封止材を注入し、硬化する方法等が挙げられる。この際、発光素子封止材を注入する方法としては、ディスペンサーによる注入、トランスファー成形、射出成形等が挙げられる。更にその他の封止方法としては、発光素子封止材を発光素子上へ滴下し、孔版印刷、スクリーン印刷、或いは、マスクを介して塗布し硬化させる方法、低部に発光素子を配置したカップ等に発光素子封止材をディスペンサー等により注入し、硬化させる方法等が挙げられる。
【0196】
本発明の変性樹脂組成物を含む硬化性樹脂組成物は、発光素子をリード端子やパッケージに固定するダイボンド材、発光素子上のパッシベーション膜、パッケージ基板として用いることもできる。封止部分の形状は、例えば、砲弾型のレンズ形状、板状、薄膜状等が挙げられる。
【0197】
本発明の変性樹脂組成物を用いて得られた発光ダイオードは、従来公知の方法で性能の向上を図ることができる。性能を向上させる方法としては、例えば、発光素子背面に光の反射層或いは集光層を設ける方法、補色着色部を底部に形成する方法、主発光ピークより短波長の光を吸収する層を発光素子上に設ける方法、発光素子を封止した後、更に硬質材料でモールディングする方法、発光ダイオードを貫通孔に挿入して固定する方法、発光素子をフリップチップ接続等によってリード部材等と接続して基板方向から光を取り出す方法等が挙げられる。
【0198】
また、本発明の変性樹脂組成物に、更に蛍光体を加えてなる蛍光性樹脂組成物に対し、更に硬化剤を加えてなる硬化性樹脂組成物、或いは、本発明の変性樹脂組成物に、更に光酸発生剤を加えてなる感光性樹脂組成物を硬化することにより、発光性に優れる蓄光材料を製造することができる。
【0199】
次に、蓄光材料について説明する。一般に、蓄光材料とは、太陽光、蛍光灯、紫外線等の光刺激で励起し、エネルギー変換して光を放出し、上記の光刺激による励起停止後にも光を徐々に放出しながら、長時間発光し続ける材料を指す。
【0200】
本発明の変性樹脂組成物を用いた蓄光材料の用途は、特に限定されるものではないが、例えば、夜間・停電時の表示類、防災・安全標識、時計、壁紙、電気スイッチ、看板、衣類、靴、自転車・バイク等の反射板、粘着テープ、釣り針・浮き等の漁具、運動用具類、アクセサリー、玩具等を例示することができる。
【0201】
更に、例えば、(d)本発明の変性樹脂組成物に、更に導電性金属粉を加えてなる導電性樹脂組成物は、流動性、導電性及び接着性に優れ、且つ、ボイドの発生を抑制する硬化性の導電性樹脂組成物用原料として、一方、(e)本発明の変性樹脂組成物に、更に絶縁性粉末を加えてなる絶縁性樹脂組成物、或いは、上記の(d),(e)に、更に硬化剤を加えてなる樹脂組成物は、絶縁性及び接着性に優れ、且つ、ボイドの発生を抑制する硬化性の絶縁性樹脂組成物原料として有用に用いられる。また、上記の(d),(e)に、更に硬化剤を加えてなる樹脂組成物に、更に硬化促進剤を加えた硬化性樹脂組成物、或いは、前記の(d),(e)に、更に光酸発生剤を加えた感光性樹脂組成物は、各々上記の硬化性の導電性樹脂組成物、或いは、硬化性の絶縁性樹脂組成物として有用に用いることができる。
【0202】
本発明の変性樹脂組成物を用いた導電性樹脂組成物の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、半導体素子と周辺部材との接着、導体配線形成、表面実装時のはんだ代替;碍子類、水晶振動子、交流変圧器、開閉機器等の注型及び回路ユニット、各種部品のパッケージ、IC・発光ダイオード・半導体等、発電器、モーター等の回転機コイル、巻線含浸、プリント配線基板、ガラス代替透明基板、中型碍子類、コイル類、コネクター、ターミナル等の電子部品、及びその配線類に使用する接着剤やダイボンド剤;導電性塗料、電極、印刷回路、導電性樹脂等を例示することができる。
【0203】
本発明の変性樹脂組成物を用いた絶縁性樹脂組成物の用途は、特に限定されるものではないが、例えば、半導体装置における半導体チップのマウンティング;半導体チップ(IC、LSI等)を、セラミックケース、リードフレーム、基板等に接合するための、ダイボンド剤や接着剤等を例示することができる。更に、半導体パッケージのインターポーザやプリント回路基板、ディスプレイ、太陽電池、発電機・電動機用基板、自動車用基板等の、高放熱性の絶縁材料が求められる用途に適用することができる。
【0204】
また、例えば、(a)本発明の変性樹脂組成物、(b)本発明の変性樹脂組成物に、更にオキセタン化合物を加えてなる樹脂組成物、(c)本発明の変性樹脂組成物に、更に蛍光体を加えてなる蛍光樹脂組成物、からなる(a)〜(c)に、硬化剤と硬化促進剤とを加えた硬化性樹脂組成物、或いは、上記の(a)〜(c)に、更に光酸発生剤を加えた感光性樹脂組成物、また、例えば、(d)本発明の変性樹脂組成物に、更に導電性金属粉を加えてなる導電性樹脂組成物、(e)本発明の変性樹脂組成物に、更に絶縁性粉末を加えてなる絶縁性樹脂組成物、上記の(d),(e)に、硬化剤と硬化促進剤とを加えた硬化性樹脂組成物、或いは、上記の(d),(e)に、更に光酸発生剤を加えた感光性樹脂組成物は、酸素による重合阻害を受けにくいコーティング剤として有用に用いることができる。
【0205】
本発明におけるコーティング剤とは、物質の表面に塗膜を形成し、被覆するための材料であれば、特に限定されるものではなく、その主たる使用目的は以下の通りであり、必要に応じ、上記コーティング剤に、顔料や色素等を配合し、塗料やインクとして使用することも可能である。
【0206】
(1)塗装や基材の保護、耐久性付与、美観の維持(紫外線、赤外線、酸化、腐食、キズ、ホコリ、汚れ、温度、湿度等からの保護)
(2)塗装や基材への光沢性付与
(3)塗装や基材への撥水加工
(4)床材等の滑り止め加工
(5)電子部品類の封止、絶縁
【0207】
コーティング剤として用いる場合には、本発明の変性樹脂組成物に、更にオキセタン化合物を加えてなる樹脂組成物を用いることも可能である。
本発明のコーティング剤を、従来公知の方法により塗布し、次いで、硬化させることにより、塗膜を形成することができる。この際、塗布する方法としては、ハケ塗り、ローラー塗り、吹付塗装、バーコーター、ロールコーター、焼付塗装、浸漬塗り、電着塗装、静電塗装、粉体塗装、蒸着、めっき等の塗装技術、インクジェット、レーザープリント、輪転機印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等の印刷技術が、一方、塗膜を形成する方法としては、加熱によって硬化させる方法、或いは、光を照射することによって硬化させる方法が、各々好ましく用いられる。
【0208】
本発明のコーティング剤、及び塗膜の用途は、特に限定されるものではなく、例えば、コーティング剤(塗装、樹脂、プラスチック、金属、鋼管、自動車、建築物、光ファイバー用途等)、光ディスク(DVD、CD、ブルーレイディスク等)のコーティングや接着、インク(インクジェットプリンター、グラビア印刷、フレキソ印刷、プリント配線板用レジスト、UV印刷用途等)、印刷製版材料(PS平板、感光性樹脂凸版、スクリーン版用感光材等)、フォトレジスト(半導体用レジスト、プリント配線板用レジスト、フォトファブリケーション用レジスト等)、プリント配線板、IC、LSIをはじめとする各種電子部品のパターン形成、液晶やPDPディスプレイ用のカラーフィルター形成材料、液晶や有機EL用のシール材、半導体・発光ダイオード周辺材料(封止材、レンズ材、基板材、ダイボンド材、チップコート材、積層板、光ファイバー、光導波路、光フィルター、電子部品用の接着剤、コート材、シール材、絶縁材、フォトレジスト、エンキャップ材、ポッティング材、光ディスクの光透過層や層間絶縁層、プリント配線板、積層板、導光板、反射防止膜等)等、塗料(防蝕塗料、メンテナンス、船舶塗装、耐蝕ライニング、自動車・家電製品用プライマー、飲料・ビール缶、外面ラッカー、押出チューブ塗装、一般防蝕塗装、メンテナンス途装、木工製品用ラッカー、自動車用電着プライマー、その他工業用電着塗装、飲料・ビール缶内面ラッカー、コイルコーティング、ドラム・缶内面塗装、木工用塗料、耐酸ライニング、ワイヤーエナメル、絶縁塗料、自動車用プライマー、各種金属製品の美装兼防蝕塗装、パイプ内外面塗装、電気部品絶縁塗装等)、複合材料(化学プラント用パイプ・タンク類、航空機材、自動車部材、各種スポーツ用品、炭素繊維複合材料、アラミド繊維複合材料等)、土木建築材料(床材、舗装材、メンブレン、滑り止め兼薄層舗装、コンクリート打ち継ぎ・かさ上げ、アンカー埋め込み接着、プレキャストコンクリート接合、タイル接着、コンクリート構造物の亀裂補修、台座のグラウト・レベリング、上下水道施設の防蝕・防水塗装、タンク類の耐蝕積層ライニング、鉄構造物の防蝕塗装、建築物外壁のマスチック塗装等)、接着剤(金属・ガラス・陶磁器・セメントコンクリート・木材・プラスチック等の同種又は異種材質の接着剤、自動車・鉄道車両・航空機等の組み立て用接着剤、プレハブ用複合パネル製造用接着剤等:一液型、二液型、シートタイプを含む。)、航空機・自動車・プラスチック成形の治工具(プレス型、ストレッチドダイ、マッチドダイ等樹脂型、真空成形・ブロー成型用モールド、マスターモデル、鋳物用パターン、積層治工具、各種検査用治工具等)、改質剤・安定剤(繊維の樹脂加工、ポリ塩化ビニル用安定剤、合成ゴムへの添加剤等)等として用いることができる。中でも、コーティング剤、塗料、接着剤、光造形樹脂用途に有用である。
【実施例】
【0209】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明において用いる指標及び変性樹脂組成物の特性は、以下に示す方法により定量化する。
【0210】
<混合指標αの算出>
混合指標αは、以下の一般式(2)により算出する。
混合指標α=(αc)/(αb) ・・・(2)
ここで、αb、αcは下記を表す。
αb:一般式(1)において、n=1又は2であり、Rとして少なくとも1種の環状エーテル基を有する基を含む、アルコキシシラン化合物のmol%[本願発明における(B)]、
αc:一般式(1)において、n=1又は2であり、Rとして、少なくとも1個以上のフッ素原子を置換基として有するフェニル基を含むアルコキシシラン化合物のmol%[本願発明の(C)]。
【0211】
<混合指標βの算出>
混合指標βは、以下の一般式(3)により算出する。
混合指標β={(βn2)/(βn0+βn1)} ・・・(3)
ここで、βn0、βn1、βn2は、下記を表す。
βn2:一般式(1)において、n=2であるアルコキシシラン化合物のmol%、
βn0:一般式(1)において、n=0であるアルコキシシラン化合物のmol%、
βn1:一般式(1)において、n=1であるアルコキシシラン化合物のmol%。
ただし、0≦{(βn0)/(βn0+βn1+βn2)}≦0.1を満足する値である。
【0212】
<混合指標γの算出>
混合指標γは、以下の一般式(4)により算出する。
混合指標γ=(γa)/(γs) ・・・(4)
ここで、γa及びγsは下記を表す。
γa:エポキシ樹脂の質量(g)、
γs:一般式(1)において、n=0〜2であるアルコキシシラン化合物の質量(g)。
【0213】
<混合指標εの算出>
混合指標εは、以下の一般式(7)により算出する。
混合指標ε=(εw)/(εs) ・・・(7)
ここで、εw及びεsは下記を表す。
εw:水の添加量(mol数)、
εs:一般式(1)における(OR)の量(mol数)。
【0214】
<中間体の縮合率の算出>
中間体の縮合率は、還流工程終了後、採取したサンプル溶液(中間体)の29Si−NMR測定結果から、以下の手順で求めた。
サンプル溶液0.15gを重水素化クロロホルム1gに溶解する。該溶解液にCr(acac)を0.015g添加して溶解した溶液をNMR測定溶液とする。該NMR測定溶液を用いて、プロトン完全デカップル条件における29Si−NMRの測定を積算回数6,000回(装置:日本分光社製α−400)にて行う。
【0215】
得られたスペクトルを元に、次式(8)に従って中間体の縮合率(%)を算出した。
縮合率(%)=(D1×1+D2×2+T1×1+T2×2+T3×3)/
{(D0+D1+D2)×2+(T0+T1+T2+T3)×3}×100 ・・・(8)
ここで、D0、D1、D2、T0、T1、T2、T3は各々、以下を表す。
D0:式(1)において、n=1であるアルコキシシラン化合物由来の、下記式(9)に示すD0構造由来シグナルの積分値の合計。
D1:式(1)において、n=1であるアルコキシシラン化合物由来の、下記式(10)に示すD1構造由来シグナルの積分値の合計。
D2:式(1)において、n=1であるアルコキシシラン化合物由来の、下記式(10)に示すD2構造由来シグナルの積分値の合計。
T0:式(1)において、n=2であるアルコキシシラン化合物由来の、下記式(11)に示すT0構造由来シグナルの積分値の合計。
T1:式(1)において、n=2であるアルコキシシラン化合物由来の、下記式(12)に示すT1構造由来シグナルの積分値の合計。
T2:式(1)において、n=2であるアルコキシシラン化合物由来の、下記式(12)に示すT2構造由来シグナルの積分値の合計。
T3:式(1)において、n=2であるアルコキシシラン化合物由来の、下記式(12)に示すT3構造由来シグナルの積分値の合計。
【0216】
【化8】


前記式(9)中、Rは、任意の有機基又はHである。
【0217】
【化9】


前記式(10)中、Rは、任意の有機基又はHである。
【0218】
【化10】


前記式(11)中、Rは、任意の有機基又はHである。
【0219】
【化11】


前記式(12)中、Rは、任意の有機基又はHである。
【0220】
<変性樹脂組成物のアルコキシシラン化合物の縮合率の算出>
変性樹脂組成物のアルコキシシラン化合物の縮合率についても、脱水縮合工程終了後採取したサンプル溶液の29Si−NMR測定結果から、中間体の縮合率算出方法と同様の方法にて算出した。
【0221】
<変性樹脂組成物中の残留アルコキシ基量の算出>
残留アルコキシ基量は、脱水縮合工程終了後に採取したサンプルのH−NMR測定結果から、以下の手順で求めた。
なお、H−NMRの測定は以下の手順で行った。
(1)サンプル瓶に、変性樹脂組成物10mgと内部標準物質(1,1,2,2−テトラブロモエタン;東京化成工業株式会社製)20mgを計りとり、クロロホルム−d(和光純薬)970mgを加え溶解調製した。
(2)上記(1)の溶液を、直径5mmφのNMRチューブに移し、下記条件で、H−NMRを測定した。
装置 :フーリエ変換核磁気共鳴装置 日本電子株式会社製「α−400型」
核種 :H
積算回数 :600回
上記測定結果から、以下の手順で、残留アルコキシ基量(%)を算出した。
(3)H−NMRチャートから、残留アルコキシ基由来ピークの、面積値を算出した。
(4)H−NMRチャートから、内部標準物質由来ピークの、面積値を算出した。
(5)上記(3)及び(4)で読み取った、面積値を、下記式に代入し、残留アルコキシ基量(%)を求めた。
残留アルコキシ基量(%)=(残留アルコキシ基由来ピークの面積値)/(内部標準物質由来ピークの面積値)×100
【0222】
ここで、残留アルコキシ基由来ピークの面積値は、以下の方法により算出した。
<i>残留アルコキシ基由来のピークが単一ピークの場合
ベースラインと、当該ピークとで囲まれた部分の面積を、残留アルコキシ基由来ピークの面積値とした。
残留アルコキシ基の種類によっては、当該残留アルコキシ基の由来のピークが複数存在する場合がある。その場合、本発明における残留アルコキシ基由来ピークの面積値は、前記の複数の残留アルコキシ基由来ピークの面積の総和とした。
<ii>残留アルコキシ基由来のピークが複合ピークの場合
残留アルコキシ基由来のピークと、前記の残留アルコキシ基以外に由来するピークとの間で囲まれる傾き0となる点から、残留アルコキシ基由来のピークの面積が最小となるように接線を引き、当該接線と残留アルコキシ基由来のピークとで囲まれた部分の面積を、残留アルコキシ基由来ピークの面積値とした。
【0223】
なおここで、残留アルコキシ基由来のピークが当該ピークの主成分であって、残留アルコキシ基由来のピークと残留アルコキシ基以外に由来するピークとの間に、傾きが0となる点が存在しない場合には、残留アルコキシ基以外に由来するピークはピークとみなさず、当該ピークは全て残留アルコキシ基由来ピークとした。また、残留アルコキシ基以外に由来するピークが当該ピークの主成分であって、残留アルコキシ基由来のピークと残留アルコキシ基以外に由来するピークとの間に、傾きが0となる点が存在しない場合には、残留アルコキシ基に由来するピークはピークとみなさなかった。
【0224】
<エポキシ当量(WPE)>
エポキシ当量とは1当量のエポキシ単位を含む変性シリコーンの質量(g)であり、JIS K−7236に準拠して測定した。
【0225】
<樹脂組成物の保存安定性>
樹脂組成物における保存安定性は、以下の一般式(10)で示す保存安定性指標θで評価した。
保存安定性指標θ=(保存粘度)/(開始粘度) ・・・(10)
製造直後の樹脂組成物を入れた容器を密封し、25℃で2時間、温度調整した後、25℃における粘度を測定し、これを「開始粘度」とした。更に、樹脂組成物を入れた容器を密封し、25℃の恒温インキュベーター内で、2週間保存した。所定期間保存後、25℃における粘度を測定し、これを「保存粘度」とした。
【0226】
樹脂組成物に流動性があり(粘度が1000Pa・s以下であり)、かつ、保存安定性指標θが4以下である場合に、保存安定性を有すると判断して○とし、該指標θが4を超える場合には、保存安定性が無いと判断して×とした。
なお、粘度は、以下の測定方法により測定した。
回転式E形粘度計(東機産業株式会社製、「TV−22形」、 ローター:3°×R14)に0.4mlの樹脂組成物サンプルを仕込み、温度25℃にて樹脂組成物を測定した。
【0227】
<硬化物の冷熱衝撃試験>
ソルベイアドバンストポリマーズ社製、「アモデル A−4122NL WH 905」(15mm×15mm×厚み2mmの平板)の中央に、直径10mm×深さ1.2mmの窪みを作成した後、5mm×5mm×0.2mmのシリコンチップを入れておき、樹脂組成物を注型して加熱して各試験サンプル毎に10個の冷熱衝撃用サンプルを得る。得られたサンプルを、冷熱サイクル試験機(エスペック社製TSE−11−A)内にて、−40℃にて15分保持した後、3分で120℃まで昇温し、120℃で15分間保持し、次いで、3分で−40℃まで降温するサイクル試験に供する。
この試験の間、サイクル回数50回後に取り出し、冷熱衝撃用サンプル中の剥離やクラックの発生等、異常の有無を観察する。異常が確認されなかったサンプルは、再度、冷熱サイクル試験機内に入れ上記と同様の操作で評価後、更に50回のヒートサイクルをかけて同様の方法で評価した。これらの操作を繰り返し、10個のサンプル中において2個のサンプルに異常が見られた時点で評価を中断し、「耐冷熱衝撃サイクル回数=(中断したヒートサイクル回数)−(50回)」を求めた。この耐冷熱衝撃試験のサイクル回数が50回未満の場合をD、50回以上150回未満の場合をC、150回以上300回未満である場合をB、300回以上である場合をAとした。
【0228】
<硬化物の加熱条件下での耐光性試験>
光ファイバーを経由してUV照射装置(ウシオ電機製:SP−7)から85℃一定にした恒温乾燥機中の厚さ3mmの硬化物にUV光を照射できるようにセットする。365nmバンドパスフィルターを用いて、330〜410nmの光を、2W/cmになるように照射する。
UV照射前、及び上記条件にてUV照射後したサンプルを、分光色彩計(日本電色工業株式会社製、「SD5000」:積分球開口部直径10mm)で測定し、その黄色度の差(△YI)を算出することにより、硬化物の加熱条件下での耐光性を評価した。
上記の△YIが、10以下の場合をA、10を超え15以下である場合にB、15を超え20以下である場合をC、20超過の場合をDとした。
【0229】
<硬化物の耐熱変色性試験>
厚さ3mmの硬化物を用い、厚さ方向の400nmの光線透過率を日本分光(株)社製JASCO V−550により測定する。次に該硬化物をSUS316製の型枠に入れ、空気下で120℃で100時間加熱条件に供した後、室温で放冷する。その後、試料の厚さ方向における400nmの光線透過率を再度測定し、加熱処理前の試料における400nmの光線透過率に対する加熱処理後の試料における400nmの光線透過率の値を算出する。前記で得られた加熱処理前の試料の光線透過率に対する加熱処理後の試料の光線透過率の比率を、光線透過保持率として算出する。光線透過保持率が90%以上をA、88%以上90%未満をB、85%以上88%未満をC、85%未満をDとした。
【0230】
[実施例1]
<変性樹脂組成物の製造1a>
還流冷却器、温度計及び撹拌装置を有する内容積1.5リットルの反応器を乾燥窒素で置換する。乾燥窒素条件下にて、前記装置に、乾燥窒素下にて3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(以下、GPTMSと略記する。)を275g、4−フルオロフェニル−トリメトキシシラン(以下、4FPTMSと略記する。)を25g、ジメチルジメトキシシラン(以下、DMDMSと略記する。)を60g、芳香族エポキシ樹脂の核水素化物として、ジャパン エポキシ レジン社製の商品名「YX8000」(以下、YX8000と略記する。)[エポキシ当量(WPE):205g/eq、粘度(25℃):1.8Pa・s]を330g、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記する。)を180gを仕込んだ後に、室温にて混合攪拌する。引き続き、水100gと、ジブチル錫ジラウレート(以下、DBTDLと略記する。)を1.31g添加し、反応器内部を窒素でシールしつつ、攪拌しながら80℃のオイルバスに浸漬して、水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流状態にて、15時間反応させた(還流工程)。反応終了後、室温まで冷却して、サンプル溶液(中間体)を採取した。
上記の還流工程終了後の溶液を、エバポレーターを使用し、徐々に減圧、加熱して、400Pa、50℃の条件で1時間留去した後、更に、減圧、加熱して80℃、1Paの条件で5時間処理して、脱水縮合反応を行った(脱水縮合工程)。反応終了後、室温まで冷却し、変性樹脂組成物(1a)を得た。
この変性樹脂組成物の残留アルコキシ基量は0%であり、その粘度は、100Pa・s以下であった。
混合指標α、β、γ、ε、中間体の縮合率(%)、変性樹脂組成物中のアルコキシシランの縮合率(%)、エポキシ当量(WPE)、保存安定性指標θを表1に示す。
<硬化物の製造と特性評価1a>
上記で得られた変性樹脂組成物(1a)100質量部、硬化剤として新日本理化株式会社製(商品名)「リカシッド MH−700G」[4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸の70対30質量%の混合物](以下、MH−700Gと略記する。)63.6質量部、硬化促進剤としてサンアプロ株式会社製(商品名)「U−CAT 18X」(以下、U−CAT 18Xと略記する。)0.3質量部を窒素下にて混合し、全体が均一になるまで撹拌後、脱泡して硬化性組成物を得た。前記で得られた硬化性組成物を窒素下にて、厚み3mmのコの字状のシリコンゴムを離型剤を塗ったステンレス板2枚で挟み込んだ成型治具内に流し込み、90℃で1時間、更に110℃で5時間硬化反応を行い、硬化物を得た。得られた硬化物の冷熱衝撃性試験結果、硬化物の加熱条件下での耐光性試験結果、硬化物の耐熱変色性試験結果を併せて表1に示す。
【0231】
[実施例2]
<変性樹脂組成物の製造2a>
内容積2リットルの反応器を用いたこと、GPTMSを20g用いたこと、4FPTMSを330g用いたこと、DMDMSを100g用いたこと、YX8000を600g用いたこと、THFを225g用いたこと、水を135g用いたこと、DBTDLを1.80g用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、変性樹脂組成物(2a)を製造した。
この変性樹脂組成物の残留アルコキシ基量は0%であり、その粘度は、100Pa・s以下であった。
混合指標α、β、γ、ε、中間体の縮合率(%)、変性樹脂組成物中のアルコキシシランの縮合率(%)、エポキシ当量(WPE)、保存安定性指標θを表1に示す。
<硬化物の製造と特性評価2a>
上記で得られた変性樹脂組成物(2a)を100質量部用いたこと、MH−700Gを45.3質量部を用いたこと、硬化反応条件を90℃で1時間、更に100℃で5時間としたこと以外は、実施例1<硬化物の製造と特性評価1a>と同様に硬化反応を行い、硬化物を得た。得られた硬化物の冷熱衝撃性試験結果、硬化物の加熱条件下での耐光性試験結果、硬化物の耐熱変色性試験結果を併せて表1に示す。
【0232】
[比較例1]
<変性樹脂組成物の製造1b>
GPTMSを275g用いたこと、4FPTMSを用いなかったこと、YX8000を330g用いたこと、THFを170g用いたこと、水を95g用いたこと、DBTDLを1.23g用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、変性樹脂組成物(1b)を製造した。
この変性樹脂組成物の残留アルコキシ基量は0%であり、その粘度は、100Pa・s以下であった。
混合指標α、β、γ、ε、中間体の縮合率(%)、変性樹脂組成物中のアルコキシシランの縮合率(%)、エポキシ当量(WPE)、保存安定性指標θを併せて表1に示す。
本変性樹脂組成物(1b)は、保存安定性が無かったため、以後の硬化物作成は行わなかった。
【0233】
[比較例2]
<変性樹脂組成物の製造2b>
GPTMSを22g用いたこと、4FPTMSを410g用いたこと、DMDMSを24g用いたこと、YX8000を600g用いたこと、THFを230g用いたこと、水を120g用いたこと、DBTDLを1.61g用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、変性樹脂組成物(2b)を製造した。
この変性樹脂組成物の残留アルコキシ基量は0%であり、その粘度は、100Pa・s以下であった。
混合指標α、β、γ、ε、中間体の縮合率(%)、変性樹脂組成物中のアルコキシシランの縮合率(%)、エポキシ当量(WPE)、保存安定性指標θを併せて表1に示す。
<硬化物の製造と特性評価2b>
上記で得られた変性樹脂組成物(2b)を100質量部用いたこと、MH−700Gを44.9質量部用いたこと、硬化反応条件を90℃で1時間、更に100℃で5時間としたこと以外は、実施例1<硬化物の製造と特性評価1a>と同様に硬化反応を行い、硬化物を得た。得られた硬化物の特性試験結果を併せて表1に示す。
【0234】
[比較例3]
<変性樹脂組成物の製造3b>
GPTMSを280g用いたこと、4FPTMSの代わりにフェニルトリメチルシランを65g用いたこと、DMDMSを30g用いたこと、YX8000を200g用いたこと、THFを190g用いたこと、水を100g用いたこと、DBTDLを1.31g用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、変性樹脂組成物(2b)を製造した。
この変性樹脂組成物の残留アルコキシ基量は0%であり、その粘度は、100Pa・s以下であった。
混合指標α、β、γ、ε、中間体の縮合率(%)、変性樹脂組成物中のアルコキシシランの縮合率(%)、エポキシ当量(WPE)、保存安定性指標θを併せて表1に示す。
本変性樹脂組成物(3b)は、保存安定性が無かったため、以後の硬化物作成は行わなかった。
【0235】
[実施例3]
<変性樹脂組成物の製造3a>
GPTMSを280g用いたこと、4FPTMSを65g用いたこと、DMDMSを30g用いたこと、YX8000の代わりにポリ(ビスフェノールA−2−ヒドロキシプロピルエーテル)として、旭化成エポキシ株式会社製の商品名「AER2600」[エポキシ当量(WPE):187g/eq、粘度(25℃):14.3Pa・s]を200g用いたこと、THFを188g用いたこと、水を95g用いたこと、DBTDLを1.28g用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、変性樹脂組成物(3a)を製造した。
この変性樹脂組成物の残留アルコキシ基量は0%であり、その粘度は、100Pa・s以下であった。
混合指標α、β、γ、ε、中間体の縮合率(%)、変性樹脂組成物中のアルコキシシランの縮合率(%)、エポキシ当量(WPE)、保存安定性指標θを表1に示す。
<硬化物の製造と特性評価3a>
上記で得られた変性樹脂組成物(3a)を100質量部用いたこと、MH−700Gを61.7質量部用いたこと以外は、実施例1<硬化物の製造と特性評価1a>と同様に硬化反応を行い、硬化物を得た。得られた硬化物の冷熱衝撃性試験結果、硬化物の加熱条件下での耐光性試験結果、硬化物の耐熱変色性試験結果を併せて表1に示す。
【0236】
[実施例4]
<変性樹脂組成物の製造4a>
GPTMSを50g用いたこと、4FPTMSを205g用いたこと、DMDMSを60g用いたこと、YX8000を350g用いたこと、THFを160g用いたこと、水を95g用いたこと、DBTDLを1.22g用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、変性樹脂組成物(4a)を製造した。
この変性樹脂組成物の残留アルコキシ基量は0%であり、その粘度は、100Pa・s以下であった。
混合指標α、β、γ、ε、中間体の縮合率(%)、変性樹脂組成物中のアルコキシシランの縮合率(%)、エポキシ当量(WPE)、保存安定性指標θを表1に示す。
<硬化物の製造と特性評価4a>
上記で得られた変性樹脂組成物(4a)を100質量部用いたこと、MH−700Gを45.8質量部用いたこと、硬化反応条件を90℃で1時間、更に100℃で5時間としたこと以外は、実施例1<硬化物の製造と特性評価1a>と同様に硬化反応を行い、硬化物を得た。得られた硬化物の冷熱衝撃性試験結果、硬化物の加熱条件下での耐光性試験結果、硬化物の耐熱変色性試験結果を併せて表1に示す。
【0237】
[実施例5]
<変性樹脂組成物の製造5a>
GPTMSを280g用いたこと、4FPTMSを90g用いたこと、DMDMSを40g用いたこと、更にアルコキシシラン成分としてテトラエトキシシランを5g用いたこと、YX8000を330g用いたこと、THFを210g用いたこと、水を110g用いたこと、DBTDLを1.44g用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、変性樹脂組成物(5a)を製造した。
この変性樹脂組成物の残留アルコキシ基量は0%であり、その粘度は、100Pa・s以下であった。
混合指標α、β、γ、ε、中間体の縮合率(%)、変性樹脂組成物中のアルコキシシランの縮合率(%)、エポキシ当量(WPE)、保存安定性指標θを表1に示す。
<硬化物の製造と特性評価5a>
上記で得られた変性樹脂組成物(5a)を100質量部、MH−700Gを72.2質量部を窒素下にて混合し、全体が均一になるまで撹拌して、変性樹脂組成物(5a)とMH−700Gの硬化性樹脂組成物を得た。引き続き、前記で得られた変性樹脂組成物(5a)とMH−700Gの硬化性樹脂組成物100質量部にU−CAT 18Xを0.2質量部添加後、窒素下にて混合し、全体が均一になるまで撹拌後、脱泡して硬化性組成物−1aを得た。以後、実施例1<硬化物の製造と特性評価1a>と同様に硬化反応を行い、硬化物を得た。得られた硬化物の冷熱衝撃性試験結果、硬化物の加熱条件下での耐光性試験結果、硬化物の耐熱変色性試験結果を併せて表1に示す。
【0238】
[実施例6]
<変性樹脂組成物の製造6a>
GPTMSを120g用いたこと、4FPTMSを200g用いたこと、YX8000を400g用いたこと、THFを190g用いたこと、水を110g用いたこと、DBTDLを1.42g用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、変性樹脂組成物(6a)を製造した。
この変性樹脂組成物の残留アルコキシ基量は0%であり、その粘度は、100Pa・s以下であった。
混合指標α、β、γ、ε、中間体の縮合率(%)、変性樹脂組成物中のアルコキシシランの縮合率(%)、エポキシ当量(WPE)、保存安定性指標θを表1に示す。
<硬化物の製造と特性評価6a>
上記で得られた変性樹脂組成物(6a)を100質量部用いたこと、MH−700Gを50質量部用いたこと、硬化反応条件を90℃で1時間、更に100℃で5時間としたこと以外は、実施例1<硬化物の製造と特性評価1a>と同様に硬化反応を行い、硬化物を得た。得られた硬化物の冷熱衝撃性試験結果、硬化物の加熱条件下での耐光性試験結果、硬化物の耐熱変色性試験結果を併せて表1に示す。
【0239】
[実施例7]
<変性樹脂組成物の製造7a>
GPTMSを165g用いたこと、4FPTMSの代わりに、2,4−ジフルオロフェニル−トリメトキシシランを205g用いたこと、DMDMSを30g用いたこと、YX8000の代わりに3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートとして、ダイセル化学工業株式会社製の商品名「セロキサイド2021P」[エポキシ当量(WPE):131g/eq、粘度(25℃):227mPa・s]を220g用いたこと、THFを200g用いたこと、水を100g用いたこと、DBTDLを1.3g用いたこと、水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流状態(還流工程)の反応時間を10時間としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、変性樹脂組成物(7a)を製造した。
この変性樹脂組成物の残留アルコキシ基量は0%であり、その粘度は、100Pa・s以下であった。
混合指標α、β、γ、ε、中間体の縮合率(%)、変性樹脂組成物中のアルコキシシランの縮合率(%)、エポキシ当量(WPE)、保存安定性指標θを表1に示す。
<硬化物の製造と特性評価7a>
上記で得られた変性樹脂組成物(7a)を100質量部用いたこと、MH−700Gを59質量部用いたこと以外は、実施例1<硬化物の製造と特性評価1a>と同様に硬化反応を行い、硬化物を得た。得られた硬化物の冷熱衝撃性試験結果、硬化物の加熱条件下での耐光性試験結果、硬化物の耐熱変色性試験結果を併せて表1に示す。
【0240】
[実施例8]
<変性樹脂組成物の製造8a>
還流冷却器、温度計及び撹拌装置を有する内容積1.5リットルの反応器を乾燥窒素で置換する。乾燥窒素条件下にて、前記装置に、乾燥窒素下にてGPTMSを120g、2,4,6−トリフルオロフェニル−トリメトキシシランを187g、DMDMSを105g、THFを210g仕込んだ後に、室温にて混合攪拌する。引き続き、水116gと、ジブチル錫ジラウレート(以下、DBTDLと略記する。)1.57gを添加し、反応器内部を窒素でシールしつつ、攪拌しながら80℃のオイルバスに浸漬して、水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流状態にて、15時間反応させた(還流工程)。反応終了後、室温まで冷却した後、YX8000を400g添加し、引き続き1時間攪拌を継続して、均一に溶解させた後、サンプル溶液(中間体)を採取した。
上記の溶液を、エバポレーターを使用し、徐々に減圧、加熱して、400Pa、50℃の条件で1時間留去した後、更に、減圧、加熱して80℃、1Paの条件で5時間処理して、脱水縮合反応を行った(脱水縮合工程)。反応終了後、室温まで冷却し、変性樹脂組成物(1a)を得た。
この変性樹脂組成物の残留アルコキシ基量は0%であり、その粘度は、100Pa・s以下であった。
混合指標α、β、γ、ε、中間体の縮合率(%)、変性樹脂組成物中のアルコキシシランの縮合率(%)、エポキシ当量(WPE)、保存安定性指標θを表1に示す。
<硬化物の製造と特性評価8a>
上記で得られた変性樹脂組成物(8a)を100質量部用いたこと、MH−700Gを48質量部用いたこと、硬化反応条件を90℃で1時間、更に100℃で5時間としたこと以外は、実施例1<硬化物の製造と特性評価1a>と同様に硬化反応を行い、硬化物を得た。得られた硬化物の冷熱衝撃性試験結果、硬化物の加熱条件下での耐光性試験結果、硬化物の耐熱変色性試験結果を併せて表1に示す。
【0241】
[実施例9]
実施例6で得られた変性樹脂組成物(6a)を90質量部、ダイセル化学工業株式会社製の商品名「セロキサイド2021P」[エポキシ当量(WPE):131g/eq、粘度(25℃):227mPa・s]を10質量部を窒素下にて混合し、全体が均一になるまで撹拌して、変性樹脂組成物(9a)を得た。
上記で得られた変性樹脂組成物(9a)を100質量部用いたこと、MH−700Gを53.8質量部用いたこと、硬化反応条件を90℃で1時間、更に100℃で5時間としたこと以外は、実施例1<硬化物の製造と特性評価1a>と同様に硬化反応を行い、硬化物を得た。得られた硬化物の冷熱衝撃性試験結果、硬化物の加熱条件下での耐光性試験結果、硬化物の耐熱変色性試験結果を併せて表1に示す。
【0242】
[実施例10]
実施例5で得られた変性樹脂組成物(5a)を100質量部に、化成オプトニクス株式会社製の「YAG:Ce3+蛍光体」を10質量部を窒素下にて混合した。得られた混合物に、MH−700Gを72.2質量部、U−CAT 18Xを0.3質量部添加後、窒素下にて混合し、全体が均一になるまで撹拌後、脱泡して硬化性組成物(10a)を得た。
前記で得た硬化性組成物を径が4mmの砲弾型のモールド型枠に注入し、そこに、発光波長400nmの発光素子が固定されたリードフレームを浸漬し、真空中で脱泡後、90℃で1時間、更に110℃で5時間硬化反応を行い、発光ダイオードを得た。本操作によって得られた発光ダイオード(10c)に対し、室温にて20mAで200時間通電しても、素子と封止部との剥離や輝度の低下は見られなかった。
上記操作で得られた10個の発光ダイオード(10c)を、「EIAJ ED−4701/300(半導体デバイスの環境及び耐久性試験方法(強度試験I)」の、試験方法307(熱衝撃試験)に準じ、以下の条件で評価した。
「−10℃(5分)〜100℃(5分)」を1サイクルとして、100サイクルの熱衝撃をかけた後に発光ダイオードの点灯を確認した結果、10個全てが点灯した。
更に、上記操作で得られた10個の発光ダイオード(10c)を、「EIAJ ED−4701/100(半導体デバイスの環境及び耐久性試験方法(寿命試験I)」の、試験方法105(温度サイクル試験)に準じ、以下の条件で評価した。
「−40℃(30分)〜85℃(5分)〜100℃(30分)〜25℃(5分)」を1サイクルとして、100サイクルの温度サイクルをかけた後に発光ダイオードの点灯を確認した結果、10個全てが点灯した。
【0243】
[実施例11]
実施例7で得られた変性樹脂組成物(7a)を100質量部に、化成オプトニクス株式会社製の「YAG:Ce3+蛍光体」を10質量部を窒素下にて混合した。得られた混合物に、MH−700Gを59質量部、U−CAT 18Xを0.3質量部添加後、窒素下にて混合し、全体が均一になるまで撹拌後、脱泡して硬化性組成物(11a)を得た。
前記で得た硬化性組成物を径が4mmの砲弾型のモールド型枠に注入し、そこに、発光波長400nmの発光素子が固定されたリードフレームを浸漬し、真空中で脱泡後、90℃で1時間、更に110℃で5時間硬化反応を行い、発光ダイオードを得た。本操作によって得られた発光ダイオード(11c)に対し、室温にて20mAで200時間通電しても、素子と封止部との剥離や輝度の低下は見られなかった。
上記操作で得られた10個の発光ダイオード(11c)を、「EIAJ ED−4701/300(半導体デバイスの環境及び耐久性試験方法(強度試験I)」の、試験方法307(熱衝撃試験)に準じ、以下の条件で評価した。
「−10℃(5分)〜100℃(5分)」を1サイクルとして、100サイクルの熱衝撃をかけた後に発光ダイオードの点灯を確認した結果、10個全てが点灯した。
更に、上記操作で得られた10個の発光ダイオード(11c)を、「EIAJ ED−4701/100(半導体デバイスの環境及び耐久性試験方法(寿命試験I)」の、試験方法105(温度サイクル試験)に準じ、以下の条件で評価した。
「−40℃(30分)〜85℃(5分)〜100℃(30分)〜25℃(5分)」を1サイクルとして、100サイクルの温度サイクルをかけた後に発光ダイオードの点灯を確認した結果、10個全てが点灯した。
【0244】
[実施例12]
実施例7で得られた変性樹脂組成物(8a)を100質量部に、化成オプトニクス株式会社製の「YAG:Ce3+蛍光体」を10質量部を窒素下にて混合した。得られた混合物に、MH−700Gを48質量部、U−CAT 18Xを0.3質量部添加後、窒素下にて混合し、全体が均一になるまで撹拌後、脱泡して硬化性組成物(12a)を得た。
前記で得た硬化性組成物を径が4mmの砲弾型のモールド型枠に注入し、そこに、発光波長400nmの発光素子が固定されたリードフレームを浸漬し、真空中で脱泡後、90℃で1時間、更に110℃で5時間硬化反応を行い、発光ダイオードを得た。本操作によって得られた発光ダイオード(12c)に対し、室温にて20mAで200時間通電しても、素子と封止部との剥離や輝度の低下は見られなかった。
上記操作で得られた10個の発光ダイオード(12c)を、「EIAJ ED−4701/300(半導体デバイスの環境及び耐久性試験方法(強度試験I)」の、試験方法307(熱衝撃試験)に準じ、以下の条件で評価した。
「−10℃(5分)〜100℃(5分)」を1サイクルとして、100サイクルの熱衝撃をかけた後に発光ダイオードの点灯を確認した結果、10個全てが点灯した。
更に、上記操作で得られた10個の発光ダイオード(12c)を、「EIAJ ED−4701/100(半導体デバイスの環境及び耐久性試験方法(寿命試験I)」の、試験方法105(温度サイクル試験)に準じ、以下の条件で評価した。
「−40℃(30分)〜85℃(5分)〜100℃(30分)〜25℃(5分)」を1サイクルとして、100サイクルの温度サイクルをかけた後に発光ダイオードの点灯を確認した結果、10個全てが点灯した。
【0245】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0246】
良好な透明性を有すると共に、優れた耐熱黄変性、並びに、加熱条件下での耐光性と、サーマルサイクルにおける耐冷熱衝撃性とを併せ持った硬化物を形成することができ、且つ、良好な保存安定性を有する変性樹脂組成物を提供することが可能となる。
【0247】
更に、本発明の変性樹脂組成物を用いることにより、<a>素子やパッケージ材料との密着性に優れクラックの発生がなく、長期にわたって輝度の低下が少ない、優れた発光ダイオード等の発光部品や、射出成形が可能で、硬化後において硬質で寸歩安定性に優れ、且つ、耐光性を有する光学用レンズ、並びに、前記発光部品及び/又は光学用レンズを用いた半導体装置、<b>酸素による重合阻害の抑制が可能で、接着性に優れる感光性組成物、該組成物を含むコーティング剤、並びに該コーティング剤を硬化させてなる塗膜、<c>蛍光体の分散安定性に優れる蛍光樹脂組成物と、該蛍光樹脂組成物を使用した蓄光材料、<d>流動性、導電性及び接着性に優れ、かつボイドが発生しない導電性樹脂組成物、<e>流動性、絶縁性及び接着性に優れ、かつボイドが発生しない絶縁性樹脂組成物等、を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)存在下、下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物を反応させて得られる変性樹脂組成物であって、
(R−Si−(OR4−n ・・・(1)
(ここで、nは0以上3以下の整数を示す。また、Rは各々独立に、水素原子、又はa)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が4以上24以下であり、かつ酸素数が1以上5以下である環状エーテル基を含有する有機基、b)無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の脂肪族有機基、及びc)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が6以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。一方、Rは各々独立に、水素原子、又はd)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上8以下である1価の有機基を示す。)
前記アルコキシシラン化合物が、
(B) n=1又は2であり、Rとして少なくとも1つの環状エーテル基を有する基を含む、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
(C) n=1又は2であり、Rとして少なくとも1個以上のフッ素原子を置換基として有するフェニル基を含むアルコキシシラン化合物、
とを含み、
下記一般式(2)で表される、前記アルコキシシラン化合物の混合指標αが0.001以上19以下であることを特徴とする変性樹脂組成物。
混合指標α=(αc)/(αb) ・・・(2)
(ここで、式(2)中、αbは一般式(1)で表される、アルコキシシラン化合物中の前記(B)成分の含有量(mol%)、αcは一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の前記(C)成分の含有量(mol%)を示す。)
【請求項2】
変性樹脂組成物中の残留アルコキシ基量が5%以下であることを特徴とする請求項1記載の変性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルコキシシラン化合物の縮合率が80%以上である、請求項1又は2に記載の変性樹脂組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂(A)が、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物からなる多官能エポキシ樹脂、及び芳香族エポキシ樹脂の核水素化物よりなる群から選ばれる1種以上の多官能エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性樹脂組成物。
【請求項5】
下記一般式(3)で表される前記アルコキシシラン化合物の混合指標βが、0.01以上1.4以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の変性樹脂組成物。
混合指標β={(βn2)/(βn0+βn1)} ・・・(3)
(ここで、式(3)中、βn2は一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の、n=2であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、βn0は一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の、n=0であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、βn1は一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の、n=1であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)をそれぞれ示し、0≦{(βn0)/(βn0+βn1+βn2)}≦0.1を満足する値である。)
【請求項6】
下記一般式(4)で表される前記エポキシ樹脂(A)と前記アルコキシシラン化合物の混合指標γが、0.02〜15である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の変性樹脂組成物。
混合指標γ=(γa)/(γs) ・・・(4)
(ここで、式(4)中、γaはエポキシ樹脂(A)の質量(g)、γsは一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の、n=0〜2であるアルコキシシラン化合物の質量(g)をそれぞれ示す。)
【請求項7】
エポキシ樹脂(A)存在下において、下記(B)成分及び(C)成分を少なくとも含む下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物を、水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流工程によって共加水分解して中間体を製造する工程(a)、及び
工程(a)によって製造された中間体を脱水縮合反応する工程(b)、
を含み、且つ、下記一般式(2)で表される、前記アルコキシシラン化合物の混合指標αが0.001以上19以下である変性樹脂組成物の製造方法。
(R−Si−(OR4−n ・・・(1)
(ここで、nは0以上3以下の整数を示す。また、Rは各々独立に、水素原子、又はa)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が4以上24以下であり、かつ酸素数が1以上5以下である環状エーテル基を含有する有機基、b)無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の脂肪族有機基、及びc)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が6以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。一方、Rは各々独立に、水素原子、又はd)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上8以下である1価の有機基を示す。)
(B) n=1又は2であり、Rとして少なくとも1つの環状エーテル基を有する基を含む、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物。
(C) n=1又は2であり、Rとして少なくとも1個以上のフッ素原子を置換基として有するフェニル基を含むアルコキシシラン化合物。
混合指標α=(αc)/(αb) ・・・(2)
(ここで、式(2)中、αbは前記(B)成分の含有量(mol%)、αcは前記(C)成分の含有量(mol%)を示す。)
【請求項8】
下記(B)成分及び(C)成分を少なくとも含む下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物を、水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流工程によって共加水分解して中間体を製造する工程(c)、及び
工程(c)によって製造された中間体にエポキシ樹脂(A)を共存させて脱水縮合反応する工程(d)、
を含み、且つ、下記一般式(2)で表される、前記アルコキシシラン化合物の混合指標αが0.001以上19以下である変性樹脂組成物の製造方法。
(R−Si−(OR4−n ・・・(1)
(ここで、nは0以上3以下の整数を示す。また、Rは各々独立に、水素原子、又はa)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が4以上24以下であり、かつ酸素数が1以上5以下である環状エーテル基を含有する有機基、b)無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の脂肪族有機基、及びc)無置換又は置換された芳香族炭化水素単位であって、必要に応じて無置換又は置換された、鎖状、分岐状及び環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が6以上24以下であり、かつ酸素数が0以上5以下である1価の芳香族有機基、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。一方、Rは各々独立に、水素原子、又はd)無置換又は置換された、鎖状、分岐状、環状よりなる構造群から選ばれる1種以上の構造からなる脂肪族炭化水素単位を有し、炭素数が1以上8以下である1価の有機基を示す。)
(B) n=1又は2であり、Rとして少なくとも1つの環状エーテル基を有する基を含む、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物。
(C) n=1又は2であり、Rとして少なくとも1個以上のフッ素原子を置換基として有するフェニル基を含むアルコキシシラン化合物。
混合指標α=(αc)/(αb) ・・・(2)
(ここで、式(2)中、αbは前記(B)成分の含有量(mol%)、αcは前記(C)成分の含有量(mol%)を示す。)
【請求項9】
下記一般式(3)で表される前記アルコキシシラン化合物の混合指標βが、0.01〜1.4である、請求項7又は8に記載の変性樹脂組成物の製造方法;
混合指標β={(βn2)/(βn0+βn1)} ・・・(3)
(ここで、式(3)中、βn2は一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の、n=2であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、βn0は一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の、n=0であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、βn1は一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物中の、n=1であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)をそれぞれ示し、0≦{(βn0)/(βn0+βn1+βn2)}≦0.1を満足する値である。)
【請求項10】
下記一般式(4)で表される前記エポキシ樹脂(A)と前記アルコキシシラン化合物の混合指標γが、0.02〜15である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の変性樹脂組成物の製造方法;
混合指標γ=(γa)/(γs) ・・・(4)
(ここで、式(4)中、γaはエポキシ樹脂(A)の質量(g)、γsは一般式(1)で表されるアルコキシシラン中の、n=0〜2であるアルコキシシラン化合物の質量(g)をそれぞれ示す。)
【請求項11】
水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流工程における温度が50〜100℃である、請求項7〜10のいずれか1項に記載の変性樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
水や溶媒の反応系外への留出を伴わない還流工程によって共加水分解して得られる中間体の縮合率が70%以上である、請求項7〜11のいずれか1項に記載の変性樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
前記共加水分解の際に、アルコキシド系有機錫を触媒として用いる、請求項7〜12のいずれか1項に記載の変性樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載の変性樹脂組成物に、更に硬化剤を加えてなる硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の硬化性樹脂組成物に、更に硬化促進剤を加えてなる硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の硬化性樹脂組成物を用いて製造された発光部品。
【請求項17】
請求項16に記載の発光部品を含む半導体装置。

【公開番号】特開2011−132429(P2011−132429A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295003(P2009−295003)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】