説明

感光剤塗布方法、圧電振動片の製造方法および圧電デバイスの製造方法、並びに圧電振動片および圧電デバイス

【課題】 ウエハ基板(10)の両面に感光剤を同時に塗布することができるようにするとともに、ウエハ基板(10)の凹凸または貫通穴に対しても感光剤を薄く均一に形成することができる感光剤塗布方法を提供する。
【解決手段】 本発明のフォトレジスト塗布方法は、表面を有するウエハ基板(10)を塗布チャンバ(60、70,105)内で保持する保持ステップと、基板を表面に平行な軸(62、72,114)を中心に回転させる回転ステップと、塗布チャンバ内のウエハ基板(10)に感光剤(PR)を塗布する感光剤塗布ステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶基板、シリコン基板などに対してフォトレジスト(感光剤)を塗布し、その基板の電極膜上にフォトレジストを形成する感光剤塗布方法、圧電振動片の製造方法および圧電デバイスの製造方法、並びに圧電振動片および圧電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物に薄く均一なフォトレジスト薄膜を形成しようとする方法としては、たとえばスピンコート方式と呼ばれる手法を用いることが多い。このスピンコート方式は、回転させたウエハ基板の中心近傍に液体のフォトレジストを所定量だけ塗布し、遠心力によってウエハ基板の片面に液体のフォトレジストを塗布することができるという特徴を有する。このスピンコート方式は、ウエハ基板の片面にのみ適用することができる。
【特許文献1】特開2003−031476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、音叉型振動子またはマイクロマシンなどを形成する際には、ウエハ基板の両面にフォトレジストを塗布する必要があり、スピンコート方式では、ウエハ基板の一面に液状のフォトレジストを塗布し、その後仮ベークさせてフォトレジスト硬化させてから、再度、他面に対して同様に液状のフォトレジストを塗布しなければならない。また、音叉型振動子の電極形成の際には、水晶ウエハ上に音叉型振動子の形状を形成して、フォトレジストを薄く均一に形成する必要がある。音叉型振動子が形成された水晶ウエハは、凹凸または貫通穴が多数形成されている。このような凹凸または貫通穴が形成された水晶ウエハに対しては、スピンコート方式では均一なフォトレジストを塗布することが困難である。マイクロマシンの基材であるシリコンウエハにおいても、加工が進むにつれシリコンウエハ上にすでに凹凸または貫通穴が形成されるため、同様に、フォトレジストを薄く均一に形成することが困難である。
【0004】
そこで、本発明の目的は、ウエハ基板の両面に感光剤(フォトレジスト)を同時に塗布することができるようにするとともに、ウエハ基板の凹凸または貫通穴に対しても感光剤を薄く均一に形成することができる感光剤塗布方法、圧電振動片の製造方法、圧電デバイスの製造方法、これらの製法を使って製造された圧電振動片および圧電デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点の感光剤塗布方法は、表面を有する基板を塗布チャンバ内で保持する保持ステップと、表面に平行な軸を中心に基板を回転させる回転ステップと、塗布チャンバ内の基板に感光剤を塗布する感光剤塗布ステップとを有する。ここで基板とは、水晶ウエハまたはシリコンウエハばかりでなく、水晶ウエハまたはシリコンウエハから一つ一つに切り出された一片の圧電振動子などを含む概念である。
上記構成によれば、基板上に同時に感光剤を塗布することができる。このため、感光剤の塗布の作業効率がよい。
【0006】
第2の観点の感光剤塗布方法は、保持ステップが基板を負極または正極の一方に帯電させ、感光剤塗布ステップが液状の感光剤溶剤を微粒子状にしてから正極または負極の他方に帯電させた後、塗布チャンバ内に微粒子状の感光剤溶液を導入する。
上記構成によれば、いわゆるミスト状の感光剤溶剤を帯電させてから基板に塗布させる。したがって、クローン力により、基板の凹凸または貫通穴に対しても感光剤を薄く均一に形成することができる。
【0007】
第3の観点の感光剤塗布方法は、第2の観点において、回転ステップが微粒子状の感光剤溶液の導入方向に対して、軸が直交するように回転させる。
上記構成によれば、ミスト状の感光剤溶剤の導入方向に対して回転軸が直交していると、感光剤溶剤が均一に塗布されやすい。また、帯電している感光剤である均一厚さに基板の両面に感光剤を塗布することができる。
【0008】
第4の観点の感光剤塗布方法は、回転ステップは、基板の回転速度を可変する。
基板の広い面をできるだけ感光剤の塗布方向に向けていた方が、薄く均一な塗布厚の感光剤を基板に形成することができる。このため、基板の広い面が感光剤の塗布方向に長く配置されるように、基板の回転速度を可変する。
【0009】
第5の観点の感光剤塗布方法は、第2の観点において、保持ステップが基板を正極または負極の一方に帯電させ、感光剤塗布ステップが液状の感光剤溶剤を微粒子状にしてから微粒子状の感光剤溶液を加熱して感光剤粉末を生成し、正極または負極の他方に帯電させた感光剤粉末を塗布する。
上記構成によれば、基板上に塗布された感光剤粉末は、角部においても塗布厚が均一となり、全体的に均一な薄い感光剤が基板上に形成される。
【0010】
第6の観点の感光剤塗布方法によれば、第5の観点において、感光剤粉末を溶解可能な溶剤ガスが含まれた溶解室に感光剤粉末が塗布された基板を配置し、感光剤粉末を溶解させる溶解ステップを有する。
上記構成によれば、感光剤粉末の表面だけでなく深部までは溶剤ガスを短時間で浸透させる。このため、基板上の角部においても微細なパターンの露光が可能となる。
【0011】
第7の観点の圧電振動片の製造方法は、第1ないし第6の観点のいずれかの感光剤塗布方法によって感光剤が塗布された基板に、形成すべき電極パターンに対応したマスクを配置し、感光剤を露光する露光ステップと、感光剤パターンを用いて電極パターンに対応した電極を基板上に形成する電極形成ステップとを有する。
上記構成によれば、同時に感光剤が両面に塗布された基板によって電極の露光を行うことができるため、効率よく圧電振動片を製造することができる。
【0012】
また第8の観点の圧電振動片の製造方法は、第7の観点による圧電振動片の製造方法によって製造された圧電振動片を、パッケージに固定し圧電振動片を内蔵したパッケージを封止する封止ステップを有する。
上記構成によれば、角同時に感光剤が両面に塗布された基板によって効率よく製造された圧電振動片を使い、圧電デバイスを製造することができる。
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
<圧電振動デバイスの構成>
図1Aおよび図1Bは、本発明の感光剤塗布方法を適用した圧電振動デバイス50の実施形態を示している。この圧電振動デバイス50は、たとえばHDD(ハード・ディスク・ドライブ)、モバイルコンピュータ、あるいはICカード等の小型の情報機器や、携帯電話、自動車電話、またはページングシステム等の移動体通信機器において広く使用されている。図1Aは圧電振動デバイス50の透視した概略平面図、図1Bは図1AのB−B線概略断面図である。図1において、圧電振動デバイス50は、音叉形状の圧電振動片20を構成した例を示しており、圧電振動デバイス50は、パッケージ51内に圧電振動片20を収容している。パッケージ51は、たとえば、絶縁材料として、酸化アルミニウム質の混練物からなるセラミックグリーンシートを成形して形成される複数の基板を積層し、焼結して形成されている。
【0014】
この実施形態では、パッケージ51は、図1Bに示すように、ベース基板51a、壁基板51bおよび床基板51cで構成されている。パッケージ51は、壁基板51bで覆うことで内部空間を形成し、この内部空間に圧電振動片20を収容している。そして、圧電振動片20を所定の高さで支えるように、床基板51cがベース基板51a上に配置されている。床基板51cには、たとえば、タングステンメタライズ上にニッケルメッキおよび金メッキで形成した電極部52が設けられている。
【0015】
この電極部52は、ベース基板51a下に形成された実装端子55と接続されている。これにより、外部から印加される駆動電圧を、実装端子55を介して電極部52に伝え、最終的に圧電振動片20に供給する。具体的には、図1Bに示すように、この実装端子55と電極部52は、パッケージ51外部をメタライズにより引き回したり、もしくは、ベース基板51aの焼成前にタングステンメタライズ等を利用して形成した導電スルーホール(不図示)で接続したりすることで形成できる。ここで、本実施形態では、箱状のパッケージ51を形成して、圧電振動片20を収容するようにしているが、たとえば、金属製の筒状のケース内に圧電振動片を収容し、圧電振動片と接続されたリードを外部に導出するプラグで気密に封止するようにしてもよい。
【0016】
電極部52の上には、導電性接着剤57が塗布されて、圧電振動片20の基部29が接合されている。この導電性接着剤57としては、接合力を発揮する接着剤成分としての合成樹脂剤に、導電性のフィラー(銀製の細粒等の導電粒子を含む)および、所定の溶剤を含有させたものが使用できる。
【0017】
壁基板51bの開放された上端には、蓋体59が封止材58で接合されることにより、封止されている。蓋体59は、好ましくは、酸化アルミニウム質の混練物からなるセラミックで形成されている。コバール等の金属材料で形成される場合には、蓋体59はシーム溶接等の手法により、壁基板51bに対して固定される。
【0018】
圧電振動片20の母材は、たとえば2枚貼り合わせた結合水晶ウエハで形成されており、小型で必要な性能を得るために、図1Aに示す形状になっている。すなわち、圧電振動片20は、導電性接着剤57と接着する基部29と、この基部29を基端として、図1Aにおいて右方に向けて、二股に別れて平行に延びる一対の振動腕を備えている。つまり、圧電振動片20は、全体が音叉のような形状とされた、いわゆる音叉型圧電振動片である。以下、本実施形態では一対の振動腕21を備えた圧電振動片20で説明するが、3本または4本の振動腕21を備えた圧電振動片20であってもよい。
【0019】
<水晶ウエハの構成>
図2Aは、本実施形態に用いる円形の接合水晶ウエハ10の構成を示す斜視図である。この円形の接合水晶ウエハ10は、たとえば厚さ0.8mmの人工水晶からなり、円形の接合水晶ウエハ10の直径は3インチまたは4インチである。つまり、円形の接合水晶ウエハ10は、厚さ0.8mmの側面10pと3インチまたは4インチの表面または裏面10fを有している。円形の接合水晶ウエハ10は、厚さ0.4mmの第一水晶ウエハと厚さ0.4mmの第二水晶ウエハとからなり、両者ともZ軸方向に切断されたZカットウエハが用いられている。第一水晶ウエハと第二水晶ウエハとは直接接合、具体的には耐熱性が優れたシロキサン結合(Si−O−Si)によって接合している。このシロキサン結合は、第一水晶ウエハと第二水晶ウエハとの両方の接合面を清浄な状態にしてその面同士を貼り合わせ、その後約500°Cのアニールを行うことによって結合が行われる。第一水晶ウエハと第二水晶ウエハとをシロキサン結合するには、互いに電気軸がX軸方向に逆になるように結合されている。さらに、円形の接合水晶ウエハ10の軸方向が特定できるように、接合水晶ウエハ10の周縁部10eの一部には、水晶の結晶方向を特定するオリエンテーションフラット10cが形成されている。
【0020】
図2Bは、本実施形態に用いる矩形の接合水晶ウエハ15の構成を示す斜視図である。この矩形の接合水晶ウエハ15も、例えば厚さ0.8mmの人工水晶からなり、その矩形の接合水晶ウエハ15の一辺は2インチである。つまり、矩形の接合水晶ウエハ15は、厚さ0.8mmの側面15pと2インチの表面または裏面15fを有している。矩形の接合水晶ウエハ15も、厚さ0.4mmの第一水晶ウエハと厚さ0.4mmの第二水晶ウエハとからなり、両者ともZ軸方向に切断されたZカットウエハが用いられ、シロキサン結合(Si−O−Si)によって接合している。また、第一水晶ウエハと第二水晶ウエハとをシロキサン結合するには、互いに電気軸がX軸方向に逆になるように結合されている。そして、矩形の接合水晶ウエハ15の軸方向が特定できるように、矩形の接合水晶ウエハ15の周縁部15eの一部には、水晶の結晶方向を特定するオリエンテーションフラット15cが形成されている。
【0021】
図2Aの円形の接合水晶ウエハ10および図2Bの矩形の接合水晶ウエハ15は、すでに一度フォトリソグラフィによって圧電振動片20が形成されている。円形の接合水晶ウエハ10および矩形の接合水晶ウエハ15ともに、結合水晶ウエハの両面および側面に、金(Au)、クロム(Cr)等を材質とする電極膜18が被覆されている。ただし、図1で示したように、圧電振動片20が完全に一個の振動片とはなっておらず、圧電振動片20の基部29の一部が接合水晶ウエハ10または接合水晶ウエハ15と接続されている。このため、一つ一つの圧電振動片20をパレットなどに並べて処理することなく、数百から数千個の圧電振動片20を一枚の接合水晶ウエハ10または接合水晶ウエハ15として、取り扱うことができる。なお、以下の実施形態では、図2Aに示すオリエンテーションフラット10cを有する円形の接合水晶ウエハ10で説明する。
【0022】
<感光剤塗布>
本発明の感光剤塗布方法では、結合水晶ウエハ10の両面にフォトレジストが塗布されるように結合水晶ウエハ10を回転させている。本実施形態では、3つの実施例を例示する。
【0023】
<<実施例1>>
図3は、結合水晶ウエハ10に対して微粒子のフォトレジストPR2を塗布するフォトレジスト塗布装置100の構成例を示す概略断面図である。フォトレジスト塗布装置100は、塗布チャンバ60、微粒子フォトレジスト生成チャンバ80およびフォトレジストタンク90を備えている。
【0024】
フォトレジストタンク90には、たとえばノボラック樹脂、O-キノンジアシドなどからなる感光剤および有機溶剤による液状のポジフォトレジストPR3が入っている。有機溶剤として、たとえばナフトキノンジアジドスルホン酸と多価フェノールとからなるナフトキノンジアジド化合物を使用する。フォトレジストタンク90内のフォトレジストPR3は、液体供給ポンプ92によってパイプ91を通って微粒子フォトレジスト生成チャンバ80に送られる。なお、平坦な結合水晶ウエハ10に対しては、スピンコータによるフォトレジスト塗布も可能である。そのため、図には示していないが、フォトレジストタンク90は不図示のスピンコータにもパイプで接続されている。フォトレジストタンク90内は約10°C〜20°Cに設定されている。本実施形態ではポジフォトレジストで説明するが、ネガフォトレジストであってもよいことは言うまでもない。
【0025】
液体供給ポンプ92によって送られたフォトレジストPR3は、まず微粒子フォトレジスト生成チャンバ80の上部に取り付けられたスプレーノズル82によって、微粒子状(ミスト状)に噴霧される。このため液状のフォトレジストPR3は、フォトレジスト微粒子PR2となって微粒子フォトレジスト生成チャンバ80内に漂う。微粒子フォトレジスト生成チャンバ80には、空気または窒素等の不活性ガスのキャリアガスが供給されている。フォトレジスト微粒子PR2のうち、大きな直径のフォトレジスト微粒子はフォトレジスト微粒子自体の自重によって微粒子フォトレジスト生成チャンバ80の下方に落ちる。微粒子フォトレジスト生成チャンバ80の下方に落ちたフォトレジスト微粒子は、一時的に蓄えられ、チャンババルブ84を経由して、戻しポンプ94によりフォトレジストタンク90に再び戻される。
【0026】
小さな直径のフォトレジスト微粒子PR2は、微粒子フォトレジスト生成チャンバ80の下方に落ちることなく微粒子フォトレジスト生成チャンバ80で漂う。そして、小さな直径のフォトレジスト微粒子は、塗布チャンバ60と微粒子フォトレジスト生成チャンバ80と気圧差または吸引ポンプによって、キャリアガスとともにパイプ83の方に吸引される。どのような大きさのフォトレジスト微粒子を塗布チャンバ60に供給するかは、吸引ポンプの吸引力などによって変更することができる。塗布チャンバ60とパイプ83との接続部分には、拡散板66が設けられており、微粒子のフォトレジストPR2が塗布チャンバ60内で拡散するようにしている。
【0027】
塗布チャンバ60は、2枚の接合水晶ウエハ10をウエハ平面に平行な軸を中心に回転させる第一回転装置160を有している。第一回転装置160は、回転モータ61、回転モータ61と接続されたシャフト62、およびシャフト62に接続されたチャック63から構成される。第一回転装置160は、シャフト62をZ方向に向くように配置している。パイプ83から微粒子状のフォトレジストPR2がY方向に導入されているため、ウエハ平面に平行な軸をZ方向にしている。二本のシャフト62の長さはそれぞれ異なっている。塗布チャンバ60内で拡散している微粒子のフォトレジストPR2に多く触れるようにするためである。シャフト62の回転速度は、一分間に一回から十回程度である。回転速度が一分間に十回を越えると、回転が速すぎて微粒子のフォトレジストPR2が接合水晶ウエハ10に付着しなくなる。シャフト62が一回転する際に、回転速度が一定である必要はない。回転モータ61は、回転速度を可変できるステッピングモータなどを使用し、必要であればギヤなどを装着する。チャック63は2枚の板で構成されており、接合水晶ウエハ10の周縁部を2枚の板で挟んでいる。接合水晶ウエハ10の周縁部10eは、チャック63でカバーされることになり、フォトレジストPR2が塗布されない。しかし、フォトレジストPR2が塗布されなくても、接合水晶ウエハ10の周縁部10eには圧電振動片20が形成されておらず問題がなく、また、周辺露光を行う必要もなくなる。
【0028】
また、拡散板66には、高圧電源が接続されている。この高圧電源は、拡散板66に40kV〜100kV程度の負の高電圧を印加して、イオン化された空気によって微粒子のフォトレジストPR2を負に帯電させ、負に帯電したフォトレジストPR2を生成する機能を有する。一方、接合水晶ウエハ10を保持するチャック63またはそのチャック63を保持するシャフト62は接地されるように構成されている。シャフト62は、外層がフラスチックで内部が導体で構成して、フォトレジストPR2がシャフト62に付着しにくくしている。チャック63を構成する2枚の板は、両方ともプラスチックなどの不導体でできており、2枚のプラスチック板の片面は銅線が配置してある。そして、チャック63で接合水晶ウエハ10を挟むと、接合水晶ウエハ10の電極膜18と銅線が接触する。つまり、接合水晶ウエハ10に形成された電極膜18が、正に帯電している。このため、拡散板66付近から噴霧される微粒子のフォトレジストPR2は、正に帯電した接合水晶ウエハ10の電極膜18にクローン力も加わって塗布される。塗布されたフォトレジストは、クローン力により垂直に立てられた接合水晶ウエハ10から零れ落ちることもない。
【0029】
<<実施例2>>
図4は、結合水晶ウエハ10に対して微粒子のフォトレジストPR2を塗布する別の実施例を示した図で、第二塗布チャンバ70のみを示した図である。微粒子フォトレジスト生成チャンバ80およびフォトレジストタンク90は、実施例1で説明したものと同様である。
【0030】
第二塗布チャンバ70は、4枚の接合水晶ウエハ10をウエハ平面に平行な軸を中心に回転させる第二回転装置170を有している。第二回転装置170は、回転モータ71、回転モータ71と接続されたシャフト72、およびシャフト72に接続されたチャック73から構成される。これらの構成は、実施例1と同様である。第二回転装置170は、シャフト72をY方向(またはX方向)に向くように配置している。パイプ83から微粒子状のフォトレジストPR2がZ方向に導入されているため、ウエハ平面に平行な軸をY方向にしている。シャフト72が一回転する際に、接合水晶ウエハ10の表面または裏面10fが上(+Z方向)に向いているときは回転を遅くし、側面10pが上(+Z方向)に向いているときは回転を早くしても良い。面積が広い面に対して微粒子のフォトレジストPR2が多く付着しやすくするためである。なお、4枚の接合水晶ウエハ10を同期して回転させる必要はない。
【0031】
図4では、上下に2枚ずつの接合水晶ウエハ10が回転している。この際、下側の2枚の接合水晶ウエハ10に微粒子のフォトレジストPR2が付着しにくい場合がある。この場合には、上側の接合水晶ウエハ10を保持するチャック63またはそのチャック63を保持するシャフト62は接地し、下側の接合水晶ウエハ10を保持するチャック63またはそのチャック63を保持するシャフト62は正の電圧をかける。このようにより、微粒子のフォトレジストPR2が付着しにくい接合水晶ウエハ10に、微粒子のフォトレジストPR2との電圧差をかけて、すべての接合水晶ウエハ10が同じ厚さでフォトレジストPR2が塗布されるようにする。
【0032】
<<実施例3>>
図5は、結合水晶ウエハ10に対して微粒子のフォトレジスト粉末PR1を塗布するさらに別の実施例を示した図である。フォトレジスト塗布装置110は、第三塗布チャンバ105、微粒子フォトレジスト生成チャンバ80およびフォトレジストタンク90を備えている。微粒子フォトレジスト生成チャンバ80およびフォトレジストタンク90は、実施例1で説明したものと同様である。
【0033】
小さな直径のフォトレジスト微粒子PR2は、粉末供給ポンプ87によってキャリアガスとともにパイプ85の方に吸引される。どのような大きさのフォトレジスト微粒子PR2を第三塗布チャンバ105に供給するかは、粉末供給ポンプ87の吸引力によって変更することができる。そしてヒータ86により、フォトレジスト微粒子PR2内の有機溶剤が蒸発し、微細なフォトレジスト粉末PR1となる。
【0034】
微細なフォトレジスト粉末PR1は、キャリアガスとともに第三塗布チャンバ105内に送られる。第三塗布チャンバ105とつながったパイプ85の出口には、高圧電源111が接続されている。この高圧電源111は、40kV〜100kV程度の負の高電圧を印加して、イオン化された空気によってフォトレジスト粉末PR1を負に帯電させ、負に帯電したフォトレジスト粉末PR1を生成する。また、高圧電源111は、印加する電圧に応じて、結合水晶ウエハ10等に形成する電極フォトレジストPR2の膜厚を調整することができる。
【0035】
第三塗布チャンバ105は、1枚の接合水晶ウエハ10をウエハ平面に平行な軸を中心に回転させる第三回転装置180を有している。第三回転装置180は、回転モータ113、回転モータ113と接続されたシャフト114、およびシャフト114に接続されたチャック116から構成される。第三回転装置180は、シャフト114をZ方向に向くように配置している。
【0036】
チャック116は、チャック116の外側表面はプラスチックまたはセラミックなどの非導電性材料で覆い、チャック116が接合水晶ウエハ10の電極膜18と接する部分のみ導電性部材が表面に出ている構造となっている。接合水晶ウエハ10を保持するチャック113またはそのチャック113を保持するシャフト114は接地してある。微粒子のフォトレジスト粉末PR1との電圧差をかけて、すべての接合水晶ウエハ10に同じ厚さでフォトレジスト粉末PR1が塗布されるようにする。
【0037】
<噴霧処理>
図6は、噴霧処理装置120をYZ平面でみた断面の概略図である。実施例1または実施例2で説明したフォトレジスト塗布方法では、フォトレジスト微粒子PR2が粒子状であることから、複数のフォトレジスト微粒子PR2間に隙間が生じてしまうことがある。この状態でマスクを用いて露光を行うと、不要なフォトレジストが残りきれいに露光できず、微細な電極パターンが精度良く形成することができない。また、実施例3で説明したフォトレジスト塗布方法では、フォトレジスト粉末PR1であることから、フォトレジストを液状にして隙間なくが塗布された状態にする必要がある。このため、噴霧処理装置120が用意されている。
【0038】
図6に示す噴霧処理装置120は、密閉された筐体であるガラスチャンバ121にヒータ125を備えている。また、接合水晶ウエハ10を保持し、不図示の扉から接合水晶ウエハ10をガラスチャンバ101に搬入および搬出する2つのウエハチェック123を備えている。2つのウエハチェック123には、複数枚の接合水晶ウエハ10を保持している。ガラスチャンバ121の底部には、フォトレジスト粉末RP1を溶解可能な、またはフォトレジスト微粒子PR2間の隙間を埋める、溶剤SOLを蓄積するタンクが設けられている。
【0039】
溶剤SOLは、たとえば有機溶剤であり、その一例としてはナフトキノンジアジド化合物が望ましい。この溶剤SOLは、ヒータ125で加熱によって溶剤の蒸発ガスSOLGとなる。仕切り板122はメッシュ状に穴が開いており蒸発ガスSOLGが上部に上がることができる、蒸発ガスSOLGの噴霧分量は、ヒータ125の加熱状態により調節することができる。このように、噴霧処理装置120は、雰囲気中に凹凸形状を有する接合水晶ウエハ10を配置して、フォトレジスト粉末PR1の表面だけでなく深部までは蒸発ガスSOLGを短時間で浸透させる。また噴霧処理装置120は、フォトレジスト微粒子PR2間の隙間に蒸発ガスSOLGを浸透させることができる。
【0040】
このようにして、平滑で均一な塗布厚とされたフォトレジスト層は、たとえば90℃で15分程度加熱を行うプリベーク処理により溶剤SOLが飛ばされることで硬化され、さらに冷却処理され完成する。
【0041】
<圧電振動デバイスの製造工程>
図7は、本実施形態に用いる圧電振動デバイスの製造の全工程を示したフローチャート130である。
<<圧電振動片の外形形成の工程>>
ステップS110では、第一水晶ウエハおよび第二水晶ウエハを貼り合わせて、接合水晶ウエハ10を用意する。
【0042】
次に、ステップS112では、接合水晶ウエハ10の全面に、耐蝕膜をスパッタリングもしくは蒸着などの手法により形成する。すなわち、圧電材料としての接合水晶ウエハ10を使用する場合に、金(Au)や銀(Ag)等を直接成膜することは困難なため、下地としてクロム(Cr)やチタン(Ti)等を使用する。つまり、この実施形態では、耐蝕膜としてクロム層の上に金層を重ねた金属膜を使用する。たとえば、クロム層の厚みは500オングストローム、金層の厚みも500オングストローム程度とする。
【0043】
ステップS114では、クロム層および金層が形成された接合水晶ウエハ10に、フォトレジスト層を全面にスピンコートなどの手法で均一に塗布する。フォトレジスト層としては、たとえば、ノボラック樹脂によるポジフォトレジストを使用できる。
【0044】
次に、ステップS116では、露光装置を用いて、第1フォトマスクに描かれた圧電振動片20のパターンをフォトレジスト層が塗布された接合水晶ウエハ10を露光する。ステップS116では、両面露光装置を使って365nmのi線の露光光を用いて両面を露光する。
【0045】
ステップS118では、接合水晶ウエハ10のフォトレジスト層を現像して、感光したフォトレジスト層を除去する。さらに、フォトレジスト層から露出した金層をたとえば、ヨウ素とヨウ化カリウムの水溶液を用いて、金層をエッチングする。次いで、金層が除去されて露出したクロム層を、たとえば硝酸第2セリウムアンモニウムと酢酸との水溶液でエッチングする。水溶液の濃度、温度および水溶液に浸している時間を調整して余分な箇所が侵食されないようにする。これで耐蝕膜を除去することができる。次に、フッ酸溶液をエッチング液として、フォトレジスト層および耐蝕膜から露出した水晶材料を、圧電振動片20の外形になるようにウェットエッチングを行う。このウェットエッチングは、フッ酸溶液の濃度や種類、温度等により時間が変化するが、約6時間ないし約15時間かかる。
【0046】
ステップS120では、不要となったフォトレジスト層と耐蝕膜を除去することによりに、図1で示した振動腕21および基部29を有する圧電振動片20が形成される。
【0047】
<<電極の形成の工程>>
ステップS122では、圧電振動片20を純水で洗浄し、圧電振動片20の全面に駆動電極としての励振電極などを形成するための金属膜を蒸着またはスパッタリング等の手法により形成する。この金属膜は、下地となるクロム層と、金層とで構成する。なお、耐蝕膜と金属膜とは同じ材料であってもよいので、耐蝕膜を電極として使用する場合には、ステップS120で耐蝕膜を除去することなく、ステップS122で新たに金属膜を形成する必要がない。
【0048】
次いで、図3から図6で説明したように、ステップS124では、接合水晶ウエハ10の全面にフォトレジスト粉末PR1またはフォトレジスト微粒子PR2を塗布する。
ステップS126では、電極パターンと対応した第2フォトマスク(不図示)を用意して、電極パターンをフォトレジスト層が塗布された接合水晶ウエハ10を露光する。電極パターンは圧電振動片20の両面に形成する必要があるため、ステップS126では、365nmのi線の露光光を用いて圧電振動片20の両面を露光する。両面露光装置を使って圧電振動片20の両面を一度に露光することもでき、また、片面露光装置を使って圧電振動片20の片面を露光し、圧電振動片20を裏返して他方の片面を露光することもできる。
【0049】
ステップS128では、フォトレジスト層を現像後、感光したフォトレジストを除去する。残るフォトレジストは電極パターンと対応したフォトレジストになる。
【0050】
次いで、ステップS128では、電極となる金属膜のエッチングを行う。すなわち、電極パターンと対応したフォトレジスト層から露出した金層をたとえば、ヨウ素とヨウ化カリウムの水溶液でエッチングし、次にクロム層をたとえば硝酸第2セリウムアンモニウムと酢酸との水溶液でエッチングする。続いて、ステップS130でフォトレジストを除去する。これらの工程を経て、圧電振動片20に励振電極などが正確な位置および電極幅で形成される。
【0051】
<<周波数調整およびパッケージングの工程>>
これまでの工程により、電極が形成された圧電振動片20が得られたため、ステップS132では、セラミック製のパッケージ51に圧電振動片20を導電性接着剤57で接着する。具体的には、圧電振動片20の基部29を、電極部52に塗布した導電性接着剤57の上に載置して、導電性接着剤57を仮硬化させる。次に、硬化炉で導電性接着剤57を本硬化することにより圧電振動片20を引出電極に対して接合する。
【0052】
ステップS134では、さらに、圧電振動片20の振動腕21にレーザ光を照射して、振動腕21の接合水晶ウエハ10の一部を蒸散・昇華させ、質量削減方式による周波数調整を行う。そもそもステップS116およびステップS118などで形成される圧電振動片20は、振動腕21が大きめに形成されるようにフォトマスクのパターンが形成されていたり、ウェットエッチングで接合水晶ウエハ10が過度にエッチングされないようにしたりして、質量が大きめに形成されている。
【0053】
次に、ステップS136で、真空チャンバ内などに圧電振動片20を収容したパッケージ51を移し、蓋体59を封止材58により接合する。続いてステップS138で、最後に圧電振動デバイス50の駆動特性などの検査を行い、圧電振動デバイス50を完成させる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。たとえば、二枚の水晶ウエハを結合した結合水晶ウエハ10で説明したが、一枚の水晶ウエハであってもよい。また、水晶ウエハに限らず、マイクロマシンなどを製造する際に使用されるシリコンウエハに感光剤を塗布する際にも、半導体素子その他電子部品の電極などを製造する際にも本発明は適用できる。また、実施形態では複数の圧電振動片20が形成された結合水晶ウエハ10を第二塗布チャンバ70またはガラスチャンバ101に通した。しかし、一つ一つの圧電振動片20をパレットなどに並べて処理してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】Aは圧電振動デバイス50の透視した概略平面図、BはAのB−B線概略断面図である。
【図2】Aは、本実施形態に用いる円形の接合水晶ウエハ10を示す斜視図、Bは、矩形の接合水晶ウエハ15を示す斜視図である。
【図3】フォトレジスト粉末の塗布に関する実施例で、フォトレジスト塗布装置100の構成例を示す概略断面図である。
【図4】結合水晶ウエハ10に対して微粒子のフォトレジストPR2を塗布する別の実施例を示した図である。
【図5】結合水晶ウエハ10に対して微粒子のフォトレジスト粉末PR1を塗布するさらに別の実施例を示した図である。
【図6】噴霧処理装置120をYZ平面でみた断面の概略図である。
【図7】圧電振動デバイスの製造の全工程を示したフローチャート100である。
【符号の説明】
【0056】
10,15 … 水晶基板
20 … 圧電振動片、
50 … 圧電デバイス
60、70、105 … 塗布チャンバ
120 … 噴霧処理装置
160,170,180 …
PR1 … フォトレジスト粉末
PR2 … 微粒子状(ミスト状)のフォトレジスト(液状のフォトレジスト)
PR3 … フォトレジストの溶剤(液状のフォトレジスト溶剤)
SOL … 溶剤



【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する基板を塗布チャンバ内で保持する保持ステップと、
前記表面に平行な軸を中心に前記基板を回転させる回転ステップと、
前記塗布チャンバ内の前記基板に感光剤を塗布する感光剤塗布ステップと
を有することを特徴とする感光剤塗布方法。
【請求項2】
前記保持ステップは、前記基板を正極または負極の一方に帯電させ、
前記感光剤塗布ステップは、液状の感光剤溶剤を微粒子状にしてから正極または負極の他方に帯電させた後、前記塗布チャンバ内に微粒子状の感光剤溶液を導入することを特徴とする請求項1に記載の感光剤塗布方法。
【請求項3】
前記回転ステップは、前記微粒子状の感光剤溶液の導入方向に対して、前記軸が直交するように回転させることを特徴とする請求項2に記載の感光剤塗布方法。
【請求項4】
前記回転ステップは、前記基板の回転速度を可変することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の感光剤塗布方法。
【請求項5】
前記保持ステップは、前記基板を負極または正極の一方に帯電させ、
前記感光剤塗布ステップは、液状の感光剤溶剤を微粒子状にしてから前記微粒子状の感光剤溶液を加熱して前記感光剤粉末を生成し、正極または負極の他方に帯電させた感光剤粉末を塗布することを特徴とする請求項2に記載の感光剤塗布方法。
【請求項6】
前記感光剤粉末を溶解可能な溶剤ガスが含まれた溶解室に前記感光剤粉末が塗布された基板を配置し、前記感光剤粉末を溶解させる溶解ステップ
を有することを特徴とする感光剤塗布方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の感光剤塗布方法によって前記感光剤が塗布された基板に、形成すべき電極パターンに対応したマスクを配置し、前記感光剤を露光する露光ステップと、
前記感光剤パターンを用いて前記電極パターンに対応した電極を前記基板上に形成する電極形成ステップと
を有することを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の圧電振動片の製造方法に基づいて製造されたことを特徴とする、水晶を母材とする圧電振動片。
【請求項9】
請求項7に記載の圧電振動片の製造方法によって製造された圧電振動片を、パッケージに固定し前記圧電振動片を内蔵した前記パッケージを封止する封止ステップ
を有することを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の圧電デバイスの製造方法に基づいて製造されたことを特徴とする圧電デバイス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−55268(P2008−55268A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232867(P2006−232867)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】