説明

情報配信センタ及びプログラム

【課題】施設情報に対する更新情報を適切に配信可能な情報配信センタを提供する。
【解決手段】情報配信センタの走行履歴記憶部に、「車両ID」、「出発地点」及び到達施設の「施設ID」が記憶されるようになっている。これを前提とし、情報配信センタの制御部は、ジャンル毎に到達施設と出発地点との平均距離を算出し(S210)、更新範囲を決定し(S240、S250)更新情報を作成して(S260)配信する(S270)。すなわち、出発地点から到達施設までの距離に基づき、各施設に予め対応付けられたジャンル毎に、施設情報の更新範囲をジャンル別更新範囲として決定する更新範囲決定手段と、ジャンル別更新範囲に基づき、施設情報に対する更新情報を配信する配信手段と、を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、更新情報を配信可能な情報配信センタに関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置は、周知のように地図データを利用して経路案内等の各種処理を行う。しかしながら、地図データが古くなってしまうと、適切な経路案内が行われなくなる虞がある。そのため、ナビゲーション装置の地図データを更新する必要が生じる。
【0003】
このような地図データの更新を、近年、通信にて行う技術が提案されている。具体的には、情報配信センタから地図データを配信し、ナビゲーション装置の地図データを書き換える。このようにすれば、最新地図の利用が容易になる。
【0004】
ただし、全国規模で地図データの書き換えを行うのは、通信時間及び通信費用の観点から、非現実的である。そこで、走行履歴等から更新対象とする地図上の領域を限定して地図データを更新する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−121371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、地図データの更新には施設情報の更新が含まれるが、この施設情報の更新も重要な意味を持つ。特に、過当競争の激化した現代社会においては、施設の閉店や移転に伴って、地図データ上に存在する施設が、実際には存在していないということも起こり得る。
このような施設情報の更新を考えた場合、上記特許文献1に記載されるように走行履歴等から更新対象となる領域を限定することも可能である。しかしながら、施設情報だけを見てもデータ量が増加してきた現状では、更新対象とする領域を限定したとしても、当該領域に含まれる施設情報の全てを更新するのは、通信を行う際のデータ量が増加することから、通信時間及び通信費用の観点から好ましくない。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、施設情報に対する更新情報を適切に配信可能な情報配信センタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の情報配信センタは、車両が到達した到達施設を特定可能な到達施設情報を記憶する到達施設情報記憶手段と、到達施設情報を用いて算出される基準地点から到達施設までの距離に基づき、到達施設のジャンル毎に、施設情報の更新を行う更新範囲をジャンル別更新範囲として決定する更新範囲決定手段と、ジャンル別更新範囲に基づき、施設情報に対する更新情報を配信する配信手段と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
このように本発明では、基準地点から到達施設までの距離に基づいて、ジャンル別更新範囲を決定する。これは、ユーザによって遠方でも利用するジャンルの施設と近郊でも利用しないジャンルの施設とがあるためである。
【0010】
すなわち、施設情報を更新するにあたり、必要とされる更新範囲は、ジャンルによって異なることが考えられる。そのため、このようなジャンル毎に決定される範囲に基づいて配信される更新情報は、利用される可能性が高い施設の更新情報である蓋然性が高い。したがって、本発明によれば、通信時間及び通信費用の無駄を抑えることができ、施設情報に対する更新情報を適切に配信することができる。
【0011】
ところで、基準地点として、到達施設へ向けて車両が走行を開始した出発地点を採用することが例示される。このときは、到達施設と共に出発地点を対応付けて記憶しておく。このようにすれば、出発地点から到達施設までの距離に基づいてジャンル別更新範囲が決定されるため、適切な更新範囲を決定することができる。
【0012】
また、基準地点として、車両毎に予め設定される登録地点を採用することが例示される。例えば、基準地点として自宅を採用するという具合である。自宅は通常、行動範囲の中心となるため、基準地点として自宅を採用することは、適切な更新範囲を決定することに寄与する。
【0013】
なお、ジャンル別更新範囲にてジャンル別に施設情報の更新を行うと、ユーザが過去に利用しなかったジャンルの施設情報が更新されないことがあり得る。また、更新されたとしても、小さな範囲でのみ更新される場合も考えられる。そこで、施設情報の最低限の更新を行うという観点から、ジャンル別更新範囲が予め定められた基準更新範囲よりも大きい場合に、当該ジャンル別更新範囲に基づき、更新情報を配信するようにしてもよい。このようにすれば、少なくとも基準更新範囲においては最新の施設情報が利用可能となる。
【0014】
以上は、情報配信センタの発明として説明してきたが、プログラムの発明として実現することもできる。すなわち、基準地点から車両が到達した施設である到達施設までの距離に基づき、前記到達施設のジャンル毎に、施設情報の更新を行う更新範囲をジャンル別更新範囲として決定する更新範囲決定処理と、ジャンル別更新範囲に基づき、施設情報に対する更新情報を配信する配信処理と、を含むことを特徴とするプログラムである。このようなプログラムをコンピュータシステムにて実行すれば、上記情報配信センタと同様の効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の情報配信センタ10を示す概略ブロック図である。
情報配信センタ10は、制御部11と、通信部12と、地図データ記憶部13と、走行履歴記憶部14と、更新情報記憶部15とを備えている。
【0016】
制御部11は、情報配信センタ10全体の制御を司る。制御部11は、いわゆるCPU、ROM、RAM、I/O及びこれらを接続するバスラインを具備するコンピュータシステムとして具現化される。
【0017】
通信部12は、車両90に搭載されるナビゲーション装置91との間で無線ネットワークを介した通信を行うための構成である。図1では、1台のナビゲーション装置91を示したが、情報配信センタ10は、実際は、複数台のナビゲーション装置91との間で通信を行う。また、本実施形態では、情報配信センタ10から情報を配信するだけでなく、ナビゲーション装置91からの情報を受信する。したがって、無線ネットワークは、一例として、双方向通信が可能な携帯電話回線として具現化される。
【0018】
地図データ記憶部13、走行履歴記憶部14、及び、更新情報記憶部15は、いずれもハードディスク装置として実現される記憶装置である。もちろん、ハードディスク装置以外で構成しても差し支えない。
【0019】
地図データ記憶部13は、地図データを記憶する。この地図データには、各種データが含まれるが、その一つとして、施設に関する施設情報16が含まれる。施設情報16は、Aスキー場、B銀行、Cパチンコ店といった地図上の施設に関する情報である。このような施設情報16は、POI(Point Of Interest )情報として記憶されている。POI情報は、施設の識別情報(以下「施設ID」という)、名称、住所、ジャンル、位置座標、エリアサイズ等を含む。
【0020】
ここで施設情報に含まれるジャンルについて説明しておく。
ジャンルは、施設の種類を示すものであり、施設の検索等に用いられる。本実施形態のジャンルは、少なくとも大分類及び中分類からなっている。施設によっては、大分類、中分類に加え、小分類が設定されたものもある。例えば、Aスキー場のジャンルは、大分類が「スポーツ」、中分類が「スキー・スケート」という具合である。また例えば、B銀行のジャンルは、大分類が「サービス」、中分類が「金融機関」、小分類が「地方銀行」という具合である。同様に、Cパチンコ店のジャンルは、大分類が「遊ぶ」、中分類が「アミューズメント」、小分類が「パチンコ」という具合である。
【0021】
走行履歴記憶部14は、車両90に搭載されたナビゲーション装置91から送信される情報に基づき、車両90の走行履歴を記憶する。具体的には、車両90を特定するための車両識別情報(以下「車両ID」という)と、車両90の「出発地点」及び車両90が到達した施設(以下「到達施設」という)の「施設ID」が対応付けて記憶される。出発地点は、位置座標として送信されるものとして以下の説明を続ける。
【0022】
地図データ記憶部13に記憶される地図データについて上述したが、ナビゲーション装置91も同様の地図データを有しており、その地図データの一つとして施設情報(以下「ナビ側施設情報」という)を有している。このナビ側施設情報を更新するための施設更新情報17を記憶するのが、更新情報記憶部15である。また、更新情報記憶部15は、更新履歴情報18を記憶している。ここで、施設更新情報17及び更新履歴情報18について説明しておく。
【0023】
図2は、施設更新情報17を模式的に示す説明図である。施設更新情報17には、複数の異なるバージョンが用意されている。図2では、「Ver1.00」、「Ver1.01」、「Ver1.02」、「Ver2.00」として示した。そして、一つのバージョンの施設更新情報が、地図上の所定区画単位毎に記憶されている。この所定区画を、図2では、「A」、「B」、「C」、・・・「N」・・・として示した。所定区画は、例えば地図上における10km四方等の区画に対応する管理上の区画として設定されるものである。
【0024】
また、図3は、更新履歴情報18を模式的に示す説明図である。更新履歴情報18は、車両IDと、所定区画単位の施設更新情報に対応するフラグとで構成される。図中では、フラグを「○」(更新済み)と「×」(未更新)とで示した。例えば、車両ID「00001」で特定される車両90のナビゲーション装置91では、区画「A〜C」及び「N」について、「施設更新情報Ver1.00」及び「施設更新情報Ver1.01」については更新済みであり、「施設更新情報Ver1.02」については未更新であることが分かる。
【0025】
次に、図4に基づき、ナビゲーション装置91の構成を簡単に説明しておく。
ナビゲーション装置91は、制御部92を中心に構成されており、位置検出部93、地図データ記憶部94、操作スイッチ群95、通信部96、描画部97及び音声出力部98を備えている。かかる構成により、位置検出部93にて車両90の現在位置を検出可能であり、また、通信部96を介し、情報配信センタ10との間で情報通信を行う。さらにまた、地図データ記憶部94には、上述したようにナビ側施設情報が記憶されており、このナビ側施設情報が更新の対象となる。また、地図データ記憶部94には、経路を探索するための探索用データ、経路案内を行うための案内データ等も記憶されている。
【0026】
次に、車両90のナビゲーション装置91にて実行される情報送信処理を、図5のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、目的地としての施設が設定されると制御部92によって実行され、設定された施設への到着判断が行われて本処理が終了するまで、所定時間間隔で繰り返し実行される。また、目的地としての施設が設定されたときの現在位置を位置検出部93から取得し、取得した現在位置を出発地点として記憶する。尚、出発地点はユーザが設定した地点であっても良い。
【0027】
最初のステップ(以下「ステップ」を単に記号Sで示す)100において、経路案内を行う。この処理は、設定された目的地までの経路に沿って描画部97を介した地図表示及び音声出力部98を介した音声出力によって案内を行うものである。もちろん、この案内に際し、地図データ記憶部94に記憶された案内データも用いられる。
【0028】
続くS110では、設定された目的地の施設に到着したか否かを判断する。この到着判断も周知であるため詳しい説明は割愛するが、例えば、目的地までの間に右左折がない場合には目的地の手前100mで到着を判断し、目的地までの間に右左折がある場合には目的地の手前50mで到着を判断するという具合である。ここで目的地の施設に到着したと判断された場合(S110:YES)、S120へ移行する。一方、目的地の施設に到着してないと判断された場合(S110:NO)、以降の処理を実行せず、本情報送信処理を終了する。
【0029】
S120では、車両ID、出発地点、及び、目的地とした施設の識別情報を送信する。車両IDによって、複数台の車両90の中の1台が、情報配信センタ10側で特定されることになる。また、施設の識別情報は、ナビゲーション装置91の地図データ記憶部94中のナビ側施設情報に含まれるものである。この識別情報は、情報配信センタ10の施設情報16に含まれる施設IDと同一の情報であり、ナビ側施設情報に含まれる施設の識別情報も以下で「施設ID」ということにする。仮に両者が別の情報である場合、送信前にナビゲーション装置91側で変換処理を行うこととしてもよいし、受信後に情報配信センタ10側で変換処理を行うこととしてもよい。S120の終了後、本情報送信処理を終了する。
【0030】
このような情報送信処理によって、本実施形態では、ナビゲーション装置91にて目的地として設定した施設への到着が判断されると(図5中のS110:YES)、車両ID、出発地点及び施設IDが送信されることになる(S120)。
これに対し情報配信センタ10では、これらの情報を通信部12によって受信し、車両ID、出発地点、及び、到達施設の施設IDをセットにして、走行履歴記憶部14に記憶する。
【0031】
次に、情報配信センタ10における更新処理を、図6のフローチャートに基づいて説明する。
最初のS200において、更新要求があったか否かを判断する。更新要求はナビゲーション装置91から送信され、更新要求には、車両ID及び車両の現在位置が含まれる。ここで更新要求があったと判断された場合(S200:YES)、S210へ移行する。一方、更新要求がないと判断された場合(S200:NO)、以降の処理を実行せず、本更新処理を終了する。
【0032】
S210では、ジャンル別平均距離算出処理を実行する。ここで、ジャンル別平均距離算出処理について、図7を参照しながら説明しておく。
【0033】
S211では、走行履歴を取得する。この処理は、更新要求に含まれる車両IDに基づいて、当該車両IDに対応する走行履歴を、走行履歴記憶部14から読み出すものである。具体的には、更新要求に含まれる車両IDに対応する「出発地点」及び「施設ID」のセットを取得する。そして、取得した「出発地点」及び「施設ID」のセットをジャンル毎に分類する。
次のS212からS214までの処理は、分類されたジャンル毎に繰り返される処理である。ここでは、分類されたジャンルのうち処理対象となっているジャンルを、適宜「対象ジャンル」と記述する。また、ジャンル毎の処理は、上述した「中分類」のジャンルで行われるものとする。以下でも同様である。
【0034】
S212では、S211にて読み出された走行履歴から、対象ジャンルに属する全ての到達施設の位置及び出発地点のセットを取得する。到達施設の位置は、到達施設の施設IDから、地図データ記憶部13に記憶された施設情報を検索し、当該施設IDに対応する施設の位置座標を取得することで特定される。
【0035】
次のS213の処理は、対象ジャンルに含まれる到達施設毎に繰り返される処理である。具体的に、このS213では、出発地点から到達施設までの直線距離を算出する。これにより、到達施設毎に出発地点からの直線距離が算出されることになる。対象ジャンルに含まれる全ての到達施設についての処理が終了すると、次のS214へ移行する。
【0036】
S214では、S213にて到達施設毎に算出された直線距離を平均した平均距離を算出する。このような平均距離が分類された全てのジャンルについて算出されると、本ジャンル別平均距離算出処理を終了する。
【0037】
このようなジャンル別平均距離算出処理によって、分類されたジャンル毎に、到達施設と出発地点との平均距離が算出されることになる。
【0038】
ここで図6の説明に戻る。S220からS260までの処理は、地図データに存在する全てのジャンルそれぞれについて実行される処理である。ここでも、地図データに存在するジャンルのうち、処理対象となっているジャンルを適宜「対象ジャンル」と記述する。
【0039】
S220では、上述したジャンル別平均距離算出処理(図7参照)にて対象ジャンルについての平均距離が算出されているか否かを判断する。ここで平均距離が算出されていると判断された場合(S220:YES)、S230へ移行する。一方、平均距離が算出されていないと判断された場合(S220:NO)、S250にて基準更新範囲を更新範囲とし、その後、S260へ移行する。基準更新範囲については後述する。
【0040】
S230では、上述したジャンル別平均距離算出処理(図7参照)で算出された平均距離が、基準更新距離よりも大きいか否かを判断する。基準更新距離はデフォルト値として予め設定された距離である、本実施形態では、80kmと設定されているものとする。ここで平均距離>基準更新距離である場合(S230:YES)、S240にてジャンル別更新範囲を更新範囲とし、S260へ移行する。一方、平均距離≦基準更新距離である場合(S230:NO)、S250にて基準更新範囲を更新範囲とし、S260へ移行する。なお、本実施形態において更新範囲は、更新要求に含まれる車両90の現在位置を中心とする円内であり、ジャンル別更新範囲であれば算出された平均距離を半径とし、また、基準更新範囲であれば基準更新距離(本実施形態では80km)を半径とする。
【0041】
S260では、更新情報取得処理を実行する。この更新情報取得処理は、図8に示すごとくである。ここで、更新情報取得処理について説明しておく。
S261では、更新要求に含まれていた車両90の現在位置に基づき、S240又はS250にて設定された更新範囲にかかる区画を特定する。更新範囲にかかる区画とは、更新範囲に少なくともその一部が含まれる区画である。施設更新情報が所定区画単位の情報として更新情報記憶部15に記憶されていることは、既に述べた(図2参照)。ここでは、施設更新情報の所定区画の中で、更新範囲にかかる区画(以下「更新区画」という)を特定する。例えば、区画「A」及び「B」がS240又はS250にて設定された更新範囲にかかっている更新区画であるとして以下説明を続ける。なお、本実施形態では「更新範囲にかかる区画」を更新範囲に少なくともその一部が含まれる区画としたが、更新範囲にその全部が含まれる(内包される)区画としてもよい。
【0042】
続くS262では、更新情報記憶部15中の更新履歴情報18を参照し、更新要求に含まれていた車両IDから、S261で特定された更新区画に対応する施設更新情報のうち未更新である最も古いバージョンの施設更新情報を特定する。更新履歴情報18は、上述したように、車両IDと、所定区画単位で記憶された施設更新情報に対応するフラグとで構成される(図3参照)。したがって、具体的には、更新区画単位で、未更新(図3中で「×」)となっている最も古いバージョンの施設更新情報を特定する。例えば、車両IDが「00002」の場合、図3を参照することにより、更新区画「A」に対しては、バージョン1.02が最も古いものとして特定される。また、更新区画「B」に対しては、バージョン1.01が最も古いものとして特定される。
【0043】
次のS263では、最も古いバージョンから最新のバージョンまでの施設更新情報を更新区画単位で取得する。例えば、車両IDが「00002」の場合、更新区画「A」に対しては、バージョン1.02以上の施設更新情報が取得される。また例えば、更新区画「B」に対しては、バージョン1.01以上の施設更新情報が取得される。
【0044】
全てのジャンルについて施設更新情報が取得されると次に、S270にて、取得された複数の施設更新情報を更新情報として配信する。このとき、更新区画に対応する施設更新情報にバージョンの異なるものが複数ある場合、古いバージョンのものから順に配信する。これにより、車両90のナビゲーション装置91にて更新情報が受信されると、ナビゲーション装置91は、当該更新情報に基づいて、地図データ記憶部94のナビ側施設情報の更新を行う。更新情報は、ナビゲーション装置91にナビ側施設情報を書き換えさせるためのコマンド情報であることが一例として挙げられる。また、ナビゲーション装置91のナビ側施設情報を上書きする上書き情報であってもよい。以上のように、更新情報を受信したナビゲーション装置91側では、車両90の現在位置を中心にしてナビ側施設情報が更新される。
【0045】
次に、本実施形態の情報配信センタ10が奏する効果を説明する。
本実施形態では、情報配信センタ10の走行履歴記憶部14に、「車両ID」、「出発地点」及び到達施設の「施設ID」が記憶されるようになっている。
【0046】
これを前提とし、情報配信センタ10の制御部11は、ジャンル毎に到達施設と出発地点との平均距離を算出し(S210)、更新範囲を決定し(S240、S250)更新情報を取得して(S260)、更新情報を配信する(S270)。
【0047】
このように本実施形態では、出発地点から到達施設までの距離に基づいて、ジャンル別更新範囲を決定する。ジャンル別更新範囲は、ジャンル毎に決定される。つまり、一口に施設といっても、「スキー・スケート」というジャンルに属するAスキー場が到達施設となった場合、出発地点から到達施設までの距離が大きくなると思われる。一方、「金融機関」というジャンルに属するB銀行が到達施設となった場合、出発地点から到達施設までの距離はそれほど大きくならないと予想される。
【0048】
とすれば、施設情報を更新するにあたり、必要とされる更新範囲が、ユーザが選択したジャンルによって、ある程度決まってくる。そして、このようなジャンル毎に決定される範囲に基づいて配信される更新情報は、利用される可能性が高い施設の更新情報である蓋然性が高い。したがって、本実施形態によれば、通信時間及び通信コストの無駄を抑えることができ、施設情報に対する更新情報を適切に配信することができる。
【0049】
また、本実施形態では、出発地点から到達施設までの距離に基づいてジャンル別更新範囲が決定されるため、適切な更新範囲を決定することができる。
【0050】
さらにまた、本実施形態では、ジャンル毎の出発地点と到達地点との平均距離が基準更新距離よりも大きいか否かを判断し(図6中のS230)、基準更新距離よりも大きいときに(S230:YES)、ジャンル別更新範囲を更新範囲として(S240)、更新情報を配信する(S270)。すなわち、「配信手段は、ジャンル別更新範囲が予め定められた基準更新範囲よりも大きい場合に、当該ジャンル別更新範囲に基づき、更新情報を配信する」ようになっている。これにより、少なくとも基準更新範囲においては最新の施設情報が利用可能となる。
【0051】
なお、本実施形態では、出発地点と到達施設との直線距離を算出し(図7中のS213)、これらの直線距離から平均距離を求めている(S214)。
したがって、「更新範囲決定手段は、基準地点から到達施設までの距離に基づき、ジャンル毎の更新距離を算出する更新距離算出手段を有し、更新距離算出手段にて算出された更新距離に基づき、ジャンル別更新範囲を決定すること」としている。
【0052】
また、ここでいう「更新距離」が本実施形態の平均距離に相当するものであることから、「更新距離算出手段は、ジャンル毎に、基準地点から各到達施設までの距離を平均した平均距離を更新距離として算出すること」としてもよい。
【0053】
さらにまた、本実施形態では、平均距離(更新距離)が基準更新距離よりも大きい場合に(図6中のS230:YES)、ジャンル別更新範囲を更新範囲として(S240)、更新情報を配信している(S270)。この意味で、「配信手段は、更新距離が予め定められた基準更新距離よりも大きい場合に、ジャンル別更新範囲に基づき、更新情報を配信すること」としてもよい。
【0054】
以上、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施可能である。
【0055】
(イ)上記実施形態では、「基準地点」を出発地点として、出発地点から到達施設までの直線距離を算出していたが(図7中のS213)、「基準地点」を、例えば自宅等の登録地点としてもよい。すなわち、「基準地点は、車両毎に予め設定される登録地点であること」としてもよい。特に自宅は通常、行動範囲の中心となるため、基準地点として自宅を採用することは、適切な更新範囲を決定することに寄与する。この意味で、「基準地点は、車両毎に予め設定されている自宅であること」としてもよい。
【0056】
(ロ)上記実施形態では、到達施設は、ナビゲーション装置91による経路案内の目的地として設定されている。これに対し、経路案内と関係なく、車両が到達した施設を「到達施設」としてもよい。具体的には、図9に示すような情報送信処理をナビゲーション装置91の制御部92がエンジン始動の際に実行する構成とすればよい。ここでは、まず、車両90の現在位置を記憶する(S300)。続いて、前回エンジン始動時に記憶した現在位置を出発地点として取得する(S310)。次に、今回の現在位置に基づいて、周辺施設を到達施設として特定する(S320)。続いて、車両ID、出発地点、及び施設IDをセットにして送信する(S330)。
【0057】
(ハ)上記実施形態では、更新範囲の中心を車両90の現在位置とし、車両90の現在位置に対応する更新情報を配信していた。すなわち、「配信手段は、車両の現在位置に対応する更新情報を配信する」ようになっている。これに対し、自宅が通常は行動範囲の中心となることに鑑み、更新情報を自宅等の登録地点に対応するものとしてもよい。すなわち、「配信手段は、車両毎に予め設定される登録地点に対応する更新情報を配信すること」としてもよい。
【0058】
(ニ)上記実施形態では、車両90のナビゲーション装置91からの要求に応じて更新情報が配信される。これに対し、更新処理の実行タイミング、すなわち一ヶ月毎というような定期的なタイミングで、自宅等の特定の地点を中心として、更新情報が配信されるようにしてもよい。
【0059】
(ホ)上記実施形態ではジャンル毎の処理を行うに際し「中分類」のジャンルを使用したが、「小分類」のジャンルが対応付けられている施設に関しては、小分類のジャンルを使用してジャンル毎の処理を行うようにしてもよい。
ところで、ジャンルが階層化されて設定されている場合、例えば大分類「食べる」の下層には、中分類としての「ラーメン屋」と「そば・うどん」とが含まれる場合がある。このとき、麺類全般が好きというユーザがいることを考えると、これら2つのジャンルについて別々の更新範囲を設定する必要性に乏しい。そこで、包括的なジャンルである「大分類」のジャンルを使用してジャンル毎の処理を行うようにしてもよい。この意味で、「ジャンルは、施設に対応させて階層化されており、更新範囲決定手段は、少なくとも最下位層よりも上の階層のジャンル毎に、ジャンル別更新範囲を決定すること」としてもよい。
【0060】
(へ)上記実施形態では、基準地点と到達施設との距離として直線距離を算出していたが、地図情報を用いて基準地点から到達施設までの経路を探索し、探索された経路の道なり距離を算出するようにしても構わない。
【0061】
(ト)上記実施形態は10km四方等の区画を単位として施設情報を更新するものであったが、区画の選択の仕方は特に限定されない。例えば行政区画等の区画を単位として施設情報を更新するようにしてもよい。また、施設情報の更新を区画単位とせず、例えば施設単位で更新情報を配信可能な構成とし、設定された更新範囲に含まれる施設について更新情報を配信する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態の情報配信センタの概略構成を示すブロック図である。
【図2】施設更新情報を模式的に示す説明図である。
【図3】更新履歴情報を模式的に示す説明図である。
【図4】情報配信センタと通信可能なナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】ナビゲーション装置にて実行される情報送信処理を示すフローチャートである。
【図6】情報配信センタにて実行される更新処理を示すフローチャートである。
【図7】更新処理に含まれるジャンル別平均距離算出処理を示すフローチャートである。
【図8】更新処理に含まれる更新情報取得処理を示すフローチャートである。
【図9】ナビゲーション装置にて実行される情報送信処理の変形例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
10…情報配信センタ、11…制御部(更新範囲決定手段、配信手段)、12…通信部、13…地図データ記憶部、14…走行履歴記憶部(到達施設情報記憶手段)、15…更新情報記憶部、16…施設情報、17…施設更新情報、18…更新履歴情報、90…車両、91…ナビゲーション装置、92…制御部、93…位置検出部、94…地図データ記憶部、95…操作スイッチ群、96…通信部、97…描画部、98…音声出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が到達した到達施設を特定することが可能な到達施設情報を記憶する到達施設情報記憶手段と、
前記到達施設情報を用いて算出される基準地点から前記到達施設までの距離に基づき、前記到達施設のジャンル毎に、施設情報の更新を行う更新範囲をジャンル別更新範囲として決定する更新範囲決定手段と、
前記ジャンル別更新範囲に基づき、施設情報に対する更新情報を配信する配信手段と、
を備えていることを特徴とする情報配信センタ。
【請求項2】
請求項1に記載の情報配信センタにおいて、
前記基準地点は、前記到達施設へ向けて車両が走行を開始した出発地点であり、
前記到達施設記憶手段は、前記到達施設と共に前記出発地点を対応付けて記憶することを特徴とする情報配信センタ。
【請求項3】
請求項1に記載の情報配信センタにおいて、
前記基準地点は、車両毎に予め設定される登録地点であることを特徴とする情報配信センタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の情報配信センタにおいて、
前記配信手段は、前記ジャンル別更新範囲が予め定められた基準更新範囲よりも大きい場合に、当該ジャンル別更新範囲に基づき、前記更新情報を配信することを特徴とする情報配信センタ。
【請求項5】
基準地点から車両が到達した施設である到達施設までの距離に基づき、前記到達施設のジャンル毎に、施設情報の更新を行う更新範囲をジャンル別更新範囲として決定する更新範囲決定処理と、
前記ジャンル別更新範囲に基づき、施設情報に対する更新情報を配信する配信処理と、
を含むことを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−60432(P2010−60432A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226434(P2008−226434)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】