説明

廃材を液体燃料に転換するための方法及びプラント

【課題】廃材を熱触媒的転換して再利用可能な燃料にするための方法及びプラント、並びに前記方法により製造された燃料の提供。
【解決手段】加熱された、弁付きのマニホールド経由で熱分解チャンバーに溶融した廃材を移送する工程、及び酸素が排除され、圧力の制御された条件下で前記廃材を熱分解しガス状にする工程、を含む方法。熱分解したガスは、触媒コンバーターに移送され、そこで前記ガス状原料の分子構造が変化し、更にガスはコンデンサーに移送され、蒸留及び冷却により各フラクションに分画される。熱分解チャンバーに移送する前の廃材の溶融、半連続的制御による触媒塔への原料原料の移送、溶融した廃材の熱分解チャンバーへの移送、各チャンバーの独立制御、内部の螺旋状部又は他の適切な手段を用いた前記熱分解チャンバーからのチャーの機械的除去、が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック、好ましくは廃棄プラスチック材を、利用価値の高い新たな製品に加工する技術に関する。一つの態様において、本発明は、プラスチックを液体炭化水素、特にディーゼル燃料に転換する工程に関する。便宜上、本発明をプラスチックからディーゼル燃料へ転換する技術に関して以下に記述するが、本発明はその用途のみに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄プラスチック原料を利用価値の高い液体炭化水素製品に効率よく再加工する多くの試みが行われてきたが、これらは不成功に終わっている。毎年、相当なトン数のプラスチック製の日用品の廃棄物又は合成樹脂が不適切に廃棄されている。近年、一般の廃棄合成樹脂の収集及びリサイクルにおいて相当の改善が見られるが、現在、助成金なしで行われている廃棄合成樹脂のリサイクル及び再使用は不経済であることが証明されているため、多くのリサイクルの取り組みがやむなく放棄されている。廃棄合成樹脂を燃料としてリサイクルしようと試みても、リサイクル用装置の作動を維持するに十分な量を収集できないため、その実用性が明らかとされていない。
【0003】
熱分解とは、化合物を熱によって解離、又は分解することを指し、特に、プラスチック廃材が酸素の不在下で熱分解(クラッキング)により液体燃料に転換される工程を指す。プラスチック廃材は、一般に、最初にステンレス鋼のチャンバー内で、窒素等の不活性なパージガスの存在下で溶融される。次に、該チャンバーが溶融材料を加熱してガス状とし、該ガスは触媒コンバーター内に引き込まれ、クラッキングによってある所望の範囲の炭素鎖長に形成される。
【0004】
次に、所望の炭素鎖長の範囲を有する高温の熱分解ガスを、1つ又は2つ以上のコンデンサー内で濃縮して、直鎖又は分岐鎖の脂肪族、環式脂肪族及び芳香族の炭化水素を含む炭化水素蒸留物を得る。得られた混合物は、添加剤の添加、及び他の付加的な下流工程の操作後に、標準的なディーゼル燃料とほぼ同等の物質となる。
【0005】
ディーゼル燃料は、ガソリンよりも重く、かつ潤滑油よりも軽い蒸留物として知られる、炭化水素化合物(直鎖及び分岐鎖アルカン、環式飽和炭化水素、並びに芳香族)の混合物である。ディーゼル燃料は、ディーゼルエンジンのみを作動させるように設計されており、圧縮された高温の空気と共にディーゼルエンジンの燃焼チャンバー内に注入され、自然発火する。逆に、ガソリンエンジン内のガソリンは、点火プラグによって発火する。熱分解及び他の方法で製造されたディーゼル燃料は、多くの国で、販売が認定されるに先だって一定範囲の組成の要件を満たす必要がある。
【0006】
熱分解システムを基礎とした稼働中のプラントは現存するが、一連の重大な欠点及び不都合が存在し、これらによって、廃棄プラスチック材からの液体炭化水素の生産及びスループットが最終的には非効率となる。主な不都合とは、プラスチック廃棄物を手作業により仕込む工程の存在と、多様な大きさのプラスチック廃棄物原料を前記システムが受け入れられないことである。手作業で仕込まれるプラスチックブロック又はプラスチックロールを受容する現存のシステムは、熱分解チャンバー内に空気を含む非常に大きな空間を形成するため、該チャンバーは空気をパージし、材料の溶融を可能にするために密封される必要がある。ただし一旦密封されると、チャンバーに更なる廃棄物を加えることはできなくなり、さもなければ、一旦材料が溶融すると更なる材料のための空間が形成される。すなわち、熱分解チャンバーをその最大量まで充填することが不可能なため、これら周知の熱分解システムの全工程のスピードを減少させ、最終的にはスループットを低下させることにつながる。
【0007】
一般に、公知の熱分解プラントは、二重チャンバー系として周知のとおり2個の熱分解チャンバーを有しており、これらはほぼ等しい速度で一緒に作動する。現存する熱分解チャンバーの設定で特に問題となることは、燃料がバッチ処理以外の方法では生産できないことである。すなわち、一旦両チャンバーにおいて一斉に廃材の熱分解が完了した後、不要の炭素質のチャー(char)を各チャンバー内の底から除去する前に、各チャンバーが冷却するまで待つ必要がある。それゆえ、現在の方法では、第二のすなわち次のバッチ処理に前記チャンバーが使用される前に、各チャンバーが冷却するのを待って、手作業でチャーを掃除する必要がある。一方、本発明の一つの態様によるバッチ工程では、本発明の別の一つの態様による好ましい連続工程中に、チャンバーの蓋に存在するマンホール(manhole)(検査孔)を通してチャーを手動により真空除去する必要があると考えられる。この問題点については、後に説明する。バッチ処理に関する設計上の限界に加えて、現存するチャンバーの物理的サイズが、バッチ処理された廃材のスループット容積を相当制限している。
【0008】
現存する熱分解システムの更なる問題点としては、チャンバーの掃除の頻度が比較的多いこと、廃材原料それ自体の熱伝導が乏しいこと、チャンバーへの仕込み毎の工程時間が長いこと、及び消耗品である触媒の費用及び汚染が挙げられる。また、何より問題となる点は、最終製品としての燃料の品質であり、それにはディーゼル燃料の、燃料ポンプとインジェクタにより生じる接触固体表面の摩耗を低下させる能力が含まれる。
【0009】
現存する熱分解システムが有する更なる問題点として、それにより生成される燃料には多くの場合様々な基準が存在するため、そのような燃料の不一致に対応できないエンジン及び他の機械には、それらの燃料が使用出来ないことが挙げられる。特に問題なのは、現存する三つの工程により生成される燃料の品質の問題、すなわち軽燃料留分が大量に存在するために、通常、引火点が25〜45℃という低すぎる温度の範囲となってしまう問題である。ゆえに、このような燃料は、全世界で望まれる用途、及び据え付けエンジン以外への用途に適するものではない。また、他の先行技術における工程は、より重い油を生成し、ディーゼルエンジンの作動には適さない。
【0010】
上記の考察、及び本明細書中に記載の既存の書類、装置、作用又は知識についての他の考察は、全て本発明の内容の説明のために本明細書中に含まれる。前記のいずれの情報も、本願の開示及び特許請求の範囲に係る優先日と同日又は日前に、オーストラリア又は他の地域内で、先行技術の一部をなす、又は一般に利用可能な知識であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【特許文献1】特許第3344952号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記の説明に鑑みて、本発明の課題は、廃棄プラスチックを原料として使用した、均一な品質を有する液体炭化水素のスループットが改善された熱分解プロセスを提供することにある。
【0012】
本発明の更なる目的は、先行技術に関連した少なくとも一つの不都合を、緩和又は克服することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、廃材を再使用可能な燃料へと熱触媒的に転換する方法を提供する。本方法は、廃材を溶融手段に供給する工程、溶融した廃材を1つ又は2つ以上のマニフォールドから熱分解チャンバーに移送する工程、実質的に酸素がパージされ、かつ圧力制御された条件下にて廃材を加熱して同材料を熱分解し、ガス状にする工程、得られたガスを触媒コンバーター手段(ここでガス材料の分子構造が、構造及び形態において転換する)に移送する工程、ガスを1つ又は2つ以上のコンデンサー手段に移送して、前記ガスを蒸留及び冷却し、その各々の留分とする工程、並びに該留分の少なくとも一つが利用可能な燃料タイプとして形成される工程、を含む。
【0014】
別の一つの態様において、本発明は、廃棄有機プラスチック材をディーゼル燃料に転換する方法を提供し、同方法は、
b)変換された廃材を溶融手段に供給する工程、
c)溶融した廃材を1つ又は2つ以上の熱分解チャンバーに移送する工程、
d)実質的に酸素がパージされ、かつ圧力制御された環境内にて廃材を加熱して同材料を熱分解し、ガス状にする工程、
e)ガス材料を触媒コンバーター手段(ここでガス材料の分子構造は転換する)に移送する工程、及び
f)ガスをコンデンサー手段に移送して、同ガスを蒸留及び冷却し、その各々の留分に分離して、少なくとも一つの利用可能な燃料タイプを形成する工程、
を含む。
【0015】
未加工の廃棄プラスチック材を、最初に溶融手段内に供給することができる。しかしながら、前記廃材は予備的な加工を受けることが好ましく、それにより本発明は、
a)廃材を破砕する予備的な工程
を含む。
【0016】
前記工程a)は、例えばシート、集合体、塊、小塊及び他の様々な形態を有する廃材を、機械的な処理により破壊し、該材料を体積対表面積の比が大きい、例えばフレーク状の小断片又は粒子状の材料とする。廃材を破砕する利点としては、
i)供給手段、又は任意に幅若しくは大きさなどのサイズ峻別する開口部を通して、ブローイングや重力等による多様な手段により材料を搬送し得るため、廃材をプロセス中の次の工程に供給することがより容易になること、及び
ii)個々の粒子の溶融がより容易となり、また粒子間の熱伝導が促進されるため、溶融手段において必要となる反応時間又はエネルギーが減少すること、
が挙げられる。
【0017】
別の一つの態様において、本発明は、プラスチック廃材をディーゼル燃料に転換するためのプラントを提供する。同プラントは、
a)前記廃材を破砕して粒子状物質にする破砕手段と、
b)粒子状の前記廃材を受容及び溶融する溶融手段と、
c)プラスチック廃材を受容する熱分解チャンバーであり、前記熱分解チャンバーは、
i)チャンバーをシールして外気から隔離し、非酸化性のガスの導入によって熱分解チャンバーから空気浮遊(air−borne)酸化剤をパージし、及び
ii)実質的に空気浮遊オキシダントが存在しない、圧力制御の条件下にて、廃材を加熱して熱分解し、ガス状にする、前記熱分解チャンバー、
d)ガス状の廃材を受容し、クラッキングさせることにより、ガス状の材料の分子構造を転換させる触媒コンバーター手段、並びに、
e)クラッキングした前記ガス材料を受容、冷却及び分離して留分とし、少なくとも一つの利用可能な燃料タイプを形成するコンデンサー手段、
を含む。
【0018】
前記熱分解チャンバーは螺旋状部を有し、それにより前記熱分解チャンバーの底に堆積するチャー(char)を除去し、かつ溶融廃材を連続的に熱分解チャンバー内に移送し、ガス状の廃材を連続的に触媒コンバーター手段に供給することが可能となる。
【0019】
溶融手段に必要な熱源としては、プロセス中の別の一部分と関連しない、独立した熱源を備えた炉又は電気加熱手段が使用可能である。あるいは、プロセス中の別の一部分からの熱エネルギーを回収及び/又はリサイクルし、該溶融手段に使用してもよい。その好ましい形態は、1個又は2個以上の熱分解チャンバーの加熱手段が、溶融手段に向けられることである。例えば、熱分解チャンバーが炉により加熱されると、高熱の排気ガスが発生し、それを溶融手段の加熱に使用することができる。高熱の排気ガスは溶融手段のチャンバーを包囲するコイルに直接供給するか、又は熱交換器を介して溶融手段に熱エネルギーを伝達することができる。熱交換器には、例えば蒸気又はより好ましくは油のような熱交換流体が使用可能である。
【0020】
コンデンサー手段としては、クラッキングしたガス材料から軽留分を除去する機能を有する選択的低温コンデンサーが使用可能である。コンデンサー手段は、触媒コンバーター手段からのガス生成物の異なる留分を個別に濃縮し、燃料として使用されるのに適した1つ又は2つ以上の留分を選択することを可能にする。例えば、コンデンサー手段は、留分を異なる温度又は温度範囲にて、濃縮することが可能な更なる2個のコンデンサーを有することができる。好ましい態様としては、前記コンデンサー手段は、ディーゼル燃料に適した留分を単離し、軽い留分を単離して利用又は排気するためのコンデンサーを有する。
【0021】
好ましい態様として、本発明は、廃材を再使用可能な燃料へと熱触媒的に転換するための方法であり、前記方法では、溶融廃材は独立して作動可能な1つ又は2つ以上の熱分解チャンバーに供給される、方法を提供する。
【0022】
更に好ましい態様として、本発明は、廃材を再使用可能な燃料へと熱触媒的に転換するための方法であり、前記方法では、複数の熱分解チャンバーが独立して作動して、1つ又は2つ以上の熱分解チャンバーから触媒コンバーター手段へのガス材料の周期的な移送を可能にする、方法を提供する。
【0023】
更に好ましい態様として、本発明は、廃材を再使用可能な燃料へと熱触媒的に転換するための方法であり、前記方法では、多数の熱分解チャンバーが交互に一度に少なくとも一つ使用され、それにより一つの熱分解チャンバーがガス材料を触媒コンバーター手段に移送する間に別の一つの熱分解チャンバーを冷却することが可能である、方法を提供する。
【0024】
更に好ましい態様として、本発明は、廃材を再使用可能な燃料に熱触媒的に転換するための方法であり、前記方法では、1つ又は2つ以上の熱分解チャンバーは、ガス廃材の触媒コンバーター手段への移送を完了した後、能動的に冷却される、方法を提供する。
【0025】
更に好ましい態様として、本発明は、廃材を再使用可能な燃料に熱触媒的に転換するための方法であり、前記方法では、1つ又は2つ以上の螺旋状部を使用することによって、1つ又は2つ以上の熱分解チャンバーからチャーが機械的に除去される、方法を提供する。このチャンバーから自動的にチャーを除去する方法により、特定のバッチ処理の後に手動でチャーをチャンバーから除去する必要性が排除され、チャンバーの半連続的な作動の遂行が可能となる。チャーは時間とともにチャンバー内に堆積し続け得るが、生成するチャーの大部分を連続的に除去することにより、堆積の速度が遅くなる。ゆえに、チャンバーから手動でチャーを頻繁に除去する必要性が顕著に低下する。
【0026】
以上より、更に好ましい態様として、本発明は、廃材を再使用可能な燃料に熱触媒的に転換するための方法であり、前記方法は少なくとも半連続的に作動する、方法を提供する。連続プロセスとしての熱分解システムは、原則的にはバッチシステムと同様に作動することができる。しかしながら、前記システムは、バッチシステムとは異なる数個の独特の精製手段を有することができる。特に、前記連続プロセスは、一つ又は一連のコンデンサー以外にも、熱分解チャンバー及び/又は蒸留カラムへの連続的供給システムを採用することができる。
【0027】
熱分解連続プロセスプラントは、廃棄プラスチックの再使用可能な清浄な燃料(例えば、中間蒸留物としても周知のディーゼル燃料)への熱触媒的転換工程を採用することができる。このシステムは、プロセス内で異物の混入したプラスチックを使用することができる。しかしながら、容積当たりの加工されるプラスチック量が減少することから、異物の混入度は収率に影響を与えると考えられる。この工程は熱分解チャンバー内にて無酸素環境下で、プラスチック廃棄物を熱的に低級化(分解)させ、ガス状になるように熱分解(クラッキング)する。高温の熱分解ガスは、触媒コンバーターを通過することができる。この触媒コンバーターは、多数の触媒面を有することができる。前記触媒面は合金板からなることが好ましく、またこれら触媒面は汚染又は消耗されないことがより好ましい。この工程中、2つの反応が起こる。クラッキングに関係する第一の反応は、プラスチックが加熱される間に起こり、第二の反応は、熱分解ガスが合金板に接触した際に起こる。それにより、ガスがクラッキングされ、再形成され、所望の範囲の炭素鎖長に形成される。
【0028】
次に、所望の炭素鎖長範囲を有する高温熱分解ガスは、1つ又は2つ以上のコンデンサー、又はより好ましくは1つ又は2つ以上の蒸留塔内で濃縮されて、直鎖及び分岐鎖の脂肪族、環状脂肪族及び芳香族の炭化水素を含む炭化水素蒸留物が得られる。得られた混合物は、添加剤の添加や、例えば特に軽い留分を除去する等の小規模な付加的な下流工程を経て、標準的なディーゼル燃料とほぼ同等となることが好ましい。このようにして、本発明によるプロセスにより、オーストラリアで標準的な、AS 3580−1998という名称のディーゼル燃料と実質的に同等の燃料を生産することができる。
【0029】
更に好ましい態様として、本発明は、廃材を再使用可能な燃料に熱触媒的に転換するための方法であり、この方法は、対応する数の吸入経路を有するマニフォールドシステムの選択的な作動によって溶融廃材を受容する、少なくとも4つの熱分解チャンバーを使用する、方法を提供する。前記マニフォールドシステムは、例えば熱分解炉からの高温排気ガスを任意にて使用して、予め加熱されることが好ましい。4つの熱分解チャンバーの各々に順番に自動的に供給するように、四方向マニフォールドを適用することが好ましい。
【0030】
更に好ましい態様として、本発明は、前記廃材がポリオレフィン、及び/又は、本発明の目的に適する廃材として考えられる他の材料を含有する、又は該材料から構成されている、前記方法を提供する。前記廃材は、付加重合体、縮重合体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択することが好ましい。廃材である有機材料は、廃棄プラスチック、使用済み油及び潤滑油、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択することが好ましい。
【0031】
更に好ましい態様として、本発明は、前記廃材である有機材料が、脂肪族化合物種、芳香族化合物種、置換基を含む脂肪族及び芳香族化合物種、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記方法を提供する。
【0032】
更に好ましい態様として、本発明は、前記溶融手段が熱溶融送り込みシステムである方法を提供する。溶融手段は熱分解チャンバーの前に設置することができる。
【0033】
更に好ましい態様として、本発明は、前記触媒コンバーターが、触媒である一連の高表面積の内部金属板から構成されている、方法を提供する。前記板触媒は、セラミックス、ゼオライト、鉄Fe3+、コバルトCo2+、ニッケルNi2+、ラネーニッケル、マンガンMn2+、クロム3+、銅Cu2+のケイ酸塩、及び/若しくはそれらの混合物、又は触媒MCM−41を含む群から選択することが好ましい。
【0034】
更に好ましい態様として、本発明は、本発明の方法により製造された、実質的に炭素ベースの燃料製品を提供する。燃料は、長さC〜C25の範囲の炭素鎖を含んでいる。前記の実質的に炭素ベースの燃料製品は、長さC16をピークとする範囲の炭素鎖を含んでいることが好ましい。前記の実質的に炭素ベースの燃料製品は、AS 3570−1998と称されるオーストラリアで標準的なディーゼル燃料と実質的に同等であることが好ましい。再使用可能な炭化水素及び再使用可能な燃料は、液体炭化水素を含む。前記燃料製品は、貯蔵容器内に貯蔵され得る。前記貯蔵容器は貯蔵槽が好ましい。
【0035】
本発明のプロセスの、更に好ましいオプションを以下に記す。吸引は、スクリュー式ものが使用可能である。パイプ手段は、加熱した断熱パイプが使用可能である。マニフォールドは、四方向マニフォールドが使用可能である。前記マニフォールドは、溶融した廃材を4つの熱分解チャンバーのうちの1つに向けることが可能である。熱分解チャンバー内の酸化条件を、例えばガスを導入してチャンバーから酸素及び他の空気浮遊酸化剤をパージすることによって不活性化する必要がある。そのためのパージガスは、窒素、ヘリウム若しくは他の不活性ガス、又はその組み合わせからなる群から選択することが好ましい。
【0036】
更に好ましい態様として、本発明は、熱分解チャンバーの加熱範囲が390℃〜410℃である方法を提供する。しかしながら、前記熱分解チャンバーの加熱範囲は、より広い350℃〜425℃であることが好ましい。また、前記熱分解チャンバーは、108kPa(1.08bar)の圧力で加圧されることが好ましい。
【0037】
更に好ましい態様として、本発明は、触媒コンバーターが消耗され易い触媒を全く使用しない方法を提供する。ガス材料は熱分解されて炭化水素分子を形成することが好ましい。過剰量の凝縮不可能な(非常に軽い)ガスは、苛性洗浄液を通して酸を除去された後、オフガスチャンバーに移送され、そこで処分することができる。前記触媒コンバーターは、C25より長い炭素鎖を変換して、Cより短い炭素鎖に再形成するよう調整されていることが好ましい。前記触媒コンバーターは、220℃又はそれ以上に加熱されることが好ましい。前記金属触媒は、C25より長いパラフィン鎖を「クラッキング」することが好ましい。前記触媒は、最終的な燃料がC〜C25の範囲内の、特にC16(セタン)をピークとする炭素鎖長分布を有することを確実にするのが好ましい。前記触媒コンバーターは、熱分解チャンバーの1つ又は2つ以上の炉からの排気ガスによって加熱されることが好ましい。同様に、熱溶融チャンバーは熱分解チャンバーの1つ又は2つ以上の炉からの排気ガスによって加熱溶融チャンバーすることができる。凝縮不可能なガスは燃焼のために炉に供給することができる。
【0038】
更に好ましい態様として、本発明は、凝縮温度が凝縮システムの全体に亘って一致していない、方法を提供する。例えば上部凝縮コイルは、下部凝縮コイルよりも低温で稼働されることにより、中間蒸留物組成物に最も適した残留分から軽留分を分離することが好ましい。軽留分は熱分解工程中に分離することができる。
【0039】
他の局面及び好ましい態様を、明細書中に開示し、及び/又は、本発明の一部を構成する添付の特許請求の範囲中に規定する。
【0040】
有利なことに、本発明により、廃材原料のスループットが先行技術のそれと比較して顕著に増加した、均一な品質の液体炭化水素燃料を製造する新しい方法が提供される。前記のスループットの増加は、主として廃材原料の調製方法、及び熱分解チャンバー系への供給方法により達成される。本発明のプロセスによる利点としては、例えば熱溶融送り込みシステムを使用することにより、主熱分解チャンバーに供給するに先だって廃棄(プラスチック)材料を溶融し、より多量に充填する結果、各熱分解チャンバーの効率が向上することが挙げられる。また、更なる利点は、材料の触媒塔への移動を半連続的に行うことにより得られる。この半連続的稼働は、例えば
・各々独立して稼働可能な、最小限1つ、好ましくは2つ又は3つ以上、最も好ましくは4つの熱分解チャンバーに溶融廃材を供給すること、
・四方向に向けて吸入経路を備えた、予め加熱されたマニフォールドを選択的に使用し、1つ又は2つ以上の熱分解チャンバー内に溶融廃材を供給し得るように設定すること、
・2つ以上の熱分解チャンバーを使用する場合、1つの熱分解チャンバーを冷却し、その間、別の熱分解チャンバーが引き続き稼働してガス材料を触媒コンバーター手段に連続移送することが可能であること、及び
・1つ又は2つ以上の内部螺旋状部、又は他の適切な手段を用いて、1つ又は2つ以上の熱分解チャンバーから廃材のチャーを機械的に除去すること、
により達成される。
【0041】
本発明の更なる態様は、本願に開示した全プロセスの様々なパフォーマンスの向上に関する。
【0042】
本発明の方法及び前記方法に関連した装置は、以下の1つ又は2つ以上の利点を生み出すことが見出されている。
・プラスチック原料の手動操作の軽減又は排除、
・主熱分解チャンバーが完全稼働温度に達するために要する時間の短縮、
・主チャンバーの稼働開始に先立つ100%溶融原料の獲得(これにより、処理開始に先立って各チャンバー内の材料容積が最大となる)
・反応温度、材料への熱移動及び熱分解の均一性の向上、
・燃料の均一性の向上、
・チャーの除去及びシステムの洗浄に要する労力及び時間の低減。
【0043】
前記の利点は、10トンの廃棄プラスチックからのスループット及び生産量を(先行技術のシステムと比較して)9500L/日に拡大させる。能動的な冷却工程を採用することによって、各チャンバーの一日のサイクル時間は、1カレントサイクル/日から約2.5サイクル/48時間(チャンバー当たり)に増大し、システム全体の生産量は12.5トン/24時間の加工まで増大し、約11,750L/24時間にて燃料油、及び約750L/24時間にて軽油を製造することが可能となる。
【0044】
本発明の更なる適用分野は、以下の詳細な説明により明らかとなる。ただし、詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施態様を示すものの、当業者であればその詳細な説明から本発明の趣旨及び範囲内における様々な変更及び改良点を想起することは明らかであるため、それらは例示としてのみ開示されるものである。
【0045】
以下の好ましい実施態様の図面を示すが、それは本発明の例示のみを目的とし、本発明を限定することを意図するものではない。関連分野の当業者は、それらを参照することによって、本出願の更なる開示、目的、利点をより明確に理解するであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本明細書にて特に断りのない限り、全ての技術用語は、該用語が通常使用され、当業者によって理解される定義に従って本願で使用される。
【0047】
数個の図面に共通する同様の参照番号が、同様の又は一致する部分を示す図面、特に図1、2及び3を参照すると、本発明によるバッチ工程を用いて廃棄プラスチックをディーゼル燃料に転換する工程及びプラントの概略的が示されている。
【0048】
初期工程操作
元の形態のプラスチックシート、ドラム、ロール、塊及び平坦部品の廃棄プラスチックがプラスチックストックパイル11内に配置され、床下可変速度パンのコンベヤー13により移動し、造粒機12を通って廃棄プラスチック中の大きい断片が小さい寸法に加工される。コンベヤー13の上部には、オーバーバンド式の磁石15及び金属容器14が配置されて、造粒機12に入る前に全ての金属が除去される。造粒機12から、小断片に加工されたプラスチックが(例えば、コンベヤー、螺旋状部又はブロアーによって)、流動物を保持する流動物サイロ17に供給される。一箇所から別の箇所への前記プラスチック材料の移送には、様々な装置が使用可能であるが、この好ましい方法においては、供給はブロアー16を介して行われる。流動物を保持する流動物サイロ17と関連した塵埃収集機18が、ブロアー16の作動によって生じる過剰の塵埃を収集する。ここにおいて説明した全操作は準備段階であり、以下に説明する一般的な熱分解システムの通常の操作時間の時間内又は時間外に行うことができる。
【0049】
バッチ熱分解工程
熱分解工程を開始する際には、粒状の廃棄プラスチックが第二ブロアー19及び強制供給機を介して、流動物を保持する流動物サイロ17から熱溶融供給機21のシステム内に引き込まれる。同システムは押出機を有し、この押出機は、廃棄プラスチックを適当な温度で溶融して十分液化させて、十分な流速を維持する熱パイプを介して、分配を行う熱溶融マニフォールド22内に流入させる。分配を行う前記熱溶融マニフォールド22は弁作動システムであり、熱分解チャンバー26a、26b、26c又は26dにそれぞれ繋がる4つの排出パイプを通じて、液体状の廃材を分配することができる。ここでは4つのチャンバーの場合について説明するが、本発明は、本願で符号26に示される、任意数のチャンバーにも適用可能であることが理解される。前記液体状の廃材を受容するチャンバーは、好ましくは容量の80%を前記液体状の廃材で充填された後密封され、次いで好ましくは窒素ガスブランケットの導入を介して、その周辺に存在する空気が実質的にパージされる。窒素は窒素発生器25を発生源として、窒素監視装置23の監視の下、窒素貯蔵容器24を通って供給される。周囲に存在する空気のパージに使用するガスは、その他の例としてヘリウム若しくは他の不活性ガス、又はその組み合わせからなる群から選択することができる。
【0050】
各熱分解チャンバーは、天然ガスによるバーナー27と共に、例えば炉28のような加熱ユニット内に配置されている。炉の熱が供給され、主熱分解チャンバーの内部温度が375℃〜420℃の間となる。標準的な内部回転式の撹拌機42は、プラスチック混合物の均一性、及び熱の伝導を確実にする。その後、非原料材料、又は混入物がチャンバー26の底に落下して炭素質のチャーを形成するが、これらが熱分解チャンバーの壁上に蓄積する前に、これらを定期的に除去する必要がある。このチャーは一種の断熱材として作用し、プラスチック廃材への熱伝導を低下させる。ゆえに、前記チャーは、例えば回転刃により連続的に剥ぎ取られて遊離され、熱分解チャンバーの底に砕け易い微細な黒色粉末として堆積させる等、適切な手段により除去する必要がある。堆積した前記チャーは、各バッチ処理後に手作業により吸引除去される。あるいは、別の連続工程として以下に説明するように、チャンバーの基部に設置された螺旋状部を使用して、堆積したチャーを定期的に除去してもよい。
【0051】
廃材の吸入及び排出をより速くするために、各チャンバーの内部をNラインからのNで冷却し、またチャンバーの外部を、炉内で該チャンバーの周囲に空気を吹き付けるバーナーファンによって冷却し、能動的な冷却を達成する。前記の能動的冷却は、主チャンバー26の各々に使用され、冷却時間を標準(先行技術)の12時間から(本発明のプラント及び工程にとって)最大7時間に短縮し、あるプロセスサイクルから次のプロセスサイクルまでの時間を短縮する。冷却は、ファン又は当該技術分野にて周知の他の適切な冷却手段により実行することができる。
【0052】
操作に使用される少なくとも4つの熱分解チャンバーを有するシステムを用いて、1つ又は2つのチャンバーを操作して、熱分解ガスを触媒コンバーター29へ供給することも可能である。必要に応じて1つ又は2つのチャンバーが熱分解ガスを供給している間、残りのチャンバーを次の熱溶融システムからの溶融プラスチックのバッチ処理のために準備することが可能となり、そのように前記チャンバーが交互に作動する結果、半連続的な操作と燃料産出が可能となる。システムの前記半連続的な操作を可能にするために、弁式の加熱された分配を行う熱溶融マニフォールド22を使用して、溶融プラスチック材料が必要ないずれかのチャンバー内へ供給することができる。
【0053】
連続操作における次のチャンバーは、予め170℃〜220℃に加熱されると共に、液化原料がチャンバーの容量に対し80%充填される。充填が完了すると、この選択された主チャンバーの温度が375℃〜420℃に上昇し、この温度で密封チャンバー内の液体廃棄プラスチックは熱分解によりガスとなり、炭素鎖長の少なくとも一部がランダムに切断され、様々な鎖長となる。
【0054】
次に、熱分解ガスは触媒コンバーター29を有する反応塔内に導入され、ここでガス成分は熱分解的にクラッキングされる。触媒コンバーター29を有する反応塔は、特別な触媒金属合金製の板からなるシステムを有する。金属板は、熱分解ガスが曲がりくねった経路を通り、金属板との接触面積及び接触時間が最大となるように配置されている。触媒コンバーター29を有するチャンバーは、使用された熱分解チャンバー26の炉からの排気ガスを利用して220℃又はそれ以上に加熱される。金属触媒はC25より長い炭素パラフィン鎖をクラッキングして、Cより短い鎖を再形成する。そこではα−オレフィン鎖(1−アルケン)の飽和アルカンへの転換が行われる。触媒は、最終的な燃料が、C〜C25の範囲内の、C16(セタン)をピークとする炭素鎖分布を有することを確実にする。金属触媒は、Ni及びCuを含む金属製、又は穿孔板形状若しくはワイヤメッシュ型のセラミックス若しくはゼオライトである。また、他の触媒としては、MCM−41、及び鉄Fe3+、コバルトCo2+、ニッケルNi2+、ラネーニッケル、マンガンMn2+、クロムCr3+、銅Cu2+のケイ酸塩、及び/又はそれらの混合物が例として挙げられる。触媒板はこれら金属のいずれか、又はその組み合わせから形成することができる。前記触媒は、消耗又は汚染されないことが好ましい。触媒コンバーター29を有する触媒反応塔は、石油化学工業にて周知の技術を使用するもので、前記反応塔における工程に関する詳細は、例えば特許文献1にて一般に利用可能である。
【0055】
熱分解的にクラッキングされたガスは、次に触媒コンバーター29を有する反応塔から1つ又は2つ以上のコンデンサー30及び/又はコンデンサー30a内に導入され、ここでガスは別個の留分に蒸留される。コンデンサー30はガスを冷却蒸留し、60℃の吸入温度の凝縮コイルとの接触によって凝縮した液体を引き出す。コンデンサー30aは、2つの20℃の吸入温度のコイル、及び軽留分のための8℃の吸入温度を有する頂部凝縮コイルを使用して、ガスを冷却蒸留する。第二のコンデンサー30a内に3個の冷却コイルが存在し、これらは冷却塔水又は水冷式の冷却ユニット31によって冷却される。水は、熱分解ガス流の方向に並流する、好ましくは3個のコイルを通って流れる。各コイルの位置に集水トレー及びバブルキャップが存在するため、熱分解蒸気は凝縮コイルを介して流れる必要がある。それにより、熱分解凝縮物の十分な凝縮が可能となる。冷却塔又は冷却水は、ライン全体に亘っていくつかのシール中を流れ、これらの冷却状態を維持する。詳細には、最も有利な冷却シールは、撹拌機42のシャフト上の撹拌機シール、及びチャンバー蓋内のチャンバー26検査孔(マンホール)上のシールを含む。
【0056】
8℃の凝縮コイルによって凝縮されない、残りの凝縮不可能なガス(NCG)は、パイプを通ってガス洗浄機34に送られ、前記ガス洗浄機34は弱塩基性の水により酸を洗浄除去して、残留NCGを中性化し、ガスをオフガスバーナー40による燃焼に適したガスに変化させる。あるいは、前記ガスは必要に応じて炉内のバーナー中にリサイクルしてもよい。苛性水槽36はアルカリ水を供給し、同アルカリ水はポンプを介して苛性剤調製槽35からの苛性剤の規則的な投入を受けて、苛性水槽36内のpHが適正に維持される。
【0057】
コンデンサーから、軽成分ではない分留された燃料の塊が、油回収槽33、又は液体燃料の貯蔵用に設計された他の作動槽、本実施例では中間槽32内に、パイプにより供給される。次いで、前記分留燃料はパイプにより遠心分離器38に供給される。なお、生産物のボリュームに応じて2つ以上の遠心分離器が必要となり得ることにも留意すべきである。遠心分離器は、燃料中に存在し得る炭素粒子、水、水酸化アンモニウム及び他の混入物を除去する。更に、前記燃料はパイプにより品質保証(QA)槽39に送られ、そこから大量に貯蔵することが可能な貯蔵槽41に供給される。
【0058】
炭素鎖長の分布
得られた液体燃料は、「純粋な」化合物ではなく、プレミアムディーゼル燃料と成分が一致した、直鎖及び分岐鎖アルカン、環式飽和炭化水素、並びに芳香族の混合物である。精製された最終燃料は、後のディーゼル燃料のそれぞれの用途に応じて調整すべく、様々な手段に分配されるのに備え、パイプにより貯蔵槽41に供給される。
【0059】
図4及び図5を特に参照すると、上記のバッチ工程により製造された熱分解ディーゼルと、レギュラーの(従来の)ディーゼル燃料とが、ガスクロマトグラフィー(GC)により分析されている。得られたクロマトグラムは、様々な炭素鎖長を有する炭化水素鎖の比率に関するディーゼルの「指紋」を与える。本発明等により、ディーゼル燃料としての性能にとって、燃料が実質的にC16(即ち、セタン)付近をピークとする炭素鎖長を有する化合物に富んでいる必要があることが明らかとなった。図4及び図5を参照すると、各々、レギュラーのディーゼル燃料及び本発明に従って製造された熱分解ディーゼル燃料の、炭素鎖長の分布曲線が示されている。重要な点として、図4に示す標準ディーゼルと比較して、図5に示す熱分解により製造された燃料には、軽留分(特にC、C、C11及びC13)が顕著に高い比率で存在している点に留意すべきである。
【0060】
引火点の変更
輸送用のディーゼル燃料に係る基準(例、AS3580−1998)と一致させるには、熱分解ディーゼル燃料の引火点を45℃〜53℃越、好ましくは少なくとも61.5℃まで、又は関連する標準規格の最小値まで上昇させる必要がある。これは前記燃料中の軽留分を除去することにより可能となる(約5〜7重量%)。したがって、前記熱分解ディーゼル燃料から軽留分を取り去る必要がある。詳細には、前記熱分解燃料の約5〜7%を占める、沸点160℃未満の軽留分を除去することにより可能となる(下の表1参照)。
【0061】
第二のコンデンサーの、8℃の頂部コイル内で凝縮された軽留分を、より重い留分から分離し、処理する。前記軽留分をパイプにより軽油槽37に送り、ここで貯蔵する。すなわち、前記軽留分が重い留分から分離されることにより、前記重い留分(ディーゼル燃料)が61.5℃以上の特定の引火点を維持することを確実にする。
【0062】
表1に、上記のバッチ工程により製造されたディーゼル燃料(及び括弧内に標準ディーゼル燃料)における完全蒸留範囲のデータ(米国材料試験協会標準ASTM D86に従った)を示す。
【表1】

【0063】
沸点範囲をより高い温度にシフトして燃料の引火点を上昇させるために、本発明の熱分解工程の一部として、考えられる多数のインライン調整のうちの任意の1つ又は2つ以上を使用することができる。
(i)コンデンサーコイル(図示せず)をより高い温度で作動させることにより軽い留分の凝縮を防止し、その留分を気流中に維持しつつ酸洗浄を行うガス洗浄機34へ供給し、続いてオフガスバーナー40へと供給する。
(ii)加熱流体を熱交換コイル内に流して、主となる油回収槽33内の燃料を加熱する。この方法により、工程作動中に軽留分を除去することができる。前記加熱されたコイルは熱水の使用により槽の底でのワックス形成(waxing)を防止するが、高温の熱流体(熱移送油)を使用して槽を約80〜100℃に保持してもよい。これらの条件下で、軽い蒸気態の物質は穏やかに引火される。多くの国では可燃性炭化水素の大気への排出は許可されていないため、これら軽質ガスをオフガスバーナー40へ移送するか、又は廃棄、リサイクル、若しくは軽燃料としての使用のために回収するのが望ましい。
【0064】
(iii)可燃性の液体を遠心分離器内で操作することは、健康及び安全上の理由から多くの国で許可されていないが、適切な健康及び安全上の慣行に従うことを条件として、それを実施することは、技術的には可能である。
不要の軽留分を除去する上記の各技術は、個別に、又はこれらを任意に組み合わせて採用することができる。
【0065】
熱分解プロセスの物質収支
本発明の実施例として、以下の詳細な内容を、単なる例示として開示する。本発明は以下の内容に限定されるものと解釈すべきではない。
【0066】
熱分解プラントの物質収支(本発明の一つの態様によるバッチ工程によって製造された、清浄な加工済み原料1,000kg当たり)
1.投入材料
ポリエチレン(PE)55%、ポリプロピレン(PP)28%、及びポリスチレン(PS)17%から構成される産業廃棄物1000kg
・炉バーナー用の天然ガス=75Gj又は2100m
・窒素ガス=1.7m×4=6.8m
2.産生
・凝縮不可能なガス** 10〜15重量%***
・チャー残留物 3〜5重量%
・遠心分離器からの廃棄物留分=10kg(炭素、タール及び水)
・残留した液体燃料 約8,250kg/0.81 SG(比重)=10,185リットル(の産生)
・工程中の軽留分6%の除去により、合計9、574リットルの規格適合ディーゼル燃料が生産
・遠心分離器からのアンモニア水=88L×0.9(密度)=79.5kg
・洗浄機廃棄流=<3.3kg(NaOHにより中性化)
【0067】
(注記)
上記の物質収支は、清浄なPE/PP/PS原料に関するものである。前記原料が混入物を含む使用済みPEの場合、前記原料の固形分含有率は、原料の少なくとも5%となることが予想される。また、前記混入物が更に水を含み、チャンバー内での反応に持ち越されることが予想される場合には、遠心分離による廃棄物の部分も増加することが予想される。
**オフガス組成物は、主としてメタン、エタン、プロピレン、プロパン、n−ブタン及びイソブタンを含む飽和短鎖炭化水素である。
***オフガス焼却炉からの排ガス組成
NO 198ppm
SO <5ppm
温度 438℃
O含有率 13%
塵埃密度 0.06g/m
【0068】
半連続的熱分解工程
図6を参照しつつ、本発明の第二の実施態様を説明する。熱分解チャンバー及びその下流の一連の部品は、パイプラインを通じて、例えば窒素のような不活性ガスによってパージされる(窒素ライン109)。窒素は窒素生成器又はガスボンベから供給され得る。前記の窒素供給は、主制御室PLC内の監視装置及びコンピュータシステム並びに別個のコントローラにより制御される。
【0069】
プラスチックフレーク(<15mm)を任意の手段により流動物サイロ101内に供給する。次いで、前記プラスチックフレークを、クラマー103へ、コンベヤー又はフレーク供給システム(螺旋状部)102によって運搬するか、又は吹き入れる。次いで前記プラスチックをクラマーで圧縮して、予熱された押出機のバレル104(スクリューを伴う加熱されたスチールバレル)内に供給する。バレル104は加熱ジャケット132で包囲され、加熱媒体容器130から移送された加熱媒体によって加熱される。加熱媒体容器130は油状媒体を収容し、これは加熱媒体パイプ131を介して前記バレルの加熱ジャケット132に供給される。加熱媒体容器130は、炉110から炉排気煙道115を経由した高温の排ガスによって加熱される。前記プラスチックは前記バレル内で120〜280℃間にて溶融される。溶融した前記プラスチックは、溶融プラスチックを熱溶融ライン105内に供給するバレル内のスクリューの回転により、バレルに沿って強制的に移動される。このラインは、コールドスターティング(cold−starting)の場合、二方向弁106(この弁は単一チャンバー系の場合には存在しない)を介して電気又は他の手段により予熱され、前記二方向弁は、前記熱溶融プラスチックを複数の熱分解チャンバー又は単一の熱分解チャンバー107内に供給する。前記熱分解チャンバーは熱分解チャンバー炉110内に設置されている。通常、ステンレス鋼から製造される熱分解チャンバーは、ガスバーナー111により予め200〜270℃に加熱される。溶融プラスチックのチャンバー内への流入が開始されると、撹拌機108が作動する。撹拌機108は熱分解チャンバー107の内部で回転し、撹拌機108の刃は、熱分解チャンバー107の壁107aに対して可能な限りに接近した刃108aを有する。刃108aは実質的にチャンバーの内径分の拡がりを有し、熱分解チャンバー107の壁107aまで延びており、熱分解チャンバー107内の溶融物の液面を超えて僅かに突出している。撹拌機108の作動は、熱を溶融プラスチック全体に均等に伝達させる補助の役割を果たす。
【0070】
最初の溶融プラスチック約1,000kg〜2,000kg又は容量の50%が熱分解チャンバー107内に充填された際、炉110の温度は500〜650℃に上昇され、それにより熱分解チャンバー107内に更なる熱伝導がなされ、温度が370〜420℃となる。この温度において、プラスチックはガス状となる。この温度においてプラスチックが反応し、プラスチックの炭素鎖が、多様な長さとなるようにランダムに切断される。それに続く触媒コンバーターを有する触媒塔118内で反応により、短い炭素鎖長への再形成、また更なる長い鎖長の化合物の切断が生じ、炭素鎖はC〜C25の範囲内にて、特にC16(セタン)がピークとなるような分布となる。
【0071】
熱分解チャンバー107内の圧力は、大気圧を僅かに超える108kPa(1.08bar)に上昇する。次いで、熱分解ガスは熱分解チャンバー107から強制的に排出され、最も抵抗の小さい熱分解ガスパイプ128の経路を通って触媒塔118内へ供給される。その触媒は、消耗又は汚染が生じないものである。触媒塔118は、セラミックス、ゼオライト、鉄Fe3+、コバルトCo2+、ニッケルNi2+、ラネーニッケル、マンガンMn2+、クロムCr3+、銅Cu2+、レニウムニッケルのケイ酸塩、及び/若しくはそれらの混合物、又は触媒MCM−41を含む群から選択された一連の触媒板118aを有する。MCM−41(Mobile Crystalline Material)は、鋳型製造により得られるシリケートである。MCM−41は、TEM、XRD及び蒸気吸着により同定可能な、交差しない六角形チャネルの列が存在するようにある程度整列されている。テンプレート分子の長さを変更することによって、チャネルの幅を2〜10nm内になるよう調整することができる。チャネルの壁は、非結晶質SiOからなる。この構造は、その並外れた多孔性(80%以下)により、MCM−41の機械的安定性を、例えば他の多孔質シリカ、シリカゲル又はゼオライトと比較して最小のものにしている。結晶化MCM−41を合成する試みが現在行われている。
【0072】
触媒塔118は加熱ジャケット117(通常、ステンレス鋼から製造される)内に収容され、ここを介して炉110からの排気ガスが触媒塔に至る排気煙道116のパイプを通って触媒板118aを220℃又はそれ以上に加熱する。金属の触媒板118aは、高温の熱分解ガスが曲がりくねった経路を通り、金属の触媒板118aとの接触面積及び接触時間が最大となるように配置されている。高温の熱分解ガスは、触媒板118aと反応する。触媒板118aの金属触媒は、C25よりも長い炭素パラフィン鎖をクラッキングして、Cよりも短い鎖を再形成する。また、α−オレフィン鎖(1−アルケン)の飽和アルカンへの転換が行われる。触媒板118aの触媒によって、最終的な燃料がC〜C25の範囲内の、C16(セタン)にピークを有する炭素鎖分布を有することが保証される。
【0073】
再形成された熱分解ガスは、触媒コンバーターを有する触媒塔118から蒸留塔119へ移動し、そこにおいて前記ガスは様々な留分に凝縮される。蒸留塔119は、周知の形態で作動する。様々な液体留分は、蒸留塔119から工程パイプ120を経由して排出され、油回収槽121に流入する。燃料油の液体は、更に1つ又は2つ以上の作動する中間槽129へポンプで供給される。前記中間槽129は、一日分の生産量を貯蔵することができる。中間槽129の下流に、ディーゼル油の処理に特化された遠心分離器125が配置されている。この遠心分離器125は油を加工し、油に含まれる任意の、即ち実質的に全部の固体及び水を除去する。しかしながら、以下に説明するように、燃料への硫黄混入を除去するのに必要な脱硫工程は、前述した物理的処理ではなく、化学的工程が必要となる。遠心分離器125はこの油を品質保証槽126に供給し、ここで必要に応じて任意の添加物が添加され、また試験のためのサンプリングを行うことができる。燃料油は大量貯蔵庫へ移送するか、又は必要に応じて分配することができる。
【0074】
蒸留塔(1つ若しくは複数)又はコンデンサー(1つ若しくは複数)から排出される他の生産物は、通常揮発油と称される凝縮不可能なガス及び軽油であり、これは炭素鎖数が最も小さい部分であり、一般にC未満の鎖長を有する。この生産物は工程パイプ120を介して軽油槽124へ供給され、ここで分配のために貯蔵される。
【0075】
前記の凝縮不可能なガスは、一連の工程を経て移送され、ガス洗浄機122に供給され、ここで前記ガスは水により洗浄される。ガス洗浄機122に含まれる水は、必要に応じて定期的に苛性剤の自動的な投入を受け、洗浄工程中において追加される酸がそれにより中和される。洗浄工程中に凝縮されなかったガスは、炉110内にリサイクルされ、加熱用の燃料として使用される。
【0076】
熱分解工程中、チャー残留物は溶融プラスチック中で浮遊したままになる。半連続システムは、1チャンバー当たり約400〜600kgのチャーを保持するよう設計されている。この上限に到達したとき、液面のレベルを指示する液面検出器114は、熱溶融供給機に、溶融プラスチックの熱分解チャンバー107内への供給を停止するように信号を発して指示する。そのとき前記熱分解工程は、残存する全プラスチック材料が熱分解されて、熱分解チャンバー107内のプラスチックが空になるまで、作動を継続する。続いて制御システムが熱分解チャンバー107内に設けられたチャー除去用螺旋状部112のシステムを作動させる。チャー除去用螺旋状部112は熱分解チャンバー107からチャーを引き出し、チャー収容用容器113内に入れてチャンバーを空にし、このチャーは後に除去される。撹拌機108は、全てのチャーが熱分解チャンバー107から確実に排出されるように作動を継続する。これが完了すると、前記半連続的工程は、再度最初から開始される。
【0077】
なお、前記コンデンサーとしての蒸留塔119の作動は、図1〜図3を参照に説明したバッチシステムに含まれる前記コンデンサー30の作動と実質的に同一であることに留意されたい。
【0078】
熱分解の物質収支
プラスチックは各々固有の分子構造を有し、それが生産性に影響を与えるため、生産量はプラスチックの種類に依存する。
例えば、混合プラスチック1000kg(印刷フィルム、廃棄包装材等)は、以下の産出量である。
【0079】
・チャー 50kg
・オフガス 125
・液体燃料 825kg/比重0.82=液体燃料 1006リットル
・軽油 60リットル
・ディーゼル油燃料 946リットル
エネルギー
・仕事率 250kW(時間あたり)
・加熱用天然ガス 30Gj
【0080】
ディーゼル脱硫工程
概略
脱硫工程では、水洗及びサイクロン分離により無機硫黄を除去し、酸化及び吸着により有機硫黄を除去する(図7を参照)。
【0081】
詳細
ディーゼル貯蔵槽(200)からのディーゼルを水と混合して、ハイドロサイクロン分離器(201)内にポンプにより供給する。前記ポンプは、水とディーゼルとを十分に混合する高剪断型である。ディーゼル中の無機化合物は、微小な水滴中に含まれ、その後水相塊内に入る。ハイドロサイクロンは実質的に全部の水を除去し、その結果無機硫黄も除去される。
【0082】
有機硫黄化合物の除去は、これらを極性化合物となるよう酸化し、ゼオライトビーズ上に吸着され易くすることにより行われる。オゾン及び酸素という2種のガス酸化剤が任意に使用可能である。オゾンを選択した場合、ガスは従来のオゾン生成器から供給され、ディーゼル流内に混合される。酸素を選択した場合、酸素はディーゼル流内に混合され、その後超音波発生装置によりディーゼル流内で遊離酸素ラジカルを生成する。どちらの選択肢においても、酸化反応を完全に進行させるために、十分な長さのパイプを下流(202)に配置するのが好ましい。
【0083】
その後、ディーゼル流は、より高価なゼオライトベッドの寿命を延長する役割を果たすシリカゲルガードベッド(203)を通過する。ゼオライトビーズから構成された2個のゼオライト吸着容器がそれぞれ設けられている(204A/B)。ディーゼル流は一方の容器を通過し、その間、他方の容器がエタノールにより再生される。極性を有する有機硫黄化合物は、ゼオライトビーズ上に吸着し、それにより前記ディーゼル流から除去され、前記ディーゼル流は貯蔵庫に入る。槽207からの痩せたエタノールは再生ベッドを通してポンプで移送され、肥えたエタノール槽(205)内に回収される前に、ベッドから極性硫黄化合物を脱離させる。その後、エタノール蒸留器(206)内での蒸留により前記エタノール流から硫黄に富んだ化合物が除去される。その結果、流れの底部に硫黄に富んだ炭化水素流が生成し、それは工程内で燃料として再利用することが可能である。
【0084】
(図7の設備の凡例)
200 ディーゼル貯蔵槽
201 ハイドロサイクロン分離器
202 超音波チャンバー
203 反応パイプ
204 シリカゲルガードベッド
205 A/Bゼオライト吸着容器
206 肥えたエタノール槽
207 エタノール蒸留器
208 痩せたエタノール槽
【0085】
本発明の本質的な特徴の趣旨から逸脱せずに、本発明を数種の形態に具体化し得るが、上述した実施態様は、特に明記しない限り、本発明を限定するものではなく、添付の特許請求の範囲内に定義された本発明の趣旨及び範囲内で幅広く解釈されるべきである。様々な変更、及び同等の構成は、本発明及び添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれるものとする。したがって、特定の実施態様は、多くの点で、本発明の原理を実施し得る例示として理解するべきである。特許請求の範囲において、ミーンズ・プラス・ファンクションに関する節は、定義された機能を実施するものとしての構造を保護し、構造上の等価物のみではなく、均等な構造も保護することを意図する。例えば、釘及びねじは、釘が円筒状の表面を使用して木製部品を互いに固定する一方、ねじは螺旋状の表面を使用して木製部品を互いに固定する、という意味においては構造上の等価物ではないが、それらが木製部品を固定するという意味においては均等な構造である。
【0086】
本明細書で使用する「〜を含む/〜を含んでいる」は、言及した特徴、整数、ステップ又は構成要素の存在を明記するものと解釈されるが、それ以外の1つ又は2つ以上の、他の特徴、整数、工程、構成要素又はそれらの群を除外するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第一の好ましい実施態様における熱分解システムの、主な構成の概略図。
【図2】本発明の第一の好ましい実施態様における熱分解システムのプラントレイアウトを表す、平面図。
【図3】図2に示したプラントレイアウトの、立面図又は側面図。
【図4】通常のディーゼル燃料中に含まれる炭素鎖の、相対的な比率を示す、ガスクロマトグラフィーのクロマトグラムチャート。
【図5】本発明の第一の好ましい実施態様の熱分解システムにより製造された、ディーゼル燃料中に含まれる炭素鎖の、相対的な比率を示す、ガスクロマトグラフィーのクロマトグラムチャート。チャートのY軸は量を示す。
【図6】本発明の第二の好ましい実施態様における熱分解システムの、主な構成の概略図。
【図7】脱硫システムの概略図。
【符号の説明】
【0088】
(図1〜図3に記載した10TPDバッチプラントの物品リスト)
11 プラスチックストックパイル
12 コンベヤー
13 造粒機
14 金属容器
15 磁石
16 ブロアー
17 流動物サイロ
18 塵埃収集機
19 ブロアー
20 強制供給機
21 熱溶融供給機
22 熱溶融マニフォールド
23 窒素監視装置
24 窒素貯蔵容器
25 窒素発生器
26a、b、c、d 熱分解チャンバー
27 バーナー
28 炉
29 触媒コンバーター(触媒反応器)
30 コンデンサー
31 冷却ユニット(水塔)
32 中間槽(作動槽)
33 油回収槽
34 ガス洗浄機
35 苛性剤調製槽
36 苛性水槽
37 軽油槽
38 遠心分離器
39 品質保証(QA)槽
40 オフガスバーナー
41 貯蔵槽
42 撹拌機
(図6に記載した物品リスト)
101 流動物ホッパー
102 フレーク供給システム
103 クラマー
104 熱溶融押出機
105 熱溶融ライン
106 二方向弁
107 熱分解チャンバー
107a チャンバー壁
108 撹拌機
108a 撹拌機の刃
109 窒素ライン
110 炉
111 ガスバーナー
112 チャー除去用螺旋状部
113 チャー収容用容器
114 液面検出器
115 炉排気煙道
116 触媒塔に至る排気煙道
117 加熱ジャケット
118 触媒塔
118a 触媒板
119 触媒板
120 工程パイプ
121 油回収槽
122 ガス洗浄機
123 炉に至る濃縮不可能なガスのライン
124 軽油槽
125 遠心分離器
126 QA槽
127 大量貯蔵庫
128 熱分解ガスパイプ
129 中間槽
130 加熱媒体容器
131 加熱媒体パイプ
132 加熱ジャケット
200 ディーゼル貯蔵槽
201 ハイドロサイクロン分離器
202 超音波チャンバー
203 反応パイプ
204 シリカゲルガードベッド
205 A/Bゼオライト吸着容器
206 肥えたエタノール槽
207 エタノール蒸留器
208 痩せたエタノール槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機廃材を再使用可能な燃料に熱触媒的に転換する方法であり、以下の工程、すなわち、
a)廃材を溶融手段に移送し、溶融材料を形成する工程、
b)実質的に酸素がパージされ、圧力が制御された環境下において、前記の溶融した廃材を熱分解チャンバーにて加熱し、前記の原料をガス状に熱分解する熱分解工程、
c)触媒コンバーター手段に生成ガスを移送する工程であって、前記ガス状の原料の分子構造が転換される工程、及び
d)一つ又は複数のコンデンサー手段にガスを移送し、ガスを蒸留及び冷却して分画し、少なくとも一つの使用可能な燃料を形成する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記の熱分解チャンバーが前記の溶融手段を含まず、前記工程a)が前記工程b)の熱分解チャンバーとは隔離された溶融装置内で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記又は各熱分解チャンバーに対応する一つ又は複数の入口経路を有するマニホールドシステムの選択的制御により、前記又は各熱分解チャンバーが前記の溶融した廃材を受ける工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記の熱分解チャンバーが複数の熱分解チャンバーの一つであり、前記の方法が一度に少なくとも一つの前記の各熱分解チャンバーを選択的に使用することを含み、それにより前記の熱分解チャンバーの一つが冷却される一方で、他の前記の熱分解チャンバーがガス状の原料を前記の触媒コンバーター手段に移送する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記の各熱分解チャンバーを独立に操作し、それにより一つ又は複数の前記の熱分解チャンバーに亘るガス状の原料の前記触媒コンバーター手段への循環移送を可能にする工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
発生したガス状の廃材の前記の触媒コンバーター手段への移送が完了した後、前記又は各熱分解チャンバーを能動的に冷却する工程を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱分解工程の間、前記又は各熱分解チャンバーから機械的にチャーを除去する工程を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱分解工程の間、前記又は各熱分解チャンバーから機械的にチャーを除去する工程が螺旋状部の使用により行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
撹拌機を使用して、前記熱分解工程を行う間、前記又は各熱分解チャンバーの内壁から機械的にチャーを除去する工程を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記又は各前記の撹拌機が前記熱分解工程の間、前記又は各熱分解チャンバーの壁表面からチャーを連続的に除去するのに適した一つ又は複数の刃をもつ、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
プラスチック材をディーゼル燃料に転換する方法であり、以下の工程、すなわち、
b)前記プラスチック材を溶融手段に移送する工程、
c)溶融した前記プラスチック材を一つ又は複数の熱分解チャンバーに移送する工程、
d)実質的に酸素がパージされ、圧力が制御された環境下において、廃材を加熱して前記の原料を熱分解し、ガス状にする工程、
e)前記ガス状の原料を触媒コンバーター手段に移送する工程であり、前記ガス状の原料の分子構造が転換される工程、
f)一つ又は複数のコンデンサー手段にガスを移送し、前記ガス状の原料を蒸留及び冷却して分画し、少なくとも一つの使用可能な燃料を形成する工程、
を含む、方法。
【請求項12】
更に前記プラスチック材を粉砕又は粒状化して粒子状にする予備的工程を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
プラスチック材をディーゼル燃料に転換するプラントであり、前記のプラントが、
a)前記のプラスチック材を粒子状に破砕する破砕手段、
b)前記の粒子状のプラスチック材を受けて溶融する溶融手段、
c)前記の溶融手段から溶融したプラスチック材を受けるための熱分解チャンバーであり、以下の機能、すなわち、
i)そのチャンバーをシールして外気から隔離し、非酸化性ガスの導入により前記熱分解チャンバーからの空気浮遊オキシダントをパージし、
ii)実質的に空気浮遊オキシダントがパージされ、圧力が制御された環境下において、廃材を加熱して前記の原料を熱分解し、ガス状にする、
機能を発揮する、前記熱分解チャンバー、
d)前記のガス状のプラスチック材を受けて分留する触媒コンバーター手段であり、それにより、前記のガス状の原料の分子構造が転換される、手段、及び
e)コンデンサー手段であり、前記の分留されたガス状の原料を受け、冷却し、分画し、少なくとも一つの種類の使用可能な燃料を形成する、手段、
を有する、プラント。
【請求項14】
前記のプラスチック原料が廃材であり、前記の熱分解チャンバーが螺旋状部を含み、それにより前記の熱分解チャンバーの底部に生じるチャーの蓄積が除去され、溶融したプラスチック材を連続的に前記の熱分解チャンバーに供給すること、及び前記のガス状のプラスチック材を連続的に生産し前記の触媒コンバーター手段に移送すること、を可能にする、請求項13に記載のプラント。
【請求項15】
前記のコンデンサー手段が選択的低温コンデンサーを含み、それが軽量画分を前記の分留されたガス状の原料から除去する機能を発揮する、請求項13又は14に記載のプラント。
【請求項16】
前記の溶融手段が熱溶融送り込みシステムである、請求項13から15のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項17】
前記の触媒コンバーターが一連の内部金属板触媒の高表面積領域を有する、請求項13から16のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項18】
前記の板状触媒がセラミック、ゼオライト、鉄(Fe3+)、コバルト(Co2+)、ニッケル(Ni2+)、ラネーニッケル、マンガン(Mn2+)、クロム(Cr3+)、銅(Cu2+)のケイ酸塩及び/若しくはそれらの混合物、又はMCM−41触媒からなる群から選択される、請求項17に記載のプラント。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の方法又はプラントにより製造される、実質的に炭素ベースの燃料生産物であり、ディーゼル燃料としての使用に適している、燃料生産物。
【請求項20】
前記の燃料生産物が実質的にAustralian Standard AS 3570−1998に規定された標準的ディーゼル燃料と同等である、請求項19に記載の燃料生産物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−529574(P2007−529574A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502152(P2007−502152)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【国際出願番号】PCT/AU2005/000344
【国際公開番号】WO2005/087897
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(506306938)オズモテック ピーティーワイ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】