説明

少なくとも1つのアクティブ素子を含む電気機械デバイスを製造する方法

【課題】単結晶シリコンでできたMEMS/NEMSをSOI技術を利用して形成する方法を提供する。
【解決手段】第1の基板の単結晶層上に第1の単結晶ストップ層を形成するステップ、ストップ層の材料とは異なる少なくとも1種の材料から、第1のストップ層上に、単結晶機械層3をエピタキシャル成長させるステップ、機械層3と比較して選択的にエッチングするのに適した材料から、機械層3上に、犠牲層4を形成するステップ、犠牲層4上に接着層50を形成するステップ、前記接着層50上に第2の基板6を接着するステップ、犠牲層4の反対側の機械層3の表面3を露出させるために、第1の基板およびストップ層を除去するステップであって、機械層3の少なくとも一部分によってアクティブ素子が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのアクティブ素子(active element)を含む電気機械デバイスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(バルク技術と対照をなす)いわゆる「表面」技術は、シリコン上に形成された電気機械構造(マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)および/またはナノエレクトロメカニカルシステム(NEMS)のサイズを低減することを可能にする。これらの技術は、少なくとも3つの層、すなわち機械層(一般に厚さ0.1マイクロメートル(μm)から100μm)、犠牲層(一般に厚さ0.1μmから数μm)および支持体(一般に厚さ10μmから1000μm)からなるスタックを使用することに依存する。犠牲層の選択化学エッチングは、機械層内に、支持体から局所的に独立した機能構造を形成するのに役立つ。
【0003】
犠牲層のエッチングされなかったゾーンは、機械構造を支持体に接続するいわゆる「アンカー(anchor)」ゾーンを形成することを可能にする。
【0004】
所与の1つの方法は特に、機械層および犠牲層を構成する材料対の材料選択、ならびにそれらの層を支持体に結合することを可能にする方法の選択を特徴とする。
【0005】
この方法の選択は、形成するコンポーネントのタイプに応じたさまざまな基準に基づくが、融通が利き、広範囲にわたる要件に適合させるのに適した、例えば犠牲層上に機械層を形成する方法を選択するために必要な主な基準は以下のとおりである:
・機械層の品質、第1に、機械層の機械特性の安定性、さらに、機械層の寸法の制御に使用可能な精度、特に機械層の厚さに関する精度、
・ならびに/あるいは、設計に敏感なエッチングの持続時間を制御することによる制御の達成に依存することを避けるために、化学エッチングによって腐食されないゾーンを犠牲層に挿入することによって、アンカーゾーンの水平寸法を制御することが可能であること、
・ならびに/あるいは、必要に応じて、機械層の上方および/または下方に、電極として使用するのに適した1つまたは複数の電気相互接続レベルを形成することが可能であること。
【0006】
最も広範囲に使用されている一群の方法は、それぞれ機械層および犠牲層の材料としてのシリコンおよびシリカ、ならびにHF(液体または気体)によるシリカの選択エッチングに依存する。この方法群は、シリコンオンインシュレータ(SOI)MEMS方法群の一部を構成する。
【0007】
最も単純なSOI−MEMS法は、材料を逐次的に付着させることによって、すなわち、SiOを、熱によって、またはプラズマエンハンスト(PECVD)、低圧CVD(LPCVD)もしくは非常に微細であれば原子層CVD(ALCVD)とすることができる化学蒸着(CVD)によって付着させ、Siを、PE、LPまたは反応性プラズマ(RP:reactive plasma)型のCVDによって付着させることによって、あるいは、固体シリコン基板などのシリコン支持体上に非常に微細な原子層(ALD)を付着させることによって、2つの層SiO/Siを形成する。
【0008】
この方法は以下の理由から有利である:
・機械層の厚さが、シリコン層付着の持続時間によって制御され、
・シリコンを付着させる前に酸化物層を局所的にエッチングすることによって機械層を直接に使用することが可能であるため、アンカーゾーンが非常に良好に制御され、
・異なるレベルに相互接続を形成することが可能である。
【0009】
とは言うものの、酸化物上に付着し機械層を構成するシリコンは多結晶シリコンであり、これにより、機械層の機械的品質(応力、安定性など)を制御することがより困難になり、厚さの限界に達する可能性がある。
【0010】
これらの方法に対する知られている改良は、単結晶シリコンを機械層として使用することを可能にする。単結晶シリコンの機械特性は相対的に良好であり、使用可能な厚さの範囲は相対的に大きいと考えられる。
【0011】
SOI−MEMS技術を使用することによって単結晶シリコンの機械層を有するMEMSを製造する知られている方法群のうち3つの大きな方法群について述べる。これらの方法群は、完成したスタックを含む基板を製造するために使用する方法が異なる。
【0012】
1)出発基板は、例えば「Smart Cut」(登録商標)技術を使用して切断することによって形成された、制御された厚さ(一般に100ナノメートル(nm)程度)を有するマイクロエレクトロニクス型の微細なSOI基板である。基板に対する絶縁体の役目を果たすSiO層は犠牲層として使用され、微細なシリコン層は、シリコンをエピタキシャル成長させるベースとして使用され、それによりその単結晶としての性質を保存することを可能にする。
【0013】
論文「Polysilicon packaging and a new anchoring technology for thick SOI−MEMS −dynamic response model and application to over−damped inertial sensors」、B.Diem他、(13th International Conference on Solid State Sensors,Actuators,and Microsensors、ソウル(韓国)、2005年6月5日〜9日、527〜530ページ)に記載されているように、機械層またはアンカーの上に、SiNまたは多結晶Siから相互接続レベルを形成することも知られている。
【0014】
2)初期基板は酸化物層を含むシリコン基板である。機械層は、厚い第2のシリコン基板を接着し、次いでこのシリコン基板を、矯正(rectification)および研磨によって薄くすることによって形成する(国際出願第WO2006/035031号参照)。この方法では、犠牲層が接着層として使用され、化学エッチングが均一であることを保証しなければならないため、接着の品質は決定的に重要である。接着の前に犠牲層にアンカーゾーンを実現することが可能だが、そうすると、不均質な表面への接着を制御できることが必要となる。
【0015】
3)初期基板は、厚いシリコン基板に、犠牲酸化物層を付着させ、続いてSiNと多結晶Siとを含む多層機能付与層を付着させ、最後に多結晶Siの最上位接着層を付着させたものである。この初期スタックを、支持体の役目を果たす第2のシリコン基板に接着する。次いで、厚いベース基板を、矯正、続いて研磨によって薄くして、機械層を形成する。例えば、T.Yamamoto他の論文「Capacitive accelerometer with high aspect ratio single crystalline silicon microstructure using the SOI structure with polysilicon−based interconnect technique」、MEMS 2000,the 13th International Annual Conference、2000年1月23日〜27日、宮崎(日本)、514〜519ページを参照することができる。この提案された方法は、多結晶Siを使用してアンカーゾーン、相互接続層および埋込み電極を形成することを可能にし、接着層は犠牲層とは異なる。したがって、犠牲層は機械的機能だけを果たすことになるため、接着品質の重要性はずっと低くなる。
【0016】
上記の方法の中では、方法1)だけが、機械層の厚さを正確に制御することを可能にする。方法2)および3)で提案されているような機械層を得るためのベース基板の薄層化は、現在のところ、約±0.5μm以上(最良の状況および200mmウェーハ上で)の正確さで実行することができ、使用するシリコン基板の厚さの変動に左右される。構造の厚さが数μm程度であるときにはこのような精度は十分ではなく、この厚さが、例えば力覚センサ(force sensor)の場合にあてはまる寸法弾性(dimension elasticity)に対して使用されるときには特にそうである。一般に10%未満の感度変動を達成することが望ましく、感度は厚さの3乗に比例して変化することが理解される。
【0017】
方法1)では、厚さが、微細なSi層のエピタキシャル成長の持続時間によって決定され、それによりはるかに良好な正確さを提供する。エピタキシャル成長させたSOI基板を第2の基板として使用することによって、この原理が方法2)を改良することが提案されている。
【0018】
しかしながら、どのような状況においても、方法1)または方法2)の修正法は、エッチングストップと埋込み電極の両方を同時に形成することを可能にする方法3)ほどには融通の利く方法ではない。
【0019】
基板を製造する知られている層トランスファ(layer transfer)法は、層の厚さの制御によく適合されているが、これらの方法は、絶縁体上の層、一般に酸化物上の層によって構成された構造を形成するために使用される。したがって、接着操作は、MEMS型の電気機械構造を製造する方法では犠牲層として使用される前記層を介して実行される。上で強調したとおり、エッチングの均一性およびエッチング速度を制御する能力は接着品質に左右されるため、接着は決定的に重要である。
【0020】
現在のところ、MEMS型の電気機械構造の形成によく適合されており、アクティブ層の厚さを精密に制御することができる方法は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際出願第WO2006/035031号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Polysilicon packaging and a new anchoring technology for thick SOI−MEMS −dynamic response model and application to over−damped inertial sensors」、B.Diem他、(13th International Conference on Solid State Sensors,Actuators,and Microsensors、ソウル(韓国)、2005年6月5日〜9日、527〜530ページ)
【非特許文献2】T.Yamamoto他、「Capacitive accelerometer with high aspect ratio single crystalline silicon microstructure using the SOI structure with polysilicon−based interconnect technique」、MEMS 2000,the 13th International Annual Conference、2000年1月23日〜27日、宮崎(日本)、514〜519ページ
【非特許文献3】「Epitaxial growth of Pb(Zr0.2Ti0.8)O3 on Si and its nanoscale piezoelectric properties」、A.Lin他、Applied Physics Letters、78巻、14号、2001年4月2日
【非特許文献4】「Using porous silicon as sacrificial layer」、P.Steiner他、J.Micromech.Microeng.、3巻(1993年)、3236ページ
【非特許文献5】Japanese Journal of Applied Physics、43巻、6B号、2004年、3964〜3966ページ、2004応用物理学会
【非特許文献6】「Selective chemical vapor etching of Si1−xGex versus Si with gaseous HCl」、Y.Bogumilowicz、J.M.Hartmann、J.M.FabriおよびT.Bilon、Semicond.Sci.Technol.、21巻、12号(2006年12月)、1668〜1674ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、単結晶シリコンでできたMEMS/NEMSを例えばSOIに基づく技術を使用して形成することを可能にする融通の利く方法であって、小さな厚さを含め、厚さを制御することが可能であり、同時に存在する材料と両立する製造温度を維持することが可能な方法を提供することにある。
【0024】
本発明は特に、バルク弾性波(BAW)型構造に対して使用される圧電スタックの有利な形成を達成することを可能にする。BAW型構造に対して使用される圧電スタックに関しては、製造方法を選択する基準を、使用することができる材料の物理的な品質に関係付けることができる。この文脈では、薄さを含む、バルク単結晶の特性に近い物理特性、あるいは少なくともゾル−ゲル付着によって得られた非晶質膜または多結晶膜によって得られる特性よりも良好な物理特性を得ることができるように、薄層内で単結晶型のある材料を使用することができることが望ましい。これは例えばジルコン酸チタン酸鉛(PZT)にあてはまり、PZTは、単結晶シリコン上の遷移層からエピタキシャル成長させることができる(論文「Epitaxial growth of Pb(Zr0.2Ti0.8)O on Si and its nanoscale piezoelectric properties」、A.Lin他、Applied Physics Letters、78巻、14号、2001年4月2日を参照されたい)。同じことがマグネシウム酸ニオブ酸チタン酸鉛(PMNT)にもあてはまる。
【0025】
圧電層が一般に薄く、一般に100nmから数μmの範囲にあることを考えれば、このような状況では、厚さの制御が特に重要である。
【課題を解決するための手段】
【0026】
したがって、本発明は、アクティブ素子を含む電気機械デバイスを製造する方法において、以下のステップを含むことを特徴とする方法を提供する:
a)第1の基板の単結晶層上に第1の単結晶ストップ層を形成するステップ、
b)前記ストップ層の材料とは異なる少なくとも1種の材料から、前記第1のストップ層上に、単結晶機械層をエピタキシャル成長させるステップ、
c)前記機械層と比較して選択的にエッチングするのに適した材料から、前記アクティブ層上に、犠牲層を形成するステップ、
d)前記犠牲層上に接着層を形成するステップ、
e)前記接着層上に第2の基板を接着するステップ、ならびに
f)前記犠牲層の反対側の前記機械層の表面を露出させるために、前記第1の基板および前記ストップ層を除去するステップであって、前記機械層の少なくとも一部分によって前記アクティブ素子が形成されるステップ。
【0027】
この方法は、前記接着層を付着させる前に、第2のストップ層を付着させるステップを含むことができる。
【0028】
この方法は、ステップc)の後に、以下のステップを実施することを特徴とすることができる:
)前記犠牲層に少なくとも1つのトレンチを形成するステップ、および
)前記トレンチ(1つまたは複数)を埋めて、少なくとも1つのピラーを形成するステップであって、前記ピラーが、少なくとも部分的に、前記犠牲層の前記材料とは異なる材料から形成されるステップ。
【0029】
この方法は、ステップc)が、
21)少なくとも1つのトレンチに対して、前記犠牲層の前記材料とは異なる第1の材料を部分的に充填するステップと、
22)前記充填を、前記第1の材料とは異なる絶縁性の第2の材料の充填によって終了させるステップと
を含むことを特徴とすることができる。
【0030】
前記第1の材料は、絶縁性または導電性であるように選択することができる。
【0031】
この方法は、少なくとも1つのトレンチに対して、前記犠牲層および前記機械層の前記材料とは異なる第1の絶縁材料を部分的に充填するステップと、残りのトレンチに導電材料を部分的に充填するステップとを提示し、全ての前記トレンチの前記充填が第2の絶縁材料の充填によって終了することを特徴とすることができる。
【0032】
この方法は、少なくとも1つのトレンチに導電材料を部分的に充填する前記ステップが、1つまたは複数の導電ピラー間に少なくとも1つの電気コンタクトを形成するために、前記犠牲層の表面を覆う少なくとも1つの領域を形成するステップを含むことを特徴とすることができる。
【0033】
前記充填を前記接着層の前記形成と一緒に実行することができる。
【0034】
この方法は、前記第2の基板が少なくとも1つの電子回路、特に相補型金属酸化物半導体(CMOS)回路を含み、前記接着層が、前記電子回路と前記コンタクト形成領域の間の電気コンタクトを構成するのに適した局所化された領域を提示することを特徴とすることができる。
【0035】
この方法は、ピエゾ抵抗センサを形成することを可能にするために、ステップb)の前に、前記機械層の少なくとも1つの局所化された領域にドーピングを実施するステップを含むことを特徴とすることができる。
【0036】
前記ストップ層の前記材料は特に、SiGe、多孔質SiまたはドープされたSiから選択することができる。
【0037】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照して非限定的な例として与えられた以下の説明を読むことによってよりいっそう明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1aから1fは、本発明の好ましい2つの実施態様を示す図である。
【図2】図2aから2bは、本発明の好ましい2つの実施態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
第1の実施態様(図1aから1f)は、単結晶シリコンから機械構造を形成することに関する。
【0040】
図1aは、第1のストップ層2がその上に形成された単結晶シリコン基板1を示す。このストップ層2は、機械層3のエピタキシャル成長と両立する単結晶材料でできている。
【0041】
第1の変形では、ストップ層2が、エピタキシャル成長させた厚さ100nm程度のSiGe層である。
【0042】
第2の変形では、ストップ層が、知られている方法によって出発基板上に形成された多孔質Si層である(例えば論文「Using porous silicon as sacrificial layer」、P.Steiner他、J.Micromech.Microeng.、3巻(1993年)、3236ページを参照されたい)。
【0043】
続いて、単結晶Siの機械層3を、用途に応じた100nmから100μmの厚さにエピタキシャル成長させる。SiGeのストップ層では、機械層に生じる応力を最小化するために、SiGe層のGe含量が例えば10モル百分率(モル%)から70モル%の範囲にある。
【0044】
次いで、例えばSiOの犠牲層4を、用途に応じて一般に50nmから数μmの範囲の深さにわたって、低圧化学蒸着(LPCVD)またはプラズマエンハンスト化学蒸着(PECVD)によって付着させ、あるいはシリコンを酸化することによって得る(図1b)。
【0045】
続いて、必要に応じて、犠牲層4を局所的にエッチングしてアンカーゾーンを形成することができる。犠牲層4を覆ういわゆる「相互接続」層は、絶縁部分用のSiN領域44(一般に100nm)と導電部分用の多結晶Si領域45とを交互に含むことができ、トレンチを埋めるためにはSiOなどの絶縁体を使用することが可能である。さまざまな相互接続レベルを形成するため、複数のSiN層44および多結晶Si層45を使用することが可能である。
【0046】
図lcは3つのタイプのトレンチを示す。
【0047】
当該または各トレンチ41はそれぞれSiN絶縁層44によって覆われ、犠牲層4の表面もSiN絶縁層44によって覆われる。
【0048】
当該または各トレンチ42はそれぞれ、多結晶Si導電層45によって覆われ、多結晶Si導電層45は、犠牲層4の表面および可能には絶縁層44の一端の上に重なる。層45を使用して、トレンチ42に面した機械層3の2つ以上の部分を相互接続し、あるいは犠牲層上に電極または導体トラックを形成することができる。
【0049】
当該または各トレンチ43はそれぞれSiN絶縁層44および多結晶Si導電層45によって覆われ、したがって、絶縁エッチングストップを横切って電気を通すことを可能にする。
【0050】
犠牲層のエッチングされたゾーンは、支持体から局所的に独立した機能構造を機械層に形成することを可能にする。
【0051】
犠牲層のエッチングされなかったゾーンは、いわゆる「アンカー(anchor)」ゾーンないし機械的補強ゾーン(「ピラー(pillar)」として知られる)を形成することを可能にする。層44および45は、エッチングストップを有するように形成されたピラー、犠牲層の下の電極、機械層と前記電極の間の電気接続、機械層の互いに接続されていない部分間の電気接続などの機能を犠牲層に追加することを可能にするため、「機能付与(functionalizaiton)」層と呼ばれる。
【0052】
このような機能付与層を形成するときには、犠牲層を完全に覆ったときに第2のストップ層の役目を果たす層によって、犠牲層の表面を覆うことができる。第2のストップ層は、犠牲層を接着層から化学的に分離することを可能にする。
【0053】
示された例では、導電領域と絶縁領域の間で機能付与が交替し、それにより、コンタクト領域および/または相互接続および/または電極を提供することを可能にし、さらに絶縁性または導電性のエッチングストップを犠牲層に形成することを可能にする。
【0054】
続いて、トレンチ41、42および/または43にSiOを充填する。
【0055】
付着させる最後の層は、SiOから形成することができる接着層50である。この層は、空洞41、42、43を埋めるのに使用した層と同じ層とすることができる。この層は完全に平らである必要があるため、付着させた後または付着の前に研磨を実行する。付着させた層はその後、その平らな状態を保持する。
【0056】
アンカーゾーンの形成は全くの任意である。機械層3のウェルから犠牲層をエッチングし、エッチングの持続時間を制御することによって犠牲層の選択された領域をその場に残すことが可能である。この技法は特に、単純な構造のMEMSに適しており、特別な精度を必要としない。
【0057】
次いで、分子結合(molecular bonding)によって第2の基板6を組み付ける(図1e)。
【0058】
第2の基板6が1つまたは複数のCMOS回路を含んでもよい。このような状況では、接着層50が、CMOS部分と多結晶Siでできた領域45の機能付与層との間にコンタクトを形成するのに適した、SiO上にCu領域のアレイを含む混合層である。第2の基板も同一の接着層を含む。この変形では、接着ステップおよび後続のステップをCMOS技術と両立する温度で実行しなければならない。このような接着が可能なのは、アセンブリが機械的機能だけを果たすからである。次いで接着層が、MEMSのある部分とCMOS回路との間に電気接続を形成することを可能にする。電気接続を形成する際には全ての領域がアクティブである必要はなく、一部の領域を、十分な接着力を得る目的のためだけに使用することができることを認識すべきである。このような状況では、CMOS回路への電気接続を、MEMSの表面に形成されたコンタクトを介して実施することができる。
【0059】
続いて、第1の基板1の裏面31へのアクセスを得るためにスタックを裏返す。
【0060】
第1の変形、すなわち一般に100nmの厚さを有する薄いSiGeストップ層2を有する変形では、続いてこの第1の基板を厚さ約10μmまで矯正する。この厚さは、この矯正ステップに対して利用可能な精度によって決定され、さらに機械層が、矯正ステップ中に形成される残留ワーク硬化ゾーンを持たないように決定される。したがって、この厚さは特に所望の矯正速度によって決まる。
【0061】
続いて、第1の基板1のSiの残りの厚さを、SiGe層2で止まる化学エッチングによって除去する。Siをエッチングし、SiGeで止まるさまざまな既知の方法が存在する。例えば水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)またはKOHベースの溶液を使用するウェットエッチング法、またはドライエッチング(Japanese Journal of Applied Physics、43巻、6B号、2004年、3964〜3966ページ、2004応用物理学会)を挙げることができる。
【0062】
第2の変形では、ストップ層2が厚い多孔質Si層(一般に厚さ約10μm)である。このような状況では、基板1を、ストップ層2に到達するまで矯正する。
【0063】
最後に、層2がSiGeでできているのかまたは多孔質Siでできているのかにかかわらず、両方の変形において、第1のストップ層2を、機械層3のSiで止まる化学エッチングによって除去する(図1f)。
【0064】
SiGeをエッチングし、Siの表面で止まるさまざまな知られている方法が存在する。高温HClエッチング法(「Selective chemical vapor etching of Si1−xGe versus Si with gaseous HCl」、Y.Bogumilowicz、J.M.Hartmann、J.M.FabriおよびT.Bilon、Semicond.Sci.Technol.、21巻、12号(2006年12月)、1668〜1674ページ)、HNA型(フッ化水素酸、硝酸、酢酸)の溶液に基づく化学エッチング法、およびドライエッチング法(上記のJapanese Journal of Applied Physicsの論文)を挙げることができる。
【0065】
多孔質Siをエッチングし、Siの表面でエッチングを止める目的には、例えばP.Steiner他の上記の論文「Using porous silicon as sacrificial layer」、を参照することができる。このような状況では、機械層3のSiGeの表面で止まるストップ選択性を増大させるために、化学エッチングの前にストップ層2を酸化させることができる。
【0066】
この方法は、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE:deep reactive ion etching)によって機械層3を構造化し、犠牲層4をエッチングする(例えばHFによる化学蒸気エッチング)ことによって終了となる。
【0067】
変形可能な空洞を有するセンサ(圧力センサまたは力覚センサ)に関しては、リンケイ酸塩ガラス(PSG)層またはSiN層またはSiO層によって、スタックがCMOS回路を含む場合には300℃で、空洞を選択する。
【0068】
トレンチによって機械層から局所的に分離されたシリコンピラーを形成することによって、上面にコンタクトを再び形成する。
【0069】
キャップを必要とするセンサ(慣性センサ)に関しては、薄層を広げることによってキャップを形成する知られている技法を使用することが可能である。
【0070】
センサを製造するため、提案の方法は、容量検出またはピエゾ抵抗検出を使用することを可能にする。ピエゾ抵抗検出では、好ましくは犠牲層を付着させる前に、必要なピエゾ抵抗歪みゲージを形成するように、機械層3にドーピングを実行する。
【0071】
図2aおよび2bに示された第2の実施形態は、単結晶シリコン以外の材料でできたアクティブ層に対応する。
【0072】
単結晶型のある薄膜材料が、薄さを含む、バルク単結晶の特性に近い物理特性、あるいは少なくとも同じ材料が非晶質相または多結晶相の状態にあるときに得られる特性よりも良好な物理特性を得ることを可能にするときに、その材料を使用することができると有利である。ペロブスカイト類ではこれが例えばジルコン酸チタン酸鉛などの強誘電性酸化物にあてはまり、ジルコン酸チタン酸鉛は、単結晶シリコン上のSrTiO(STO)遷移層からエピタキシャル成長させることができ、ゾル−ゲル付着によって形成された非晶質膜または多結晶膜の特性よりも潜在的に良好な特性を有する(前述のA.Lin他の論文)。
【0073】
厚さを制御するための第1のストップ層は、第1の実施形態の場合と同様に単結晶シリコン基板1上に形成された単結晶SiGe層2を含む。単結晶シリコン層61と単結晶STOペロブスカイト層62とからなる遷移層をエピタキシャル成長させる(STOはSrTiOを意味する)。機械層3に対応する圧電スタックは、知られている技法(前述のA.Lin他の論文)を使用してPZT圧電層66に結合させた単結晶SrRuO電極63、64からなる。この方法は、可能にはエッチングストップを含む犠牲層4を形成し、コンタクトおよび接着層を形成する前述の方法と同一である。第1の電極63およびPZT層66の局所エッチングは、必要に応じて、第1のSrRuO層63を第1の電極に対して使用し、同時に第2の電極への電気接続67を形成するために使用することを可能にする(図2a)。
【0074】
前述のとおりに実行される犠牲層70のエッチングを使用して圧電構造を局所的に解放するために、この共振構造のバルクに開口を形成する。SiとSTOペロブスカイトとからなる遷移層をエッチングにより局所的に除去することによって、SrRuO層上にコンタクトを形成する(図2b)。
【0075】
このようにして得られるコンポーネントは、フィルムバルクアコースティックレゾネータ(FBAR:film bulk acoustic resonator)型の、すなわち空洞上に形成されたBAW表面弾性波共振器である。
【符号の説明】
【0076】
1 第1の基板
1’第1の基板の単結晶層
2 第1のストップ層
3 機械層
機械層の表面
4 犠牲層
6 第2の基板
41 トレンチ
42 トレンチ
43 トレンチ
44 絶縁SiN領域
45 導電多結晶Si領域
50 接着層
【図1−1】

【図1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブ素子(active element)を含む電気機械デバイスを製造する方法において、
a)第1の基板(1)の単結晶層(1’)上に第1の単結晶ストップ層(2)を形成するステップと、
b)前記ストップ層(2)の材料とは異なる少なくとも1種の材料から、前記第1のストップ層(2)上に、単結晶機械層(3)をエピタキシャル成長させるステップと、
c)前記機械層(3)と比較して選択的にエッチングするのに適した材料から、前記アクティブ層(3)上に、犠牲層(4)を形成するステップと、
d)前記犠牲層(4)上に接着層(50)を形成するステップと、
e)前記接着層(50)上に第2の基板(6)を接着するステップと、
f)前記犠牲層(4)の反対側の前記機械層(3)の表面(3)を露出させるために、前記第1の基板(1)および前記ストップ層(2)を除去するステップであって、前記機械層(3)の少なくとも一部分によって前記アクティブ素子が形成されるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記接着層(50)を付着させる前に、第2のストップ層を付着させるステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップc)の後に、以下のステップを実施することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法:
)前記犠牲層(4)に少なくとも1つのトレンチ(41、42、43)を形成するステップ、および
)前記トレンチ(1つまたは複数)を埋めて、少なくとも1つのピラーを形成するステップであって、前記ピラーが、少なくとも部分的に、前記犠牲層(4)の前記材料とは異なる材料から形成されるステップ。
【請求項4】
ステップc)が、
21)少なくとも1つのトレンチ(41、42)に対して、前記犠牲層(4)の前記材料とは異なる第1の材料を部分的に充填するステップと、
22)前記充填を、前記第1の材料とは異なる絶縁性の第2の材料の充填によって終了させるステップと
を含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の材料が絶縁材料であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の材料が導電材料であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのトレンチ(43)に対して、前記犠牲層(4)および前記機械層(3)の前記材料とは異なる第1の絶縁材料を部分的に充填するステップと、残りのトレンチに導電材料を部分的に充填するステップとを提示し、全ての前記トレンチの前記充填が第2の絶縁材料の充填によって終了することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのトレンチに導電材料を部分的に充填するステップが、1つまたは複数の導電ピラー間に少なくとも1つの電気コンタクトを形成するために、前記犠牲層(4)の表面を覆う少なくとも1つの領域を形成するステップを含むことを特徴とする、請求項4または7に記載の方法。
【請求項9】
前記充填が前記接着層(50)の前記形成と一緒に実行されることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第2の基板(6)が少なくとも1つの電子回路、特にCMOS回路を含み、前記接着層が、前記電子回路と前記コンタクト形成領域の間の電気コンタクトを構成するのに適した局所化された領域を提示することを特徴とする、請求項1および請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ピエゾ抵抗センサを形成することを可能にするために、ステップb)の前に、前記機械層(3)の少なくとも1つの局所化された領域にドーピングを実施するステップを含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記ストップ層(2)がSiGeから形成されることを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ストップ層(2)が多孔質Siから形成されることを特徴とする、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ストップ層(2)がドープされたSiから形成されることを特徴とする、請求項1から13のいずれかに記載の方法。

【図2】
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【公開番号】特開2010−74143(P2010−74143A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−147942(P2009−147942)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(506423291)コミサリア ア レネルジィ アトミーク (85)
【Fターム(参考)】