説明

安全なルートを案内するルート情報システム

【課題】治安の悪いエリアや事故の多い地点を回避し、目的地への安全な移動を確保するという視点で経路の案内を行うルート情報システムの提供。
【解決手段】測位機能を備えた無線通信端末100からの要求に応じて現在位置から所定の目的地までのルート情報を生成するルート情報システムのルート情報サーバ200は、地図情報に対応するエリア中の事件/事故の発生状況に基づき、地図情報中の任意の地点における危険の度合い(危険度)を付与した危険情報を記憶する危険情報記憶部と、前記無線通信端末の現在地に対応する危険情報を参照し、単位区間あたりの危険度が所定レベル以下となるようルート情報を生成し、前記無線通信端末に送信するルート生成部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルートを案内するルート情報システムに関し、特に、利用者が危険を回避できる安全なルートを案内するルート情報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車載端末や携帯端末向けのルート情報システム(ナビゲーションシステム)が広く普及しており、走行距離優先、推定所要時間優先、幹線道路優先、高速道を使わないといった条件を指定して最適なルートを提供できるようになっている。
【0003】
また、特開2005−17027号公報には、災害発生時に、地図情報上に避難ルートを案内する避難誘導システムが開示されている。同公報記載の避難誘導システムは、単に利用者の現在地から避難場所への案内を行うだけでなく、災害発生地域に対応する危険係数を設定したテーブルを参照して危険の小さいルートを生成することができるとされている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−17027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不案内な土地にあっては、地図やルート情報システム(ナビゲーションシステム)が頼りとなるが、地図上の最短経路や案内経路に従ったがために、治安の悪い地区や交通事故多発地点に近づき、事件や事故に遭遇してしまい、不快な思いをしてしまうことがある。また、土地勘のある場所においても、経由地や時間帯が普段と変わるだけで、危険な目にあってしまうこともありうる。
【0006】
特許文献1の段落0054−0059には、現在地から避難場所までの危険係数と距離係数を乗じて求めた危険度合計が最も少ないルートを案内する具体例が開示されている。同文献で用いられている危険情報テーブルは、自治体等によって作成されるハザードマップを基に作成されているものであり、避難場所への誘導はなしえても、その地域にある治安の悪い地区や交通事故多発地点を反映できていないという問題点がある。
【0007】
また、特許文献1のように、大きな危険から逃れるために多少の危険は不問視するという経路選択方法では、多少の遠回りはしても、いやな思い、危険な思いをしたくたいという安全志向の高いユーザには受け入れられないという問題点もある。
【0008】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、上記安全志向の高いユーザのニーズに応えることのできるルート情報システム及びこれに用いる機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の視点によれば、地図情報を用いて、測位機能を備えた無線通信端末からの要求に応じて該無線通信端末の現在位置から所定の目的地までのルート情報を生成するルート情報サーバであって、前記地図情報に対応するエリア中の事件/事故の発生状況に基づき、地図情報中の任意の地点における危険の度合い(危険度)を付与した危険情報を記憶する危険情報記憶部と、前記無線通信端末の所在するエリアに対応する危険情報を参照し、単位区間あたりの危険度が所定レベル以下となるようルート情報を生成し、前記無線通信端末に送信するルート生成部と、を備えたこと、を特徴とするルート情報サーバ及びこのサーバを用いて無線通信端末にルート案内を行うルート情報システムが提供される。
【0010】
本発明の第2の視点によれば、測位機能を備え、上記したルート情報サーバに対して、ルート情報を要求可能な無線通信端末であって、測位した現在位置が、前記ルート情報サーバから受信したルートから乖離した場合に、予め設定された通報先に通報する危険通報部を備えたこと、を特徴とする無線通信端末、この無線通信端末に対してルート案内を行うルート情報サーバ及びルート情報システムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、危険度が一定のレベルを超えた区間を含まない最適(安全)なルートを提供することができ、利用者が事件や事故に巻き込まれるリスクを低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
続いて、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るルート情報システムの概略構成を表した図である。図1を参照すると、本発明の第1の実施形態に係るルート情報システムは、主に、無線通信端末(ユーザ端末)100と、ルート情報サーバ200と、緊急通知先装置300と、から構成されている。
【0013】
上記無線通信端末(ユーザ端末)100、ルート情報サーバ200及び緊急通知先装置300は、プログラム制御により動作し、インターネット等の通信ネットワーク400を介して相互に接続されている。
【0014】
無線通信端末(ユーザ端末)100は、GPS衛星から自端末の位置情報を取得する機能及び無線による通信ネットワーク400との情報送受信機能を備えた携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)等の携帯型の情報処理装置である。
【0015】
ルート情報サーバ200は、ルート情報の提供を行うサービス事業者により設置されるワークステーション・サーバ等の情報処理装置である。
【0016】
緊急通知先装置300は、警備会社、警察、学校、あるいは、無線通信端末(ユーザ端末)100のユーザの自宅等に設置されるパーソナルコンピュータ等の情報処理装置であり、無線通信端末(ユーザ端末)100からの緊急通報を受信して、ユーザの捜索や当該端末位置に警備員等を派遣するために用いられる。
【0017】
図2は、無線通信端末(ユーザ端末)100として使用可能な携帯電話機の構成を表したブロック図である。図2を参照すると、無線通信端末(ユーザ端末)100は、測位部(GPS部)101と、無線部102と、表示部103と、各種情報入力を行うテンキー、スクロール/決定キー等から構成される操作部104と、音声信号処理を行う音声処理部105への入出力を行う送話部106及び受話部107と、楽音や報知音等を出力するスピーカ108と、電話帳情報、送受信メール情報、発着呼情報、コンテンツ情報、携帯電話端末の各種設定を格納するメモリ109と、電話機能、web接続機能、メール送受信、測位機能などの端末各部の制御を行う制御部110と、を備えている。
【0018】
上記測位部(GPS部)101は、GPS衛星から発射された電波が端末に到達するまでの時間を測定して衛星と端末との距離を求め、この距離を利用して端末位置座標を求める手段である。無線部102は、アンテナを介して図示しない無線通信基地局との間で無線信号を送受する手段である。
【0019】
表示部103は、地図情報を用いて、地図上に表された目的地までのルート情報を表示するための液晶ディスプレイ等によって構成される。
【0020】
図3は、ルート情報サーバ200の構成を表したブロック図である。図3を参照すると、ルート情報サーバ200は、ネットワーク通信部(NW通信部)201と、ユーザ情報(利用者情報)データベース(以下、「DB」という)、地図情報DB、危険情報DBを格納する記憶部202と、ネットワーク通信部(NW通信部)201を介して無線通信端末100から受信した現在位置情報及び目的地情報及び記憶部202に格納された情報に基づいて、後記する方法により危険度を考慮した経路(ルート情報)を生成して、無線通信端末100に送信する制御部203とを備えている。
【0021】
上記危険情報DBには、地図情報に対応するエリア内で各時間帯に発生した犯罪や事故の種別/件数に応じて、危険度が高くなるに従って大きな値が設定されたネガティブな危険地点(区間)ポイントと、警察署、派出所、24時間営業スーパー等すぐに助けが呼べる施設や、人通り多い道路、街灯のある幹線道路等の種別に応じて、前記ネガティブな危険地点(区間)ポイントを減ずる値が設定されたポジティブな危険地点(区間)ポイントとを含んだ危険情報テーブルが格納されている。危険地点(区間)ポイントは、施設等の種類によって一律に定められるものではなく、例えば、派出所、24時間営業スーパー等においては、施設規模、営業年数、常駐人員の数等によって変更される。
【0022】
また、上記危険情報テーブルは、ルート情報の要求があった時間に応じて異なる値が適用されるよう、時間帯区分の数だけ複数用意される。従って、同一の施設や道路であっても、時間帯により、当該時間帯に店舗が営業中であるか否か、人通りの多さや街灯の効果が変わってくるので、危険情報テーブル毎に、これらを加味した危険地点(区間)ポイントが設定される。
【0023】
続いて、上記構成よりなる本実施形態に係るルート情報システムの動作について、無線通信端末100側の動作を表した図4のフローチャート及びルート情報サーバ200側の動作を表した図5のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0024】
はじめに、無線通信端末100は、ルート情報を要求する際に必要となる位置情報の取得(測位)を行う(図4のステップS101)。
【0025】
続いて、無線通信端末100は、ルート情報サーバ200にアクセスし、ユーザ情報(ユーザID等)、ステップS101で取得した自機の位置情報及びユーザより入力された目的地を送信し、ルート情報の作成・送信を要求する(図4のステップS102)。
【0026】
ルート情報サーバ200は、前記ユーザ情報(ユーザID等)、無線通信端末100の位置情報及び目的地を受信すると(図5のステップS201)、ユーザ認証を行い(図5のステップS202)、記憶部202のユーザ情報DBを参照し、アクセスしてきた無線通信端末100がルート情報提供サービスの登録ユーザのものであるか否かを確認する。
【0027】
アクセスしてきた無線通信端末100がルート情報提供サービスの登録ユーザのものであると確認できた場合は、ルート情報サーバ200は、無線通信端末100の現在位置から目的地に至るルートの検索を行う(図5のステップS203)。
【0028】
ステップS203で複数のルートを検索できた場合は(図5のステップS204のYES)、ルート情報サーバ200は、上記ステップS203で検索された各ルートを辿りながら、記憶部202に格納された危険情報DBを参照して、危険地点(区間)ポイントを加減算していく(図5のステップS205;ルート危険度算出)。
【0029】
上記により、近辺路上で犯罪が発生していた場合は、その内容/件数に応じて、危険地点(区間)ポイントが高くなり、例えば、ひったくりが多い場所、傷害事件現場等を通る経路が選択され難くなる。反対に、警察署、派出所、24時間営業スーパーや、人通りの多い道路、街灯のある幹線道路では、危険地点(区間)ポイントが減算され、選択されやすくなる。これは、事件/事故が多い場所であっても、警察署、派出所、24時間営業スーパーや人通りが多ければ、助けを求めることが可能であるという知見に基づいている。
【0030】
ルート情報サーバ200は、単位区間毎に危険地点(区間)ポイントの合計値を確認し、単位区間あたりの危険地点(区間)ポイントが所定の閾値を上回らず、なおかつ、経路全体の危険地点(区間)ポイントが最も少ない最適ルートを含む所定数のルートを選択し(図5のステップS206)、無線通信端末100に対して送信する(図5のステップS207)。
【0031】
また、ルート情報サーバ200は、危険情報DBを参照して、危険地点/区間の内容や、施設種別を視覚的に識別できるようアイコン等を付加したルート情報を生成・送信する。これにより、ユーザは、ルート情報サーバ200が、ルートを選択した根拠を認識することが可能となり、より安心してルート情報に従うことが可能となる。
【0032】
無線通信端末100は、上記ルート情報サーバ200よりルート情報を受信すると(図4のステップS103)、受信したルートを表示部103に表示して案内モードに移行する(図4のステップS104)。
【0033】
案内モードに移行した無線通信端末100は、定期的に端末の位置情報を取得し(ステップS105)、ルート情報との比較を行う(ステップS105〜S107)。そして、ルートを外れた場合や、予め設定された期間、端末の移動がない場合は、緊急通知先装置300に緊急連絡の発信を行う(ステップS108)。
【0034】
上記発信された緊急連絡は、緊急通知先装置300にて受信・出力される。これにより、現地への急行、関係機関への連絡等の必要な措置を迅速に採ることが可能となる。
【0035】
以上、本発明を実施するための好適な形態を説明したが、危険の度合い(危険度)が一定の基準を満たす安全なルートを案内するという本発明の要旨を逸脱しない範囲で、各種の変形を加えることが可能であることはいうまでもない。例えば、本実施形態では、ステップS203で複数のルートを検索できなかった場合は(図5のステップS204のNO)、図5のステップS205以降のルート危険度算出、ルート情報選択は行わないものとして説明したが、唯一の経路であってもルート危険度を算出、送信し、ユーザに目的地の変更を促すようにしてもよい。
【0036】
同様に、ステップS203で複数のルートを検索できた場合であっても、すべてのルートにおいて、危険地点(区間)ポイントが所定の閾値を上回る区間がある場合に、ユーザにその旨を通知し、目的地の変更を促すようにしてもよい。
【0037】
また、上記した実施形態では、複数のルート候補を検索した後、危険度を算出するものとして説明したが、地図情報DBや危険情報DBの双方に格納された情報を用いて、多目的GA(Genetic Algorithm)による最適化処理を行うことで、ルートの選択を行うこととしてもよい。
【0038】
また、上記した実施形態では、危険情報DBに、ルート情報の送信時の状況にあったルート案内ができるよう、時間帯毎に異なる危険情報テーブルを格納するものとして説明したが、単一の危険情報テーブルをルート情報の要求時間により補正して用いることとしても良い。
【0039】
また、上記した実施形態では、ルートから逸脱した場合や予め設定された期間同一場所から動きが無い場合に、無線通信端末100が、緊急通知先装置300に緊急通報の発信を行うものとして説明したが、無線通信端末100において所定の操作(例えば、操作部104の所定キーの押下等のシングルアクション動作)が行われた場合も、緊急通報を発信できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るルート情報システムの概略構成を表した図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るルート情報システムの無線通信端末(ユーザ端末)の詳細構成を表したブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るルート情報サーバの詳細構成を表したブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るルート情報システムの無線通信端末(ユーザ端末)の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るルート情報サーバの動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
100 無線通信端末(ユーザ端末)
101 測位部(GPS部)
102 無線部
103 表示部
104 操作部
105 音声処理部
106 送話部
107 受話部
108 スピーカ
109 メモリ
110 制御部
200 ルート情報サーバ
201 ネットワーク通信部(NW通信部)
202 記憶部
203 制御部
300 緊急通知先装置
400 通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報を用いて、測位機能を備えた無線通信端末からの要求に応じて該無線通信端末の現在位置から所定の目的地までのルート情報を生成するルート情報サーバであって、
前記地図情報に対応するエリア中の事件/事故の発生状況に基づき、地図情報中の任意の地点における危険の度合い(危険度)を付与した危険情報を記憶する危険情報記憶部と、
前記無線通信端末の所在するエリアに対応する危険情報を参照し、単位区間あたりの危険度が所定レベル以下となるようルート情報を生成し、前記無線通信端末に送信するルート生成部と、を備えたこと、
を特徴とするルート情報サーバ。
【請求項2】
前記危険情報は、事件/事故の発生した時間に基づいて、時間帯毎に複数記憶されており、
前記ルート生成部は、無線通信端末から要求された時間に対応する危険情報を参照して、前記ルート情報を生成すること、
を特徴とする請求項1に記載のルート情報サーバ。
【請求項3】
測位機能を備え、請求項1又は2に記載のルート情報サーバに対して、ルート情報を要求可能な無線通信端末であって、
測位した現在位置が、前記ルート情報サーバから受信したルートから乖離した場合に、予め設定された通報先に通報する危険通報部を備えたこと、
を特徴とする無線通信端末。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のルート情報サーバと、測位機能を備え前記ルート情報サーバに対してルート情報を要求可能な無線通信端末と、を接続してなるルート情報システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のルート情報サーバと、請求項3に記載の無線通信端末と、を接続してなるルート情報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−333423(P2007−333423A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162387(P2006−162387)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】