説明

容量切り換え回路、VCO、およびPLL回路

【課題】 PLLおよびVCOの発振特性を改善できる容量切り換え回路を提供する。
【解決手段】 端子P1と端子P2との間に、コンデンサC1k(k=0〜n)と、FET(Q1k)と、コンデンサC2kとを直列接続する。FET(Q1k)のソースにFET(Q3k)のドレインを接続する。FET(Q1k)のドレインにFET(Q4k)のドレインを接続する。FET(Q3k、Q4k)のゲートは互いに接続し、それらのソースも互いに接続する。FET(Q1k)のゲートに、このFET(Q1k)をオンオフ制御する制御データbkを供給する。FET(Q4k)のソースに、少なくともFET(Q1k)がオフのときには、FET(Q3k、Q4k)をオフにするソースバイアス電圧VSkを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容量切り換え回路、VCO、およびPLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーヘテロダイン方式の受信機をシンセサイザ方式に構成した場合、その局部発振信号はPLL回路により形成されるが、そのPLL回路の一部であるVCOの共振回路は、一般にLC共振回路により構成される。
【0003】
図7において、符号11は、そのようなVCOの一例を示す。すなわち、NチャンネルのMOS−FET(Q1、Q2)のソースが互いに接続されるとともに、定電流源Q0を通じて接地される。また、FET(Q1、Q2)のドレインが共振用のコイルL1、L2を通じて電源端子T1に接続されるとともに、相手のゲートに接続される。また、FET(Q1、Q2)のドレイン間に、可変容量ダイオードなどの可変容量素子CDが接続され、この可変容量素子CDとコイルL1、L2とにより共振回路21が構成される。なお、可変容量素子CDには、制御電圧VCが供給される。
【0004】
したがって、制御電圧VCにより可変容量素子CDの容量が変化するので、VCO11の発振周波数fVCOを変更することができる。
【0005】
ところが、上記のようなVCO11を有するPLLをIC化した場合、可変容量素子CDもオンチップ化すると、オンチップ化しないときよりも、その容量の可変範囲が狭くなり、共振回路21の共振周波数、すなわち、発振周波数fVCOの可変範囲が狭くなってしまう。特に、ICの低消費電力化などのために端子T1の電源電圧+VDDが低いときには、制御電圧VCの変化範囲が狭くなるので、結果として、発振周波数fVCOの可変範囲がなおさら狭くなってしまう。
【0006】
そこで、図8あるいは図9に示すような容量切り換え回路22により、共振回路21における共振用の容量を切り換えることが考えられている。なお、図7において、FET(Q1、Q2)のドレインと、コイルL1、L2との接続点を点P1、P2とする。
【0007】
そして、図8の容量切り換え回路22においては、n対(nは1以上の整数)のNチャンネルのMOS−FETQ1k、Q2k(k=0〜n)が設けられ、それらのソースが接地されるとともに、それらのドレインがコンデンサC1k、C2kを通じて図7にも示す接続点P1、P2に接続される。また、FET(Q1k、Q2k)のゲートには、それらをオンオフ制御する制御ビットbk(制御データDD)が供給される。
【0008】
なお、コンデンサC1k、C2kの容量は、例えば、
C1k=C2k=C0・2^k ・・・ (1)
C0:所定の容量
とされる。
【0009】
したがって、例えばb0=“L”のときには、FET(Q10、Q20)がオフになるので、接続点P1、P2にコンデンサC10、C20が接続されていないときと等価である。しかし、b0=“H”のときには、FET(Q10、Q20)がオンになるので、接続点P1、P2は、コンデンサC10、C20を通じて接地に接続されることになり、このとき、コンデンサC10、C20は、コイルL1、L2に交流的に並列接続されることになる。したがって、このときの共振回路21の共振周波数、すなわち、VCO11の発振周波数fVCOは、コイルL1、L2の値と、コンデンサC10、C20の値と、可変容量素子CDの値とで決まることになる。
【0010】
同様に、他のFET(Q11、Q21)〜(Q1n、Q2n)も、ビットb1〜bnのレベルに対応してオフあるいはオンとなるので、コンデンサC11、C21〜(C1n、C2n)が、コイルL1、L2に選択的に並列接続されることになる。
【0011】
したがって、制御ビットb0〜bnのレベルに対応して、コイルL1、L2に、コンデンサ(C10、C20)〜(C1n、C2n)が選択的に接続されることになるとともに、このとき、コンデンサ(C10、C20)〜(C1n、C2n)の値は、(1)式に示すように設定されているので、コイルL1、L2に並列接続されるコンデンサの容量を、値C0ずつ2^kステップにわたって変更することができる。
【0012】
この結果、制御ビットb0〜bnにより、1つの受信バンドが2^k個のサブバンドに分割され、そのサブバンドのそれぞれにおいて、可変容量素子CDおよび制御電圧VCにより、発振周波数fVCOが変更されることになる。したがって、可変容量素子CDの容量の変化範囲が狭くなっても、VCO11の発振周波数fVCOとして、必要な周波数を得ることができる。
【0013】
一方、図9の容量切り換え回路22においては、接続点P1とP2との間に、コンデンサC1kと、NチャンネルのMOS−FET(Q1k)のソース・ドレイン間と、コンデンサC2kとが直列接続されるとともに、FET(Q1k)のソースおよびドレインがバイアス用の抵抗器R1k、R2kを通じて接地される。また、FET(Q1k)のゲートに制御ビットbkが供給される。
【0014】
したがって、例えばb0=“L”のときには、FET(Q10)がオフになるので、接続点P1とP2との間には、コンデンサC10、C20が接続されていないときと等価である。しかし、b0=“H”のときには、FET(Q10)がオンになるので、接続点P1とP2との間は、コンデンサC10、C20の直列回路を通じて接続されることになり、このとき、コンデンサC10、C20は、可変容量素子CDに並列接続されることになる。したがって、このときのVCO11の発振周波数fVCOは、コイルL1、L2の値と、コンデンサC10、C20の値と、可変容量素子CDの値とで決まることになる。
【0015】
同様に、他のFET(Q11、Q21)〜(Q1n、Q2n)も、ビットb1〜bnのレベルに対応してオフあるいはオンとなるので、コンデンサ(C11、C21)〜(C1n、C2n)の各直列回路が、可変容量素子CDに選択的に並列接続されることになる。
【0016】
したがって、制御ビットb0〜bnのレベルに対応して、可変容量素子CDに、コンデンサ(C10、C20)〜(C1n、C2n)の直列回路が選択的に接続されることになるとともに、このとき、コンデンサ(C10、C20)〜(C1n、C2n)の値は、(1)式に示すように設定されているので、コイルL1、L2に並列接続されるコンデンサの容量を、値C0/2ずつ2^kステップにわたって変更することができる。
【0017】
この結果、図9の容量切り換え回路22の場合も、制御ビットb0〜bnにより、1つの受信バンドが2^k個のサブバンドに分割され、そのサブバンドのそれぞれにおいて、可変容量素子CDおよび制御電圧VCにより、発振周波数fVCOが変更されることになる。したがって、可変容量素子CDの容量の変化範囲が狭くなっても、VCO11の発振周波数fVCOとして、必要な周波数を得ることができる。
【0018】
なお、先行技術文献として例えば以下のものがある。
【特許文献1】特開2001−156629号公報
【特許文献2】特開平9−93125号公報
【特許文献3】特開平11−308101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ここで、図8の容量切り換え回路22について、FET(Q10、Q20)〜(Q1n、Q2n)およびコンデンサ(C10、C20)〜(C1n、C2n)を代表してFET(Q10、Q20)およびコンデンサC10、C20により考察する。すなわち、簡単のため、図8の容量切り換え回路22は、FET(Q10、Q20)およびコンデンサC10、C20だけであるとする。
【0020】
そして、
CON :FET(Q10、Q20)がオンになったときに点P1、P2から見た容量
COFF:FET(Q10、Q20)がオフになったときに点P1、P2から見た容量
とする。
【0021】
すると、容量比CON/COFFが大きくなるほど、FET(Q10、Q20)のオンオフによる発振周波数fVCOの変化範囲(サブバンドの切り換えによる帯域幅)を広くすることができる。
【0022】
そして、
CP:FET(Q10)のソース・バックゲート間の寄生容量
とすると、FET(Q10)がオフの場合、その寄生容量CPがコンデンサC1Oに直列接続されるので、
COFF=C10・CP/(C10+CP) ・・・ (2)
となる。したがって、容量比CON/COFFは、(2)式から
CON/COFF=1+C10/CP ・・・ (3)
となる。
【0023】
また、
α :定数
W :FET(Q10、Q20)のゲート幅
とすると、寄生容量CPはゲート幅Wに比例し、
CP=α・W ・・・ (4)
である。そこで、(3)式に(4)式を代入すると、(3)式は、
CON/COFF−1=C10/(α・W) ・・・ (5)
となる。そして、FET(Q20)およびコンデンサC20についても同様である。
【0024】
つまり、FET(Q10)のゲート幅Wが狭くなるほど、容量比CON/COFFが大きくなり、FET(Q10、Q20)のオンオフによる発振周波数fVCOの変化範囲を広くすることができる。
【0025】
一方、FET(Q10)がオンの場合、
RON:FET(Q10)のオン抵抗
とすると、このオン抵抗RONがコンデンサC10に直列接続されるので、このオン抵抗RONが小さくなるほど、共振回路21のQ値が高くなる。すなわち、
QON:FET(Q10、Q20)がオンのときの共振回路21のQ値
とすると、
QON=1/(2πfVCO・C10・RON) ・・・ (6)
となる。
【0026】
また、オン抵抗RONは、ゲート幅Wに反比例し、
RON=β/W ・・・ (7)
β:定数
である。そこで、(6)式に(7)式を代入すると、(6)式は、
QON=γ・W ・・・ (8)
γ=1/(2πfVCO・C10・β)
となる。
【0027】
つまり、FET(Q10、Q20)のゲート幅Wが狭くなるほど、共振回路21のQ値(QON)が高くなり、VCO11の発振信号SVCOの位相ノイズ特性が改善される。
【0028】
以上ことから、(5)式および(8)式によれば、FET(Q10、Q20)のオンオフによる発振周波数fVCOの変化範囲を広くするには、FET(Q10、Q20)のゲート幅Wを広くすることが要求され、VCO11の位相ノイズ特性を向上させるには、FET(Q10、Q20)のゲート幅Wを狭くすることが要求される。
【0029】
つまり、FET(Q10、Q20)のオンオフによる発振周波数fVCOの変化範囲の拡大と、VCO11の発振信号SVCOの位相ノイズ特性の改善とは、トレードオフの関係にあり、両立させることが困難である。
【0030】
しかも、図8の容量切り換え回路22においては、FET(Q10、Q20)のオン抵抗RON、RONが、コンデンサC10、C20に対してそれぞれ直列に付加され、2素子分の抵抗値となるため、比較的高い値となってしまう。
【0031】
その点、図9の容量切り換え回路22は、FET(Q10)がオンのときのQ値(QON)は、そのFET(Q10)だけにより決まるので、図8の容量切り換え回路22のFET(Q10、Q20)のゲート幅Wが等しい場合、Q値(QON)を2倍に高めることでできる。
【0032】
ところが、図9の容量切り換え回路22においては、制御ビットb0のレベルによりFET(Q10)を正しくオンオフさせるためには、図9にも示すように、抵抗器R10、R20を接続してFET(Q10)のソースおよびドレインをバイアスする必要がある。
【0033】
そして、このとき、抵抗器R10、R20は共振回路21に接続されるので、コンデンサC10、C20のインピーダンスに比べ、十分に大きな値であることが要求される。しかし、抵抗器R10、R20の値を大きくすると、ICチップ上における抵抗器R10、R20の物理的なサイズが大きくなり、寄生容量が大きくなってしまい、この結果、FET(Q10)がオフのときの容量COFFが大きくなり、容量比CON/COFFが小さくなってしまう。
【0034】
すなわち、やはり、FET(Q10)のオンオフによる発振周波数fVCOの変化範囲の拡大と、VCO11の発振信号SVCOの位相ノイズ特性の改善とは、トレードオフの関係になってしまい、両立させることが困難となってしまう。
【0035】
この発明は、以上のような問題点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
この発明においては、
第1のMOS−FETと、
第1の端子と上記第1のMOS−FETのソースとの間に直列に接続された第1のコンデンサと、
上記第1のMOS−FETのドレインと第2の端子との間に直列に接続された第2のコンデンサと、
上記第1のMOS−FETのソースにドレインが接続された第2のMOS−FETと、
上記第1のMOS−FETのドレインにドレインが接続された第3のMOS−FETと
を有し、
上記第2および第3のMOS−FETのゲートは互いに接続されるとともに、これら第2および第3のMOS−FETのソースも互いに接続され、
上記第1のMOS−FETのゲートに、この第1のMOS−FETをオンオフ制御する制御データが供給され、
上記第2および第3のMOS−FETに、少なくとも上記第1のMOS−FETがオフのときには、上記第2および第3のMOS−FETをオフにするゲートバイアス電圧が供給されるとともに、
上記第2および第3のMOS−FETのドレインとバックゲートとの間の寄生ダイオードがオフとなるソースバイアス電圧が供給される
ようにした容量切り換え回路
とするものである。
【発明の効果】
【0037】
この発明によれば、FETのオンオフによる発振周波数fVCOの変化範囲の拡大と、VCOの発振信号SVCOの位相ノイズ特性の改善とを両立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
〔1〕 PLL回路の例
図1において、符号10は、この発明によるPLL回路の一例を示す。このPLL回路10において、VCO11の発振信号SVCOが可変分周回路12に供給されて1/N(Nは正の整数)の周波数の分周信号SDIVに分周され、この分周信号SDIVが位相比較回路13に供給される。また、基準信号生成回路14が、図示はしないが、例えば水晶発振回路および分周回路により構成され、基準信号生成回路14から基準となる周波数fREFの基準信号SREFが取り出され、この基準信号SREFが位相比較回路13に供給される。
【0039】
そして、位相比較回路13において、分周信号SDIVが基準信号SREFと位相比較され、その比較出力がチャージポンプ回路15に供給されて分周信号SDIVと基準信号SREFとの位相差に対応してパルス幅の変化する位相比較出力が取り出される。そして、この比較出力がループフィルタ16に供給され、分周信号SDIVと、基準信号SREFとの位相差に対応してレベルの変化する電圧VCが取り出され、この電圧VCがVCO11に発振周波数fVCOの制御電圧として供給される。
【0040】
この結果、定常状態では、VCO11の発振周波数fVCOは、
fVCO=N・fREF ・・・ (11)
となるので、分周比Nを変更すれば、VCO11の発振周波数fVCOを変更することができる。
【0041】
したがって、VCO11の発振信号SVCO(あるいはその分周信号)を局部発振信号として使用して受信信号の周波数変換を行うとともに、分周比Nを変更すれば、受信周波数を変更することができる。すなわち、シンセサイザ方式の受信を行うことができる。
【0042】
なお、詳細は後述するが、VCO11には、発振周波数fVCOの変化範囲(最低周波数から最高周波数までの発振周波数帯域)を、切り換え制御する制御データDDが供給される。
【0043】
〔2〕 VCO11の例
図2は、この発明によるVCO11の一例を示す。すなわち、NチャンネルのMOS−FET(Q1、Q2)のソースが互いに接続されるとともに、定電流源Q0を通じて一方の基準電位点、例えば接地に接続される。また、FET(Q1、Q2)のドレインが共振用のコイルL1、L2を通じて他方の電位点、例えば電源端子T1に接続されるとともに、相手のゲートに接続される。なお、FET(Q1、Q2)のドレインと、コイルL1、L2との接続点を、接続点P1、P2とする。
【0044】
さらに、FET(Q1、Q2)のドレイン間に、可変容量素子CDが接続されるとともに、後述する容量切り換え回路22が接続され、これら可変容量素子CDおよび容量切り換え回路22と、コイルL1、L2とにより共振回路21が構成される。なお容量切り換え回路22には、制御データDDが供給されて接続点P1とP2との間の容量がステップ式に変更される。また、可変容量素子CDには、制御電圧VCが供給され、その容量が連続的に変更されるが、可変容量素子CDとしては、可変容量ダイオードやMOSバラクタなどがある。
【0045】
したがって、目的とする受信バンドにおいて、制御データDDによりサブバンドが切り換えられ、その切り換えられたサブバンドにおいて、制御電圧VCによりVCO11の発振周波数fVCOを変更される。
【0046】
〔3〕 容量切り換え回路22の例
〔3−1〕 構成例
図3は、この発明による容量切り換え回路22の一例を示す。すなわち、この切り換え回路22においては、n個(nは1以上の整数)のNチャンネルのMOS−FET(Q1k)(k=0〜n)が設けられ、接続点P1が、共振用のコンデンサC1kを通じてFET(Q1k)のソースに接続され、そのドレインが共振用のコンデンサC2kを通じて接続点P2に接続される。
【0047】
さらに、FET(Q1k)のゲートには、それらをオンオフ制御する制御ビットbkが供給される。なお、上述の制御データDDが、これら制御ビットb0〜bnである。
【0048】
また、コンデンサC1k、C2kの容量は、例えば、
C1k=C2k=C0・2^k ・・・ (12)
C0:所定の容量
とされる。
【0049】
さらに、FET(Q1k)のソースが、NチャンネルのMOS−FET(Q3k)のドレインに接続され、FET(Q1k)のドレインが、NチャンネルのMOS−FET(Q3k)のドレインに接続される。そして、FET(Q3k、Q4k)のゲートにバイアス電圧としてゲート電圧VGkが供給され、それらのソースにバイアス電圧としてソース電圧VSkが供給される。
【0050】
この場合、ゲート電圧VGk、ソース電圧VSkおよび制御データDD(制御ビットb0〜bn)は、例えば図4A〜Eに示す電圧のうちのいずれか1組である。また、接続点P1、P2は、図2に示すVCO11において、FET(Q1、Q2)のドレインと、コイルL1、L2との接続点である。さらに、制御ビットbkに対応する素子Q1k、Q3k、Q4k、C1k、C2kにより構成されている回路部を、容量切り換え部22kとする。
【0051】
このような構成によれば、制御データDD(ビットb0〜bn)、ゲート電圧VGkおよびソース電圧VSkにしたがって、以下のような動作が行われる。なお、容量切り換え回路22において、容量切り換え部220〜22nの動作は等しいので、以下においては、簡単のため、その動作を容量切り換え部220により代表して説明する。
【0052】
〔3−2〕 動作例
〔3−2−1〕 第1の制御例
この例においては、容量切り換え部220には、例えば図4Aに示すような制御ビットbO、ゲート電圧VG0およびソース電圧VS0が供給される。
【0053】
この場合、ゲート電圧VG0およびソース電圧VS0は固定のバイアス電圧とされるとともに、
VS0>VG0−VTH
VTH:所定の電圧
の関係とされる。
【0054】
また、制御ビットb0は、“H”レベルのときには、b0>VS0+VTHとされ、“L”レベルのときには、VS0+VTH>b0とされる。
【0055】
したがって、制御ビットb0のレベルにかかわらずFET(Q30、Q40)は逆バイアスされてオフであり、そのドレイン・ソース間は常に高インピーダンスとなっている。
【0056】
そして、b0=“H”のときには、FET(Q10)は順バイアスされてオンとなるので、接続点P1とP2との間に、コンデンサC10、C20が直列接続されることになる。
【0057】
しかし、b0=“L”のときには、FET(Q10)は逆バイアスされてオフとなるので、接続点P1とP2との間は分離されたことになり、コンデンサC10、C20も接続されていないことになる。
【0058】
そして、他の容量切り換え部221〜22nについても同様である。したがって、制御ビットb0〜bnに対応して、接続点P1とP2との間の容量を、値C0/2ずつ2^kステップにわたって変更することができる。この結果、目的とする受信バンドにおいて、制御ビットb0〜bnによりサブバンドを切り換えることができる。なお、その切り換えられたサブバンドにおいては、制御電圧VCによりVCO11の発振周波数fVCOを変更することができる。
【0059】
そして、この例においては、FET(Q30、Q40)のドレイン・ソース間を通じてFET(Q10)のソースおよびドレインの電位を得ているが、FET(Q30、Q40)がオフのときのドレイン・ソース間のインピーダンスは、(図9における抵抗器R10、R20の場合よりも)、コンデンサC10、C20のインピーダンスに比べ、十分大きな値となる。したがって、共振回路21のQ値を低下させることがない。
【0060】
また、大きなインピーダンスを得るために、ICチップ上におけるFET(Q30、Q40)の物理的なサイズを大きくする必要がないので、寄生容量が大きくなることがなく、この結果、FET(Q10)がオフのときの容量COFFが小さくなり、容量比CON/COFFを大きくすることができる。
【0061】
したがって、VCO11の発振信号SVCOの位相ノイズ特性を改善することができるとともに、FET(Q10)のオンオフによる発振周波数fVCOの変化範囲を拡大することができる。
【0062】
〔3−2−2〕 第2の制御例
この例においては、容量切り換え部220には、例えば図4Bに示すような制御ビットbO、ゲート電圧VG0およびソース電圧VS0が供給される。
【0063】
すなわち、ゲート電圧VG0は固定のバイアス電圧とされるが、ソース電圧VSOは、b0=“H”のときには、VS0>VG0−VTHの範囲で、図4Aの場合よりも低くされ、b0=“L”のときには、オンのとき電圧b0よりも低い範囲で、図4Aの場合よりも高くされる。
【0064】
したがって、〔3−2−1〕の場合と同様の動作が行われ、VCO11の発振信号SVCOの位相ノイズ特性を改善することができるとともに、FET(Q10)のオンオフによる発振周波数fVCOの変化範囲を拡大することができる。
【0065】
さらに、VCO11においては、FET(Q10)がオフのとき、そのソース・ドレイン間に、VCO11の発振信号SVCOがほぼそのままのレベルで印加されるので、FET(Q10)のソースおよびドレインに生じる寄生ダイオードがオンになる可能性がある。しかし、この例においては、ソース電圧VS0が上記のように変更され、ICのバックゲート電位VBよりも高くなるので、FET(Q10)のソースおよびドレインに生じる寄生ダイオードがオンになることがない。
【0066】
また、FET(Q10)がオンのとき、ソース電圧VS0がバックゲート電位VBよりも高いと、FET(Q10)のオン抵抗RONが若干大きくなるが、この例においては、ソース電圧VS0がICのバックゲート電位VBよりも高くならないので、オン抵抗RONが増大することがない。
【0067】
〔3−2−3〕 第3の制御例
この例においては、容量切り換え部220には、例えば図4Cに示すような制御ビットbO、ゲート電圧VG0およびソース電圧VS0が供給される。すなわち、ソース電圧VS0は固定のバイアス電圧とされるが、ゲート電圧VGは、制御ビットb0と等しいレベルとされる。
【0068】
したがって、〔3−2−1〕の場合と同様の動作が行われ、VCO11の発振信号SVCOの位相ノイズ特性を改善することができるとともに、FET(Q10)のオンオフによる発振周波数fVCOの変化範囲を拡大することができる。
【0069】
そして、この例によれば、FET(Q10)がオンのとき、FET(Q30、Q40)も同時にオンとなるので、オン抵抗RONをさらに低減することができる。
【0070】
〔3−2−4〕 第4の制御例
この例においては、容量切り換え部220には、例えば図4Dに示すような制御ビットbO、ゲート電圧VG0およびソース電圧VS0が供給される。すなわち、〔3−2−2〕におけるソース電圧VS0と、〔3−2−3〕におけるゲート電圧VG0とを組み合わせた場合であり、それぞれを単独で実行する場合よりも、より効果的となる。
【0071】
〔3−2−5〕 第5の制御例
この例においては、容量切り換え部220には、例えば図4Eに示すような制御ビットbO、ゲート電圧VG0およびソース電圧VS0が供給される。すなわち、〔3−2−4〕において、そのゲート電圧VG0が、制御ビットb0に対して所定の時間だけ遅延するようにした場合である。なお、このように制御ビットb0に対して所定の時間だけ遅延したゲート電圧VG0を得るには、例えば図5AあるいはBに示すような遅延回路を使用することができる。
【0072】
そして、例えば〔3−2−2〕においては、FET(Q10)がオフのとき、FET(Q30、Q40)が高いインピーダンスを示すので、FET(Q10)がオフからオンになるとき、ソース電圧VS0を切り換えてもFET(Q10)のソース電位およびドレイン電位は、大きな時定数で所定値に整定していくことになる。したがって、VCO11に用いた場合、発振周波数fVCOが整定するまでに時間のかかることになる。
【0073】
しかし、この例においては、ゲート電圧VG0が制御ビットb0に対して遅延しているので、FET(Q10)のソース電位およびドレイン電位が整定するまでの時間を短くすることができ、VCO11においては、発振周波数fVCOが整定するまでの時間を短縮することができる。
【0074】
例えば、PLL回路10を受信機の局部発振回路に使用する場合、容量切り換え回路22によりサブバンドを切り換えるとともに、そのサブバンドごとにVCO11の発振周波数fVCOを自動校正することがある。このような場合、発振周波数fVCOが整定するまで、その発振周波数fVCOの測定および校正ができないので、発振周波数fVCOが整定するまでの時間を短縮することができれば、自動校正に必要な時間を短縮することができる。
【0075】
〔4〕 その他
図3に示す容量切り換え回路22においては、NチャンネルのMOS−FETにより構成した場合であるが、例えば図6に示すようにPチャンネルのMOS−FETにより構成することもできる。そして、この場合には、制御ビットbO、ゲート電圧VG0およびソース電圧VS0の極性を、図4の場合とは逆にすればよい。
【0076】
〔5〕 まとめ
上述の容量切り換え回路22によれば、FET(Q3k、Q4k)のドレイン・ソース間を通じてFET(Q1k)のソースおよびドレインにバイアス電圧を印加しているが、FET(Q3k、Q4k)がオフのときのドレイン・ソース間のインピーダンスは、図9における抵抗器R1k、R2kの場合よりも、コンデンサC1k、C2kのインピーダンスに比べ、十分大きな値となる。
【0077】
したがって、共振回路21のQ値を低下させることがないので、VCO11の発振信号SVCOの位相ノイズ特性を改善することができる。
【0078】
また、FET(Q1k)のソースおよびドレインのバイアス電圧を、FET(Q3k、Q4k)を通じて印加しているので、大きなインピーダンスを得るために、ICチップ上におけるFET(Q3k、Q4k)の物理的なサイズを、抵抗器の場合のように、大きくする必要がない。したがって、寄生容量が大きくなることがなく、FET(Q1k)がオフのときの容量COFFが小さくなり、容量比CON/COFFを大きくすることができる。この結果、FET(Q1k)のオンオフによる発振周波数fVCOの変化範囲を拡大することができる。
【0079】
さらに、テレビチューナにおいては、およそ40MHz〜900MHzの非常に広い周波数範囲に対して、低雑音な局部発振信号が必要となるので、VCO11にも非常に可変範囲の広いものが求められるが、上述のVCO11によれば、その要求に対処できる。
【0080】
〔略語の一覧〕
IC :Integrated Circuit
FET:Field Effect Transistor
MOS:Metal Oxide Semiconductor
PLL:Phase Locked Loop
Q値 :Quality Factor
VCO:Voltage Controlled Oscillator
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】この発明の一形態を示す系統図である。
【図2】この発明の一形態を示す接続図である。
【図3】この発明の一形態を示す接続図である。
【図4】この発明の一形態を示す波形図である。
【図5】一部の一例を示す系統図である。
【図6】この発明の他の形態を示す接続図である。
【図7】この発明を説明するための接続図である。
【図8】この発明を説明するための接続図である。
【図9】この発明を説明するための接続図である。
【符号の説明】
【0082】
10…PLL回路、11…VCO、12…可変分周回路、13…位相比較回路、14…基準信号生成回路、15…チャージポンプ回路、16…ループフィルタ、21…共振回路、22…容量切り換え回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のMOS−FETと、
第1の端子と上記第1のMOS−FETのソースとの間に直列に接続された第1のコンデンサと、
上記第1のMOS−FETのドレインと第2の端子との間に直列に接続された第2のコンデンサと、
上記第1のMOS−FETのソースにドレインが接続された第2のMOS−FETと、
上記第1のMOS−FETのドレインにドレインが接続された第3のMOS−FETと
を有し、
上記第2および第3のMOS−FETのゲートは互いに接続されるとともに、これら第2および第3のMOS−FETのソースも互いに接続され、
上記第1のMOS−FETのゲートに、この第1のMOS−FETをオンオフ制御する制御データが供給され、
上記第2および第3のMOS−FETに、少なくとも上記第1のMOS−FETがオフのときには、上記第2および第3のMOS−FETをオフにするゲートバイアス電圧が供給されるとともに、
上記第2および第3のMOS−FETのドレインとバックゲートとの間の寄生ダイオードがオフとなるソースバイアス電圧が供給される
ようにした容量切り換え回路。
【請求項2】
請求項1に記載の容量切り換え回路において、
上記第2および第3のMOS−FETのゲートに供給されるゲートバイアス電圧および上記ソースバイアス電圧を、上記第1のMOS−FETのオンオフにかかわらず一定とする
ようにした容量切り換え回路。
【請求項3】
請求項1に記載の容量切り換え回路において、
上記第1のMOS−FETのオンオフにかかわらず上記ゲートバイアス電圧を一定とするとともに、
上記第1のMOS−FETのオンのときには、上記ソースバイアス電圧を上記ゲートバイアス電圧に近づける
ようにした容量切り換え回路。
【請求項4】
請求項1に記載の容量切り換え回路において、
上記第1のMOS−FETのオンオフにかかわらず上記ソースバイアス電圧を一定とするとともに、
上記ゲートバイアス電圧を上記制御データと同じ極性の方向に変化させる
ようにした容量切り換え回路。
【請求項5】
請求項1に記載の容量切り換え回路において、
上記ゲートバイアス電圧を上記制御データと同じ極性の方向に変化させるとともに、
上記ソースバイアス電圧を上記制御データと逆の極性の方向に変化させる
ようにした容量切り換え回路。
【請求項6】
請求項1に記載の容量切り換え回路において、
上記ゲートバイアス電圧を上記制御データと同じ極性の方向に変化させるとともに、
上記制御データの変化よりも遅延させ、
上記ソースバイアス電圧を上記制御データと逆の極性の方向に変化させる
ようにした容量切り換え回路。
【請求項7】
共振回路が、その共振用の容量手段として、
容量切り換え回路と、
この容量切り換え回路に並列接続された可変容量素子と
を有し、
上記容量切り換え回路は、
第1のMOS−FETと、
上記並列接続のための第1の接続点と、上記第1のMOS−FETのソースとの間に直列に接続された第1のコンデンサと、
上記第1のMOS−FETのドレインと、上記並列接続のための第2の接続点との間に直列に接続された第2のコンデンサと、
上記第1のMOS−FETのドレインにドレインが接続された第3のMOS−FETと
を有し、
上記第2および第3のMOS−FETのゲートは互いに接続されるとともに、これら第2および第3のMOS−FETのソースも互いに接続され、
上記第1のMOS−FETのゲートに、この第1のMOS−FETをオンオフ制御する制御データが供給され、
上記第2および第3のMOS−FETに、少なくとも上記第1のMOS−FETがオフのときには、上記第2および第3のMOS−FETをオフにするゲートバイアス電圧が供給されるとともに、
上記第2および第3のMOS−FETのドレインとバックゲートとの間の寄生ダイオードがオフとなるソースバイアス電圧が供給される
上記制御データのオンオフにより発振周波数の変化範囲が変更されるとともに、
上記可変容量素子に供給される制御電圧により発振周波数が変更される
ようにしたVCO。
【請求項8】
VCOと、
このVCOの発振信号を分周する可変分周回路と、
この可変分周回路の出力信号と、基準となる周波数の基準信号とを位相比較する位相比較回路と、
この位相比較回路の出力が供給されるチャージポンプ回路と、
このチャージポンプ回路の出力が供給されて上記可変分周回路の出力信号と上記基準信号との位相差に対応してレベルの変化する電圧を出力するとともに、この電圧を上記VCOにその制御電圧として供給するループフィルタと
を有し、
上記VCOは、その共振回路が共振用の容量手段として、
容量切り換え回路と、
この容量切り換え回路に並列接続された可変容量素子と
を有し、
上記容量切り換え回路は、
第1のMOS−FETと、
上記並列接続のための第1の接続点と、上記第1のMOS−FETのソースとの間に直列に接続された第1のコンデンサと、
上記第1のMOS−FETのドレインと、上記並列接続のための第2の接続点との間に直列に接続された第2のコンデンサと、
上記第1のMOS−FETのソースにドレインが接続された第2のMOS−FETと、
上記第1のMOS−FETのドレインにドレインが接続された第3のMOS−FETと
を有し、
上記第2および第3のMOS−FETのゲートは互いに接続されるとともに、これら第2および第3のMOS−FETのソースも互いに接続され、
上記第1のMOS−FETのゲートに、この第1のMOS−FETをオンオフ制御する制御データが供給され、
上記第2および第3のMOS−FETに、少なくとも上記第1のMOS−FETがオフのときには、上記第2および第3のMOS−FETをオフにするゲートバイアス電圧が供給されるとともに、
上記第2および第3のMOS−FETのドレインとバックゲートとの間の寄生ダイオードがオフとなるソースバイアス電圧が供給される
上記制御データのオンオフにより発振周波数の変化範囲が変更されるとともに、
上記可変分周回路の分周比を変更することにより発振周波数が変更される
ようにしたPLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−253401(P2009−253401A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95650(P2008−95650)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】