説明

射出成形方法、およびその装置

【課題】品質が安定した成形品を、微小型開き状態を有する射出成形で成形する。
【解決手段】所定の圧力での型締め状態における金型の型締め位置の変更に応じて、微小型開き状態での金型の位置を変更させる。これにより温度変動等により型締め状態における型締め位置が変更された場合であっても、微小型開き状態での型開き量が一定となり、品質の安定した成形品を、微小型開き状態を有する射出成形で成形できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定量金型を開いた状態で、樹脂やガラスや金属等の成形材料を射出し、その後型締めを行い成形材料に圧縮力を付与する射出圧縮成形方法、およびその装置や、金型内に成形材料を射出し、所定量金型を開くことで発泡成形を行う射出発泡成形、およびその装置等、所定量金型を開く動作を有する射出成形方法、およびその装置に関する。特に、射出圧縮成形等、射出成形品を低ひずみで成形したり、ウェルドレスに成形するための制御に関し、成形品を早期に安定化させることができ、しかも長期にわたり安定して成形が継続できる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
射出圧縮成形方法は、正確な形状の転写が要求されるレンズなどの光学製品や大型平板形状の成形品などを低ひずみで成形する場合などに広く用いられてきている。射出圧縮成形方法は、型締め直前で停止させた金型に成形材料を充填し、その後金型を完全に型締めして製品を成形する射出圧縮成形方法であり、予め金型を所定量開いておくため、成形材料の流動性が向上し効率よく充填でき、その後、圧縮して成形材料を加圧させることにより、成形材料の分子配列が良好になり、また成形品内での圧力勾配が少なく、ひずみの少ない成形品を得ることができる成形方法である。
【0003】
射出圧縮成形では、型締めの直前で金型を停止させる位置(以下「微小型開き位置」とする。)は、型締めしたときの圧力などに影響を及ぼすことから、成形品の形状や使用する成形材料、射出圧力などにより予め正確に定められている。
【0004】
一方金型は、型締め時の圧力が過大になると金型を傷めることがある。そのため、例えば金型の温度が上昇して、金型の型締め位置が変動した場合には、型締め位置を変更して型締め力が所望の値となるように調整していた。例えばトグル機構を用いた型締装置では、型締め位置が温度上昇などにより変動した場合、トグル機構のクロスヘッドの停止位置を変更し、型締め時の型締め力が所定値になるように調整を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−136569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、温度変化等に対応して型締め位置を変更しても、型締め直前で僅かに金型を開いておく微小型開き位置は変更されていなかった。そのため、型締め位置が変更されることにより、結果的に型締め位置に対する微小型開き量がずれることとなっていた。これにより成形材料の充填抵抗が変化して充填量に変動が生じて、成形品の重量が変動し、安定した品質の成形品が得られなくなるという問題が生じていた。
【0007】
また、上記位置ずれを解決するためには、金型に設けられた位置センサでフィードバック制御を行うなど、別途制御機構を必要とする。ところが、金型に位置センサを設けるとコストアップとなり、しかもセンサのつなぎ込みなど成形開始前の段取り時間が長くなるという問題があった。更に、位置センサを金型に取り付ける必要があるため、金型が高温下で作動する場合などには、位置センサが温度の影響を受け信頼性が低下することが懸念されている。
【0008】
本発明は、コストアップにつながる位置センサを必要とせず、かつ温度変動などで型締め位置を変更した場合であっても、安定した品質の製品を成形できる射出成形方法等を提供することを目的とする。
【0009】
また、型締め力フィードバック制御が標準化されている射出成形機において、金型に別途センサを搭載することなく、微小型開き動作を長期間にわたって安定して制御可能とする射出成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、次のように射出成形方法、およびその装置を構成した。
金型を、所定の圧力で型締めする型締め状態と、金型を、所定の圧力で型締めされた状態より所定量開いた状態に保持する微小型開き状態と、を備え、金型を、型開き状態から微小型開き状態、あるいは型開き状態から型締め状態を経て微小型開き状態にし、微小型開き状態の金型内に成形材料を射出し、その後、金型を所定の圧力で型締めして成形品を成形したり、あるいは、金型を、型開き状態から型締め状態にし、型締め状態の金型内に成形材料を射出し、その後金型を微小型開き状態にして成形品を成形する射出成形において、
型締め状態における金型の型締め位置が変更されたとき、型締め状態における型締め位置の変更に応じて、微小型開き状態における金型の停止位置を変更させることとして射出成形方法、及びその装置を構成した。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる射出成形方法等は、次の効果を有する。
型締め時の型締め位置に応じて、微小型開き状態における金型の停止位置が変更されるので、微小型開き量が常に適切な値となる。したがって、成形時の圧縮条件が安定し、品質の安定した成形品を成形することができる。
【0012】
型締め力の変動に合わせて位置を変更するので、高価な位置センサを必要とせず、射出成形装置や成形品にコストアップを生じさせない。金型が高温になる場合であっても、位置センサと異なり熱影響を受けにくいため、正確で安定した成形が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかる射出成形方法を実施する射出成形装置の一実施形態を示す図である。
【図2】型締装置の一実施形態を示す図である。
【図3】型締めの作動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を射出圧縮成形方法に適用した場合の一実施形態について、図を用いて説明する。
【0015】
図1に、本発明にかかる射出成形装置の概要を示す。射出成形装置10は、基台50、基台50上に設けられた射出装置12、型締装置14、表示装置16、および操作盤18などを備えて構成されている。
【0016】
射出装置12は、シリンダ20と、シリンダ20の内部に回転および前後進可能に設けられたスクリュ(図示せず。)と、スクリュをシリンダ20の内部で回転および前後進させるスクリュ駆動機構と、シリンダ20を加熱する加熱装置(いずれも図示せず。)を備え、レール52上に移動自在に設置されている。射出装置12は、図示しない射出制御部により制御され、シリンダ20内で成形材料を溶融し、型締装置14により型締めされた金型24(図2参照。)のキャビティに向けて先端に設けられたノズル22より溶融成形材料を射出する。
【0017】
表示装置16および操作盤18は、射出装置12と型締装置14の間に設置されている。尚、図1において射出装置12および型締装置14は、それぞれカバーで適宜覆われた状態となっている。図2に、型締装置14の概要を示す。以下、型締装置14について、射出装置12側を前方とし、その逆を後方として説明する。
【0018】
型締装置14は、基台50上に備えられた固定ダイプレート26とリアプレート28を有している。固定ダイプレート26は、前方側に位置し、基台50上に固定されている。リアプレート28は、後方側に位置し、基台50上に進退可能に取付けられている。固定ダイプレート26とリアプレート28は、それらの四隅に設けられた四本の平行なタイバー30によって連結固定されている。
【0019】
固定ダイプレート26は、保持機構(図示せず。)を備え、後述する固定金型44を着脱自在に保持する。固定ダイプレート26とリアプレート28の間には、移動ダイプレート32が設けられている。移動ダイプレート32は、基台50上にタイバー30に沿って移動可能に取り付けられている。移動ダイプレート32は、保持機構(図示せず。)を備え後述する移動金型46を着脱自在に保持する。
【0020】
リアプレート28と移動ダイプレート32の間には、移動ダイプレート32を前後動させるトグル機構34が設けられている。トグル機構34は、クロスヘッド36と、トグルレバー48と、トグルアーム64等から構成され、後端がリアプレート28の前面に、前端が移動ダイプレート32の後面に連結されている。
【0021】
クロスヘッド36の中心部にはボールネジ機構の雌ネジ部(図示せず。)が設けられており、ボールネジ機構のネジ軸38がこの雌ネジ部と螺合している。ネジ軸38は、中心軸周りに回転可能な状態でリアプレート28に取り付けられており、リアプレート28に設けられたモータ42により、伝達機構40を介して適宜回転駆動される。
【0022】
クロスヘッド36の上下端部には、連結片68の一端がそれぞれ取り付けられている。連結片68には、トグルレバー48が連結してあり、トグルレバー48の一端は、リアプレート28の支持部47に回動自在に取り付けられている。トグルレバー48は、上下ほぼ対称に一対設けられている。
【0023】
トグルアーム64は、一端がトグルレバー48と回動自在に連結し、他端が移動ダイプレート32の支持部27に回動自在に取り付けられている。トグルアーム64は、トグルレバー48と同様上下に一対設けられている。尚、トグルレバー48等は左右に対に設けられていてもよい。
【0024】
金型24は、固定金型44と移動金型46から構成され、固定金型44と移動金型46とを組み合わせると内部に所定形状のキャビティが形成される。固定金型44は、上述したように固定ダイプレート26に保持機構を介して固定され、移動金型46は、上述したように移動ダイプレート32に保持機構を介して固定される。
【0025】
型制御部54について説明する。型制御部54は、主に型締装置14を制御する制御部で、モータドライバ56を備え、モータドライバ56を介してモータ42を回転駆動させる。また型制御部54には、モータ42に設けられた回転センサ58、およびタイバー30の近傍に設けられた圧力センサ60が接続してあり、回転センサ58からモータ42の回転情報、および圧力センサ60から型締装置14の型締め力が入力される。また、モータ42は一般的なモータだけでなく、サーボモータ等であってもよい。
【0026】
次に、射出成形装置10による射出圧縮成形方法について説明する。
【0027】
型締装置14は、トグル機構34を作動させ、金型24を型締めする。モータ42は、固定金型44と移動金型46が所定の圧力で締結されるまで型締めをする。その後、金型24のキャビティ容積が若干拡大するように僅かに型開きを行う。これにより、固定金型44と移動金型46は所定量僅かに開いた状態で対向される。かかる状態を微小型開き状態という。
【0028】
その後、キャビティ内に射出装置12から溶融成形材料が射出される。そして溶融成形材料がキャビティ内に充填されたら、モータ42を駆動させ、クロスヘッド36を前進させて金型24を再度締結する。この時金型24は、型締め力が所定値となるまで型締めされる。
【0029】
溶融成形材料が金型24内で冷却、固化されたら、型締めした方向と逆方向にモータ42を作動させ、金型24を開き、金型24から成形品を取り出す。これにより、射出成形の1サイクルが完了し、射出圧縮成形方法で所望の成形品を成形できる。
【0030】
以後、この1サイクルを繰り返すことで、射出成形が実施され、連続して所望の成形品を成形できる。ここで、射出成形サイクルにおいて固定金型44と移動金型46が最初に所定値で型締めされた位置、または射出成形サイクル前に一度所定値で型締めされた位置を、正規の型締め位置という。
【0031】
一方、射出成形サイクルを連続して行なっていく中で、金型24の温度が上昇し、金型24や固定ダイプレート26などが熱膨張したりすると、金型24の正規の型締め位置で移動金型46の移動を停止させると、金型24の型締め力が過大になる。そのため、型締め力をフィードバックさせながら型締め位置の修正を行い、型締め力が所定の圧力となるように型締め時のクロスヘッド36の位置、つまりモータ42の停止位置を調整する。
【0032】
更に、型締め時の型締め位置を変更したなら、微小型開き状態を形成するための移動金型46の停止位置を変更する。具体的には、型締め時のクロスヘッド36の停止位置を変更したなら、微小型開き状態を形成するときのクロスヘッド36の停止位置を、型締め時のクロスヘッド36の停止位置の変更量に応じて変更させる。
【0033】
図3を用いて、移動金型46の停止位置の変更について説明する。図3の横軸は、移動金型46の位置、縦軸は金型24の型締め力である。G1は、射出成形サイクルの初めの型締力、または射出成形サイクル前に一度型締めしたときの型締め力を示すグラフであり、G2は、射出成形サイクル中に、金型24が温度上昇したとき、または温度上昇後の型締め力を示すグラフである。横軸の右方は、金型24の開方向、左方が閉じ方向を示す。図2の移動金型46の移動方向とは開閉方向が逆となっている。
【0034】
射出成形サイクルの初めの型締め、または射出成形サイクル前に一度行う型締めについて、G1を用いて説明する。金型24が開放された状態から型締め動作により金型24が閉じられていくと、移動金型46はD3で固定金型44と接触(タッチ状態)する。その後更に移動金型46を前進させるとG1のグラフに従って型締め力が上昇する。正規の型締め状態の型締め力をS1とすると、移動金型46がD1まで移動した時点で、型締め力は所定値になるので、モータ42が停止し、移動金型46の前進も停止される。すなわちG1において、D1が正規の型締め位置として設定される。
【0035】
また金型24の微小型開き量をA1とすると、D1からA1の長さだけ型開き方向に戻ったD5の位置が微小型開き位置となる。固定金型44との接触位置D3から微小型開き位置D5までの長さ(以後、「微小実型開量」という。)がA2である。
【0036】
したがって成形当初は、クロスヘッド36の動作により移動金型46が一度D1の位置である正規の型締め位置まで型締めされ、その後D5の位置まで僅かに型開き動作が行われ、微小型開き状態を形成し、射出装置12から成形材料が金型24に射出される。この時の移動金型46がD1やD5となるモータ42の回転量、つまりクロスヘッド36の位置は、クロスヘッド36と移動ダイプレート32との位置関係を示す対応表又は対応グラフや、クロスヘッド36と移動金型46との位置関係を示す対応表又は対応グラフなどから換算して求める。
【0037】
微小型開き状態で成形材料が金型24内に充填されたら、再度クロスヘッド36を動作させ、移動金型46を型締め方向に、D1、つまり正規の金型締め位置まで移動させる。かかる位置で、成形材料を冷却し固化させたら移動金型46を型開き方向に移動させ、成形品を金型24内から取り出す。
【0038】
一方射出成形サイクル動作中に金型24などに温度変化が生じ、移動金型46の位置と型締め力の関係がG2に変化したとする。これにより、金型24等の温度変化後の移動金型46と固定金型44の接触(タッチ)位置が、D3からD4の位置に変更される。また移動金型46の位置と型締め力の関係がG2に変化すると、所定の型締め力S1は、図3に示すようにD2の位置で発生することとなり、移動金型46をD1まで移動させると、型締め力が過大となる。そこで、所定の型締め力S1が得られるよう、型締め力をフィードバックさせながら型締め位置を正規の型締め位置D1からD2の位置(金型24などの温度変化後に所定の型締め力を得る型締め位置)に変更される。
【0039】
そして、所定の型締め力が得られる型締め位置が、D1からD2に変更されたことに伴い、D1からD5までの型開き量A1に等しい距離をD2に加えたD6に、微小型開き位置を設定する。これにより、金型24等の温度変化後の微小型開きの動作でも、成形当初の微小実型開量A2と同じ量だけ、微小型開きをすることとなる。即ち、金型24等の温度変化後の移動金型46と固定金型44との接触(タッチ)位置D4から微小型開き位置D6までの長さは、A2となる。また、微小型開きの動作では、モータ42はD6を目標値としたフィードバック制御を行いながら駆動される。
【0040】
したがって、金型24等の温度変化後は、金型24が開放された状態からモータ42の駆動などにより金型24が所定の型締め力となるD2の位置まで閉じられ型締めされる。その後、モータ42を型締めのときとは逆方向に駆動させるなどにより僅かに金型を開く微小型開きの動作を行い、移動金型46を微小型開き位置D6まで移動させる。そして、移動金型46がD6に到達すると、モータ42が停止され、成形材料が射出装置12から射出される。成形材料が充填されると、移動金型46はD2まで再度移動し、所定の型締め力で型締めした状態で成形材料を冷却、固化させ成形品を成形する。
【0041】
これにより、正規の型締め位置が温度変化等により変更されても、微小型開き状態での型開き量A1を一定にできる。それにより、金型24等に温度変化が生じたとしても、微小実型開量A2も一定にすることができる。
【0042】
したがって、温度変化等により金型24の厚みなどが変動しても、微小型開きにおけるキャビティ容積は一定の値となり、成形材料の流入状態や、その後の型締めによる圧縮状態が所望の状態に設定され、安定した品質の成形品を成形できる。
【0043】
また射出圧縮成形の場合には、射出圧縮成形での動作の違いや成形サイクル時間等の短縮を図る目的などのため、上述した射出成形サイクルではなく、以下に示す射出成形サイクルを行う場合がある。
【0044】
まず、型開きした状態から移動金型46を型締め方向に移動させて所定の微小型開き量だけ開いた位置まで型閉じを行う。その後、射出装置12から成形材料が金型24に射出される。そして、型締め動作を行い、所定の圧力となるまで型締めされる。その後、成形材料を冷却、固化させたら、移動金型46を型開き方向に移動させ、成形品を金型24内から取り出す。これにより、射出成形サイクルを形成する。
【0045】
この場合には、1回前のサイクル時の型締め位置のデータ、または何回か前までの射出成形サイクル時の型締め位置の複数個のデータ(成形サイクルの最初の型締めに対しては、成形サイクル前に行なった型締め動作での型締め位置のデータを用いる。すなわち、最初の型締め時では、正規の型締め位置のデータが用いられる。)を、図示しない制御装置の図示しないメモリに保存しておき、次サイクル(最初の成形サイクル時を含む。)時においては正規の型締め位置のデータと、1回前のサイクル時の型締め位置のデータまたは複数個ある何回か前までの成形サイクル時の型締め位置のデータの平均値との差を、予め決められた型開き量に付加し、これを所定の微小型開き量とする。
【0046】
この方法を用いた場合には、1回前の型締め位置のデータなどを用いて所定の微小型開き量を決定するため、多少誤差が含まれてしまうこともあるが、その誤差は微小であり、許容範囲のものである。もし、許容範囲を超えた場合、前述したような一度型締めをしてから、微小型開き位置にもっていく動作を有する射出圧縮成形方法が行えるのであれば、一度その方法を用いて再度正規の型締め位置を定める。その方法が使用できない場合には、正規の型締め位置を1回前の型締め位置のデータに置き換えるなどする。
【0047】
また、許容範囲として、1回前のサイクル時の型締め位置のデータ、または複数個ある何回か前までの成形サイクル時の型締め位置のデータの平均値と、1回前のサイクル時に用いた現時点では2回前のサイクル時の型締め位置のデータまたは1回前のサイクル時に用いた2回前までの複数個ある何回か前までのサイクル時の型締め位置のデータの平均値との差が、決められた範囲内であるかどうかで決定する。
【0048】
上記例では、クロスヘッド36の位置を基準にして、型締め位置や微小型開き状態、あるいは微小型開き位置を形成させることとしたが、本発明はそれに限るものではない。以下、本発明にかかる射出成形方法や射出成形装置の他の例について説明する。
【0049】
例えば、移動ダイプレート32の位置を基準にして、微小型開き状態を一定の状態に保持するようにしてもよい。すなわち、移動ダイプレート32の位置を基準にして、正規の型締め位置、微小型開き状態での型開き量、変更量等を算出、設定する。そして移動ダイプレート32の位置とクロスヘッド36の位置との関係を、対応表または対応グラフなどを用いて求める。
【0050】
移動ダイプレート32が所定の動作を行うように、換算表などを用いてクロスヘッド36の位置、つまりモータ42の回転量を算出する。そして、算出されたモータ42の回転となるように、モータ42をフィードバック制御させながら駆動させ、移動ダイプレート32を移動させる。このようにしても、金型24に所望の動作を行わせ、安定した射出成形が実施できる。
【0051】
更に本発明では、金型24を所定の型締め力となるように型締めし、その型締め位置を基準にして微小型開き状態を形成する位置まで型開きさせ、射出を行うこととしてもよい。すると、キャビティ内での成形材料の射出量に影響されることがなく、常に正規の型締め力をもたらす型締め位置を基準にして、金型24を動作させて射出圧縮成形を行わせることができる。
【0052】
尚、上述した例では射出圧縮成形を例に説明したが、本発明は、射出発泡成形等、微小型開きの動作、つまり、所定の型締め状態から所定量型開きした状態にする工程や、型開きの状態から所定の型締め状態より所定量型が開いた状態にする工程を有するその他の射出成形方法に用いてもよい。射出発泡成形の場合においては、型締め動作により所定の型締め力で型締めされた後、射出され、射出後あるいは射出と同時に、微小型開き動作が行われ、金型内で成形材料を発泡させることとなる。
【0053】
即ち、射出発泡成形の場合、型締め動作により所定の型締め力で型締めされた後、金型内に成形材料を射出充填し、その後、あるいは射出充填と同時に一実施形態に示した微小型開きの動作、または上記に示されている複数の他の実施例で行っている微小型開き動作と同様な方法を用いて金型に対して微小型開き動作を行い、成形材料を発泡させる。
【0054】
また射出発泡成形や射出圧縮成形に該当しない射出成形方法であっても、微小型開きの動作を有する射出成形方法であれば、一実施形態で行っている微小型開きの動作、または上記に示されている複数の他の実施例で行っている微小型開きの動作と同様な方法を用いて微小型開きの動作を行わせることができる。即ち、微小型開きの状態を有する射出成形方法であれば、微小型開きの動作時に本発明を適応することができる。
【0055】
また型締装置14は、モータを用いた電動でなく、油圧を用いた油圧制御で制御を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、主に微細な形状を有する成形品を成形する射出圧縮成形方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
10…射出成形装置
12…射出装置
14…型締装置
24…金型
26…固定ダイプレート
28…リアプレート
32…移動ダイプレート
34…トグル機構
36…クロスヘッド
40…伝達機構
42…モータ
44…固定金型
46…移動金型
48…トグルレバー
50…基台
54…型制御部
56…モータドライバ
58…回転センサ
60…圧力センサ
64…トグルアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を、所定の圧力で型締めする型締め状態と、
前記金型を、前記所定の圧力で型締めされた状態より所定量開いた状態に保持する微小型開き状態と、を備え、
前記金型を、型開き状態から前記微小型開き状態、あるいは前記型開き状態から前記型締め状態を経て前記微小型開き状態にし、該微小型開き状態の金型内に成形材料を射出し、前記金型を前記所定の圧力で型締めして成形品を成形する射出成形方法、
または、前記金型を、型開き状態から前記型締め状態にし、該型締め状態の金型内に成形材料を射出し、その後前記金型を前記微小型開き状態にして成形品を成形する射出成形方法において、
前記型締め状態における前記金型の型締め位置が変更されたとき、該型締め状態における型締め位置の変更に応じて、前記微小型開き状態における前記金型の停止位置を変更させることを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】
前記型締め状態における前記金型の型締め位置が変更されたとき、該型締め状態における型締め位置の変更に応じて、前記微小型開き状態における前記金型の停止位置を変更させ、該微小型開き状態における該金型の型開き量を、前記型締め状態における型締め位置にかかわらず一定にすることを特徴とする請求項1に記載の射出成形方法。
【請求項3】
前記金型を、クロスヘッドを備えたトグル機構により開閉させ、かつ前記型締め状態における該金型の型締め位置、および前記微小型開き状態における該金型の停止位置を、前記クロスヘッドの位置に基づいて設定することを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形方法。
【請求項4】
前記金型を、クロスヘッドを備えたトグル機構により開閉させ、かつ前記金型の型締め力を計測し、計測された前記型締め力が所定値となるときの前記クロスヘッドの位置を基準に、前記微小型開き状態における前記金型の停止位置を設定することを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形方法。
【請求項5】
固定ダイプレートに取り付けられた固定金型と移動ダイプレートに取り付けられた移動金型とからなる前記金型の開閉動作を、クロスヘッドを備え、一端を前記移動ダイプレートに連結されたトグル機構で行わせ、
更に前記型締め状態における前記金型の型締め位置、および前記微小型開き状態における前記金型の停止位置を、前記移動ダイプレートの位置に基づいて設定することを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形方法。
【請求項6】
固定ダイプレートに取り付けられた固定金型と移動ダイプレートに取り付けられた移動金型とからなる前記金型の開閉動作を、クロスヘッドを備え、一端を前記移動ダイプレートに連結されたトグル機構で行わせ、
更に前記金型の型締め力を計測し、計測された該型締め力が所定値となるときの前記移動ダイプレートの位置を求め、求められた前記移動ダイプレートの位置を基準に、前記微小型開き状態における前記金型の停止位置を設定することを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形方法。
【請求項7】
型締装置と射出装置とを備え、
前記型締装置は、金型を所定の圧力で型締めする型締め状態と、前記金型を、前記型締め状態から所定量前記金型を開いた状態で保持する微小型開き状態のいずれにも動作可能で、前記型締め状態、あるいは前記微小型開き状態に設定した金型内に前記射出装置から成形材料を射出し、前記金型にて成形品を成形する射出成形装置において、
前記型締め状態における前記金型の型締め位置が変更された場合、該型締め位置の変更に応じて、前記微小型開き状態における前記金型の停止位置を変更させることを特徴とする射出成形装置。
【請求項8】
前記型締め状態における前記金型の型締め位置が変更されたとき、該型締め状態における型締め位置の変更に応じて、前記微小型開き状態における前記金型の停止位置を変更させ、該微小型開き状態における該金型の型開き量が、前記型締め状態における型締め位置にかかわらず一定にしたことを特徴とする請求項7に記載の射出成形装置。
【請求項9】
前記金型の開閉動作を行う、クロスヘッドを備えたトグル機構を有し、前記型締め状態における該金型の型締め位置、および前記微小型開き状態における前記金型の停止位置を、前記クロスヘッドの位置に基づいて設定することを特徴とする請求項7または8に記載の射出成形装置。
【請求項10】
前記金型の開閉動作を行う、クロスヘッドを備えたトグル機構と、前記金型の型締め力を計測する圧力センサとを有し、該圧力センサにより計測された前記型締め力が所定値となるときの前記クロスヘッドの位置を基準に、前記微小型開き状態における前記金型の停止位置を設定することを特徴とする請求項7または8に記載の射出成形装置。
【請求項11】
固定金型と移動金型とからなる金型と、
前記固定金型が取り付けられる固定ダイプレートと、
前記移動金型が取り付けられる移動ダイプレートと、
クロスヘッドを有し、一端が前記移動ダイプレートに連結された、前記金型の開閉動作を行わせるトグル機構と、を備え、
前記型締め状態における該金型の型締め位置、および前記微小型開き状態における前記金型の停止位置を、前記移動ダイプレートの位置に基づいて設定することを特徴とする請求項7または8に記載の射出成形装置。
【請求項12】
固定金型と移動金型とからなる金型と、
前記固定金型が取り付けられる固定ダイプレートと、
前記移動金型が取り付けられる移動ダイプレートと、
クロスヘッドを有し、一端が前記移動ダイプレートに連結された、前記金型の開閉動作を行わせるトグル機構と、
前記金型の型締め力を計測する圧力センサと、を備え、
前記圧力センサが計測した前記金型の型締め力が所定値となるときの前記移動ダイプレートの位置を求め、求められた前記移動ダイプレートの位置を基準に、前記微小型開き状態における前記金型の停止位置を設定することを特徴とした請求項7または8に記載の射出成形装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−240603(P2011−240603A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114642(P2010−114642)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】