説明

天井走行車システム

【構成】 イントラベイルート6の側方にサイドバッファ18を、下方に下方バッファ20を設置すると共に、バッファを設置した区間8に櫛歯マークを設け、天井走行車12でカウントする。バッファ18,20の停止データをデータ送出部10から天井走行車へ供給する。
【効果】 バッファをロードポートの無い位置にも多数設置でき、かつバッファを増設/撤去自在に設置しても、天井走行車に停止データを供給できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は天井走行車システムに関し、特にその物品の保管能力の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
発明者らは、天井走行車の走行レールの側方の天井空間内に、バッファを設けることを提案した(特許文献1)。この天井走行車システムでは、天井走行車に横移動部を設けて、昇降駆動部を走行レールに対して横方向に移動させ、サイドのバッファとの間で物品を受け渡しする。発明者はここで、走行レールの側方や下方などに設けたバッファの保管能力を更に増すことを検討して、この発明に到った。
【0003】
特許文献1では、サイドバッファを処理装置のロードポートと向かい合った位置に設けて、ロードポートへの停止データをサイドバッファへの停止データに兼用する。しかしこのようにすると、サイドバッファの設置位置が制約される。従ってバッファを多数設けるには、ロードポートへの停止データに依存せずに、バッファへの停止データを天井走行車に供給する必要がある。
【特許文献1】特願2004−186312号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、物品載置台を多数設けることにより、天井走行車システムでの物品保管能力を増すと共に、各載置台に対して天井走行車が所定位置に停止できるようにすることにある。
請求項2の発明での追加の課題は、載置台に対して、天井走行車がより正確な位置に停止できるようにすることにある。
請求項3の発明での追加の課題は、載置台に対する停止のティーチング無しに、天井走行車が載置台に対する所定位置に停止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の天井走行車システムは、天井空間に走行レールを設けて天井走行車を走行させ、かつ前記走行レールに沿って天井空間に物品載置台を設けたシステムにおいて、少なくとも物品載置台を複数設ける区間で、走行レールに櫛歯マークを設けると共に、天井走行車には、前記櫛歯マークをカウントするためのカウント手段と、物品載置台に対する櫛歯マークに対応する停止データを、天井走行車の走行制御系に供給するための停止データ供給手段、とを設けたことを特徴とする。
【0006】
好ましくは、天井走行車の走行制御系にエンコーダを設けて、櫛歯のエッジ間の位置を補間して停止する。なおエッジ間の位置の補間を行わない場合、櫛歯マークのエッジを読み取る代わりに、櫛歯マークの明暗やオン/オフなどの状態自体を読み取っても良い。
【0007】
また好ましくは、停止データ供給手段を走行レールに設けて停止データを記憶させ、天井走行車には停止データ供給手段から停止データを読み出すための手段を設ける。停止データ供給手段は例えばRFIDや2次元等のバーコードで実現し、読み出し手段は例えばRFIDリーダや2次元等のバーコードリーダで実現する。
【発明の効果】
【0008】
この発明では、天井走行車に物品載置台に対する停止データを、櫛歯マークに対応するデータとして供給する。天井走行車は走行レールに設けた櫛歯マークをカウントして、物品載置台に対して停止する。このため物品載置台の設置位置には、ロードポートの向かい側などの制約が無く、多数の物品載置台を設置できる。
【0009】
そして物品載置台の個数を増すと、ロードポートの状態などを意識せずに搬送作業を実行でき、例えばロードポートが塞がっている場合、近傍の上流側の物品載置台に搬送物品を仮置きして、次の搬送作業を実行することができる。このため搬送作業が効率化する。さらにインターベイルートとイントラベイルートの境界のストッカなどを不要にでき、あるいはストッカの数を削減できる。これらのため、遠距離から搬送先のロードポートの状態を意識せずに搬送できるので、ロードポート/ロードポート間のインターベイルートを経由する長距離直接搬送が容易になる。
【0010】
ここで、エンコーダで櫛歯マークのエッジからの走行距離を検出すると、櫛歯マークのエッジとエッジの間の位置でも、天井走行車は物品載置台に対して正確に停止できる。
【0011】
天井走行車が停止データ供給手段から停止データを読み出して停止するようにすると、物品載置台に対して天井走行車を停止させるためのティーチング走行を省略できる。なお停止データ供給手段を天井走行車の走行ルートのマップで実現しても、ティーチングを省略できるが、その場合、物品載置台の増設の都度、マップを書き換える必要がある。多数の天井走行車に対して通信のみでマップを書き換えるには、信頼性の高い通信を多数回行う必要がある。これに対して供給手段を走行レールに設けると、物品載置台を増設あるいは撤去した区間で、停止データ供給手段のデータを変更すれば良いので、物品載置台の増設や撤去が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0013】
図1〜図5に、天井走行車システム2の実施例を示す。図において、4はインターベイルート、6はイントラベイルートで、イントラベイルート6は例えば工程内搬送経路に対応し、インターベイルート4は工程間搬送経路に対応する。イントラベイルート6の直線区間8に櫛歯マークを設置し、その入口側にRFIDや2次元バーコードなどを用いたデータ送出部10を設けて、天井走行車12が停止データを読み出せるようにする。天井走行車12は図1の矢印方向に一方向に走行し、イントラベイルート6に沿って半導体処理装置などの多数の処理装置14が設けられ、各処理装置14にはロードポート16が設けてある。処理装置14以外に検査装置やストッカなどを設ける場合、これらの物品の受け渡し用のステーションもロードポートと呼ぶ。
【0014】
少なくともイントラベイルート6に対して、走行経路の側方にサイドバッファ18を設ける。また好ましくはイントラベイルート6の走行経路の下方で、ロードポート16と重なり合わない位置に、下方バッファ20を設ける。22は天井走行車システムのコントローラで、天井走行車12に対して、ロードポート16やバッファ18,20を、搬送元と搬送先の2種類指定し、その間で物品を搬送させる。
【0015】
図2にバッファ18,20を示すと、クリーンルームなどの上部の天井空間23に走行レール24を1本あるいは複数本平行に配置する。走行レール24の下部には給電レール26を設け、例えば給電レール26内に櫛歯マーク28を配置する。櫛歯マーク28は実施例ではイントラベイルートの直線区間の全体に渡って配置するが、これ以外にイントラベイルートの全体に渡って配置したり、もしくはインターベイルートやイントラベイルートを問わず、天井走行車システムの走行レール全体に渡って配置しても良い。
【0016】
天井走行車12には走行部30を設けて走行レール24内を走行させ、受電部32を設けて、給電レール26から例えば非接触給電により受電する。受電部32には光学センサなどから成る櫛歯マークリーダ34を設けて、櫛歯マーク28を読み取ってそのエッジをカウントする。また受電部32には図示しない通信部を設けて、給電レール26を一種のLANとして利用し、コントローラや他の天井走行車と通信する。
【0017】
天井走行車12の横移動部36は、θドライブ38と昇降駆動部40、及び昇降台42を走行レール24に対して横方向に移動させる。θドライブ38は昇降駆動部40の向きを水平面内で回動させ、昇降駆動部40は昇降台42を昇降させる。そして昇降台42により、半導体カセットなどの物品44を把持/解放自在にチャックして受け渡しを行う。
【0018】
46は走行レール24の支柱で、47,48はバッファ18,20の支柱である。サイドバッファ18での物品の載置面は、天井走行車12で物品44を搬送する際の、物品の底面よりもやや低い高さとする。なお図2に鎖線で示すように、サイドバッファ18を多段に設けても良い。下方バッファ20での物品載置面は、載置した物品の上面が走行中の天井走行車12と干渉しない高さとする。サイドバッファ18は図2では走行レール24の左右の片側に設けたが、左右両側に設けても良い。
【0019】
サイドバッファ18の設置位置は、天井走行車12の停止制御が容易で、かつカーブ走行中の天井走行車などと干渉しない位置であれば、任意の位置に設置でき、この結果イントラベイルートの直線区間での任意の位置に設置できる。下方バッファ20も天井走行車の停止制御が容易で、ロードポート16と干渉しない位置であれば任意の位置に設置でき、このため、イントラベイルートの直線区間内の、ロードポートの上部を除いた任意の位置に設置できる。図2の50は、クリーンルームなどの地上付近の空間、即ち地上空間で、ロードポート16は地上空間50に設けてある。
【0020】
図3に、天井走行車の横移動部36の構造を示すと、52は駆動用のボールネジで、フレーム54に設けたナット56を取り付けてある。58は例えば左右一対のエンドレスのベルトで、ワイヤやロープなどでも良く、そのプーリをフレーム54に取り付ける。ベルト58は固定部60で天井走行車の本体フレームに固定され、固定部62でθドライブに取り付けてある。このためボールネジ52を駆動すると、ナット56と共にフレーム54が移動し、θドライブは固定部62と共にボールネジ52の2倍のストロークで横移動する。横移動部36は倍速機構を用いたものであるが、横移動部の機構自体は任意である。また図3では横移動部36の横移動方向が片側のみなので、図2の走行レール24の片側にサイドバッファ18を設ける。
【0021】
θドライブ38の構造を図4に示すと、64はギア付きのリングで、その下方に昇降駆動部を取り付け、回動モータ66によりギア付きリング64を回動させて、所定の角度内で昇降駆動部40を回動させる。θドライブ38は昇降駆動部40を水平面内で旋回させるターンテーブルであればよい。
【0022】
図5に、天井走行車の停止制御のための制御系を示す。櫛歯マーク28は状態Aと状態Bの2つの状態が所定のピッチで繰り返すマークで、櫛歯マークの物理的形状29を図5の下部に示す。櫛歯マーク28は例えばカラーテープで実現し、櫛歯マークリーダ34には例えば一対の光学センサ70,72を設けて、櫛歯マーク28のエッジを検出する。一対の光学センサ70,72を設けると、これらのエッジ検出信号の順序から天井走行車が前進中か後進中かを判別でき、また位置の分解能を2倍にできる。しかし単一の光学センサを用いても良い。また櫛歯マーク28を磁気マークとすると、光学センサに代えて磁気センサを用いると良い。カウンタ74は、光学センサ70,72のエッジ検出信号から天井走行車の走行方向を判別し、櫛歯マーク28の2倍の分解能で位置を検出する。
【0023】
直線区間の入口などには、データ送出部10としてのRFIDタグを設け、バッファに対する停止データを記憶させる。例えばこのデータは、バッファのIDとバッファの位置データ、バッファの高さデータ及びθドライブに対する回動角のデータからなり、サイドバッファの場合、これ以外に横移動データを記憶する。RFIDタグには、サイドバッファや下方バッファに対する停止データの他に、ロードポートに対する停止データも記憶させても良い。またRFIDタグの容量が充分ある場合、各バッファやロードポートでの物品の有無や、物品が存在する場合、そのIDなどを記憶させても良い。この場合、バッファやロードポートの状態は、例えばコントローラからRFIDタグに書き込む。天井走行車にはRFIDリーダ76を設けて、RFIDタグのデータを読み取り、コントローラから指定されたバッファに対する停止データを、停止データ記憶部78に一時記憶する。
【0024】
エンコーダ80は天井走行車の走行モータの軸や走行車輪、ガイドローラなどの回転角を検出し、積算カウンタ82で回転角を積算して走行距離を求める。また補間カウンタ83は、カウンタ74からの信号により、光学センサ70,72が櫛歯マーク28のエッジを検出する毎にリセットされ、エッジとエッジの間でのエンコーダの出力をカウントする。そしてカウンタ74の出力と補間カウンタ83の出力を加算器84で加算したものが、直線区間の開始部からの天井走行車の座標である。この座標を減算器86で停止位置のデータと比較して、誤差が0となった点で停止するように、天井走行車の走行モータを駆動すると、バッファに対して正しい位置で停止できる。
【0025】
バッファに対する横移動距離や、昇降台の昇降高さ、θドライブによる回動角なども、同様に停止データ記憶部78から読み出して、これらのデータに従って、横移動部やθドライブあるいは昇降駆動部を制御する。なお横移動距離や高さあるいは回動角などを、サイドバッファと下方バッファとでそれぞれ統一しておくと、これらのデータをRFIDタグから読み出す必要がない。
【0026】
バッファに対する停止データとしてはこれ以外に、天井走行車に設けた走行ルートのマップに、各バッファに対する停止データを書き込むことが考えられる。但しこの場合、バッファの数が1000以上で、天井走行車の台数が100台以上のような大規模なシステムでは、頻繁にバッファの増設や撤去を行うことが考えられる。そしてこのような場合に多数台の天井走行車に対して確実にマップを書き換えるように通信するのは、かなりの負担となる。
【0027】
なおバッファ18,20の個数が多い場合、1つの直線区間を複数に区分して、データ送出部10を1つの直線区間に複数設けても良い。データ送出部10へ書き込む停止データを簡単に得られるように、エッジの数を人間が読み取るための数あるいはマークを櫛歯マーク28に記載すると、バッファを設置した際に、簡単に停止データを得ることができる。
【0028】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) イントラベイルートに沿って多数のバッファを設けて、天井走行車を停止制御できる。
(2) バッファの設置位置は、櫛歯マークのエッジとエッジの間にすることもできる。
(3) データ送出部のデータを書き換えるだけで、バッファの増設や撤去に対応でき、バッファに対する天井走行車の停止制御のためのティーチングが不要である。

【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例の天井走行車システムのレイアウトを示す平面図
【図2】実施例の天井走行車システムの要部部分切欠部付き正面図
【図3】実施例で用いた天井走行車の横移動部の構造を示す図
【図4】実施例で用いた天井走行車のθドライブの構造を示す図
【図5】実施例の天井走行車の停止制御系を示すブロック図
【符号の説明】
【0030】
2 天井走行車システム
4 インターベイルート
6 イントラベイルート
8 直線区間
10 データ送出部
12 天井走行車
14 処理装置
16 ロードポート
18 サイドバッファ
20 下方バッファ
22 コントローラ
23 天井空間
24 走行レール
26 給電レール
28 櫛歯マーク
29 櫛歯マークの物理的形状
30 走行部
32 受電部
34 櫛歯マークリーダ
36 横移動部
38 θドライブ
40 昇降駆動部
42 昇降台
44 物品
46,47,48 支柱
50 地上空間
52 ボールネジ
54 フレーム
56 ナット
58 ベルト
60,62 固定部
64 ギア付きリング
66 回動モータ
70,72 光学センサ
74 カウンタ
76 RFIDリーダ
78 停止データ記憶部
80 エンコーダ
82 積算カウンタ
83 補間カウンタ
84 加算器
86 減算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井空間に走行レールを設けて天井走行車を走行させ、かつ前記走行レールに沿って天井空間に物品載置台を設けたシステムにおいて、
少なくとも物品載置台を複数設ける区間で、走行レールに櫛歯マークを設けると共に、
天井走行車には、前記櫛歯マークをカウントするためのカウント手段と、物品載置台に対する櫛歯マークに対応する停止データを、天井走行車の走行制御系に供給するための停止データ供給手段、とを設けたことを特徴とする、天井走行車システム。
【請求項2】
天井走行車の走行制御系にエンコーダを設けて、櫛歯のエッジ間の位置を補間して停止するようにしたことを特徴とする、請求項1の天井走行車システム。
【請求項3】
停止データ供給手段を走行レールに設けて停止データを記憶させ、天井走行車には停止データ供給手段から停止データを読み出すための手段を設けたことを特徴とする、請求項1または2の天井走行車システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−285915(P2006−285915A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108745(P2005−108745)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】