説明

多気筒内燃機関の制御装置

【課題】気筒間空燃比ばらつき発生時に好適なリッチ補正を行う。
【解決手段】多気筒内燃機関の制御装置によれば、排気通路内の排気ガスを吸気通路に環流させる外部EGRが実行されると共に、排気ガスの空燃比が所定の目標空燃比となるように空燃比がフィードバック制御される。一部気筒の空燃比が目標空燃比からリッチ側にずれるリッチずれが検出されたとき、リッチずれの大きさを表すパラメータIBが算出される。算出されたパラメータIBに応じて目標空燃比がリッチ側に補正される。外部EGRの有無に応じて、リッチ補正を開始するパラメータの値Y1,Y2が変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多気筒内燃機関の制御装置に係り、特に、排気通路内の排気ガスを吸気通路に環流させる外部EGRを実行可能な多気筒内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外部EGRを実行することにより燃焼速度および燃焼温度を低下させ、NOx発生量を抑制できることが知られている。また例えば触媒を備えた内燃機関において、排気中の有害成分を触媒により高効率で浄化するため、混合気ひいては排気ガスの空燃比を所定の目標空燃比に近づけるようにする空燃比フィードバック制御を行うことも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−203881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、多気筒内燃機関において、例えば一部の気筒の燃料噴射系が故障するなどして、当該一部気筒の燃料噴射量が残部気筒の燃料噴射量より多くなり、気筒間の空燃比がばらつくことがある。このとき空燃比フィードバック制御が行われる結果、正常気筒の空燃比がリーン側に補正され、正常気筒から排出されるNOxが増大する。
【0005】
そこで、空燃比フィードバック制御の目標空燃比をリッチ側に補正し、正常気筒からのNOx排出量を抑制することが考えられる。
【0006】
しかし、本発明者らの研究結果によれば、外部EGRが有りのときと無しのときとで同じようにリッチ補正を行うことは好ましくないことが判明した。
【0007】
そこで本発明は、以上の事情に鑑みて創案され、その目的は、気筒間空燃比ばらつき発生時に好適なリッチ補正を行うことができる多気筒内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様によれば、
排気通路内の排気ガスを吸気通路に環流させる外部EGRを実行するためのEGR手段と、
前記排気ガスの空燃比が所定の目標空燃比となるように空燃比をフィードバック制御する空燃比制御手段と、
一部気筒の空燃比が前記目標空燃比からリッチ側にずれるリッチずれを検出する検出手段と、
前記検出手段により前記リッチずれが検出されたとき、当該リッチずれの大きさを表すパラメータを算出する算出手段と、
前記算出手段により算出されたパラメータに応じて前記目標空燃比をリッチ側に補正するリッチ補正手段と、
前記外部EGRの有無に応じて、前記リッチ補正を開始する前記パラメータの値を変更する変更手段と、
を備えたことを特徴とする多気筒内燃機関の制御装置が提供される。
【0009】
好ましくは、前記変更手段は、外部EGR有りのときには無しのときより前記リッチ補正を開始するパラメータの値を大きくする。
【0010】
好ましくは、前記変更手段は、前記リッチ補正におけるリッチ補正量を、前記外部EGRの有無と、前記パラメータの値とに応じて変更する。
【0011】
好ましくは、前記変更手段は、同一のパラメータに対するリッチ補正量を、外部EGR有りのときには無しのときより小さくする。
【0012】
好ましくは、前記変更手段は、外部EGR有りのとき、前記リッチ補正量を外部EGR率に応じて変更する。
【0013】
好ましくは、前記変更手段は、前記外部EGR率が大であるほど前記リッチ補正量を小さくする。
【0014】
好ましくは、前記制御装置は、吸気弁と排気弁のオーバーラップを可変にする可変手段をさらに備え、
前記変更手段は、外部EGR無しのとき、前記リッチ補正量を前記オーバーラップに応じて変更する。
【0015】
好ましくは、前記変更手段は、前記オーバーラップが大であるほど前記リッチ補正量を小さくする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、気筒間空燃比ばらつき発生時に好適なリッチ補正を行うことができるという、優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る内燃機関の概略図である。
【図2】触媒前センサおよび触媒後センサの出力特性を示すグラフである。
【図3】EGR制御マップを示す。
【図4】空燃比ばらつき発生時における各気筒の空燃比を示すグラフである。
【図5】空燃比ばらつき発生時から所定時間、主空燃比フィードバック制御を行った後の各気筒の空燃比を示すグラフである。
【図6】空燃比に対するNOx排出量および燃焼変動の変化特性を示すグラフである。
【図7】インバランス率とリッチ補正量の関係を示すグラフである。
【図8】リッチずれが小のときのリッチ補正を説明するためのグラフである。
【図9】リッチずれが大のときのリッチ補正を説明するためのグラフである。
【図10】外部EGR率とリッチ補正量の関係を示すグラフである。
【図11】オーバーラップとNOx排出量の関係を示すグラフである。
【図12】オーバーラップとリッチ補正量の関係を示すグラフである。
【図13】リッチ補正処理のフローチャートである。
【図14】触媒前センサの出力変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態に係る内燃機関の概略図である。図示されるように、内燃機関(エンジン)1は、シリンダブロック2に形成された燃焼室3の内部で燃料および空気の混合気を燃焼させ、燃焼室3内でピストンを往復移動させることにより動力を発生する。本実施形態の内燃機関1は自動車に搭載された多気筒内燃機関であり、より具体的には直列4気筒火花点火式内燃機関である。内燃機関1は#1〜#4気筒を備える。但し気筒数、形式等は特に限定されない。
【0019】
図示しないが、内燃機関1のシリンダヘッドには吸気ポートを開閉する吸気弁と、排気ポートを開閉する排気弁とが気筒ごとに配設されており、各吸気弁および各排気弁は、カムシャフトを含む動弁機構によって開閉駆動される。シリンダヘッドの頂部には、燃焼室3内の混合気に点火するための点火プラグ7が気筒ごとに取り付けられている。
【0020】
吸気弁および排気弁用の動弁機構として、各弁の開閉特性を変更するための可変バルブ機構21が採用されている。吸気弁側については、クランクシャフトに対するカムシャフトの回転位相を変更することにより、全気筒の吸気弁の開閉タイミングを一律に変更する可変バルブタイミング機構が設けられる。また排気弁側にも同様な可変バルブタイミング機構が設けられる。これら可変バルブタイミング機構により可変バルブ機構21が構成されている。この可変バルブタイミング機構には周知の構造を採用できる。
【0021】
この可変バルブ機構21により、吸気弁と排気弁のオーバーラップが可変とされる。なお吸気弁と排気弁の一方側にのみ可変バルブタイミング機構を設けてオーバーラップを可変としてもよい。可変バルブ機構21として、作用角やリフトを可変にするものを採用してもよい。
【0022】
各気筒の吸気ポートは気筒毎の枝管4を介して吸気集合室であるサージタンク8に接続されている。サージタンク8の上流側には吸気管13が接続されており、吸気管13の上流端にはエアクリーナ9が設けられている。そして吸気管13には、上流側から順に、吸入空気量を検出するためのエアフローメータ5と、電子制御式のスロットルバルブ10とが組み込まれている。吸気ポート、枝管、サージタンク8及び吸気管13により吸気通路が形成される。
【0023】
吸気通路、特に吸気ポート内に燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)12が気筒ごとに配設されている。インジェクタ12から噴射された燃料は吸入空気と混合されて混合気をなし、この混合気が吸気弁の開弁時に燃焼室3に吸入され、ピストンで圧縮され、点火プラグ7で点火燃焼させられる。
【0024】
一方、各気筒の排気ポートは排気マニフォールド14に接続される。排気マニフォールド14は、その上流部をなす気筒毎の枝管14aと、その下流部をなす排気集合部14bとからなる。排気集合部14bの下流側には排気管6が接続されている。排気ポート、排気マニフォールド14及び排気管6により排気通路が形成される。
【0025】
排気管6の上流側と下流側にはそれぞれ三元触媒からなる触媒、すなわち上流触媒11と下流触媒19が直列に取り付けられている。上流触媒11の上流側及び下流側にそれぞれ排気ガスの空燃比を検出するための第1及び第2の空燃比センサ、即ち触媒前センサ17及び触媒後センサ18が設置されている。これら触媒前センサ17及び触媒後センサ18は、上流触媒11の直前及び直後の位置に設置され、排気中の酸素濃度に基づいて空燃比を検出する。このように上流触媒11の上流側の排気合流部に単一の触媒前センサ17が設置されている。
【0026】
エンジン1にはEGR装置22が設けられる。EGR装置22は、排気通路内の排気ガスを吸気通路に環流させる外部EGRを実行するためのものである。EGR装置22は、排気マニフォールド14の排気集合部14bとサージタンク8を結ぶEGR通路23と、EGR通路23に上流側から順に設けられたEGRクーラ24およびEGR弁25とを備える。EGRクーラ24は、排気通路から取り出した排気ガスすなわちEGRガスを冷却する。EGR弁25は、開閉作動してEGR通路23を流れるEGRガス流量を調節する。
【0027】
上述の点火プラグ7、スロットルバルブ10、インジェクタ12、可変バルブ機構21及びEGR弁25は、制御手段としての電子制御ユニット(以下ECUと称す)20に電気的に接続されている。ECU20は、何れも図示されないCPU、ROM、RAM、入出力ポート、および記憶装置等を含むものである。またECU20には、図示されるように、前述のエアフローメータ5、触媒前センサ17、触媒後センサ18のほか、内燃機関1のクランク角を検出するクランク角センサ16、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ15、その他の各種センサが図示されないA/D変換器等を介して電気的に接続されている。ECU20は、各種センサの検出値等に基づいて、所望の出力が得られるように、点火プラグ7、スロットルバルブ10、インジェクタ12、可変バルブ機構21、EGR弁25を制御し、点火時期、燃料噴射量、燃料噴射時期、スロットル開度、吸排気弁の開閉タイミングおよびオーバーラップ、EGRガス流量等を制御する。
【0028】
ECU20は、クランク角センサ16からのクランクパルス信号に基づき、クランク角自体を検出し、気筒判別を行うと共に、エンジン1の回転数を算出する。ここで「回転数」とは単位時間当たりの回転数のことをいい、回転速度と同義である。本実施形態では1分間当たりの回転数rpmのことをいう。またECU20は、通常、アクセル開度に応じてスロットル開度を制御する。
【0029】
触媒前センサ17は所謂広域空燃比センサからなり、比較的広範囲に亘る空燃比を連続的に検出可能である。図2に触媒前センサ17の出力特性を示す。図示するように、触媒前センサ17は、排気空燃比に比例した大きさの電圧信号Vfを出力する。排気空燃比がストイキ(理論空燃比、例えばA/F=14.5)であるときの出力電圧はVreff(例えば約3.3V)である。
【0030】
他方、触媒後センサ18は所謂O2センサからなり、ストイキを境に出力値が急変する特性を持つ。図2に触媒後センサ18の出力特性を示す。図示するように、排気空燃比がストイキであるときの出力電圧、すなわちストイキ相当値はVrefr(例えば0.45V)である。触媒後センサ18の出力電圧は所定の範囲(例えば0〜1V)内で変化する。排気空燃比がストイキよりリーンのとき、触媒後センサの出力電圧はストイキ相当値Vrefrより低くなり、排気空燃比がストイキよりリッチのとき、触媒後センサの出力電圧はストイキ相当値Vrefrより高くなる。
【0031】
上流触媒11及び下流触媒19は、それぞれに流入する排気ガスの空燃比A/Fがストイキ近傍のときに排気中の有害成分であるNOx,HCおよびCOを同時に浄化する。この三者を同時に高効率で浄化できる空燃比の幅(ウィンドウ)は比較的狭い。
【0032】
そこで上流触媒11に流入する排気ガスの空燃比がストイキ近傍に制御されるように、空燃比制御(ストイキ制御)がECU20により実行される。この空燃比制御は、触媒前センサ17によって検出された排気空燃比を所定の目標空燃比であるストイキに一致させるような主空燃比制御(主空燃比フィードバック制御)と、触媒後センサ18によって検出された排気空燃比をストイキに一致させるような補助空燃比制御(補助空燃比フィードバック制御)とからなる。
【0033】
他方、EGR制御は次の方法で行われる。まずECU20は、検出した実際のエンジンパラメータ(例えば回転数と負荷)に基づき、図3に示すようなマップを参照して、EGRの実行可否を判断する。実際のエンジンパラメータがEGR実行領域Iにあるとき、ECU20はEGRを実行すべきと判断し、EGR弁25を開弁する。他方、実際のエンジンパラメータがEGR非実行領域IIにあるとき、ECU20はEGRを実行すべきでないと判断し、EGR弁25を全閉とする。
【0034】
EGRを実行すべきと判断したとき、ECU20は、エンジンパラメータおよび目標EGR率の関係を予め定めたマップ(図示せず)に従い、目標EGR率を決定する。そしてこの決定した目標EGR率が実際に実現されるように、EGR弁25の開度を制御する。
【0035】
EGRの有無に応じて、燃料噴射量、燃料噴射時期および点火時期決定用マップが切り替えられ、同一のエンジンパラメータに対するそれぞれの値は、EGR無しのときと有りのときとで変更される。
【0036】
ところで、上述したように、本実施形態の如き多気筒内燃機関にあっては、例えば全気筒のうちの一部の気筒(特に1気筒)の燃料噴射系(特にインジェクタ12)が故障するなどして、当該一部気筒の燃料噴射量が残部気筒の燃料噴射量よりも多くなり、気筒間に空燃比のばらつき(インバランス:imbalance)が発生する場合がある。例えば#1気筒が他の#2、#3、#4気筒よりも燃料噴射量が多くなり、その空燃比が大きくリッチ側にずれる場合等である。
【0037】
このときでも、前述の主空燃比フィードバック制御により比較的大きな補正量を与えれば、触媒前センサ17に供給されるトータルガス(全気筒の排気ガスが合流してなるガス)の空燃比をストイキに制御できる場合がある。しかし、気筒別に見ると、#1気筒がストイキより大きくリッチ、#2、#3及び#4気筒がストイキよりリーンであり、全体のバランスとしてストイキとなっているに過ぎず、エミッション上好ましくないことは明らかである。
【0038】
図4には空燃比ばらつき発生時における各気筒の空燃比A/Fを示す。この例では、#1気筒において異常が発生し、例えば燃料噴射量が過剰となる結果、空燃比がストイキから大きくリッチ側にずれている。すなわち#1気筒においてリッチずれが生じている。
【0039】
他方、円内に示される残部の#2,#3,#4気筒は正常であり、空燃比がストイキとなっている。すなわち#2,#3,#4気筒においてはリッチずれが生じていない。
【0040】
#1気筒では、インバランス率で+20%のリッチずれが生じている。ここでインバランス率(%)とは、基準となる空燃比(本実施形態では目標空燃比であるストイキ)に対する空燃比ずれの大きさを表すパラメータである。インバランス率をIB、空燃比ずれを起こしている気筒(インバランス気筒)の空燃比をZib、基準空燃比をZbとすると、インバランス率IBは次式(1)で表される。
【0041】
【数1】

【0042】
インバランス率IBの絶対値が大きいほど空燃比ずれが大きく、空燃比ばらつき度合いは大きい。
【0043】
リッチずれ気筒である#1気筒の空燃比は14.5×0.8=11.6である。これに対し、正常気筒(#2,#3,#4気筒)においてはインバランス率が0%、空燃比が14.5である。
【0044】
図5には、空燃比ばらつき発生時から所定時間、主空燃比フィードバック制御を行った後の各気筒の空燃比A/Fを示す。主空燃比フィードバック制御を行った結果、各気筒の空燃比がインバランス率で5%ずつリーン側に補正され、#1気筒の空燃比は12.2に、正常気筒の空燃比は15.3に変化する。
【0045】
すると正常気筒の空燃比がストイキよりリーンになるので、正常気筒からのNOx排出量が増加し、これが問題となる。
【0046】
図6には、空燃比A/Fに対するNOx排出量および燃焼変動の変化特性を示す。線Aは外部EGR無しの場合のNOx排出量変化特性、線Bは外部EGR有りの場合のNOx排出量変化特性、線Cは外部EGR無しの場合の燃焼変動変化特性、線Dは外部EGR有りの場合の燃焼変動変化特性を示す。
【0047】
ここで燃焼変動とは、各気筒間の燃焼状態の変化をいい、これはエンジンのトルク変動となって現れる。各気筒の燃焼状態は均一であるのが望ましく、このときエンジンのトルク変動は少なく、燃焼変動は良好な状態である。これに対し、燃焼変動が悪い状態とは、各気筒の燃焼状態が不均一でばらついており、エンジンのトルク変動が増加した状態である。空燃比ばらつきが生じると、各気筒の燃焼状態もばらつき、燃焼変動が悪化する。
【0048】
線A(破線)に示すように、EGR無しの場合のNOx排出量変化特性は、ストイキよりリーンな所定空燃比において極大ピークを持つような特性である。そして線B(実線)に示すように、外部EGR有りの場合のNOx排出量変化特性は、線Aをそのまま低NOx側に平行移動したような特性である。外部EGR実行の結果、燃焼速度および燃焼温度が低下し、NOx排出量が低減されるからである。
【0049】
これに対し、線C(破線)に示すように、外部EGR無しの場合の燃焼変動変化特性は、ストイキにおいて極小ピークを持つような特性である。そして線D(実線)に示すように、外部EGR有りの場合の燃焼変動変化特性は、線Cをそのまま燃焼変動悪化方向に平行移動したような特性である。外部EGR実行の結果、燃焼速度および燃焼温度が低下し、燃焼状態が不安定になるからである。
【0050】
例えば線Aに着目して、線上のプロットa1(白丸)は、図4に示したような正常気筒のストイキ時におけるNOx排出量を示す。これに対し、線上のプロットa2(白丸)は、図5に示したような正常気筒のリーン時におけるNOx排出量を示す。これからも分かるように、空燃比ばらつき発生後に主空燃比フィードバック制御を行うと正常気筒のNOx排出量が増加する。
【0051】
なお、触媒11,19の特性上、ストイキに対するリーン側の浄化ウィンドウはリッチ側の浄化ウィンドウより狭いので、排気空燃比のリーンずれが起こると触媒11,19のNOx浄化率が顕著に低下してしまう。
【0052】
そこで、かかる正常気筒のNOx排出量増加を抑制するため、主(および補助)空燃比フィードバック制御の目標空燃比を若干リッチ側に補正し(すなわち弱リッチ補正し)、全気筒の平均的な空燃比をストイキよりも若干リッチとする。こうすれば、正常気筒の空燃比を、リッチ補正しない場合に比べてリッチ側にすることができ、NOx排出量の増加を抑制することができる。
【0053】
図6において、線A上のプロットa3(白星)は、外部EGR無しで且つ目標空燃比をストイキよりも若干リッチな所定値Z1(例えば14.3)に補正した場合の全気筒からのNOx排出量を便宜的に示す。また線C上のプロットc3(白星)は、外部EGR無しで且つ当該所定値Z1にリッチ補正した場合の全気筒での燃焼変動を便宜的に示す。見られるように、全気筒での燃焼変動は、その許容限界αよりも良好側である。
【0054】
ところで、本発明者らの研究結果によれば、外部EGR有りのときにも外部EGR無しのときと同じようにリッチ補正を行うことは好ましくないことが判明した。
【0055】
すなわち、図6において、線B上のプロットb1(黒丸),b2(黒丸),b3(黒星)はそれぞれ線A上のプロットa1,a2,a3に対応する。また、線D上のプロットd3(黒星)は線C上のプロットc3に対応する。プロットd3に示すように、外部EGR有りで且つ目標空燃比を外部EGR無しのときと同じ値Z1に補正した場合、全気筒での燃焼変動は、燃焼変動の許容限界αよりさらに悪化してしまう。そしてトルク変動も許容できないレベルとなり、振動が増大しドライバビリティが悪化する。またエミッションも同時に悪化する。
【0056】
つまり、外部EGR有りのときにも外部EGR無しのときと同じ量のリッチ補正を行ってしまうと、燃焼変動が許容限界αを超えてしまうという不具合がある。
【0057】
そこでかかる問題を解決し、気筒間空燃比ばらつき発生時に好適なリッチ補正を行うべく、本実施形態では以下に述べるようなリッチ補正を行う。
【0058】
概略的に述べると、外部EGRの有無に応じて、リッチ補正を開始するインバランス率の値を変更する。より具体的には、外部EGR有りのときには無しのときより、リッチ補正を開始するインバランス率の値を大きくする。
【0059】
この点を図7を用いて説明する。図7は、インバランス率IBとリッチ補正量Xの関係を示す。図中、線E(破線)はEGR無しのときの関係を示し、線F(実線)はEGR有りのときの関係を示す。これらの関係はマップ(関数でもよい。以下同様)の形式でECU20に予め記憶される。
【0060】
本実施形態では、ECU20が、一部気筒(特に1気筒)の空燃比がストイキからリッチ側にずれるリッチずれを検出すると共に、このリッチずれを検出したとき、リッチずれの大きさを表すパラメータであるインバランス率IBを算出する。例えば図4に示したような#1気筒のリッチずれが発生したとき、ECU20は、後述の方法で当該リッチずれを検出し、後述の方法で#1気筒のインバランス率IBを算出する。
【0061】
次いでECU20は、図7に示すような関係(マップ)から、インバランス率IBに対応したリッチ補正量Xを算出する。
【0062】
そしてECU20は、取得したリッチ補正量Xをストイキ(14.5)から減じて新たな目標空燃比とし、目標空燃比をリッチ側に補正する。リッチ補正量Xは例えば1より小さい値である。
【0063】
図7の線Eから分かるように、EGR無しのとき、インバランス率IBがゼロから第1所定値Y1未満の範囲内でリッチ補正量Xはゼロである。第1所定値Y1はゼロより僅かに大きい値であり、当該範囲は誤差を許容するための所謂不感帯である。但しこのような不感帯を無くすこともできる。そしてインバランス率IBが第1所定値Y1以上となるとリッチ補正量Xはゼロより大きくなる。この第1所定値Y1が、EGR無しのときにリッチ補正を開始するインバランス率の値、すなわちEGR無しのときの補正開始値である。インバランス率IBが第1所定値Y1から大きくなるにつれ、リッチ補正量Xが大きくなり、目標空燃比はよりリッチ側に補正される。
【0064】
これに対し、図7の線Fから分かるように、EGR有りのときにも無しのときと同様の傾向があるが、下記の点で無しのときと異なる。すなわち、インバランス率IBがゼロから第2所定値Y2未満の範囲内でリッチ補正量Xはゼロであるが、第2所定値Y2は第1所定値Y1と異なり、第2所定値Y2は第1所定値Y1より大きい。そしてインバランス率IBが第2所定値Y2以上となるとリッチ補正量Xはゼロより大きくなる。第2所定値Y2が、EGR有りのときにリッチ補正を開始するインバランス率の値、すなわちEGR有りのときの補正開始値である。
【0065】
よって、EGR有りのときには無しのときより大きなリッチずれが生じるまで、補正は行われない。よってリッチずれが比較的小さいとき、具体的にはインバランス率IBが第2所定値Y2未満のとき、補正は停止される。
【0066】
また、インバランス率IBが第2所定値Y2から大きくなるにつれ、リッチ補正量Xも大きくなるが、このとき、同一のインバランス率IBに対するリッチ補正量Xは、EGR無しのときより小さい。従って、インバランス率IBが同一である場合、EGR有りのときには無しのときよりも目標空燃比がより小さくリッチ側に補正される。
【0067】
このようなリッチ補正を行うと、EGR有りのときには図8および図9に示す通りとなる。
【0068】
まず図8に示すように、リッチずれが小すなわちインバランス率IBが小(IB<Y2)のとき、正常気筒のNOx排出量に関するプロットは、主空燃比フィードバック制御の結果、ストイキ時のb1から若干リーン側にずれたb2に移動する。このとき正常気筒のNOx排出量は、EGR無し且つストイキ時のプロットa1で示されるNOx排出量よりも少ない。また少なくとも正常気筒の燃焼変動はプロットd2で示されるように燃焼変動の許容限界α以下である。従ってNOx排出量および燃焼変動ともに、問題視するレベルにならないので、この場合、リッチ補正は行われず、リッチ補正は停止される。
【0069】
次に図9に示すように、リッチずれが大すなわちインバランス率IBが大(IB≧Y2)のとき、正常気筒のNOx排出量に関するプロットは、主空燃比フィードバック制御の結果、ストイキ時のb1から大きくリーン側にずれたb2に移動する。このとき正常気筒のNOx排出量は、EGR無し且つストイキ時のプロットa1で示されるNOx排出量より多くなる。また仮に、EGR無しのときと同じ量だけリッチ補正を行い、目標空燃比をストイキから大きくリッチ側にずれた値Z1にしてしまうと、全気筒での燃焼変動が、仮想プロットd3に示すように燃焼変動の許容限界αを超えてしまう。なおEGR無しのときには、値Z1にするリッチ補正は、プロットa3,c3に示すように問題とならない。
【0070】
しかしながら、本実施形態では、EGR無しのときより少ない量しかリッチ補正を行わず、目標空燃比を、値Z1よりも小さくストイキからずれた値Z2にする。すると全気筒での燃焼変動が、プロットd4に示すように燃焼変動の許容限界α以下となり、燃焼変動を許容範囲内に抑制することが可能である。なお値Z2のときの全気筒でのNOx排出量をプロットb4で便宜的に示す。
【0071】
このように本実施形態によれば、外部EGRの有無に応じて補正開始値をY1とY2の間で変更する。よって、外部EGRの有無に応じた好適なリッチ補正を行うと共に、外部EGRの有無に応じて補正開始タイミングを変更することができ、リッチ補正実行時におけるNOx排出量と燃焼変動を適切なバランスで両立することが可能である。
【0072】
また、外部EGR有りのときの補正開始値Y2を、外部EGR無しのときの補正開始値Y1より大きくする。よって、外部EGR有りのときには無しのときより補正開始タイミングを遅らせ、外部EGR有り且つインバランス率小(IB<Y)のとき補正を停止することができ、これによってもリッチ補正実行時におけるNOx排出量と燃焼変動をより適切なバランスで両立することができる。
【0073】
また、リッチ補正におけるリッチ補正量を、外部EGRの有無と、インバランス率の値とに応じて変更する。そして同一のインバランス率に対するリッチ補正量を、外部EGR有りのときには無しのときより小さくする。よって、外部EGR有りのときには無しのときより目標空燃比をリーン側にし(図9のZ1,Z2参照)、過剰なリッチ化を防止して燃焼変動の悪化を防止することができる。
【0074】
ところで、図6に示したような特性線A,B,C,DはEGR率に応じて変化する。よって図7に示したような関係ないしマップも、EGR率に応じて変更するのが好ましく、本実施形態ではかかる変更が行われる。
【0075】
例えば、図6に示すように、外部EGR有りのときのNOx排出量特性線Bは、外部EGR率が小であるほど、外部EGR無しのときのNOx排出量特性線Aに近づくよう図の上側に平行移動し(図中B1参照)、外部EGR率が大であるほど、外部EGR無しのときのNOx排出量特性線Aから離れるよう図の下側に平行移動する(図中B2参照)。
【0076】
従って、図7に示すように、外部EGR有りのときの線Fは、外部EGR率が小であるほど、外部EGR無しのときの線Eに近づくよう図の上側に平行移動され(図中F1参照)、外部EGR率が大であるほど、外部EGR無しのときの線Eから離れるよう図の下側に平行移動される(図中F2参照)。
【0077】
この結果、外部EGR有りのとき、外部EGR率が大であるほどリッチ補正量Xは小さくされる。すなわち、同一のインバランス率IBに対し、外部EGR率が大であるほどリッチ補正量Xは小さくなるよう変更ないし補正され、外部EGR率が小であるほどリッチ補正量Xは大きくなるよう変更ないし補正される。
【0078】
このような変更ないし補正の様子を示したのが図10である。図示されるように、外部EGR率が増大するにつれリッチ補正量Xは減少される。
【0079】
なお、かかる変更に際しては、外部EGR率と、リッチ補正量Xを補正する補正値との関係を予めマップ化し、実際の外部EGR率(具体的には目標EGR率)に対応した補正値をマップから算出し、当該補正値により図7における基準の線Fを補正してもよい。
【0080】
他方、図6に示すように、外部EGR有りのときの燃焼変動特性線Dは、外部EGR率が小であるほど、外部EGR無しのときの燃焼変動特性線Cに近づくよう図の下側に平行移動し(図中D1参照)、外部EGR率が大であるほど、外部EGR無しのときの燃焼変動特性線Cから離れるよう図の上側に平行移動する(図中D2参照)。この結果、外部EGR率が小であるほど、ストイキからずれたときの燃焼変動のマージン(許容限界α以下となる範囲)が増え、補正開始値Y2を小さくし(補正開始タイミングを早め)、同一のインバランス率に対しリッチ補正量Xを増大することができる。この点、図7に示すような線F1とも整合している。すなわち、外部EGR率が小であるほど、補正開始値Y2は小さくなり、同一のインバランス率に対するリッチ補正量Xは増大する。
【0081】
次に、図6に示すように、外部EGR無しのときのNOx排出量特性線Aは、オーバーラップ(OL)が小であるほど、外部EGR有りのときのNOx排出量特性線Bから離れるよう図の上側に平行移動し(図中A1参照)、オーバーラップが大であるほど、外部EGR有りのときのNOx排出量特性線Bに近づくよう図の下側に平行移動する(図中A2参照)。
【0082】
図11に示すように、オーバーラップ(OL)が大であるほど、内部EGR率が増加し、NOx排出量は減少する。よって上記のような特性となる。
【0083】
従って、図7に示すように、外部EGR無しのときの線Eは、オーバーラップが小であるほど、外部EGR有りのときの線Fから離れるよう図の上側に平行移動され(図中E1参照)、オーバーラップが大であるほど、外部EGR有りのときの線Fに近づくよう図の下側に平行移動される(図中E2参照)。
【0084】
この結果、外部EGR無しのとき、オーバーラップが大であるほどリッチ補正量Xは小さくされる。すなわち、同一のインバランス率IBに対し、オーバーラップが大であるほどリッチ補正量Xは小さくなるよう変更ないし補正され、オーバーラップが小であるほどリッチ補正量Xは大きくなるよう変更ないし補正される。
【0085】
このような変更ないし補正の様子を示したのが図12である。図示されるように、オーバーラップが増大するにつれリッチ補正量Xは減少される。
【0086】
なお、かかる変更に際しては、オーバーラップと、リッチ補正量Xを補正する補正値との関係を予めマップ化し、実際のオーバーラップに対応した補正値をマップから算出し、当該補正値により図7における基準の線Eを補正してもよい。
【0087】
他方、図6に示すように、外部EGR無しのときの燃焼変動特性線Cは、オーバーラップが小であるほど、外部EGR有りのときの燃焼変動特性線Dから離れるよう図の下側に平行移動し(図中C1参照)、オーバーラップが大であるほど、外部EGR有りのときの燃焼変動特性線Dに近づくよう図の上側に平行移動する(図中C2参照)。なお、外部EGR無しのときには、ストイキからずれたときの燃焼変動のマージンが元々十分にあるので、かかる特性線の変更が燃焼変動の悪化につながることは殆ど無い。
【0088】
なお、EGR有りのとき、オーバーラップに基づくリッチ補正量の変更ないし補正を併せて行ってもよい。
【0089】
次に、図13を参照してリッチ補正処理を説明する。このリッチ補正処理はECU20が所定の演算周期(例えば4ms)毎に繰り返し実行する。
【0090】
まずステップS101では、エンジン1の運転条件を表す各種パラメータの値を取得する。このパラメータには少なくともエンジン回転数、エンジン負荷、水温、目標EGR率、オーバーラップが含まれる。エンジン負荷はアクセル開度または吸入空気量に基づいて算出可能である。
【0091】
次にステップS102において、図4に示したような、一部気筒(特に1気筒)のストイキからのリッチずれが検出されたか否かが判断される。
このリッチずれの検出は次の方法で行う。本実施形態では、触媒前センサ17の出力に基づき各気筒の空燃比を個別に検出するようになっている。各気筒から排出された排気ガスは時間遅れを伴って次々と触媒前センサ17に接触し、これに応答して触媒前センサ17の出力も、各気筒の排気ガスの空燃比に相当する値に変化する。
【0092】
図14はこのような触媒前センサ17の出力変化を空燃比A/Fに換算して示す。ECU20は、現在の触媒前センサ17の出力がどの気筒の排気ガスに基づくものであるかを自身の気筒判別機能等により把握する。そして1単位である1エンジンサイクル(=720°CA)内に、ストイキからリッチ側に大きく(すなわち所定値以上)ずれたセンサ出力があった場合、このセンサ出力に対応する気筒にリッチずれが発生したと判断する。逆にストイキからリッチ側に大きくずれたセンサ出力がない場合、リッチずれは発生してないと判断する。
【0093】
ステップS102において、リッチずれが検出されてなければ処理が終了され、他方リッチずれが検出されたならばステップS103に進む。
【0094】
ステップS103では、リッチずれが発生した気筒のインバランス率が算出される。具体的には、図14に示すように、リッチずれ気筒に対応するセンサ出力の最もリッチ側のピークが検出され、このピークの換算空燃比とストイキの差ΔZに基づいて、式:IB=ΔZ/14.5(%)からインバランス率IBが算出される。
【0095】
なお、インバランス率は、主空燃比フィードバック制御の補正量に基づいて算出することも可能である。すなわち、リッチずれが発生すると図5に示したように主空燃比フィードバック制御によって全体の空燃比がリーン側に補正される。リッチずれが大きくなるほど、リーン補正量が大きくなるので、このリーン補正量に基づいてインバランス率を算出することが可能である。例えば、全体としてインバランス率5%相当のリーン補正を行った場合、リッチずれ気筒におけるインバランス率は5×4=20%として算出可能である。リーン補正量とインバランス率の関係を予めマップ形式でECU20に記憶しておき、このマップから、実際のリーン補正量に対応したインバランス率を算出するのも好ましい。
【0096】
次に、ステップS104では、現在のエンジン運転条件が図3に示したようなEGR実行領域Iにあるか否かが判断される。
EGR実行領域Iにある場合、すなわち外部EGR有りの場合、ステップS105に進んで、ステップS103で算出されたインバランス率とステップS101で取得された目標EGR率との値に基づき、図7の線F(またはF1,F2)の関係に従って、リッチ補正量Xが算出される。
【0097】
他方、EGR実行領域Iにない場合、すなわち外部EGR無しの場合、ステップS106に進んで、ステップS103で算出されたインバランス率とステップS101で取得されたオーバーラップとの値に基づき、図7の線E(またはE1,E2)の関係に従って、リッチ補正量Xが算出される。
【0098】
こうしてリッチ補正量Xが算出されたら、ステップS107に進み、目標空燃比がリッチ補正される。すなわちストイキ(14.5)からリッチ補正量Xを減じて得られる値が補正後の目標空燃比とされる。
【0099】
こうして処理が終了され、以降、補正後の目標空燃比を用いて主・補助空燃比フィードバック制御が実行される。これによりNOx排出量と燃焼変動を好適にバランスさせつつ空燃比フィードバック制御を行うことができ、エミッションとドライバビリティを好適に両立させることができる。
【0100】
以上、本発明の好適な実施形態を詳細に述べたが、本発明の実施形態は他にも様々なものが考えられる。例えば、外部EGR率およびオーバーラップの少なくとも一方に基づくリッチ補正量の変更を省略した実施形態も可能である。目標空燃比は必ずしもストイキに一致させる必要はなく、適宜変更可能ある。また、リッチずれの大きさを表すパラメータもインバランス率以外のパラメータを採用することが可能である。例えば、リッチずれが大きいほど、1エンジンサイクルを1周期としたサイン波状の空燃比センサ出力変動が大きくなることがあるので、この出力変動に基づく値(傾き、振幅、ピーク差等)を当該パラメータとすることも可能である。
【0101】
本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 内燃機関(エンジン)
2 インジェクタ
11 上流触媒
17 触媒前センサ
18 触媒後センサ
20 電子制御ユニット(ECU)
21 可変バルブ機構
22 EGR装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路内の排気ガスを吸気通路に環流させる外部EGRを実行するためのEGR手段と、
前記排気ガスの空燃比が所定の目標空燃比となるように空燃比をフィードバック制御する空燃比制御手段と、
一部気筒の空燃比が前記目標空燃比からリッチ側にずれるリッチずれを検出する検出手段と、
前記検出手段により前記リッチずれが検出されたとき、当該リッチずれの大きさを表すパラメータを算出する算出手段と、
前記算出手段により算出されたパラメータに応じて前記目標空燃比をリッチ側に補正するリッチ補正手段と、
前記外部EGRの有無に応じて、前記リッチ補正を開始する前記パラメータの値を変更する変更手段と、
を備えたことを特徴とする多気筒内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記変更手段は、外部EGR有りのときには無しのときより前記リッチ補正を開始するパラメータの値を大きくする
ことを特徴とする請求項1に記載の多気筒内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記変更手段は、前記リッチ補正におけるリッチ補正量を、前記外部EGRの有無と、前記パラメータの値とに応じて変更する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の多気筒内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記変更手段は、同一のパラメータに対するリッチ補正量を、外部EGR有りのときには無しのときより小さくする
ことを特徴とする請求項3に記載の多気筒内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記変更手段は、外部EGR有りのとき、前記リッチ補正量を外部EGR率に応じて変更する
ことを特徴とする請求項3または4に記載の多気筒内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記変更手段は、前記外部EGR率が大であるほど前記リッチ補正量を小さくする
ことを特徴とする請求項5に記載の多気筒内燃機関の制御装置。
【請求項7】
吸気弁と排気弁のオーバーラップを可変にする可変手段をさらに備え、
前記変更手段は、外部EGR無しのとき、前記リッチ補正量を前記オーバーラップに応じて変更する
ことを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の多気筒内燃機関の制御装置。
【請求項8】
前記変更手段は、前記オーバーラップが大であるほど前記リッチ補正量を小さくする
ことを特徴とする請求項7に記載の多気筒内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−137049(P2012−137049A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290896(P2010−290896)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】